説明

農作業機

【課題】 従来は、ブロアの駆動を停止することにより、施肥ホースに圧力風が供給されずに施肥ホース内で肥料詰まりが発生したり、農作業を中断を要したりする不具合が生じ、農作業の作業能率を低下させるおそれがある。
本発明は、動力源であるエンジンの回転数を適正に制御することにより、農作業の作業能率の向上を図りながら燃費の軽減を図り、省エネルギー化に寄与することを課題とする。
【解決手段】 施肥装置のブロア用電動モータの駆動を入切するブロア駆動入切装置(126)と、ブロア駆動入切装置(126)がブロア駆動状態のときにエンジンの回転数を上昇させる制御装置を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、農作業機の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
前輪及び後輪を備える走行車体と、農作業を行う作業部である苗植付部と、施肥装置と、後輪を駆動するエンジンと、該エンジンの動力で駆動する発電装置と、バッテリーを設け、施肥装置には、肥料ホッパと、該肥料ホッパに貯留されている肥料を繰り出す繰出部と、該繰出部で繰り出された肥料を移送する施肥ホースと、該施肥ホースで移送された肥料を圃場に施肥する施肥ガイドと、施肥ホースへ肥料を移送するための圧力風を供給するエアチャンバと、該エアチャンバへ圧力風を供給するブロアと、該ブロアを駆動するブロア用電動モータを備える農作業機である田植機において、バッテリーの電圧が設定値よりも低下したときにブロア用電動モータの駆動を停止する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−290612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術によれば、バッテリーの放電を防止して該バッテリーの消耗を抑制できるが、ブロアの駆動を停止することにより、施肥ホースに圧力風が供給されずに施肥ホース内で肥料詰まりが発生したり、農作業を中断を要したりする不具合が生じ、農作業の作業能率を低下させるおそれがある。
【0005】
本発明は、動力源であるエンジンの回転数を適正に制御することにより、農作業の作業能率の向上を図りながら燃費の軽減を図り、省エネルギー化に寄与することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、前輪(10)及び後輪(11)を備える走行車体(2)と、農作業を行う作業部(4)と、施肥装置(5)と、後輪(11)を駆動するエンジン(20)と、該エンジン(20)の動力で駆動する発電装置(121)と、バッテリー(122)を設け、施肥装置(5)には、肥料ホッパ(60)と、該肥料ホッパ(60)に貯留されている肥料を繰り出す繰出部(61)と、該繰出部(61)で繰り出された肥料を移送する施肥ホース(62)と、該施肥ホース(62)で移送された肥料を圃場に施肥する施肥ガイド(92)と、施肥ホース(62)へ肥料を移送するための圧力風を供給するエアチャンバ(59)と、該エアチャンバ(59)へ圧力風を供給するブロア(58)と、該ブロア(58)を駆動するブロア用電動モータ(53)を備える農作業機において、ブロア用電動モータ(53)の駆動を入切するブロア駆動入切装置(126)と、ブロア駆動入切装置(126)がブロア駆動状態のときにエンジン(20)の回転数を上昇させる制御装置を設けた農作業機とした。
【0007】
また、請求項2に係る発明は、走行車体(2)の後側に昇降用シリンダ(46)を介して作業部(4)を昇降可能に設け、昇降用シリンダ(46)をエンジン(20)からの動力で作動させる構成とし、走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)を設け、該主変速レバー(16)が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたことを検出する検出センサ(128)と、作業部(4)が対地浮上する所定の高さまで上昇したことを検出する対地浮上センサ(129)を設け、制御装置は、該検出センサ(128)の検出に基づいて作業部(4)を上昇させるべく昇降用シリンダ(46)を作動させると共にエンジン(20)の回転数を高速側に制御し、対地浮上センサ(129)が作業部(4)が対地浮上する所定の高さまで上昇したことの検出に基づいてエンジン(20)の回転数を低速側に制御する構成とした請求項1に記載の農作業機とした。
【0008】
また、請求項3に係る発明は、走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー(90)を設け、変速レバー(16)の操作位置を検出する主変速位置センサ(131)と、副変速レバー(90)の操作位置を検出する副変速位置センサ(132)を設け、制御装置は、主変速位置センサ(131)の検出に基づいて主変速レバー(16)が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン(20)の回転数を高速側に制御すると共に、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、副変速レバー(90)が農作業用の低速位置に操作されている場合に比して、主変速レバー(16)の前進低速操作域では該主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量を小さく制御し、主変速レバー(16)の前進高速操作域では該主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量を大きく制御する構成とした請求項1又は2に記載の農作業機とした。
【0009】
また、請求項4に係る発明は、走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー(90)を設け、変速レバー(16)の操作位置を検出する主変速位置センサ(131)と、副変速レバー(90)の操作位置を検出する副変速位置センサ(132)と、踏み込み操作でエンジン(20)の回転数を高速側へ変更するアクセルペダル(124)を設け、制御装置は、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が農作業用の低速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ(131)の検出に基づいて主変速レバー(16)が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン(20)の回転数を高速側に制御し、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ(131)の検出に拘らずアクセルペダル(124)の操作に応じてエンジン(20)の回転数を変更する構成とした請求項1又は2に記載の農作業機とした。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によると、ブロアが駆動状態のときは、発電装置(121)を確実に所定以上の駆動量で駆動させることができるので、ブロア用電動モータ(53)へ供給される電力(電圧)を確実に得ることができ、確実にブロア(58)により所望の圧力風を発生させることができて、施肥ホース(62)内で肥料が詰まることによる不適正な施肥作業や農作業の中断を回避でき、農作業の作業能率を向上させることができる。逆に、ブロアが非駆動状態のときは、エンジン(20)の回転数を低下させることができるため、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【0011】
請求項2に係る発明によると、請求項1に係る発明の効果に加えて、主変速レバー(16)が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたとき、作業部(4)を自動的に上昇させるが、エンジン(20)の回転数が高速側に制御されるので、作業部(4)を素早く上昇させることができ、作業部(4)を圃場でひきずりながら後進するのを防止でき、作業部(4)の破損を防止できる。そして、作業部(4)が対地浮上した後は、エンジン(20)の回転数が低速側に制御されるので、後進時には遅い走行速度で後進でき、安全性が高まると共に、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【0012】
請求項3に係る発明によると、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、副変速レバー(90)を路上走行用の高速位置に切り替えたときは、前進低速操作域では主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量が小さいので、急発進を防止でき、前進高速操作域では該主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量が大きいので、所望の最高走行速度を得ることができる。
【0013】
請求項4に係る発明によると、請求項1又は2に係る発明の効果に加えて、農作業時には、主変速レバー(16)の操作に連動してエンジン(20)の回転数を変更でき、操作の簡略化が図れて操作性が向上すると共に、走行抵抗のある圃場内において走行負荷に合わせて適正な走行駆動力を得ることができる。路上走行時には、アクセルペダル(124)の操作に応じてエンジン(20)の回転数が変更されるので、自動車感覚で路上走行操作が行えて操作性が向上すると共に、無闇にエンジン(20)の回転数を増大させることを抑え、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】田植機の側面図
【図2】田植機の平面図
【図3】整地装置を示す側面図
【図4】整地装置を示す背面図
【図5】整地装置を示す断面平面図
【図6】整地装置の駆動機構を示す断面平面図
【図7】ロータ伝動ケースを示す断面平面図
【図8】ブロック図
【図9】主変速レバー位置とエンジン回転数の関係を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。
図1及び図2は、粉粒体繰出し装置として施肥装置を装着した乗用型田植機の側面図と平面図である。この施肥装置付き乗用型田植機1は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部である作業部4が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0016】
走行車体2は、駆動輪である左右一対の前輪10,10及び左右一対の後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該左右前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右前輪車軸に左右前輪10,10が各々取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0017】
エンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、ベルト伝動装置21及び油圧式無段変速装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにより変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、それから植付伝動軸26によって作業部4へ伝動されるとともに、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0018】
また、エンジン20から発電用のベルト伝動装置120を介して発電装置121を駆動する構成となっている。この発電装置121は、エンジン20の駆動に連動しており、エンジン20が駆動している間は常時駆動する。発電装置121で発電された電力は、フロントカバー32の上面のモニターパネル33、フロントカバー32内上部のコントローラ125、施肥装置5のブロア用電動モータ53等の電装品に供給され、余った余剰電力が機体前部のフロントカバー32内に設けたバッテリー122に蓄電される。
【0019】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するフロントカバー32があり、その上方に前輪10,10を操向操作する操向手段となるハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びフロントカバー32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35は一部格子状になっており(図2参照)、該ステップ35を歩く作業者の靴についた泥が圃場に落下するようになっている。フロアステップ35上の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。また、後輪11の左右方向外側には前後方向の軸回りに上下に回動する回動式ステップ111を設けており、該回動式ステップ111は、使用しないときは図1に示すようにリヤステップ36から下に延びるよう下側に回動し、作業者が後輪11に巻き込まれるのを防止するガードとなり、上方へ回動して固定すると図2に示すようにリヤステップ36の左右外側に位置し、作業者が回動式ステップ111に足を乗せて苗載台51特に苗載台51の左右最外条部分への苗補給を容易に行える。また、フロントカバー32の左右側面から左右外側に突出する把持グリップ112を設けており、作業者が該把持グリップ112を把持して畦等の機体前方からフロアステップ35ヘ楽に搭乗できるようにしている。この把持グリップ112は、左右の予備苗載台38の左右内側に設けられているので、予備苗載台38と苗載台51との間を行き来する作業者にとって苗補給作業時に予備苗載台38の位置を判別する目安となり、苗補給作業の容易化が図れる。尚、この把持グリップ112にカップホルダや傘ホルダ等を装着することにより、把持グリップ112の機能を高めることができる。
【0020】
また、フロントカバー32の前部には、夜間等に機体前方を照らすための前照灯114を設けている。この前照灯114の後側を覆うように光を反射する反射板115を設け、該反射板115の形状により前照灯114の光が効率良く機体前方を照らすように構成しているが、反射板の一部に光を通過する孔や透明レンズ等の光通過部を設ける一方、作業者の足元近くとなるフロントカバー32の後面の一部を透明部にし、光通過部を通る光をフロントカバー32の内部に設けた足元用反射板116を介して透明部に反射させ、作業者の足元を照らすようにしており、作業の安全性が図れると共に、作業者の足元を照らす格別のライトが不要でコストダウンが図れる。尚、前記足元用反射板116を用いず、光通過部からもれる光が透明部を介して直接作業者の足元を照らす構成とすれば、足元用反射板116が不要になり更なるコストダウンが図れる。
【0021】
また、機体の前端部には機体の左右中央位置の指標となる指標体29を設け、該指標体29の上端には、苗載台51の苗減少センサ117により該苗載台51の苗が所定量以下に減少したことを検出すると点灯する告知ランプを設けている。指標体29は、下端を支点に前後に回動可能であり、通常作業時は前方に倒して圃場における機体の左右中央位置を容易に認識できるようにしている。この指標体29を後側に回動させて該指標体29の上端がフロントカバー32の上面のモニターパネル33に近づけると、苗の減少に関係なく前記告知ランプが点灯する。これにより、告知ランプの灯りでモニターパネル33を照らすことができ、夜間等のモニターパネル33の視認の容易化が図れる。
【0022】
油圧式無段変速装置23は、ハンドル34の右側に設けた主変速レバー16で変速操作される。尚、該主変速レバー16の操作経路は、前後方向に操作する前進操作経路(前進位置)及び後進操作経路(後進位置)を備え、前進操作域と後進操作域を前後進中立位置で繋ぐ左右方向に操作する中立操作経路(前後進中立操作位置)を備え、これらの前進操作経路、後進操作経路及び中立操作経路によりクランク状に構成されている。従って、主変速レバー16により前後進無段変速操作する構成となっている。また、中立操作経路における後進操作経路側の端部には、主変速レバー16が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたことを検出する検出センサ128を設けている。この検出センサ128により主変速レバー16を検出したとき、主変速レバー16は中立操作経路にあるため未だ前後進中立状態であり、検出センサ128により後進操作に先立って検出できる。尚、主変速レバー16が後進操作経路上で後進高速側に操作されると、検出センサ128は主変速レバー16を検出しない。一方、ミッションケース12内の伝動ギヤの切替により通常植付作業時に使用する農作業用の低速位置と路上走行時に使用する路上走行用の高速位置と伝動を断つ中立位置の3段階に切替する副変速レバー90を、ハンドル34の下方に設けている。
【0023】
フロントカバー32の右側にはブレーキペダル123を設けている。このブレーキペダル123を踏み込む操作すると、連動機構を介して主変速レバー16が自動的に前後進中立位置に作動して走行停止し、油圧式無段変速装置23の負荷抵抗により制動力が得られる。ブレーキペダル123の右側にはアクセルペダル124を設けており、このアクセルペダル124を踏み込み操作することによりエンジン20の回転数を増大させることができる構成となっている。
【0024】
また、走行車体2の前部左右両側には、補給用の苗を載せておく予備苗載台38が機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、縦リンク43の下端部に作業部4に回転自在に支承された連結軸44が挿入連結され、連結軸44を中心として作業部4がローリング自在に連結されている。メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム(図示せず)の先端部との間に油圧式の昇降用シリンダ46が設けられており、該昇降用シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、作業部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0025】
苗植付部である作業部4は6条植の構成で、フレームを兼ねる苗植付伝動ケース50、マット苗を載せて左右往復動し苗を一株分づつ各条の苗取出口51aに供給するとともに横一列分の苗を全て苗取出口51aに供給すると苗送りベルト51bにより苗を下方に移送する苗載台51、苗取出口51aに供給された苗を圃場に植付ける苗植付装置52、次行程における機体進路を表土面に線引きする左右一対の線引きマーカ等を備えている。また、苗載台51は、伝動ケース50に基部が固定された矩形状の支持枠体65の支持ローラ65aと苗取出口51aを構成する苗受板91で案内して左右方向にスライドする構成である。作業部4の下部には中央にセンターフロート55、その左右両側にサイドフロート56がそれぞれ設けられている。センターフロート55及びサイドフロート56からなるこれらのフロートを圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、前記フロートが泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に苗植付装置52により苗が植付けられる。各フロートは圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、植付作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が迎角制御センサにより検出され、その検出結果に応じ前記昇降用シリンダ46を制御する電磁式の油圧切替バルブ130を切り替えて作業部4を昇降させることにより、苗の植付深さを常に一定に維持する。尚、昇降用シリンダ46へ圧油を供給する油圧ポンプは、エンジン20の駆動に連動しており、エンジン20が駆動している間は常時駆動する。
【0026】
尚、苗載台51の裏面には樹脂製の吸音材113を貼り付けている。これにより、エンジン20から発生する騒音が圃場の水面及び前上がり傾斜姿勢の苗載台51を介して反射して座席31にいる作業者に達するのを抑えることができ、作業環境を良好に維持できる。
【0027】
施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留されている粒状の肥料を繰出部61によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース62でフロート(センターフロート55及びサイドフロート56)の左右両側に取り付けた施肥ガイド92まで導き、施肥ガイド92の前側に設けた作溝体93によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥構内に落とし込むようになっている。ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させたエアが、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して施肥ホース62に吹き込まれ、施肥ホース62内の肥料を風圧で強制的に搬送するようになっている。
【0028】
尚、図1に示すように、苗載台51上に苗の葉の向きを修正するためのエア吸引器118を設けてもよい。これにより、苗載台51上の苗の葉の向きを適正に修正でき、ひいては苗植付装置52により適正な植付姿勢で苗を植付できる。従来、運搬等のためにロール状に巻いた巻き苗を使用して植付作業を行うことがあるが、苗載台51上に巻き苗を広げて展開しても苗の巻き癖により苗の葉が倒伏姿勢あるいは不適正な方向に向いた状態となり、適正に苗を植付できなくなるおそれがある。特に、苗の葉が後側(苗植付装置52側)に倒れていると、苗植付装置52の苗取り爪52aが苗の葉を傷付けやすくなると共に苗の床部を良好に掻き取りにくくなる。
【0029】
走行車体2の後側で且つ作業部4の前側には、圃場の乱れた泥土面を整地して均す整地ロータを備える整地装置94を設けている。整地ロータは、左右のサイドフロート56の各々の前方に配置された側部整地ロータ27aと、センターフロート55の前方に配置された中央整地ロータ27bで構成される。
【0030】
ここで、整地ロータ27の支持構造について説明する。
苗載台51の支持枠体65に基部を固着した左右アーム65cの先端に回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した左右支持アーム67と該支持アーム67に各々回動自在に取り付けられた左右の整地ロータ支持フレーム68が設けられている。該整地ロータ支持フレーム68の下端には側部整地ロータ27aの駆動軸70aが回転自在に支持されて取り付けられている。また、該整地ロータ支持フレーム68の下端部近くは伝動ケース50に基部が回動自在に取り付けられた左右の連結部材71が連結されている。
【0031】
また、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bはサイドフロート56の前方にある左右の側部整地ロータ27aより前方に配置されている。即ち、側部整地ロータ27aの駆動軸70aの各々の内側から機体前方に向けて左右のロータ伝動ケース73を配置し、この左右のロータ伝動ケース73間に中央整地ロータ27bの駆動軸70bを軸支して、中央整地ロータ27bを設けている。
【0032】
そして、左側の後輪11の後輪ギアケース18内のギアから自在継手72を介して左側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達し、該駆動軸70aから左側のロータ伝動ケース73内の伝動軸103にて中央整地ロータ27bの駆動軸70bに伝達し、そして、駆動軸70bから右側のロータ伝動ケース73内の伝動軸103にて右側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aに動力を伝達する構成となっている。
【0033】
夾雑物巻付防止部95は、左右のロータ伝動ケース73の前部に一体で構成され、中央整地ロータ27bの前方に位置するように機体の左右方向内側に突出して設けられている。尚、この夾雑物巻付防止部95と中央整地ロータ27bの後側に位置するロータ伝動ケース73の突出部96に、固着用ボルト97を介して中央整地ロータ27bのロータカバー98を固着している。また、左右の側部整地ロータ27aのロータカバー98は、ロータ伝動ケース73の後部に設けた突出部96に固着用ボルト97を介して固着している。また、駆動軸軸受部99は、ロータ伝動ケース73に一体で構成され、左側のロータ伝動ケース73の後部の左側となる駆動軸70a部分と、左側のロータ伝動ケース73の前部の右側となる駆動軸70b部分と、右側のロータ伝動ケース73の前部の左側となる駆動軸70b部分と、左側のロータ伝動ケース73の後部の右側となる駆動軸70a部分にそれぞれ設けられている。
【0034】
ロータ伝動ケース73内の伝動構成について説明する。左側のロータ伝動ケース73内の伝動について説明すると、自在継手72を介して伝動される入力軸100から一対の入力ベベルギヤ101を介して左側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aを駆動する。また、該駆動軸70aから伝動ベベルギヤ102を介して前側に延びる伝動軸103へ伝動し、該伝動軸103の前端部から伝動ベベルギヤ102を介して中央整地ロータ27bの駆動軸70bを駆動する。更に、該駆動軸70bの右端から右側のロータ伝動ケース73内に入力する。右側のロータ伝動ケース73内の伝動について説明すると、前記駆動軸70bから伝動ベベルギヤ102を介して後側に延びる伝動軸103へ伝動し、該伝動軸103の後端部から伝動ベベルギヤ102を介して右側の側部整地ロータ27aの駆動軸70aを駆動する。
【0035】
また、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76の先端に上下方向の支持部材77を回動自在に連結し、該支持部材77に設けた複数の係合孔77a,77b,77cの何れかに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部はその左右方向中央部が吊り下げられた構成となっている。
【0036】
次に、整地ロータ27を上下位置調節及び収納位置に操作する構成を説明する。
苗載台51の支持枠体65の左右方向中央部に基部を固定して下方に向けて設けたコ字状の取付体80aに機体前方に向けて枢支ピン81bを固定し、該枢支ピン81bに整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左右方向に回動自在に枢支している。また、整地ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、整地ロータ上下位置調節レバー81が機体左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材65bに回動自在に支持された梁部材66に固着された突出部66aに下方から接当して折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方と接当しているので、該突出部66aが整地ロータ上下位置調節レバー81の機体右方向(S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の上向きの回動により左右の支持アーム67と左右の整地ロータ支持フレーム68が上方に移動するので、左右の側部整地ロータ27aは上方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も上方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も上方に移動する。
【0037】
逆に、整地ロータ上下位置調節レバー81を機体左方向に回動すると、折曲片82は突出部66aの下方から離れるので整地ロータ27の重みで突出部66aは下向きに梁部材66を中心として回動する。該梁部材66の下向きの回動により左右の支持アーム67と左右の整地ロータ支持フレーム68とが下方に移動するので、左右の側部整地ロータ27aは下方に移動し、且つ、梁部材66に基部が固着されたリンク部材76と支持部材77も下方に移動しスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部も下方に移動する。
【0038】
そして、整地ロータ上下位置調節レバー81は、作業部4の中央部(若しくは、略中央部)で操縦用の座席31と苗載台51との間に配置されて座席31の側に向かって伸びた構成となっており、また、その操作方向は機体左右方向であるから、整地ロータの上下動を行う場合の操作が容易で、且つ、苗載台51の前方側に機体前後方向で幅狭いスペースに配置できて機体全長を短く構成でき、更に、機体の左右バランスも良くて、適正な苗移植作業が行える。また、整地ロータ上下位置調節レバー81は、作業部4を苗移植作業状態を下降させた状態でも操作できるので、適切な上下高さ調節が行える。
【0039】
また、整地ロータを整地作用しない収納位置まで上動させるには、整地ロータ上下位置調節レバー81を大きく右方向に(収納操作位置まで)操作すると、整地ロータ27の上動操作と同じ要領で、整地ロータを収納位置、すなわち苗載台51の裏面側に収納状態となるように移動させることができる。尚、81aは整地ロータ上下位置調節レバー81のレバーガイドで、レバー操作時に操作位置でレバーを係合させて固定する係合溝が設けられている。この整地ロータ上下位置調節レバー81による整地ロータ27の上下高さ調節は、フロート55,56の後部回動支点を上下動させて苗の植付深さの変更を行う際に、同時に行なって、適正な整地作用が行えるようにするものである。
【0040】
特に、植付作業時に苗の植付深さを常に一定に維持するために、作業部4を昇降制御する為のセンサとして機能するセンターフロート55は、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしないと適切な作業部4の昇降制御が行えない。そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、サイドフロート56の前方にある側部整地ロータ27aよりも機体前方に位置させた構成としているが、中央整地ロータ27bと側部整地ロータ27aとはその動力伝達機構である左右ロータ伝動ケース73にて一体の構成とし、整地ロータ上下位置調節レバー81で作動する一つの上下動機構で上下調節及び収納位置への移動が行えるようになっているので、構成が簡潔で、軽量な整地装置付き田植機を得ることができ、軽量であることにより優れた水田での走行性能を発揮して、良好な苗の移植作業が行なえる。
【0041】
ところが、前後長を長くして接地面積を前後方向で長くしたセンターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bを左右の後輪11間に配置させて機体全長を短い構成にしている為に、該中央整地ロータ27bが昇降リンク装置3の左右の下リンク41の下方に位置することとなり、作業部4を上昇させようとした時、左右の下リンク41に中央整地ロータ27bが衝突してしまって作業部4を上昇できない構成となってしまう問題がある。
【0042】
そこで、センターフロート55の前方にある中央整地ロータ27bは、支持部材77に設けた係合孔77a,77b,77cに上部を係合させたスプリング78を介して、中央整地ロータ27bの前部が吊り下げられた構成としている。従って、作業部4を下降させて整地ロータ27で整地しながら苗植付け作業を行なっている時には、中央整地ロータ27bはその重量でスプリング78が少し伸びて左右整地ロータ27aと同じ高さになり適正な整地作業が行え、また、作業部4を上昇させる際には、中央整地ロータ27bの上面が左右の下リンク41,41に接当して、作業部4が上昇するにつれてスプリング78は大きく伸びていき中央整地ロータ27bは下方を向く姿勢に変更されて、作業部4を支障なく上昇させることができる。
【0043】
また、スプリング78の製造誤差や中央整地ロータ27bの重量誤差等にて、作業部4を下降させた時に、中央整地ロータ27bが側部整地ロータ27aと高さが異なる場合には、スプリング78の上部を係合させる係合孔77a,77b,77cを変更して、中央整地ロータ27bの上下高さを調節して、中央整地ロータ27bを側部整地ロータ27aと同じ高さにして適正な整地作業を行うようにすることができる。
【0044】
一方、左右のロータ伝動ケース73は、センターフロート55と左右の後輪11の間に位置する構成となっているので、左右の後輪11が持ち上げた泥土がセンターフロート55上に落下するのを防止し、センターフロート55の前部は適正に泥面に追従して上下動するので作業部4は適正に昇降制御されて、良好な苗植付け作業が行える。
【0045】
ところで、整地ロータは、複数のロータ片104を左右に連ねて構成されている。該ロータ片104は、樹脂性であり、駆動軸70a,70b側に取り付けるための取付ボス部104aと、土壌面に接地して整地作用を施す整地板104bと、取付ボス部104aと整地板104bを連結する連結部104cを備えている。駆動軸70a,70bは、ロータ伝動ケース73の駆動軸軸受部99から突出する駆動基軸105と、該駆動基軸105の外周側に嵌合する駆動パイプ106で構成され、駆動基軸105の小判形状の先端部105aが駆動パイプ106の小判形状の孔を備える端部106aに嵌合し、駆動基軸105と駆動パイプ106が一体で回転する構成となっている。尚、駆動基軸105の先端部105aと駆動パイプ106の端部106aを貫通する連結軸となる取付ボルト107により、駆動パイプ106を駆動基軸105に対して左右移動しないように取り付けている。駆動パイプ106の外周面は四角形状(正方形状)であり、ロータ片104の取付ボス部104aの孔も四角形状(正方形状)である。従って、駆動パイプ106にロータ片104の取付ボス部104aが嵌合して、駆動軸70a,70bとロータ片104が一体回転する構成となっている。整地板104bは、平面状で整地ロータの回転方向に対して斜めに配置され、整地ロータの回転方向における30度毎の位相で計6枚設けられている。左右に設けた複数のロータ片104の整地板104bが互いに接触して合致し、整地板104bが左右に連ねて配置される。連結部104cは、整地板104bの左右幅内で整地板104bの左右中央位置に配置され、プレート状に構成され、取付ボス部104a及び計6枚の整地板104bに一体で構成される。尚、取付ボス部104aも、連結部104cと同様に、整地板104bの左右幅内で整地板104bの左右中央位置に配置されている。尚、前記取付ボルト107は、駆動軸70a,70bにおいて、取付ボス部104a及び連結部104cが配置されない位置に設けている。
【0046】
そして、左右の夾雑物巻付防止部95は、中央整地ロータ27bの左右両端のロータ片104の前方で且つ機体の正面視で中央整地ロータ27bにおいて連なる整地板104bの左右端部と重複する位置までロータ伝動ケース73から突出している。駆動軸軸受部99は、整地板104bよりも回転方向内側すなわち駆動軸70a,70b側で且つ機体の正面視において中央整地ロータ27b及び側部整地ロータ27aにおいて連なる整地板104bの各々の左右方向端部と各々重複する位置までロータ伝動ケース73から突出している。また、駆動軸軸受部99は、駆動基軸105が貫通する孔108を備え、該孔108の内面に駆動基軸105が接触しており、該孔108よりもロータ伝動ケース73のケース内側にオイルシール109を配置し、該オイルシール109の更に内側にベアリング(軸受)110を配置している。従って、オイルシール109が、ロータ伝動ケース73から外方に露出しない。
【0047】
従って、整地装置94は、ロータ伝動ケース73内の動力により駆動回転する駆動軸70a,70bをロータ伝動ケース73の駆動軸軸受部99から突出させて左右方向に設け、該駆動軸70a,70bの駆動により回転する整地ロータを設け、該整地ロータは、駆動軸70a,70b側に取り付けるための取付ボス部104aと、土壌面に接地して整地作用を施す整地板104bと、取付ボス部104aと整地板104bを連結する連結部104cを備え、ロータ伝動ケース73側に夾雑物巻付防止部95を移動しないように設け、該夾雑物巻付防止部95を、整地板104bの前方で且つ機体の正面視において整地板104bの左右方向端部と重複する位置に配置している。また、駆動軸軸受部99を、整地板104bよりも回転方向内側すなわち駆動軸70a,70b側で且つ機体の正面視において整地板104bの左右方向端部と重複する位置に配置している。更に、駆動軸軸受部99のオイルシール109をロータ伝動ケース73から外方に露出しないように設けている。
【0048】
よって、機体の前方側で整地板104bの左右方向端部の空間が夾雑物巻付防止部95に遮られるので、機体の前進で整地板104bの左右方向端部とロータ伝動ケース73の間から駆動軸70a,70b側へ藁等の夾雑物が侵入しにくくなり、夾雑物が駆動軸70a,70bあるいは取付ボス部104aに巻き付くのを抑え、メンテナンス性が向上する。また、駆動軸軸受部99により、整地板104bの左右方向外側に駆動軸70a,70b及び取付ボス部104aが露出しないので、整地板104bの左右方向端部とロータ伝動ケース73の間から侵入する藁等の夾雑物が駆動軸70a,70bあるいは取付ボス部104aに接触しにくくなるため、夾雑物が回転する駆動軸70a,70bあるいは取付ボス部104aに巻き付くのを抑え、メンテナンス性が向上する。更に、オイルシール109部分に夾雑物が巻き付くことがなく、オイルシール109部分に夾雑物が巻き付くことによるオイルシール109の損傷ひいてはロータ伝動ケース73内からの潤滑油の漏れを防止できると共に、メンテナンス性が向上する。
【0049】
尚、前述の夾雑物巻付防止部95は、ロータ伝動ケース73のケース体で構成したが、ロータカバー98等、ロータ伝動ケース73に支持される他の部材で構成してもよい。
次に、コントローラ125に関連する電装関係の構成について説明する。
【0050】
ハンドル34の下方には、ブロアスイッチであるブロア駆動入切装置126を設けており、このブロア駆動入切装置126からの入力信号に基づいてコントローラ125からの出力信号によりブロア用電動モータ53の駆動を入切する構成となっている。また、エンジン20のスロットルを調節するスロットルモータ127を設けている。このスロットルモータ127により、エンジンのスロットル弁を操作してエンジン回転数を変更する構成となっている。上リンク40の角度を検出することにより、作業部4が対地浮上する所定の高さまで上昇したことを検出する対地浮上センサ129を設けている。そして、検出センサ128により主変速レバー16が後進操作経路側に操作されたことがコントローラ125に入力されると、コントローラ125が電磁式の油圧切替バルブ130に出力することにより、作業部4を上昇させるべく昇降用シリンダ46が作動すると共に、スロットルモータ127に出力してエンジン20の回転数を高速側の第一設定回転数に制御する。その後、対地浮上センサ129により昇降リンク装置3が所定角度に到達したことを検出して作業部4が対地浮上する所定の高さまで上昇したことを判断すると、エンジン20の回転数を低速側の第二設定回転数(アイドリング回転数)に制御する。
【0051】
また、変速レバー16の操作位置を検出する主変速位置センサ131と、副変速レバー90の操作位置を検出する副変速位置センサ132を設け、主変速位置センサ131の検出に基づいて主変速レバー16が前進操作経路(前進位置)で高速側に操作されるほど、スロットルモータ127によりエンジン20の回転数を高速側に制御する構成となっている。尚、スロットルモータ127の制御において、副変速位置センサ132により副変速レバー90が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、副変速レバー90が農作業用の低速位置に操作されている場合に比して、主変速レバー16の前進低速操作域では該主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量を小さく制御し、主変速レバー16の前進高速操作域では該主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量を大きく制御する構成となっている(図9参照)。尚、主変速レバー16の前進最高速位置では、副変速位置センサ132の検出に拘らず、エンジン回転数が同じフルスロットル回転数となる。
【0052】
尚、前述したスロットルモータ127の制御に優先して、ブロア駆動入切装置126がブロア駆動状態に切り替えられているときは、エンジン20の回転数が常に第二設定回転数(アイドリング回転数)よりも高く第一設定回転数よりも低い第三設定回転数以上となるように、コントローラ125からの出力信号によりスロットルモータ127を作動制御する。更に、前述したスロットルモータ127の制御に優先して、アクセルペダル124の操作位置を検出するアクセルペダルセンサ133を設け、アクセルペダルセンサ133の検出に対応するエンジン回転数が前述したスロットルモータ127の制御によるエンジン回転数よりも高いときは、アクセルペダルセンサ133の検出に基づくエンジン回転数となるようスロットルモータ127が制御される。
【0053】
以上により、この農作業機(田植機)は、前輪10及び後輪11を備える走行車体2と、農作業を行う作業部4と、施肥装置5と、後輪11を駆動するエンジン20と、該エンジン20の動力で駆動する発電装置121と、バッテリー122を設け、施肥装置5には、肥料ホッパ60と、該肥料ホッパ60に貯留されている肥料を繰り出す繰出部61と、該繰出部61で繰り出された肥料を移送する施肥ホース62と、該施肥ホース62で移送された肥料を圃場に施肥する施肥ガイド92と、施肥ホース62へ肥料を移送するための圧力風を供給するエアチャンバ59と、該エアチャンバ59へ圧力風を供給するブロア58と、該ブロア58を駆動するブロア用電動モータ53を備え、ブロア用電動モータ53の駆動を入切するブロア駆動入切装置126と、ブロア駆動入切装置126がブロア駆動状態のときにエンジン20の回転数を上昇させる制御装置を設けている。
【0054】
また、走行車体2の後側に昇降用シリンダ46を介して作業部4を昇降可能に設け、昇降用シリンダ46をエンジン20からの動力で作動させる構成とし、走行車体2を前後進変速操作可能な主変速レバー16を設け、該主変速レバー16が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたことを検出する検出センサ128と、作業部4が対地浮上する所定の高さまで上昇したことを検出する対地浮上センサ129を設け、制御装置は、該検出センサ128の検出に基づいて作業部4を上昇させるべく昇降用シリンダ46を作動させると共にエンジン20の回転数を高速側に制御し、対地浮上センサ129が作業部4が対地浮上する所定の高さまで上昇したことの検出に基づいてエンジン20の回転数を低速側に制御する。
【0055】
また、走行車体2を前後進変速操作可能な主変速レバー16と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー90を設け、変速レバー16の操作位置を検出する主変速位置センサ131と、副変速レバー90の操作位置を検出する副変速位置センサ132を設け、制御装置は、主変速位置センサ131の検出に基づいて主変速レバー16が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン20の回転数を高速側に制御すると共に、副変速位置センサ132により副変速レバー90が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、副変速レバー90が農作業用の低速位置に操作されている場合に比して、主変速レバー16の前進低速操作域では該主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量を小さく制御し、主変速レバー16の前進高速操作域では該主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量を大きく制御する。
【0056】
よって、ブロア58が駆動状態のときは、発電装置121を確実に所定以上の駆動量で駆動させることができるので、ブロア用電動モータ53へ供給される電力(電圧)を確実に得ることができ、確実にブロア58により所望の圧力風を発生させることができて、施肥ホース62内で肥料が詰まることによる不適正な施肥作業や農作業の中断を回避でき、農作業の作業能率を向上させることができる。逆に、ブロアが非駆動状態のときは、エンジン20の回転数を低下させることができるため、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【0057】
また、主変速レバー16が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたとき、作業部4を自動的に上昇させるが、エンジン20の回転数が高速側に制御されるので、作業部4を素早く上昇させることができ、作業部4を圃場でひきずりながら後進するのを防止でき、作業部4の破損を防止できる。そして、作業部4が対地浮上した後は、エンジン20の回転数が低速側に制御されるので、後進時には遅い走行速度で後進でき、安全性が高まると共に、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【0058】
また、副変速レバー90を路上走行用の高速位置に切り替えたときは、前進低速操作域では主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量が小さいので、急発進を防止でき、前進高速操作域では該主変速レバー16の操作量に対するエンジン20の回転数の変化量が大きいので、所望の最高走行速度を得ることができる。
【0059】
尚、前述の副変速位置センサ132及びアクセルペダルセンサ133によるスロットルモータ127の制御に代えて、副変速位置センサ132により副変速レバー90が農作業用の低速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ131の検出に基づいて主変速レバー16が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン20の回転数を高速側に制御し、副変速位置センサ132により副変速レバー90が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ131の検出に拘らずアクセルペダルセンサ133の検出に応じてエンジン20の回転数を変更する構成としてもよい。
【0060】
すなわち、上述の農作業機(田植機)では、走行車体2を前後進変速操作可能な主変速レバー16と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー90を設け、変速レバー16の操作位置を検出する主変速位置センサ131と、副変速レバー90の操作位置を検出する副変速位置センサ132と、踏み込み操作でエンジン20の回転数を高速側へ変更するアクセルペダル124を設け、制御装置は、副変速位置センサ132により副変速レバー90が農作業用の低速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ131の検出に基づいて主変速レバー16が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン20の回転数を高速側に制御し、副変速位置センサ132により副変速レバー90が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ131の検出に拘らずアクセルペダル124の操作に応じてエンジン20の回転数を変更する構成としている。
【0061】
これによると、農作業時には、主変速レバー16の操作に連動してエンジン20の回転数を変更でき、操作の簡略化が図れて操作性が向上すると共に、走行抵抗のある圃場内において走行負荷に合わせて適正な走行駆動力を得ることができる。路上走行時には、アクセルペダル124の操作に応じてエンジン20の回転数が変更されるので、自動車感覚で路上走行操作が行えて操作性が向上すると共に、無闇にエンジン20の回転数を増大させることを抑え、燃費の軽減が図れ、省エネルギー化に寄与できる。
【0062】
尚、この発明を実施するための形態では、スロットルモータ127によりエンジン回転数を制御する構成に基づいて説明したが、電子式燃料噴射制御バルブを備えるエンジンにおいて、電子式燃料噴射制御バルブを制御して燃料噴射量を制御することによりエンジン回転数を制御する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1:乗用型田植機、2:走行車体、4:作業部、5:施肥装置、10:前輪、11:後輪、16:主変速レバー、20:エンジン、46:昇降用シリンダ、53:ブロア用電動モータ、58:ブロア、59:エアチャンバ、60:肥料ホッパ、61:繰出部、62:施肥ホース、90:副変速レバー、92:施肥ガイド、121:発電装置、122:バッテリー、124:アクセルペダル、125:コントローラ、126:ブロア駆動入切装置、128:検出センサ、129:対地浮上センサ、131:主変速位置センサ、132:副変速位置センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪(10)及び後輪(11)を備える走行車体(2)と、農作業を行う作業部(4)と、施肥装置(5)と、後輪(11)を駆動するエンジン(20)と、該エンジン(20)の動力で駆動する発電装置(121)と、バッテリー(122)を設け、施肥装置(5)には、肥料ホッパ(60)と、該肥料ホッパ(60)に貯留されている肥料を繰り出す繰出部(61)と、該繰出部(61)で繰り出された肥料を移送する施肥ホース(62)と、該施肥ホース(62)で移送された肥料を圃場に施肥する施肥ガイド(92)と、施肥ホース(62)へ肥料を移送するための圧力風を供給するエアチャンバ(59)と、該エアチャンバ(59)へ圧力風を供給するブロア(58)と、該ブロア(58)を駆動するブロア用電動モータ(53)を備える農作業機において、ブロア用電動モータ(53)の駆動を入切するブロア駆動入切装置(126)と、ブロア駆動入切装置(126)がブロア駆動状態のときにエンジン(20)の回転数を上昇させる制御装置を設けた農作業機。
【請求項2】
走行車体(2)の後側に昇降用シリンダ(46)を介して作業部(4)を昇降可能に設け、昇降用シリンダ(46)をエンジン(20)からの動力で作動させる構成とし、走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)を設け、該主変速レバー(16)が前進位置又は前後進中立位置から後進側に操作されたことを検出する検出センサ(128)と、作業部(4)が対地浮上する所定の高さまで上昇したことを検出する対地浮上センサ(129)を設け、制御装置は、該検出センサ(128)の検出に基づいて作業部(4)を上昇させるべく昇降用シリンダ(46)を作動させると共にエンジン(20)の回転数を高速側に制御し、対地浮上センサ(129)が作業部(4)が対地浮上する所定の高さまで上昇したことの検出に基づいてエンジン(20)の回転数を低速側に制御する構成とした請求項1に記載の農作業機。
【請求項3】
走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー(90)を設け、変速レバー(16)の操作位置を検出する主変速位置センサ(131)と、副変速レバー(90)の操作位置を検出する副変速位置センサ(132)を設け、制御装置は、主変速位置センサ(131)の検出に基づいて主変速レバー(16)が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン(20)の回転数を高速側に制御すると共に、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、副変速レバー(90)が農作業用の低速位置に操作されている場合に比して、主変速レバー(16)の前進低速操作域では該主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量を小さく制御し、主変速レバー(16)の前進高速操作域では該主変速レバー(16)の操作量に対するエンジン(20)の回転数の変化量を大きく制御する構成とした請求項1又は2に記載の農作業機。
【請求項4】
走行車体(2)を前後進変速操作可能な主変速レバー(16)と、農作業用の低速位置と路上走行用の高速位置に切り替えて走行速度を変速する副変速レバー(90)を設け、変速レバー(16)の操作位置を検出する主変速位置センサ(131)と、副変速レバー(90)の操作位置を検出する副変速位置センサ(132)と、踏み込み操作でエンジン(20)の回転数を高速側へ変更するアクセルペダル(124)を設け、制御装置は、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が農作業用の低速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ(131)の検出に基づいて主変速レバー(16)が前進位置で高速側に操作されるほどエンジン(20)の回転数を高速側に制御し、副変速位置センサ(132)により副変速レバー(90)が路上走行用の高速位置に操作されていることを検出すると、主変速位置センサ(131)の検出に拘らずアクセルペダル(124)の操作に応じてエンジン(20)の回転数を変更する構成とした請求項1又は2に記載の農作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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