説明

車両用シート

【課題】車両のフロアに取り付けられた状態の車両用シートのバックフレームの応力を、フロアから取り外すことなく低減させる。
【解決手段】車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結される1対のサイドフレーム50と、それら1対のサイドフレームに架け渡され、それら1対のサイドフレームを繋ぐアッパフレーム52とを有するバックフレーム18を備えた車両用シートにおいて、調整機構60によって、1対のサイドフレームの少なくとも一方とアッパフレームとを固定的に連結するとともに、1対のサイドフレームの少なくとも一方とアッパフレームとの前後方向における相対的な位置を調整可能に構成する。このように構成することで、車両用シートをフロアに取り付けた状態において、サイドフレームとアッパフレームとの前後方向での相対的な位置を調整することが可能となり、バックフレームに生じている応力を低減させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シート、詳しくは、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結されるバックフレームを有する車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、シートバックの骨格をなすバックフレームの下端部において、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結されている。バックフレームのフロアへの連結には、バックフレームがフロアに直接連結される構造と、下記特許文献に記載されているように、シートクッションの骨格をなすクッションフレーム等を介してフロアに連結される構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−259619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バックフレームのフロアへの連結構造が上述したいずれの構造であっても、車両フロアの製造バラつきによってシートとの取り付け位置が正寸ではないときには、車両用シートをフロアに取り付ける際に、バックフレームが歪み、バックフレームに応力が生じる虞がある。このような応力は、当然好ましくなく、バックフレームの傾斜角度の調整に影響を及ぼす虞がある。具体的にいえば、バックフレームの傾斜角度の調整は、リクライニング装置によって行われる。リクライニング装置は、2つの歯車、多くの場合は、内歯車と外歯車との噛合により行われるが、バックフレームに応力が生じていると、それら2つの歯車を噛み合わせにくい場合があった。
【0005】
本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、車両のフロアに取り付けられた状態の車両用シートのバックフレームの応力を低減可能な車両用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本願の請求項1に記載の車両用シートは、(a)左右方向に並んで配設されるとともに、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結される1対のサイドフレームと、(b)それら1対のサイドフレームに架け渡され、それら1対のサイドフレームを繋ぐアッパフレームとを有し、シートバックの骨格をなすバックフレームと、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを固定的に連結するとともに、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとの前後方向における相対的な位置を調整する調整機構とを備えることを特徴とする。
【0007】
また、請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記調整機構が、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを前後方向に貫通した状態で、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に、軸心回りに回転可能かつ軸心方向へ移動不能に保持されるボルトと、そのボルトに螺合するとともに、前記アッパフレームに固定されるナットとを有することを特徴とする。
【0008】
また、請求項3に記載の車両用シートは、請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記ボルトの頭部が自身の内部に位置するように前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に固定された筒部と、その筒部の一方の開口を覆う蓋部と、前記筒部と前記蓋部とを接続するヒンジ部とを有し、前記筒部に対して前記蓋部が開閉可能とされた開閉部材を備え、前記蓋部が開いた状態で前記ボルトの頭部が当該車両用シートの外部から視認可能とされたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の車両用シートでは、バックフレームを構成するサイドフレームとアッパフレームとの前後方向での相対的な位置を調整することが可能となっている。これにより、車両用シートをフロアに取り付けた状態において、バックフレームに生じている応力を低減させることが可能となる。
【0010】
請求項2に記載の車両用シートでは、ボルトとナットとから構成される調整機構によって、サイドフレームとアッパフレームとの相対的な位置を調整している。これにより、比較的シンプルな構造の機構によって、サイドフレームとアッパフレームとの相対的な位置を調整することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の車両用シートには、車両用シートの外部からボルトの頭部を視認可能な開閉部材が設けられている。バックフレームは、通常、バックフレームの少なくとも乗員が着座する側に配設されるバックパッド、バックパッドの背面側に取り付けられるバックボード等によって囲まれており、車両用シートの外部から視認することができなくなっている。バックフレームを視認することができなければ、当然、バックフレームに取り付けられるボルトの頭部も視認することができず、ボルト頭部を視認し調整するためには、バックボード等を取り外す必要がある。請求項3に記載の車両用シートでは、開閉部材の蓋部を開けることによって、車両用シートの外部からボルトの頭部を視認することが可能となっており、バックボード等を取り外すことなく、サイドフレームとアッパフレームとの相対的な位置を調整することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例である車両用シートを示す斜視図である。
【図2】図1に示す車両用シートの備えるバックフレームを示す斜視図である。
【図3】図2に示すAA線における断面図である。
【図4】図1に示すBB線における断面図である。
【図5】図4に示す開閉部材が開けられた状態の断面図である。
【図6】参考例の調整機構を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0014】
本発明の実施例の車両用シート10を斜め前方からの視点において示す。車両用シート10は、運転席であり、運転者の臀部を支持するシートクッション12と、運転者の背中を支持するシートバック14と、シートバック14のシートクッション12に対する傾斜角度を変更可能にそれらシートクッション12とシートバック14とを連結するリクライニング装置16とによって構成されている。
【0015】
リクライニング装置16は、車両用シート10の左右に1対設けられており、それら1対のリクライニング装置16は、図2に示すように、シートバック14の骨格をなすバックフレーム18の下端部と、シートクッション12の骨格をなすクッションフレーム(図では、クッションフレームの後端部を構成するロアアーム20のみ示されている)の後端部とを連結しており、各リクライニング装置16には、軸線回りに回転可能な操作軸22が挿通されている。操作軸22は、シートバック14のシートクッション12に対する傾斜角度のロックを解除するものであり、1対の操作軸22は、同軸的に設けられており、連結ロッド26によって一体的に連結されている。その連結ロッド26は、シートクッション12の側部に設けられた操作レバー28に連結されており、該操作レバー28の操作によって傾斜角度のロックを解除し、シートバックの傾斜角度を変更することが可能となっている。
【0016】
1対のリクライニング装置16は、互いに左右対称の構造であり、略同じ構造とされているため、1対のリクライニング装置16の一方、詳しくは、図1及び図2での右側に示されているリクライニング装置16について説明する。なお、リクライニング装置16は、その構造が公知のものであることから、図2のAA線における断面図を用いて、以下に簡単に説明する。
【0017】
リクライニング装置16は、概して円盤形状のラチェット30と、そのラチェット30が相対回転可能に嵌入されるガイド32とを備えており、ラチェット30はロアアーム20に固定され、ガイド32はバックフレーム18の下端部に固定されている。これにより、ロアアーム20とバックフレーム18との相対角度、つまり、シートクッション12に対するシートバック14の傾斜角度を変更することが可能となっている。
【0018】
ガイド32のラチェット30側の面には、径方向に延びるようにして溝(図示省略)が形成されており、その溝に1対のポール34がスライド可能に嵌められている。それら1対のポール34の各々の径方向外側の面は、円弧状とされており、ガイド32に嵌入されているラチェット30の内周面と向かい合っている。そのラチェット30の内周面には、内歯36が形成されており、その内周面に向かい合う1対のポール34の各々の円弧状の面には外歯38が形成されている。そして、1対のポール34の各々が、径方向外側にスライドすることで、ラチェット30の内歯36と各ポール34の外歯38とが噛合し、ラチェット30とガイド32との相対回転が禁止される。つまり、シートバック14の傾斜角度の変更が禁止され、シートバック14がその傾斜角度においてロックされる。
【0019】
また、ガイド32の中央部には、操作軸22に連結されたカム機構40が設けられている。カム機構40は、操作軸22の操作、つまり、上記操作レバー28の操作により、各ポール34を径方向内側にスライドさせることが可能とされている。つまり、操作レバー28を操作することで、各ポール34が径方向内側にスライドし、ラチェット30の内歯36と各ポール34の外歯38との噛合が解除される。これにより、傾斜角度のロックが解除され、シートバック14の傾斜角度を変更することが可能となっている。なお、カム機構40には、附勢ばね42が取り付けられており、この附勢ばね42の弾性力によって、カム機構40は、各ポール34を径方向外側にスライドさせる方向に附勢されている。つまり、操作レバー28が操作されていない場合には、ラチェット30の内歯36と各ポール34の外歯38とが噛合し、シートバック14の傾斜角度は維持される。
【0020】
そのように傾斜角度を変更し、任意の角度で維持可能とされているシートバック14のバックフレーム14は、図2に示すように、1対のリクライニング装置16に連結される1対のサイドフレーム50と、それら1対のサイドフレーム50の上端部に架け渡される概してU字型のアッパフレーム52と、1対のサイドフレーム50の下部を連結する補強パネル54とを有している。
【0021】
1対のサイドフレーム50は、車両の左右方向に並んで配設されており、それぞれの両縁部が車両用シート10の内側に向かって屈曲されている。そして、その屈曲された両縁部によってアッパフレーム52の端部が挟まれている。詳しく言えば、各サイドフレーム50は、リクライニング装置16が連結される平板部56と、その平板部56の両縁に車両用シート10の内側に向かって立設される1対の立設部58とに区分けされ、それら平板部56及び1対の立設部58によって囲まれた状態で、パイプ状のアッパフレーム52の端部が配設されている。1対のサイドフレーム50の一方、詳しくは、図2での右側に示されているサイドフレーム50とアッパフレーム52とは、溶接によって固定されており、図2での左側に示されているサイドフレーム50とアッパフレーム52とは、調整機構60を介して連結されている。
【0022】
調整機構60は、図1のBB線における断面図である図4に示すように、サイドフレーム50とアッパフレーム52とを車両の前後方向に貫通するボルト62と、そのボルト62に螺合するナット64とから構成されている。サイドフレーム50の1対の立設部58には、同軸的に1対の貫通孔66が形成されており、アッパフレーム52には、それら1対の貫通孔66と同軸的に2つの貫通孔68が形成されている。そして、それら4つの貫通孔66,68をボルト62がクリアランスのある状態で貫通している。
【0023】
ボルト62は、雄ネジが形成された大径部70と、その大径部70から先端側に連続する小径部72とに区分けされ、立設部58に形成された貫通孔66から突出するボルト62の先端部が、小径部72となっている。その小径部72には、小径部72の外径より僅かに大きな内径のワッシャ74が嵌められており、そのワッシャ74が嵌められた状態の小径部72の先端がカシメられる。つまり、図4は、小径部72の先端がカシメられた後のボルト62が示されており、小径部72先端のカシメにより、ワッシャ74は小径部72から抜け止めされた状態となる。これにより、ボルト62は、それの頭部76とワッシャ74とによって、軸心方向への移動が禁止される。つまり、ボルト62は、軸心回りに回転可能、かつ、軸心方向へ移動不能にサイドフレーム50に保持される。
【0024】
一方、ナット64は、径方向に圧縮されたパイプ状のアッパフレーム52、つまり、断面形状が略楕円形状とされたアッパフレーム52の内部に挿入された状態でアッパフレーム52に固定されるとともに、ボルト58に螺合している。詳しく言えば、ナット64は、内周面に雌ネジが形成された円筒部78と、その円筒部78の一端から径方向外側に延び出すフランジ部80とに区分けされ、円筒部78がアッパフレーム52に形成された貫通孔68に挿入されている。フランジ部80の外縁の径は、貫通孔68の径より大きくされており、フランジ部80は、円筒部78が貫通孔68に挿入された状態で、アッパフレーム52の外周面と接触する。このフランジ部80とアッパフレーム52の外周面との接触箇所において溶接されており、ナット64がアッパフレーム52に固定されている。そして、そのアッパフレーム52に固定されたナット64の円筒部78に上記ボルト62の大径部70が螺合している。このような構造により、調整機構60は、サイドフレーム50とアッパフレーム52とを連結している。
【0025】
また、サイドフレーム50とアッパフレーム52とによって構成されるバックフレーム18は、バックパッド82の内部に収容されている。このため、バックフレーム18を車両用シート10の外部から視認することはできないが、サイドフレーム50とアッパフレーム52とを連結する調整機構60、特に、調整機構60を構成するボルト62の頭部76を、外部から視認するための開口を有する開閉部材86が、サイドフレーム50に取り付けられている。
【0026】
詳しく言えば、開閉部材86は、概して円筒状の円筒部88と、その円筒部88の一方の開口を塞ぐ蓋部90と、それら円筒部88と蓋部90とを接続するヒンジ部92とから構成されている。円筒部88と蓋部90とヒンジ部92とは、樹脂によって一体成形されており、ヒンジ部92はインテグラルヒンジとされている。円筒部88の蓋部90とは反対側の端部には、複数の爪部(図では、3つ示されている)96が形成されており、それら複数の爪部96が、サイドフレーム50に形成された複数の掛止部(図では、3つ示されている)98に引っ掛けられることで、開閉部材86はサイドフレーム50に取り付けられている。
【0027】
複数の爪部96が複数の掛止部98に引っ掛けられた状態の円筒部88の内部には、ボルト62の頭部76が位置しており、円筒部88の蓋部90の側の開口からボルト62の頭部76が視認可能とされている。また、バックパッド82には、車両用シート10の内部と外部とを連通する連通孔100が形成されており、その連通孔100に円筒部88が隙間なく嵌入されている。そして、円筒部88の一方の開口を塞ぐ蓋部90と、バックパッド82の表面とは概ね面一とされている。その蓋部90のヒンジ部92とは反対側の外周縁には、爪部102が形成されており、円筒部88に形成された掛止部104に掛止されるようになっている。これにより、蓋部90は、通常、閉じた状態とされている。
【0028】
その爪部102の掛止部104への掛止を解除し、蓋部90を開けることで、図5に示すように、車両用シート10の外部からボルト62の頭部76を視認することが可能となっている。そして、ボルト62をドライバ106によって回転させることで、サイドフレーム50とアッパフレーム52との相対的な位置を、ボルト62の軸心方向、つまり、車両の前後方向に調整することが可能となっている。なお、ボルト62は、ヘックスローブボルト、所謂、トルクス(登録商標)ボルトとされており、ドライバ106は、ヘックスローブドライバ、所謂、トルクス(登録商標)ドライバとされている。
【0029】
上述したように、本車両用シート10では、サイドフレーム50とアッパフレーム52との相対的な位置を、車両の前後方向に調整することが可能とされており、サイドフレーム50とアッパフレーム52とによって構成されるバックフレーム18に生じる応力を低減させることが可能となっている。バックフレーム18には、車両用シート10の車両のフロアへの取付時にバックフレーム18,クッションフレーム等が歪み、応力が生じることがある。これは、ワイヤハーネス等を配設するためにフロアに形成された溝、凹部等により、車両用シート10をフロアに取り付ける際に、車両用シート10に捩り方向の負荷がかかるためである。
【0030】
バックフレーム18に生じる応力は、車両用シート10の様々な箇所に悪影響を及ぼし、シートとしての機能を著しく損なう場合がある。具体的には、例えば、車両用シート10のフロアへの取り付け時には、リクライニング装置16のラチェット30の内歯36とポール34の外歯38とは噛合した状態の車両用シート10がフロアに取り付けられる。このため、取付直後のラチェット30の内歯36とポール34の外歯38とは、噛合している。しかし、バックフレーム18に応力が生じていると、操作レバー28が操作され、ラチェット30の内歯36とポール34の外歯38との噛合が解除されると、その応力によって、ラチェット30の内歯36とポール34の外歯38との相対位置が僅かにズレてしまって、操作レバー28の操作を解除しても、ラチェット30の内歯36とポール34の外歯38とが噛合しなくなる場合がある。
【0031】
このような場合に、従来は、フロアに取り付けられた車両用シート10を取り外し、再度、車両用シート10をフロアに取り付ける作業を行っており、非常に手間のかかる作業を行う必要があった。しかし、本車両用シート10では、上述したように、調整機構60によって、サイドフレーム50とアッパフレーム52との相対的な位置を車両の前後方向に調整することが可能となっている。このため、フロアに取り付けられた車両用シート10を取り外すことなく、バックフレーム18に生じている応力を低減させることが可能となり、ラチェット30の内歯36とポール34の外歯38とを噛合させることが可能となっている。
【0032】
また、本車両用シート10では、調整機構60をボルト62とナット64とによって構成しており、非常にシンプルな構造の機構によって、バックフレーム18に生じている応力を低減させることが可能となっている。そして、そのナット62の円筒部78をアッパフレーム52内に挿入させることで、コンパクトな調整機構60が実現されている。さらに、ボルト62にヘックスローブボルトを採用することで、ボルト62の頭部76を小さくすることが可能となり、よりコンパクトな調整機構60が実現されている。
【0033】
また、本車両用シート10では、外部から調整機構60のボルト62の頭部76を視認可能な開閉部材86を採用しており、開閉部材86の蓋部を開けるだけで、ドライバ106によってボルト62を操作することが可能となっている。さらに言えば、調整機構60は、1対のサイドフレーム50のうちの車両外側に位置するサイドフレーム50、つまり、ドアに近い側に位置するサイドフレーム50に設けられており、作業員等が、車両に乗り込むことなく、車両の外側から調整することが可能となる。特に、調整機構60によってバックフレーム18の応力を低減させるための作業は、車両製造時に行われることが多いと考えられ、作業員が、製造ラインにおいて、車両の外側から作業を行うことによって、生産性を上げることが可能となる。
【0034】
ちなみに、上記実施例において、車両用シート10は、車両用シートの一例であり、その車両用シート10を構成するバックフレーム18及び調整機構60は、バックフレーム及び調整機構の一例である。そのバックフレーム18を構成するサイドフレーム50及びアッパフレーム52は、サイドフレーム及びアッパフレームの一例であり、サイドフレーム50の平板部56及び立設部58は、平板部及び立設部の一例である。また、サイドフレーム50は、第1の部材の一例でもあり、サイドフレーム50の上端部が、第1連結部の一例となる。アッパフレーム52は、第2の部材の一例でもあり、アッパフレーム52の端部が、第2連結部の一例となる。さらに、調整機構60を構成するボルト62及びナット64は、ボルト及びナットの一例である。開閉部材86は、開閉部材の一例であり、開閉部材86の円筒部88、蓋部90及びヒンジ部92は、筒部、蓋部及びヒンジ部の一例である。
【0035】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することができる。具体的には、例えば、上記実施例では、調整機構60は、1対のサイドフレーム50のうちの一方にのみ、設けられていたが、1対のサイドフレーム50の両方に設けてもよい。つまり、1対のサイドフレーム50のうちの一方と、アッパフレーム52の一端部とを、調整機構60によって、連結し、1対のサイドフレーム50のうちの他方と、アッパフレーム52の他端部とを、調整機構60と同じ構造の調整機構によって、連結してもよい。これにより、調整量を多くすることが可能となる。
【0036】
また、上記実施例において、調整機構60は、バックフレーム18を構成するサイドフレーム50とアッパフレーム52とを連結し、バックフレーム18に生じている応力を低減させる構造とされていたが、車両用シートを構成する2つの部材を連結し、車両用シートに生じている応力を低減させる構造とされてもよい。具体的には、例えば、図6に示すように、車両用シートをフロアにスライド可能に取り付けるためのスライド機構110と、そのスライド機構110をフロア112上に支持するための支持具114とを、調整機構60によって連結してもよい。なお、ここでの車両用シートは、フロアに取り付けられるもの全体を意味しており、バックフレーム、クッションフレームだけでなく、スライド機構、支持具等も含めたものを意味している。
【0037】
スライド機構110は、車両の前後方向に延びるように配設されるロアレール116と、そのロアレール116に対してスライド可能にシートクッション(図示省略)に固定されるアッパレール118とから構成されており、ロアレール116の後方側の端部の下面には、断面形状がコの字型とされたブラケット120が固定されている。ブラケット120は、平板部122と、その平板部122の両縁から同じ方向に立設された1対の立設部124に区分けされ、1対の立設部124の一方が、ロアレール116の下面に固定されている。一方、支持具114は、一方の端部においてループ状に屈曲された支持部126と、他方の端部において支持部126と反対側に屈曲されたフロア固定部128とに区分けされ、フロア固定部128が、フロア112にボルト締結されている。
【0038】
ブラケット120の平板部122及び1対の立設部124に囲まれた状態で支持具114の支持部126が配設されており、1対の立設部124には、同軸的に1対の貫通孔130が、支持部126には、それら1対の貫通孔130と同軸的に2つの貫通孔132が形成されている。さらに、1対の立設部124の一方が固定されるロアレール116の下面にも、その立設部124の貫通孔130に繋がる貫通孔134が形成されている。そして、それら5つの貫通孔130,132,134を調整機構60のボルト62がクリアランスのある状態で貫通している。
【0039】
ボルト62の小径部72は、1対の立設部124の他方の貫通孔130から下方に向かって突出している。その小径部72には、ワッシャ74が嵌められており、そのワッシャ74が嵌められた状態の小径部72の先端がカシメられている。これにより、ボルト62は、それの頭部76とワッシャ74とによって、軸心方向への移動が禁止され、軸心回りに回転可能、かつ、軸心方向へ移動不能にブラケット120及びロアレール116の下面に保持される。
【0040】
一方、ナット64の円筒部78が、支持部126に形成された貫通孔132から支持部126の内部に挿入されており、ナット64のフランジ部80は、円筒部78が支持部126内に挿入された状態で、支持部126の外周面と接触する。このフランジ部80と支持部126の外周面との接触箇所において溶接されており、ナット64が支持具114に固定されている。そして、その支持具114に固定されたナット64の円筒部78にボルト62の大径部70が螺合している。このような構造により、調整機構60は、ロアレール116と支持具114とを連結している。
【0041】
この調整機構60においては、ボルト62をドライバ(図示省略)によって回転させることで、ロアレール116と支持具114の相対的な位置を、ボルト62の軸心方向、つまり、上下方向に調整することが可能となっている。これにより、車両用シート全体に生じる応力を低減させることが可能となり、応力に起因する問題、具体的には、ラチェット30の内歯36とポール34の外歯38とが噛合しなくなるといった問題を解消することが可能となる。
【0042】
ちなみに、上記参考例において、ロアレール116とブラケット120とによって構成されるものは、第1の部材の一例であり、ブラケット120は、第1連結部の一例である。そのブラケット120の平板部122及び立設部124は、平板部及び立設部の一例である。また、支持具114は、第2の部材の一例であり、支持部126は、第2連結部の一例である。
【0043】
以下、本発明の諸態様について列記する。
【0044】
(1)(a)左右方向に並んで配設されるとともに、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結される1対のサイドフレームと、(b)それら1対のサイドフレームに架け渡され、それら1対のサイドフレームを繋ぐアッパフレームとを有し、シートバックの骨格をなすバックフレームと、
前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを固定的に連結するとともに、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとの前後方向における相対的な位置を調整する調整機構と
を備えた車両用シート。
【0045】
(2)前記調整機構が、
前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを前後方向に貫通した状態で、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に、軸心回りに回転可能かつ軸心方向へ移動不能に保持されるボルトと、
そのボルトに螺合するとともに、前記アッパフレームに固定されるナットと
を有する(1)項に記載の車両用シート。
【0046】
(3)前記ナットが、
筒形状をなし、前記アッパフレームの内部に挿入された状態で前記アッパフレームに固定された(2)項に記載の車両用シート。
【0047】
(4)前記ボルトが、ヘックスローブボルトである(2)項または(3)項に記載の車両用シート。
【0048】
(5)当該車両用シートが、
前記ボルトの頭部が自身の内部に位置するように前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に固定された筒部と、その筒部の一方の開口を覆う蓋部と、前記筒部と前記蓋部とを接続するヒンジ部とを有し、前記筒部に対して前記蓋部が開閉可能とされた開閉部材を備え、
前記蓋部が開いた状態で前記ボルトの頭部が当該車両用シートの外部から視認可能とされた(2)項ないし(4)項のいずれか1つに記載の車両用シート。
【0049】
(6)前記ヒンジ部が、インテグラルヒンジである(5)項に記載の車両用シート。
【0050】
(7)前記1対のサイドフレームが、
それぞれ、リクライニング装置に連結される平板部と、その平板部の両縁から当該車両用シートの内部に向かって立設される1対の立設部とを有し、
前記アッパフレームが、
パイプ状をなし、前記平板部と前記1対の立設部とに囲まれた状態で配設された(1)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両用シート。
【0051】
(8)第1の部材と第2の部材とを固定的に連結するとともに、前記第1の部材と前記第2の部材との相対的な位置を調整する調整機構であって、
前記第1の部材が、
平板部と、その平板部の両縁から同じ方向に立設される1対の立設部とからなる第1連結部を有し、
前記第2の部材が、
前記平板部と前記1対の立設部とに囲まれた状態で配設される第2連結部を有し、
当該調整機構が、
前記第1連結部と前記第2連結部とを貫通した状態で、前記第1連結部に、軸心回りに回転可能かつ軸心方向へ移動不能に保持されるボルトと、
そのボルトに螺合するとともに、前記第2連結部に固定されるナットと
を備え、前記ボルトを軸心回りに回転させることで、前記第1の部材と前記第2の部材との前記ボルトの軸心方向における相対的な位置を調整する調整機構。
【0052】
(9)前記第1の部材が、
車両用シートを車両のフロアにスライド可能に固定するためのスライド機構を構成するロアレールであり、
前記第2の部材が、
前記フロアに立設され、前記ロアレールを前記フロア上に支持するための支持具である(8)項に記載の調整機構。
【0053】
(10)前記第1の部材が、
左右方向に並んで配設されるとともに、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結され、バックフレームを構成する1対のサイドフレームの一方であり、
前記第2の部材が、
前記1対のサイドフレームに架け渡され、それら1対のサイドフレームを繋ぐとともに、前記バックフレームを構成するアッパフレームである(8)項に記載の調整機構。
【0054】
(11)前記第1の部材と前記第2の部材とが、車両用シートを構成する2つの部材であり、
それら2つの部材の相対的な位置を調整することで、車両のフロアに取り付けられた状態の前記車両用シートに生じている応力を低減させる(8)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の調整機構。
【符号の説明】
【0055】
10:車両用シート
18:バックフレーム
50:サイドフレーム(第1の部材)(第1連結部)
52:アッパフレーム(第2の部材)(第2連結部)
56:平板部
58:立設部
60:調整機構
62:ボルト(ヘックスローブボルト)
64:ナット
86:開閉部材
88:円筒部(筒部)
90:蓋部
92:ヒンジ部(インテグラルヒンジ)
114:支持具(第2の部材)
116:ロアレール(第1の部材)
120:ブラケット(第1の部材)(第1連結部)
122:平板部
124:立設部
126:支持部(第2連結部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)左右方向に並んで配設されるとともに、車両のフロアに傾斜角度を変更可能に連結される1対のサイドフレームと、(b)それら1対のサイドフレームに架け渡され、それら1対のサイドフレームを繋ぐアッパフレームとを有し、シートバックの骨格をなすバックフレームと、
前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを固定的に連結するとともに、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとの前後方向における相対的な位置を調整する調整機構と
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記調整機構が、
前記1対のサイドフレームの少なくとも一方と前記アッパフレームとを前後方向に貫通した状態で、前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に、軸心回りに回転可能かつ軸心方向へ移動不能に保持されるボルトと、
そのボルトに螺合するとともに、前記アッパフレームに固定されるナットと
を有する請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
当該車両用シートが、
前記ボルトの頭部が自身の内部に位置するように前記1対のサイドフレームの少なくとも一方に固定された筒部と、その筒部の一方の開口を覆う蓋部と、前記筒部と前記蓋部とを接続するヒンジ部とを有し、前記筒部に対して前記蓋部が開閉可能とされた開閉部材を備え、
前記蓋部が開いた状態で前記ボルトの頭部が当該車両用シートの外部から視認可能とされた請求項2に記載の車両用シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−67314(P2013−67314A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208396(P2011−208396)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】