説明

車輛用エアバッグ収納構造

【課題】車輛用エアバッグ収納構造の部品点数の低減及び組立工程の簡略化を図ることができ、コストの低減を図ることができる車輛用エアバッグ収納構造を提供する。
【解決手段】車輛内装材1の内面にエアバッグ4が収納されているエアバッグ収納容器3が固定されており、車輛内装材1のエアバッグ収納容器3の開口内に位置している部分に割れ誘導部1bが設けられており、該領域内において、割れ誘導部1bが設けられている部分を除いた残りの部分に比べて厚みが薄くされているヒンジ部1dが形成されており、ヒンジ部1dが設けられている部分において、車輛内装材1の最も肉厚の薄い部分からその両側に至るように,ヒンジ部1dにおける車輛内装材1の引き裂き強度よりも高い引き裂き強度を有する補強材5が埋設されている、車輛用エアバッグ収納構造2。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車輛において、車輛内装材の裏面にエアバッグを収納してなるエアバッグ収納構造に関し、より詳細には、エアバッグ膨張時に車輛内装材の一部が割れ、エアバッグを車輛内に膨出させる車輛用エアバッグ収納構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車輛のエアバッグ装置は、通常、インストルメントパネルの裏側に収納されている。速度の急激な変化によりエアバッグが膨張した際に、インストルメントパネルすなわち車輛内装材がエアバッグの膨張により割れ、エアバッグが車輛の室内側に膨出する。このようなエアバッグ収納構造の一例が下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
図6に示すように、特許文献1に記載のエアバッグ収納構造101では、インストルメントパネル102の裏面側に、エアバッグ収納容器103が取付けられている。エアバッグ収納容器103内にエアバッグ104が収納されている。エアバッグ収納容器103は、インストルメントパネル102側に開いた開口を有する。この開口近傍において、エアバッグ収納容器103が、リテーナー105を介してインストルメントパネル102に固定されている。
【0004】
インストルメントパネル102には、裏面側に溝102aが形成されている。溝102aは、エアバッグが膨出する際に、インストルメントパネル102の割れを誘導する部分である。また、特許文献1では、リテーナー105は、エアバッグ収納容器103の前記開口を覆うように設けられており、該開口を覆っている部分の中央において、スリット105aが形成されている。スリット105aは、溝102aに対向されている。また、リテーナー105は、ヒンジ部105bを有する。エアバッグ104が膨張すると、インストルメントパネル102の溝102aにおいて、インストルメントパネル102を破断する。それによって、エアバッグ104がインストルメントパネル102よりも室内側に膨出する。この場合、ヒンジ部105bが設けられているため、ヒンジ部105bとスリット105aとの間のリテーナー部分及びインストルメントパネル部分が、ヒンジ部105bを起点として車輛室内側に容易に開く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−299509号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載のエアバッグ収納構造101では、上記のように複雑なリテーナー105を用意しなければならなかった。また、このリテーナー105をインストルメントパネル102すなわち車輛内装材の裏面に固定する作業も必要であった。
【0007】
従って、部品点数が多く、車輛用エアバッグ収納構造の形成作業が煩雑であった。そのため、コストが高くついていた。
【0008】
本発明の目的は、上述した従来技術の欠点を解消し、部品点数及び組立工程の低減並びにコストの低減を図ることが可能な車輛用エアバッグ収納構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る車輛用エアバッグ収納構造は、車輛内装部材の裏側にエアバッグが収納されている車輛用エアバッグ収納構造であって、車輛内装材と、開口を有し、該開口の周縁部が前記車輛内装材の裏面に固定されているエアバッグ収納容器と、前記エアバッグ収納容器内に収納されているエアバッグとを備える。本発明では、前記車輛内装材の前記エアバッグ収納容器の開口内に位置している部分に設けられており、エアバッグが膨張した際に車輛内装材の割れを誘導し、割れにより生じた開口部分からエアバッグを膨出させるように、車輛内装材の他の部分よりも厚みが薄くされている割れ誘導部が形成されている。また、前記車輛内装材において、前記エアバッグ収納容器の開口内に位置している領域において、車輛内装材の前記割れ誘導部が設けられている部分を除いた残りの部分に比べて厚みが薄くされているヒンジ部が形成されている。該ヒンジ部を起点として、該ヒンジ部と、前記割れ誘導部との間の車輛内装材部分が前記エアバッグが膨張した際に車輛内装材の表面側に開くように形成されている。そして、前記車輛内装材の前記ヒンジ部が設けられている部分において、前記車輛内装材の最も肉厚の薄い部分から、その両側に至るように、車輛内装材に埋設されており、かつヒンジ部における車輛内装材の引張り強度よりも高い引張り強度を有する補強材がさらに備えられている。
【0010】
本発明に係る車輛用エアバッグ収納構造のある特定の局面では、前記補強材が間隔を隔てて並設された複数本のストリップ状の第1の熱可塑性樹脂フィルムからなる第1のストリップ列と、前記第1のストリップ列に融着されており、並設された複数本のストリップ状の第2の熱可塑性樹脂フィルムからなる第2のストリップ列とを有する網状体からなり、前記第1,第2の熱可塑性樹脂フィルムが、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムからなる。この場合には、ストリップ状の第1,第2の熱可塑性樹脂フィルムが延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムからなるため、補強材による補強効果を充分に高め得る。そのため、ヒンジ部における車輛内装材の破断がより一層生じ難い。
【0011】
上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムとしては、好ましくは、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも30℃低い温度以上かつ該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも20℃高い温度以下に維持された一対のロール間に熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを供給し、引き抜き延伸することにより得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを切断することにより形成されたものである。この場合には、補強効果をより一層高めることができる。
【0012】
本発明に係る車輛用エアバッグ収納構造のさらに他の特定の局面では、前記ヒンジ部において、前記車輛内装材の表面及び裏面の少なくとも一方に溝が形成されている。それによって、ヒンジ部の肉厚が、相対的に薄くされている。この場合には、車輛内装材の表面及び裏面の少なくとも一方に溝を形成するだけで肉厚の薄いヒンジ部を容易に形成することができる。
【0013】
本発明に係る車輛用エアバッグ収納構造のさらに他の特定の局面では、前記割れ誘導部において、前記車輛内装材の表面及び裏面の少なくとも一方に溝が形成されており、それによって、車輛内装材本体よりも相対的に肉厚が薄い割れ誘導部が形成されている。この場合には、上記溝の形成によって、肉厚の相対的に薄い、割れ誘導部を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車輛用エアバッグ収納構造では、車輛内装材に肉厚の相対的に薄い部分を形成することによりヒンジ部が形成されており、しかも該ヒンジ部において、前記補強材が埋設されているため、ヒンジ部を構成するための他の部材を必要としない。また、ヒンジ部を補強するための追加的な補強部材も必要としない。従って、部品点数の低減を図ることができる。また、ヒンジ部を構成するための別部材を車輛内装材に固定したりする作業を省略することができるので、車輛用エアバッグ収納構造の組立工程を少なくすることができる。よって、車輛用エアバッグ収納構造のコストを効果的に低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(a)は、本発明の一実施形態に係る車輛用エアバッグ収納構造を説明するための図2中のA−A線に沿う断面図であり、(b)は、本発明の一実施形態で用いられる補強材を示す平面図である。
【図2】本発明の一実施形態の車輛用エアバッグ収納構造が取り付けられている車輛の室内を示す模式的正面図である。
【図3】(a)は本発明の一実施形態で用いられている補強材の部分切欠正面断面図であり、(b)は補強材の変形例を示す部分切欠正面断面図である。
【図4】本発明の車輛用エアバッグ収納構造で用いられている補強材の他の変形例を示す平面図である。
【図5】本発明の変形例における補強材と車輛内装材との位置関係を示す断面図である。
【図6】従来の車輛用エアバッグ収納構造を示す部分切欠断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0017】
図1(a)は、本発明の一実施形態に係る車輛用エアバッグ収納構造の断面図であり、図2は該車輛用エアバッグが設けられている車輛の室内を示す模式的正面図である。
【0018】
図2に示すように、インストルメントパネルである車輛内装材1の一部に車輛用エアバッグ収納構造2が設けられている。
【0019】
図1(a)に示すように、車輛用エアバッグ収納構造2では、車輛内装材1の裏面1aに隙間を隔てて、エアバッグ収納容器3が配置されている。エアバッグ収納容器3は、車輛内装材1の裏面1a側に開いた開口部3aを有する。この開口部3aが車輛内装材1の裏面1aに隙間を隔てて対向している。
【0020】
車輛内装材1は、インストルメントパネルと称されているものであり、ポリプロピレンなどのオレフィン系熱可塑性合成樹脂からなる。
【0021】
他方、エアバッグ収納容器3は、金属または合成樹脂などの適宜の材料により形成される。本実施形態では、エアバッグ収納容器3は金属からなる。エアバッグ収納容器3内には、エアバッグ4が収納されている。エアバッグ4は、周知のように、急激な加速度変化が与えられた際に膨張するように構成されている。
【0022】
エアバック収納容器3は、連結部材11にその外周面が接合されている。連結部材11は、固定用ブラケット12にボルト13及びナット14を用いて固定されている。固定用ブラケット12が、車輛内の他の部分に固定されている。
【0023】
本実施形態では、車輛内装材1の裏面1aにおいて、エアバッグ収納容器3の開口が位置している領域の中央に割れ誘導部1bが形成されている。割れ誘導部1bは、エアバッグ4が膨張した際に、エアバッグ4の表面の圧力により車輛内装材1が割れる部分である。この割れを誘導するために、割れ誘導部1bでは、その肉厚が、車輛内装材1の上記エアバッグ収納容器3の開口内に位置している本体部の肉厚よりも相対的に薄くされている。この本体部とは、割れ誘導部1b及び後述のヒンジ部1dを除く車輛内装材部分をいうものとする。
【0024】
本実施形態では、割れ誘導部1bは、車輛内装材1の裏面1aに図2に示す溝1cを形成することにより設けられている。図2に示すように、溝1cは、横方向に延びている。もっとも、溝1cの延びる方向は、後述するヒンジ部1dを起点として車輛内装材が車輛室内側に向かって開くことを可能としかつエアバッグ4を膨出させる適宜の位置に設け得る。
【0025】
また、本実施形態では、端面V字状の溝1cを図示しているが、溝の断面形状は特に限定されない。また溝1cは、車輛内装材1の表面側に設けてもよい。さらに、表面側及び裏面側の双方に溝1cを設けてもよい。
【0026】
もっとも、好ましくは、溝1cを隠すために、本実施形態のように車輛内装材1の裏面1a側にのみ溝1cを設けることが望ましい。
【0027】
図1(a)に戻り、車輛内装材1では、エアバッグ収納容器3の開口部が位置している領域内において、ヒンジ部1d,1dが設けられている。ヒンジ部1dは、割れ誘導部1bにおいて車輛内装材1が割れた際に、ヒンジ部1dと割れ誘導部1bとの間の車輛内装材部分をヒンジ部1dを起点として容易に変形させるために設けられている。すなわち、ヒンジ部1dを起点とし、車輛内装材部分の割れ誘導部1b側の端部が車輛室内側に向かって開くように、ヒンジ部1dが変形する。このような変形を可能とするために、ヒンジ部1dの肉厚は、エアバッグ収納容器3の開口内に位置している車輛内装材1の前記本体部よりも肉厚が薄くされている。本実施形態では、車輛内装材1の裏面に、溝1eを設けることによりヒンジ部1dが構成されている。溝1eの断面形状はV字であるが、V字以外のU字等の他の形状であってもよい。
【0028】
なお、本実施形態では、溝1eが車輛内装材1の裏面1aに設けられているが、表面にも溝を設けることにより、ヒンジ部1dを形成してもよい。
【0029】
図2に示すように、溝1eは、横方向に帯状に延ばされている。また、溝1e,1eは、溝1cを挟んで互いに平行に延ばされている。従って、割れ誘導部1bにおいて車輛内装材1が割れた際に、ヒンジ部1d,1dを起点として、車輛内装材1の一部が室内側に向かって容易に開き得る。もっとも、ヒンジ部1d,1dの設けられる位置は、ヒンジ部1d,1dを起点として車輛内装材1の一部が室内側に向かって開き得る位置である限り特に限定されるものではない。
【0030】
本実施形態では、車輛内装材1に補強材5が埋設されている。補強材5は、上記割れ誘導部1bを除いて車輛内装材1に埋設されている。補強材5は、ヒンジ部1dの機械的強度、特に引き裂き強度を高めるために設けられている。それによって、割れ誘導部1bにおいて車輛内装材1が割れた際に、ヒンジ部1dにおける破断を防止することができる。ヒンジ部1dにおいても破断すると、ヒンジ部1dと割れ誘導部1bとの間の車輛内装材部分がエアバッグ4の膨出にともなって室内側に散乱することとなる。このような散乱を防止するために、補強材5により、ヒンジ部1dの機械的強度が高められている。
【0031】
補強材5は、ヒンジ部1dにおいて、車輛内装材1の最も肉厚が薄い部分からその両側、すなわち周囲に至るように設けられている。この補強材5が設けられる位置は、ヒンジ部1dを補強し得る限り特に限定されないが、本実施形態のように上記割れ誘導部1bには至らないことが望ましい。それによって、割れ誘導部1bを用いて車輛内装材1を確実を確実にエアバッグ4の膨張により割裂させることができる。
【0032】
もっとも、エアバック4の膨張により加わる圧力は、開口部3aの中央に位置している割れ誘導部1bにおいて大きく作用する。すなわち、ヒンジ部1dに比べ、割れ誘導部1bに大きな圧力が加わるので、割れ誘導部1bに補強材5が至っていてもよい。すなわち、このような大きな圧力により補強材5が存在していても、割れ誘導部1bにおいて車輛内装材1を割ることができる場合には、補強材5は割れ誘導部1bに至っていてもよい。
【0033】
上記補強材5は、車輛内装材1のヒンジ部1dを補強し得る限り、適宜の材料により形成することができる。このような材料としては、車輛内装材1と比べて、引張り強度や引き裂き強度が高い様々な材料を用いることができる。このような材料としては、好ましくは、後述する熱可塑性樹脂からなる不織布と延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムとを貼り合わせてなる補強材を好適に用いることができる。もっとも、金属メッシュ等の他の補強材を用いてもよい。
【0034】
補強材5は、車輛内装材1自体のヒンジ部1dにおける引張り強度よりも高い引張り強度を有する限り、上記のように、ヒンジ部1dにおける破断を確実に抑制することができる。
【0035】
もっとも、本実施形態では、補強材5は、図1(b)に示す合成樹脂からなる補強材により構成されている。合成樹脂からなる補強材5の場合には、車輛内装材1が合成樹脂からなる場合、車輛内装材1の成形に際し、インサート成形法により容易に車輛内装材1内に埋設させることができる。従って、製造工程の簡略化を図ることができる。また、金属等からなる補強材5を用いた場合、車輛内装材1がエアバッグ4の膨出により破断した場合に、金属材料が表面に露出するおそれがある。これに対して、上記合成樹脂からなる補強材5の場合には露出したとしても、合成樹脂からなるため、安全性に優れている。
【0036】
なお、本実施形態では、補強材5は、車輛内装材1内に埋設されていたが、図5に示す変形例のように、車輛内装材1の裏面1aに補強材5が貼り合わされていてもよい。この場合、外観性を損なわないためには、図示のように、車輛内装材1の裏面1a側に補強材5が貼り合わされていることが望ましい。また、補強材5が車輛内装材1の裏面1aに貼り合わされている場合、前述した溝1e,1eが形成されている部分においては、溝1e,1eに沿うように補強材5が貼り合わされている。それによって、相対的に肉厚が薄い割れ誘導部1b及びヒンジ部1dが形成されることとなる。
【0037】
なお、図5において、エアバック4の膨出により、補強材5を溝1cにおいて割裂させ得る限り、補強材5は溝1cに至るように設けられてもよい。
【0038】
図1(b)に示すように、補強材5は、第1のストリップ列5Aと、第2のストリップ列5Bとを有する。第1のストリップ列5Aは、複数本のストリップ状の第1の延伸熱可塑性樹脂フィルムからなり、間隔を隔てて並設されている。本実施形態では、複数本のストリップ状の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aは互いに平行に配置されている。
【0039】
また、第2のストリップ列5Bも同様に並設された複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bを有する。複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bは、互いに平行に配置されている。本実施形態では、複数本の第1の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aと、複数本の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bとは互いに直交するように配置されている。また、第1のストリップ列5Aの片面に、第2のストリップ列5Bが熱融着されており、それによって、網状の補強材5が形成されている。
【0040】
本発明の補強材に用いられるストリップ状の延伸熱可塑性樹脂フィルムの製造は、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを必要に応じて上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上に予熱した後、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも30℃低い温度以上でかつ上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも20℃高い温度以下に維持された一対のロール間に上記熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを供給して引抜延伸することにより延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを得、上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを延伸方向に切断する方法により行われる。
【0041】
ストリップ状熱可塑性樹脂フィルムの製造において原反として用いられる熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムは、非晶状態であればよく、その結晶化度は特に限定されるものではないが、示差走査熱量計で測定した結晶化度が10%未満であることが好ましく、5%未満がより好ましい。非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの結晶化度は、密度法により測定されたものをいう。
【0042】
本発明で使用される熱可塑性ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリグリコール酸、ポリ(L−乳酸)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシブチレート/ヒドロキシバリレート)、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンサクシネート/乳酸、ポリブチレンサクシネート/カーボネート、ポリブチレンサクシネート/テレフタレート、ポリブチレンアジペート/テレフタレート、ポリテトラメチレナジペート/テレフタレート、ポリブチレンサクシネート/アジペート/テレフタレート等が挙げられ、高度に延伸することができ引張り強度に優れるストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを提供できることから、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0043】
上記熱可塑性ポリエステル系樹脂の極限粘度は、低すぎると、フィルム作製時にドローダウンを起こしやすく、高すぎると、延伸しても引張り強度が向上しないので、0.6〜1.0が好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの極限粘度は、JIS K7367−1に準拠して測定されたものをいう。
【0044】
原反となる非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの厚みは、薄いと、延伸後のフィルムの厚みが薄くなりすぎ、補強材の機械的強度や引張り強度が低下することがあり、厚いと、補強材の長さ方向への可撓性が低下することがあるので、250μm〜2.5mmが好ましい。
【0045】
ストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを製造するには、まず、非晶状態の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを一対のロール間に通して引き抜いて引抜延伸する。
【0046】
上記引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの温度が低温であると、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが白化し、あるいは、硬すぎて裂けて引き抜くことができないおそれがある。従って、引抜延伸する前に熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを、予め熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上に予熱することが好ましい。また、引抜延伸する際の熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの温度は高温になると、引抜延伸によって生じた分子鎖の配向が緩和して延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの引張り強度が低下するおそれがある。従って、引抜延伸する前に熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上でかつ熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度より10℃高い温度以下に予熱するのがより好ましい。なお、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度は、JIS K7121−1987に準拠して測定されたものをいう。
【0047】
上記引抜延伸する際の一対のロール温度は、低温であると延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが硬すぎて引き抜くことができず、高温になると熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが柔らかくなりシートを引き抜く張力によりシートが切断されるので、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも30℃低い温度以上でかつ上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも20℃高い温度以下に限定され、上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度以上でかつ上記熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも10℃高い温度以下が好ましい。
【0048】
引抜延伸する際の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張り強度に優れたフィルムが得られず、高くなると延伸時にフィルムの破断が生じやすくなるので、2〜9倍が好ましく、さらに好ましくは4〜8倍である。
【0049】
引抜き延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムは該ロールの温度より高い温度で一軸延伸されて延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが得られる。
【0050】
引抜き延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムのポリエステル系樹脂は、延伸の阻害要因となる熱による等方的な結晶化及び配向が抑えられた状態で分子鎖は高度に配向しているので強度及び弾性率が優れているが結晶化度は低いので、加熱されると配向は容易に緩和され弾性率は低下してしまうという欠点を有している。
【0051】
しかし、この引抜き延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを、該ロールの温度より高い温度で一軸延伸することにより配向が緩和されることなく結晶化度が上昇し、加熱されても配向が容易に緩和されない耐熱性の優れた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが得られる。
【0052】
上記一軸延伸する方法としてはロール延伸法が好適に用いられる。ロール延伸法とは、速度の異なる2対のロール間に延伸原反を挟み、延伸原反を加熱しつつ引っ張る方法であり、一軸方向のみに強く分子配向させることができる。この場合、2対のロールの速度比が延伸倍率となる。
【0053】
上記一軸延伸する際の温度は、一次延伸する際の一対のロールの温度より高い温度であればよいが、高すぎると一次延伸された熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが溶融して切断されるので、昇温速度1℃/分で測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度〜融解ピークの立ち上がり温度の温度範囲が好ましい。
【0054】
なお、ポリエチレンテレフタレートの結晶化ピークの立ち上がり温度は約120℃であり、融解ピークの立ち上がり温度は約230℃である。従って、ポリエチレンテレフタレートシートを一軸延伸する際は約120℃〜約230℃で一軸延伸するのが好ましい。
【0055】
上記一軸延伸の延伸倍率は、特に限定されるものではないが、延伸倍率が低いと、引張り強度、引張弾性係数等の優れたシートが得られず、高くなると延伸時にシートの破断が生じやすくなるので、1.1〜3倍が好ましく、さらに好ましくは1.2〜2倍である。また、一次延伸と一軸延伸の合計延伸倍率は、同様の理由で、2.5〜10倍が好ましく、より好ましくは3〜8倍である。
【0056】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの線膨張係数は、大きいと温度差により大きく伸縮するので、小さいほうが好ましく、特に負であるのが好ましい。また、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムは積層成形体の芯材として積層されるのであるから、強度は大きいほうが好ましく、弾性率は9GPa以上が好ましい。
【0057】
一軸延伸された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムは、耐熱性を向上させるために一軸延伸温度より高い温度で熱固定されているのが好ましい。
【0058】
熱固定温度は、一軸延伸温度より低いと熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化が進まないので耐熱性が向上せず、昇温速度1℃/分で測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の融解ピークの立ち上がり温度より高くなると熱可塑性ポリエステル系樹脂が溶解して延伸(配向)が消滅し引張り弾性率、引張り強度等が低下するので、一軸延伸温度〜昇温速度1℃/分で測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の融解ピークの立ち上がり温度が好ましい。
【0059】
また、熱固定する際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムに負荷がかかっていると延伸されフリーの状態では収縮するので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの延伸方向の長さが実質的に変化しないようにした状態で行うことが好ましく、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムに圧力もかかっていないのが好ましい。
【0060】
すなわち、熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの長さが、熱固定前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの長さの0.95〜1.1になるように熱固定するのが好ましい。
【0061】
従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的に熱固定する場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの送り速度比を0.95〜1.1になるように設定して熱固定するのが好ましい。
【0062】
また、ストリップ状の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを熱固定する際には、荷重がかからない状態で両端部を固定して行うのが好ましい。
【0063】
熱固定する際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。
【0064】
熱固定する時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの厚さや熱固定温度により異なるが、一般に10秒〜10分が好ましい。
【0065】
さらに、上記熱固定された延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを、ガラス転移温度〜昇温速度1℃/分で測定した示差走査熱量曲線での熱可塑性ポリエステル系樹脂の結晶化ピークの立ち上がり温度の範囲で、実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。
【0066】
上記アニールすることにより、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムは弾性率等の力学的物性が良好であって、ガラス転移温度以上の温度に加熱されても弾性率等の力学的物性が低下することがなく、且つ、収縮率を低く抑えることができる。
【0067】
また、アニールする際に、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムに大きな張力がかかっていると延伸されるので、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムに実質的に張力がかからない状態でアニールするのが好ましい。
【0068】
すなわち、アニールされた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの長さが、アニール前の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの長さの1.0以下になるようにアニールするのが好ましい。
【0069】
従って、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムをピンチロール等のロールで加熱室内を移動しながら連続的にアニールする場合は、入口側と出口側の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの送り速度比を1.0以下になるように設定してアニールするのが好ましい。
【0070】
また、ストリップ状の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムをアニールする際には、荷重がかからないよう両端部を開放して行うのが好ましい。
【0071】
アニールする際の加熱方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱風、ヒーター等で加熱する方法があげられる。
【0072】
アニールする時間は、特に限定されず、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの厚さやアニール温度により異なるが、一般に10秒以上が好ましく、より好ましくは30秒〜5分であり、さらに好ましくは1〜2分である。
【0073】
延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムの厚みは、薄いと、ストリップ状熱可塑性樹脂フィルムの引張り強度が低下することがあり、厚いと、補強材の長さ方向の可撓性が低下することがあるので、50〜250μmが好ましい。
【0074】
上記の通りにして得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを、その延伸方向に沿って切断することにより、延伸方向を長さ方向とした長尺帯状のストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを得ることができる。
【0075】
なお、ストリップ状熱可塑性樹脂フィルムの幅は、細すぎると、補強材に充分な引張り強度を付与できないおそれがあり、広いと、不織布の一面をストリップ状熱可塑性樹脂フィルムが覆う面積が大きくなり、不織布が有している柔軟性、通気性及び通水性などを低下させたりする他、補強材の両面に後述する熱可塑性樹脂層を積層一体化した場合に熱可塑性樹脂層同士を融着させて強固に一体化できなくなるおそれがあるので、0.5〜2.0mmが好ましく、1.0〜1.5mmがより好ましい。
【0076】
ストリップ状熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、薄いと、補強材に充分な引張り強度を付与できないおそれがあり、厚いと、補強材の長さ方向の可撓性が低下することがあるので、50〜250μmが好ましく、100〜150μmがより好ましい。
【0077】
上記網状体からなる補強材5では、複数本の第1の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aと、複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bとが互いに直交するように配置されて、格子状の形状とされている。従って、補強材5の面方向において、様々な方向に対して高い引張り弾性率を発現する。
【0078】
なお、図1(b)では、ストリップ状の第1の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aと、ストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bとは直交していたが、図4に示すように、互いに平行に配置された複数本のストリップ状の第1の熱可塑性樹脂フィルム5aと、互いに平行に配置された複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bは斜め方向に交差するように配置されていてもよい。
【0079】
また、上記網状体からなる補強材5に、さらに、図3(b)に正面断面図で示すように、不織布5cを一方面に熱融着等により積層してなる補強材を用いてもよい。この場合には、引張り弾性率をより一層高めることができる。上記不織布5cを構成する繊維としては、ポリエステル系繊維、ポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ナイロン繊維、ウレタン繊維などの熱可塑性樹脂繊維などを適宜用いることができる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート系繊維が好ましく、ポリエチレンテレフタレート系繊維がより好ましい。
【0080】
不織布の目付は、不織布の引張り強度、機械的強度、及び柔軟性を考慮すると、10.0〜50.0g/mが好ましく、15.0〜30.0g/mがより好ましい。なお、不織布の目付とは、単位面積(m)あたりの不織布の重量(g)を意味する。
【0081】
不織布の一面にストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを貼着一体化するには、接着剤を用いればよい。接着剤としては、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、アクリルウレタン系接着剤、ビニルアルキルエーテル系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ポリビニルピロリドン系接着剤、ポリアクリルアミド系接着剤、セルロース系接着剤などを用いることができる。
【0082】
不織布の一面にストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを貼着一体化するには、例えば、(1)不織布の一面またはストリップ状熱可塑性樹脂フィルムにおける不織布に対向する面のいずれか一方または双方に接着剤を塗布した後に、不織布とストリップ状熱可塑性樹脂フィルムとをいずれか一方または双方に塗布した接着剤を介して積層する方法、(2)接着剤を溶剤中に溶解または分散させた接着剤溶液中にストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを浸漬させた後に引き上げることにより表面が接着剤溶液によってコーティングされたストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを得、この接着剤溶液によってコーティングされたストリップ状熱可塑性樹脂フィルムを不織布の一面に積層する方法などが用いられる。なかでも、不織布とストリップ状熱可塑性樹脂フィルムとを強固に接着することができることから、上記(2)の方法が好ましく用いられる。
【0083】
接着剤溶液に用いられる溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、イソプロピルアルコールなどの有機溶剤の他、水などが挙げられる。また、接着剤溶液における接着剤の含有量は、10〜80重量%程度であればよい。
【0084】
なお、不織布5cの両面に複数本のストリップ状の第1,第2の延伸熱可塑性樹脂フィルムが貼り合わされていてもよい。
【0085】
本実施形態で用いられている補強材5は上記のように、熱可塑性樹脂からなる不織布5aの一方面に上記延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムからなる複数本のストリップ状熱可塑性樹脂フィルム5bを積層した構造を有するため、高い引張り強度を有する。上記のように、本実施形態で用いられている補強材5は、複数本の第1のストリップ状の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aと、複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bとを熱融着した構造を有するため、非常に高い引張り強度を発現する。例えば、上記ストリップ状熱可塑性樹脂フィルム5bを、超延伸ポリエチレンテレフタレート系樹脂により構成した場合、厚みが100μmの場合、延伸方向の引張り強度は450MPa以上と非常に高い。同じ厚みの鉄からなるシートの引張り強度は350MPa程度であり、また、市販の延伸ポリエチレンテレフタレートシートでは、引張り強度は60MPa程度にすぎない。従って、補強材5では、複数本のストリップ状の第1,第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5a,5bの長さ方向において非常に高い引張り強度を発現する。加えて、複数本のストリップ状の第1の延伸熱可塑性樹脂フィルム5aと、複数本のストリップ状の第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5bとが上記のように格子状の形状を構成しているため、上記ストリップ状の第1,第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム5a,5bの長さ方向以外の様々な方向において非常に高い引張り強度を発現する。よって、ヒンジ部1dに埋設されて、ヒンジ部1dにおける破断が生じないようにヒンジ部1dを充分に補強する。
【0086】
従って、ヒンジ部1dにおける車輛内装材1の破断をより確実に防止することかできる。
【0087】
本実施形態の車輛用エアバッグ収納構造2では、上記のように、ヒンジ部1dが、車輛内装材1の肉厚を相対的に薄くすることにより、さらに上記補強材5を埋設することにより、ヒンジ部1dの補強が果たされている。従って、ヒンジ部1dを構成するのに車輛内装材1以外の他の部材を必要としない。よって、部品点数の削減を図ることができる。しかも、車輛内装材1の成形に際し、補強材5を埋設するだけで、ヒンジ部1dを構成することができる。従って、製造工程の大幅な簡略化を図ることができるよって、車輛用エアバッグ収納構造2では、従来の車輛用エアバッグ収納構造に比べて、コストを大幅に低減することができる。
【符号の説明】
【0088】
1…車輛内装材
1a…裏面
1b…割れ誘導部
1c…溝
1d…ヒンジ部
1e…溝
2…車輛用エアバッグ収納構造
3…エアバッグ収納容器
3a…開口部
4…エアバッグ
5…補強材
5A,5B…第1,第2のストリップ列
5a,5b…ストリップ状の第1,第2の延伸熱可塑性樹脂フィルム
5c…不織布
11…連結部材
12…固定用ブラケット
13…ボルト
14…ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輛内装部材の裏側にエアバッグが収納されている車輛用エアバッグ収納構造であって、
車輛内装材と、
開口を有し、該開口の周縁部が前記車輛内装材の裏面に固定されているエアバッグ収納容器と、
前記エアバッグ収納容器内に収納されているエアバッグとを備え、
エアバッグが膨張した際に車輛内装材の割れを誘導し、割れにより生じた開口部分からエアバッグを膨出させるように、前記車輛内装材の前記エアバッグ収納容器の開口内に位置している部分に車輛内装材の他の部分よりも厚みが薄くされている割れ誘導部が形成されており、
前記車輛内装材の前記エアバッグ収納容器の開口内に位置している領域において、車輛内装材の前記割れ誘導部が設けられている部分を除いた残りの部分に比べて厚みが薄くされているヒンジ部が形成されており、該ヒンジ部を起点として、該ヒンジ部と、前記割れ誘導部との間の車輛内装材部分が前記エアバッグが膨張した際に車輛内装材の表面側に開くように形成されており、
前記車輛内装材の前記ヒンジ部が設けられている部分において、前記車輛内装材の最も肉厚の薄い部分から最も肉厚の薄い部分の両側に至るように車輛内装材に埋設されており、かつヒンジ部における車輛内装材自体の引張り強度よりも高い引張り強度を有する補強材をさらに備える、車輛用エアバッグ収納構造。
【請求項2】
前記補強材が間隔を隔てて並設された複数本のストリップ状の第1の熱可塑性樹脂フィルムからなる第1のストリップ列と、
前記第1のストリップ列に融着されており、並設された複数本のストリップ状の第2の熱可塑性樹脂フィルムからなる第2のストリップ列とを有する網状体からなり、前記第1,第2の熱可塑性樹脂フィルムが、延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムからなる、請求項1に記載の車輛用エアバッグ収納構造。
【請求項3】
前記ストリップ状の延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムが、熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも30℃低い温度以上かつ該熱可塑性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度よりも20℃高い温度以下に維持された一対のロール間に熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを供給し、引き抜き延伸することにより得られた延伸熱可塑性ポリエステル系樹脂フィルムを切断することにより形成されたものである、請求項2に記載の車輛用エアバッグ収納構造。
【請求項4】
前記ヒンジ部において、前記車輛内装材の表面及び裏面の少なくとも一方に溝が形成されており、それによって、ヒンジ部の肉厚が、相対的に薄くされている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の車輛用エアバッグ収納構造。
【請求項5】
前記割れ誘導部において、前記車輛内装材の表面及び裏面の少なくとも一方に溝が形成されており、それによって、車輛内装材本体よりも相対的に肉厚が薄い割れ誘導部が形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の車輛用エアバッグ収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−47049(P2013−47049A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−185963(P2011−185963)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(000157083)トヨタ自動車東日本株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】