説明

車両用灯具

【課題】発光素子から発せられて投影レンズに入射しない光を有効利用するとともに、車両用灯具の前方すぐ近くの視認性の向上を図る。
【解決手段】車両用灯具1は、前方へ向いた発光素子20と、発光素子20の前方に配置され、発光素子から発せられた光を前方に投影する投影レンズ50と、発光素子20の前方上側に配置され、投影レンズ50の上部周縁と発光素子20とを結ぶ面よりも後方上側に配置され、前上がり傾斜した第一の反射面41を下面に有した第一のリフレクタ40と、発光素子20の前方下側に配置されているとともに、投影レンズ50の下部周縁と発光素子20とを結ぶ面よりも後方下側に配置された第二の反射面31を上面に有した第二のリフレクタ30と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光ダイオード(22a)が前方に向くように設けられ、投影レンズ(24)が発光ダイオード(22a)の前方に配置され、投影レンズ(24)の焦点が発光ダイオード(22a)と略一致し、発光ダイオード(22a)から発せられた光を投影レンズ(24)によって略平行光として投影する車両用灯具(20A)が開示されている。特許文献2にも、同様な車両用灯具(10)が開示されており、この車両用灯具によって照明される範囲が横方向に広い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−213878号公報
【特許文献2】特開2007−335301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、車両用灯具に使用される発光ダイオードは指向性が低く、光が発光ダイオードによって前方の全方位に発せられる。そのため、発光ダイオードから投影レンズ50の周縁部の外側に向かう光は投影レンズによって投影されず、その光が有効利用されない。
また、車両用灯具の投影レンズの特性により、この車両用灯具によって照明される範囲が縦方向に広くない。そのため、車両用灯具の前方すぐ近くの視認性を向上することが望まれる。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、発光素子から発せられて投影レンズに入射しない光を有効利用するとともに、車両用灯具の前方すぐ近くの視認性の向上を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するべく、本発明に係る車両用灯具は、前方へ向いた発光素子と、前記発光素子の前方に配置され、前記発光素子から発せられた光を前方に投影する投影レンズと、前記発光素子の前方上側に配置され、前記投影レンズの上部周縁と前記発光素子とを結ぶ面よりも後方上側に配置され、前上がり傾斜した第一の反射面を下面に有した第一のリフレクタと、を備える。
【0006】
好ましくは、前記車両用灯具が、前記発光素子の前方下側に配置されているとともに、前記投影レンズの下部周縁と前記発光素子とを結ぶ面よりも後方下側に配置された第二の反射面を上面に有した第二のリフレクタを更に備える。
【0007】
好ましくは、前記第二の反射面が、前記発光素子から発せられた光を前記投影レンズと前記発光素子との間を前方上側に向けて反射し、前記第一の反射面が、前記発光素子から発せられた光及び前記第二の反射面によって反射された光を前方に向けて反射し、前記投影レンズが、前記第一の反射面によって反射された光を、前記発光素子から発せられて前記投影レンズによって投影された光によって形成された明部よりも下側に投影する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発光素子から発せられて投影レンズに入射しない上向きの光が第一の反射面によって前方に反射され、その反射光が投影レンズによって前方に投影されるから、光束利用効率が向上する。
発光素子から発せられた投影レンズに入射しない下向きの光が第二の反射面によって上に反射され、その反射光が第一の反射面によって前方に反射され、その反射光が投影レンズによって前方に投影されるから、光束利用効率が向上する。
第一の反射面が発光素子の前方上側に配置されているとともに、前上がり傾斜しているから、第一の反射面によって反射された光は、発光素子から投影レンズに直接入射した光によって形成される明部よりも下側に投影される。よって、車両用灯具の前方すぐ近くの視認性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】車両用灯具の縦断面図である。
【図2】前記車両用灯具の縦断面図である。
【図3】前記車両用灯具の横断面図である。
【図4】発光素子から投影レンズに直接入射した光によって形成される配光パターンを示した等照度線図である。
【図5】第一の反射面及び発光素子から第二の反射面に向かって第二の反射面で反射された光によって形成される配光パターンを示した等照度線図である。
【図6】図4に示す配光パターンと図5に示す配光パターンを合成したものである。
【図7】前記車両用灯具の照明範囲を説明するための図面である。
【図8】前記車両用灯具から第一の反射面及び第二の反射面を省略した場合の照明範囲を説明するための図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明を実施するための形態に係る車両用灯具について図面を用いて説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0011】
図1及び図2は、本発明の実施形態に係る車両用灯具1の縦断面図であり、図3は、この車両用灯具1の横断面図である。図1及び図2の断面は、灯具としての光軸Axを通って水平面に直交する面であり、図3の断面は、光軸Axを通って水平な面である。
【0012】
この車両用灯具1は、ベースユニット10、発光素子20、第一のリフレクタ40、第二のリフレクタ30及び投影レンズ50を備える。
【0013】
ベースユニット10は、ヒートシンクとして機能する。つまり、ベースユニット10が板状のフロントプレート11及び複数の放熱フィン12を有し、フロントプレート11が前方を向いて立てた状態に設けられ、これら放熱フィン12がフロントプレート11の後面から後方に延出するとともに、互いに間隔をおいて配列されている。
【0014】
ベースユニット10の前面には、つまり、フロントプレート11の前面には、発光素子20が取り付けられている。具体的には、発光素子20が基板21に実装され、その基板21がフロントプレート11の前面に取り付けられ、発光素子20が前方を向いている。発光素子20は、発光ダイオード、無機エレクトロルミネッセンス素子、有機エレクトロルミネッセンス素子その他の半導体発光素子である。発光素子20の左右方向の長さが上下方向の長さよりも長く、発光素子20が横長の形状(例えば、正面から見て長方形状)に成している。発光素子20は前後方向に沿った光軸を有する。発光素子20の光軸とは、光度が最大となる向きに発光素子20から延びる仮想的な線である。光軸Axは、発光素子20の光軸に対してほぼ平行であって、発光素子20の下縁の左右中心から前方に延びている。
【0015】
投影レンズ50は、発光素子20の前において光軸Ax上に配設されている。投影レンズ50は光軸Axと略一致する光軸を有しており、投影レンズ50の焦点近傍に発光素子20が配置されている。投影レンズ50は非球面型のメニスカス凸レンズであり、投影レンズ50の後面(入射面)51が非球面型の凹面である。図1及び図2に示すように、投影レンズ50の後面51が光軸Axを通る鉛直断面に描く曲線の上部は光軸Axに対してほぼ垂直な直線であり、その曲線の下部は後ろ下りに傾斜した弓形の曲線である。図3に示すように、投影レンズ50の後面51がAxを通る水平断面に描く曲線は、中央部が前側に凹むように湾曲した弓なり状である。投影レンズ50の後面51は、投影レンズ50の後面51が光軸Axを通る鉛直断面に描く曲線(図1及び図2参照)を投影レンズ50の後面51がAxを通る水平断面に描く弓形線に沿って平行移動して得られた面の形状である。投影レンズ50の前面(出射面)52が非球面型の凸面である。
【0016】
光軸Axを基準として発光素子20を中心として下に所定角度の向きから上に所定角度の向きまでの範囲では、発光素子20から発せられた光が投影レンズ50の後面51に入射する。投影レンズ50は、発光素子20から発せられた光を前方へ投影する。
【0017】
なお、図示は省略するが、投影レンズ50がレンズホルダーに保持され、そのレンズホルダーがベースユニット10、第一のリフレクタ40又は第二のリフレクタ30に固定されている。
【0018】
発光素子20から発せられた光のうち、投影レンズ50の下部周縁53と発光素子20とを結ぶ面よりも下向きの光は、投影レンズ50の後面51に入射しないし、投影レンズ50の上部周縁54と発光素子20とを結ぶ面よりも上向きの光も、投影レンズ50の後面51に入射しない。そのような光を有効利用するため、リフレクタ30,40がある。
【0019】
第二のリフレクタ30は、発光素子20の下方であってベースユニット10の前面(フロントプレート11の前面)に取り付けられている。第二のリフレクタ30の上面には、第二の反射面31が形成されている。第二の反射面31は、発光素子20の前方下側に配置されているとともに、投影レンズ50の下部周縁53と発光素子20とを結ぶ面よりも後方下側に配置されている。第二の反射面31は、凹面状に形作られている。具体的には、第二の反射面31は、回転放物面、回転楕円面又はそれらを基調とした自由曲面に形作られている。
【0020】
第一のリフレクタ40は、発光素子20の上方であってベースユニット10の前面に取り付けられている。第一のリフレクタ40の下面には、第一の反射面41が形成されている。第一の反射面41は、発光素子20の前方上側に配置されているとともに、投影レンズ50の上部周縁54と発光素子20とを結ぶ面よりも後方上側に配置されている。第一の反射面41は、前上がりに傾斜した平面であって、前方下側に向いている。具体的には、光軸Axを通る鉛直断面に沿って前上がりに傾斜した直線を光軸Axに直交した水平方向に平行移動して得られた平面である。第一の反射面41は、その前縁(上縁)が投影レンズ50の上部周縁54の近傍にまで延びており、その後縁(下縁)が発光素子20の上側近傍にまで延びている。第一の反射面41がこのような位置に配置されているから、第一の反射面41が大きくならず、車両用灯具1の大型化を防止することができる。
【0021】
この車両用灯具1は、すれ違い用ヘッドランプ、ヘッドランプの一部(車両用灯具1を他のランプと組み合わせてヘッドランプに用いる)、フォグランプ、デイタイムランニングランプ、コーナリングランプ、信号灯その他の灯具として利用される。車両用灯具1がすれ違い用ヘッドランプ、ヘッドランプの一部、フォグランプ又はデイタイムランニングランプに利用される場合には、光軸Axが車両前後方向に沿うように車両用灯具1が車両の前面に取り付けられる。車両用灯具1がコーナリングランプに利用される場合、光軸Axが車両前後方向に対して右又は左に所定角度(例えば、45°)傾くように車両用灯具1が車両の前面右下又は前面左下に取り付けられる。
【0022】
発光素子20が発光すると、発光素子20から発せられた光が投影レンズ50によって前方に投影される(図1参照)。
【0023】
発光素子20から発せられた光のうち、投影レンズ50の下部周縁53よりも下に向かう光が第二の反射面31によって反射される(図2参照)。第二の反射面31によって反射された光は、投影レンズ50の後面51と発光素子20の間を前方上側に向かう。第二の反射面31によって反射された光は、第一の反射面41によって前方に反射される。第一の反射面41によって反射された光は、投影レンズ50によって前方に投影される。
【0024】
発光素子20から発せられた光のうち、投影レンズ50の上部周縁54よりも上に向かう光が第一の反射面41によって前方に反射される(図2参照)。第一の反射面41によって反射された光は、投影レンズ50によって前方に投影される。
【0025】
車両用灯具1の配光特性について説明する。
図4〜図6は、車両用灯具1の前方の仮想スクリーンに形成される配光パターンを示した等照度線図である。車両用灯具1を左のコーナリングランプとして利用し、光軸Axを水平且つ車両前後方向に対して左に45°傾けたものとして、図4〜図6の座標軸を定める。図4は、発光素子20から投影レンズ50に直接入射した光によって形成される配光パターンを示したものである。図5は、第二の反射面31及び発光素子20から第一の反射面41に向かって第一の反射面41で反射された光によって形成される配光パターンを示したものである。図6は、図4に示す配光パターンと図5に示す配光パターンを合成したものである。
【0026】
発光素子20が光軸Axの上側に配置され、発光素子20の像が投影レンズ50によって上下左右に反転されて投影されるから、図4に示すように、発光素子20から投影レンズ50に直接入射した光によって明部A1が水平線よりも下に形成される。また、発光素子20の下縁が光軸Aに揃っているから、明部A1とそれよりも上の暗部を区切るカットオフラインL1が水平線に沿って形成される。投影レンズ50が発光素子20から発せられた光を横方向に広げつつ前方に投影するから、明部A1が横長となっている。
【0027】
第二の反射面31が投影レンズ50の下部周縁53と発光素子20とを結ぶ面よりも後方下側に配置されており、第一の反射面41が投影レンズ50の上部周縁54と発光素子20とを結ぶ面よりも後方上側に配置されているから、本来明部A1の形成に寄与する光が第一の反射面41や第二の反射面31によって反射されるということもない。
【0028】
第一の反射面41が光軸Axの上側に配置され、第一の反射面41が前上がりに傾斜し、第一の反射面41の反射光による像が上下左右に反転されて投影されるから、図5に示すように、第二の反射面31及び発光素子20から第一の反射面41に向かって第一の反射面41で反射された光によって明部A2が水平線よりも下に形成される。特に、第一の反射面41は発光素子20のすぐ上から更に上の範囲まで広がっているから、明部A2は明部A1の下側に形成される。
【0029】
明部A1と明部A2が合成されることによって、図6に示すような明部A3が水平線よりも下に形成される。そのため、発光素子20から投影レンズ50に直接入射しない光も有効利用することができ、光束利用効率が向上する。また、明部A1と明部A2が合成されるから、カットオフラインL1がより明瞭に表れる。
【0030】
明部A3が明部A1よりも下方に広がっており、ドライバーにとって路面や車両近辺の視認性が高まる。車両近辺の視認性が高まることは、特にコーナリングランプに有効である。図7は、車両用灯具1を車両99の前面右下に取り付けて車両用灯具1を点灯した場合、交差点を上から見て示した等照度線図である。一方、図8は、リフレクタ30,40が設けられていない場合の等照度線図である。図7,図8に示すように、リフレクタ30,40が設けられた車両用灯具1の照明範囲は、リフレクタ30,40が設けられていない車両用灯具の照明範囲よりも手前側に広くなっている。そのため、この車両用灯具1を利用すれば、車両99の左折・右折時には、横断歩道を横断する歩行者を認識しやすくなる。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態及びその変形例に限定して解釈されるべきではなく、適宜変更・改良が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0032】
1 車両用灯具
20 発光素子
30 第二のリフレクタ
31 第二の反射面
40 第一のリフレクタ
41 第一の反射面
50 投影レンズ
53 投影レンズの下部周縁
54 投影レンズの上部周縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方へ向いた発光素子と、
前記発光素子の前方に配置され、前記発光素子から発せられた光を前方に投影する投影レンズと、
前記発光素子の前方上側に配置され、前記投影レンズの上部周縁と前記発光素子とを結ぶ面よりも後方上側に配置され、前上がり傾斜した第一の反射面を下面に有した第一のリフレクタと、を備えることを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記発光素子の前方下側に配置されているとともに、前記投影レンズの下部周縁と前記発光素子とを結ぶ面よりも後方下側に配置された第二の反射面を上面に有した第二のリフレクタを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記第二の反射面が、前記発光素子から発せられた光を前記投影レンズと前記発光素子との間を前方上側に向けて反射し、
前記第一の反射面が、前記発光素子から発せられた光及び前記第二の反射面によって反射された光を前方に向けて反射し、
前記投影レンズが、前記第一の反射面によって反射された光を、前記発光素子から発せられて前記投影レンズによって投影された光によって形成された明部よりも下側に投影することを特徴とする請求項2に記載の車両用灯具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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