説明

農用トラクタ

【課題】畦際作業の容易化を図る作業機左右移動装置において、直線的な左右移動を維持しながら、作業機の左右バランスを損なわず、併せて構成も簡単とする左右移動装置を得ようとする。
【解決手段】機体後部に左右一対のロアリンク12,12と上部のトップリンク11とを介してヒッチ装置Hを昇降自在に連結し、該ヒッチ装置Hに作業機Aを着脱自在に連結する農用トラクタにおいて、前記左右一対のロアリンク12,12を連結する連結枠20と、この連結枠20に対して左右摺動自在な摺動枠22を設け、該摺動枠22に前記ヒッチ装置Hを装着し、機体と摺動枠22又はヒッチ装置Hとの間に摺動枠駆動手段40を設けてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は機体の後部にロータリ耕耘装置などの作業機を装着した農用トラクタに関し、特に該作業機の左右移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、残耕や重複耕耘を生じさせることなく、所定の耕耘幅を形成するため、ロータリ耕耘装置を農用トラクタに対して平行に移動変位させる構成が公知である(特許文献1)。
【0003】
すなわち、特許文献1の構成は、3点リンク式作業機装着装置とロータリ耕耘装置の間にロータリ耕耘装置を左右に摺動させる摺動装着装置を構成するが、この摺動装着装置は、左右の固定側フレームと、左右の摺動側フレームを主体として構成され、左右の固定側フレームを連結する左右渡架部材をスライド用油圧シリンダに構成し、この固定側フレームの上部にはトップリンクを連結し下部左右のロアリンクピンにはロアリンクを連結し、前記スライド用油圧シリンダ内で摺動するピストンロッドを設け、このピストンロッドに前記摺動側フレームを固定し、この摺動側フレームに耕耘ロータリの本体部を取り付けている。このため、ロータリ耕耘装置を直線的に左右移動でき、水平精度を維持できる利点がある。
【特許文献1】特開昭61−185105号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記の特許文献1の構成では、固定側フレームに対する摺動側フレームを構成するが、固定側フレームはトップリンクとロアリンクとでトラクタ本体に固定される構成である。したがって、固定側フレームに対して摺動側フレームが左右動するもので、固定側フレームに対してロータリ耕耘装置は左右に変位することとなり、左右バランスが崩れ易い。
【0005】
この発明は、直線的な左右移動を維持しながら、ロータリ耕耘装置の左右バランスを損なわず、併せて構成も簡単とする左右移動装置を得ようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、機体後部に左右一対のロアリンク12,12と上部のトップリンク11とを介してヒッチ装置Hを昇降自在に連結し、該ヒッチ装置Hに作業機Aを着脱自在に連結する農用トラクタにおいて、前記左右一対のロアリンク12,12を連結する連結枠20と、この連結枠20に対して左右摺動自在な摺動枠22を設け、該摺動枠22に前記ヒッチ装置Hを装着し、機体と摺動枠22又はヒッチ装置Hとの間に摺動枠駆動手段40を設けてなる農用トラクタの構成とする。
【0007】
このように構成すると、摺動枠22とこれと一体的に装着されたヒッチ装置Hは摺動枠駆動手段11Sの作動によって左又は右方に移動し、ヒッチ装置Hに装着された作業機Aも同様に左又は右方に移動する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、連結枠20に対する摺動枠22の左右移動に連れてヒッチ装置H及びこのヒッチ装置Hに装着された作業機Aが左又は右方に移動するものであるから、連結枠20に対する直線的な移動状態となって作業機のローリングを生じることなく、かつ作業機Aがヒッチ装置Hに対して左右にずれることがなくヒッチ装置Hと作業機Aとの関係は常に一定の関係を保つため左右のバランスを崩す恐れがなく、従って安定した作業を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいてこの発明の実施態様について説明する。
トラクタTの後部に、三点リンク機構Cを介して耕耘装置A、及びこの耕耘装置Aによって耕耘された土壌面の左右両側部を培土して所定幅の畝を形成する畝立装置Bを装着する。
【0010】
三点リンク機構Cは、トップリンク11と左右のロアリンク12,12とからなり、油圧昇降装置Dの左右のリフトアーム13,13とこのリフトアーム13,13の回動に伴い左右ロアリンク12,12を介して作業機としてのロータリ耕耘装置A,畝立装置Bを昇降連動する構成としている。符号14はトップリンクブラケットであり、符号10,10はリフトアーム13,13とロアリンク12,12を夫々連結するリフトロッドである。
【0011】
前記ロアリンク12,12は、その基部側にはリンクボール16,16を嵌装して設け、トラクタT側のリヤアクスルケース17,17に形成したブラケット部17a,17aに対して左右に装着ピン18,18を水平横軸芯に設けて前記リンクボール16,16部に挿通状態として連結する。
【0012】
前記ロアリンク12,12の先端側には左右連結する連結枠20を設ける。即ち、所定の長さを有し断面矩形の筒体にて形成された連結枠本体20aの左右端部に連結ピン部20b,20bを形成してなり、連結ピン部20b,20bを左右のロアリンク12,12の先端側ピン挿通穴21に挿通して抜け止めを施す構成としている。
【0013】
次いで、摺動枠22について、前記連結枠20の上下間隔に合わせ平板2枚を上下に対向させて設けてなり、所定間隔毎に段付ボルト23,23…をもって固着している。なお、符号24,24…は各ボルトに嵌装したローラである(図 )。
【0014】
前記摺動枠22のうち上側の平板に左右2箇所の吊下金具25,25を設け、この吊下金具25,25をもって摺動枠22と平行状態の断面矩形の筒体からなる補強枠26を形成している。なお、摺動枠22の上側の平板、吊下金具25,25及び補強枠26は溶接一体化されている。
【0015】
前記補強枠26の左右には支持板26a,26aを溶接一体化により備え、これらの摺動構造がヒッチフレーム30の左右ブラケット部32,32に着脱自在にボルト取付される構成である。
【0016】
ヒッチフレーム30はヒッチ装置Hの構成一部であり、このヒッチ装置Hは所謂クイックヒッチ装置を構成し以下の構成である。すなわち、前記ヒッチフレーム30の上部中央位置に上部フック31を固設するとともにトップリンク11の後端部を連結し、更に、ヒッチフレーム30の左右下端部に下部フック32,32を装着してクイックヒッチ装置Hが構成されている。下部フック32にはレバー(図示せず)の前後動によって回動するロックプレート34が枢着されており、後述するロータリ耕耘装置A側の下部ピン35が下部フック32へ嵌入されたときに、該ロックプレート34によって下部ピン35をロックできるようにしてある。一方、ロータリ耕耘装置Aの上部中央にはマスト36が設けられており、このマスト36の前端部に上部ピン37を設ける。また、ロータリ耕耘装置Aのフレーム38には前記下部フック32,32に対峙して下部ピン35,35を左右へ突設する。
【0017】
前記のように連結枠20に対して摺動枠22が左右に摺動する構成としているから、摺動枠22側にはヒッチフレーム30を介してロータリ耕耘装置A、畝立装置Bが装着されて、左右に移動自在に構成される。
【0018】
そして、固定側部と摺動側部との間に伸縮シリンダ機構40が構成される。一例を示すと、ロアリンク12と摺動枠22との間に油圧による伸縮シリンダ機構40aを介在してなり、伸長させ、又は短縮するとヒッチフレーム30とロータリ耕耘装置Aは連結枠20に沿って直線状に摺動する。
【0019】
次いで、ロータリ耕耘装置A、畝立装置B等の作業機について説明する。三点リンク機構C後端部に接続するヒッチフレーム30を介して、耕耘爪41をアップカット方向に回転して耕耘できるロータリ耕耘装置Aを装着する。そして、この耕耘装置Aの後部に畝立装置Bを装備し、該耕耘装置Aによって耕耘された土壌面の左右両側縁部を培土して所定幅の畝を形成する構成となっている。
【0020】
また前記耕耘装置Aは、耕耘爪41を有した耕耘軸42と耕耘フレーム43の左右両側端に、伝動ケース44及びサイドプレート45を備え、この伝動ケース44内の伝動機構を経て前記耕耘軸42を駆動する構成となっている。またこの耕耘爪41の耕耘幅上方を覆うロータリカバー46が、前記耕耘フレーム43の下側に取付けられる。
【0021】
尚、図中符号47はトラクタTのPTO軸で、前記耕耘フレーム43の中央部に設けられる入力軸48との間を自在継手軸で連結して、耕耘軸42を伝動回転する構成となっている。また符号49は掘削ディスクで、耕耘爪41による耕耘幅の外側前部に設けられ、耕耘土壌面の左右両側縁部に切り込んで、ロータリカバー46の内側へ引き込まれる草木類を切断する構成となっている。
【0022】
また前記ロータリカバー46の後側には上下回動自在のリヤカバー50が設けられ、耕耘土壌の後方飛散を防止すると共に耕耘土壌面を均平する構成となっている。
また前記耕耘フレーム43の後側には、アーム51を後方へ延設して、作業フレーム52を取り付ける。前記アーム51は、連結ピン53の周りに上下回動自在で、耕耘フレーム43上のリンクアーム53aの回動によって上下回動操作可能に構成し、また前記耕耘フレーム43に対して伸縮杆54によって上下調節可能に構成している。
【0023】
また前記リンクアーム53aは、ワイヤー55を介してトラクタTの運転席近傍の操作レバーで遠隔操作可能に構成すると共に、伸縮杆54はこの上端のハンドル56によって伸縮操作する構成となっている。
【0024】
またこの作業フレーム52の下側には、左右両側に二又状に形成されたガイドブラケット57を設け、同ブラケット57には、ツールバー58を設ける。このツールバー58は、角チューブ部材から構成され、このツールバー58の右側端部に、右培土板59を有した取付アーム60上端部のソケット61を嵌合させて、ボルト締め等で一体的に取付ける。また同ツールバー58の一側部には、左培土板62の取付アーム60上端部に一体構成したスライドバー63を備える構成となっている。
ロータリ耕耘装置Aと畝立装置Bによって、トラクタTの進行と共にロータリ耕耘装置Aで耕耘される耕耘土壌面を、左右の培土板によって培土し、この培土の畝立上面は鎮圧板で均平に鎮圧される。
【0025】
そしてこのロータリ耕耘装置A及び畝立装置BをトラクタTに対して左側または右側寄りに移動するときは、図外伸縮スイッチ操作に基づき遠隔操作でこれら作業機A,Bを左右移動させることができる。また、初心者などにあっても容易に畦際ぎりぎりの耕耘、畝立作業を行うことができる。この際、直線的に左右移動する構成であるから、対機体角度がずれることがなく、水平制御や傾斜制御に影響を及ぼさないので、精度の高い作業を行うことができる。
【0026】
なお、上記実施例では、トップリンク11は途中に伸縮シリンダ機構11Sを介在し、その伸縮作動によって前後の連結点間の距離を変更可能に設けている。そして、この伸縮作動量は、前記摺動駆動手段としての伸縮作動機構40aの作動量に比例する構成として、左右移動量が大きくなるほどトップリンク11の実際長が長くなるように伸縮シリンダ機構11Sを伸び出させ、左右中間位置でこの伸び出し量が零のとき、トップリンク11の実際長さが縮小されるように構成している。
【0027】
図6〜図9に基づく実施例について説明する。
三点リンク機構C´は、トップリンク111と左右ロアリンク112,112とからなり、油圧昇降装置D´のリフトアーム113,113とこのリフトアーム113,113の回動に伴い左右ロアリンク112,112を介して作業機としての耕耘装置A´,畦立装置B´を昇降連動する構成としている。符号114はトップリンクブラケット、115はトップリンクブラケットを着脱自在に保持する基板プレート、110,110はリフトアーム113,113とロアリンク112,112を夫々連結するリフトロッドである。
【0028】
前記ロアリンク112,112は、その基部側にはリンクボール116,116を嵌装して設け、トラクタT´側のリヤアクスルケース117,117に形成したブラケット部117a,117aに対して左右に装着ピン118,118を水平横軸芯に設けて前記リンクボール116,116部に挿通状態として連結する。これによってロアリンク112,112は、夫々リンクボール116,116部を中心に上下方向並びに左右方向のあらゆる方向に回動自在に設けられる。
【0029】
前記ロアリンク112,112の一方側(図例では右側)に、伸縮シリンダ機構120の一端を連結し、他端側基部をトラクタT´後部に着脱自在に設けた取付台座121に連結している。この取付台座121は、トラクタT´後部のミッションケース122後面にボルト123で着脱可能なベースプレート121a、このベースプレート121aから後方に突出すべく一体化される水平プレート121b、この水平プレート121bの下面には、伸縮シリンダ機構120のピストン部120aの先端部を連結するための第1ブラケット部121c,121c、及びチェックチェン124の一端を連結する左右の第2ブラケット部121d,121dとからなる。
【0030】
更に上記取付台座121は後記のPTO軸よりも下位に配置構成されてミッションケース122の後面に装着され、該PTO軸との干渉を防止する構成としている。
なお、第1ブラケット部121c,121cは長短一対の組み合わせからなり、共にトラクタT´の前後方向中心線Sに対し角度αを有して溶接一体化されていて、長短のブラケット部121c,121c間に前記伸縮シリンダ機構120のピストン部120aを位置させて着脱時自在の連結ピン125により連結される。この連結ピン125径に対して第1ブラケット121c,121c側に設けるピン穴121ch,121chの穴径を大きく形成して連結部の自由度を大に構成し、伸縮シリンダ機構120が取付台座121に対して上下及び左右方向の動きができるようになっている。
【0031】
また、前記第1ブラケット121c,121cの外側に位置して溶接一体化される第2ブラケット121d,121dは、平面視においてハ字状を呈してトラクタT´の前記前後方向線Lに対し角度+β、及び−βを呈するように設けてなる。夫々左右のチェックチェン124,124の基部側に設ける接続U字金具124a,124aを挟んで連結ピン126,126にて着脱自在に連結される。
【0032】
前記伸縮シリンダ機構120は、例えば油圧式リニアアクチュエータ型であり、短縮又は伸出制御信号により電動モータ120bの回転により送られる油圧をバルブ制御することによりシリンダ120cのピストン部120aを出退させて伸縮する構成である。符号120dは油圧バルブ、オイルタンクを収容するケースである。前記のように取付台座121の第1ブラケット121c,121cにピストン部120aを連結する一方、ロアリンク112側とは次のように連結される。
【0033】
即ち、シリンダ120cは、縦軸周りに回動自在な連結具127を介してロアリンク112に連結される。該連結具127は、上下に適宜間隔でロアリンク112の上下高さにほぼ一致して該ロアリンク112を上下側から挟む上下対向壁部材127a,127bと、これらを連結すべく設ける中間壁部材127cと、この上下対向壁部材127a,127b間に縦軸128a回りに回動可能に連結保持される回転体128とからなる。
【0034】
そして前記シリンダ120cの後端に左右対向して設ける一対ブラケット120cb,120cbで前記回転体128を挟むように挿入して連結ピン129を介して連結する。なお、連結具127の前記中間壁部材127aにはボルト130を水平方向に突出して設け、ロアリンク112のボルト挿入孔112aに挿入して締付固定できる構成である。なお、縦軸128a位置はロアリンク112内側から適宜距離だけ内側に寄せられて構成でき、従って、伸縮シリンダ機構120と右側のロアリンク112との間にスペースSを形成できる。
【0035】
前記のように伸縮シリンダ機構120を油圧式リニアアクチュエータで構成し、電動モータ120b及びケース120dをシリンダ120cの上位置に配置することにより、下位置におけるよりも地上高を高くでき作業性に支障を少なくできる。
【0036】
また、前記チェックチェン124,124は、途中部に螺子嵌合部124b,124bを備えて伸縮自在の公知の構成とし、基部側のU字金具124a,124aを介して前記取付台座121に連結し、後端側は、閉鎖U字金具124c,124cをもってロアリンク112,112側の環状体付ボルト131をもって連結される。
【0037】
前記螺子嵌合部124b,124bの正逆回転によって左右のチェックチェン124,124長さを夫々調整できるため、伸縮シリンダ機構120の伸縮による作業機の左右移動量を規制し、あるいは左右中央に固定できる構成となり、チェックチェン124,124の調整により後輪135,135との接触を防止する。すなわち、伸縮シリンダ機構120の最大伸出長さの規制をチェックチェン124の長さ調整をもって行うことができる。
【0038】
ロアリンク112,112の内側にチェックチェン124,124を構成でき、しかも伸縮シリンダ機構120の存在側のチェックチェン124(図例では右側)は前記スペースSに収容できる構成であり、伸縮シリンダ機構120とチェックチェン124とは略平行状態に配置されて作動する構成である。前記伸縮シリンダ機構120の図外伸縮スイッチはオペレータの操縦部に設けられている。
【0039】
そしてこのロータリ耕耘装置A及び畝立位置Bをトラクタ車体Tに対して左側、または右側寄りに移動するときは、図外伸縮スイッチ操作により、前記伸縮シリンダ機構120を伸縮させて、ロータリ耕耘装置A及び畝立位置Bを左側、または右側へ移動させる。このとき伸縮シリンダ機構120の伸出しによってロータリ耕耘装置A及び畝立装置Bは一体的に右側に移動し、逆に伸縮シリンダ機構120を短縮させるとこれら装置A,Bは一体的に左側に移動する。
【0040】
このように図外伸縮スイッチ操作に基づき遠隔操作で作業機を左右移動させることができて便利である。また初心者などにあっても容易に畦際ぎりぎりの耕耘、畝立作業を行うことができる。この際、チェックチェン124,124の張設によってロワリンク112,112の外方への揺動を規制して後輪135,135への接触を未然に防止する。
【0041】
なお、伸縮シリンダ機構120の最大伸び側長さをもって右側ロアリンク112の右側後輪135への規制を行わせることにより右側チェックチェン124を省略することもできる。このように構成すると、部品点数を少なくできコストダウンが図れる。また、左右に配設されるロアリンク112,112の装着ピン118,118にカラー118a,118aを挿入し、リンクボール116の位置を外側に配置させることにより、左右ロアリンク112,112は略平行リンクとなし得て左右移動する際に前後側に移動を極力少なくして作業性を向上できる。
【0042】
ところで、上記図6〜図8の構成に関して、機体後部に左右一対のロアリンク112,112と上部のトップリンク111とを介して作業機A,Bを昇降自在に連結し、左右ロアリンク112,112と油圧昇降装置D´に連動する左右リフトアーム113,113とを夫々リフトロッド110,110で連結し、これらリフトロッド110,110のうち一方のみを伸縮シリンダ機構110Sで連結するトラクタにおいて、前記ロアリンク112,112は機体後下部の横軸にリンクボール116,116を介して上下並びに左右方向に移動可能に設け、機体後部に設けるPTO軸47の上側であって上記横軸を通る軸心で機体の左右略中心箇所に、この横軸軸心と交差する軸心周りに上下に回動自在に伸縮シリンダ機構120の一端を接続し、上記伸縮シリンダ機構120の他端を、前記左右ロアリンク112,112のうち一方のロアリンク112の途中部に縦軸を介して連結し、前記左右のロアリンク112,112の内側に、前記伸縮シリンダ機構120と略平行に長さを調整自在のチェックチェン124を設け、左右の傾斜角度を検出する角度検出手段140を設け、この角度検出手段140の検出結果に基づいて制御部150から前記リフトロッド110の伸縮シリンダ機構110Sを伸縮制御する制御バルブ149に伸縮信号が付与されて作業機A,Bの左右傾斜角度を略水平に修正する構成とする。
【0043】
すなわち、ヒッチフレーム30の左右一側に左右傾斜角度を検出する角度検出手段140を設ける。この角度検出手段140の検出結果は制御部150に入力される構成としている。また制御部150には、作業機A,Bを左右に連動する伸縮シリンダ機構120の作動開始信号を入力するとともに作動終了信号を入力できる構成とする。この作動開始信号とともに傾斜角度θsを読み込み、作動終了信号と共に傾斜角度θeを読み込む。この傾斜角度θeが傾斜角度θsに復帰すべく、リフトロッド110の伸縮シリンダ機構110Sを伸縮制御する構成である。
【0044】
実施例では、後面視右側のリフトロッド110に伸縮シリンダ機構110Sを設けており、作業機A,Bを右側に移動させるよう伸縮シリンダ機構11Sを伸出作動させると作業機A,Bは後面視右側に移動すると共に、後面視右肩上がりとなり、このときの傾斜角度θeをリフトロッド110の伸縮シリンダ機構110Sの伸出作動によって傾斜角度θsに復帰させる構成である(図9ステップ104〜ステップ107)。逆に作業機A,Bを左側に移動させるときは、後面視左肩上がりとなりこのときはリフトロッド110の伸縮シリンダ機構110Sを短縮作動させ傾斜角度を初期角度に復帰させるものである(ステップ108〜ステップ111)。なお、作業機A,Bの左右移動量、即ち作業機左右移動量とリフトロッド110の伸縮シリンダ機構110Sの伸縮量を予め設定した関係に設けて制御部150に記憶しておき左右移動状態に応じて伸縮シリンダ機構110Sを伸縮制御する構成でもよい。
【0045】
図10は、リヤカバーの上下変位量を検出し、油圧昇降機構D,D´への圧油の供給排出を行いロータリ作業機Aを昇降することにより耕耘深さの所謂耕深制御を行う制御装置における車速制御に関する。リヤカバーをセンサとして耕深制御を行うが、リヤカバーの上・下動検知に伴いリフトアームを上・下させて耕深を一定に制御できる(ステップ201〜ステップ205)。ステップ206、207でリヤカバー角度の変化を判断し、単位時間で所定以上の角度変化を来たしたときには、トラクタの車速を減速する。なお車速の減速処理にあたっては、HST仕様ではトラニオン軸を減速側に制御し、有段変速のトランスミッションにあっては、シフトダウンを行なう。単位時間当たりの角度変化が所定に戻ったときには、車速を元に戻す制御を加えてもよい。このように構成することにより、耕深の変動を少なくし、安定した作業を継続でき、オペレータへの負担を減少できる。
【0046】
図11,図12は、ロータリ耕耘装置Aのリヤカバー50の両端から耕耘土壌が溢出することを防止するため防土板を設けるがその改良に関する。従来、平板状の防土板151としていたが(図11(イ))、リヤカバー50とサブサイドカバー152との隙間が確保されないため、サブサイドカバー152と干渉し易く、破損の恐れがあった。そこで改良構成は、基部側に段差153を設けてなり、右サイド用防土板151R、左サイド用防土板151Lの2種類を対象形状に形成し、左右付替えすることによりサブサイドカバー152の外側又は内側に配置させて作業を行なうことができ、外側に出した状態でリヤカバー50側面に装着するとサブサイドカバー152の保護が図れる(図11(ロ))。またサブサイドカバー152の内側に配置するとこのサブサイドカバー152に干渉することなく従来同様に土壌の溢出を防止する(図11(ハ))。154はリヤカバー50の側方に延長して設ける延長板で、リヤカバー50の上側に折畳み収納できる構成である。
【0047】
図13は、ロータリ耕耘装置Aの耕耘爪軸端部の構成に関する。耕耘爪軸155の端部に駆動軸(図示せず)とフランジ接合するフランジ156を設け、このフランジ156の外周異径部に草切りカッタ157をボルトにより着脱自在に設ける。この草切りカッタ157の周部には回り止めプレート158を溶接固定している。159はカッタ刃である。このように構成すると、フランジ部から前記図外駆動軸に巻き付こうとする草藁はカッタ刃159の作用を受けて寸断され巻付きを防止できる。また廻り止めプレート158は草切りカッタ157のボルト装着部中心の回動を阻止して良好な草巻付き防止機能を維持できる。160は草巻付き防止ロッドで、該ロッド160端部のボルト部を草切りカッタ157の取付けボルトに兼用するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】作業機装着状態を示す側面図
【図2】作業機装着状態を示す背面図
【図3】要部の概略を示す正面図
【図4】要部の概略を示す側面図
【図5】作用状態を示す平面図(イ)(ロ)
【図6】作業機装着状態を示す側面図
【図7】作業機連結装置部の平面図
【図8】作業機連結装置部の側面図
【図9】フローチャート
【図10】フローチャート
【図11】ロータリ耕耘装置の一部を示す斜視図(イ)(ロ)(ハ)
【図12】防土板の斜視図
【図13】草切りカッタ部を示す展開斜視図(イ)、草刈りカッタの側面図(ロ)、草刈りカッタの背面図(ハ)
【符号の説明】
【0049】
11 トップリンク
12 ロアリンク
20 連結枠
22 摺動枠
40 油圧シリンダ機構(摺動枠駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体後部に左右一対のロアリンク(12,12)と上部のトップリンク(11)とを介してヒッチ装置(H)を昇降自在に連結し、該ヒッチ装置(H)に作業機(A)を着脱自在に連結する農用トラクタにおいて、前記左右一対のロアリンク(12,12)を連結する連結枠(20)と、この連結枠(20)に対して左右摺動自在な摺動枠(22)を設け、該摺動枠(22)に前記ヒッチ装置(H)を装着し、機体と摺動枠(22)又はヒッチ装置(H)との間に摺動枠駆動手段(40)を設けてなる農用トラクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−75130(P2010−75130A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249365(P2008−249365)
【出願日】平成20年9月27日(2008.9.27)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】