説明

車軸駆動装置

【課題】車軸駆動装置のケースは、一対の出力軸、差動機構、モータをともに収納するので、形状が複雑である。また、上下二つのケース半部同士も共通の形状とすることができない。そのため、なおもコスト高になる。
【解決手段】車軸駆動装置10にて、両出力軸4L・4Rを収納するケース70を設け、ケース70は、略同一のケース半部の一対を、互いに上下左右反転した状態で左右に結合してなり、接合した両ケース半部は、それぞれで各出力軸4L・4R及び入力軸162を軸受しており、左右各ケース半部の外側には、それぞれ各モータ21a・22aを装着し、各モータ21a・22aのモータ軸161・160をモータ連結用継手部分に連結した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車軸駆動装置の技術に関する。より詳細には、左右一対の車軸と、前記車軸を駆動する一対のモータとを、一体に組み合わせてなる車軸駆動装置の構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前後の車両フレームを胴折れ状に連結してなるアーティキュレート型車両があり、前記アーティキュレート型車両に、それぞれ、左右一対の車軸それぞれに連結される左右一対の出力軸と、前記両出力軸を差動連結する差動機構と、前記差動機構を駆動するモータとを、一つのケースに収納してなる車軸駆動装置が一対設けられ、それぞれの車軸駆動装置が各車両フレームに設けられる。そして、各ケースは上下二つのケース半部が接合される技術が公知となっている。
【特許文献1】米国特許第6,732,828号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
両車軸駆動装置は、ケース、一対の出力軸、差動機構、モータを標準化して、低コスト化を図っている。ただし、適用される車両によっては、その旋回性を確保するため、前記モータに油圧モータを採用し、一方の車軸駆動装置の油圧モータを可変容積型とし、他方の車軸駆動装置の油圧モータを固定容積型にすることはある。
しかし、前記ケースは、一対の出力軸、差動機構、モータをともに収納するので、形状が複雑である。また、上下二つのケース半部同士も共通の形状とすることができない。そのため、なおもコスト高になる。また、前記ケース内には複雑な機器類が設けられているので、ケース内の構成を変更することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0005】
即ち、請求項1においては、左右一対の車軸それぞれに連結される左右一対の出力軸と、該両出力軸を駆動する一対のモータと、共通の入力軸であってモータ連結用継手部分を両端に備える入力軸とを、一体に組み合わせてなる車軸駆動装置であって、該両出力軸を収納するケースを設け、該ケースは、略同一のケース半部の一対を、互いに上下左右反転した状態で左右に結合してなり、接合した該両ケース半部は、それぞれで各出力軸及び入力軸を軸受しており、該左右各ケース半部の外側には、それぞれ各モータを装着し、該各モータのモータ軸を該モータ連結用継手部分に連結したものである。
【0006】
請求項2においては、前記一対のモータのどちらか一方、あるいは両方を選択して前記両出力軸を駆動することができるものである。
【0007】
請求項3においては、前記モータは油圧モータであり、前記一対のモータのうち片方のモータを収容するモータケースに、両モータと協働する油圧ポンプを収容するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0009】
請求項1のように構成したので、ケース半部は左右いずれのケース半部としても使用できるので、部品製造コストが削減され、物流や部品管理の効率化も図れるので車軸駆動装置の生産コストを削減することができる。また、ケースにモータを収納しないため、各ケース半部は、モータの収納スペースを確保する必要が無く、コンパクトで簡易な形状とすることができる。また、モータを外付けとすることで、モータの取り付け、交換作業が容易であるし、複雑な機器類をケース内に設ける必要が無いので、ケース内の構成を容易に変更することが可能である。
また、モータ連結用継手部分を両端に備えることで、モータを取り付ける際に、ケースが閉じられた状態での作業が可能となるので、車軸駆動装置の組立性が向上する。また、モータをケースから取り外す際には、ケースを両ケースに分割することなく、モータをケースから外すだけで、モータ軸を継手から容易に外すことができる。
【0010】
請求項2の如く構成したので、通常時には、一方のモータのみを使用し、駆動力をさらに得たい場合に、他方のモータをも使用することで、状況に応じた駆動力を得ることができる。
【0011】
請求項3の如く構成したので、ポンプを設置する場所を車両に必要とすることがなく、車両組立工数を低減することができる。また、モータケース内にポンプを配置することで、ポンプケースが不要となり、部品数が減ることにより、生産コストを削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明に係る車軸駆動装置の一実施例である車軸駆動装置10を備えた作業車両の例であるアーティキュレート型の乗用芝刈り機(以下、車両100とする)の構成について説明する。
なお、以下において、図1における矢印Fの方向を前とし、その反対方向を後とし、前後方向を規定する。
【0013】
図1及び図2には、車両前部に作業装置としてのモア3を備える車両100が示されている。
【0014】
フロントフレーム1の左右両端部には、各軸受174を介して、左右の前輪7L・7Rの各車軸7aが回転自在に支持されている。左右の前輪7L・7R間にて、フロントフレーム1に車軸駆動装置10が取り付けられ、車軸駆動装置10より左右方向に延設された出力軸4L・4Rには、それぞれ前輪7L・7Rの各車軸7aが接続固定されている。
【0015】
一方、リアフレーム2の左右両端部には、各軸受174を介して、左右の後輪6L・6Rの各車軸6aが回転自在に支持されている。左右の後輪6L・6R間にて、リアフレーム2に車軸駆動装置20が取り付けられ、車軸駆動装置20より左右方向に延設された出力軸5L・5Rには、それぞれ後輪6L・6Rの各車軸6aが接続固定されている。
【0016】
車軸駆動装置10及び車軸駆動装置20は、ケース半部87・88からなる同一形状のケース70を有している。車軸駆動装置10のケース70からは、左右の出力軸4L・4Rが左右両側に突設されており、車軸駆動装置20のケース70からは左右の出力軸5L・5Rが左右両側に突設している。
【0017】
また、図2に示すように、車軸駆動装置10・20の配置は、本実施例において、両車軸駆動装置10・20ともにフロントフレーム1及びリアフレーム2の左側に寄せられている。左の出力軸4L・5Lが、カップリングスリーブ145を外嵌することにより、左の各車輪である前輪7L・後輪6Lの車軸7a・6aに同一軸芯上に直接接続されているのに対し、右の出力軸4R・5Rは、それぞれ延長軸146・147を介して、右の各車輪である前輪7R・後輪6Rの車軸7a・6aに同一軸芯上に接続されている。したがって、フロントフレーム1及びリアフレーム2それぞれにおいて、延長軸146・147の上方に広いスペースが空き、このスペースに様々な機器を配置することが可能である。
【0018】
なお、車軸駆動装置10は、ケース70左側に外装モータユニット21が外付けされるため、車軸駆動装置20よりも、外装モータユニット21の配置スペースの幅だけフロントフレーム1の中央付近に寄って配置されている。
【0019】
図2に示すように、車軸駆動装置10のケース70は、左右一対のタブ1a・1a及びその後方のタブ1bにボルト122で取り付けられ、3点支持されてフロントフレーム1に吊設される。同様に、車軸駆動装置20のケース70も、リアフレーム2の左右一対のタブ2a・2a及びその後方のタブ2bにボルト122で取り付けられて、3点支持されてリアフレーム2に吊設されている。
【0020】
車軸駆動装置10のケース70左側には外装モータユニット21が、右側には外装モータユニット22が、それぞれ外付けされている。本実施例の車両100では、車軸駆動装置10は、ケースの長手方向を車両の前後水平方向に配置されている。なお、車軸駆動装置20は、車軸駆動装置10と同様の構成にて、該車軸駆動装置20のケース70の左右一側のみに外装モータユニット80を外付けしたものであり、本実施例においては、右側であるが、右側であることに限定されない。
【0021】
図1及び図2に示すように、フロントフレーム1の後端部とリアフレーム2の前端部とはピボット点となる連結部8にて水平方向に回動自在に連結されている。こうして車両100は、フロントフレーム1とリアフレーム2とを左右屈折状に相対回動可能なアーティキュレートタイプの車両に構成されている。
【0022】
連結部8の構成について詳しく説明する。図1に示すように、フロントフレーム1の左右中央後端部には鉛直の軸孔を有するボス17が固設され、リアフレーム2の左右中央前端部には、横倒U字状のブラケット51が固設されている。ブラケット51の上端部と下端部との間に前記ボス17が配置され、鉛直の連結軸18がブラケット51とボス17に貫通されることで、ブラケット51とボス17が枢結されている。このようにブラケット51、ボス17、連結軸18にて、フロントフレーム1及びリアフレーム2同士が相対回動自在に連結される連結部8が構成されている。
【0023】
図1に示すように、車軸駆動装置10は、フロントフレーム1より下方に吊設されている。フロントフレーム1上においては、前部にステアリングコラム15、ステアリングハンドル11、フットペダル12、図示せぬブレーキペダル等が配設されて、ステアリングコラム15の後方に運転用のシート14が配置されることで、フロントフレーム1上に運転操作部13が構成されている。
【0024】
また、ステアリングハンドル11が回動操作されることで、連結軸18を中心にフロントフレーム1及びリアフレーム2が左右屈折状に相対回動されて、これにより車両100が旋回される。フットペダル12は、後述のように車軸駆動装置10・20の変速用の油圧ポンプ23を制御する操作具である。また、前記ブレーキペダルは、車軸駆動装置10に備えた、後述するブレーキ機構を操作する操作具である。
【0025】
連結部8の配置は、車両100において、平面視で出力軸4R・4Lの回転軸芯線と出力軸5R・5Lの回転軸芯線との間の中心位置(出力軸4L・4Rの回転軸芯線へも出力軸5L・5Rの回転軸芯線へも等距離の位置)より出力軸5L・5Rの回転軸芯線側にオフセットされており、フロントフレーム1がリアフレーム2よりも縦方向に長い構成とされている。これにより、運転操作部13、すなわち運転者の搭乗スペースが広くされている。
【0026】
図1及び図2に示すように、リアフレーム2上においては、エンジン9を搭載し、前記エンジン9の後方にて、油圧ポンプ23を内装する油圧ポンプユニット123が搭載されている。油圧ポンプユニット123の上部にはチャージポンプ24が配設されて、前記油圧ポンプ23から延設されたポンプ軸30が前記チャージポンプ24の上面より突出して、冷却ファン52が固設されている。
【0027】
また、図2に示すように、油圧ポンプユニット123の左側にはリザーバタンク35が配設されている。油圧ポンプ23、チャージポンプ24、冷却ファン52を具備する油圧ポンプユニット123及びリザーバタンク35等の機器が、ボンネット16にて覆われている。
【0028】
なお、図2において、油圧ポンプユニット123及びリザーバタンク35は、車軸駆動装置20を明確に示すための便宜上、リアフレーム2の後方に描かれているが、実際は、図1に示すように、リアフレーム2の上に搭載されている。
【0029】
油圧ポンプ23は、可変容積型油圧ポンプである。そして、油圧ポンプユニット123のハウジングに、油圧ポンプ23の可動斜板84(図3参照)と連動連結された変速レバー54が枢支され、フロントフレーム1の運転操作部13に設置されたフットペダル12と、ワイヤ53を介して連動連結されている。
【0030】
フットペダル12は、中立位置から前後両方に踏み込み可能なシーソー型ペダルとなっており、前記フットペダル12の踏み込み方向に従って、変速レバー54が前方または後方に回動され、また、前記フットペダル12の踏み込み量に従って前記変速レバー54の回動量が決定される。そして、変速レバー54の回動方向及び回動量に応じて可動斜板84の傾斜方向及び傾斜角が設定され、可動斜板84の傾斜方向及び傾斜角に応じて、油圧ポンプ23の油吐出方向及び油吐出量、すなわち、出力軸4R・4Lの前後回転方向及び回転速度が設定される。
【0031】
また、図1に示すように、リアフレーム2において、エンジン9から下方に延出されている鉛直のエンジン出力軸47には、上下のエンジン出力プーリ28・29が軸着されている。また、油圧ポンプユニット123から延出される鉛直のポンプ軸30は、エンジン出力軸47と平行に配置され、その端部には、ポンプ入力プーリ31が軸着されている。エンジン出力プーリ28と、ポンプ入力プーリ31とにポンプ駆動ベルト32が巻回されている。この構成により、エンジン出力が、エンジン出力プーリ28から、ポンプ駆動ベルト32を介して、ポンプ入力プーリ31に伝達され、ポンプ軸30が回転されるようになっている。
【0032】
フロントフレーム1の前下方外側には、作業装置としてのモア3が配設されている。モア3は、エンジン9にて駆動される回転刃50を備えている。モア3には、回転刃50の駆動軸たる上方突出上のモア入力軸49が備えられ、これに作業装置駆動入力プーリ48が軸着されている。前記連結部8では、連結軸18の下方延出部に上下のプーリ19・25が支持されている。プーリ19及びエンジン出力プーリ29には、第一作業装置駆動ベルト26が巻回される。また、プーリ25及び作業装置駆動入力プーリ48には、第二作業装置駆動ベルト27が巻回される。こうして、エンジン出力軸47とモア入力軸49との間に、エンジン出力プーリ29、プーリ19・25、作業装置駆動入力プーリ48及び第一作業装置駆動ベルト26・第二作業装置駆動ベルト27よりなるモア駆動用ベルト伝動機構が構成されている。
【0033】
次に、図3に示される車両100の油圧回路機構について説明する。
前記油圧ポンプユニット123における油圧ポンプ23と、車軸駆動装置20における外装モータユニット80内の油圧モータ80aと、車軸駆動装置10における外装モータユニット21・22内のそれぞれの油圧モータ21a・22aとは、閉回路を構成する油路81、82及び83を介して互いに流体接続され、静油圧式無断変速装置(以後、「HST」)を構成している。
【0034】
車軸駆動装置10の一対の油圧モータ21a・22aと、車軸駆動装置20の油圧モータ80aとは、油路82を介して互いに直列の関係で、油圧ポンプ23に流体接続されている。また、車軸駆動装置10における油圧モータ21a・22a同士は、油路81・82間にて、互いに並列の関係で、油圧ポンプ23に流体接続されている。油圧ポンプ23の吐出油は、油路81・83のいずれか一方から両車軸駆動装置10・20の油圧モータに供給されるものであって、たとえば、油圧ポンプ23の吐出油が油路81から吐出される場合は、車軸駆動装置10の両油圧モータ21a・22aに並列状に分配された後、分配された油が油路82で合流して車軸駆動装置20の油圧モータ80aに供給され、その後、油路83を介して油圧ポンプ23に戻される。
【0035】
ただし、車軸駆動装置10において、油圧モータ22aはメインモータであって、油圧ポンプ23からの油の吐出がある限り、油圧モータ22aには油が供給される。一方、油圧モータ21aはアシストモータとなっており、後述のように、外装モータユニット21に備えたバイパスバルブ38bを閉弁すれば、油圧ポンプ23の吐出油は油圧モータ21aに供給され、バイパスバルブ38bを開弁すれば、油圧ポンプ23の吐出油は油圧モータ21aには供給されない。
【0036】
車軸駆動装置10における油圧モータ21a・22aのモータ軸160・161(図4参照)同士は一体回転自在に同一軸芯上に接続されている。この一体上の両モータ軸160・161が、バイパスバルブ38b閉弁時にはメインモータである油圧モータ22aとアシストモータである油圧モータ21aとにより駆動され、バイパスバルブ38b開弁時にはメインモータである油圧モータ22aのみにより駆動される。なお、バイパスバルブ38b開弁時には、外装モータユニット21内で、バイパスバルブ38bを通過する油が油圧モータ21aを迂回するので、油圧モータ22aにて駆動されるモータ軸160・161に追従して油圧モータ21aが回転可能である。つまり、油圧モータ22aの出力に対して油圧モータ21a内の油がブレーキ作用をすることはない。
【0037】
油圧ポンプ23は、前述のように、リアフレーム2上の油圧ポンプユニット123に収納され、ポンプ入力プーリ31、エンジン出力プーリ28及びポンプ駆動ベルト32を介してエンジン9に駆動連結されている。油圧ポンプ23には、ポンプ容積制御装置としての可動斜板84が備えられており、可動斜板84は、図1にて示される変速レバー54に連結されるものである。また、油圧ポンプユニット123には、油圧ポンプ23とともにポンプ軸30にて駆動されるようにチャージポンプ24が付設されている。
【0038】
チャージポンプ24は、ラインフィルタ77を介して、リザーバタンク35から油を吸入して、油圧ポンプユニット123へと吐出している。チャージポンプ24からの吐出油は油路81・83に各別に接続した一対のチェックバルブ79に供給されている。油路81・83のうち低圧側のチェックバルブ79が開弁され、この開弁したチェックバルブ79を介してHST閉回路に油が供給されている。
【0039】
また、油圧ポンプユニット123内においては、バイパスバルブ38cが設けられている。バイパスバルブ38cは、車両100を牽引する際に後輪6L・6R、及び前輪7L・7RをHST閉回路内の油圧から解放して自由回転させるために開弁操作される。また、バイパスバルブ38cは、車両100に油圧ポンプユニット123及び車軸駆動装置10・20を装着して、HST閉回路が構成された直後の該閉回路内に存在するエアを抜くためにも開弁操作される。
【0040】
バイパスバルブ38cは、通常においては図3にて示されるように閉弁されており、車両100を牽引する場合等の必要時に、バイパス操作レバー150cの操作により、バイパスバルブ38cが強制的に開弁されて、調整弁78にて油の圧力を調整したのち、油路81・83より油が油溜まり85へとドレンされるものである。
【0041】
車軸駆動装置10の外装モータユニット22は、その油圧モータ22aが可変容積型油圧モータであり、モータ容積制御装置としての可動斜板86が備えられている。可動斜板86は、図2において示される操作アーム42に連結されるものである。
【0042】
一方、車軸駆動装置10の外装モータユニット21についての油圧モータ21a及び車軸駆動装置20の外装モータユニット80についての油圧モータ80aは、両モータともに固定容積型油圧モータであり、固定斜板が備えられている。したがって、油圧モータ21a・80aについては、前記操作アーム42に該当する操作部材は設けられていない。
【0043】
外装モータユニット80にはバイパスバルブ38bが設けられていて、通常においては、図3にて示されているように閉弁されているが、車両100を牽引する場合や、車両100におけるHST閉回路の完成直後でエアを抜く必要がある場合等に、バイパス操作レバー150bの操作にて、バイパス弁を強制的に開弁して、油路82・83から油を外装モータユニット80の筐体内の油溜まりへとドレンする。
【0044】
また、外装モータユニット22においても、バイパスバルブ38d及びバイパス操作レバー150dが設けられており、バイパスバルブ38b及びバイパス操作レバー150bと同一の機能を果たし、バイパス操作レバー150dの操作にて、バイパス弁を強制的に開弁することで、油路81・82から油を外装モータユニット22の筐体内の油溜まりへとドレンする。
【0045】
また、外装モータユニット21においても、バイパスバルブ38a及びバイパス操作レバー150aが設けられている。通常においては、図3にて示されるように開弁して、油圧モータ21aに油を供給せず、一体回転可能に接続された後述するモータ軸160・161及び入力軸162(図4参照)を、油圧モータ22aのみで駆動する状態としているが、出力軸4L・4Rを駆動するのに大きな力を必要とする場合に、バイパス操作レバー150dの操作でバイパスバルブ38aを閉弁することにより、油圧モータ21aに油が供給され、両油圧モータ22a・21aを用いてモータ軸160・161を駆動することができる。
【0046】
油圧ポンプユニット123及び外装モータユニット80・21・22内の油の温度変化に伴う体積変化を調整するために、それぞれに独立して流体接続されるリザーバタンク35が設けられている。すなわち、油圧ポンプユニット123、外装モータユニット21、外装モータユニット22及び外装モータユニット80とは、互いに独立して、それぞれのオーバーフローする油がリザーバタンク35にて吸収されるようになっている。
【0047】
次に、車軸駆動装置10の構成について図1〜図4をもとに説明する。
なお、車軸駆動装置20は、車軸駆動装置10に外付けされる外装モータユニット21・22のうち、外装モータユニット21と同一構成である外装モータユニット80のみがケース70に外付けされた構成であり、さらには、ケース70は車軸駆動装置10・20において共通する構成であることから、説明は省略する。
【0048】
車軸駆動装置10は、ケース70及び外装モータユニット21・22から構成され、前記ケース70は出力軸4L・4Rに対して直角な接合面を通じて接合された、いわゆる縦割ケースであって、左右のケース半部87・88が接合されてなる。
【0049】
本実施例では、外装モータユニット22が取り付けられた方をケース半部88、外装モータユニット21が取り付けられた方をケース半部87としている。ケース半部87・88は共通の型から成形されていて、略同一形状であり、かつ、互いを上下左右反転して接合することが可能な形状となっている。つまり、ケース70を構成する場合は、略同一の二つのケース半部87・88が互いに上下左右に反転された状態で接合されるのである。
【0050】
ケース70が縦割りであることから、左右各車軸7aは左右2個のケース半部87・88それぞれで支持されることになり、従来の横割りケースにおいては一方のケース半部で出力軸が支持されていたことに比べ、ケース70の耐久性も向上するものである。
【0051】
なお、本実施例においては、前述の通り、外装モータユニット22におけるモータは可動斜板86を備えた油圧モータ22aであり、外装モータユニット21におけるモータは固定斜板43を備えた油圧モータ21aであるが、両外装モータユニット22・21は、ケース70に外付けするものであるので、互いの配置を入れ換えたり、さらには、電動モータ等をモータとして備えた別タイプのモータユニットに置換えることも可能である。
【0052】
前述のように、車軸駆動装置10では、両ケース半部87・88を互いに上下左右反転して、それぞれの内腔部がそれぞれ向かい合わされた状態で接合されることで、車軸駆動装置10のケース70が構成される。内腔部内においては、ケース70に外付けされた外装モータユニット21・22から突出されているそれぞれのモータ軸160・161と、モータ連結用継手169・169を介して連結された入力軸162とによって、油圧モータ21a・22aの駆動力が減速ギア列68を介してデフギア装置44に伝達される構成となっている。
【0053】
各ケース半部87・88の外側面には、内側に凹設して形成したモータユニット付設面89・89が形成され、モータユニット付設面89・89の中心には、モータ軸挿通用の、内外に貫通する軸孔108が穿設されている。
【0054】
外装モータユニット21・22は、後述するモータケース163及びモータケース90それぞれを、車軸駆動装置10のケース半部87・88のモータユニット付設面89・89に嵌合付設され、前記車軸駆動装置10と一体的な構成となっている。
【0055】
外装モータユニット22の筐体は、モータケース90、サイドカバー92及び油路板91を組み合わせて構成されており、該モータケース90の一側面が、ケース半部88のモータユニット付設面89に嵌合され、該モータケース90の外面に油路板91が固設されている。なお、油路板91はボルト191にてモータケース90に締止され、サイドカバー92はボルト192にてモータケース90に締止されている。
【0056】
油圧モータ22aにおいて、油路板91のケース70側には、弁板94が固設され、弁板94には、ピストン95を往復動自在に嵌入しているシリンダブロック55が摺動回動自在に取り付けられている。
【0057】
シリンダブロック55はその回転軸上に配したモータ軸161に相対回転不能に係合されている。ピストン95の頭部が、可動斜板86のスラスト軸受96に当接されており、可動斜板86をモータ軸161が遊転自在に通り、さらに、軸孔108を通って、車軸駆動装置10へと延伸されている。また、モータ軸161は油路板91に設けられた孔より外装モータユニット22外側へと延出して、これに冷却ファン170が固設されている。
【0058】
可動斜板86は、モータ軸161の両側に配置される一対のトラニオン軸75・76を有している。トラニオン軸76はモータケース90の側壁に、トラニオン軸75はサイドカバー92にそれぞれ回動自在に支持されている。またトラニオン軸75の外端部はアーム軸97となっていて、サイドカバー92より外側に延伸されており、アーム軸97の外端部に操作アーム42のボス部42aが固設されている。
【0059】
操作アーム42には、連結ロッドやワイヤ等のリンク部材を介して、運転操作部13のステアリングハンドル11の回動操作状態、あるいは、フロントフレーム1とリアフレーム2との屈折状態が伝達される。すなわち、車両100の旋回角度の変化に伴い、可動斜板86の斜板角を変化させて、出力軸4R・4Lの回転速度を、固定容積型の油圧モータ80aにて駆動される出力軸5R・5Lの回転速度に対して相対的に増減させる。
【0060】
車両100は、左右の後輪6L・6Rの軸芯延長線と、左右の前輪7L・7Rの軸芯延長線との交点を旋回中心として、旋回する。この車両旋回時に、フロントフレーム1とリアフレーム2とが連結部8にて屈折するが、前述の如くフロントフレーム1をリアフレーム2よりも長手方向に長くしているので、前輪7L・7Rの左右中間点からの旋回中心までの距離よりも後輪6L・6Rの左右中間点からの旋回中心までの距離の方が大きくなる。したがって、出力軸4R・4Lと出力軸5R・5Lとの回転速度が同じであれば、より速い回転速度を必要とする後輪6L・6Rの引きずりが発生し、芝地などのデリケートな路面を荒らしたりタイヤの磨耗を早めたりすることになる。
【0061】
しかし、ステアリングハンドル11の操舵角が増加していくにつれて可動斜板86をモータ容積が増加されるように連動させて、出力軸4R・4Lの回転速度を減速させる構成にすることで、前輪7L・7R、後輪6L・6Rの相対的な回転速度の調整が可能となり、車輪を引きずることなく車両の旋回が可能となる。なお、車軸駆動装置10の油圧モータ22aを固定容積型、車軸駆動装置20の油圧モータ80aを可変容積型にして、油圧モータ80aの可動斜板をステアリングハンドル11に連動連係する構造とし、ステアリングハンドル11の操舵角が増加するにつれて油圧モータ80aの容積を減少し、出力軸5L・5Rを増速させる構造としても、車輪の引きずりを防止できる。
【0062】
なお、連結部8の配置が、平面視における車両において、出力軸4R・4Lの回転軸芯と出力軸5R・5Lの回転軸芯線との間の中心位置にあれば、旋回時に車輪の引きずり防止のために前後輪の回転を速度調整することは不要である。したがって、この場合は、車軸駆動装置10・20いずれの油圧モータも固定容積型にしておいてよい。
【0063】
一方、外装モータユニット21の筐体は、モータケース163及び油路板164を組み合わせて構成されており、該モータケース163の一側面がケース半部87のモータユニット付設面89に嵌合され、該モータケース163の外面に油路板164が固設されている。なお、油路板164はボルト166にてモータケース163に締止されている。
【0064】
油圧モータ21aにおいて、油路板164のケース70側には、弁板167が固設され、弁板167には、ピストン165を往復動自在に嵌入しているシリンダブロック168が摺動回動自在に取り付けられている。シリンダブロック168はその回転軸上に配したモータ軸160に相対回転不能に係合され、固定斜板43とモータ軸160が遊転自在に通っている。ピストン165の頭部には固定斜板43に当接しており、固定斜板43はモータケース163に設けられた凹部に嵌設されている。また、モータ軸160は油路板164に設けられた孔より外装モータユニット21外側へと延出して、これに冷却ファン171が固設されている。
【0065】
これらの構成により、ケース半部は左右いずれのケース半部として使用できるので、部品製造コストが削減され、物流や部品管理の効率化も図れるので車軸駆動装置10の生産コストを削減することができる。また、このようにケース70には、油圧モータ21a・22aを収納しないために、各ケース半部87・88は、モータの収納スペースを確保する必要が無く、コンパクトで簡易な形状とすることができる。また、油圧モータ21a・22aを外付けとすることで、モータの取り付け、交換作業が容易であるし、複雑な機器類をケース内に設ける必要が無いので、ケース内の構成を容易に変更可能である。
【0066】
次に、車軸駆動装置10の内腔部内の構成について説明する。
油圧モータ21a・22aのモータ軸161・160は、外装モータユニット21・22から突出して、それぞれがモータ連結用軸手169・169を介して、スプライン嵌合にて、入力軸162の左右両端と同一軸芯上に一体回転自在に連結されている。
【0067】
両ケース半部87・88においては、モータ連結用継手169・169近傍内側に軸受177・177を配置して、入力軸162を回転自在に支持している。また、外装モータユニット21・22においては、モータ連結用継手近傍外側にオイルシール176・176及び軸受175・175を配置してモータ軸161・160をそれぞれ回転自在に支持している。
【0068】
このように、モータ連結用の継手部分を入力軸162の両端に備えることで、本実施例の油圧モータ22a・21aなどのモータを取り付ける際に、ケース70が閉じられた状態での作業が可能となるので、車軸駆動装置10の組立性が向上する。また、油圧モータ22a・21aをケース70から取り外す際には、ケース70を両ケース半部87・88に分割することなく、外装モータユニット22・21ごと、モータケース90・163をケース70から外すだけで、モータ軸161・160をモータ連結用継手169から容易に外すことができる。
【0069】
次に、車軸駆動装置10が備えるブレーキ機構について説明する。
入力軸162には、モータ出力ギア104及びブレーキディスク59が固設されており、ブレーキディスク59を含めて、モータ軸161・160を制動する構成のブレーキ機構が配設されている。
【0070】
ブレーキディスク59は摩擦部材57a・57b間に配置されており、鉛直(モータ軸161・160、出力軸4L・4Rと直角方向)のブレーキカム軸61がケース半部87に回動自在に支持されていて、ケース半部87の上部から鉛直方向に突出し、ここに図示せぬブレーキアームが固設されている。ブレーキディスク59を挟んで摩擦部材57bの反対側にて摩擦部材57aが、ケース70(ケース半部87)の内壁に形成したブレーキパッド受け凹部64に装着固定されている。
【0071】
ケース半部87・88は、いずれも、以上のブレーキ機構の構成部品を取付可能に構成されている。たとえば、ケース半部87・88のいずれにも、ブレーキパッド受け凹部64が形成されている。本実施例においては、前述のように、ブレーキ機構を、ケース半部87側のモータユニット付設面に配置しているが、ケース半部87・88は同一形状であるので、ケース半部88側のモータユニット付設面89に配置することも可能である。
【0072】
次に、減速ギア列68について説明する。
ケース70内にて、入力軸162と平行して、回転自在にカウンタ軸67が配設されている。各ケース半部87・88には、カウンタ軸67の両端の各々を軸受する軸受66嵌合用の凹部156が形成されている。そして、ケース半部87・88の凹部156・156は、ケース半部87・88を、接合のために互いに上下左右反転した状態で対峙させると、同一軸芯上に対向配置されるよう構成されている。
【0073】
これによって、カウンタ軸67の左右端が、ケース70として接合されたケース半部87・88に各別に支持されつつ、互いに芯ずれのない状態で配置され、したがって、カウンタ軸67は傾くことなくモータ軸65と平行に配置された状態でケース70に支持されるのである。
【0074】
カウンタ軸67の両端間(軸受66・66間)にて、一方の軸芯端より軸芯中央部まで、スプライン67aが外周に形成されており、スプライン67aに大径ギア105と小径ギア106とがスプライン嵌合にて相対回転不能に装着されている。
【0075】
大径ギア105は、入力軸162に固設したモータ出力ギア104と噛合し、小径ギア106は、デフギア装置44のブルギア69と噛合する。大径ギア105及び小径ギア106にて、入力軸162からデフギア装置44へと動力を伝達する減速ギア列68を構成している。小径ギア106を介して大径ギア105と軸芯方向反対側にて、カウンタ軸67の外周面にはスプラインを形成しておらず、この外周面には、スペーサカラー67bが外装されている。
【0076】
このように、カウンタ軸67上にて、小径ギア106を挟んで、大径ギア105とスペーサカラー67bとを、ケース半部88内とケース半部87内とに振り分け配置している。大径ギア105・スペーサカラー67bのそれぞれを、ケース半部87・88のいずれに配するかは、大径ギア105と噛合するモータ出力ギア104が、ケース半部87・88のいずれにて入力軸162に設けられているかによって決定する。
【0077】
図4の実施例においては、噛合し合うモータ出力ギア104・大径ギア105がケース半部87内に配設されている。なお、大径ギア105をケース半部87・88のいずれに配設するかに応じて、カウンタ軸67を軸芯方向にて反転させるだけで、スプライン67aを大径ギア105に対応する位置に配置することができる。
【0078】
次に、デフギア装置44の構成について、図4により説明する。
デフギア装置44は、小径ギア106と噛合するブルギア69と、ブルギア69の内周より内側に突設するピニオンシャフト73に回転自在に支持されたピニオン72と、それぞれ出力軸4R・4Lに軸着されピニオン72に左右方向より噛合させるサイドギア71等から構成されている。
【0079】
また、両出力軸4L・4Rの内端部が該ピニオンシャフト73の中央軸孔に相対回転自在に嵌入されている。このように、車軸駆動装置10は、モータ軸160・161の駆動力を、入力軸162、減速ギア列68、ブルギア69、ピニオン72、サイドギア71の順で出力軸4R・4Lに伝達させる構成としている。
【0080】
ケース半部87・88には、出力軸4L・4Rのそれぞれを支持するために、出力軸4L・4Rの軸芯方向に(左右方向に)延出し、軸芯を覆う形状とした出力軸支持部87a・88aをそれぞれに形成している。そして、出力軸支持部87a・88aの各端部の、各出力軸4L・4Rを挿通するための軸孔同士は、ケース半部87・88を、接合のために互いに上下左右反転した状態で対峙させると、同一軸芯上に対向配置されるよう構成されている。これにより、左右の出力軸4L・4Rが、ケース70として接合されたケース半部87・88にて各別に支持されつつ、互いに同一軸芯上に配置された状態でケース70に支持されるのである。
【0081】
各出力軸支持部87a・88a内にて、出力軸4L・4Rはそれぞれ、デフギア装置44の左右各端の近傍に配置された軸受ブッシュ45、及び各出力軸支持部87a・88aの外端に配置された軸受74によって支持されている。つまり、ケース半部87・88を接合してなるケース70の、左部には、左の出力軸4Lを支持する左側の軸受ブッシュ45・軸受74のセットが、右部には、右の出力軸4Rを支持する右側の軸受ブッシュ45・軸受74のセットが配置されている。
【0082】
また、各出力軸支持部87a・88aの外端には、各軸受74のすぐ外側にて、オイルシール107を配置している。軸受ブッシュ45は、ケース半部87・88の各々の向かい合う出力軸支持部87a・88aの基端側の丸穴にそれぞれ嵌め込まれる。軸受ブッシュ45の外周面には適当数の溝が軸線方向に沿って刻設されており、これによって、各軸受ブッシュ45の軸線方向外側に離れて配した軸受74の方向へ油を導くようにしている。
【0083】
また、図5にて示す実施例では、アシストモータである油圧モータ21aのみならず、メインモータである油圧モータ125aも固定容積型油圧モータとしている。この実施例は、たとえば前述のように、旋回時の車輪引きずり防止のために車軸駆動装置20の油圧モータ80aを可変容積型とした場合、あるいは、車両の旋回中心が出力軸4L・4Rに対しても出力軸5L・5Rに対しても等距離である場合であって、旋回時に前後輪間の速度差を考慮する必要のない場合に適用可能である。
【0084】
本実施例で、車軸駆動装置10はケース70に外装モータユニット21・125を外付けしてなり、固定容積型メインモータである油圧モータ125aを収納する外装モータユニット125は、固定容積型のアシストモータである油圧モータ21aを収納する外装モータユニット21と同一構造であり、外装モータユニット21に対してケース長手方向に線対称に配置している。なお、外装モータユニット125の構成については外装モータユニット21と同一であることから詳細な説明は省略する。
【0085】
このように、二つのモータを外付けした車軸駆動装置10については、通常時には、一方のモータのみを使用し、駆動力をさらに得たい場合に、他方のモータをも使用することで、状況に応じた駆動力を得ることができる。
【0086】
また、図6及び図7に示す実施例では、図1にてリアフレーム2上に配置されていた油圧ポンプユニット123を、車軸駆動装置10に外付けされた外装モータユニット21・22のうち、片側のモータユニット、本実施例においては、外装モータユニット21と結合することにより、油圧ポンプ23及び油圧モータ21aを収納する一体のモータユニット(HSTユニット)126が構成されている。
【0087】
モータユニット126の構成について詳しく説明する。
モータユニット126の筐体構造は、ケース143及び油路板129を接合してなる。油路板129には、凸部129aが形成されていて、これをケース半部87のモータユニット付設面89に嵌入することで、モータユニット126を車軸駆動装置10に外付けするものである。
【0088】
ケース143内には、油路板129に取り付けられた油圧ポンプ23・油圧モータ21aが、それぞれの回転軸芯(すなわち、ポンプ軸30・モータ軸160の軸芯)を平行にした状態で配設されている。
【0089】
モータ軸160は、油路板129を回転自在に貫通し、前実施例と同様に車軸駆動装置10のケース70内に挿入されて、出力軸4L・4Rに駆動連結されている。モータ軸160を出力軸4L・4Rと平行に水平配置した場合に、ポンプ軸30も水平に配置されることとなるが、車両100が図1及び図2に示すように、バーチカルエンジンであるエンジン9を搭載している場合には、ポンプ軸30を、ツイストベルト及びプーリを介して、鉛直のエンジン出力軸47に接続する。
【0090】
油圧ポンプ23には、可動斜板133が設けられている。可動斜板133は、図6に示されるようにクレイドル型であるが、トラニオン型でもよい。一方、油圧モータ21aは、固定斜板141が設けられているが、前記固定斜板141を油圧ポンプ23と同様に可動斜板としてもよい。
【0091】
これによって、他に油圧ポンプ23を設置する場所を車両100に必要としないので、車両組立工数を低減することができる。また、モータケース内に油圧ポンプ23を配置することで、ポンプケースが不要となり、車両のコンパクト化、部品数が減ることにより、生産コストを削減することができる。
【0092】
また、図8に示す実施例のように、左右一対の外装モータユニット225L・225Rのモータ軸160a・160bをそれぞれ別々に出力軸4L・4Rと駆動連結する構成とすることができる。これに関し、外装モータユニット225Lにおける油圧モータ225aのモータ軸160aには入力軸188aがモータ連結用継手169を介して一体回転自在かつ同一軸芯上に連結され、外装モータユニット225Rにおける油圧モータ225bのモータ軸160bには入力軸188bがモータ連結用継手169を介して一体回転自在かつ同一軸芯上に連結されており、入力軸188a・188a同士が相対回転自在かつ同一軸芯上に連結されている。なお、本実施例では、入力軸188bの内端が入力軸188aの内端に相対回転自在に嵌入された構造となっている。
【0093】
ケース70内には、入力軸188a・188bと、出力軸4L・4Rとに平行なカウンタ軸183が支持されており、該カウンタ軸183に相対回転自在に左右一対の小径ギア182a・182bが装着されている。小径ギア182aには大径ギア181aが固設されて、入力軸188aに固設したモータ出力ギア184aに噛合しており、一方、小径ギア182bには大径ギア181bが固設されて、入力軸188bに固設したモータ出力ギア184bに噛合している。また、ケース70内において、出力軸4Lの内端部にはブルギア180aが固設されて小径ギア182aに噛合しており、一方、出力軸4Rの内端部にはブルギア180bが固設されて小径ギア182bに噛合している。
【0094】
このように、ケース70内において、ギアであるモータ出力ギア184a・小径ギア182a・大径181a・ブルギア180aよりなる左の出力軸4L駆動用の左減速ギア列と、ギアであるモータ出力ギア184b・小径182b・大径181b・ブルギア180bよりなる右の出力軸4R駆動用の右減速ギア列とが平行に、左右方向(出力軸4L・4Rの軸芯方向)においてコンパクトな状態で配置されており、左の外装モータユニット225Lの油圧モータ225aから左減速ギア列を介しての左の出力軸4Lへの駆動系と、右の外装モータユニット225Rの油圧モータ225bから右減速ギア列を介しての右の出力軸4Rへの駆動系とは、互いに独立に駆動されるので、図8の車軸駆動装置10では、機械的な差動機構を省いている。
【0095】
本実施例におけるブレーキ機構について説明する。
入力軸188a・188bには、各モータ出力ギア184a・184bの左右内側において、それぞれブレーキディスク186a・186bが固設されており、両ブレーキディスク186a・186bを挟むように摩擦部材187a・187bがケース70内に固定されている。また、ケース半部87・88においては、摩擦部材187a・187b横には孔が設けられており、本実施例においては、ブレーキカム軸185がケース半部87に対して回動自在に支持されている。ブレーキカム軸185を回動して、摩擦部材187aを押動すると、摩擦部材187a・187b間に、両ブレーキディスク186a・186bが押圧制動されるので、両入力軸188a・188bが同時に制動され、したがって、両出力軸4L・4Rが同時に制動される。
【0096】
このような構成をとることにより、車軸駆動装置10は差動機構を設けなくても、車両100の旋回時等に油圧モータ225a・225bそれぞれの油の圧力差に応じて、駆動力に差を設けることができるので、左右の前輪7L・7Rがそれぞれ相対的な速度調整が可能となり、左右いずれかの車輪の引きずりを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の一実施例に係る車軸駆動装置を備えたアーティキュレート型乗用芝刈り機の側面図。
【図2】同じく平面図。
【図3】同じく油圧回路図。
【図4】車軸駆動装置の平面断面図。
【図5】他の一実施例に係る車軸駆動装置の平面断面図。
【図6】さらに、他の一実施例に係る車軸駆動装置の平面断面図。
【図7】図6に係る車軸駆動装置を備えたアーティキュレート型乗用芝刈り機の油圧回路図。
【図8】さらに、他の一実施例に係る車軸駆動装置の平面断面図。
【符号の説明】
【0098】
10 車軸駆動装置
21 外装モータユニット
21a 油圧モータ
22 外装モータユニット
23a 油圧モータ
23 油圧ポンプ
100 乗用芝刈り機(車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右一対の車軸それぞれに連結される左右一対の出力軸と、
該両出力軸を駆動する一対のモータと、
共通の入力軸であってモータ連結用継手部分を両端に備える入力軸とを、
一体に組み合わせてなる車軸駆動装置であって、
該両出力軸を収納するケースを設け、
該ケースは、略同一のケース半部の一対を、互いに上下左右反転した状態で左右に結合してなり、
接合した該両ケース半部は、それぞれで各出力軸及び入力軸を軸受しており、
該左右各ケース半部の外側には、それぞれ各モータを装着し、該各モータのモータ軸を該モータ連結用継手部分に連結した、
ことを特徴とする車軸駆動装置。
【請求項2】
前記一対のモータのどちらか一方、あるいは両方を選択して前記両出力軸を駆動することができる、
ことを特徴とする請求項1に記載の車軸駆動装置。
【請求項3】
前記モータは油圧モータであり、前記一対のモータのうち片方のモータを収容するモータケースに、両モータと協働する油圧ポンプを収容する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車軸駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−52555(P2010−52555A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−218867(P2008−218867)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【出願人】(000125853)株式会社 神崎高級工機製作所 (210)
【Fターム(参考)】