説明

踵骨保持構造を備えたソックス

【課題】踵骨と他の足根骨グループとの連結を強め、接地時等における踵骨の動揺を抑制するソックスを提供する。
【解決手段】足に着用するソックス本体11を基礎として、その要所に補強部分を設けたソックスについて、足の甲と足首の間の屈曲部から足の内外側面を経て踵骨の踵骨隆起部分の後側部分を回って1周し、当該踵骨を主として内方へ加圧する踵骨保持帯15を補強部分として具備している踵骨保持構造を備えたソックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足に着用するソックス本体を基礎としてその要所に補強部分を設けた、踵骨保持構造を備えたソックスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ソックスは伸縮性生地から成り、足に着用して保護することを一つの目的とするものであるが、近年、ソックス本体の伸縮性生地の要所に、ゴム又はそれと同効の弾力性材料などから成る補強部分を追加して、足の特定の箇所に圧力を加えるものが、例えばスポーツ用などとして開発され、また使用されている。これまでのこの種のソックスには土踏まずの部分や足首に上記のような補強部分を配置したものが多いが、足底部の筋肉を補助して足の縦方向のアーチや横方向のアーチの形成を助けるものも知られており、かつ市販されている。
【0003】
足底部のアーチは一種のばねとして機能するもので、運動時のみならず2足歩行のためにも必須不可欠である。そのアーチを形作る最重要の役割を持つ最重要部位は、最大の足根骨である踵骨であるが、踵骨は連結を靭帯に依存し、骨連結を持たないため、接地時に動揺を生じ易く、アーチによる体重分散やアキレス腱の収縮に過大な負担を掛けることがある。この問題に関係すると考えられる技術的提案を調査すると、例えば特開平11−124702号が見出され、同号の発明には踵覆い部が開示されており、踵覆い部は、足首伸縮バンド部、土踏まず伸縮バンド部、外踝伸縮バンド部及び内踝伸縮バンド部で囲まれた領域に配設されている足の踝部分を覆うようになっている、と記載されている。しかしこのような構成では、踵骨の外縁を大まかに覆っているだけであり、踵骨を効果的に安定させることができるとは思えない。
【0004】
【特許文献1】特開平11−124702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の点に着目し、理想的なアーチバランスを保持して足底部の負担を軽減させるためになされたもので、その課題は、踵骨と他の足根骨グループとの連結を強め、接地時等における踵骨の動揺を抑制することである。また、本発明の他の課題は、踵部分を効果的に固定することによってアーチバランスを保持し、足底部の負担を軽減することができる踵骨保持構造を備えたソックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するため、本発明は、足に着用するソックス本体を基礎としてその要所に補強部分を設けたソックスとして、足の甲と足首の間の屈曲部から足の内外側面を経て踵骨の踵骨隆起部分の後側部分を回って1周し、当該踵骨を主として内方へ加圧する踵骨保持帯を具備するという手段を講じたものである。踵骨保持帯として、上記踵骨隆起部分の後側中央部を上下にて保持するために、踵部の内外側面にて二又状に分岐した二又状部分を有するものは、踵骨隆起部分に適切に配置されるので好ましい形態である。しかしながら、この形態に止まらず、帯状のままの形態、或いは踵骨隆起部分を包むカップのような形態によっても、本発明の課題を解決することができる。
【0007】
上記の構成において、ソックス本体は一般的なソックス、靴下類或いはサポーターなどと同様編織によって形成される伸縮性生地より成り、その要所に補強部分を設けて本発明の特徴とする踵骨保持構造を備えたソックスが構成されるものである。補強部分は、丸編み機、横編み機によって他の部分よりも強く編織された組織によって形成することができるが、このような補強部分を設けることを当業界においては、ゴムを入れるというような言い方で表現することもある。なお、上記の強い編織組織と、ゴム又はそれと同効の加圧材料によることとの併用によって、補強部分を形成しても良い。強く編織された組織の形成方法には2重以上に編み込むこと、タック編みなどによる方法等従来公知の方法を適宜適用することができる。
【0008】
本発明のソックスでは、足の甲と足首の間の屈曲部から足の内外側面を経て、踵骨の後側部分つまり踵骨隆起部分を回って1周し、当該踵骨を主として内方へ加圧する踵骨保持帯を補強部分として具備している。即ち、足の甲と足首の間から踵の後側を1周する帯状の踵骨保持帯をソックス本体に設けて、踵骨を主として内方へ加圧し、それによって踵骨と他の足根骨グループとの連結を強め、接地時等における踵骨の動揺を抑制するものである。
【0009】
上記の踵骨保持帯は、上記踵骨隆起部分の後側中央部を上下にて保持するために、踵部の内外側面にて二又状に分岐した二又状部分を有している。このため、従来のように踵骨隆起部分の周囲を大まかに覆うのではなく、二又状部分から延長した二筋の帯状部分があたかも踵部分を中央部にて包むように押えて固定することになり、的確な作用を得ることができる。
【0010】
上記ソックス本体は、足指の付け根付近を取り巻くように設けた前部横方向補強帯を備えていることが望ましい。前部横方向補強帯は、前側アーチホールドとして横方向圧迫を加えることによって足底部横アーチを持ち上げ、理想的なアーチバランスを形成するために設けられる。
【0011】
上記ソックス本体は、また、足の土踏まず付近を取り巻くように設けた中部横方向補強帯を備えていることが望ましい。中部横方向補強帯は、内側及び外側アーチホールドとして縦方向圧迫と横方向圧迫を加え、足底部縦アーチを持ち上げ、理想的なアーチバランスを形成するために設けられる。
【0012】
上記ソックス本体には、さらに、足の甲の前部に位置する前湾曲部から、足首の後面の後湾曲部に至り、かつ、途中において踵骨保持帯と交叉し、全体としてほぼリング状に形成された縦方向補強帯を備えることが望ましい。縦方向補強帯は、上記前部横方向補強帯と中部横方向補強帯で形成された横アーチ及び縦アーチで構成された、いわゆるトライアングルアーチを継続的に保持するために設けられる。
【0013】
本発明は、踵骨保持帯によって踵骨を固定するいわゆるヒールロック機能を備えたソックスに該当するということもできる。よって、しっかりと足にフィットするソックス本体が基本であり、その着用によって、足の筋腱の機能を強化することも可能であるから、不備のある者にはそれを補い、健全な者にはより一層しっかりとした地歩を与える。よって本発明のソックスは、足に着用することによって上記のような機能を発揮するサポーターであるともいえる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、理想的なアーチバランスを保持して足底部の負担を軽減させることができ、踵骨と他の足根骨グループとの連結を強め、接地時等における踵骨の動揺を抑制することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、踵部分を効果的に固定することによってアーチバランスを保持し、足底部の負担を軽減することができる踵骨保持構造を備えたソックスを提供する装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図示の実施形態を参照し、本発明に係る踵骨保持構造を備えたソックス10について、より詳細に説明する。各図において、11はソックス本体を示しており、一般的なソックス、靴下類或いはサポーターなどと同様に編織によって形成されるもので、伸縮性生地より成っている。本発明に係る踵骨保持構造を備えたソックス10は、このソックス本体11の要所に補強部分を設けて構成されるものである。
【0016】
従ってソックス本体11は、足に着用するために必要な、つま先部から踵部に至る足部と、踵部から足首を包む部分を含む袋状構造を有している。図1に例示したソックス本体11において、11jは平編み部、11mはメッシュ編み部、また11pはパイル編み部をそれぞれ示している。なお、パイル編み部等の編織構造及びそれらの配置構造は不可欠のものではなく、一つの実施形態と示したものである。
【0017】
本発明に係るソックス10は、足の甲12と足首13の間の屈曲部から足の内外側面を経て踵骨14の踵骨隆起部分14aの後側部分を回って1周し、当該踵骨14を主として内方へ加圧する帯状の踵骨保持帯15を補強部分として具備している(図2参照)。この補強部分も、また、ソックス本体11の編織時に丸編み機、横編み機等によって他の部分よりも強く編織された組織から成るものとする。このような組織は、ソックス本体11の帯状の踵骨保持帯15の部分において、例えば、強いタック編みにゴム入れをすることで高い圧迫力を引き出す構造をすることによって形成することができる。強いタック編みはコース方向にリブができるため、外見上はリブ編みに見えることによって踵骨保持体15を他の部分と区別できる。
【0018】
上記の踵骨保持帯15は、踵骨隆起部分14aの後側中央部を上下にて保持して、内方へ加圧することを目的としており、そのために踵部の内外側面にて二又状に分岐した二又状部分16を有している。具体的には、二又状部分16から二筋の帯状部分17、18は後方へ移行して踵部の後側でつながり、あたかも踵部分の中央部、即ち、踵骨隆起部分14aの後側中央部を上下にて包むように押えて固定するように構成されている。
【0019】
踵骨保持帯15は二筋の帯状部分17、18によって踵骨14を中央部において後方から主として内方へ加圧することが目的であり、二筋の帯状部分17、18については、この目的の達成を前提として、任意の範囲の帯幅に設定することができる。一方踵骨保持帯15の、足の甲12と足首13の間の屈曲部に近い部分は、二筋の帯状部分17、18を所定の位置に配置することが目的であるので、上記屈曲部付近を過度に加圧しないように配慮して柔軟性や帯幅を決定する。
【0020】
踵骨保持帯については上述の二又状に分岐した構造のものに限らないので、異なる形態のものについて説明を捕捉する。図3に示す踵骨保持帯15′は、帯の幅が足の甲と足首の間の屈曲部から足の内外側面を経て踵骨の踵骨隆起部分の後側部分を回って1周するまで、ほぼ一様な幅の保持部15aを持つ変形例1を示している。変形例1において、踵骨隆起部分の後側中央部に向かうにつれて次第に幅が広くなるように保持部15aを形成しても良い。また、図4に示す踵骨保持帯15″は、踵骨隆起部分の後側中央部を包むカップ状の保持部15bを持つ変形例2を示している。何れの変形例も、他の構成については図1のものと同様で良いので、主要な構成についてのみ符号を援用し、詳細な説明は繰り返さない。
【0021】
さらに、上記ソックス本体11は足指の付け根付近を取り巻くように設けた前部横方向補強帯19を備えている。前部横方向補強帯19は、前側アーチホールドとして横方向圧迫を加えることによって足底部横アーチを持ち上げ、理想的なアーチバランスを形成するもので、そのために収縮性を強固なものとする手段として、母趾基節部から小趾基節部に至る足の幅方向へ断続的に設置している上面側強収縮部19aと、足の幅方向へ連続的に設置している足底側強収縮部19bとを有しており(図1)、足底側強収縮部19bの方が上面側強収縮部19aよりも収縮傾向が強い。
【0022】
ソックス本体11は、また、足の土踏まず付近を取り巻くように設けた中部横方向補強帯20を備えている。上記中部横方向補強帯20は、内側及び外側アーチホールドとして縦方向圧迫と横方向圧迫を加え、足底部縦アーチを持ち上げ、理想的なアーチバランスを形成するもので、そのために収縮性を強固なものとする手段として、上記と同様の強収縮部20aを足根中足関節が位置する部位に至る足上面から下面にわたって、幅方向へ断続的に設置している(図1)。なお、前部横方向補強帯19と中部横方向補強帯20は上部において不連続部分を有し(符号11mの部分)、強固な収縮性を調整している。
【0023】
ソックス本体11は、さらに、足の甲の前部に位置する前湾曲部21aから、足首の後面の後湾曲部21bに至り、全体としてほぼリング状に形成された縦方向補強帯21を備えており、かつ、途中において踵骨保持帯15と交叉している。縦方向補強帯21は、縦アーチ及び横アーチの形成を継続的に保持する役割を果たすものであるが、上記前部横方向補強帯19と中部横方向補強帯20で形成された横アーチとともにトライアングルアーチを形成するためにも重要な役割を果たす。
【0024】
上記前部横方向補強帯19、中部横方向補強帯20及び縦方向補強帯21は、編み込み方法の工夫、調整その他の手段によって、収縮性を強固なものとするように構成されている。縦方向補強帯21は、ソックス本体11に中足部背面(足の上面)における緩みを抑え、継続的にトライアングルアーチを保持する。
【0025】
このような構成を有する本発明に係る踵骨保持構造を備えたソックス10を着用するときは、ソックス本体11は通常のソックス同様に足にフィットするとともに、足の甲12と足首13の間の屈曲部から足の内外側面を経て、踵骨14の踵骨隆起部分14aの後側部分を回って1周している、踵骨保持帯15が、当該踵骨14を主として内方へ加圧することになる。その結果、踵骨14と他の足根骨グループとの連結が強められ、接地時等における踵骨14の動揺を抑制し、安定性が著しく向上することとなる。
【0026】
また、本発明に係るソックス10は、足の甲12の前部に位置する前湾曲部21aから足首13の後面の後湾曲部21bに至り、途中にて踵骨保持帯15と交叉した縦方向補強帯21を備えている。縦方向補強帯21は、前記のように縦アーチ及び横アーチの形成を継続的に保持し、上記前部横方向補強帯19と中部横方向補強帯20で形成された横アーチ及び縦アーチで構成されたいわゆるトライアングルアーチの形成に寄与する。
【0027】
このようにして、本発明に係るソックス10は、歩行、ジョギングその他のスポーツにおける足の負担軽減と、機能向上に利用可能であり、サポーターとして目的部位の圧迫固定機能を有し、下半身のパワーを効率的に伝達することによって初動動作を速めることができる。また、身体の軸を正しく修正できる効果を有するため、X脚、O脚の補整にも有効であり、美しい立ち姿及び動的姿勢の実現に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る踵骨保持構造を備えたソックスの一例を示す斜視図である。
【図2】同上のソックスと足の骨等との関係を示す説明図である。
【図3】同じく本発明に係るソックスの変形例1を示す斜視図である。
【図4】同じく本発明に係るソックスの変形例2を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0029】
10 踵骨保持構造を備えたソックス
11 ソックス本体
12 甲
13 足首
14 踵骨
15、15′、15″ 踵骨保持帯
16 二又状部分
17、18 二筋の帯状部分
19 前部横方向補強帯
20 中部横方向補強帯
21 縦方向補強帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
足に着用するソックス本体を基礎としてその要所に補強部分を設けたソックスであって、足の甲と足首の間の屈曲部から足の内外側面を経て踵骨の踵骨隆起部分の後側部分を回って1周し、当該踵骨を主として内方へ加圧する踵骨保持帯を補強部分として具備している踵骨保持構造を備えたソックス。
【請求項2】
踵骨保持帯は、上記踵骨隆起部分の後側中央部を上下にて保持するために、踵部の内外側面にて二又状に分岐した二又状部分を有している請求項1記載の踵骨保持構造を備えたソックス。
【請求項3】
補強部分は、丸編み機、横編み機によって他の部分よりも強く編織された組織から成る請求項1記載の踵骨保持構造を備えたソックス。
【請求項4】
ソックス本体は、足指の付け根付近を取り巻くように設けた前部横方向補強帯を備えている請求項1記載の踵骨保持構造を備えたソックス。
【請求項5】
ソックス本体は、足の土踏まず付近を取り巻くように設けた中部横方向補強帯を備えている請求項1記載の踵骨保持構造を備えたソックス。
【請求項6】
ソックス本体は、足の甲の前部に位置する前湾曲部から、足首の後面の後湾曲部に至り、かつ、途中において踵骨保持帯と交叉し、全体としてほぼリング状に形成された縦方向補強帯を備えている請求項1記載の踵骨保持構造を備えたソックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−156074(P2010−156074A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−334736(P2008−334736)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(397028441)株式会社スリーランナー (4)
【Fターム(参考)】