説明

車両用前照灯の灯具ユニット

【課題】投影レンズの後方に第1および第2光源ユニットが配置されてなるプロジェクタ型の灯具ユニットにおいて、これにより形成されるハイビーム用配光パターンを遠方視認性に優れたものとするとともに、ロービーム用配光パターンに関しても必要に応じて遠方視認性を高める。
【解決手段】投影レンズ12の周囲に、第2光源ユニット16用の付加投影レンズ42を配置し、第2光源ユニット16として可動式の第2シェード36を備えた構成とする。第1光源ユニット14の点灯により、カットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成する。そして、第2光源ユニット16の追加点灯により、上記カットオフラインよりも上方側にカットオフラインを有する配光パターンを付加的に形成し、その遠方視認性を高める。また、第2シェード36を遮光解除位置へ移動させることにより、ハイビーム用配光パターンを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、車両用前照灯の灯具ユニットに関するものであり、特に、発光ダイオード等の発光素子を光源とするプロジェクタ型の灯具ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用前照灯においても、発光ダイオード等の発光素子を光源とする灯具ユニットが採用されるようになってきている。
【0003】
例えば「特許文献1」には、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後側焦点よりも後方側において上向きに配置された発光素子と、この発光素子からの光を前方へ向けて光軸寄りに反射させる第1リフレクタとを備えた、いわゆるプロジェクタ型の灯具ユニットが記載されている。
【0004】
また「特許文献2」および「特許文献3」には、投影レンズの後方に第1および第2光源ユニットが配置されてなるプロジェクタ型の灯具ユニットが記載されている。
【0005】
これら「特許文献2」および「特許文献3」に記載された灯具ユニットにおいては、その第1光源ユニットが、投影レンズの後側焦点よりも後方側において上向きに配置された第1発光素子と、この第1発光素子からの光を前方へ向けて光軸寄りに反射させる第1リフレクタと、上端縁が投影レンズの後側焦点近傍を通るように配置され、第1リフレクタからの反射光の一部を遮蔽するシェードとを備えており、また、その第2光源ユニットは、投影レンズの後側焦点よりも後方側において下向きに配置された第2発光素子と、この第2発光素子からの光を前方へ向けて光軸寄りに反射させる第2リフレクタとを備えた構成となっている。
【0006】
そして、第1光源ユニットの点灯により、上端部にカットオフラインを有するロービーム用配光パターンを形成するとともに、第2光源ユニットの追加点灯により、カットオフラインから上方へ拡がるハイビーム用付加配光パターンを追加形成して、ハイビーム用配光パターンを形成するようになっている。
【0007】
【特許文献1】特開2003−317513号公報
【特許文献2】特開2005−44809号公報
【特許文献3】特開2005−108554号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記「特許文献2」および「特許文献3」に記載されているような灯具ユニットを採用すれば、第2光源ユニットの点消灯によりロービームとハイビームとのビーム切換えを行うことが可能となる。
【0009】
しかしながら、その際、第2光源ユニットの点灯により形成されるハイビーム用付加配光パターンは、カットオフラインよりも上方側にしか形成されないので、ハイビーム用配光パターンにおけるカットオフライン近傍領域の光度を十分に高めることができず、このためハイビーム用配光パターンを遠方視認性に優れたものとすることができない、という問題がある。
【0010】
また、ロービーム用配光パターンにおいても、高速道路走行時等には市街地走行時等に比して車両前方路面の遠方領域に対する視認性を高めることが望まれるが、上記「特許文献2」および「特許文献3」に記載された灯具ユニットにおいては、第2光源ユニットの点消灯によりロービームとハイビームとのビーム切換えが行われるだけであるので、このような要望に十分対応することができない、という問題がある。
【0011】
本願発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、発光素子を光源とする車両用前照灯の灯具ユニットとして、投影レンズの後方に第1および第2光源ユニットが配置されてなるプロジェクタ型の灯具ユニットを採用した場合において、この灯具ユニットにより形成されるハイビーム用配光パターンを遠方視認性に優れたものとするとともに、ロービーム用配光パターンに関しても必要に応じて遠方視認性を高めることができる車両用前照灯の灯具ユニットを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明は、第2光源ユニットの構成に工夫を施すとともに、所定の付加投影レンズを備えた構成とすることにより、上記目的達成を図るようにしたものである。
【0013】
すなわち、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットは、
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された第1および第2光源ユニットと、を備えてなる車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、
上記第1光源ユニットが、上記投影レンズの後側焦点よりも後方側において上向きに配置された第1発光素子と、この第1発光素子からの光を前方へ向けて上記光軸寄りに反射させる第1リフレクタと、上端縁が上記投影レンズの後側焦点近傍を通るように配置され、上記第1リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する第1シェードとを備えてなり、
上記第2光源ユニットが、上記投影レンズの後側焦点よりも後方側において下向きに配置された第2発光素子と、この第2発光素子からの光を前方へ向けて、該第2発光素子近傍の点と、該第2発光素子と上記投影レンズとの間の所定点とを結ぶ直線寄りに反射させる第2リフレクタと、上端縁が上記所定点近傍を通るように配置され、上記第2リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する第2シェードとを備えてなり、
上記投影レンズの周囲に、上記光軸と略平行に延びる付加光軸を有するとともに上記所定点近傍の点を後側焦点とする付加投影レンズが配置されており、
上記投影レンズによる上記第1シェードの上端縁の反転像として、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するとともに、上記付加投影レンズによる上記第2シェードの上端縁の反転像として、上記カットオフラインよりも上方側に付加カットオフラインを形成するように構成されており、
上記第2シェードが、所定のアクチュエータの駆動により、上記第2リフレクタからの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得るように構成されている、ことを特徴とするものである。
【0014】
上記「第1発光素子」および「第2発光素子」における「発光素子」とは、略点状に面発光する発光チップを有する素子状の光源を意味するものであって、その種類は特に限定されるものではなく、例えば、発光ダイオードやレーザダイオード等が採用可能である。
【0015】
上記「第1発光素子」は、上向きに配置されているが、必ずしも鉛直上向きに配置されていることは必要でなく、また、上記「第2発光素子」についても、下向きに配置されているが、必ずしも鉛直下向きに配置されていることは必要でない。また、これら「第1発光素子」および「第2発光素子」は、投影レンズの後側焦点よりも後方側に配置されていれば、光軸上に配置されていてもよいし、光軸から外れた位置に配置されていてもよい。
【0016】
上記「第1シェード」は、第1リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する機能のみを有する構成となっていてもよいし、第1リフレクタからの反射光の一部を遮蔽した上で、この遮蔽した光を上向きに反射させるミラー部材として構成されていてもよい。また、この「第1シェード」の上端縁の反転像として形成される「ロービーム用配光パターンのカットオフライン」の具体的形状は特に限定されるものではない。
【0017】
上記「所定点」は、第2発光素子と投影レンズとの間の点であって、該「所定点」と第2発光素子近傍の点とを結ぶ直線寄りに反射した第2リフレクタからの反射光のうちの少なくとも一部が、付加投影レンズに入射するように位置設定された点であれば、その具体的な位置は特に限定されるものではない。
【0018】
上記「第2シェード」の上端縁の反転像として形成される「付加カットオフライン」は、ロービーム用配光パターンのカットオフラインよりも上方側に形成されるものであれば、その具体的形状およびロービーム用配光パターンのカットオフラインからの上方変位量は特に限定されるものではない。
【0019】
上記「付加カットオフライン」を「ロービーム用配光パターンのカットオフライン」よりも上方側に形成するための具体的な構成は特に限定されるものではなく、例えば、付加投影レンズの付加光軸が投影レンズの光軸に対して前方へ向けて幾分上向きに延びるように設定された構成、あるいは、第2シェードの上端縁が上記所定点よりも幾分下方側の位置を通るように形成された構成等が採用可能である。
【0020】
上記「アクチュエータ」の駆動による上記「第2シェード」の遮光解除位置へ具体的な移動態様やその際の移動方向等については、特に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0021】
上記構成に示すように、本願発明に係る車両用前照灯の灯具ユニットは、車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズの後方に、第1シェードを有する第1光源ユニットと第2シェードを有する第2光源ユニットとが配置されるとともに、投影レンズの周囲に、光軸と略平行に延びる付加光軸を有する付加投影レンズが配置された構成となっており、第1光源ユニットの点灯により、投影レンズによる第1シェードの上端縁の反転像として、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するとともに、第2光源ユニットの点灯により、付加投影レンズによる第2シェードの上端縁の反転像として、上記カットオフラインよりも上方側に付加カットオフラインを形成するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0022】
すなわち、第1光源ユニットのみを点灯させることにより、通常のロービーム用配光パターンを形成することができ、これに第2光源ユニットを追加点灯させることにより、付加カットオフラインを有する付加配光パターンを通常のロービーム用配光パターンに対して重畳的に形成することができ、これにより車両前方路面の遠方領域に対する視認性に優れたロービーム用配光パターンを形成することができる。
【0023】
また、本願発明に係る灯具ユニットにおいては、所定のアクチュエータの駆動により、第2光源ユニットの第2シェードが、その第2リフレクタからの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得る構成となっているので、第2光源ユニットを点灯させた状態で第2シェードを遮光解除位置へ移動させることにより、上記付加配光パターンを付加カットオフラインの上方側まで拡げたような新たな付加配光パターンを形成することができる。したがって、第2光源ユニットを追加点灯させて、この付加配光パターンを通常のロービーム用配光パターンに対して重畳的に形成することにより、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンを形成することができる。
【0024】
このように本願発明によれば、発光素子を光源とする車両用前照灯の灯具ユニットとして、投影レンズの後方に第1および第2光源ユニットが配置されてなるプロジェクタ型の灯具ユニットを採用した場合において、この灯具ユニットにより形成されるハイビーム用配光パターンを遠方視認性に優れたものとするとともに、ロービーム用配光パターンに関しても必要に応じて遠方視認性を高めることができる。
【0025】
上記構成において、第1シェードについても、所定のアクチュエータの駆動により、第1リフレクタからの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得る構成とすれば、ハイビーム用配光パターンを、ロービーム用配光パターンとそのカットオフラインを跨ぐ付加配光パターンとの合成配光パターンではなく、ロービーム用配光パターンをそのカットオフラインの上方まで拡げたような配光パターンと上記付加配光パターンとの合成配光パターンとして形成することができる。そしてこれにより、車両前方路面の近距離領域の明るさを抑えてその遠方領域に対する視認性を相対的に高めることができるとともに、車両前方路面の上方空間を幅広く照射して頭上標識等に対する視認性を一層高めることができる。
【0026】
この第1シェードを駆動する「アクチュエータ」は、第2シェードを駆動するアクチュエータとは別のアクチュエータであってもよいし、第2シェードを駆動するアクチュエータであってもよい。その際、第1シェードを第2シェードと一体的に形成しておけば、これら第1および第2シェードの構成およびその移動機構を簡素化することができる。
【0027】
上記構成において、第2リフレクタは、第2発光素子からの光を前方へ向けて該第2発光素子近傍の点と上記所定点とを結ぶ直線寄りに反射させるように構成されていれば、その具体的な反射面形状は特に限定されるものでないが、この第2リフレクタを、その反射面における鉛直断面形状が、第2発光素子近傍の点を第1焦点とするとともに付加投影レンズの後側焦点近傍の点を第2焦点とする楕円形状に設定された構成とすれば、付加投影レンズから前方へ照射される第2光源ユニットからの光は、上下方向に関して略平行光となるので、付加配光パターンを上下幅の狭い明るい配光パターンとすることができ、これによりロービーム用配光パターンあるいはハイビーム用配光パターンの高光度領域の明るさを十分に確保することができる。
【0028】
上記構成において、付加投影レンズを、後側焦点の位置が互いに異なる複数のレンズ部からなる構成とした上で、第2リフレクタの反射面を、これら各レンズ部毎に形成された複数の反射領域からなる構成とするとともに、第2シェードを、これら各レンズ部毎に形成された複数のシェード部からなる構成とすれば、これら各レンズ部を透過して前方へ照射される第2光源ユニットからの光により、複数種類の配光パターンを形成することができ、これにより付加配光パターンの形状や光度分布等の設定自由度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、図面を用いて、本願発明の実施の形態について説明する。
【0030】
図1は、本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯の灯具ユニット10を示す正面図であり、図2は、図1のII-II
線断面図である。
【0031】
これらの図に示すように、本実施形態に係る灯具ユニット10は、車両用前照灯の一部として組み込まれた状態で用いられる灯具ユニットであって、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ12と、この投影レンズ12の後方に配置された第1光源ユニット14および第2光源ユニット16と、付加投影レンズ42とを備えてなっている。そして、この灯具ユニット10は、車両用前照灯に組み込まれた状態では、その光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びた状態で配置されるようになっている。
【0032】
投影レンズ12は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後側焦点面(すなわち、投影レンズ12の後側焦点Fおよびその軸外の後側焦点により形成される略球面状の曲面)上に形成される光源像を、灯具前方の仮想鉛直スクリーン上に反転像として投影するようになっている。この投影レンズ12は、リング状のレンズホルダ18に固定支持されており、このレンズホルダ18は、ベース部材20に固定支持されている。
【0033】
第1光源ユニット14は、投影レンズ12の後側焦点Fよりも後方側において上向きに配置された第1発光素子22と、この第1発光素子22を上方側から覆うように配置され、該第1発光素子22からの光を前方へ向けて光軸Ax寄りに反射させる第1リフレクタ24と、この第1リフレクタ24と投影レンズ12との間において、上端縁26bが投影レンズ12の後側焦点Fを通るように配置され、第1リフレクタ24からの反射光の一部を遮蔽する第1シェード26とからなっている。
【0034】
その際、第1シェード26は、第1リフレクタ24からの反射光の一部を遮蔽した上で、この遮蔽した光を上方側へ反射させるミラー部材として構成されている。これを実現するため、この第1シェード26は、投影レンズ12の後側焦点面から後方へ平板状に延びるように形成されており、その上面26aにはアルミニウム蒸着等による鏡面処理が施されている。この第1シェード26の上面26aは、光軸Axよりも左側(灯具正面視では右側)に位置する左側領域が光軸Axを含む水平面で構成されており、光軸Axよりも右側に位置する右側領域が、光軸Axから右方向へ斜め下向き(例えば15°下向き)に延びる傾斜面を介して左側領域よりも一段低い水平面で構成されている。そして、この上面26aの前端縁が、上記上端縁26bを構成するようになっている。
【0035】
この第1シェード26は、上面が光軸Ax上に位置するようにして水平に配置された平板部材30の一部として構成されており、この平板部材30は、ベース部材20に固定支持されている。
【0036】
第1発光素子22は、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ22aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ22aは、該発光チップ22aの発光面を覆うように形成された薄膜により封止されている。そして、この第2発光素子32は、その発光チップ22aが光軸Ax上において鉛直上向きになるように配置された状態で、平板部材30の上面に形成された光源支持凹部30aに位置決め固定されている。
【0037】
第1リフレクタ24は、第1発光素子14を上方側から覆うようにして半ドーム状に形成されており、その周縁下端面において平板部材30の上面に載置固定されている。そして、この第1リフレクタ24は、第1発光素子22の発光チップ22aからの出射光を、投影レンズ12へ向けて光軸Ax寄りに反射させるようになっている。
【0038】
具体的には、この第1リフレクタ24の反射面24aは、光軸Axを含む平面に沿った断面形状が楕円形状に設定されている。その際、この反射面24aは、光軸Axを含む鉛直面に沿った断面形状が、発光チップ22aの発光中心を第1焦点とするとともに投影レンズ12の後側焦点Fを第2焦点とする楕円形状に設定されており、この光軸Axを含む鉛直面から光軸Axを含む水平面にかけて、第1焦点一定のまま離心率が徐々に大きくなるように設定されている。これにより、この反射面24aは、発光チップ22aからの出射光を、鉛直面内においては投影レンズ12の後側焦点Fに収束させるとともに、水平断面内においてはこの後側焦点Fよりもある程度前方側において光軸Ax上に収束させるようになっている。
【0039】
一方、第2光源ユニット16は、第1発光素子22よりも後方側において下向きに配置された第2発光素子32と、この第2発光素子32を下方側から覆うように配置され、該第2発光素子32からの光を前方へ向けて反射させる第2リフレクタ34と、この第2リフレクタ34からの反射光の一部を遮蔽する第2シェード36とからなっている。
【0040】
第2発光素子32は、0.3〜3mm四方程度の大きさの正方形の発光チップ32aを有する白色発光ダイオードであって、その発光チップ32aは、該発光チップ32aの発光面を覆うように形成された薄膜により封止されている。そして、この第2発光素子32は、その発光チップ32aが光軸Axの下方近傍において鉛直下向きになるように配置された状態で、平板部材30の下面に形成された光源支持凹部30bに位置決め固定されている。
【0041】
第2リフレクタ34は、その反射面34aが上下2つの反射領域34a1、34a2で構成されており、その周縁上端部において平板部材30の下面に固定されている。
【0042】
これら各反射領域34a1、34a2は、第2発光素子32の発光中心を第1焦点とするとともに該第2発光素子32と投影レンズ12との間の所定点A、Bをそれぞれ第2焦点とする楕円により、その鉛直断面形状が形成されており、第2発光素子32からの光を前方へ向けて各楕円の長軸Ax1、Ax2寄りに反射させるようになっている。
【0043】
その際、上側に位置する反射領域34a1は、その鉛直断面形状を構成する楕円の第2焦点(すなわち所定点A)が、投影レンズ12の後側焦点Fよりもある程度後方側でかつ光軸Axから鉛直下方にある程度離れた位置に設定されており、その長軸Ax1は、前方へ向けて斜め下向きに延びている。この反射領域34a1は、長軸Ax1を中心とする略楕円面状の曲面で構成されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そして、この反射領域34a1は、第2発光素子32からの光を、鉛直断面内においては所定点Aに収束させるとともに、水平断面内においてはこの所定点Aよりもある程度前方側において長軸Ax1の延長線上に収束させるようになっている。
【0044】
一方、下側に位置する反射領域34a2は、その鉛直断面形状を構成する楕円の第2焦点(すなわち所定点B)が、光軸Ax上における投影レンズ12の後側焦点Fよりもある程度後方側に位置する点(具体的には所定点Aの真上に位置する点)に設定されており、その長軸Ax2は、前方へ向けて斜め上向きに延びている。この反射領域34a2は、長軸Ax2を中心とする略楕円面状の曲面で構成されており、その離心率が鉛直断面から水平断面へ向けて徐々に大きくなるように設定されている。そして、この反射領域34a2は、第2発光素子32からの光を、鉛直断面内においては所定点Bに収束させるとともに、水平断面内においてはこの所定点Bよりもある程度前方側において長軸Ax2の延長線上に収束させるようになっている。
【0045】
平板部材30における第1シェード26の後方側に位置する部分には、該平板部材30を上下方向に貫通する開口部30cが形成されている。その際、この開口部30cは、所定点Bを囲むように開口しており、これにより反射領域34a2からの反射光を遮蔽することなく該平板部材30の上方空間へ通過させ得るようになっている。
【0046】
第2シェード36は、光軸Axと直交する鉛直面に沿って延びる板状部材で構成されており、その後面が所定点A、Bを通るようにして配置されている。この第2シェード36は、アクチュエータ38の駆動により、その後面の上端縁36bが所定点Bに位置する遮光位置(図中、実線で示す位置)と、この遮光位置から所定量下方に位置する遮光解除位置(図中、2点鎖線で示す位置)との間で移動し得るようになっている。
【0047】
この第2シェード36には、該第2シェード36を前後方向に貫通する矩形状の開口部36cが形成されている。この開口部36cは、第2シェード36が遮光位置にあるとき、該開口部36cよりも下方側に位置する部分における後面の上端縁(すなわち該開口部36cの下面壁の後端縁)36aが、所定点Aに位置するように形成されている。
【0048】
この第2シェード36は、その上下2段で形成された上端縁36a、36bが光軸Axと直交する方向に延びているが、これら各上端縁36a、36bの正面視における形状は、第1シェード26の上端縁26aと同一の形状に設定されている。
【0049】
アクチュエータ38は、ソレノイドにより構成されており、ベース部材20に形成されたアクチュエータ装着部20aに、そのプランジャ38aを上方へ突出させた状態で装着されている。そして、このアクチュエータ38は、そのプランジャ38aの上端部において第2シェード36の下端部近傍部位から後方へ突出するプランジャ係合部36dに係合連結されている。
【0050】
第2シェード36の下端部には、前方へ突出する突起片36eが形成されておる。一方、ベース部材20には、第2シェード36の突起片36eよりも該第2シェード36の移動距離分だけ上下幅が大きい凹部を有する位置決め用係合部20bが形成されている。そしてこれにより、アクチュエータ38の駆動により第2シェード36が上方へ移動したとき、その突起片36eが位置決め用係合部20bの上面壁に当接して第2シェード36を遮光位置に位置決めするとともに、アクチュエータ38の駆動により第2シェード36が下方へ移動したとき、その突起片36eが位置決め用係合部20bの下面壁に当接して第2シェード36を遮光解除位置に位置決めするようになっている。
【0051】
付加投影レンズ42は、投影レンズ12の周囲に配置されている。その際、この付加投影レンズ42は、投影レンズ12を囲む環状レンズとして構成されており、該投影レンズ12と一体で形成されている。この付加投影レンズ42は、光軸Axの下方に位置する下部レンズ部42Aと、光軸Axの上方に位置する上部レンズ部42Bとからなっている。
【0052】
下部レンズ部42Aは、上記所定点Aを通り、光軸Axに対して前方へ向けて0.4〜0.5°程度上向きに傾斜した方向に延びる付加光軸Axaを有する平凸レンズで構成されている。その際、この下部レンズ部42Aは、その後方側表面が、投影レンズ12の後方側表面と面一の平面で形成されており、また、その前方側表面は、上記所定点Aに該下部レンズ部42Aの後側焦点が位置するよう、その曲面の曲率が設定されている。
【0053】
一方、上部レンズ部42Bは、上記所定点Bを通り、光軸Axに対して前方へ向けて0.4〜0.5°程度上向きに傾斜した方向に延びる付加光軸Axbを有する平凸レンズで構成されている。その際、この上部レンズ部42Bは、その後方側表面が、投影レンズ12の後方側表面と面一の平面で形成されており、また、その前方側表面は、上記所定点Bに該上部レンズ部42Bの後側焦点が位置するよう、その曲面の曲率が設定されている。
【0054】
本実施形態に係る灯具ユニット10は、ロービームとハイビームとのビーム切換えを行い得る構成となっており、かつ、そのロービームモードにおいて、市街地走行等に適したベーシックモードと高速道路走行等に適したモーターウェイモードとの間でモード切換えを行い得る構成となっている。
【0055】
図3は、ロービームのベーシックモードでの光路を示す、図2と同様の図であり、図4は、ロービームのモーターウェイモードでの光路を示す、図2と同様の図であり、図5は、ハイビームモードでの光路を示す、図2と同様の図である。
【0056】
図6は、本実施形態に係る灯具ユニット10から前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。その際、同図(a)に示す配光パターンは、ロービームのベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターンPLBであり、同図(b)に示す配光パターンは、ロービームのモーターウェイモードで形成されるロービーム用配光パターンPLMであり、同図(c)に示す配光パターンは、ハイビームモードで形成されるハイビーム用配光パターンPHである。
【0057】
図3に示すように、ロービームのベーシックモードでは、第1光源ユニット14のみが点灯するようになっている。その際、第2シェード36は遮光位置へ移動した状態となっている。なお、このとき第2シェード36は遮光解除位置へ移動した状態となっていてもよい。
【0058】
このベーシックモードでは、第1光源ユニット14からの光が投影レンズ12を介して前方へ照射されるようになっている。その際、第1リフレクタ24で反射した第1発光素子14からの光は、その一部が第1シェード26により遮蔽され、その残部がそのまま直進して投影レンズ12の下部領域に入射する。このとき、第1シェード26により遮蔽された光も、第1シェード26の上面26aで正反射して投影レンズ12の上部領域に入射する。
【0059】
図6(a)に示すように、このベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターンPLBは、その上端部に左右段違いのカットオフラインCL1、CL2を有している。このカットオフラインCL1、CL2は、灯具正面方向の消点であるH−Vを鉛直方向に通るV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延びており、V−V線よりも右側の対向車線側部分が下段カットオフラインCL1として形成されるとともに、V−V線よりも左側の自車線側部分が、この下段カットオフラインCL1から傾斜部を介して段上がりになった上段カットオフラインCL2として形成されている。
【0060】
このロービーム用配光パターンPLBは、第1リフレクタ24で反射した第1発光素子22からの光によって投影レンズ12の後側焦点面上に形成された第1発光素子22の像を、投影レンズ12により上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成され、そのカットオフラインCL1、CL2は、第1シェード26の上端縁26bの反転投影像として形成されるようになっている。
【0061】
このロービーム用配光パターンPLBにおいて、下段カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点Eは、H−Vの0.5〜0.6°程度下方に位置している。これは光軸Axが車両前後方向に対して0.5〜0.6°程度下向きの方向に延びていることによるものである。
【0062】
図4に示すように、ロービームのモーターウェイモードでは、第1光源ユニット14と第2光源ユニット16とが同時点灯し、その際、第2シェード36は遮光位置へ移動した状態となっている。
【0063】
このモーターウェイモードでは、第1光源ユニット14からの光が投影レンズ12を介して前方へ照射されるとともに、第2光源ユニット16からの光が付加投影レンズ42を介して前方へ照射されるようになっている。その際、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1からの反射光は、その一部が第2シェード36により遮蔽され、その残部が第2シェード36の開口部36cを通りそのまま直進して付加投影レンズ42の下部レンズ部42Aに入射し、一方、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a2からの反射光は、その一部が第2シェード36により遮蔽され、その残部が平板部材30の開口部30cを通りそのまま直進して付加投影レンズ42の上部レンズ部42Bに入射する。
【0064】
図6(b)に示すように、このモーターウェイモードで形成されるロービーム用配光パターンPLMは、ベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターンPLBとモーターウェイ用付加配光パターンPAMとの合成配光パターンとして形成されている。
【0065】
モーターウェイ用付加配光パターンPAMは、その上端部に左右段違いの付加カットオフラインCL3、CL4を有する略弓形の配光パターンとして形成されている。
【0066】
このモーターウェイ用付加配光パターンPAMは、第2光源ユニット16からの照射光により形成される配光パターンであって、配光パターンPAM1と配光パターンPAM2との合成配光パターンとして形成されている。
【0067】
配光パターンPAM1は、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1からの反射光によって付加投影レンズ42の下部レンズ部42Aの後側焦点面上に形成された第2発光素子32の像を、下部レンズ部42Aによって上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成される配光パターンである。この配光パターンPAM1は、ロービーム用配光パターンPLBよりもある程度小さい左右拡散角度を有する比較的明るい配光パターンとして形成されており、その上端部には、第2シェード36の上端縁36aの反転投影像として上記付加カットオフラインCL3、CL4が形成されている。
【0068】
配光パターンPAM2は、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a2からの反射光によって付加投影レンズ42の上部レンズ部42Bの後側焦点面上に形成された第2発光素子32の像を、上部レンズ部42Bによって上記仮想鉛直スクリーン上に反転投影像として投影することにより形成される配光パターンである。この配光パターンPAM2は、配光パターンPAM1よりも小さい左右拡散角度を有する明るい配光パターンとして形成されており、その上端部には、第2シェード36の上端縁36bの反転投影像として上記付加カットオフラインCL3、CL4が形成されている。
【0069】
このモーターウェイ用付加配光パターンPAMの付加カットオフラインCL3、CL4は、ロービーム用配光パターンPLBのカットオフラインCL1、CL2と同一形状で、かつ、そのエルボ点E´がカットオフラインCL1、CL2のエルボ点Eよりも0.4〜0.5°程度上方に位置するように形成されている。その際、エルボ点E´の位置がエルボ点Eよりも0.4〜0.5°程度上方に位置しているのは、付加投影レンズ42を構成する下部レンズ部42Aおよび上部レンズ部42Bの各付加光軸Axa、Axbが、光軸Axに対して前方へ向けて0.4〜0.5°程度上向きに傾斜した方向に延びていることによるものである。
【0070】
そして、このロービーム用配光パターンPLMにおいては、モーターウェイ用付加配光パターンPAMにより、その高光度領域であるホットゾーンをエルボ点E近傍に形成するとともに、H−Vを水平方向に通るH−H線を越えない範囲内で、車両前方路面の遠距離領域を十分に照射するようになっている。
【0071】
図5に示すように、ハイビームモードでは、第1光源ユニット14と第2光源ユニット16とが同時点灯し、その際、第2シェード36は遮光解除位置へ移動した状態となっている。
【0072】
このハイビームでは、第1光源ユニット14からの光が投影レンズ12を介して前方へ照射されるとともに、第2光源ユニット16からの光が付加投影レンズ42を介して前方へ照射されるようになっている。その際、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1からの反射光は、第2シェード36により遮蔽されることなくその開口部36cを通って付加投影レンズ42の下部レンズ部42Aに入射し、一方、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a2からの反射光は、第2シェード36により遮蔽されることなく平板部材30の開口部30cを通って付加投影レンズ42の上部レンズ部42Bに入射する。
【0073】
図6(c)に示すように、このハイビームで形成されるハイビーム用配光パターンPHは、ベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターンPLBとハイビーム用付加配光パターンPAHとの合成配光パターンとして形成されている。
【0074】
ハイビーム用付加配光パターンPAHは、第2光源ユニット16からの照射光により形成される配光パターンであって、その第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1からの反射光により形成される配光パターンPAH1と、その第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a2からの反射光により形成される配光パターンPAH2の合成配光パターンとして、ロービーム用配光パターンPLBのカットオフラインCL1、CL2を上下に跨ぐように形成されている。
【0075】
配光パターンPAH1は、配光パターンPAM1をそのカットオフラインCL3、CL4の上方側まで拡げた横長の配光パターンとして形成されており、配光パターンPAH2は、配光パターンPAM2をその付加カットオフラインCL3、CL4の上方側まで拡げた横長の配光パターンとして形成されている。
【0076】
なお、これら配光パターンPAH1、PAH2が付加カットオフラインCL3、CL4の上方側まで拡がる配光パターンとして形成されるのは、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1、34a2からの反射光に対する第2シェード36による遮蔽が解除されることによるものである。
【0077】
そして、このハイビーム用配光パターンPHにおいては、そのハイビーム用付加配光パターンPAHにより、H−H線の上方領域まで光照射を行うとともに、そのホットゾーンをHーV近傍に形成するようになっている。
【0078】
以上詳述したように、本実施形態に係る車両用前照灯の灯具ユニット10は、車両前後方向に延びる光軸Ax上に配置された投影レンズ12の後方に、第1シェード26を有する第1光源ユニット14と第2シェード36を有する第2光源ユニット16とが配置されるとともに、投影レンズ12の周囲に、光軸Axと略平行に延びる付加光軸Axa、Axbを有する付加投影レンズ42が配置された構成となっており、第1光源ユニット14の点灯により、投影レンズ12による第1シェード26の上端縁26bの反転像として、ロービーム用配光パターンPLBのカットオフラインCL1、CL2を形成するとともに、第2光源ユニット16の点灯により、付加投影レンズ42による第2シェード36の上端縁36a、36bの反転像として、上記カットオフラインCL1、CL2よりも上方側に付加カットオフラインCL3、CL4を形成するようになっているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0079】
すなわち、第1光源ユニット14のみを点灯させることにより、通常のロービーム用配光パターンPLBを形成することができ、これに第2光源ユニット16を追加点灯させることにより、付加カットオフラインCL3、CL4を有するモーターウェイ用付加配光パターンPAMを通常のロービーム用配光パターンPLBに対して重畳的に形成することができ、これにより車両前方路面の遠方領域に対する視認性に優れたロービーム用配光パターンPLMを形成することができる。
【0080】
また、本実施形態に係る灯具ユニット10においては、アクチュエータ38の駆動により、第2光源ユニット16の第2シェード36が、その第2リフレクタ34からの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得る構成となっているので、第2光源ユニット16を点灯させた状態で第2シェード36を遮光解除位置へ移動させることにより、モーターウェイ用付加配光パターンPAMをその付加カットオフラインCL3、CL4の上方側まで拡げたようなハイビーム用付加配光パターンPAHを形成することができる。したがって、第2光源ユニット16を追加点灯させて、このハイビーム用付加配光パターンPAHを通常のロービーム用配光パターンPLBに対して重畳的に形成することにより、遠方視認性に優れたハイビーム用配光パターンPHを形成することができる。
【0081】
このように本実施形態によれば、発光素子を光源とする車両用前照灯の灯具ユニットとして、投影レンズ12の後方に第1および第2光源ユニット14、16が配置されてなるプロジェクタ型の灯具ユニット10を採用した場合において、この灯具ユニット10により形成されるハイビーム用配光パターンPHを遠方視認性に優れたものとするとともに、ロービーム用配光パターンPLB、PLMに関しても必要に応じて遠方視認性を高めることができる。
【0082】
特に本実施形態においては、第2光源ユニット16における第2リフレクタ34の反射面34aが、その鉛直断面形状を構成する楕円の第2焦点の位置が互いに異なる所定点A、Bに設定された2つの反射領域34a1、34a2で構成されており、また、付加投影レンズ42が、上記所定点A、Bをそれぞれ後側焦点とする下部レンズ部42Aと上部レンズ部42Bとで構成されているので、次のような作用効果を得ることができる。
【0083】
すなわち、ハイビーム用付加配光パターンPAHを、これら各レンズ部42A、42Bを透過して前方へ照射される第2光源ユニット16からの光により形成される2種類の配光パターンPAH1、PAH2の合成配光パターンとして滑らかな光度分布を有する配光パターンとすることができる。しかも、これら各レンズ部42A、42Bから前方へ照射される第2光源ユニット16からの光は、上下方向に関して平行光となるので、各配光パターンPAH1、PAH2を上下幅の狭い明るい配光パターンとすることができ、これによりハイビーム用付加配光パターンPAHをハイビーム用配光パターンPHのホットゾーン形成に適したものとすることができる。そしてこれにより、ハイビーム用配光パターンPHの視認性を高めることができる。
【0084】
また本実施形態においては、第2シェード36が、上下2段で形成された上端縁36a、36bを有する2つのシェード部が各レンズ部42A、42B毎に形成されているので、モーターウェイ用付加配光パターンPAMについても、これら各レンズ部42A、42Bを透過して前方へ照射される第2光源ユニット16からの光により形成される2種類の配光パターンPAM1、PAM2の合成配光パターンとして滑らかな光度分布を有する配光パターンとすることができ、これによりロービーム用配光パターンPLMの視認性を高めることができる。
【0085】
さらに本実施形態においては、第2リフレクタ34の反射面34aを構成する2つの反射領域34a1、34a2のうち、第2発光素子32寄りの位置にある反射領域34a1の鉛直断面形状を構成する楕円の第2焦点(すなわち所定点A)が光軸Axの下方に位置しているとともに、第2発光素子32から離れた位置にある反射領域34a2の鉛直断面形状を構成する楕円の第2焦点(すなわち所定点B)が光軸Ax上に位置しているので、これら各反射領域34a1、34a2および付加投影レンズ42の各レンズ部42A、42Bを、光学的に無理のないレイアウトで配置することができる。
【0086】
しかもその際、付加投影レンズ42は、光軸Axの下方に位置する下部レンズ部42Aと、光軸Axの上方に位置する上部レンズ部42Bとからなっているので、灯具ユニット10を、光軸Axを中心としてコンパクトに構成することができ、これを車両用前照灯の一部として組み込むことが容易に可能となる。
【0087】
特に本実施形態においては、付加投影レンズ42が、投影レンズ12を囲む環状レンズとして構成されているので、灯具ユニット10を、光軸Axを中心としてよりコンパクトに構成することができ、これを車両用前照灯の一部として組み込むことが一層容易に可能となる。
【0088】
また本実施形態においては、第1シェード26が、第1リフレクタ24からの反射光の一部を遮蔽した上で、この遮蔽した光を上方側へ反射させるミラー部材として構成されているので、第1リフレクタ24からの反射光の多くを投影レンズ12を介して前方へ照射することができ、これによりロービーム用配光パターンPLBの明るさを十分に確保することができる。
【0089】
その際、この第1シェード26をその構成の一部とする平板部材30には、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a2からの反射光を上部レンズ部42Bへ向けて通過させるための開口部30cが形成されているので、上部レンズ部42Bへの光入射を容易に行わせることができる。また、この平板部材30は、第1シェード26の上端縁26bからある程度後方側に離れた位置に形成されているので、第1シェード26の上面26aにおける第1リフレクタ24からの反射光の上向き反射作用をほとんど阻害しないようにすることができる。
【0090】
しかも本実施形態においては、第2発光素子32が第1発光素子22よりも後方側に配置されているので、第2光源ユニット16からの光を、投影レンズ12の周囲に位置する付加投影レンズ42に入射させることが容易に可能となる。
【0091】
なお、上記実施形態においては、第2リフレクタ34の反射面34aが、2つの反射領域34a1、34a2で構成されているものとして説明したが、このようにする代わりに、単一の反射面で構成すること、あるいは3つ以上の反射領域で構成することも可能である。
【0092】
また、上記実施形態においては、付加投影レンズ42が投影レンズ12と一体で形成されているものとして説明したが、付加投影レンズ42を投影レンズ12と別体で形成することももちろん可能である。
【0093】
さらに、上記実施形態においては、第1発光素子22が光軸Ax上に配置されているものとして説明したが、光軸Axから多少外れた位置に配置された構成とすることも可能である。
【0094】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0095】
まず、上記実施形態の第1変形例について説明する。
【0096】
図7は、本変形例に係る灯具ユニット110を示す、図2と同様の図である。
【0097】
同図に示すように、この灯具ユニット110は、その基本的な構成は上記実施形態に係る灯具ユニット10と同様であるが、付加投影レンズ142および第2シェード136の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0098】
すなわち、本変形例の付加投影レンズ142は、上記実施形態の付加投影レンズ42と同様、所定点A、Bをそれぞれ後側焦点とする下部レンズ部142Aと上部レンズ部142Bとで構成されているが、その下部レンズ部142Aの付加光軸Axaは、投影レンズ12の光軸Axと平行に延びており、その上部レンズ部142Bの光軸Axbは、投影レンズ12の光軸Axと一致している。
【0099】
また、本変形例の第2シェード136は、その開口部136c、プランジャ係合部136dおよび突起片136eを含む基本的な構成は上記実施形態の第2シェード36と同様であるが、上下2段で形成された上端縁136a、136bの位置が、上記実施形態の第2シェード36における上端縁36a、36bよりも僅かに下方に位置するように形成されている。そしてこれにより、第2シェード136が遮光位置にあるときの、第2リフレクタ34の反射面34aにおける反射領域34a1、34a2からの反射光に対する遮蔽を、やや緩和するようになっている。
【0100】
図8は、本変形例に係る灯具ユニット110から前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0101】
同図(a)に示すロービーム用配光パターンPLBは、上記実施形態の場合と同様である。
【0102】
同図(b)に示すロービーム用配光パターンPLMは、そのモーターウェイ用付加配光パターンPBMが、上記実施形態の場合と異なっている。
【0103】
同図(c)に示すハイビーム用配光パターンPHは、そのハイビーム用付加配光パターンPBHが、上記実施形態の場合と異なっている。
【0104】
ハイビーム用付加配光パターンPBHは、2つの配光パターンPBH1、PBH2の合成配光パターンとして形成されている。これら各配光パターンPBH1、PBH2は、上記実施形態の各配光パターンPAH1、PAH2と同一形状であるが、その形成位置が各配光パターンPAH1、PAH2に対して僅かに下方に変位している。これは、本変形例においては、付加投影レンズ142を構成する各レンズ部142A、142Bの付加光軸Axa、光軸Axbが投影レンズ12の光軸Axと平行に延びていることによるものである。
【0105】
モーターウェイ用付加配光パターンPBMは、2つの配光パターンPBM1、PBM2の合成配光パターンとして形成されている。これら各配光パターンPBM1、PBM2は、上記実施形態の各配光パターンPAM1、PAM2と同様の付加カットオフラインCL3、CL4を有しているが、各配光パターンPAM1、PAM2よりもやや下方側へ膨らむように形成されている。これは、上述したように、各レンズ部142A、142Bの付加光軸Axa、Axbが投影レンズ12の光軸Axと平行に延びていることによるものである。
【0106】
なお、このように各レンズ部142A、142Bの付加光軸Axa、Axbが投影レンズ12の光軸Axと平行に延びているにもかかわらず、各配光パターンPBM1、PBM2の付加カットオフラインCL3、CL4が、上記実施形態の各配光パターンPAM1、PAM2と略同じ位置に形成されるのは、第2シェード136の上端縁136a、136bの位置が、上記実施形態の第2シェード36の上端縁36a、36bよりも僅かに下方に位置するように形成されていることによるものである。
【0107】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。
【0108】
次に、上記実施形態の第2変形例について説明する。
【0109】
図9は、本変形例に係る灯具ユニット210を示す、図2と同様の図である。
【0110】
同図に示すように、この灯具ユニット210は、その基本的な構成は上記実施形態に係る灯具ユニット10と同様であるが、第1シェード226の構成が上記実施形態の場合と異なっている。
【0111】
すなわち、本変形例の第1シェード226は、上記実施形態の第1シェード26のように平板部材30の一部としてではなく、第2シェード36の上端部から前方へ延びるようにして該第2シェード36と一体で形成されている。そしてこれにより、この第1シェード226は、アクチュエータ38の駆動により、第2シェード36と共に第1リフレクタ24からの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置(図中、2点鎖線で示す位置)へ移動し得るようになっている。
【0112】
ただし、この第1シェード226の上面226aおよび上端縁226bの構成は、上記実施形態の第1シェード26の場合と同様であって、この第1シェード226においても、第1リフレクタ24からの反射光の一部を遮蔽した上で、この遮蔽した光を上方側へ反射させるようになっている。
【0113】
図10は、ロービームのベーシックモードでの光路を示す、図9と同様の図であり、図11は、ロービームのモーターウェイモードでの光路を示す、図9と同様の図であり、図12は、ハイビームモードでの光路を示す、図9と同様の図である。
【0114】
これらの図に示すように、本変形例に係る灯具ユニット210における光路は、ロービームのベーシックモードおよびモーターウェイモードでは、第1シェード226が上記実施形態の第1シェード26と同じ位置にあるので、上記実施形態の場合と同様であるが、ハイビームモードでは、第2シェード36の遮光解除位置への移動に伴って、第1シェード226も遮光解除位置へ移動し、これにより第1リフレクタ24からの反射光に対する遮蔽が解除される。
【0115】
図13は、本変形例に係る灯具ユニット210から前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図である。
【0116】
同図(a)に示すロービーム用配光パターンPLBおよび同図(b)に示すロービーム用配光パターンPLMは、上記実施形態の場合と同様である。
【0117】
同図(c)に示すハイビーム用配光パターンPHは、そのハイビーム用付加配光パターンPAHについては上記実施形態の場合と同様であるが、ロービーム用配光パターンPLBの代わりにハイビーム用基本配光パターンPHBがハイビーム用付加配光パターンPAHと合成されている。
【0118】
このハイビーム用基本配光パターンPHBは、ロービーム用配光パターンPLBをそのカットオフラインCL1、CL1の上方側まで拡げた横長の配光パターンとして形成されている。これは、ハイビームモードでは、第1リフレクタ24からの反射光のうち第1シェード26で遮蔽されて上方側へ正反射していた光が、そのまま直進して投影レンズ12の下部領域に入射し、この投影レンズ12から上方光として出射することによるものである。その際、第1シェード26の上面28aで正反射して投影レンズ12の上部領域に入射していた光はなくなるので、ハイビーム用基本配光パターンPHBは、ロービーム用配光パターンPLBよりも全体的な明るさが略半減したものとなる。
【0119】
本変形例の構成を採用した場合においても、上記実施形態と略同様の作用効果を得ることができる。しかも本変形例においては、ハイビームモードにおいて、車両前方路面の近距離領域の明るさを抑えてその遠方領域に対する視認性を相対的に高めることができるとともに、車両前方路面の上方空間を幅広く照射して頭上標識等に対する視認性を一層高めることができる。
【0120】
なお、上記実施形態および各変形例において諸元として示した数値は一例にすぎず、これらを適宜異なる値に設定してもよいことはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本願発明の一実施形態に係る車両用前照灯の灯具ユニットを示す正面図
【図2】図1のII-II 線断面図
【図3】ロービームのベーシックモードでの光路を示す、図2と同様の図
【図4】ロービームのモーターウェイモードでの光路を示す、図2と同様の図
【図5】ハイビームモードでの光路を示す、図2と同様の図
【図6】上記灯具ユニットから前方へ照射される光により、車両前方25mの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す図であって、同図(a)はロービームのベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターン、同図(b)はロービームのモーターウェイモードで形成されるロービーム用配光パターン、同図(c)はハイビームモードで形成されるハイビーム用配光パターンを示す図
【図7】上記実施形態の第1変形例に係る灯具ユニットを示す、図2と同様の図
【図8】上記第1変形例に係る灯具ユニットから前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す、図6と同様の図
【図9】上記実施形態の第2変形例に係る灯具ユニットを示す、図2と同様の図
【図10】上記第2変形例に係る灯具ユニットの光路を示す、図3と同様の図
【図11】上記第2変形例に係る灯具ユニットの光路を示す、図4と同様の図
【図12】上記第2変形例に係る灯具ユニットの光路を示す、図5と同様の図
【図13】上記第2変形例に係る灯具ユニットから前方へ照射される光により、上記仮想鉛直スクリーン上に形成される配光パターンを透視的に示す、図6と同様の図
【符号の説明】
【0122】
10、110、210 灯具ユニット
12 投影レンズ
14 第1光源ユニット
16 第2光源ユニット
18 レンズホルダ
20 ベース部材
20a アクチュエータ装着部
20b 位置決め用係合部
22 第1発光素子
22a、32a 発光チップ
24 第1リフレクタ
24a,34a、234a 反射面
26、226 第1シェード
26a、226a 上面
26b、36a、36b、136a、136b、226b 上端縁
30 平板部材
30a、30b 光源支持凹部
30c、36c、136c 開口部
32 第2発光素子
34 第2リフレクタ
34a1、34a2 反射領域
36、136 第2シェード
36d、136d プランジャ係合部
36e、136e 突起片
38 アクチュエータ
38a プランジャ
42、142 付加投影レンズ
42A、142A 下部レンズ部
42B、142B 上部レンズ部
226 第1シェード
A、B 所定点
Ax 光軸
Ax1、Ax2 長軸
Axa、Axb 付加光軸
CL1 下段カットオフライン
CL2 上段カットオフライン
CL3、CL4 付加カットオフライン
E、E´ エルボ点
F 後側焦点
PAH1、PAH2、PAM1、PAM2、PBH1、PBH2、PBM1、PBM2 配光パターン
PAH、PBH ハイビーム用付加配光パターン
PAM、PBM モーターウェイ用付加配光パターン
PH ハイビーム用配光パターン
PHB ハイビーム用基本配光パターン
PLB ベーシックモードで形成されるロービーム用配光パターン
PLM モーターウェイモードで形成されるロービーム用配光パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前後方向に延びる光軸上に配置された投影レンズと、この投影レンズの後方に配置された第1および第2光源ユニットと、を備えてなる車両用前照灯の灯具ユニットにおいて、
上記第1光源ユニットが、上記投影レンズの後側焦点よりも後方側において上向きに配置された第1発光素子と、この第1発光素子からの光を前方へ向けて上記光軸寄りに反射させる第1リフレクタと、上端縁が上記投影レンズの後側焦点近傍を通るように配置され、上記第1リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する第1シェードとを備えてなり、
上記第2光源ユニットが、上記投影レンズの後側焦点よりも後方側において下向きに配置された第2発光素子と、この第2発光素子からの光を前方へ向けて、該第2発光素子近傍の点と、該第2発光素子と上記投影レンズとの間の所定点とを結ぶ直線寄りに反射させる第2リフレクタと、上端縁が上記所定点近傍を通るように配置され、上記第2リフレクタからの反射光の一部を遮蔽する第2シェードとを備えてなり、
上記投影レンズの周囲に、上記光軸と略平行に延びる付加光軸を有するとともに上記所定点近傍の点を後側焦点とする付加投影レンズが配置されており、
上記投影レンズによる上記第1シェードの上端縁の反転像として、ロービーム用配光パターンのカットオフラインを形成するとともに、上記付加投影レンズによる上記第2シェードの上端縁の反転像として、上記カットオフラインよりも上方側に付加カットオフラインを形成するように構成されており、
上記第2シェードが、所定のアクチュエータの駆動により、上記第2リフレクタからの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得るように構成されている、ことを特徴とする車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項2】
上記第1シェードが、所定のアクチュエータの駆動により、上記第1リフレクタからの反射光に対する遮蔽を解除する遮光解除位置へ移動し得るように構成されている、ことを特徴とする請求項1記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項3】
上記第2リフレクタの反射面における鉛直断面形状が、上記第2発光素子近傍の点を第1焦点とするとともに上記付加投影レンズの後側焦点近傍の点を第2焦点とする楕円形状に設定されている、ことを特徴とする請求項1または2記載の車両用前照灯の灯具ユニット。
【請求項4】
上記付加投影レンズが、後側焦点の位置が互いに異なる複数のレンズ部からなり、
上記第2リフレクタの反射面が、上記各レンズ部毎に形成された複数の反射領域からなり、
上記第2シェードが、上記各レンズ部毎に形成された複数のシェード部からなる、ことを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の車両用前照灯の灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−287610(P2007−287610A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−116497(P2006−116497)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】