車両用アウターミラー装置
【課題】 車両用のアウターミラーを回動可能に支承しているシャフトの軸ズレを防止して、シャフトの軸ズレによる弊害を防止した車両用アウターミラー装置を提供する。
【解決手段】 アウターミラーを取り付ける頭部を有するシャフト30と、シャフト30を回動自在に保持しているケース24と、前記シャフト30に回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチFを介して回動力を前記シャフト30に伝達するクラッチギヤ31と、クラッチギヤ31に連動し且つケース24内に格納されている駆動機構29と、を備える車両用アウターミラー装置20であって、ケース24は一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記シャフト30の上部及び下部を回動自在に保持している。
【解決手段】 アウターミラーを取り付ける頭部を有するシャフト30と、シャフト30を回動自在に保持しているケース24と、前記シャフト30に回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチFを介して回動力を前記シャフト30に伝達するクラッチギヤ31と、クラッチギヤ31に連動し且つケース24内に格納されている駆動機構29と、を備える車両用アウターミラー装置20であって、ケース24は一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記シャフト30の上部及び下部を回動自在に保持している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のアウターミラーを車体に取り付けるケースに水平回動可能に支承するようにした車両用アウターミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロント側の両サイドには、後方を視認するためのアウターミラがそれぞれ設けられている。例えば、貨物車両においては、車体前部の両サイドにミラー用のケースを取り付け、このケースに上下に向けたシャフトを回動自在に取り付けると共に、このシャフトの頭部からステーを横方向に延設させ、このステーの外端部にミラーを設けたものが知られている。
【0003】
そして、ケース内に設けられた電動駆動機構によりシャフトを回動させてミラーを後方視認可能な使用位置と、ミラーを車体側に格納する格納位置とに回動させている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、上述のアウターミラー装置におけるシャフトを格納しているケースの概略を示しており、1はシャフト、2はケースを示している。ケース2は上側の本体ケース3と下側の蓋ケース4とを嵌合部5において嵌合して重ね合わせて構成されている。
【0005】
このケース2の本体ケース3及び蓋ケース4には軸受6,7がそれぞれ形成されていて、シャフト1の上下部1a,1bをそれぞれ回動自在に支持している。また、シャフト1の上部には、ケース2から延出している部分にフランジ状の頭部8が形成されている。この頭部8には図示しないミラーがステーを介して取り付けられているようになっている。
【0006】
さらに、シャフト1には駆動力を受けるためのウォームホィール(ヘリカルギヤ)9が取り付けられていて、このウォームホィール9は図示しない駆動機構により駆動されるようになっている。
【0007】
この駆動機構は図12(a)に示したウォーム10を有し、このウォーム10はウォームホィール9に対して図12(a)に示すように噛合している。このウォーム10が形成されている支軸11には、図示しない駆動部のウォームにより駆動されるウォームホィール12が取り付けられていて前記ウォーム10と一体になっている。
【0008】
図12(a)における上記支軸11の下側の端部11aは、図12(b)に示すように支持部13に形成された上方に開口しているU字状の軸受14により支持されている。上記支持部13は蓋ケース4に形成されており、また端部11aの上部側は本体ケース3に設けられている押さえ部15により押圧されている。
【0009】
また、図示しない駆動部の回転駆動により上記ウォーム10が回転してウォームホィール9を回転駆動すると、図12(b)に示すように支軸11の端部11aには矢印A方向及び矢印B方向への荷重がかかっている。
【特許文献1】実開平10−258683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ケースが上下に2分割されているアウターミラー装置においては、シャフト1の上下部1a,1b(図11参照)が別部材である本体ケース3及び蓋ケース4によりそれぞれ支持されているので、アウターミラー装置の使用途中において次のような不具合を生じる虞がある。
【0011】
すなわち、ミラーを支持しているフランジとシャフト1との間にはクラッチが通常設けられていて、使用中のミラーに不慮の外力が作用してミラーが回動させられたとき、この回動力がシャフト1には伝達されないようになっている。しかし、上記フランジからシャフト1に回動力が伝達されてシャフト1が振れると、本体ケース3及び蓋ケース4が別部材であるために、シャフト1に軸ズレを生じる問題があった。
【0012】
シャフト1に上記のような軸ズレが生じた場合には、シャフト1に設けられているウォームホィール9が適正な位置からズレることになって、ウォームホィール9を駆動するウォーム10(図12(a)参照)との適正な噛合が狂うことになる。すなわち、シャフト1に対する保持力の低下により駆動機構の作動性が低下する問題があった。
【0013】
また、図12(a)における支軸11の端部11aは、図12(b)の支持部13及び軸受14により、すなわち図11の本体ケース3及び蓋ケース4により挟み込む形で保持されているので、支軸11にラジアル荷重がかかったときに本体ケース3及び蓋ケース4のズレから支軸11の軸ズレが発生して、駆動機構の作動不具合を生じる問題があった。
【0014】
また、支軸11におけるシャフト1に作用する荷重の主な部分は本体ケース3によって受けているが、蓋ケース4にも荷重が加わっているために強度のある材料が必要であってコスト高となっていた。
【0015】
本発明は、車両用のアウターミラーを回動可能に支承しているシャフトの軸ズレを防止して、シャフトの軸ズレによる弊害を防止した車両用アウターミラー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、アウターミラーを取り付けるための頭部を有するシャフトと、該シャフトを回動自在に保持しているケースと、前記シャフトに回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチを介して回動力を前記シャフトに伝達するクラッチギヤと、該クラッチギヤに連動し且つ前記ケース内に格納されている駆動機構と、を備える車両用アウターミラー装置であって、前記ケースは一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記ケースの上壁及び下壁に前記シャフトの上部及び下部がそれぞれ回動自在に保持されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記駆動機構を保持する保持部材を有すると共に、該保持部材は前記ケース内に位置決め固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係わる発明によれば、ミラーを回動可能に保持するシャフトの上下部を単一部品からなるケースにより保持しているので、シャフトに外力が加わったときにシャフトの軸ズレを確実に防止することができる。すなわち、別部品のケースによりシャフトを保持するときに比べてシャフトの振れ強度を大きくすることができて、シャフトに外力が作用したときにおけるアウターミラー装置の作動性を確保することができる。
【0019】
また、請求項2に係わる発明によれば、駆動機構を保持部材により保持させ、且つ、この保持部材をケース内に位置決め固定可能にしたので、ケースに対して駆動機構を格納するときの組み付け作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は車両用アウターミラー装置20の全体を示している。車両(図示せず)の後方を視認するためのアウターミラー21はステー22の先端部に取り付けられており、このステー22にはさらに車両前側の下方を視認するための補助ミラー23が設けられている。
【0022】
シャフト30の頭部(フランジ)25は、図4、図5に示したようにケース24の上方に配設されている。前記ステー22の基部に固着されたフランジ26は前記頭部25のネジ穴27にネジ28により固定されており、上記シャフト30の回動によりアウターミラー21は後方視認可能な使用位置と車両側近傍の格納位置とに回動するようになっている。
【0023】
図2及び図3はケース24内に格納されている駆動機構29の機能部品の配置状態をそれぞれ示している。ケース24は、一側部に開口24aが形成された箱状の単一部品から形成されている。
【0024】
上述した頭部25はケース24内に立設されているシャフト30の上端に設けられていてケース24の上方に延出している。このシャフト30にはクラッチギヤ31が回動自在に嵌合されていて、後述するクラッチ機構を介してシャフト30に駆動力を伝達するようになっている。
【0025】
前記クラッチギヤ31の奥側には、図4に示したように支軸32と一体に設けられたウォーム33が配置されており、このウォーム33は上記クラッチギヤ31に噛合している。支軸32の一端(図中左端)にはヘリカルギヤからなるウォームホィール34が一体に設けられている。
【0026】
ウォームホィール34の近傍にはモータ35が配置されており、このモータ35は支持プレート36に固定されている。モータ35には取付板37を介してスイッチアッセンブリ38が設けられている。上記支持プレート36は、ネジ45及びこれを挿通する穴46により、後述する保持部材50(図7参照)に固定されるようになっている。
【0027】
上記スイッチアッセンブリ38は、例えば、前記モータ35の回転をON・OFFするスイッチや、モータの回転量すなわち図1のアウターミラー21の回動位置を検知するスイッチ等が収納されている。
【0028】
なお、支持プレート36の内側面(モータ35と反対側の面)には、図3に示したように1対の位置決め穴47が設けられ、支持プレート36の一側部には前記クラッチギヤ31との干渉を避けるための切欠36aが設けられている。
【0029】
モータ35の出力軸35aには、図6に示すように支軸40が同一軸線上に固定されている。この支軸40には、前記ウォームホィール34に噛合しているウォーム41が一体に形成されている。なお、ウォーム41はジョイント(図示せず)等を介してモータ35と同一軸線上に配置してもよい。
【0030】
上記のモータ35及びウォーム41により駆動機構29の第1の駆動部42が構成され、前記ウォーム33及びウォームホィール34により第1の駆動部42と直交して配置された第2の駆動部43が構成されている。
【0031】
次に、上記のシャフト30及び駆動機構29のケース24に対する取り付けの詳細を図4〜図7に基づいて説明する。図4はケース24に格納されている駆動機構29の平面図、図5は駆動機構29の正面図、図6は側面図をそれぞれ示している。図4及び図6において示す符号48は、ケース24の開口24aを閉塞するための蓋体48を示している。
【0032】
図4において、ケース24の奥側の端部壁24dには前述の保持部材50が複数のネジ49により取り付けられている。この保持部材50の詳細を図7に示す。
【0033】
図7において、保持部材50は壁板51の上下に連続して上板52及下板53が一体的に形成されている。また、壁板51の一側部(図中右側)からはアーム部54が連続して形成されており、さらにアーム部54の先端部から前側(上・下板52,53と同じ側)に向く軸支持部54aが一体的に形成されている。
【0034】
前記軸支持部54aの上・下板52,53側を向く面には支軸32(図4,図5参照)の先端部32aを支承するための軸受穴55が穿設され、反対側の面には軸支持部54aをケース24に取り付けるためのネジ穴56が穿設されている。なお、上記支軸32の先端部32aは半球形に形成されていると共に、前記軸受穴55の奥側もこの先端部32aのラジアル荷重を受けるように半球形に形成されている。
【0035】
前記下板53の上面53aには、軸受部材58がネジ59により取り付けられ、この軸受部材58には、支軸32のウォームホィール34側の端部32bを支持するための軸受穴57が設けられている。
【0036】
また、上・下板52,53の端面52a,53bには、図3及び図5に示す支持プレート36を取り付けるためのネジ穴60がそれぞれ形成されていると共に、支持プレート36の位置決め穴47(図3参照)に嵌合させて支持プレート36を位置決めするための位置決めピン61が立設されている。
【0037】
さらに、上板52の上面には上板52をケース24に取り付けるためのネジ穴62が穿設され、下板53の下面にも同様のネジ穴(図示せず)が設けられている。
【0038】
図5において、ケース24の上壁24bの内側には軸受63が一体的に形成されており、この軸受63はシャフト30の上部を回動自在に支持している。また、ケース24の下壁24cの内側には軸受66が一体的に形成されており、この軸受66はシャフト30の下部を回動自在に支持している。
【0039】
また、軸受66の近傍位置において、ケース24には後述する治具を挿通するための1対の穴67が穿設されている。
【0040】
前記シャフト30の周面には、図5に示したように軸受63の下部近傍に位置させて溝69(図9参照)が形成されており、この溝69にはEリング70が装着されている。また、シャフト30の下部にはクラッチギヤ31を支持するためのピン72が挿通して設けられている。
【0041】
前記クラッチギヤ31の上面とEリング70との間には、皿バネ71がシャフト30に嵌合されて設けられており、この皿バネ71の弾性力によりクラッチギヤ31の下面はピン72に押圧されている。
【0042】
なお、クラッチギヤ31の下面はピン72に係合するような図示しない凹凸が放射状に設けられていて、クラッチギヤ31とピン72とは摩擦係合するようになっている。すなわち、クラッチギヤ31が後述するようにしてウォーム33により回動されると、このクラッチギヤ31の回動力が摩擦力によりピン72に伝達され、さらにピン72を介してシャフト30に伝達されるようになっている。
【0043】
前記クラッチギヤ31の下面31aとピン72及び皿バネ71等により摩擦クラッチF(図5参照)が構成されている。
【0044】
なお、図1に示すアウターミラー21に不慮の外力が作用してシャフト30が外力により回動されたときには、クラッチギヤ31の下面とピン72との間でスリップして、シャフト30の回動力は駆動機構29のクラッチギヤ31には伝達されないようになっている。
【0045】
図5において、ウォームホィール34から図中左方に延びている支軸32の端部32bは軸受部材58の軸受穴57(図7参照)に嵌合されている。ウォームホィール34と軸受部材58との間にはブッシュ73が介在され、このブッシュ73と協働して軸受部材58を挟むようにして支軸32の端部32bにはEリング74が係合されている。
【0046】
また、保持部材50の上下部はネジ75によりケース24の上壁24b,下壁24cに固定されており、保持部材50の軸支持部54aはネジ76によりケース24の側板24eに固定されている。
【0047】
図6に示すように、ウォーム41の支軸40は保持部材50の壁板51に穿設された軸受穴78に嵌合していると共に、この軸受穴78に挿入して配設されているボール79に端面が当接してラジアル荷重を受けるようになっている。
【0048】
図6に示すウォーム41の回転によりこれに噛合しているウォームホィール34が駆動されるが、このときのウォーム41すなわち支軸40に作用する力の関係を図8に示す。図8において、ウォーム41の回転によりウォームホィール34が駆動されるようになると、ウォーム41には矢印A方向及び矢印B方向への荷重がかかる。
【0049】
ウォーム41と一体の支軸40を受ける軸受穴78は、図6に示したように同一部品である保持部材50の壁板51により囲まれて形成されているので、図12に示す従来の軸受14で生じていたような軸ズレを防止して、ウォーム41を確実に保持することができる。
【0050】
このように構成された車両用アウターミラー装置20の駆動機構29において、図4〜図6に示すモータ35を回転させてウォーム41を駆動させると、図6に示すウォームホィール34及びこれと一体のウォーム33が時計方向に回転してクラッチギヤ31を駆動する。
【0051】
クラッチギヤ31が図4において時計方向に駆動されると、シャフト30の頭部25及びこれに固定されているフランジ26(図1参照)が時計方向に回動してアウターミラー21は格納位置から作動位置へ回動される。
【0052】
また、アウターミラー21が作動位置にあるときにモータ35を逆転させると、上記動作と逆の動作をしてシャフト30及びアウターミラー21を保持するフランジ26が反時計方向に回動してアウターミラー21は作動位置から格納位置に回転駆動される。
【0053】
図1に示すアウターミラー21が作動位置にあるとき、不慮の外力がアウターミラー21に入力してアウターミラー21が作動位置から格納位置に強制的に回動されると、図5に示すクラッチギヤ31の下部及びピン72により構成されている摩擦クラッチがスリップして、シャフト30の回動力が駆動機構29に伝達する現象及びこれによる駆動機構29の破損は防止されている。
【0054】
また、上記のようにアウターミラー21に外力が作用することにより、図5のシャフト30には軸ズレをする向きの力を受けるが、シャフト30は前述のように同一の単一部品であるケース24に形成されているので、シャフト30の軸ズレ及びこれによる弊害(例えば、クラッチギヤ31とウォーム33との噛合の狂い)は防止されている。
【0055】
このように、シャフト30を同一の単一部品であるケース24により保持することによりシャフト30の軸ズレは確実に防止することができるが、逆にケース24が単一部品であることから、ケース24に対する駆動機構29の組み付けを正確且つ容易に行うことができるようにする必要がある。
【0056】
以下、ケース24に対する駆動機構29の組み付け工程を図9及び図10により説明する。なお、図9中の63aは軸受63に穿設されたシャフト30を挿通するための嵌合部である。
【0057】
図9において、駆動機構29の第2の駆動部43は図4及び図5で示したように保持部材50に予め組み付けられている。この保持部材50に対する第2の駆動部43の組み付けはケース24の外部で行えるので、この組み付け作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、保持部材50には、第1の駆動部42(図4参照)を保持している支持プレート36が組み付けられる。この保持部材50に対する第1の駆動部42の組み付けもケース24の外部で行われるので、この組み付け作業を容易に行うことができる。
【0059】
このように、駆動機構29の第1の駆動部42及び第2の駆動部43を、保持部材50に予め組み付けてユニット化することにより、ケース24に対する駆動機構29の組み付けは、ケース24に対して保持部材50を予め組み付けることで正確且つ容易に行うことができる。
【0060】
図9に示すように、保持部材50をケース24内に組み付けた後に、シャフト30がケース24に設けられている軸受63の嵌合部63aに挿入される。このシャフト30が嵌合部63aに挿入されるときに、シャフト30に対する皿バネ71及びクラッチギヤ31の挿入及びシャフト30の溝69に対するEリング70(図5参照)の装着がそれぞれ行われる。
【0061】
なお、モータ35を支持している支持プレート36は、上記の組み付け工程において予め支持プレート36を保持部材50に組み付けた例を説明したが、ケース24に対してシャフト30及び皿バネ71,クラッチギヤ31を組み付けた後に、支持プレート36を保持部材50に組み付けることも可能である。
【0062】
図9に示すシャフト30に対するクラッチギヤ31の取り付け時には、クラッチギヤ31は予め配設されているウォーム33(図5参照)に噛合するようにして取り付けられる。
【0063】
このクラッチギヤ31をシャフト30に取り付けた後は、クラッチギヤ31の下方においてシャフト30のピン穴80にピン72が挿入されて、クラッチギヤ31はウォーム33と噛合する適正な位置に保持される。
【0064】
シャフト30に対するピン72の挿入前は、図5のブッシュ73の弾性力によりクラッチギヤ31の下面はシャフト30のピン穴80よりも下方に位置している。このため、ピン穴80に対してピン72を挿入するには、ピン72の挿入可能な位置にクラッチギヤ31を若干持ち上げる必要がある。
【0065】
図10はシャフト30に対するピン72の組み付けのための作用図を示している。図10において、治具81は上方に延びる1対の押し棒81a,81aを有している。ケース24の下壁24cには、前述したように1対の穴67が設けられているので、この穴67内に上記押し棒81a,81aを挿入してクラッチギヤ31の下面を押し上げることにより、シャフト30のピン穴80がクラッチギヤ31の下方に露出される。
【0066】
この状態でピン穴80にピン72を挿入した後、治具81のを引き出すとクラッチギヤ31は皿バネ71の弾性力によりピン72に圧接する。すなわち、前述したクラッチギヤ31の回転力は摩擦力によりピン72に伝達されてシャフト30が駆動されるようになる。
【0067】
このように、ケース24が同一の単一部品であってケース24の奥側に第2の駆動部43の配置は本来は難しいものであるが、第2の駆動部43を予め保持部材50に取り付けてユニット化したことにより、ケース24に対する第1の駆動部42及び第2の駆動部43の組み付け作業を正確且つ容易に行うことができる。
【0068】
そして、このように構成された車両用アウターミラー装置20のシャフト30の上下部は、前述したように同じ部品すなわち単一部品であるケース24の上壁24b及び下壁24cによりそれぞれ保持されているので、シャフト30を軸振れさせるような外力がシャフト30に作用しても、シャフト30の軸ズレ及びこれによる弊害を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の全体斜視図である。
【図2】ケース内に格納される駆動機構の配置状態を示す図である。
【図3】ケース内に格納される駆動機構の配置状態を示す図である。
【図4】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構を示す縦断平面図である。
【図5】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構の一部破断した正面図である。
【図6】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構の一部破断した側面図である。
【図7】保持部材の斜視図である。
【図8】ウォームホィールに噛合するウォームにかかる荷重の作用図である。
【図9】ケースに対する第2の駆動部、シャフト、皿バネ、クラッチギヤ、ピン等の組み付け状態を示す作用図である。
【図10】シャフトに対するピンの組み付け作用図である。
【図11】従来のケース及びこのケース内に格納されているシャフトの概略を示す縦断平面図である。
【図12】(a)はウォーム及び支軸の従来の軸受部の平面図、(b)は軸受部の側面図である。
【符号の説明】
【0070】
F 摩擦クラッチ
20 車両用アウターミラー装置
24 ケース
24a ケースの開口
26 ミラー取り付けフランジ
29 駆動機構
30 シャフト
31 クラッチギヤ
42 第1の駆動部
43 第2の駆動部
50 保持部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のアウターミラーを車体に取り付けるケースに水平回動可能に支承するようにした車両用アウターミラー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のフロント側の両サイドには、後方を視認するためのアウターミラがそれぞれ設けられている。例えば、貨物車両においては、車体前部の両サイドにミラー用のケースを取り付け、このケースに上下に向けたシャフトを回動自在に取り付けると共に、このシャフトの頭部からステーを横方向に延設させ、このステーの外端部にミラーを設けたものが知られている。
【0003】
そして、ケース内に設けられた電動駆動機構によりシャフトを回動させてミラーを後方視認可能な使用位置と、ミラーを車体側に格納する格納位置とに回動させている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
図11は、上述のアウターミラー装置におけるシャフトを格納しているケースの概略を示しており、1はシャフト、2はケースを示している。ケース2は上側の本体ケース3と下側の蓋ケース4とを嵌合部5において嵌合して重ね合わせて構成されている。
【0005】
このケース2の本体ケース3及び蓋ケース4には軸受6,7がそれぞれ形成されていて、シャフト1の上下部1a,1bをそれぞれ回動自在に支持している。また、シャフト1の上部には、ケース2から延出している部分にフランジ状の頭部8が形成されている。この頭部8には図示しないミラーがステーを介して取り付けられているようになっている。
【0006】
さらに、シャフト1には駆動力を受けるためのウォームホィール(ヘリカルギヤ)9が取り付けられていて、このウォームホィール9は図示しない駆動機構により駆動されるようになっている。
【0007】
この駆動機構は図12(a)に示したウォーム10を有し、このウォーム10はウォームホィール9に対して図12(a)に示すように噛合している。このウォーム10が形成されている支軸11には、図示しない駆動部のウォームにより駆動されるウォームホィール12が取り付けられていて前記ウォーム10と一体になっている。
【0008】
図12(a)における上記支軸11の下側の端部11aは、図12(b)に示すように支持部13に形成された上方に開口しているU字状の軸受14により支持されている。上記支持部13は蓋ケース4に形成されており、また端部11aの上部側は本体ケース3に設けられている押さえ部15により押圧されている。
【0009】
また、図示しない駆動部の回転駆動により上記ウォーム10が回転してウォームホィール9を回転駆動すると、図12(b)に示すように支軸11の端部11aには矢印A方向及び矢印B方向への荷重がかかっている。
【特許文献1】実開平10−258683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、ケースが上下に2分割されているアウターミラー装置においては、シャフト1の上下部1a,1b(図11参照)が別部材である本体ケース3及び蓋ケース4によりそれぞれ支持されているので、アウターミラー装置の使用途中において次のような不具合を生じる虞がある。
【0011】
すなわち、ミラーを支持しているフランジとシャフト1との間にはクラッチが通常設けられていて、使用中のミラーに不慮の外力が作用してミラーが回動させられたとき、この回動力がシャフト1には伝達されないようになっている。しかし、上記フランジからシャフト1に回動力が伝達されてシャフト1が振れると、本体ケース3及び蓋ケース4が別部材であるために、シャフト1に軸ズレを生じる問題があった。
【0012】
シャフト1に上記のような軸ズレが生じた場合には、シャフト1に設けられているウォームホィール9が適正な位置からズレることになって、ウォームホィール9を駆動するウォーム10(図12(a)参照)との適正な噛合が狂うことになる。すなわち、シャフト1に対する保持力の低下により駆動機構の作動性が低下する問題があった。
【0013】
また、図12(a)における支軸11の端部11aは、図12(b)の支持部13及び軸受14により、すなわち図11の本体ケース3及び蓋ケース4により挟み込む形で保持されているので、支軸11にラジアル荷重がかかったときに本体ケース3及び蓋ケース4のズレから支軸11の軸ズレが発生して、駆動機構の作動不具合を生じる問題があった。
【0014】
また、支軸11におけるシャフト1に作用する荷重の主な部分は本体ケース3によって受けているが、蓋ケース4にも荷重が加わっているために強度のある材料が必要であってコスト高となっていた。
【0015】
本発明は、車両用のアウターミラーを回動可能に支承しているシャフトの軸ズレを防止して、シャフトの軸ズレによる弊害を防止した車両用アウターミラー装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上述事情に鑑みなされたものであって、請求項1に記載の発明は、アウターミラーを取り付けるための頭部を有するシャフトと、該シャフトを回動自在に保持しているケースと、前記シャフトに回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチを介して回動力を前記シャフトに伝達するクラッチギヤと、該クラッチギヤに連動し且つ前記ケース内に格納されている駆動機構と、を備える車両用アウターミラー装置であって、前記ケースは一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記ケースの上壁及び下壁に前記シャフトの上部及び下部がそれぞれ回動自在に保持されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項2に記載の発明は、前記駆動機構を保持する保持部材を有すると共に、該保持部材は前記ケース内に位置決め固定されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係わる発明によれば、ミラーを回動可能に保持するシャフトの上下部を単一部品からなるケースにより保持しているので、シャフトに外力が加わったときにシャフトの軸ズレを確実に防止することができる。すなわち、別部品のケースによりシャフトを保持するときに比べてシャフトの振れ強度を大きくすることができて、シャフトに外力が作用したときにおけるアウターミラー装置の作動性を確保することができる。
【0019】
また、請求項2に係わる発明によれば、駆動機構を保持部材により保持させ、且つ、この保持部材をケース内に位置決め固定可能にしたので、ケースに対して駆動機構を格納するときの組み付け作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は車両用アウターミラー装置20の全体を示している。車両(図示せず)の後方を視認するためのアウターミラー21はステー22の先端部に取り付けられており、このステー22にはさらに車両前側の下方を視認するための補助ミラー23が設けられている。
【0022】
シャフト30の頭部(フランジ)25は、図4、図5に示したようにケース24の上方に配設されている。前記ステー22の基部に固着されたフランジ26は前記頭部25のネジ穴27にネジ28により固定されており、上記シャフト30の回動によりアウターミラー21は後方視認可能な使用位置と車両側近傍の格納位置とに回動するようになっている。
【0023】
図2及び図3はケース24内に格納されている駆動機構29の機能部品の配置状態をそれぞれ示している。ケース24は、一側部に開口24aが形成された箱状の単一部品から形成されている。
【0024】
上述した頭部25はケース24内に立設されているシャフト30の上端に設けられていてケース24の上方に延出している。このシャフト30にはクラッチギヤ31が回動自在に嵌合されていて、後述するクラッチ機構を介してシャフト30に駆動力を伝達するようになっている。
【0025】
前記クラッチギヤ31の奥側には、図4に示したように支軸32と一体に設けられたウォーム33が配置されており、このウォーム33は上記クラッチギヤ31に噛合している。支軸32の一端(図中左端)にはヘリカルギヤからなるウォームホィール34が一体に設けられている。
【0026】
ウォームホィール34の近傍にはモータ35が配置されており、このモータ35は支持プレート36に固定されている。モータ35には取付板37を介してスイッチアッセンブリ38が設けられている。上記支持プレート36は、ネジ45及びこれを挿通する穴46により、後述する保持部材50(図7参照)に固定されるようになっている。
【0027】
上記スイッチアッセンブリ38は、例えば、前記モータ35の回転をON・OFFするスイッチや、モータの回転量すなわち図1のアウターミラー21の回動位置を検知するスイッチ等が収納されている。
【0028】
なお、支持プレート36の内側面(モータ35と反対側の面)には、図3に示したように1対の位置決め穴47が設けられ、支持プレート36の一側部には前記クラッチギヤ31との干渉を避けるための切欠36aが設けられている。
【0029】
モータ35の出力軸35aには、図6に示すように支軸40が同一軸線上に固定されている。この支軸40には、前記ウォームホィール34に噛合しているウォーム41が一体に形成されている。なお、ウォーム41はジョイント(図示せず)等を介してモータ35と同一軸線上に配置してもよい。
【0030】
上記のモータ35及びウォーム41により駆動機構29の第1の駆動部42が構成され、前記ウォーム33及びウォームホィール34により第1の駆動部42と直交して配置された第2の駆動部43が構成されている。
【0031】
次に、上記のシャフト30及び駆動機構29のケース24に対する取り付けの詳細を図4〜図7に基づいて説明する。図4はケース24に格納されている駆動機構29の平面図、図5は駆動機構29の正面図、図6は側面図をそれぞれ示している。図4及び図6において示す符号48は、ケース24の開口24aを閉塞するための蓋体48を示している。
【0032】
図4において、ケース24の奥側の端部壁24dには前述の保持部材50が複数のネジ49により取り付けられている。この保持部材50の詳細を図7に示す。
【0033】
図7において、保持部材50は壁板51の上下に連続して上板52及下板53が一体的に形成されている。また、壁板51の一側部(図中右側)からはアーム部54が連続して形成されており、さらにアーム部54の先端部から前側(上・下板52,53と同じ側)に向く軸支持部54aが一体的に形成されている。
【0034】
前記軸支持部54aの上・下板52,53側を向く面には支軸32(図4,図5参照)の先端部32aを支承するための軸受穴55が穿設され、反対側の面には軸支持部54aをケース24に取り付けるためのネジ穴56が穿設されている。なお、上記支軸32の先端部32aは半球形に形成されていると共に、前記軸受穴55の奥側もこの先端部32aのラジアル荷重を受けるように半球形に形成されている。
【0035】
前記下板53の上面53aには、軸受部材58がネジ59により取り付けられ、この軸受部材58には、支軸32のウォームホィール34側の端部32bを支持するための軸受穴57が設けられている。
【0036】
また、上・下板52,53の端面52a,53bには、図3及び図5に示す支持プレート36を取り付けるためのネジ穴60がそれぞれ形成されていると共に、支持プレート36の位置決め穴47(図3参照)に嵌合させて支持プレート36を位置決めするための位置決めピン61が立設されている。
【0037】
さらに、上板52の上面には上板52をケース24に取り付けるためのネジ穴62が穿設され、下板53の下面にも同様のネジ穴(図示せず)が設けられている。
【0038】
図5において、ケース24の上壁24bの内側には軸受63が一体的に形成されており、この軸受63はシャフト30の上部を回動自在に支持している。また、ケース24の下壁24cの内側には軸受66が一体的に形成されており、この軸受66はシャフト30の下部を回動自在に支持している。
【0039】
また、軸受66の近傍位置において、ケース24には後述する治具を挿通するための1対の穴67が穿設されている。
【0040】
前記シャフト30の周面には、図5に示したように軸受63の下部近傍に位置させて溝69(図9参照)が形成されており、この溝69にはEリング70が装着されている。また、シャフト30の下部にはクラッチギヤ31を支持するためのピン72が挿通して設けられている。
【0041】
前記クラッチギヤ31の上面とEリング70との間には、皿バネ71がシャフト30に嵌合されて設けられており、この皿バネ71の弾性力によりクラッチギヤ31の下面はピン72に押圧されている。
【0042】
なお、クラッチギヤ31の下面はピン72に係合するような図示しない凹凸が放射状に設けられていて、クラッチギヤ31とピン72とは摩擦係合するようになっている。すなわち、クラッチギヤ31が後述するようにしてウォーム33により回動されると、このクラッチギヤ31の回動力が摩擦力によりピン72に伝達され、さらにピン72を介してシャフト30に伝達されるようになっている。
【0043】
前記クラッチギヤ31の下面31aとピン72及び皿バネ71等により摩擦クラッチF(図5参照)が構成されている。
【0044】
なお、図1に示すアウターミラー21に不慮の外力が作用してシャフト30が外力により回動されたときには、クラッチギヤ31の下面とピン72との間でスリップして、シャフト30の回動力は駆動機構29のクラッチギヤ31には伝達されないようになっている。
【0045】
図5において、ウォームホィール34から図中左方に延びている支軸32の端部32bは軸受部材58の軸受穴57(図7参照)に嵌合されている。ウォームホィール34と軸受部材58との間にはブッシュ73が介在され、このブッシュ73と協働して軸受部材58を挟むようにして支軸32の端部32bにはEリング74が係合されている。
【0046】
また、保持部材50の上下部はネジ75によりケース24の上壁24b,下壁24cに固定されており、保持部材50の軸支持部54aはネジ76によりケース24の側板24eに固定されている。
【0047】
図6に示すように、ウォーム41の支軸40は保持部材50の壁板51に穿設された軸受穴78に嵌合していると共に、この軸受穴78に挿入して配設されているボール79に端面が当接してラジアル荷重を受けるようになっている。
【0048】
図6に示すウォーム41の回転によりこれに噛合しているウォームホィール34が駆動されるが、このときのウォーム41すなわち支軸40に作用する力の関係を図8に示す。図8において、ウォーム41の回転によりウォームホィール34が駆動されるようになると、ウォーム41には矢印A方向及び矢印B方向への荷重がかかる。
【0049】
ウォーム41と一体の支軸40を受ける軸受穴78は、図6に示したように同一部品である保持部材50の壁板51により囲まれて形成されているので、図12に示す従来の軸受14で生じていたような軸ズレを防止して、ウォーム41を確実に保持することができる。
【0050】
このように構成された車両用アウターミラー装置20の駆動機構29において、図4〜図6に示すモータ35を回転させてウォーム41を駆動させると、図6に示すウォームホィール34及びこれと一体のウォーム33が時計方向に回転してクラッチギヤ31を駆動する。
【0051】
クラッチギヤ31が図4において時計方向に駆動されると、シャフト30の頭部25及びこれに固定されているフランジ26(図1参照)が時計方向に回動してアウターミラー21は格納位置から作動位置へ回動される。
【0052】
また、アウターミラー21が作動位置にあるときにモータ35を逆転させると、上記動作と逆の動作をしてシャフト30及びアウターミラー21を保持するフランジ26が反時計方向に回動してアウターミラー21は作動位置から格納位置に回転駆動される。
【0053】
図1に示すアウターミラー21が作動位置にあるとき、不慮の外力がアウターミラー21に入力してアウターミラー21が作動位置から格納位置に強制的に回動されると、図5に示すクラッチギヤ31の下部及びピン72により構成されている摩擦クラッチがスリップして、シャフト30の回動力が駆動機構29に伝達する現象及びこれによる駆動機構29の破損は防止されている。
【0054】
また、上記のようにアウターミラー21に外力が作用することにより、図5のシャフト30には軸ズレをする向きの力を受けるが、シャフト30は前述のように同一の単一部品であるケース24に形成されているので、シャフト30の軸ズレ及びこれによる弊害(例えば、クラッチギヤ31とウォーム33との噛合の狂い)は防止されている。
【0055】
このように、シャフト30を同一の単一部品であるケース24により保持することによりシャフト30の軸ズレは確実に防止することができるが、逆にケース24が単一部品であることから、ケース24に対する駆動機構29の組み付けを正確且つ容易に行うことができるようにする必要がある。
【0056】
以下、ケース24に対する駆動機構29の組み付け工程を図9及び図10により説明する。なお、図9中の63aは軸受63に穿設されたシャフト30を挿通するための嵌合部である。
【0057】
図9において、駆動機構29の第2の駆動部43は図4及び図5で示したように保持部材50に予め組み付けられている。この保持部材50に対する第2の駆動部43の組み付けはケース24の外部で行えるので、この組み付け作業を容易に行うことができる。
【0058】
また、保持部材50には、第1の駆動部42(図4参照)を保持している支持プレート36が組み付けられる。この保持部材50に対する第1の駆動部42の組み付けもケース24の外部で行われるので、この組み付け作業を容易に行うことができる。
【0059】
このように、駆動機構29の第1の駆動部42及び第2の駆動部43を、保持部材50に予め組み付けてユニット化することにより、ケース24に対する駆動機構29の組み付けは、ケース24に対して保持部材50を予め組み付けることで正確且つ容易に行うことができる。
【0060】
図9に示すように、保持部材50をケース24内に組み付けた後に、シャフト30がケース24に設けられている軸受63の嵌合部63aに挿入される。このシャフト30が嵌合部63aに挿入されるときに、シャフト30に対する皿バネ71及びクラッチギヤ31の挿入及びシャフト30の溝69に対するEリング70(図5参照)の装着がそれぞれ行われる。
【0061】
なお、モータ35を支持している支持プレート36は、上記の組み付け工程において予め支持プレート36を保持部材50に組み付けた例を説明したが、ケース24に対してシャフト30及び皿バネ71,クラッチギヤ31を組み付けた後に、支持プレート36を保持部材50に組み付けることも可能である。
【0062】
図9に示すシャフト30に対するクラッチギヤ31の取り付け時には、クラッチギヤ31は予め配設されているウォーム33(図5参照)に噛合するようにして取り付けられる。
【0063】
このクラッチギヤ31をシャフト30に取り付けた後は、クラッチギヤ31の下方においてシャフト30のピン穴80にピン72が挿入されて、クラッチギヤ31はウォーム33と噛合する適正な位置に保持される。
【0064】
シャフト30に対するピン72の挿入前は、図5のブッシュ73の弾性力によりクラッチギヤ31の下面はシャフト30のピン穴80よりも下方に位置している。このため、ピン穴80に対してピン72を挿入するには、ピン72の挿入可能な位置にクラッチギヤ31を若干持ち上げる必要がある。
【0065】
図10はシャフト30に対するピン72の組み付けのための作用図を示している。図10において、治具81は上方に延びる1対の押し棒81a,81aを有している。ケース24の下壁24cには、前述したように1対の穴67が設けられているので、この穴67内に上記押し棒81a,81aを挿入してクラッチギヤ31の下面を押し上げることにより、シャフト30のピン穴80がクラッチギヤ31の下方に露出される。
【0066】
この状態でピン穴80にピン72を挿入した後、治具81のを引き出すとクラッチギヤ31は皿バネ71の弾性力によりピン72に圧接する。すなわち、前述したクラッチギヤ31の回転力は摩擦力によりピン72に伝達されてシャフト30が駆動されるようになる。
【0067】
このように、ケース24が同一の単一部品であってケース24の奥側に第2の駆動部43の配置は本来は難しいものであるが、第2の駆動部43を予め保持部材50に取り付けてユニット化したことにより、ケース24に対する第1の駆動部42及び第2の駆動部43の組み付け作業を正確且つ容易に行うことができる。
【0068】
そして、このように構成された車両用アウターミラー装置20のシャフト30の上下部は、前述したように同じ部品すなわち単一部品であるケース24の上壁24b及び下壁24cによりそれぞれ保持されているので、シャフト30を軸振れさせるような外力がシャフト30に作用しても、シャフト30の軸ズレ及びこれによる弊害を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の全体斜視図である。
【図2】ケース内に格納される駆動機構の配置状態を示す図である。
【図3】ケース内に格納される駆動機構の配置状態を示す図である。
【図4】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構を示す縦断平面図である。
【図5】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構の一部破断した正面図である。
【図6】ケース内に配置されたシャフト及び駆動機構の一部破断した側面図である。
【図7】保持部材の斜視図である。
【図8】ウォームホィールに噛合するウォームにかかる荷重の作用図である。
【図9】ケースに対する第2の駆動部、シャフト、皿バネ、クラッチギヤ、ピン等の組み付け状態を示す作用図である。
【図10】シャフトに対するピンの組み付け作用図である。
【図11】従来のケース及びこのケース内に格納されているシャフトの概略を示す縦断平面図である。
【図12】(a)はウォーム及び支軸の従来の軸受部の平面図、(b)は軸受部の側面図である。
【符号の説明】
【0070】
F 摩擦クラッチ
20 車両用アウターミラー装置
24 ケース
24a ケースの開口
26 ミラー取り付けフランジ
29 駆動機構
30 シャフト
31 クラッチギヤ
42 第1の駆動部
43 第2の駆動部
50 保持部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウターミラーを取り付けるための頭部を有するシャフトと、
該シャフトを回動自在に保持しているケースと、
前記シャフトに回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチを介して回動力を前記シャフトに伝達するクラッチギヤと、
該クラッチギヤに連動し且つ前記ケース内に格納されている駆動機構と、を備える車両用アウターミラー装置であって、
前記ケースは一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記ケースの上壁及び下壁に前記シャフトの上部及び下部がそれぞれ回動自在に保持されていることを特徴とする車両用アウターミラー装置。
【請求項2】
前記駆動機構を保持する保持部材を有すると共に、該保持部材は前記ケース内に位置決め固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用アウターミラー装置。
【請求項1】
アウターミラーを取り付けるための頭部を有するシャフトと、
該シャフトを回動自在に保持しているケースと、
前記シャフトに回動自在に設けられ、且つ、摩擦クラッチを介して回動力を前記シャフトに伝達するクラッチギヤと、
該クラッチギヤに連動し且つ前記ケース内に格納されている駆動機構と、を備える車両用アウターミラー装置であって、
前記ケースは一側部が開口している箱状の単一部品から形成されていると共に、前記ケースの上壁及び下壁に前記シャフトの上部及び下部がそれぞれ回動自在に保持されていることを特徴とする車両用アウターミラー装置。
【請求項2】
前記駆動機構を保持する保持部材を有すると共に、該保持部材は前記ケース内に位置決め固定されていることを特徴とする請求項1に記載の車両用アウターミラー装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−103415(P2006−103415A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−290150(P2004−290150)
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月1日(2004.10.1)
【出願人】(000000136)市光工業株式会社 (774)
【Fターム(参考)】
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