説明

軸受装置

【課題】 ボス部材の耐久性を確保しつつ軽量化を図る。
【解決手段】 ボス部材22のうち連結ピン28が嵌合する部位を、強度が大きな鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体23によって構成すると共に、ボス部材22のうち連結ピン28が接触しない軸方向の中間部位を、鉄鋼材料よりも軽量な繊維強化樹脂を用いて形成された樹脂製連結パイプ24によって構成する。これにより、ボス部材22のうち連結ピン28が嵌合する各鉄鋼製ボス筒体23の耐摩耗性、耐久性を確保しつつ、ボス部材22のうち連結ピン28が接触しない樹脂製連結パイプ24を軽量化することができ、ボス部材22全体の軽量化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば油圧ショベル等の建設機械に装備される作業装置のピン結合部等に好適に用いられる軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、該下部走行体上に旋回可能に搭載された上部旋回体と、該上部旋回体の前部側に俯仰動可能に設けられた作業装置とにより大略構成されている。ここで、油圧ショベルの作業装置は、通常、ブーム、アーム、バケット、及びこれらを駆動するブームシリンダ、アームシリンダ、バケットシリンダ等によって構成されている。
【0003】
そして、上部旋回体とブームとの連結部、ブームとアームとの連結部、アームとバケットとの連結部、ブームシリンダと上部旋回体及びブームとの連結部、アームシリンダとブーム及びアームとの連結部、バケットシリンダとアーム及びバケットリンクとの連結部は、それぞれ軸受装置を用いて互いに回動可能に連結されている。
【0004】
この軸受装置は、軸方向に延びるピン挿通孔が形成された筒状のボス部材と、該ボス部材を挟んで軸方向で対向し前記ボス部材のピン挿通孔に対応するピン挿通孔が形成された一対の相手方部材と、ボス部材のピン挿通孔と各相手方部材のピン挿通孔とに挿通されこれらボス部材と各相手方部材とを連結する連結ピンとを備えて構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−120693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した従来技術による軸受装置は、ボス部材を、各相手方部材と対向し内周側が連結ピンが嵌合するピン嵌合孔となった一対のボス筒体と、これら一対のボス筒体間を連結する連結パイプとにより構成している。そして、一対のボス筒体と連結パイプとは、それぞれ鉄鋼材料を用いて形成され、これら各ボス筒体と連結パイプとは溶接等の手段を用いて固着されている。
【0007】
この場合、ボス部材を構成する一対のボス筒体は、そのピン嵌合孔に連結ピンが嵌合されるため、鉄鋼材料を用いて形成することにより、大きな強度や耐久性を確保する必要がある。これに対し、ボス部材を構成する連結パイプは、一対のボス筒体間を連結するものであるため、各ボス筒体のように大きな強度や耐久性を要求されるものではない。
【0008】
このため、従来技術のように、ボス部材を構成する一対のボス筒体と連結パイプとを、いずれも鉄鋼材料を用いて形成した場合には、軸受装置全体の重量が増大してしまう。この結果、油圧ショベルにおいては、多数の軸受装置を備えた作業装置の重量が増大するだけでなく、この作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイトの重量も増大することとなり、走行時の燃費性能や、作業装置を用いた掘削作業等の作業性能が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、ボス部材の耐久性を確保しつつ軽量化を図ることができるようにした軸受装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決するため、本発明は、軸方向に延びるピン挿通孔が形成された筒状のボス部材と、該ボス部材を挟んで軸方向で対向し前記ボス部材のピン挿通孔に対応するピン挿通孔が形成された一対の相手方部材と、前記ボス部材のピン挿通孔と前記各相手方部材のピン挿通孔とに挿通され前記ボス部材と各相手方部材とを連結する連結ピンとを備えてなる軸受装置に適用される。
【0011】
そして、請求項1の発明の特徴は、前記ボス部材は、鉄鋼材料を用いて形成され、前記各相手方部材と対向し内周側が前記連結ピンが嵌合するピン嵌合孔となった一対の鉄鋼製ボス筒体と、樹脂材料を用いて形成され、前記各鉄鋼製ボス筒体間を連結する樹脂製連結パイプとにより構成したことにある。
【0012】
請求項2の発明は、前記各鉄鋼製ボス筒体のうち前記樹脂製連結パイプと対面する軸方向の端面には、前記樹脂製連結パイプの内周面に嵌合する位置合せ部を前記ピン嵌合孔と同心状に設け、前記樹脂製連結パイプは軸方向両端側の内周面を前記位置合せ部に嵌合させた状態で前記各鉄鋼製ボス筒体間を連結する構成としたことにある。
【0013】
請求項3の発明は、前記樹脂製連結パイプの内周面または外周面には、鉄鋼材料を用いてパイプ状に形成された鉄鋼製補強パイプを固着する構成としたことにある。
【0014】
請求項4の発明は、前記樹脂製連結パイプは、繊維強化樹脂を用いて形成したことにある。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体と、樹脂材料を用いて形成された樹脂製連結パイプとによってボス部材を構成したので、連結ピンが嵌合する各鉄鋼製ボス筒体の強度や耐久性を確保しつつ、樹脂製連結パイプを軽量化することにより、ボス部材全体の軽量化を図ることができる。即ち、ボス部材のうち連結ピンが嵌合する部位を、強度が大きな鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体によって構成したので、ボス部材のうち連結ピンが嵌合する部位の耐摩耗性、耐久性を確保することができる。一方、樹脂製連結パイプは、一対のボス筒体間を連結するだけで連結ピンが接触することはないので、鉄鋼材料よりも軽量な樹脂材料を用いて形成することができ、この分、ボス部材全体の軽量化を図ることができる。
【0016】
請求項2の発明によれば、一対の鉄鋼製ボス筒体に設けた位置合せ部を樹脂製連結パイプの軸方向両端側の内周面に嵌合させることにより、鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとを容易に接続することができる。また、各鉄鋼製ボス筒体の軸方向端面と樹脂製連結パイプの軸方向端面との接合部の接合強度を高めることができる。一方、各鉄鋼製ボス筒体に形成されたピン嵌合孔の軸中心線を、樹脂製連結パイプを介して確実に一致させることができるので、各鉄鋼製ボス筒体のピン嵌合孔に連結ピンを挿通するときの作業性を高めることができる。さらに、各鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとの接合に際して溶接加工を行う必要がないので、鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとの接合部分に開先加工等の機械加工を施す必要がなく、鉄鋼製ボス筒体に対する機械加工の工数を低減することができる。
【0017】
請求項3の発明によれば、樹脂製連結パイプの内周面または外周面に鉄鋼製補強パイプを固着することにより、他層構造の連結パイプを形成することができ、樹脂製連結パイプの強度を高めることができる。この結果、樹脂製連結パイプのみを用いて各鉄鋼製ボス筒体間を連結する場合に比較して、ボス部材全体の強度を高めることができる。しかも、鉄鋼製補強パイプを溶接によって各鉄鋼製ボス筒体に接合することにより、樹脂製連結パイプのみを接着剤を用いて各鉄鋼製ボス筒体に接着する場合に比較して、各鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとの接合部の強度を高めることができ、ボス部材全体の強度を一層高めることができる。
【0018】
請求項4の発明によれば、樹脂製連結パイプの素材として繊維強化樹脂を用いることにより、樹脂製連結パイプの軽量化を図りつつ樹脂製連結パイプ自体の強度をも高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施の形態による軸受装置が適用された油圧ショベルを示す正面図である。
【図2】軸受装置を図1中の矢示II−II方向からみた拡大断面図である。
【図3】図2中のボス部材を単体で示す断面図である。
【図4】ボス部材を構成する各鉄鋼製ボス筒体、樹脂製連結パイプを分解した状態で示す断面図である。
【図5】鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとの接合部を拡大して示す要部拡大の断面図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態によるボス部材を単体で示す図3と同様な断面図である。
【図7】図6中の樹脂製連結パイプと鉄鋼製補強パイプとを示す分解斜視図である。
【図8】鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプ及び鉄鋼製補強パイプとの接合部を拡大して示す要部拡大の断面図である。
【図9】変形例による鉄鋼製ボス筒体と樹脂製連結パイプとの接合部を拡大して示す図5と同様な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態による軸受装置を油圧ショベルのブームとブームシリンダとのピン結合部に適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【0021】
まず、図1ないし図5は本発明の第1の実施の形態を示している。図中、1は建設機械の代表例としての油圧ショベルを示し、該油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、後述の作業装置7とにより大略構成されている。ここで、上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム4を有し、該旋回フレーム4の前部左側には運転室を画成するキャブ5が設けられ、旋回フレーム4の後端側には作業装置7との重量バランスをとるカウンタウエイト6が設けられている。
【0022】
7は上部旋回体3を構成する旋回フレーム4の前端側に俯仰動可能に設けられた作業装置を示している。この作業装置7は、旋回フレーム4の前端側にピン結合されたブーム8と、ブーム8の先端側にピン結合されたアーム9と、アーム9の先端側にピン結合されたバケット10と、旋回フレーム4とブーム8との間に設けられた左,右のブームシリンダ11と、ブーム8とアーム9との間に設けられたアームシリンダ12と、バケットリンク13を介してアーム9とバケット10との間に設けられたバケットシリンダ14とにより大略構成されている。
【0023】
ここで、例えば旋回フレーム4とブーム8との間、ブーム8とアーム9との間、アーム9とバケット10との間、ブームシリンダ11と旋回フレーム4及びブーム8との間、アームシリンダ12とブーム8及びアーム9との間、バケットシリンダ14とアーム9及びバケットリンク13との間は、それぞれ軸受装置を用いて相対回転可能にピン結合されている。
【0024】
そこで、作業装置7を構成するブーム8とブームシリンダ11との間をピン結合する軸受装置21について、以下に説明する。
【0025】
この場合、ブーム8は、上,下方向で対面しつつ前,後方向に延びる上面板8A、下面板8Bと、左,右方向で対面しつつ上面板8Aと下面板8Bとの間を連結する左側面板8C、右側面板8Dとにより、内部が中空で横断面が四角形状のボックス構造体として形成されている。また、左,右の側面板8C,8Dの長さ方向の中間部には円形状のボス部材取付孔8Eが穿設され、このボス部材取付孔8Eには、後述するボス部材22の各鉄鋼製ボス筒体23が溶接等の手段を用いて固着されている(図2参照)。
【0026】
一方、ブーム8にピン結合されるブームシリンダ11は、ブーム8と旋回フレーム4の前端側との間に、ブーム8を挟んで左,右に1本ずつ配置され、これら左,右のブームシリンダ11は、チューブ11Aと、該チューブ11A内に摺動可能に挿嵌されたピストン(図示せず)と、該ピストンに基端側が固定され、先端側がチューブ11Aから外部に突出したロッド11Bとにより構成されている。ここで、各ブームシリンダ11(チューブ11A)のボトム側にはボトム側取付アイ(図示せず)が設けられ、該ボトム側取付アイは旋回フレーム4の前端側にピン結合される構成となっている。一方、各ブームシリンダ11のロッド11Bの先端側には、後述するロッド側取付アイ26が一体に設けられている。
【0027】
次に、21はブーム8と左,右のブームシリンダ11のロッド11Bとの間をピン結合する軸受装置を示している。この軸受装置21は、図2に示すように、後述のボス部材22と、一対のロッド側取付アイ26と、連結ピン28とにより大略構成されている。
【0028】
22はブーム8に設けられた円筒状のボス部材を示し、該ボス部材22は、ブーム8の左,右の側面板8C,8Dを貫通して左,右方向に延び、その内周側には、後述する連結ピン28が挿通されるピン挿通孔22Aが設けられている。そして、ボス部材22は、図3及び図4に示すように、後述の各鉄鋼製ボス筒体23と、樹脂製連結パイプ24とにより構成されている。
【0029】
23は後述の各ロッド側取付アイ26と対向してボス部材22の軸方向の両端側に配置された左,右一対の鉄鋼製ボス筒体を示し、これら各鉄鋼製ボス筒体23は、鉄鋼材料を用いて全体として円筒状に形成されている。ここで、各鉄鋼製ボス筒体23の内周側は、ボス部材22のピン挿通孔22Aの一部を構成するピン嵌合孔23Aとなり、該ピン嵌合孔23A内には、後述の連結ピン28が嵌合する構成となっている。
【0030】
また、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向中間部の外周側には、全周に亘って大径な円板状の取付フランジ部23Bが一体に形成され、この取付フランジ部23Bは、ブーム8のボス部材取付孔8Eに嵌合するものである。そして、各鉄鋼製ボス筒体23は、取付フランジ部23Bの外周縁部を、ブーム8のボス部材取付孔8Eの内周縁部に全周溶接することにより、ブーム8内に固定されるものである。
【0031】
一方、各鉄鋼製ボス筒体23のうち後述の樹脂製連結パイプ24と対面する軸方向端面23Cには、樹脂製連結パイプ24に向けて軸方向に突出する短尺な円筒状の位置合せ部23Dが一体形成されている。この位置合せ部23Dは、鉄鋼製ボス筒体23のピン嵌合孔23Aの軸中心線と同心状に設けられ、位置合せ部23Dの外周面が、後述する樹脂製連結パイプ24のピン挿通孔24Aの内周面24Cに嵌合することにより、各鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とを、互いの軸中心線とが同心状に重なるように位置合せすることができる構成となっている。
【0032】
次に、24はボス部材22の軸方向の中間部を構成する樹脂製連結パイプを示し、該樹脂製連結パイプ24は、一対の鉄鋼製ボス筒体23間を一体的に連結するものである。ここで、樹脂製連結パイプ24は、軽量で適度な強度を有する樹脂材料、例えば炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、アラミド繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂(FRP)を用いて円筒状に形成されている。この場合、例えば炭素繊維強化樹脂は、金属材料に比較して比重が1.9と小さく、かつ金属材料よりも比強度(単位比重量当たりの強度)が大きいため、適度な強度を有する軽量な材料として適している。
【0033】
また、樹脂製連結パイプ24の内周側は、各鉄鋼製ボス筒体23のピン嵌合孔23Aよりも大きな孔径を有するピン挿通孔24Aとなり、該ピン挿通孔24Aは、各鉄鋼製ボス筒体23のピン嵌合孔23Aと共にボス部材22のピン挿通孔22Aを構成している。そして、樹脂製連結パイプ24の軸方向端面24Bを、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cに突合せた状態で、樹脂製連結パイプ24のピン挿通孔24Aのうち軸方向両端側の内周面24Cが、各鉄鋼製ボス筒体23に設けられた位置合せ部23Dの外周面に嵌合する構成となっている。
【0034】
25は各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端部と樹脂製連結パイプ24の軸方向両端部との間に位置し、これら鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とを接続する左,右の固着部を示している。これら各固着部25は、例えば鉄鋼材料と繊維強化樹脂とを強固に接着する接着剤により構成され、鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cと樹脂製連結パイプ24の軸方向端面24Bとの間、及び鉄鋼製ボス筒体23の位置合せ部23Dの外周面と樹脂製連結パイプ24のピン挿通孔24Aの内周面24Cとの間に設けられるものである。
【0035】
そして、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cと位置合せ部23Dの外周面とに接着剤を塗布した状態で、樹脂製連結パイプ24の軸方向端面24Bを、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cに突合せる。これにより、一対の鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とを固着部25によって強固に接合することができ、これら鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とが一体化されたボス部材22が形成されている。
【0036】
次に、26はボス部材22を挟んで軸方向で対向する一対の相手方部材としてのロッド側取付アイを示し、該各ロッド側取付アイ26は、ブームシリンダ11を構成するロッド11Bの先端部に一体形成されている。ここで、各ロッド側取付アイ26は、軸方向の寸法が短尺な円筒体からなり、その内周側はピン挿通孔26Aとなっている。そして、各ロッド側取付アイ26のピン挿通孔26Aには、2個の円筒状のブッシュ27が軸方向に離間して嵌着され、各ブッシュ27の内周面27Aは、後述する連結ピン28の摺動面となっている。
【0037】
28はボス部材22のピン挿通孔22Aと各ロッド側取付アイ26のピン挿通孔26Aとに挿通された連結ピンを示し、該連結ピン28は、ボス部材22と各ロッド側取付アイ26とを相対回転可能に連結するものである。ここで、連結ピン28の両端側は、ボス部材22を構成する各鉄鋼製ボス筒体23のピン嵌合孔23Aに嵌合すると共に、各ロッド側取付アイ26に取付けられたブッシュ27の内周面27Aに摺動可能に嵌合している。
【0038】
また、各ロッド側取付アイ26から突出した連結ピン28の両端部には、径方向に貫通するボルト挿通孔28Aが穿設されている。そして、各ボルト挿通孔28Aには、抜止め用のボルト29が挿通され、該各ボルト29は、2個のナット30によって連結ピン28に対して抜止めされている。
【0039】
これにより、連結ピン28は、各ボルト29によって軸方向に抜止めされた状態で、ブーム8に設けられたボス部材22と、各ブームシリンダ11のロッド11Bに設けられたロッド側取付アイ26との間を、相対回転可能に連結している。
【0040】
本実施の形態による軸受装置21は上述の如き構成を有するもので、油圧ショベル1の作業装置7を用いて土砂の掘削作業を行うときには、左,右のブームシリンダ11のロッド11Bを伸縮させることにより、ブーム8が旋回フレーム4に対して上,下方向に回動(俯仰動)する。このとき、ブーム8と各ブームシリンダ11のロッド11Bとは、軸受装置21を介して相対回転可能に連結されているので、ロッド11Bの伸縮動作を軸受装置21を介して円滑にブーム8に伝えることができる。
【0041】
ここで、本実施の形態では、ブーム8のボス部材22を、鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体23と、繊維強化樹脂を用いて形成された樹脂製連結パイプ24とによって構成したので、連結ピン28が嵌合する各鉄鋼製ボス筒体23の強度や耐久性を確保しつつ、樹脂製連結パイプ24を軽量化することにより、ボス部材22全体の軽量化を図ることができる。
【0042】
即ち、本実施の形態による軸受装置21は、ボス部材22のうち連結ピン28が嵌合する部位を、強度が大きな鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体23によって構成している。このため、例えばボス部材全体を鉄鋼材料を用いて形成した場合と同様に、ボス部材22のうち連結ピン28が嵌合する部位の耐摩耗性、耐久性を確保することができる。
【0043】
一方、本実施の形態による軸受装置21は、ボス部材22のうち、連結ピン28が接触しない軸方向の中間部位を、鉄鋼材料よりも軽量な繊維強化樹脂を用いて形成された樹脂製連結パイプ24によって構成している。このため、例えばボス部材全体を鉄鋼材料を用いて形成した場合に比較して、樹脂製連結パイプ24を軽量化した分、ボス部材22全体の軽量化を図ることができる。
【0044】
この場合、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cに、ピン嵌合孔23Aと同心状に位置合せ部23Dを設け、この位置合せ部23Dを、樹脂製連結パイプ24のピン挿通孔24Aに嵌合させることにより、各鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とを容易に接続することができる。しかも、各鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cと樹脂製連結パイプ24の軸方向端面24Bとの接合部を、位置合せ部23Dによって補強することができ、その接合強度を高めることができる。
【0045】
また、各鉄鋼製ボス筒体23に形成されたピン嵌合孔23Aの軸中心線を、樹脂製連結パイプ24を介して確実に一致させることができるので、各鉄鋼製ボス筒体23のピン嵌合孔23Aに連結ピン28を挿通するときの作業性を高めることができる。
【0046】
さらに、各鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とは、接着剤を用いた固着部25によって強固に接合されるので、各鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とを溶接によって接合する必要がない。従って、例えばボス部材全体を鉄鋼材料を用いて形成した場合に比較して、ボス筒体と連結パイプとの接合部分に開先加工等の機械加工を施す必要がなく、各鉄鋼製ボス筒体23と樹脂製連結パイプ24とに対する機械加工の工数を低減することができるので、製造コストの削減にも寄与することができる。
【0047】
次に、図6ないし図8は本発明の第2の実施の形態を示し、本実施の形態の特徴は、樹脂製連結パイプの内周面に、鉄鋼材料を用いて形成された鉄鋼製補強パイプを固着したことにある。なお、本実施の形態では、上述した第1の実施の形態と同一の構成要素に同一符号を付し、その説明を省略するものとする。
【0048】
図中、31は本実施の形態によるボス部材を示し、該ボス部材31は、第1の実施の形態によるボス部材22とほぼ同様に、後述する一対の鉄鋼製ボス筒体32と、樹脂製連結パイプ33とにより構成され、その内周側はピン挿通孔31Aとなっている。しかし、樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに後述の鉄鋼製補強パイプ33が固着されている点で、第1の実施の形態によるボス部材22とは異なるものである。
【0049】
32はボス部材31の軸方向の両端側に配置された左,右一対の鉄鋼製ボス筒体を示し、これら各鉄鋼製ボス筒体32は、第1の実施の形態による鉄鋼製ボス筒体23と同様に、鉄鋼材料を用いて全体として円筒状に形成され、その内周側は連結ピン28が嵌合するピン嵌合孔32Aとなっている。また、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向中間部の外周側には、ブーム8のボス部材取付孔8Eに溶接によって固着される円板状の取付フランジ部32Bが一体に形成されている。
【0050】
一方、各鉄鋼製ボス筒体32のうち後述の樹脂製連結パイプ33と対面する軸方向端面32Cには、樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに嵌合する短尺な円筒状の大径位置合せ部32Dと、後述する鉄鋼製補強パイプ34の内周面34Bに嵌合する短尺な円筒状の小径位置合せ部32Eとが一体形成されている。これら大径位置合せ部32Dと小径位置合せ部32Eとは、鉄鋼製ボス筒体32のピン嵌合孔32Aの軸中心線と同心状に設けられている。
【0051】
次に、33は本実施の形態による樹脂製連結パイプを示している。この樹脂製連結パイプ33は、図7に示すように、例えば炭素繊維強化樹脂、ガラス繊維強化樹脂、アラミド繊維強化樹脂等の繊維強化樹脂(FRP)を用いて形成された、半円弧状の断面形状を有する一対の樹脂製半割パイプ33Aからなっている。これら各樹脂製半割パイプ33Aは、後述する鉄鋼製補強パイプ34の外周面に接着することにより、当該鉄鋼製補強パイプ34を内装した円筒体として構成されている。そして、樹脂製連結パイプ33の軸方向端面33Bを、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cに突合せた状態で、樹脂製連結パイプ33の軸方向両端側の内周面33Cが、各鉄鋼製ボス筒体32に設けられた大径位置合せ部32Dの外周面に嵌合する構成となっている。
【0052】
34は樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに固着して設けられた鉄鋼製補強パイプで、該鉄鋼製補強パイプ34は、樹脂製連結パイプ33を補強するものである。ここで、鉄鋼製補強パイプ34は、例えば鉄鋼製ボス筒体32の素材と同様な鉄鋼材料を用いて樹脂製連結パイプ33よりも薄肉な円筒状に形成されている。また、鉄鋼製補強パイプ34は、樹脂製連結パイプ33の内径寸法とほぼ等しい外径寸法を有し、鉄鋼製補強パイプ34の軸方向寸法は、樹脂製連結パイプ33よりも僅かに短尺に形成されている。そして、鉄鋼製補強パイプ34の軸方向端面34Aを、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cに突合せた状態で、鉄鋼製補強パイプ34の軸方向両端側の内周面34Bが、各鉄鋼製ボス筒体32に設けられた小径位置合せ部32Eの外周面に嵌合する構成となっている。
【0053】
35は樹脂製連結パイプ33を構成する各樹脂製半割パイプ33Aの内周面33Cと鉄鋼製補強パイプ34の外周面との間を接続する固着部を示し、この固着部35は、例えば鉄鋼材料と繊維強化樹脂とを強固に接着する接着剤により構成されている。そして、各樹脂製半割パイプ33Aの内周面33Cと鉄鋼製補強パイプ34の外周面とに接着剤を塗布した状態で、図7に示すように、各樹脂製半割パイプ33Aによって鉄鋼製補強パイプ34を外周側から挟込むことにより、各樹脂製半割パイプ33Aからなる樹脂製連結パイプ33と鉄鋼製補強パイプ34とを固着部35によって強固に接合することができる。これにより、内周面33Cに鉄鋼製補強パイプ34が固着された二層構造の樹脂製連結パイプ33を形成することができ、この樹脂製連結パイプ33の強度を高めることができる構成となっている。
【0054】
36は各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端部と樹脂製連結パイプ33の軸方向両端部との間を接続する左,右の固着部を示している。これら各固着部36は、例えば鉄鋼材料と繊維強化樹脂とを強固に接着する接着剤により構成され、鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cと樹脂製連結パイプ33の軸方向端面33Bとの間、及び鉄鋼製ボス筒体32の大径位置合せ部32Dの外周面と樹脂製連結パイプ33の内周面33Cとの間に設けられるものである。
【0055】
そして、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cと大径位置合せ部32Dの外周面とに接着剤を塗布した状態で、各鉄鋼製ボス筒体32の大径位置合せ部32Dの外周面に樹脂製連結パイプ33の内周面33Cを嵌合させると共に、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cに樹脂製連結パイプ33の軸方向端面33Bを突合せることにより、一対の鉄鋼製ボス筒体32と樹脂製連結パイプ33とを固着部36によって強固に接合することができる構成となっている。
【0056】
37は各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端部と鉄鋼製補強パイプ34の軸方向両端部との間を接続する左,右の固着部を示している。これら各固着部37は、例えば鉄鋼材料同士を強固に接着する接着剤により構成され、鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cと鉄鋼製補強パイプ34の軸方向端面34Bとの間、及び鉄鋼製ボス筒体32の小径位置合せ部32Eの外周面と鉄鋼製補強パイプ34の内周面34Bとの間に設けられるものである。
【0057】
そして、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cと小径位置合せ部32Eの外周面とに接着剤を塗布した状態で、各鉄鋼製ボス筒体32の小径位置合せ部32Eの外周面に鉄鋼製補強パイプ34の内周面34Bを嵌合させると共に、各鉄鋼製ボス筒体32の軸方向端面32Cに鉄鋼製補強パイプ34の軸方向端面34Aを突合せることにより、一対の鉄鋼製ボス筒体32と鉄鋼製補強パイプ34とを固着部37によって強固に接合することができる構成となっている。
【0058】
本実施の形態によるボス部材31は上述の如き構成を有するもので、本実施の形態においても、ボス部材31のうち連結ピン28が嵌合する部位を、強度が大きな鉄鋼材料を用いて形成された一対の鉄鋼製ボス筒体32によって構成し、ボス部材31のうち、連結ピン28が接触しない軸方向の中間部位を、鉄鋼材料よりも軽量な繊維強化樹脂を用いて形成された樹脂製連結パイプ33によって構成している。このため、ボス部材31は、例えばボス部材全体を鉄鋼材料を用いて形成した場合に比較して、連結ピン28が嵌合する各鉄鋼製ボス筒体32の耐摩耗性、耐久性を確保しつつ、樹脂製連結パイプ33を軽量化した分、全体の軽量化を図ることができる。
【0059】
しかも、本実施の形態では、樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに、鉄鋼材料を用いて薄肉な円筒状に形成された鉄鋼製補強パイプ34を固着することにより、樹脂製連結パイプ33を二層構造とすることができ、当該樹脂製連結パイプ33の強度を高めることができる。この結果、樹脂製連結パイプのみを用いて各鉄鋼製ボス筒体間を連結する場合に比較して、樹脂製連結パイプ33の耐圧縮性を高めることができる。
【0060】
この場合、樹脂製連結パイプ33を一対の樹脂製半割パイプ33Aによって構成し、各樹脂製半割パイプ33Aの内周面33Cと鉄鋼製補強パイプ34との間を固着部35によって接着したので、樹脂製連結パイプ33と鉄鋼製補強パイプ34との接着部の面積を大きく確保することができ、樹脂製連結パイプ33と鉄鋼製補強パイプ34とを強固に固着することができ、耐剥離性を高めることができる。
【0061】
なお、上述した第1の実施の形態によるボス部材22は、一対の鉄鋼製ボス筒体23の軸方向端面23Cに円筒状の位置合せ部23Dを設け、この位置合せ部23Dの外周面に、樹脂製連結パイプ24の軸方向両端側の内周面を嵌合させる場合を例示している。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば図9に示す変形例のように、鉄鋼製ボス筒体38の軸方向端面38Aを軸方向と直交する平坦面として形成し、この鉄鋼製ボス筒体38の軸方向端面38Aと樹脂製連結パイプ24の軸方向端面24Bとを突合せた状態で、両者間を固着部25によって接続する構成としてもよい。
【0062】
また、上述した第1の実施の形態では、ボス部材22を構成する樹脂製連結パイプ24を、繊維強化樹脂(FRP)を用いて形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば繊維材を含まない樹脂材料を用いて樹脂製連結パイプを形成してもよい。また、樹脂材料を用いて形成したパイプ体の外面を繊維強化樹脂によってコーティングすることにより、樹脂製連結パイプを形成してもよい。
【0063】
また、上述した第2の実施の形態によるボス部材31は、樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに固着された鉄鋼製補強パイプ34と各鉄鋼製ボス筒体32との間を接着剤からなる固着部37によって固着している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば鉄鋼製補強パイプ34と各鉄鋼製ボス筒体32との間を溶接によって接合してもよく、この場合は、鉄鋼製補強パイプ34と各鉄鋼製ボス筒体32との接合部の強度を一層高めることができる。
【0064】
また、上述した第2の実施の形態によるボス部材31は、樹脂製連結パイプ33の内周面33Cに鉄鋼製補強パイプ34を固着する構成としている。しかし、本発明はこれに限らず、樹脂製連結パイプの外周面に鉄鋼製補強パイプを固着する構成としてもよい。
【0065】
さらに、上述した各実施の形態では、ブーム8とブームシリンダ11のロッド11Bとの間をピン結合する軸受装置21を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限らず、例えば旋回フレーム4とブームシリンダ11のチューブ11Aとの間のピン結合部、ブーム8とアームシリンダ12とのピン結合部、アーム9とアームシリンダ12とのピン結合部等に用いられる軸受装置に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
21 軸受装置
22,31 ボス部材
22A,24A,26A,31A ピン挿通孔
23,32,38 鉄鋼製ボス筒体
23A,32A ピン嵌合孔
23C,32C,38A 軸方向端面
23D 位置合せ部
32D 大径位置合せ部
32E 小径位置合せ部
24,33 樹脂製連結パイプ
24B,33B 軸方向端面
24C,33C 内周面
26 ロッド側取付アイ(相手方部材)
28 連結ピン
34 鉄鋼製補強パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるピン挿通孔が形成された筒状のボス部材と、該ボス部材を挟んで軸方向で対向し前記ボス部材のピン挿通孔に対応するピン挿通孔が形成された一対の相手方部材と、前記ボス部材のピン挿通孔と前記各相手方部材のピン挿通孔とに挿通され前記ボス部材と各相手方部材とを連結する連結ピンとを備えてなる軸受装置において、
前記ボス部材は、鉄鋼材料を用いて形成され、前記各相手方部材と対向し内周側が前記連結ピンが嵌合するピン嵌合孔となった一対の鉄鋼製ボス筒体と、樹脂材料を用いて形成され、前記各鉄鋼製ボス筒体間を連結する樹脂製連結パイプとにより構成したことを特徴とする軸受装置。
【請求項2】
前記各鉄鋼製ボス筒体のうち前記樹脂製連結パイプと対面する軸方向の端面には、前記樹脂製連結パイプの内周面に嵌合する位置合せ部を前記ピン嵌合孔と同心状に設け、前記樹脂製連結パイプは軸方向両端側の内周面を前記位置合せ部に嵌合させた状態で前記各鉄鋼製ボス筒体間を連結する構成としてなる請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記樹脂製連結パイプの内周面または外周面には、鉄鋼材料を用いてパイプ状に形成された鉄鋼製補強パイプを固着する構成としてなる請求項1または2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記樹脂製連結パイプは、繊維強化樹脂を用いて形成してなる請求項1,2または3に記載の軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−167703(P2012−167703A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27399(P2011−27399)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】