説明

農産物低温貯蔵庫

【課題】脚立などを使わなくても簡単に温度設定操作ができ、かつ温度表示の見やすい農産物低温貯蔵庫を提供する。
【解決手段】貯蔵室21と、貯蔵室21の温度設定を行う温度操作器23と冷却室27と機械室26とを設けた冷却ユニット22と、からなり、少なくとも冷却ユニット22の一部を貯蔵室21天井面に設けられた設置口39内に埋め込み設置するとともに、冷却ユニット22に組み込まれた温度操作器23を貯蔵室21の扉36の上方に配置したことにより、低コストで、脚立などを使わずに操作器を操作でき、かつ温度表示の視認性にすぐれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米穀類、野菜などを収納、貯蔵するのに用いる農産物低温貯蔵庫に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の農産物低温貯蔵庫に関するものとしては、例えば特許文献1がある。
【0003】
以下、図面を参考にしながら上記従来の農産物低温貯蔵庫を説明する。図6は、従来の農産物低温貯蔵庫の構造図である。図6において、1は貯蔵庫、2は冷却ユニットである。冷却ユニット2は、図6に示すように、前面に扉を有した断熱性の高い貯蔵庫1の天井面にのせられ、落下、転倒しない様ボルトなどで固定されている。
【0004】
また、図6に示すように、貯蔵庫1の天井面の開口にあわせ冷却ユニット2の冷却側が接続されており、冷却ユニット2の冷却側から出された冷気の循環が適切になるように、貯蔵庫1の略中央部に位置するように設置し、かつ一般的には、貯蔵庫1内には、冷却ユニット2から下方に吹き出された冷気を水平方法に循環するように庫内ダクト(図示せず)を設け、庫内の温度分布ムラがでないような配慮がなされている。
【0005】
一方、農産物低温貯蔵庫の温度設定をする際には、冷却ユニット2に配置された温度設定器(図示せず)で適温に設定をするか、もしくは、貯蔵庫1の扉に配置された温度設定器にて設定するのが一般的である。また、温度設定器には貯蔵庫1の庫内の温度を表示する機能を併設している場合が多く、庫内の収納物が適した温度雰囲気で保冷されているか否かが、庫内の温度を温度計などで計測することなく、外部から目視でデジタル温度表示などにより確認できるようになっている。
【特許文献1】特開2003−302141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の構成は、貯蔵庫天井面の略中央部に冷却ユニット2が配置されているため、温度操作器が冷却ユニット2本体に組み込まれて取り付けられている場合、脚立などを使わないと温度操作器を操作できず、また、温度表示も見にくかった。また、貯蔵庫1の扉に温度操作器を配した場合では、冷却ユニット2と温度操作器を結ぶ配線などが必要となり、コストが高くつくという欠点があった。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、脚立などを使わずに容易に温度設定を操作でき、かつ温度表示の視認性にすぐれた低コストの農産物低温貯蔵庫を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明の農産物低温貯蔵庫は、少なくとも前記冷却ユニットの一部を前記貯蔵室天井面に設けられた設置口内に埋め込み設置するとともに、前記冷却ユニットに組み込まれた前記温度操作器を前記貯蔵室の扉の上方に配置したものである。
【0009】
これによって、温度操作器の位置は低くなるとともに貯蔵庫の前面に配置できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の農産物低温貯蔵庫は、低コストで、かつ、脚立などを使わずに温度操作器を操作できるとともに、温度表示の視認性にすぐれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
請求項1に記載の発明は、貯蔵室と、前記貯蔵室の温度設定を行う温度操作器と冷却室と機械室とを設けた冷却ユニットと、からなり、少なくとも前記冷却ユニットの一部を前記貯蔵室天井面に設けられた設置口内に埋め込み設置するとともに、前記冷却ユニットに組み込まれた前記温度操作器を前記貯蔵室の扉の上方に配置したことにより、温度操作器の位置は低くなるとともに貯蔵庫の前面に配置できることとなり、脚立などを使わずに温度操作器を操作できるとともに、温度表示の視認性にすぐれる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記冷却ユニットの前記冷却室が前記貯蔵室内部に完全に埋め込み設置されたことにより、冷却室が完全に貯蔵室内部に配置されているため、冷却室を覆っていた断熱体の大部分が不要となるため、農産物低温貯蔵庫の冷却ユニットのコストを抑えることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記ドレン皿と冷気吹出口が一体となり、前記貯蔵室天面に沿うように冷気が吹き出されるように風向板つきドレン皿を設けたものであり、低コストを実現できるとともに、直接冷気が貯蔵物にあたることによる貯蔵物の乾燥や凍傷を防ぐことができる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項1から3のいずれか一項に記載の発明において、前記冷却室は、前記貯蔵室天井面の略中央部に配置させたことにより、貯蔵室の内部全体にわたって冷気を送り込むことができ、庫内の温度分布ムラを低減できる。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における農産物低温貯蔵庫の要部斜視図、図2は、図1のA−A‘線断面図、図3は同実施の形態の農産物低温貯蔵庫の冷却ユニットの平面図である。
【0016】
図1、図2、図3において、農産物低温貯蔵庫20は、貯蔵室21と貯蔵室21の天井面に配設する冷却ユニット22と、からなる。
【0017】
冷却ユニット22は、貯蔵室21の温度設定をおこなう温度操作器23と、放熱器と熱交換するための空気吸込用穴24と、排熱用の空気吹出用穴25と、断熱体28内部に冷却器29と冷却器用送風機30と冷却器29の下方に配置されたドレン皿37と冷気吸込口31と冷気吹出口32とを有する冷却室27と、圧縮機33と放熱器34と放熱器用送風機35と蒸発皿38とを有する機械室26と、からなる。また、貯蔵室21の前面には扉36が設けられている。なお、冷却室26は、貯蔵室21の天井面の略中央部に配置している。冷却ユニット22は、扉36側から貯蔵室21の奥に向かって、温度操作器23、機械室26、冷却室27の順に配置されている。ここで、温度操作器23は、扉36の上方になるように配置されている。すなわち、扉36と温度操作器23は同一面上に位置している。
【0018】
ここで、貯蔵室21の天井面には、設置口39が設けられており、設置口39に、少なくとも冷却ユニット22の一部が埋め込み設置されている。具体的には、冷却室27と機械室26の一部が設置口39内に埋め込み設置されている。
【0019】
以上のように構成された農産物低温貯蔵庫について、農産物低温貯蔵庫の収納物で比較的多い2000L程度までの容量の玄米の貯蔵を代表例にあげ、その構造体を中心に説明する。
【0020】
まず、農産物低温貯蔵庫に収納される玄米袋の大きさは、30kgの玄米袋を使用するのが一般的である。また、農産物低温貯蔵庫の設置スペース、玄米袋の人力での積載などの問題から、貯蔵室内の玄米袋の積み方は、6袋または7袋程度の段積みで、かつ1×2列置きまたは1×3列置きまたは2×2列置き等の組合せで、玄米袋の収納袋数を決定し、農産物低温貯蔵庫が設計されるケースが大半である。そのため、この時の貯蔵室の高さだけで、約1.8m程度の高さをもつこととなる。
【0021】
次に、貯蔵庫の天井面に冷却ユニットを搭載するが、貯蔵室内の冷気の循環を最適にするため、通常は天井面の中央部に冷却室が配置するようにセッティングすることが多い。そのため、冷却ユニットに温度操作部を埋め込んでいる場合、貯蔵室の高さとあいまって、脚立などがないと手がとどかず操作できない、温度表示が奥まっていて見えにくいなどの欠点となっていた。
【0022】
また、前記のような操作性の改善、視認性の改善として、貯蔵室の扉に、温度操作部を埋め込むケースがあるが、この場合、冷却ユニットと温度操作部を接続する配線や、配線のカバーなどが必要となりコストがかかることや、配線を貯蔵室の断熱体の中に埋め込むなどの製造上の作業性が悪いことや、更には設置時の組立作業性が悪いことが欠点となっていた。
【0023】
このような農産物低温貯蔵庫の温度操作時の操作性や、設置時の作業性等などの改善策として、冷却ユニット部の低背高化の要望は高まってはいたが、冷却ユニット内部の圧縮機、送風機などの部品の寸法制約があるため、一般的には冷却ユニット自体の低背高化は非常に困難であり、またコスト面でも不利であると考えられていた。
【0024】
しかしながら、図1から図3に示すような構造では、冷却ユニット22は、貯蔵室21の天井面に設置されているものの、温度操作器23は、冷却ユニット22の温度設定がしやすい扉36の上方になるように配置されているため、脚立などを使用しなくても手の届く範囲に温度操作器23が位置することとなり、操作が容易にできる。
【0025】
また、温度操作器23は、冷却ユニット22と一体となっていることから、冷却ユニット22と温度操作器23の接続線は最小限ですむため、コストをかけずにすみ、更には、配線を貯蔵室の断熱体の中に埋め込むなどの製造上の作業や、設置時の組立をなくすことができる。
【0026】
一方、冷却ユニット22内部の圧縮機33、放熱器用送風機35などの部品の寸法制約がある部分についての従来の欠点に対しても、冷却ユニット22の一部を貯蔵室21内側へ落としこむ仕様としたため、更に、比較的背の低い人でも容易に手が届く範囲に温度操作器23が位置されることとなり、温度操作器23の操作が容易に可能となる。
【0027】
また、温度操作器23を扉36側のもっとも視認性のよい場所に配置したので、貯蔵室21内の温度を容易に外部から知ることができる。
【0028】
なお、冷却室26は、貯蔵室21の天井面の略中央部に配置しているので、貯蔵室21の内部全体にわたって冷気を送り込むことができ、庫内の温度分布ムラを低減できる。
【0029】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2における農産物低温貯蔵庫の要部断面図である。図5は、同実施の形態における他の農産物低温貯蔵庫の要部断面図である。
【0030】
図4において、農産物低温貯蔵庫20は、貯蔵室21と貯蔵室21の天井面に配設する冷却ユニット22と、からなる。
【0031】
冷却ユニット22は、貯蔵室21の温度設定をおこなう温度操作器23と、断熱体28内部に冷却器29と冷却器用送風機30と冷却器29の下方に配置されたドレン皿37とを有する冷却室27と、圧縮機33と放熱器34と放熱器用送風機35と蒸発皿38とを有する機械室26と、からなる。また、貯蔵室21の前面には扉36が設けられている。
【0032】
ここで、貯蔵室21の天井面には、設置口39が設けられており、冷却室27は完全に貯蔵室21内部に配置したものである。これにより、冷却室21を覆っていた断熱体28の大半が貯蔵室21の断熱材でその機能を代用でき、必要となる断熱体28は、機械室26と冷却室27を仕切っている面のみとなるため、冷却ユニット22のコストを抑えることができる。
【0033】
更には、従来冷却室27を覆っていた断熱体28は、特に高湿雰囲気の外気と接すると、発汗、結露を発生させ、最悪の場合これが貯蔵室内の玄米等に垂れると、カビを発生させるなどの被害が起こる可能性があったが、本実施の形態では、断熱体28は機械室26と冷却室27を仕切っている面のみとなるため、その可能性が非常に低減できるといった効果も併せ持つ。
【0034】
また、冷却室27を完全に貯蔵室21内に配置したことにより、冷却器29で冷やされた庫内空気を冷却器用送風機30で貯蔵室21内に循環させるのに、直接冷却器用送風機30の設置している水平方向へ吹き出すことができるため、従来の冷却ユニットの構成で必要であった冷気を貯蔵室内に適切に循環させるための庫内のダクトを不要とすることができる。
【0035】
そのため、貯蔵室21内で、従来必要であった庫内のダクトを配置するスペースが不要となるため、貯蔵室21内の収納スペースを減らすことなく、従来の玄米袋をそのまま収納することができる。
【0036】
図5において、風向板つきドレン皿40は、ドレン皿37とドレン皿37から上方に向け設けられた冷気吹出口42とが一体物となり、冷気は貯蔵室21天面に沿うように吹き出されるよう構成されたものであり、風向板つきドレン皿40は樹脂材料で成形されている。
【0037】
図5において、風向板つきドレン皿40は、冷却器用送風機30から吹き出された冷気が、直接、貯蔵室21内の貯蔵物に吹きつけないよう、貯蔵室21の天井面に沿うように冷風の流れ41が流れるように風向板がついている。これにより、直接冷気が貯蔵物にあたることによる貯蔵物の乾燥や凍傷を防ぐことができる。
【0038】
また、冷却器用送風機30の羽根の回転物を誤って触ってケガをしないように、風向板つきドレン皿40と、貯蔵室21の天井面との隙間を管理しており、使用者の安全にも配慮している。
【0039】
なお、風向板つきドレン皿40は、ドレン皿37とドレン皿37から上方に向け設けられた冷気吹出口42とを別体とし、接合してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明の農産物低温貯蔵庫は、冷却ユニットに組み込まれた温度操作器を貯蔵室扉面に位置させたことにより、低コストで、脚立などを使わずに温度操作器を操作でき、かつ温度表示の視認性にすぐれたので、低温貯蔵庫等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施の形態1における農産物低温貯蔵庫の要部斜視図
【図2】図1のA−A‘線断面図
【図3】同実施の形態の農産物低温貯蔵庫の冷却ユニットの平面図
【図4】本発明の実施の形態2における農産物低温貯蔵庫の要部断面図
【図5】同実施の形態における他の農産物低温貯蔵庫の要部断面図
【図6】従来の農産物低温貯蔵庫の構成図
【符号の説明】
【0042】
20 農産物低温貯蔵庫
21 貯蔵室
22 冷却ユニット
23 温度操作器
26 機械室
27 冷却室
28 断熱体
29 冷却器
30 冷却器用送風機
33 圧縮機
34 放熱器
35 放熱器用送風機
36 扉
37 ドレン皿
38 蒸発皿
39 設置口
40 風向板つきドレン皿
42 冷気吹出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵室と、前記貯蔵室の温度設定を行う温度操作器と冷却室と機械室とを設けた冷却ユニットと、からなり、少なくとも前記冷却ユニットの一部を前記貯蔵室天井面に設けられた設置口内に埋め込み設置するとともに、前記冷却ユニットに組み込まれた前記温度操作器を前記貯蔵室の扉の上方に配置した農産物低温貯蔵庫。
【請求項2】
前記冷却ユニットの前記冷却室が前記貯蔵室内部に完全に埋め込み設置された請求項1に記載の農産物低温貯蔵庫。
【請求項3】
前記ドレン皿と冷気吹出口が一体となり、前記貯蔵室天面に沿うように冷気が吹き出されるように風向板つきドレン皿を設けた請求項1または2に記載の農産物低温貯蔵庫。
【請求項4】
前記冷却室は、前記貯蔵室天井面の略中央部に配置させた請求項1から3のいずれか一項に記載の農産物低温貯蔵庫。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−111602(P2008−111602A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295163(P2006−295163)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】