説明

車両用灯具の排水構造

【課題】外観性を阻害することなく車両用灯具の排水性を高めることができる排水構造を提供すること。
【解決手段】ハウジングの開口部に被着されるアウタレンズ3の左右に取付フランジ3Aを形成し、該取付フランジ3Aに形成されたボスに下方から挿通するネジによって車体に下方から取り付けられるハイマウントストップランプ(車両用灯具)1の排水構造として、前記アウタレンズ3の各取付フランジ3Aの背面側端面3dを切欠き、該背面側端面3dとスポイラ(車体)20との間の排水用の隙間δを形成する。又、前記アウタレンズ3の各取付フランジ3Aの上面をボスを境としてこれの左右に傾斜する山形の斜面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイマウントストップランプ等の車両用灯具の排水構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、車両の後端上部に配置されるハイマウントストップランプは、ハウジングの開口部に被着されるアウタレンズの左右に取付フランジを形成し、該取付フランジに形成されたボスに下方から挿通するネジによって車体に下方から取り付けられる。斯かるハイマウントストップランプにおいては、アウタレンズの左右に形成された取付フランジがアウタレンズの前面と車体によって囲まれるため、その上面に水が溜まり易く、この部分に苔が発生する可能性があるという問題があった。
【0003】
車両用灯具の排水構造として、例えば特許文献1,2等にはハウジングやパッキン等に排水孔を形成する構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−229716号公報
【特許文献2】特開2004−299603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1,2等に提案されているような排水孔をハイマウントストップランプの意匠面を構成するアウタレンズに形成することは不可能である。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、外観性を阻害することなく車両用灯具の排水性を高めることができる排水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングの開口部に被着されるアウタレンズの左右に取付フランジを形成し、該取付フランジに形成されたボスに下方から挿通するネジによって車体に下方から取り付けられる車両用灯具の排水構造であって、前記アウタレンズの各取付フランジの背面側端面を切欠き、該背面側端面と車体との間の排水用の隙間を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記アウタレンズの各取付フランジの上面をボスを境としてこれの左右に傾斜する山形の斜面としたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の発明において、前記アウタレンズの各取付フランジの上面に断面山形の複数のレンズカットを形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、アウタレンズの左右に形成された各取付フランジの背面側端面を切欠き、該背面側端面と車体との間に排水用の隙間を形成したため、この隙間から水が排出され、アウタレンズの各取付フランジ上に水が溜まることがなく、各取付フランジの上面に苔が発生して車両用灯具の外観性を阻害する等の不具合の発生が防がれる。又、このような効果は、アウタレンズの各取付フランジの背面側端面を単に切欠くことによって得られ、各取付フランジに排水孔を形成する必要がないため、車両用灯具の外観性が阻害されることがない。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、アウタレンズの各取付フランジの上面に落下した水は、各取付フランジの上面をボスを境として左右に傾斜する山形の斜面に沿って流れて効率良く排出される。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、アウタレンズの各取付フランジの上面に形成された複数のレンズカットの各断面形状を山形としたため、各レンズカット間の溝の断面積が断面円弧状のレンズカット間の溝の断面積よりも大きくなり、この大きな断面積の溝に沿って水が効率良く排出される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る排水構造を備えた車両用灯具の正面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】本発明に係る排水構造を備える車両用灯具の斜視図である。
【図5】図4のC−C線断面図である。
【図6】図4のD部拡大詳細図である。
【図7】図6のE−E線断面図である。
【図8】図6のF−F線断面図である。
【図9】図8のG部拡大詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る排水構造を備えた車両用灯具の正面図、図2は図1のA−A線断面図、図3は図1のB−B線断面図、図4は同車両用灯具の斜視図、図5は図4のC−C線断面図、図6は図4のD部拡大詳細図、図7は図6のE−E線断面図、図8は図6のF−F線断面図、図9は図8のG部拡大詳細図である。
【0016】
本実施の形態に係る車両用灯具1はハイマウントストップランプであって、このハイマウントストップランプ1は、図3に示すように、車体の後端上部にスポイラ20を介して取り付けられる左右方向に細長いランプである。このハイマウントストップランプ1は、図2及び図3に示すように、ハウジング2に断面U字状の透明なアウタレンズ3を車両後方(図3の左方)から覆うように被着することによって形成される灯室内に、基板4上に横方向に配列された6つのLED(発光ダイオード6)を収容して構成されている。
【0017】
上記ハウジング2は、図2に示すように樹脂にて平面視コの字状に一体成形されており、その背面には円筒状のボス2aが突設されている。そして、このボス2aには、前記基板4から延びる給電用ハーネス6に挿通するグロメット7が嵌め込まれており、基板4は給電用ハーネス6を介して不図示のバッテリに電気的に接続されている。
【0018】
又、前記アウタレンズ3は、透明樹脂によって横断面U字状に一体成形された横方向に長い部品であって、その正面3aと下面3bの全面が意匠面を構成している。そして、このアウタレンズ3の上面3cは正面3a及び下面3bよりも幅が狭く、下面3bの左右には上面3cから1段下がった平坦な取付フランジ3Aが形成されている。尚、図4に示すように、アウタレンズ3の上面3cの左右には帯状のガスケット8が貼着されている。
【0019】
上記アウタレンズ3の左右に形成された取付フランジ3Aの上面中央部には、図4及び図5に示すようにボス9が一体に立設されており、図7に示すように、各取付フランジ3Aの上面は、ボス9を境としてこれの左右が下方に向かって傾斜する山形の斜面を形成している。又、図6に示すように、アウタレンズ3の左右の各取付フランジ3Aの背面側端面(スポイラ20に対向する面)3dは切欠かれている。
【0020】
ところで、アウタレンズ3の正面3aと下面3b(取付フランジ3Aを含む)の内面には配光用のレンズカットが施されているが、図6及び図8に示すように左右の各取付フランジ3Aの上面(内面)に車両前後方向(図8の紙面垂直方向)に直線状に形成された複数のレンズカット10は、図9に詳細に示すようにその断面形状が山形(三角形)となるよう成形されている。
【0021】
而して、以上のように構成されたハイマウントストップランプ1は、図5に示すように、アウタレンズ3の左右に形成された取付フランジ3A(図5には一方のみ図示)に一体に立設されたボス9に下方から挿通するネジ11をスポイラ20に下方からねじ込むことによって、スポイラ20に下方から取り付けられる。
【0022】
上述のようにハイマウントストップランプ1がスポイラに取り付けられると、図7に示すように、アウタレンズ3の左右の取付フランジ3A(図7には一方のみ図示)の切欠かれた背面側端面3dとスポイラ20の端面との間には比較的大きな排水用の隙間δが形成される。
【0023】
斯かるハイマウントストップランプ1が取り付けられた車両において、運転者が不図示のブレーキペダルを踏み込むと、このことが検知されて不図示のバッテリから給電用ハーネス6を経てハイマウントストップランプ1に給電され、光源である6つのLED5が起動されて発光し、その光はアウタレンズ3の正面3aと下面3b(左右の取付フランジ3Aを含む)の各内面に形成されたレンズカットによって配光されながら該アウタレンズ3から出射し、運転者によってブレーキペダルが踏み込まれたことを他車等に認知させる。
【0024】
以上において、本実施の形態では、図6に示すようにアウタレンズ3の左右に形成された各取付フランジ3Aの背面側端面3dを切欠き、図7に示すように該背面側端面3dとスポイラ20との間に比較的大き排水用の隙間δを形成したため、この隙間δから水が排出され、アウタレンズ3の各取付フランジ2A上に水が溜まることがなく、各取付フランジ3Aの上面に苔が発生して当該ハイマウントストップランプ1の外観性を阻害する等の不具合の発生が防がれる。そして、このような効果は、アウタレンズ3の各取付フランジ3Aの背面側端面3dを単に切欠くことによって得られ、各取付フランジ3Aに排水孔を形成する必要がないため、ハイマウントストップランプ1の外観性が排水孔によって阻害されることがない。
【0025】
又、本実施の形態では、図8に示すように、アウタレンズ3の各取付フランジ3Aの上面をボス9を境として左右に傾斜する山形の斜面としたため、各取付フランジ3Aの上面に落下した水は、山形の斜面に沿って左右に流れて効率良く排出される。
【0026】
更に、本実施の形態では、アウタレンズ3の各取付フランジ3Aの上面に形成された複数のレンズカット10の各断面形状を図9に詳細に示すように山形(三角形)としたため、各レンズカット10間の溝の断面積が断面円弧状のレンズカット間の溝(不図示)の断面積よりも大きくなり、この大きな断面積の溝に沿って水が効率良く流れ、最終的には図7に示す排水用の隙間δから水が排出される。
【0027】
尚、以上は本発明をハイマウントストップランプに対して適用した形態について説明したが、本発明は、同様の形態の他の車両用灯具に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 ハイマウントストップランプ(車両用灯具)
2 ハウジング
2a ハウジングのボス
3 アウタレンズ
3A アウタレンズの取付フランジ
3a アウタレンズの正面
3b アウタレンズの下面
3c アウタレンズの上面
3d アウタレンズの背面側端面
4 基板
5 LED
6 給電用ハーネス
7 グロメット
8 ガスケット
9 取付フランジのボス
10 取付フランジのレンズカット
11 ネジ
20 スポイラ(車体)
δ 排水用の溝


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの開口部に被着されるアウタレンズの左右に取付フランジを形成し、該取付フランジに形成されたボスに下方から挿通するネジによって車体に下方から取り付けられる車両用灯具の排水構造であって、
前記アウタレンズの各取付フランジの背面側端面を切欠き、該背面側端面と車体との間の排水用の隙間を形成したことを特徴とする車両用灯具の排水構造。
【請求項2】
前記アウタレンズの各取付フランジの上面をボスを境としてこれの左右に傾斜する山形の斜面としたことを特徴とする請求項1記載の車両用灯具の排水構造。
【請求項3】
前記アウタレンズの各取付フランジの上面に断面山形の複数のレンズカットを形成したことを特徴とする請求項1又は2記載の車両用灯具の排水構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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