説明

車両用灯具

【課題】光源の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜しているレンズが配置されている場合であっても、明るさが求められる方向に光を照射することが可能な車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両後方側に配置された光源と、車両前方側に配置されたアウターレンズと、前記光源と前記アウターレンズとの間にインナーレンズと、を備えており、インナーレンズには、前記アウターレンズを透過して照射される光が目的の配光を形成するように構成されたレンズカットが施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に係り、特に光源の前方に、車両側方に近づくほど大きく後方に傾斜しているレンズが配置されている車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、図3に示すように、光源210、220と、光源210、220の前方に配置され、車体前方から側方にかけて大きく回り込み、車両側方に近づくほど後方に大きく傾斜した形状の前面カバー230と、を備えた車両用灯具200が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−309960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記構成の前面カバー230を用いた場合、当該前面カバー230が車両側方に近づくほど大きく後方に傾斜している関係上、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸に対して車両側方80°方向)に光を照射することができないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、光源の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜しているレンズが配置されている場合であっても、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸に対して車両側方80°方向)に光を照射することが可能な車両用灯具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、車両後方側に配置された光源と、車両前方側に配置され、車両側方に近づくほど後方に傾斜した第1レンズ部と第2レンズ部とを含むアウターレンズと、前記光源から放射された光が入射するように、前記光源と前記アウターレンズとの間、かつ、前記光源の前方に配置された第3レンズ部を含むインナーレンズと、を備えており、前記第3レンズ部は、前記光源から放射された光を光軸に対して平行な光線に変換するように構成された入射面、前記入射面により変換された平行光線の光路上に配置された第1出射面及び第2出射面を含んでおり、前記第1出射面には、当該第1出射面から出射し、前記第1レンズ部を透過して照射される光が目的の配光を形成するように構成されたレンズカットが施されており、前記第2出射面には、当該第2出射面から出射する光が、第2レンズ部に向けて照射されるように構成されたレンズカットが施されており、前記第2レンズ部は、前記第2出射面から照射される光が入光する入光面と、前記入光面から入光した光を内部反射することで導光する導光レンズ部と、前記導光レンズ部内を導光された光を目的の方向に出射する出光面と、を含んでいることを特徴とする。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、光源の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜しているレンズが配置されている場合であっても、第3レンズ部の第2出射面に施されたレンズカット、第2レンズ部の入光面、導光レンズ部及び出光面からなる光学系の作用により、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸に対して車両側方80°方向)に光を照射することが可能な車両用灯具を実現することが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1レンズ部は、前記光源の車両側面寄りの側方から前記光源の前方を通り前記光源の車両中央寄り斜め前方に向かって延びるレンズ部であり、前記第2レンズ部は、前記第1レンズ部の先端から屈曲部を介して鋭角に折り返して前記光源の車両中央寄りの側方に向かって延びるレンズ部であることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、光源の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜しているレンズが配置されている場合であっても、第3レンズ部の第2出射面に施されたレンズカット、第2レンズ部の入光面、導光レンズ部及び出光面からなる光学系の作用により、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸に対して車両側方80°方向)に光を照射することが可能な車両用灯具を実現することが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光源の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜しているレンズが配置されている場合であっても、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸に対して車両側方80°方向)に光を照射することが可能な車両用灯具を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態の車両用灯具10の正面図である。
【図2】図1に示した車両用灯具10のA−A断面図である。
【図3】従来の車両用灯具200の水平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態である車両用灯具について図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態の車両用灯具10は、デイタイムランニングランプ及びポジションランプを含むコンビネーションランプであり、車両前部の左右両側にそれぞれ配置されている。左側と右側の車両用灯具10は左右対称で同一の構成であるため、以下左側の車両用灯具10を中心に説明する。図1、図2は、車両前部の左側に配置された車両用灯具10の例である。
【0014】
図1、図2に示すように、車両用灯具10は、車両後方側に配置された光源12、車両前方側に配置されたアウターレンズ14、光源12とアウターレンズ14との間に配置されたインナーレンズ16等を備えている。アウターレンズ14及びインナーレンズ16は、アクリルやポリカーボネイト等の透明樹脂材料を射出成形することで形成されている。
【0015】
光源12は、例えば、白色LED光源である。本実施形態では、法規が求める明るさの配光を実現するために、複数(図1中6個を例示)の光源12が鉛直方向に配置されている。なお、光源12は、6個に限られず、例えば、1〜5個又は7個以上であってもよい。
【0016】
図2に示すように、アウターレンズ14は、光源12の車両側面寄りの側方から光源12の前方を通り光源12の車両中央寄り斜め前方に向かって延びる第1レンズ部14a、第1レンズ部14aの先端から屈曲部14bを介して鋭角に折り返して光源12の車両中央寄りの側方に向かって延びる第2レンズ部14c等を含んでいる。
【0017】
インナーレンズ16は、光源12から放射された光が入射するように、光源12とアウターレンズ14との間、かつ、光源12の前方に配置された第3レンズ部16aを含んでいる。
【0018】
第3レンズ部16aは、光源12から放射された光を光軸AXに対して平行な光線に変換するように構成された入射面16a1(中央レンズ面16a4、円筒形状レンズ面16a5、放物面系全反射面16a6等)、入射面16a1により変換された平行光線の光路上に配置された第1出射面16a2及び第2出射面16a3等を含んでいる。
【0019】
第1出射面16a2には、当該第1出射面16a2から出射し、第1レンズ部14aを透過して前方に照射される光が、車両前部に正対する仮想鉛直スクリーン(図示せず)上に目的の配光(例えば、デイタイムランニングランプ用配光)を形成するように構成されたレンズカットC1(配光用拡散カット)が施されている。
【0020】
第2出射面16a3には、当該第2出射面16a3から出射する光Rayが、第2レンズ部14c(入光面14c1)に向けて照射されるように構成されたレンズカットC2が施されている。
【0021】
第2レンズ部14cは、第2出射面16a3から照射される光Rayが入光する入光面14c1、入光面14c1から入光した光Rayを内部反射することで導光する導光レンズ部14c2、導光レンズ部14c2内を導光された光を目的の方向(例えば車両前後方向に延びる光軸AXに対して車両側方80°方向)に照射するように構成された出光面14c3(例えば所定曲率のR面)等を含んでいる。
【0022】
入光面14c1は、第2出射面16a3から照射される光Rayが表面反射しないように、凸曲面とされている(図2参照)。また、複数の入光面14c1(図2中2つの入光面14c1を例示)を設けることで、より多くの光を入光させることが可能となる。
【0023】
次に、上記構成の車両用灯具10の動作について説明する。
【0024】
デイタイムランニングランプ用スイッチがオンされると、駆動電流(例えば0.38[A])が印加されて光源12が点灯する。
【0025】
光源12から放射された光は、第3レンズ部16aの入射面16a1の作用により光軸AXに対して平行な光線に変換された後、レンズカットC1の作用により制御された光として第1出射面16a2から出射し、第1レンズ部14aを透過して前方に照射される。これにより、車両前部に正対する仮想鉛直スクリーン(図示せず)上にデイタイムランニングランプ用配光が形成される。
【0026】
一方、ポジションランプ用スイッチがオンされると、デイタイムランニングランプ用スイッチオン時よりも少ない駆動電流(例えば0.06[A])が印加されて光源12が減光された状態で点灯する。
【0027】
光源12から放射された光は、デイタイムランニングランプ用スイッチオン時と同様の光路を通って前方に照射される。これとともに、光源12から放射された光は、図2に示すように、第3レンズ部16aの入射面16a1の作用により光軸AXに対して平行な光線に変換された後、レンズカットC2の作用により制御された光Rayとして第2出射面16a3から第2レンズ部14c(入光面14c1)に向けて照射される。この光Rayは、入光面14c1から第2レンズ部14c(導光レンズ部14c2)内に入光し、内部反射を繰り返しつつ導光されて出光面14c3から光軸AXに対して車両側方80°方向に照射される。以上により、ポジションランプの水平方向における視認角範囲の外側への配光規格を満足させることが可能となる。
【0028】
以上説明したように、本実施形態によれば、光源12の前方に、車両側方に近づくほど後方に傾斜している第1レンズ部14aが配置されている場合であっても(図2参照)、第3レンズ部16aの第2出射面16a3に施されたレンズカットC2、第2レンズ部14cの入光面14c1、導光レンズ部14c2及び出光面14c3からなる光学系の作用により、明るさが求められる方向(例えば、車両前後方向に延びる光軸AXに対して車両側方80°方向)に光を照射することが可能な車両用灯具10を実現することが可能となる。
【0029】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0030】
10…車両用灯具、12…光源、14…アウターレンズ、14a…第1レンズ部、14b…屈曲部、14c…第2レンズ部、14c1…入光面、14c2…導光レンズ部、14c3…出光面、16…インナーレンズ、16a…第3レンズ部、16a1…入射面、16a2…第1出射面、16a3…第2出射面、16a4…中央レンズ面、16a5…円筒形状レンズ面、16a6…放物面系全反射面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両後方側に配置された光源と、
車両前方側に配置され、車両側方に近づくほど後方に傾斜した第1レンズ部と第2レンズ部とを含むアウターレンズと、
前記光源から放射された光が入射するように、前記光源と前記アウターレンズとの間、かつ、前記光源の前方に配置された第3レンズ部を含むインナーレンズと、
を備えており、
前記第3レンズ部は、前記光源から放射された光を光軸に対して平行な光線に変換するように構成された入射面、前記入射面により変換された平行光線の光路上に配置された第1出射面及び第2出射面を含んでおり、
前記第1出射面には、当該第1出射面から出射し、前記第1レンズ部を透過して照射される光が目的の配光を形成するように構成されたレンズカットが施されており、
前記第2出射面には、当該第2出射面から出射する光が、第2レンズ部に向けて照射されるように構成されたレンズカットが施されており、
前記第2レンズ部は、前記第2出射面から照射される光が入光する入光面と、前記入光面から入光した光を内部反射することで導光する導光レンズ部と、前記導光レンズ部内を導光された光を目的の方向に出射する出光面と、を含んでいることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第1レンズ部は、前記光源の車両側面寄りの側方から前記光源の前方を通り前記光源の車両中央寄り斜め前方に向かって延びるレンズ部であり、
前記第2レンズ部は、前記第1レンズ部の先端から屈曲部を介して鋭角に折り返して前記光源の車両中央寄りの側方に向かって延びるレンズ部であることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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