説明

車両のアウターミラー制御装置

【課題】ドライバー自身が希望するミラー本体の設定傾動量に自由に変更することができるようにする。
【解決手段】車両のアウターミラー制御装置30は、所定のミラー傾動操作時に、ミラー本体の傾動駆動手段20を、ミラー本体が設定傾動量だけ傾動するように駆動制御する。アウターミラー制御装置30は、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチ35を備える。設定傾動量変量スイッチ35は、ミラー本体を、ミラー面の向きを傾動方向に変更するように駆動するミラー本体駆動系に含まれるDCブラシモータにおけるコミュテータの絶縁部とブラシとの接触に対応して発生するブラシノイズのパルス数をミラー本体の傾動量に対応付けて設定傾動量を変量するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のアウターミラー制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両後退時に後輪周辺がドライバーの視野に入るように、シフトレバーがRレンジに入ったときに、アウターミラーのミラー本体を所定の設定傾動量だけ下方に傾動させるアウターミラー制御装置が提案されて実用化されている(例えば、特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−130326号公報
【特許文献2】特開2003−335174号公報
【特許文献3】特開2005−112068号公報
【特許文献4】特開2005−225276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のアウターミラー制御装置では、ミラー本体の設定傾動量が予め複数の水準で段階的に準備されており、そして、車種毎に調査を行い、それらのうち最適な設定傾動量を選択して設定するということが行われる。
【0005】
しかしながら、ミラー本体の最適な設定傾動量は、ドライバーの体格やドライバーシートの位置等によっても影響を受け、また、ドライバーの好みにも依存するため、車種のみによって一意的に決めることができないものである。また、複数の水準で段階的に準備された設定傾動量から選択するのでは、真に最適な設定傾動量を設定することが困難である。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ドライバー自身が希望するミラー本体の設定傾動量に自由に変更することができる車両のアウターミラー制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明の車両のアウターミラー制御装置は、所定のミラー傾動操作時に、ミラー本体の傾動駆動手段を、ミラー本体が設定傾動量だけ傾動するように駆動制御するものであって、
連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチを備え、
上記設定傾動量変量スイッチは、上記ミラー本体を、ミラー面の向きを傾動方向に変更するように駆動するミラー本体駆動系に含まれるDCブラシモータにおけるコミュテータの絶縁部とブラシとの接触に対応して発生するブラシノイズのパルス数を該ミラー本体の傾動量に対応付けて設定傾動量を変量するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチを備えているので、その設定傾動量変量スイッチの所定の操作を行うことにより、ドライバー自身が希望するミラー本体の設定傾動量に自由に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】自動車のサイドミラーの制御システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】右側のドアミラーの斜視図である。
【図3】DCブラシモータの構造例を示す説明図である。
【図4】ブラシノイズの波形図である。
【図5】設定傾動量の設定変更処理を示すフローチャートである。
【図6】設定傾動量変量スイッチを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(実施形態1)
<制御システム>
図1は、実施形態1に係る自動車のサイドミラー10(アウターミラー)の制御システムSを示す。
【0012】
この制御システムSは、左右一対のサイドミラー10とサイドミラー制御装置30(アウターミラー制御装置)とにより構成されており、シフトレバーをRレンジに入れたとき(所定のミラー傾動操作)、後輪周辺がドライバーの視野に入るように、サイドミラー10のミラー面を所定の設定傾動量だけ下方に傾動させる制御を行うものである。
【0013】
図2は、右側のサイドミラー10を示す。
【0014】
サイドミラー10は、ドアのヒンジ側のドライバーシートから視認可能な位置に、側方に突出するように取り付けられており、後方に開口したボウル状のケーシング11とその内側に開口を塞ぐように設けられたミラー本体12とを備えている。また、ケーシング11の内部には、ミラー本体12に結合して支持するミラー本体駆動系13(傾動駆動手段)が設けられている。
【0015】
ミラー本体駆動系13は、DCブラシモータ20と、その回転によりミラー面の向きを上下方向(傾動方向)に変更するようにミラー本体12を駆動する上下方向変更用ギア装置とで構成されている。
【0016】
図3は、DCブラシモータ20を示す。
【0017】
DCブラシモータ20は、例えば、3スロットタイプのものであり、回転シャフト21とそれを収納して軸支するモータ本体22とを備えている。
【0018】
回転シャフト21には、各々、コイル23が巻かれて電磁石に構成された3つのロータ24が絶縁部を介して取り付けられている。また、回転シャフト21には、ロータ24と同軸上にコイル23に給電するためのコミュテータ25がロータ24と一体的に設けられている。
【0019】
モータ本体22の内部には、一対の永久磁石からなるステータ26が回転シャフト21を側方から挟むように内壁に固設されている。また、モータ本体22の内部には、回転シャフト21のコミュテータ25を挟むように一対のブラシ27が設けられている。一対のブラシ27のそれぞれにはモータ駆動用配線28が接続されており、それらはモータ本体22の外部に引き出されている。
【0020】
このDCブラシモータ20では、モータ駆動用配線28の一方から他方に通電すると、ブラシ27からコミュテータ25を介してコイル23に給電され、各ロータ24が電磁石化し、これがステータ26の磁界に反発して回転シャフト21を回転させる力を発現する。そして、回転シャフト21がロータ24及びコミュテータ25と共に一体に回転すると、コミュテータ25を介してブラシ27からコイル23に給電される電流iの向きが切換えられるため、各ロータ24の電磁石の極性が次々に反転し、各ロータ24はその回転位置に拘わらず常にステータ26の磁界と反発して回転シャフト21を回転させる力を発現する。これにより、回転シャフト21は、一方向に連続的に回転する(図3では反時計回り方向)。また、モータ駆動用配線28への通電を逆に、つまり、他方から一方に通電すると、回転シャフト21は、上記とは逆の時計回り方向に回転する。
【0021】
サイドミラー制御装置30は、サイドミラー制御用の中央処理装置であるCPU31、ドライバ回路32、一対のブラシノイズ検出回路33、フィルタ回路34及び設定傾動量変量スイッチ35を備えている。そして、CPU31は、入力系がフィルタ回路34及び設定傾動量変量スイッチ35に接続されており、また、出力系がドライバ回路32に接続されている。ドライバ回路32は一対のブラシノイズ検出回路33のそれぞれに接続されている。一対のブラシノイズ検出回路33のそれぞれはフィルタ回路34に接続されている。
【0022】
CPU31には、演算処理部31a及び情報保管部31b(RAM)が内蔵されている。情報保管部31bには、シフトレバーがRレンジに入ったときにサイドミラー10のミラー本体12を所定の設定傾動量だけ下方に傾動させる制御処理を行う第1コンピュータプログラム等が記憶されている。
【0023】
また、サイドミラー制御装置30は、電力源であるバッテリ40、種々の操作に基づく外部信号が送信される外部信号入力配線50、及び、DCブラシモータ20から延びる一対のモータ駆動用配線28がそれぞれ接続されている。外部信号入力配線50はCPU31の入力系に繋がっており、一対のモータ駆動用配線28は、一方が一方のブラシノイズ検出回路33に、また、他方が他方のブラシノイズ検出回路33にそれぞれ繋がっている。
【0024】
このサイドミラー制御装置30では、CPU31は、外部信号入力配線50を介してシステムオン操作の外部信号が入力されると、この制御システムSを動作可能状態とする一方、システムオフ操作の外部信号が入力されると、動作不可状態とするスイッチング制御を行う。
【0025】
ところで、DCブラシモータ20の回転動作においては、コミュテータ25とブラシ27との接触位置が変化するのに従い、そのコミュテータ25の絶縁部と各ブラシ27との接触に対応したブラシノイズが発生する。このブラシノイズは、DCブラシモータ20の回転角度に対応するように一定周期で電圧(或いは電流)に出現する。具体的には、図3に示すように、コミュテータ25の絶縁部が3箇所あり、しかも、一対のブラシ27が180°間隔を空けて配置されているため、図4(a)に示すように、DCブラシモータ20の回転角度が60°変化する毎にブラシ切換時のブラシノイズが電圧vに1つ発生する。つまり、ブラシノイズ6つがDCブラシモータ20の1回転分に相当する。従って、ブラシノイズの数からDCブラシモータ20の回転角度を換算することができ、また、そのDCブラシモータ20の回転角度をミラー本体12の傾動量に換算することができることから、ブラシノイズの数をミラー本体12の傾動量に対応付けることができる。
【0026】
このサイドミラー制御装置30では、CPU31は、第1コンピュータプログラムを実行し、ミラー本体12を傾動動作させるため、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20の給電制御を行う。このとき、ブラシノイズ検出回路33は、ブラシノイズを検出してフィルタ回路34に出力する。また、フィルタ回路34は、ブラシノイズの電圧波形の低周波成分を除去して図4(b)に示すような信号波形v’としてCPU31に出力する。上記したように、ブラシノイズのパルス数はミラー本体12の傾動量に対応付けられるので、従って、上記のCPU31によるDCブラシモータ20の給電制御は、フィルタ回路34からのブラシノイズのパルス数がCPU31により計測され、それに基づいて行われる。
【0027】
設定傾動量変量スイッチ35は、図6(a)に示すようなロータリースイッチで構成されている。ロータリースイッチの設定傾動量変量スイッチ35は、CPU31に対して、設定傾動量データ、つまり、ブラシノイズの設定パルス数データを変量し、そして、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量して設定するが、軸を一方の方向(時計回り)に回転させることにより設定傾動量が大きくなるように設定パルス数データを変量し、軸を他方の方向(反時計回り)に回転させることにより設定傾動量が小さくなるように設定パルス数データを変量する構成である。従って、ロータリースイッチの設定傾動量変量スイッチ35では、ドライバーは軸の回転位置を確認することで設定傾動量を確認することができる。
【0028】
<制御方法>
次に、実施形態1の制御システムSの制御方法について説明する。この制御システムSの制御は、CPU31の情報保管部31bに記憶されている第1コンピュータプログラムの実行によるものである。
【0029】
この制御システムSでは、ドライバーが設定傾動量変量スイッチ35の軸を回転させて、希望の設定傾動量となるように、予め、ブラシノイズの設定パルス数データを変量して対応する設定パルス数データに設定しておく。
【0030】
そして、シフトレバーがRレンジに入れられると、まず、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される。
【0031】
CPU31では、演算処理部31aが、設定傾動量変量スイッチ35で設定された設定傾動量に関連付けられたブラシノイズの設定パルス数データを読み取ると共に、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12を下方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、ブラシノイズのパルス数を計測するとと共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。これにより、ミラー本体12が所定の設定傾動量だけ下方に傾動して停止し(例えば、3〜8°傾動する。)、車両後退時に、後輪周辺が確実にドライバーの視野に入るようになる。なお、ミラー本体12の傾動動作時に設定傾動量変量スイッチ35を操作しても設定パルス数データは変更されないように構成されている。但し、ミラー本体12の傾動停止後に、設定傾動量変量スイッチ35を操作することにより、ミラー本体12の傾動位置の微調整を行うことができる構成であってもよい。
【0032】
車両の後退の後、シフトレバーがRレンジから他に変更されると、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される、或いは、シフトレバーがRレンジにあることを伝える外部信号が解除される。
【0033】
CPU31では、演算処理部31aが、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に先とは逆相に給電し、ミラー本体12を上方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、先に計測したブラシノイズのパルス数をリセットし、再度パルス数を計測すると共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。これにより、ミラー本体12が元の通常位置に復帰する。なお、先の給電停止時のブラシノイズのパルス数から計測したパルス数をカウントダウンすると共に、残数がゼロより大きい場合には継続して給電を行う一方、残数がゼロに達した場合には給電を停止するようにしてもよい。
【0034】
以上のサイドミラー制御装置30によれば、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチ35を備えているので、その設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作を行うことにより、ドライバー自身が希望するミラー本体12の設定傾動量に自由に、しかも、容易に変更することができる。
【0035】
(実施形態2)
<制御システム>
実施形態2に係る自動車のサイドミラー10(アウターミラー)の制御システムSは、図1に示す実施形態1のものと同一の構成要素を備えている。従って、以下、図1〜4に基づいて説明する。
【0036】
この実施形態2に係る制御システムSでは、情報保管部31bに、第1コンピュータプログラムに加えて、その設定傾動量に関連付けられた設定傾動量データとして、設定傾動量に対応するブラシノイズの設定パルス数データ、及び、その設定傾動量データを設定変更する制御処理を行う第2コンピュータプログラムが記憶されている。
【0037】
また、設定傾動量変量スイッチ35はロータリースイッチで構成されているが、それも含めてその他の構成は実施形態1と同一である。
【0038】
<制御方法>
−基本制御−
次に、実施形態2の制御システムSの基本制御について説明する。この制御システムSの基本制御は、CPU31の情報保管部31bに記憶されている第1コンピュータプログラムの実行によるものである。
【0039】
この制御システムSでは、シフトレバーがRレンジに入れられると、まず、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される。
【0040】
CPU31では、演算処理部31aは、情報保管部31bに記憶された設定傾動量に関連付けられたブラシノイズの設定パルス数データを読み取ると共に、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12を下方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、ブラシノイズのパルス数を計測するとと共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。これにより、ミラー本体12が所定の設定傾動量だけ下方に傾動して停止し(例えば、3〜8°傾動する。)、車両後退時に、後輪周辺がドライバーの視野に入るようになる。
【0041】
車両の後退の後、シフトレバーがRレンジから他に変更されると、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される、或いは、シフトレバーがRレンジにあることを伝える外部信号が解除される。
【0042】
CPU31では、演算処理部31aは、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に先とは逆相に給電し、ミラー本体12を上方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、先に計測したブラシノイズのパルス数をリセットし、再度パルス数を計測すると共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。なお、先の給電停止時のブラシノイズのパルス数から計測したパルス数をカウントダウンすると共に、残数がゼロより大きい場合には継続して給電を行う一方、残数がゼロに達した場合には給電を停止するようにしてもよい。これにより、ミラー本体12が元の通常位置に復帰する。
【0043】
−設定傾動量の設定変更制御−
実施形態2の制御システムSの設定傾動量の設定変更制御について図5のフローチャートに基づいて説明する。この制御システムSの設定傾動量の設定変更制御は、CPU31の情報保管部31bに記憶されている第2コンピュータプログラムの手順を順に実行するものである。
【0044】
まず、傾動量設定モード突入操作による外部信号が外部信号入力配線50を介して入力されるまで待機し、傾動量設定モード突入操作による外部信号が入力されると第2コンピュータプログラムがスタートする。ここで、この傾動量設定モード突入操作は、特に限定されるものではなく、例えば、第1例として、キーを挿した後10秒以内にドアロック及びアンロックを交互に5回以上繰り返す操作、第2例として、システムスイッチをオフにすると共にアクセサリースイッチをオンし且つ図示しないミラー位置設定スイッチの上下左右のそれぞれを2回ずつ押す操作等が挙げられる。但し、この傾動量設定モード突入操作は、安全性及び設定操作の容易性の観点から、簡単過ぎず、その一方、煩雑でないものであることが好ましい。なお、ミラー本体12が通常位置、つまり、前進運転時の設定位置からずれている場合には、この傾動量設定モード突入操作を行う前又は後に、ミラー位置設定スイッチを操作してミラー本体12を通常位置に位置調整する。
【0045】
スタート後のステップS1では、処理モードが傾動量設定モードに突入し、続くステップS2に進む。
【0046】
ステップS2では、傾動量データ変量開始操作による信号が入力されるまで待機する。ここで、この傾動量データ変量開始操作は、特に限定されるものではなく、例えば、傾動量設定モード突入操作が上記の第1例の場合に、シフトレバーをRレンジに入れる操作、第2例の場合に、システムスイッチをオンにする操作等が挙げられる。なお、第1例の場合、一般に、キーを挿してフットブレーキを踏めばシフトレバーを動かすことができるので、エンジンを始動させることなくシフトレバーをRレンジに入れることができ、従って、車両が動き出す危険性はない。また、傾動量データ変量開始操作は、設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作であってもよい。
【0047】
傾動量データ変量開始操作による外部信号が入力されると、ステップS3に進み、傾動量に関連付けられた傾動量データ、つまり、傾動量に対応するブラシノイズのパルス数データを連続的に変量可能な状態とし、続くステップS4に進む。
【0048】
このとき、ドライバーが設定傾動量変量スイッチ35の軸を回転させると、その回転量に応じてブラシノイズの設定パルス数データを連続的に変量するように信号入力され、それに対応してドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12を上下に傾動或いは停止させる。
【0049】
このように、ブラシノイズのパルス数データを連続的に変量するのに対応してミラー本体12が傾動する構成であるので、ドライバーが実際にミラー本体12を確認しながら傾動量を調節することができる。
【0050】
また、ミラー本体12を下方(傾動方向の一方側)に傾動させるだけでなく、停止、或いは、上方(傾動方向の他方側)に傾動させることができる構成であるので、希望の傾動位置が行き過ぎても、即座に停止したり、戻したりすることができ、ミラー本体12の傾動量の調節を容易に行うことができる。
【0051】
ステップS4では、設定値決定操作による信号が入力されるまで待機する。つまり、これは、ドライバーが傾動するミラー本体12を確認しつつ希望の傾動位置となったときに設定値決定操作を行うことにより実行される処理である。このとき、ミラー本体12の通常位置から希望の傾動位置までの傾動量に対応したブラシノイズのパルス数データが設定値として決定される。ここで、設定値決定操作は、特に限定されるものではなく、上記の第1例の場合には、シフトレバーをRレンジ以外に変更する操作、第2例の場合には、システムスイッチをオフにする操作等が挙げられる。また、設定値決定操作は、設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作であってもよい。
【0052】
設定値決定操作の信号が入力されると、ステップS5に進み、決定したブラシノイズのパルス数データで、CPU31の情報保管部31bに記憶されたブラシノイズの設定パルス数データを書き換え、続くステップS6に進む。
【0053】
ステップS6では、ドライバ回路32によりDCブラシモータ20に給電してミラー本体12を通常位置に復帰させ、傾動量設定モードを解除して終了する。ここで、所定の操作による外部信号が入力されたときにこの処理を実行する構成であっても、また、ステップS4で設定値決定操作による外部信号が入力されたときに同時進行的にステップS5及びステップS6に進む構成であってもよい。その他、例えば、ドアを開けたとき、イグニッションスイッチがオンになったとき、或いは、傾動量設定モードに入って30秒以上が経過したとき等に全てをキャンセルして傾動量設定モードを解除して終了する構成であってもよい。
【0054】
以上のサイドミラー制御装置30によれば、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチ35を備えているので、傾動量設定モードにおいて設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作を行うことにより、ドライバー自身が希望するミラー本体12の設定傾動量に自由に、しかも、容易に設定変更することができる。
【0055】
(実施形態3)
<制御システム>
実施形態3に係る自動車のサイドミラー10(アウターミラー)の制御システムSは、図1に示す実施形態1のものと同一の構成要素を備えている。従って、以下、図1〜4に基づいて説明する。
【0056】
この実施形態3に係る制御システムSでは、情報保管部31bに、第1コンピュータプログラムに加えて、その設定傾動量に関連付けられた設定傾動量データとして、設定傾動量に対応するブラシノイズの設定パルス数データが記憶されている。
【0057】
設定傾動量変量スイッチ35は、図6(b)に示すようなプッシュスイッチで構成されている。プッシュスイッチの設定傾動量変量スイッチ35は、CPU31に対して、設定傾動量データ、つまり、ブラシノイズの設定パルス数データを変量でき、そして、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量して設定するが、具体的構成としては、ボタンを押している間は設定傾動量が増加するように設定傾動量データを変量し、次にスイッチを離している間は停止し、次にボタンを押している間は設定傾動量が減少するように設定傾動量データを変量し、次にスイッチを離している間は停止する動作をサイクリックに繰り返すものや、一回押す毎に設定傾動量が例えば1°増加し、設定傾動量が最大値に達したときにはリセットされてサイクリックに設定傾動量データを変量するものが挙げられる。
【0058】
また、設定傾動量変量スイッチ35は、設定傾動量が増加するように設定傾動量データを変量する第1プッシュスイッチと設定傾動量が減少するように設定傾動量データを変量する第2プッシュスイッチとの2つのプッシュスイッチを備えた構成であってもよい。この場合、第1プッシュスイッチは、ボタンを押している間は設定傾動量が増加するように設定傾動量データを変量し、次にスイッチを離している間は停止する動作をサイクリックに繰り返す構成であっても、一回押す毎に設定傾動量が例えば1°増加し、設定傾動量が最大値に達したときにはリセットされてサイクリックに設定傾動量データを変量する構成であってもよい。同様に、第2プッシュスイッチは、ボタンを押している間は設定傾動量が減少するように設定傾動量データを変量し、次にスイッチを離している間は停止する動作をサイクリックに繰り返す構成であっても、一回押す毎に設定傾動量が例えば1°減少し、設定傾動量が最小値に達したときにはリセットされてサイクリックに設定傾動量データを変量する構成であってもよい。
【0059】
なお、一回押す毎に一定の設定傾動量を変量する構成であっても、一定の設定傾動量が例えば1°以下程度であれば実質的には連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量するものといえる。
【0060】
その他の構成は実施形態1と同一である。
【0061】
<制御方法>
次に、実施形態3の制御システムSの制御について説明する。この制御システムSの制御は、CPU31の情報保管部31bに記憶されている第1コンピュータプログラムの実行によるものである。
【0062】
この制御システムSでは、シフトレバーがRレンジに入れられると、まず、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される。
【0063】
CPU31では、演算処理部31aは、情報保管部31bに記憶された設定傾動量に関連付けられたブラシノイズの設定パルス数データを読み取ると共に、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12を下方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、ブラシノイズのパルス数を計測するとと共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。
【0064】
そして、ミラー本体12の傾動停止後、ドライバーがプッシュスイッチの設定傾動量変量スイッチ35を所定の様式で押す操作をすると、その操作に応じてブラシノイズの設定パルス数データを連続的に変量するように信号入力され、演算処理部31aは、それに対応してドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12の傾動位置が微調整される。これにより、ミラー本体12が所定の設定傾動量だけ下方に傾動して停止し(例えば、3〜8°傾動する。)、しかもドライバーの希望する傾動位置に微調整され(例えば、3〜8°の範囲で微調整する。)、車両後退時に、後輪周辺がドライバーの視野に確実に入るようになる。
【0065】
車両の後退の後、シフトレバーがRレンジから他に変更されると、CPU31には、外部信号入力配線50を介して、その情報を伝える外部信号が入力される、或いは、シフトレバーがRレンジにあることを伝える外部信号が解除される。
【0066】
CPU31では、演算処理部31aは、ドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に先とは逆相に給電し、ミラー本体12を上方に傾動させる。このとき、演算処理部31aは、先に計測したブラシノイズのパルス数をリセットし、再度パルス数を計測すると共に、それを設定パルス数と対比し、計測したパルス数が設定パルス数に満たない場合には継続して給電を行う一方、計測したパルス数が設定パルス数に達した場合には給電を停止する。これにより、ミラー本体12が元の通常位置に復帰する。なお、先の給電停止時のブラシノイズのパルス数から計測したパルス数をカウントダウンすると共に、残数がゼロより大きい場合には継続して給電を行う一方、残数がゼロに達した場合には給電を停止するようにしてもよい。
【0067】
以上のサイドミラー制御装置30によれば、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチ35を備えているので、その設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作を行うことにより、ドライバー自身が希望するミラー本体12の設定傾動量に自由に、しかも、容易に変更することができる。
【0068】
(実施形態4)
<制御システム>
実施形態4に係る自動車のサイドミラー10(アウターミラー)の制御システムSは、図1に示す実施形態1のものと同一の構成要素を備えている。従って、以下、図1〜4に基づいて説明する。
【0069】
この実施形態2に係る制御システムSでは、情報保管部31bに、第1コンピュータプログラムに加えて、その設定傾動量に関連付けられた設定傾動量データとして、設定傾動量に対応するブラシノイズの設定パルス数データ、及び、その設定傾動量データを設定変更する制御処理を行う第2コンピュータプログラムが記憶されている。
【0070】
また、設定傾動量変量スイッチ35はプッシュスイッチで構成されているが、それも含めてその他の構成は実施形態3と同一である。
【0071】
<制御方法>
−基本制御−
実施形態4の制御システムSの基本制御は実施形態2のものと同一である。
【0072】
−設定傾動量の設定変更制御−
実施形態4の制御システムSの設定傾動量の設定変更制御では、実施形態2のものにおけるステップ3において、ドライバーが設定傾動量変量スイッチ35を所定の様式で押す操作をすると、その操作に応じてブラシノイズの設定パルス数データを連続的に変量するように信号入力され、それに対応してドライバ回路32によりモータ駆動用配線28を介してDCブラシモータ20に給電し、ミラー本体12を上下に傾動或いは停止させる。
【0073】
このように、ブラシノイズのパルス数データを連続的に変量するのに対応してミラー本体12が傾動する構成であるので、ドライバーが実際にミラー本体12を確認しながら傾動量を調節することができる。
【0074】
また、ミラー本体12を下方(傾動方向の一方側)に傾動させるだけでなく、停止、或いは、上方(傾動方向の他方側)に傾動させることができる構成であるので、希望の傾動位置が行き過ぎても、即座に停止したり、戻したりすることができ、ミラー本体12の傾動量の調節を容易に行うことができる。
【0075】
その他の制御動作は実施形態2のものと同一である。
【0076】
以上のサイドミラー制御装置30によれば、連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチ35を備えているので、傾動量設定モードにおいて設定傾動量変量スイッチ35の所定の操作を行うことにより、ドライバー自身が希望するミラー本体12の設定傾動量に自由に、しかも、容易に設定変更することができる。
【0077】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態1〜4では、シフトレバーをRレンジに入れたときのミラー本体12の設定傾動量の設定変更を行うものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、方向指示レバーを倒したときに両側のミラー本体12を外側に傾動させるシステムにおけるミラー本体12の設定傾動量の設定変更を行うものであってもよい。
【0078】
また、上記実施形態1〜4では、サイドミラー10を対象のものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、アウターミラーであるフェンダーミラーを対象とするものであってもよい。
【0079】
また、上記実施形態1〜4では、設定傾動量変量スイッチ35をロータリースイッチ又はプッシュスイッチで構成したが、特にこれに限定されるものではなく、例えば、図6(c)に示すようなジョイスティックタイプのスイッチであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、車両のアウターミラー制御装置について有用である。
【符号の説明】
【0081】
S 自動車のサイドミラーの制御システム
10 サイドミラー(アウターミラー)
12 ミラー本体
13 ミラー本体駆動系(傾動駆動手段)
30 サイドミラー制御装置(アウターミラー制御装置)
35 設定傾動量変量スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のミラー傾動操作時に、ミラー本体の傾動駆動手段を、ミラー本体が設定傾動量だけ傾動するように駆動制御する車両のアウターミラー制御装置であって、
連続した傾動量範囲のうちで設定傾動量を変量する設定傾動量変量スイッチを備え、
上記設定傾動量変量スイッチは、上記ミラー本体を、ミラー面の向きを傾動方向に変更するように駆動するミラー本体駆動系に含まれるDCブラシモータにおけるコミュテータの絶縁部とブラシとの接触に対応して発生するブラシノイズのパルス数を該ミラー本体の傾動量に対応付けて設定傾動量を変量するように構成された車両のアウターミラー制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたアウターミラー制御装置において、
上記設定傾動量変量スイッチは、軸を回転させることにより設定傾動量を変量するロータリースイッチで構成されている車両のアウターミラー制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたアウターミラー制御装置において、
上記設定傾動量変量スイッチは、ボタンを押すことにより設定傾動量を変量するプッシュスイッチで構成されている車両のアウターミラー制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140130(P2012−140130A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102892(P2012−102892)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2006−297990(P2006−297990)の分割
【原出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(000003263)三菱電線工業株式会社 (734)
【Fターム(参考)】