説明

車載用アンテナ装置

【課題】外部アンテナの前置増幅器を取り込んで信号ケ−ブルとの接続やシールド対策にも配慮した多機能化を図りつつ、構造が簡素で製造が容易な小型の車載用アンテナ装置を提供すること。
【解決手段】アンテナ装置1には、回路基板2の中央部に配設されたアンテナ素子3,4と、回路基板2の辺縁近傍に配設された外部アンテナ20用の前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子10と、回路基板2を保持すると共に側板71,72によってアンテナ素子3,4を矩形状に囲繞する板金の枠体7とが具備されている。枠体7の側板72には切欠溝75が形成されていると共に、切欠溝75から内方へ斜めに延出する折曲舌片77が設けられており、切欠溝75に挿入した外部アンテナ20用の信号ケ−ブル21が折曲舌片77に案内されてコネクタ端子10へ導かれるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナ素子を搭載した回路基板に外部アンテナの前置増幅器が配設されている小型の車載用アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車室内にGPS(全地球測位システム)用の受信アンテナやETC(自動料金収受システム)用の送受信アンテナ等を設置することが一般化しつつある。このような車載用アンテナ装置の従来例としては、誘電体パッチアンテナを搭載した回路基板をレドーム内に収容して構成され、ダッシュボード上などに据え置いて使用されるものが広く知られている(例えば、特許文献1参照)。また、他の従来例としては、車両のガラス面に放射導体をパターニングすると共に前置増幅器を固設して両者を接続するという構成のものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−228802号公報(第4−8頁、図6)
【特許文献2】特開平7−99405号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、車載用のアンテナ装置としては小型のGPS用アンテナやETC用アンテナのほかに、基地局から送信される地上波を受信するためのダイバーシティアンテナも高い需要が見込まれているが、これら用途の異なる複数種類のアンテナ装置を車室内に独立に配設すると、取付作業が煩雑になって見栄えも悪くなってしまう。そこで、本発明者らは、GPS用等の小型アンテナ装置の回路基板にダイバーシティアンテナ等の外部アンテナ用の前置増幅器を配設して、アンテナ機構が集約できる多機能化を図ることを検討したが、その場合、小型アンテナ装置には予め、外部アンテナ用の前置増幅器を電磁的にシールドするためのシールド部材や、この前置増幅器に外部アンテナの信号ケ−ブルを無理なく接続させるためのケ−ブル接続機構を設けておく必要があるので、特別な対策を講じないと部品点数が増大して構造が複雑化してしまうという問題が生じる。
【0004】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、外部アンテナの前置増幅器を取り込んで信号ケ−ブルとの接続やシールド対策にも配慮した多機能化を図りつつ、構造が簡素で製造が容易な小型の車載用アンテナ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の車載用アンテナ装置では、アンテナ素子を搭載した回路基板と、この回路基板の辺縁に沿って延びる側板を有して該回路基板を保持している金属板からなる枠体と、前記回路基板の辺縁近傍に配設された外部アンテナ用の前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子とを備え、前記枠体には、前記側板から内方へ斜めに延出する切起こし片として形成されて前記コネクタ端子の近傍で前記回路基板の一面に係合可能な折曲舌片と、この折曲舌片の切り起こしによって前記側板に生じる空所を含む切欠溝とが設けられており、前記切欠溝に挿入した前記外部アンテナの信号ケ−ブルが前記折曲舌片に案内されて前記コネクタ端子へ導かれるように構成した。
【0006】
このように構成された車載用アンテナ装置は、回路基板に搭載されたアンテナ素子とは用途の異なる外部アンテナ用の前置増幅器が該回路基板に配設してあるため、この前置増幅器のコネクタ端子に外部アンテナの信号ケ−ブルの出力端部をコネクタ接続することによってアンテナ機構の集約化が図れる。また、折曲舌片を係合させるなどして板金製の枠体が回路基板を保持しているため、この枠体によって該前置増幅器を電磁的にシールドすることができると共に、この枠体の側板の切欠溝や折曲舌片によって該信号ケ−ブルを損傷の虞なく円滑に対応するコネクタ端子へ導くことができる。それゆえ、この車載用アンテナ装置は、構造を複雑化してなくても外部アンテナに起因するノイズの発生や取付作業の煩雑化を回避することができる。
【0007】
上記の構成において、外部アンテナが一対のダイバーシティアンテナである場合には、これらダイバーシティアンテナの信号ケ−ブルを接続するための一対のコネクタ端子を、回路基板の略平行に延びる一対の辺縁の近傍に配設すると共に、これら一対の辺縁に沿って延びる一対の側板からそれぞれ内方へ折曲舌片を延出させる構成にしておけばよく、これにより、各ダイバーシティアンテナ用の一対の前置増幅器やそのコネクタ端子を回路基板の両側部にバランスよく配設することができる。
【0008】
また、上記の構成において、枠体に、側板から内方へ延出して回路基板の他面に係合可能な係合片が設けられていると、回路基板を折曲舌片と係合片とで板厚方向に挟持して容易かつ確実に保持することができるため好ましい。
【0009】
また、上記の構成において、枠体に、側板とアンテナ素子との間に配置される仕切り板が設けられていると、この仕切り板と側板との間に外部アンテナ用の前置増幅器を配置させてもアンテナ素子に悪影響が及ばなくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車載用アンテナ装置は、アンテナ素子が搭載された回路基板に外部アンテナ用の前置増幅器を配設することによって多機能化を図っているが、回路基板を保持する板金の枠体によって該前置増幅器を電磁的にシールドすることができると共に、この枠体の折曲舌片等によって外部アンテナの信号ケ−ブルを対応するコネクタ端子へ損傷の虞なく円滑に導くことができるので、構造を複雑化してなくても外部アンテナに起因するノイズの発生や取付作業の煩雑化を回避することができる。それゆえ、アンテナ機構の集約化が効果的に図れる小型の車載用アンテナ装置を安価に製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る車載用アンテナ装置の分解斜視図、図2は該アンテナ装置の正面図、図3は該アンテナ装置をブラケットから外した状態を示す背面側の斜視図、図4は図3に対応する正面側の斜視図、図5は該アンテナ装置にダイバーシティアンテナの信号ケ−ブルをコネクタ接続した状態を示す背面側の斜視図、図6は図5から信号ケ−ブルおよびブラケットを省略してケ−ブル挿入部分を明示した説明図、図7は該アンテナ装置および該ダイバーシティアンテナの全体の配置を示す背面図、図8は図7に対応する正面図である。
【0012】
これらの図に示すアンテナ装置1は、自動車のフロントガラス等のガラス面50(図7,8参照)の車室側の面に装着して使用される車載用アンテナ装置であり、ガラス面50の上端中央部に取り付けられるようになっている。このアンテナ装置1は、図示せぬ接地導体層や給電回路等が設けられた回路基板2と、回路基板2の一面(表面)に搭載されたGPS用のアンテナ素子3およびETC用のアンテナ素子4と、回路基板2の他面(裏面)に搭載されたシールドカバー5と、回路基板2の一端部に固設されて送受信回路等の外部回路と接続されるコネクタ部6と、回路基板2を保持してアンテナ素子3,4を囲繞する板金製の枠体7と、3本の固定ねじ9を用いて枠体7に締結固定される板金製のブラケット8と、地上デジタル波を受信する外部アンテナ用の図示せぬ前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子10などによって概略構成されている。すなわち、このアンテナ装置1は、GPS用アンテナとETC用アンテナを兼ね備えた統合アンテナ装置であると共に、外部アンテナである一対のダイバーシティアンテナ20(図7,8参照)の前置増幅器を組み込んだ多機能なアンテナ装置となっている。
【0013】
回路基板2には、アンテナ素子3,4と対向する領域に接地導体層が設けられていると共に、シールドカバー5に覆われた領域にアンテナ素子3,4用の電子回路部(給電回路を含む)が設けられている。この回路基板2の左右の辺縁部には、各ダイバーシティアンテナ20用の前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子10が配設されており、回路基板2の2箇所の隅部を切り欠いて形成された逃げ部2aの近傍に各コネクタ端子10が実装されている。また、回路基板2のコネクタ部6寄りの略中央には、1本の固定ねじ9が挿通される透孔2bが穿設されており、この固定ねじ9の頭部によって透孔2bの周縁部が押圧固定されるようになっている。
【0014】
アンテナ素子3は金属板のプレス加工等によって形成された板金パッチアンテナであり、GPS信号の受信に好適な2点給電方式の円偏波パッチアンテナとして製造されている。このアンテナ素子3は、中央に正方形の開口部30が形成されて外縁部の等間隔な4箇所に第1〜第4の切欠31〜34が形成された金属平板からなる放射導体板35と、放射導体板35の第1および第2の切欠31,32の各最奥部から回路基板2側へ延出する一対の切起こし片として形成された第1の給電脚片36および第2の給電脚片37と、放射導体板35の四隅から回路基板2側へ延出する切起こし片として形成された4片の取付脚片38と、開口部30の周縁の等間隔な4箇所から回路基板2側へ延出する切起こし片として形成された4片の短絡脚片39とによって構成されている。ここで、放射導体板35は回路基板2上の接地導体層と所定の間隔を存して対向しており、各短絡脚片39が該接地導体層に半田付けされている。また、一対の給電脚片36,37は、接地導体層とは非接触で回路基板2を貫通し、シールドカバー5に覆われた領域で給電回路に接続されている。また、各取付脚片38は、接地導体層とは非接触で回路基板2を貫通し、シールドカバー5に覆われた領域で図示せぬランドに半田付けされているため、該ランドと該接地導体層との間に静電容量が装荷されることになってアンテナ素子3の小型化に寄与している。このように放射導体板35の外縁部の4箇所と内縁部の4箇所がそれぞれ取付脚片38と短絡脚片39によってバランス良く保持されているため、このアンテナ素子3は回路基板2上に安定的に支持されている。
【0015】
放射導体板35の外形は略正八角形であり、取付脚片38の存する四隅の辺を除く各辺の中央部が内方(径方向)へ切り欠かれて第1〜第4の切欠31〜34となっている。そして、第1の切欠31の最奥部が第1の給電脚片36の基端部であることから第1の給電部P1となり、同様に第2の切欠32の最奥部が第2の給電脚片37の基端部であることから第2の給電部P2となる。これら一対の給電部P1,P2には、位相が90度ずれた給電信号が供給されるようになっているため、電気的かつ空間的に直交して振幅が同等の二つの共振モードで放射導体板35を共振させて円偏波を放射させることができる。
【0016】
ただし、アンテナ装置1には、ダイバーシティアンテナ20の前置増幅器を電磁的にシールドするための板金の枠体7が具備されており、グラウンドとして動作するこの枠体7がアンテナ素子3とは異形で該アンテナ素子3を囲繞しているため、枠体7の影響でアンテナ素子3の軸比が若干劣化する可能性がある。そこで、本実施形態例では、第1および第3の切欠31,33の切れ込み量を第2および第4の切欠32,34の切れ込み量よりも僅かに深くし、図2に示す径寸法D1が径寸法D2よりも適宜寸法だけ短くなるように設定することによって、枠体7に起因する軸比の劣化を補正している。すなわち、アンテナ素子3を矩形状に囲繞している枠体7の側板71,72は、長辺側の一対の側板71が第1および第3の切欠31,33の切れ込み方向に沿って延び、かつ、短辺側の一対の側板72が第2および第4の切欠32,34の切れ込み方向に沿って延びているので、放射導体板35を励振させると側板71に沿う共振モードに比して側板72に沿う共振モードのほうがグラウンドの影響を強く受けることになり、仮に径寸法D1が径寸法D2と同等であると、両モードの共振周波数が相違して軸比が劣化してしまう。しかし、予め径寸法D1を径寸法D2よりも適宜寸法だけ短く設定しておけば、かかる軸比の劣化を補正することができる。なお、この枠体7には短辺側の側板72と平行に一対の仕切り板73が付設されており、これら仕切り板73を側板72とアンテナ素子3との間に配置させることでシールド効果を高めているため、側板71と仕切り板73とで画成される略正方形の空間内にアンテナ素子3を配置させることができ、これによっても枠体7に起因する軸比の劣化が抑えられている。
【0017】
アンテナ素子4は、金属板のプレス加工等によって形成された板金パッチアンテナであり、ETC信号の受信に好適な2点給電方式の円偏波パッチアンテナとして製造されているため、GPS用のアンテナ素子3に比べて小径かつ低背である。このアンテナ素子4は、金属平板からなり外縁部の等間隔な4箇所に切欠42を有する放射導体板41と、この放射導体板41の外縁部の90度離れた位置関係にある2箇所の切欠42の各最奥部から回路基板2側へ延出する一対の切起こし片として形成された第1の給電脚片43および第2の給電脚片44と、放射導体板41の四隅から回路基板2側へ延出する切起こし片として形成された4片の取付脚片45とによって構成されており、GPS用のアンテナ素子3の開口部30内に放射導体板41を臨出させている。また、一対の給電脚片43,44は、接地導体層とは非接触で回路基板2を貫通し、シールドカバー5に覆われた領域で給電回路に接続されている。また、各取付脚片45は、接地導体層とは非接触で回路基板2を貫通し、シールドカバー5に覆われた領域で図示せぬランドに半田付けされているため、該ランドと該接地導体層との間に静電容量が装荷されることになってアンテナ素子4の小型化に寄与している。このように放射導体板41の外縁部の4箇所が取付脚片45によってバランス良く保持されているため、このアンテナ素子4は回路基板2上に安定的に支持されている。
【0018】
アンテナ素子4の放射導体板41は回路基板2上の接地導体層と所定の間隔を存して対向しているが、回路基板2とアンテナ素子3の放射導体板35との間隔に比べて、回路基板2と放射導体板41との間隔は狭くなっている。つまり、放射導体板41は開口部30を有する放射導体板35よりも高さ寸法が小さい。こうすることで、同調周波数が異なる2種類のアンテナ素子3,4を回路基板2上にスペース効率良く配置させることができると共に、各放射導体板35,41から放射される電波の干渉に起因するノイズの発生を抑制できる。なお、アンテナ素子3にはアンテナ素子4を包囲するように4片の短絡脚片39が設けられているので、これら短絡脚片39のシールド効果によっても両アンテナ素子3,4どうしの電磁的なアイソレーションは高められている。
【0019】
枠体7の短辺側の各側板72には、ブラケット8側が開放端となっている切欠74や、反ブラケット8側が開放端となっている略L字形の切欠溝75が形成されている。また、枠体7には各側板72から内方へ延出する切起こし片として、連結片76、折曲舌片77および係止片78が折曲形成されている。連結片76はねじ挿通孔76aや受け部76bを有する切起こし片であって、側板72に対して略直角に折曲されている。この連結片76はねじ挿通孔76aやその周縁部が回路基板2の逃げ部2a内に臨出しているが、受け部76bは逃げ部2a近傍でブラケット8側から回路基板2に係合している。折曲舌片77は側板72から内方へ斜めに延出する切起こし片であって、反ブラケット8側から回路基板2に係合しており、この折曲舌片77の先端部はコネクタ端子10の近傍に位置している。係止片78は側板72から内方へ略ハ字形に延出する切起こし片であって、ブラケット8側から回路基板2に係合している。このように連結片76および係止片78と折曲舌片77とで回路基板2の左右の辺縁部を板厚方向に挟持しているため、枠体7は回路基板2を容易かつ確実に保持することができる。なお、枠体7は回路基板2の接地回路等と半田付けによって接続されている。
【0020】
また、枠体7の切欠74は連結片76が切り起こされたことによって側板72に生じたものであり、この切欠74にブラケット8の起立片82の先端部分(ナット部82a)を挿入させると、連結片76とナット部82aとが重なり合うと共に、ナット部82aに形成されているねじ螺着孔82bが連結片76のねじ挿通孔76aと連通するようになっている。そして、反ブラケット8側からねじ挿通孔76aに挿通した固定ねじ9をねじ螺着孔82bに螺着させることによって、ブラケット8の2箇所の起立片82がそれぞれ枠体7の対応する連結片76に締結固定されるようになっている。
【0021】
枠体7の切欠溝75は、折曲舌片77が切り起こされたことによって側板72に生じる空所を含む略L字形の切欠であり、この切欠溝75に挿入したダイバーシティアンテナ20の信号ケ−ブル21が折曲舌片77に案内されてコネクタ端子10へ導かれるようになっている。すなわち、図7,8に示すように、アンテナ装置1が装着されているガラス面50の上端中央部の左右両側には、一対のダイバーシティアンテナ20が例えばフィルムアンテナとして配設されているので、各ダイバーシティアンテナ20から導出された信号ケ−ブル21の出力端部を、回路基板2に実装されている一対のコネクタ端子10にコネクタ接続する必要がある。枠体7に設けられた切欠溝75および折曲舌片77は、かかる信号ケ−ブル21の接続作業を円滑に行うためのものである。また、折曲舌片77に沿って導かれる信号ケ−ブル21は金属板のシャープエッジとの接触を回避できるため、走行中の振動などによって信号ケ−ブル21が損傷する虞もない。
【0022】
ブラケット8は、放射導体板35を臨出させる正方形の開口80を画成している正方形の鍔状プレート81と、この鍔状プレート81の3箇所から回路基板2側へ起立して枠体7や回路基板2に締結固定されたL字状の起立片82とによって構成されている。鍔状プレート81は片面が接着剤などによってガラス面50に固着され、このガラス面50側から枠体7の側板71,72や仕切り板73を覆っている。また、各起立片82には、固定ねじ9を螺着させるためのねじ螺着孔82bを有するナット部82aが形成されており、対称な位置にある2個の起立片82のナット部82aは枠体7の対応する連結片76に締結固定され、残り1個の起立片82のナット部82aは回路基板2の透孔2b周縁部および枠体7の図示せぬねじ孔周縁部に締結固定されている。
【0023】
このブラケット8は枠体7と一体のシールド部材として機能するが、ブラケット8の鍔状プレート81がガラス面50側から枠体7を覆っているので、シールド部材のうちブラケット8のほうが枠体7よりもグラウンドとしてアンテナ素子3に大きな影響を及ぼすことになる。そして、ブラケット8の鍔状プレート81が正方形であり、かつ、正方形の開口80内に放射導体板35を臨出させているので、アンテナ素子3の直交する二つの共振モードにおいて放射導体板35と鍔状プレート81の相対位置関係をほとんど同じに設定できる。そのため、枠体7がアンテナ素子3とは異形であっても、シールド部材に起因する軸比の劣化が効果的に回避できるようになっている。
【0024】
このように本実施形態例に係るアンテナ装置1は、回路基板2上にアンテナ素子3,4を配設してGPS信号の受信とETC信号の送受信が行えるようにしてあると共に、地上デジタル波を受信するダイバーシティアンテナ20用の前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子10を回路基板2の左右の辺縁部に配設してアンテナ機構を集約しているため、多機能で配線が簡素化できてスペースファクタも良好な優れた車載用アンテナ装置となっている。また、このアンテナ装置1はフロントガラス等のガラス面50に装着され、アンテナ素子3,4の放射導体板を35,41をガラス面50に対向させているので、これら放射導体板35,41をGPS信号やETC信号の飛来方向にほぼ正対させることができて良好な感度が期待できる。しかも、ガラス面50には、図7,8に示すように、各ダイバーシティアンテナ20がアンテナ装置1の近傍の左右両側に配設されているので、各ダイバーシティアンテナ20の近傍にその前置増幅器を配置させることができ、それゆえ受信した地上デジタル波の信号の減衰を抑制することができる。
【0025】
また、このアンテナ装置1はアンテナ素子3の放射導体板35の開口部30内に、小径かつ低背なアンテナ素子4の放射導体板41を臨出させるという配置にしてあるため、各アンテナ素子3,4を回路基板2上にスペース効率良く配置させることができて小型化が容易であると共に、回路基板2に対して放射効率を確保するための煩雑な加工(板厚を部分的に変更する等の加工)を行う必要がない。そして、回路基板2上におけるアンテナ素子3,4の高さ寸法を相違させて放射導体板35,41を異なる平面内に保持し、かつ、アンテナ素子3の開口部30の周縁に沿って複数の短絡脚片39でアンテナ素子4を包囲しているため、アンテナ素子3,4どうしの電磁的なアイソレーションが高まっている。したがって、各放射導体板35,41から放射される電波の干渉に起因するノイズの発生が効果的に抑制されている。なお、これらのアンテナ素子3,4はいずれも板金パッチアンテナなので製造が容易であり、機械的強度も確保しやすい。また、アンテナ素子3,4は2点給電方式の円偏波パッチアンテナなので、広帯域化や軸比特性の向上が図りやすい。
【0026】
ただし、このアンテナ装置1では、ダイバーシティアンテナ20用の前置増幅器のシールド部材である枠体7がアンテナ素子3とは異形で該アンテナ素子3を囲繞している関係上、枠体7がアンテナ素子3の軸比に悪影響を及ぼす可能性があるため、アンテナ素子3の放射導体板35の一方の給電部P1に対応する径寸法D1を他方の給電部P2に対応する径寸法D2よりも適宜寸法だけ短く設定することによって、電気的かつ空間的に直交する二つの共振モードの共振長に所要の差を生じさせて軸比を補正している。また、枠体7に付設した仕切り板73を側板72とアンテナ素子3との間に配置させることによって、シールド効果を高めているだけでなく、枠体7に起因する軸比の劣化も抑制している。
【0027】
しかも、このアンテナ装置1では、ガラス面50に固着されるブラケット8を枠体7と一体のシールド部材として機能させると共に、ブラケット8の鍔状プレート81で枠体7をガラス面50側から覆うことによって、アンテナ素子3に対する枠体7のグラウンド効果を相対的に低減させている。そして、正方形の鍔状プレート81に画成された正方形の開口80内に放射導体板35を臨出させているため、アンテナ素子3の直交する二つの共振モードにおいて放射導体板35と鍔状プレート81の相対位置関係をほとんど同じに設定でき、シールド部材に起因する軸比の劣化が大幅に低減されている。それゆえ、このアンテナ装置1は良好な軸比特性を確保しやすく、90度位相差回路を設計変更する等の煩雑な軸比補正作業を行う必要はない。
【0028】
また、このアンテナ装置1は、予めガラス面50にブラケット8の鍔状プレート81を固着しておけば、このブラケット8の起立片82に枠体7の連結片76を固定ねじ9で締結固定するだけで、アンテナ素子3,4や回路基板2を保持している枠体7をガラス面50に強固に固定することができる。そして、点検時や修理時には、固定ねじ9の締結を解除するだけで枠体7をガラス面から取り外すことができる。したがって、このアンテナ装置1はガラス面50に対する着脱が容易であり、取付強度も確保しやすい。しかも、ブラケット8の起立片82は、そのナット部82aを枠体7の側板72の切欠74に挿入した状態で連結片76と締結固定されるため、この切欠74で起立片82を高精度に位置決めすることができ、それゆえ枠体7とブラケット8の位置合わせは極めて容易に行える。
【0029】
また、このアンテナ装置1では、回路基板2の片面に連結片76および係止片78を係合させて他面に折曲舌片77を係合させることによって、回路基板2の左右の辺縁部を板厚方向に挟持するという簡素な支持構造を採用しているため、枠体7は回路基板2を容易かつ確実に保持することができる。しかも、連結片76の受け部76bがコネクタ端子10の近傍かつ裏側から回路基板2を支持しているため、ダイバーシティアンテナ20の信号ケ−ブル21をコネクタ端子10にコネクタ接続させる際に回路基板2が押し込まれても、裏側から連結片76に支持されている回路基板2には撓みが発生せず、よって回路基板2や実装部品の損傷を回避できて信頼性が高まっている。
【0030】
また、このアンテナ装置1では、ダイバーシティアンテナ20の前置増幅器を枠体7やブラケット8で覆って電磁的にシールドしているため、該前置増幅器によってアンテナ素子3,4にノイズが発生しないように配慮されているが、この枠体7はダイバーシティアンテナ20の信号ケ−ブル21をコネクタ端子10へ導く機能も併せ持っている。すなわち、信号ケ−ブル21が枠体7の切欠溝75や折曲舌片77を経由してコネクタ端子10へ導かれるようになっているため、この信号ケ−ブル21は損傷の虞なく円滑にコネクタ端子10にコネクタ接続できるようになっている。
【0031】
なお、本発明は外部アンテナの前置増幅器を付設して多機能化を図った車載用アンテナ装置を対象としており、回路基板2に搭載されるアンテナ素子の構造や個数は上記実施形態例に特定されず適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態例に係るアンテナ装置の分解斜視図である。
【図2】該アンテナ装置の正面図である。
【図3】該アンテナ装置をブラケットから外した状態を示す背面側の斜視図である。
【図4】図3に対応する正面側の斜視図である。
【図5】該アンテナ装置にダイバーシティアンテナの信号ケ−ブルをコネクタ接続した状態を示す背面側の斜視図である。
【図6】図5から信号ケ−ブルおよびブラケットを省略してケ−ブル挿入部分を明示した説明図である。
【図7】該アンテナ装置および該ダイバーシティアンテナの全体の配置を示す背面図である。
【図8】図7に対応する正面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 アンテナ装置
2 回路基板
3,4 アンテナ素子
5 シールドカバー
7 枠体
8 ブラケット
9 固定ねじ
10 コネクタ端子
20 ダイバーシティアンテナ
21 信号ケ−ブル
35 放射導体板
36,37 給電脚片
38 取付脚片
39 短絡脚片
41 放射導体板
43,44 給電脚片
45 取付脚片
50 ガラス面
71,72 側板
75 切欠溝
76 連結片
77 折曲舌片
78 係止片
81 鍔状プレート
82 起立片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ素子を搭載した回路基板と、この回路基板の辺縁に沿って延びる側板を有して該回路基板を保持している金属板からなる枠体と、前記回路基板の辺縁近傍に配設された外部アンテナ用の前置増幅器および該前置増幅器のコネクタ端子とを備え、
前記枠体には、前記側板から内方へ斜めに延出する切起こし片として形成されて前記コネクタ端子の近傍で前記回路基板の一面に係合可能な折曲舌片と、この折曲舌片の切り起こしによって前記側板に生じる空所を含む切欠溝とが設けられており、前記切欠溝に挿入した前記外部アンテナの信号ケ−ブルが前記折曲舌片に案内されて前記コネクタ端子へ導かれるように構成したことを特徴とする車載用アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記外部アンテナが一対のダイバーシティアンテナであって、これらダイバーシティアンテナの信号ケ−ブルを接続するための一対の前記コネクタ端子が前記回路基板の略平行に延びる一対の辺縁の近傍に配設されていると共に、これら一対の辺縁に沿って延びる一対の前記側板からそれぞれ内方へ前記折曲舌片が延出していることを特徴とする車載用アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1または2の記載において、前記枠体に、前記側板から内方へ延出して前記回路基板の他面に係合可能な係合片が設けられていることを特徴とする車載用アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項の記載において、前記枠体に、前記側板と前記アンテナ素子との間に配置される仕切り板が設けられていることを特徴とする車載用アンテナ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−158955(P2007−158955A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−353847(P2005−353847)
【出願日】平成17年12月7日(2005.12.7)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】