説明

車両用灯具

【課題】部品点数の増加やコストアップを招くことなく、既存の部品を用いてコードをハウジングに保持することができる車両用灯具を提供すること。
【解決手段】ハウジング2の背面に、レベリング(回転固定部品)5を回転可能に配設するとともにコード13を配索して成る車両用灯具1において、前記ハウジング2の背面に形成された凹部2Aを前記レベリング5によって開閉可能とし、前記凹部2Aと前記レベリング5によって形成される空間Sに前記コード13を通してこれを保持するようにする。ここで、前記回転固定部品としては、レベリング5の他、ソケットカバーやバルブソケットを使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングの背面に、回転固定部品を回転可能に配設するとともにコードを配索して成る車両用灯具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ等の車両用灯具においては、そのハウジングの背面にコードが配索されるが、該コードの一部はハウジングによって保持されている。ここで、車両用灯具におけるコードの保持構造の従来例を図3〜図5に示す(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
即ち、図3〜図5は車両用灯具におけるコードの保持構造を示す説明図であり、図3に示す例では、ハウジング102の壁面とネジボス102Aとの間の溝状の空間Sにコード113を通し、ネジボス102Aにビス107によって固定されたワッシャ115によってコード113の空間Sからの抜けを防止する構造が採用されている。
【0004】
又、図4に示す例では、専用の固定クリップ201にコード213を通し、固定クリップ201をハウジング202のリブ202Aに形成された孔202aに差し込むことによってコード213を保持する構成が採用され、図5に示す例では、ハウジング302の壁面に爪状のホルダ302Aを一体に形成し、このホルダ302Aにコード313を通すことによって該コード313を保持する構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−344558号公報
【特許文献2】特開2000−011712号公報
【特許文献3】特開2004−227933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、図3及び図4に示した従来の保持構造では、コード113,213を保持するための専用のワッシャ115やビス107、固定クリップ201が必要となるため、部品点数が増加してコストアップを招くというも問題がある。又、図5に示した保持構造では、ハウジング302にコード313を保持するためのホルダ302Aを一体に形成する必要があるため、型構造が複雑化してコストアップを招くという問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、既存の部品を用いてコードをハウジングに保持することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ハウジングの背面に、回転固定部品を回転可能に配設するとともにコードを配索して成る車両用灯具において、前記ハウジングの背面に形成された凹部を前記回転固定部品によって開閉可能とし、前記凹部と前記回転固定部品によって形成される空間に前記コードを通してこれを保持するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記回転固定部品は、レベリング、ソケットカバー又はバルブソケットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レベリング、ソケットカバー、バルブソケット等の既存の回転固定部材とハウジングの背面に形成された凹部との間に形成される空間にコードを通してこれを保持するようにしたため、コードを保持するための専用の部品が不要となり、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、既存の部品を用いてコードをハウジングに保持することができる。この場合、レベリング等の回転固定部品は使用状態では絶対に外れることがない部品であるため、当該車両用灯具が車両に組み込まれた状態ではコードが外れることがなく、車両用灯具の信頼性が高められる。
【0011】
又、必要に応じて回転固定部材を回転させてハウジングの凹部との間に形成された空間を開放すれば、空間に通されたコードを工具を用いることなく容易に取り外すことができる。
【0012】
更に、コードを通すための空間を回転固定部材との間で形成するための凹部としてハウジングに既に形成されているものを利用することができるため、凹部の形成に特別な型構造が不要となってコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る車両用灯具の要部を示す背面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】コードの保持構造の従来例を示す説明図である。
【図4】コードの保持構造の従来例を示す説明図である。
【図5】コードの保持構造の従来例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明に係る車両用灯具の要部を示す背面図、図2は図1のA−A線断面図であり、図示の車両用灯具1は車両前部の左右に設けられるヘッドライト(図には一方のみ図示)であって、これはハウジング2とその前面を覆う不図示のアウタカバーとで画成される灯室3(図2参照)内にHIDバルブを備えたプロジェクタユニット、ターンランプ、ポジションランプ等の光源やリフレクタ(何れも不図示)を収容して構成されている。
【0016】
ところで、ハウジング2の背面には、不図示の車体側カプラーが接続されるカプラー4が取り付けられており、その下方には回転固定部材であるレベリング5が取り付けられている。尚、このレベリングは、図1に鎖線にて示す位置においてその軸部5A(図2参照)がハウジング2に形成された係合孔に挿入され、鎖線位置から軸部5Aを中心として図示の角度θだけ時計方向に実線位置(セット位置)まで回動させることによって、実線位置に固定されて使用される。
【0017】
上記カプラー4は、図2に示すように、ハウジング2の背面に突設された支持リブ2aによってその後端面が受けられるともに、その外周面が嵌合保持されており、これの下面に一体に突設された差込部4aにはL字状に折曲形成された金属製のブラケット6が差し込まれて固定されている。そして、このブラケット6をカプラー4と共にネジ7によってハウジング2の背面に取り付けることによって、カプラー4がブラケット6を介してハウジング2に取り付けられている。
【0018】
又、前記レベリング5は、図2に示すように、その軸部5Aがハウジング2に回動可能に挿通保持されており、軸部5Aには正逆転可能なスクリュー8が挿通支持されている。そして、スクリュー8の先端部はハウジング2内に水平に突出しており、該スクリュー8には支持部材9の下端部に挿通するネジ部材10が螺合挿通している。
【0019】
上記支持部材9は、ハウジング2内の灯室4に収容された不図示のプロジェクタユニットを支持するものであって、その上端部はハウジング2の内面に支持されたピボット軸11によって揺動可能に支持されている。尚、レベリング5は、車両の夜間走行時に対向車とすれ違うときや重い荷物を搭載した場合等にスクリュー8を回転させて支持部材9とこれに支持されたプロジェクタユニットをピボット軸11を中心として揺動させてプロジェクタユニットからの光の照射方向を下向きに変える機能を果たす。
【0020】
一方、図1に示すように、前記カプラー4からは2本(2系統)のコード12,13が上下に分岐して延びており、一方のコード12はハウジング3内の灯室3に収容された不図示のターンランプやポジションランプに給電するためのものであって、下方のコード13は不図示の制御装置に信号を送信するためやプロジェクタユニットに給電するためのものである。
【0021】
ところで、図2に示すように、ハウジング2の背面の前記レベリング5の裏面側の箇所には、後方(図2の手前側)に向かって開口する断面矩形状の凹部2Aが左右方向(図2の紙面垂直方向)に貫通するよう一体に形成されており、この凹部2Aはレベリング5が図1に実線にて示すセット位置にあるときには、図2に示すようにレベリング5によって後方開口部が塞がれ、両者間には左右方向に貫通する断面矩形の空間Sが形成されている。そして、この空間Sには前記コード13が通されてその一部が保持されている。即ち、図1に示すように、カプラー4から下方へと延びるコード13は、レベリング5の中間高さ位置において略直角に折り曲げられてハウジング2の凹部2Aとレベリング5によって形成された前記空間Sを通過した後、下方に向けて略直角に折り曲げられており、水平に延びる部分が空間Sを通されることによってハウジング2に保持され、レベリング5によって抜け止めが図られている。
【0022】
以上のように、本実施の形態では、車両用灯具1に取り付けられる既存のレベリング5とハウジング2の背面に形成された凹部2Aとの間に形成される空間Sにコード13を通してこれを保持するようにしたため、コード13を保持するための専用の部品が不要となり、部品点数の増加やコストアップを招くことなく、レベリング5を用いてコード13をハウジング2に保持することができる。この場合、レベリング5は、これが図1に示すセット位置にある使用状態では絶対に外れることがない部品であるため、当該車両用灯具1が車両に組み込まれた状態ではコード13が外れることがなく、車両用灯具1の信頼性が高められる。又、レベリング5はハウジング2の背面に突出して使用される部品であるため、その周縁にはエッジ部が無く、コード13がレベリング5のエッジ部で傷付く等の不具合が発生することがない。
【0023】
又、図1に実線にて示すセット位置にあるレベリング5を図1の反時計方向に図示の角度θだけ鎖線位置まで回動させれば、該レベリング5のハウジング2との係合が外れ、このレベリング5をハウジング2から取り外すことができるため、必要に応じてレベリング5を取り外してハウジング2の凹部2Aとの間に形成された空間Sを開放すれば、該空間Sに通されたコード13を工具を用いることなく容易に取り外すことができる。
【0024】
更に、本実施の形態では、コード13を通すための空間Sをレベリング5との間で形成するための凹部2Aとしてハウジング2に既に形成されているものを利用するため、凹部2Aの形成に特別な型構造が不要となってコストダウンを図ることができる。
【0025】
尚、以上の実施の形態では、回転固定部材として特にレベリングを使用した形態について説明したが、回転固定部材としてはソケットカバーやバルブソケット等を使用することができる。
【0026】
又、以上の実施の形態では、レベリングとハウジングの前後方向にコードを挟み込むことによってコードを固定する構成を採用したが、レベリングや他の回転固定部材の形状によっては、回転方向にコードを挟み込む構成を採用することも可能である。
【0027】
更に、以上の実施の形態では、ハウジングの背面に露出したレベリングを回転固定部材として使用したが、内蔵式レベリング(ネジにて固定)であっても、これとハウジングの凹部との間に形成される空間にコードを通してこれを保持することができる。
【符号の説明】
【0028】
1 車両用灯具
2 ハウジング
2A ハウジングの凹部
2a ハウジングの支持リブ
3 灯室
4 カプラー
4a カプラーの差込部
5 レベリング(回転固定部材)
5A レベルングの軸部
6 ブラケット
7 ネジ
8 レベリングのスクリュー
9 支持部材
10 ネジ部材
11 ピボット軸
12,13 コード
S 空間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの背面に、回転固定部品を回転可能に配設するとともにコードを配索して成る車両用灯具において、
前記ハウジングの背面に形成された凹部を前記回転固定部品によって開閉可能とし、前記凹部と前記回転固定部品によって形成される空間に前記コードを通してこれを保持するようにしたことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記回転固定部品は、レベリング、ソケットカバー又はバルブソケットであることを特徴とする請求項1記載の車両用灯具。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−82051(P2011−82051A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−234178(P2009−234178)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】