説明

車両の開閉体拘束装置

【課題】路面状況や風の強さなどを配慮して車体剛性や車両の乗り心地の向上を図ることを可能にするとともに、応答性がよい車両の開閉体拘束装置を実現することを可能にする。
【解決手段】車体11側の開口部13に開閉自在に取付けられる開閉体14を拘束する拘束手段31と、この拘束手段31の拘束力を制御する拘束力制御手段34と、開口部13の加速度を検知する第1の加速度検知手段32と、開閉体14の加速度を検知する第2の加速度検知手段33とを有し、第1の加速度検知手段32により検知された開口部13の加速度と、第2の加速度検知手段33により検知された開閉体14の加速度とが異なるときに、拘束手段31の拘束力を拘束力制御手段34で変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体の開口部に車両用ドアなどの開閉体を適正な拘束力で保持することができる車両の開閉体拘束装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の開閉体拘束装置として、車体に開口部を設け、この開口部に弾性体を介して開閉体を開閉自在に取付け、弾性体の硬さを変化させて開口部に対する開閉体の拘束力を変えるものが知られている。
この種の車両の開閉体拘束装置は、開口部に対する開閉体の拘束力を変えることで、車体剛性の向上や車体振動の低減を図ろうとするものであった。
【0003】
このような車両の開閉体拘束装置として、開口部と開閉体との間にチューブ状の弾性体を介在させ、この弾性体の圧力を変化させることで開口部に対する開閉体の拘束力を変えるものが知られている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【特許文献1】特開平6−255366号公報
【特許文献2】実開昭60−142150号公報
【特許文献3】実開平3−112419号公報
【0004】
特許文献1の車両の開閉体拘束装置は、車体に開口部(ドア開口)を設け、この開口部に開閉体(サイドドア)を開閉自在に取付け、これらの開口部と開閉体との間に弾性体(押圧部材)を介在させ、この弾性体を駆動する駆動手段を設け、この駆動手段を制御する制御部を設けたものである。具体的には、弾性体は、駆動手段にて供給される加圧流体で開口部に対する開閉体の押圧力(拘束力)を変化させるものであり制御部で車速を検知して車速に応じて開口部に対する開閉体の拘束力を変化させるようにしたものである。
【0005】
特許文献2の車両の開閉体拘束装置は、開口部と開閉体との間の介在させる弾性体に、中空のウェザストリップを用いたものであり、このウェザストリップへの空気供給制御を車速に応じて行う制御部を備えたものである。
【0006】
特許文献3の車両の開閉体拘束装置は、開口部(開閉口)に開閉体(車両用ドア)を開閉自在に取付け、これらの開口部と開閉体との間に弾性体(環状中空体のウェザストリップ)を介在させ、この弾性体を車速に応じてエアを弾性体に供給する制御部(エアコントロール装置)を設けたものである。
【0007】
しかし、特許文献1〜3の車両の開閉体拘束装置では、車速に応じて開口部に対する開閉体の拘束力を変化させるものであり、車体(開口部)と開閉体とでは、お互いの固有振動数が異なるため、例えば、路面状況や風の強さによっても、車体(開口部)と開閉体との振幅や位相に差異が生ずる。従って、車速のみで開口部に対する開閉体の拘束力を変化させることでは、剛性や乗り心地に悪影響を及ぼす場合がある。
また、特許文献1〜3の車両の開閉体拘束装置では、開口部に対する開閉体の拘束力を変化させるために、弾性体(例えば、ウェザストリップ)の圧力をエアなどの加圧流体で制御するため応答性に問題が残る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、路面状況や風の強さなどを配慮して車体剛性や車両の乗り心地の向上を図ることができるとともに、応答性がよい車両の開閉体拘束装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、車体側の開口部に開閉自在に取付けられる開閉体を拘束する拘束手段と、この拘束手段の拘束力を制御する拘束力制御手段と、開口部の加速度を検知する第1の加速度検知手段と、開閉体の加速度を検知する第2の加速度検知手段とを有し、第1の加速度検知手段により検知された開口部の加速度と、第2の加速度検知手段により検知された開閉体の加速度とが異なるときに、拘束手段の拘束力を拘束力制御手段で変化させることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る発明は、第1の加速度検知手段により検知される開口部の加速度よりも、第2の加速度検知手段により検知される開閉体の加速度が低いときに、拘束力制御手段は、拘束手段の拘束力を増加させることを特徴とする。
【0011】
請求項3に係る発明は、第1の加速度検知手段により検知される開口部の加速度よりも、第2の加速度検知手段により検知される開閉体の加速度が高いときに、拘束力制御手段は、拘束手段の拘束力を減少させることを特徴とする。
【0012】
請求項4に係る発明は、第1・第2の加速度検知手段が、互いに近接する位置に設けられることを特徴とする。
【0013】
請求項5に係る発明は、開口部に開閉体を開閉自在に取付けるヒンジ部と、開口部に開閉体を固定するロック部とから離間した位置に、第1・第2の加速度検知手段を配置したことを特徴とする。
【0014】
請求項6に係る発明は、拘束手段が、開口部又は開閉体のどちらか一方に設けられた係合ピンと、この係合ピンに設けた複数の周方向突部と、開口部又は開閉体のどちらか他方に設けられ係合ピンが係合する係合凹部と、この係合凹部に設けられ通電によって加熱することで膨張又は収縮変形可能な巻回形状記憶合金コイルと、この巻回形状記憶合金コイルに通電する通電装置とを有し、係合ピンが係合凹部に係合し、通電装置により巻回形状記憶合金コイルが通電され膨張又は収縮することで開閉体を拘束することを特徴とする。
【0015】
請求項7に係る発明は、周方向突部が、係合ピンの円筒面から略三角形状に突出する雄ねじ形状を呈することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、車体側の開口部に開閉自在に取付けられる開閉体を拘束する拘束手段と、この拘束手段の拘束力を制御する拘束力制御手段と、開口部の加速度を検知する第1の加速度検知手段と、開閉体の加速度を検知する第2の加速度検知手段とを有することで、開口部(車体)と開閉体(車両用ドア)との加速度の違いを検知して拘束力を調整することができる。例えば、路面状況に応じた開閉体の拘束力の調整や、風の強さに応じた開閉体の拘束力の調整が可能となり、車両の所定の状況下適正な拘束力を与えることができる。この結果、車体剛性の向上と車両の乗り心地の向上の両立を図ることができる。
【0017】
請求項2に係る発明では、第1の加速度検知手段により検知される開口部の加速度よりも、第2の加速度検知手段により検知される開閉体の加速度が低いときに、拘束力制御手段は、拘束手段の拘束力を増加させる。すなわち、開口部よりも開閉体の加速度が低いときは、拘束力が低い状態にあり、車体剛性の向上に寄与しない。従って、拘束力制御手段により拘束力を増加させることで、拘束力を適正値に保つことができる。
【0018】
請求項3に係る発明では、第1の加速度検知手段により検知される開口部の加速度よりも、第2の加速度検知手段により検知される開閉体の加速度が高いときに、拘束力制御手段は、拘束手段の拘束力を減少させる。すなわち、開口部よりも開閉体の加速度が高いときは、開閉体に共振が発生しやすく、共振状態の開閉体の振動が開口部(車体側)へ過度に伝達され、乗り心地に悪影響を及ぼす。従って、拘束力制御手段により拘束力を減少させることで、拘束力を適正値に保つことができる。
【0019】
請求項4に係る発明では、第1・第2の加速度検知手段が、互いに近接する位置に設けられる。例えば、開閉体の周縁上部、開閉体の周縁下部若しくは開閉体の中央部では発生する加速度に差異が生ずる。従って、第1・第2の加速度検知手段を、互いに近接する位置に設けることで、開閉体と車体(開口部)の加速度の違いを、精度よく検知することができる。
【0020】
請求項5に係る発明では、開口部に開閉体を開閉自在に取付けるヒンジ部と、開口部に開閉体を固定するロック部とから離間した位置に、第1・第2の加速度検知手段を配置した。開閉体は、ヒンジ部やロック部では強固に車体(開口部)に固定されるため、車体(開口部)との加速度の違いが検知しにくい。そこで、開口部に開閉体を開閉自在に取付けるヒンジ部と、開口部に開閉体を固定するロック部とから離間した位置に、第1・第2の加速度検知手段を配置することで、互いの加速度の違いの検知性能を向上させることができる。
【0021】
請求項6に係る発明では、拘束手段に係合凹部に設けられ通電によって加熱することで膨張又は収縮変形可能な巻回形状記憶合金コイルを用いたので、形状記憶合金により素早い拘束力の適正化が可能となる。これにより、応答性のよい車両の開閉体拘束装置を実現することができる。
【0022】
請求項7に係る発明では、周方向突部が、係合ピンの円筒面から略三角形状に突出する雄ねじ形状を呈する。係合ピンが巻回形状記憶合金コイルに挿入されるときに、略三角形状に突出する雄ねじ形状が案内機能をなし、係合ピンの巻回形状記憶合金コイルへの挿通若しくは離脱を容易に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとする。
図1は本発明に係る車両の開閉体拘束装置を採用した車両の側面図であり、図2は本発明に係る車両の開閉体拘束装置のブロック図である。
車両10は、車体11に設けられ乗員が車室12に乗降可能な開口部13と、この開口部13にヒンジ部15,15を介して開閉自在に取付けられる開閉体14と、これらの開口部13と開閉体14との間に設けられ、開口部13に開閉体14を留め置くロック部16と、開口部13の周りに設けられ開閉体14の閉状態で密着する弾性体17と、開口部13と開閉体14との間に設けられ、開口部13に開閉体14を拘束(保持)する拘束力(保持力)を調整する車両の開閉体拘束装置30とが設けられる。
【0024】
一般的に、車両10では、路面状況や風の強さによっても、車体11(開口部13)と開閉体14との振幅や位相に差異が生ずる。
そこで、開口部13よりも開閉体14の加速度が低いときは、拘束力が低い状態にあり、車体剛性の向上に寄与しない。従って、拘束力制御手段34により拘束力を増加させることで、拘束力を適正値に保つことができると考えられる。また、開口部13よりも開閉体14の加速度が高いときは、開閉体14に共振が発生しやすく、共振状態の開閉体の振動が開口部13(車体11側)へ過度に伝達され、乗り心地に悪影響を及ぼす。従って、拘束力制御手段34により拘束力を減少させることで、拘束力を適正値に保つことができると考えられる。
【0025】
車両の開閉体拘束装置30は、開口部13と開閉体14との間に設けられ開口部13に開閉体14を拘束する拘束手段31と、開口部13に設けられ開口部13の加速度を検知する第1の加速度検知手段32と、開閉体14に設けられ開閉体14の加速度を検知する第2の加速度検知手段33と、車体11側に設けられ、第1・第2の加速度検知手段32,33の情報で開口部13に対する開閉体14の拘束力を調整する拘束力制御手段34とから構成される。
【0026】
開閉体14は、一例として乗員が乗降する車両用ドアであり、弾性体17は、一例として車両用ドアが密閉され、雨水やほこりの車室12内の侵入を防ぐとともに、車両用ドアの振動を抑えるウェザストリップである。
【0027】
第1・第2の加速度検知手段32,33は、加速度を検知する加速度センサ(Gセンサ)であり、第1・第2の加速度検知手段32,33の情報は拘束力制御手段34に入力される。また、第1・第2の加速度検知手段32,33は、互いに近接する位置に設けられるとともに、開口部13に開閉体14を開閉自在に取付けるヒンジ部15,15と、開口部13に開閉体14を固定するロック部16とから離間した位置に設けられる。
【0028】
例えば、開閉体14の周縁上部、開閉体14の周縁下部若しくは開閉体14の中央部では発生する加速度に差異が生ずる。従って、第1・第2の加速度検知手段32,33を、互いに近接する位置に設けることで、開閉体14と車体11(開口部13)の加速度の違いを、精度よく検知することができる。
【0029】
また、開閉体14は、ヒンジ部15,15やロック部16では強固に車体11(開口部13)に固定されるため、車体11(開口部13)との加速度の違いが検知しにくい。そこで、開口部13に開閉体14を開閉自在に取付けるヒンジ部15,15と、開口部13に開閉体14を固定するロック部16とから離間した位置に、第1・第2の加速度検知手段32,33を配置することで、互いの加速度の違いの検知性能を向上させることができる。
【0030】
拘束手段(アクチュエータ)31は、開閉体14に設けられる係合ピン41と、車体11側開口部13近傍に設けられ、係合ピン41が係合する(収納される)係合凹部42と、この係合凹部42内に設けられ、係合ピン41を拘束する巻回形状記憶合金コイル43と、この巻回形状記憶合金コイル43に電力を供給する電源44と、この電源44と巻回形状記憶合金コイル43との間に設けられ、拘束力制御手段34の指示でON/OFFされるスイッチ45と、電源44と巻回形状記憶合金コイル43との間に設けられ、拘束力制御手段34の指示で巻回形状記憶合金コイル43に供給する電力を調整する電力調整回路46とからなる。
【0031】
係合ピン41は、係合ピン41の円筒面41aから略三角形状に突出する雄ねじ形状を呈する複数の周方向突部48が形成され、周方向突部48は、巻回形状記憶合金コイル43が係合する係合斜面49を有する。
【0032】
通電装置(通電手段)51は、先に説明した電源44、スイッチ45及び電力調整回路46で構成され、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を増加させたときに、巻回形状記憶合金コイル43は収縮して縮径され、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を減少させたときに、巻回形状記憶合金コイル43は膨張されて拡径される。
【0033】
ところで、巻回形状記憶合金コイル43は、形状記憶合金で形成されたコイルであり、形状記憶合金とは、所定の形状に成形、熱処理によって形状を記憶させることができる合金のことであり、力を加えて変形しても、一定温度(動作温度)以上に加熱すると元の形状に戻る性質をもつ。なお、巻回形状記憶合金コイル43は、Ni−Ti(ニッケル・チタン)合金とCu−Zn−Al(銅・亜鉛・アルミニウム)合金などが用いられる。
【0034】
車両の開閉体拘束装置30では、拘束手段31に係合凹部42に設けられ通電によって加熱することで膨張又は収縮変形可能な巻回形状記憶合金コイル43を用いたので、形状記憶合金により素早い拘束力の適正化が可能となる。これにより、応答性のよい車両10の開閉体拘束装置を実現することができる。
【0035】
図3(a),(b)は本発明に係る車両の開閉体拘束装置の拘束手段の原理図である。
(a)において、係合ピン41に形成された複数の係合斜面49に、巻回形状記憶合金コイル43が巻き付いた状態にあることが示される。
【0036】
(b)において、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を増加させると、巻回形状記憶合金コイル43が加熱され、縮径して係合ピン41を締め付け、白抜き矢印A1の如く係合ピン41が移動される。この結果、(a)に示される係合ピン41の位置が、寸法S1だけ白抜き矢印A1方向に寄せられる。
【0037】
巻回形状記憶合金コイル43は、電力供給を行うと瞬時に変形する。すなわち、車両の開閉体拘束装置30では、巻回形状記憶合金コイル43及び係合ピン41を用いたので、十分な開閉体14の保持力と素早い応答性とを実現することができる。
【0038】
図4(a),(b)は本発明に係る車両の開閉体拘束装置の開始時を示す作用説明図である。
(a)において、図1に示される車体11側の開口部13から開閉体14が開放された状態が示される。
(b)において、車体11側の開口部13に開閉体14が矢印b1の如く閉じられる。この状態では、ロック部16(図1参照)はロック状態にあって弾性体17を介して車体11に開閉体14が所定圧で押圧されている。
【0039】
周方向突部48は、係合ピン41の円筒面41aから略三角形状に突出する雄ねじ形状を呈する。係合ピン41が巻回形状記憶合金コイル43に挿入されるときに、略三角形状に突出する雄ねじ形状が案内機能をなし、係合ピン41の巻回形状記憶合金コイル43への挿通若しくは離脱を容易に行わせることができる。
【0040】
図5(a),(b)は本発明に係る車両の開閉体拘束装置の終了時を示す作用説明図である。
(a)において、通電装置51のスイッチ45を閉じ、電力調整回路46で巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を増加させ、係合ピン41の係合斜面49に巻回形状記憶合金コイル43を密着させる。なお、この状態では、係合ピン41の係合斜面49に巻回形状記憶合金コイル43を密着させるだけなので、係合ピン41(開閉体14)の移動はない。
【0041】
(b)において、通電装置51の電力調整回路46で巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力をさらに増加させ、巻回形状記憶合金コイル43を縮径し、図1に示される車体11側(開口部13)に係合ピン41(開閉体14)を矢印b2の如く寄せ、開口部13に対する開閉体14の拘束力を瞬時に強めることができる。
【0042】
図6は本発明に係る車両の開閉体拘束装置のフロー図である。なお、ST××はステップ番号を示す(符号は図1及び図2参照)。
ST01:拘束力制御手段34で、第1の加速度検知手段32で車体11側(開口部13)の加速度を検知したかどうか判断する。YESならばST02に進み、NOならばST01を繰り返す。
【0043】
ST02:拘束力制御手段34で、第2の加速度検知手段33で開閉体14の加速度を検知したかどうか判断する。YESならばST03に進み、NOならばST02を繰り返す。
ST03:拘束力制御手段34で、開口部13の加速度は開閉体14の加速度より低いかどうか判断する。YESの場合はST04に進み、NOの場合はST05に進む。
【0044】
車両の開閉体拘束装置30では、車体11側の開口部13に開閉自在に取付けられる開閉体14を拘束する拘束手段31と、この拘束手段31の拘束力を制御する拘束力制御手段34と、開口部13の加速度を検知する第1の加速度検知手段32と、開閉体14の加速度を検知する第2の加速度検知手段33とを有することで、開口部13(車体11)と開閉体(車両用ドア)14との加速度の違いを検知して拘束力を調整することができる。例えば、路面状況に応じた開閉体14の拘束力の調整や、風の強さに応じた開閉体14の拘束力の調整が可能となり、車両10の所定の状況下適正な拘束力を与えることができる。この結果、車体剛性の向上と乗り心地の向上の両立を図ることができる。
【0045】
ST04:拘束力制御手段34から通電装置51に開閉体14の拘束力を増加する指示を出す。具体的には、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を増加させ、開口部13に対する開閉体14の拘束力を強める。
【0046】
車両の開閉体拘束装置30では、第1の加速度検知手段32により検知される開口部13の加速度よりも、第2の加速度検知手段33により検知される開閉体14の加速度が低いときに、拘束力制御手段34は、拘束手段31の拘束力を増加させる。すなわち、開口部13よりも開閉体14の加速度が低いときは、拘束力が低い状態にあり、車体剛性の向上に寄与しない。従って、拘束力制御手段34により拘束力を増加させることで、拘束力を適正値に保つことができる。
【0047】
ST05:拘束力制御手段34から通電装置51に開閉体14の拘束力を減少する指示を出す。具体的には、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を減少させ、開口部13に対する開閉体14の拘束力を弱める。
【0048】
車両の開閉体拘束装置30では、第1の加速度検知手段32により検知される開口部13の加速度よりも、第2の加速度検知手段33により検知される開閉体14の加速度が高いときに、拘束力制御手段34は、拘束手段31の拘束力を減少させる。すなわち、開口部13よりも開閉体14の加速度が高いときは、開閉体14に共振が発生しやすく、共振状態の開閉体の振動が開口部13(車体11側)へ過度に伝達され、乗り心地に悪影響を及ぼす。従って、拘束力制御手段34により拘束力を減少させることで、拘束力を適正値に保つことができる。
【0049】
図7は本発明に係る別実施例の車両の開閉体拘束装置のブロック図である。なお、車両の開閉体拘束装置30に使用した部品と同一部品は同一符号を用い、詳細な説明は省略する。
車両の開閉体拘束装置70は、開口部13と開閉体14との間に設けられ開口部13に開閉体14を拘束する拘束手段71と、第1の加速度検知手段32と、第2の加速度検知手段33と、拘束力制御手段34とから構成される。
【0050】
拘束手段71は、係合ピン41と、車体11側開口部13近傍に設けられ、係合ピン41が係合する係合凹部82と、巻回形状記憶合金コイル43と、係合凹部82の底82aに設けられ、係合ピン41を押し出すように付勢するリターンばね83と、電源44と、
スイッチ45と、電力調整回路46とからなる。
【0051】
車両の開閉体拘束装置70は、係合凹部82の底82aに設けられ、係合ピン41を押し出すように付勢するリターンばね83を備えたので、巻回形状記憶合金コイル43から係合ピン41の離脱がさらに容易となる。
【0052】
尚、本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、図1に示すように、開閉体14は一例として車両用ドアを示したが、これに限るものではなく、開閉体14はトランクリッド、ボンネット若しくはリヤゲートなどであってもよい。
【0053】
本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、図2に示すように、開閉体14に係合ピン41を取付け、車体11側に係合凹部42を形成したが、これに限るものではなく、車体側に係合ピンを取付け、開閉体に係合凹部を形成したものであってもよい。
【0054】
本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、図2若しくは図5に示すように、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を増加させたときに、巻回形状記憶合金コイル43は収縮し縮径され、巻回形状記憶合金コイル43へ供給する電力を減少させたときに、巻回形状記憶合金コイル43は膨張されて拡径されるようにしたが、これに限るものではなく、逆の特性に構成することも可能である。
【0055】
本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、図1に示すように、第1・第2の加速度検知手段32,33を用いたが、これに限るものではなく、さらに、複数個の加速度検知手段を用いることを妨げるものではない。
【0056】
本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、図1に示すように、1個の拘束手段(アクチュエータ)31を用いたが、これに限るものではなく、複数個の加速度検知手段を用いるものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係る車両の開閉体拘束装置は、セダンやワゴンなどの乗用車に採用するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明に係る車両の開閉体拘束装置を採用した車両の側面図である。
【図2】本発明に係る車両の開閉体拘束装置のブロック図である。
【図3】本発明に係る車両の開閉体拘束装置の拘束手段の原理図である。
【図4】本発明に係る車両の開閉体拘束装置の開始時を示す作用説明図である。
【図5】本発明に係る車両の開閉体拘束装置の終了時を示す作用説明図である。
【図6】本発明に係る車両の開閉体拘束装置のフロー図である。
【図7】本発明に係る別実施例の車両の開閉体拘束装置のブロック図である。
【符号の説明】
【0059】
10…車両、11…車体、13…開口部、14…開閉体、15…ヒンジ部、16…ロック部、30,70…車両の開閉体拘束装置、31…拘束手段、32,33…第1・第2の加速度検知手段、34…拘束力制御手段、41…係合ピン、41a…円筒面、42…係合凹部、43…巻回形状記憶合金コイル、48…周方向突部、51…通電装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側の開口部に開閉自在に取付けられる開閉体を拘束する拘束手段と、この拘束手段の拘束力を制御する拘束力制御手段と、前記開口部の加速度を検知する第1の加速度検知手段と、前記開閉体の加速度を検知する第2の加速度検知手段とを有し、
前記第1の加速度検知手段により検知された前記開口部の加速度と、前記第2の加速度検知手段により検知された前記開閉体の加速度とが異なるときに、
前記拘束手段の拘束力を前記拘束力制御手段で変化させることを特徴とする車両の開閉体拘束装置。
【請求項2】
前記第1の加速度検知手段により検知される前記開口部の加速度よりも、前記第2の加速度検知手段により検知される前記開閉体の加速度が低いときに、
前記拘束力制御手段は、前記拘束手段の拘束力を増加させることを特徴とする請求項1記載の車両の開閉体拘束装置。
【請求項3】
前記第1の加速度検知手段により検知される前記開口部の加速度よりも、前記第2の加速度検知手段により検知される前記開閉体の加速度が高いときに、
前記拘束力制御手段は、前記拘束手段の拘束力を減少させることを特徴とする請求項1記載の車両の開閉体拘束装置。
【請求項4】
前記第1・第2の加速度検知手段は、互いに近接する位置に設けられることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の車両の開閉体拘束装置。
【請求項5】
前記開口部に前記開閉体を開閉自在に取付けるヒンジ部と、前記開口部に前記開閉体を固定するロック部とから離間した位置に、前記第1・第2の加速度検知手段を配置したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の車両の開閉体拘束装置。
【請求項6】
前記拘束手段は、前記開口部又は前記開閉体のどちらか一方に設けられた係合ピンと、この係合ピンに設けた複数の周方向突部と、前記開口部又は前記開閉体のどちらか他方に設けられ前記係合ピンが係合する係合凹部と、この係合凹部に設けられ通電によって加熱することで膨張又は収縮変形可能な巻回形状記憶合金コイルと、この巻回形状記憶合金コイルに通電する通電装置とを有し、
前記係合ピンが前記係合凹部に係合し、前記通電装置により前記巻回形状記憶合金コイルが通電され膨張又は収縮することで前記開閉体を拘束することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の車両の開閉体拘束装置。
【請求項7】
前記周方向突部は、前記係合ピンの円筒面から略三角形状に突出する雄ねじ形状を呈することを特徴とする請求項6記載の車両の開閉体拘束装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−197489(P2009−197489A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−40550(P2008−40550)
【出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】