説明

農用繰出し装置

【課題】 繰出し操作用の操作アームに対する操作ロッドの連結点を操作アームの長手方向に位置調節して繰出し量調節を行うよう構成した農用繰出し装置において、繰返される往復作動によって操作ロッドと操作アームとの連結点に打滅や摩耗によるガタが発生することを抑制する。
【解決手段】 操作アーム47の長手方向に移動可能な第1可動部材61に、第2可動部材62を操作アーム47の長手方向に移動可能に支持し、第1可動部材61に位置固定に備えた位置決めピン73が選択係脱される複数の係合凹部74を操作アーム47の長手方向に沿って並列形成し、第2可動部材62を第1可動部材61に対して操作アーム47の長手方向にネジ送り移動させる微調節手段を備え、第2可動部材62に挿通した連結ピン70に操作ロッド48を枢支連結してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホッパに貯留した粉粒状の肥料や薬剤などを定量づつ繰出す農用繰出し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記農用繰出し装置としては、繰出し操作軸から延出された操作アームに、クランク機構から延出された操作ロッドを連結し、操作ロッドの押し引き作動によって操作アームを往復揺動させ、繰出し操作軸を間欠的あるいは脈動的に回動させて、繰出しロールなどを所定方向にピッチ送り回転させるよう構成したものが多用されている。
【0003】
このような農用繰出し装置では、状況に応じて繰出し量を調節する必要があり、その手段として、操作アームに対する操作ロッドの連結点を操作アームの長手方向に位置調節することで、操作ロッドの定められた往復作動ストロークに対する操作アームの揺動角度を変更するよう構成した繰出し量調節機構が採用されている。
【0004】
上記繰出し量調節機構としては、操作アームの長手方向に移動可能な第1可動部材に、第2可動部材を揺動アームの長手方向に移動可能に嵌合支持し、第1可動部材および第2可動部材に亘って貫通装着した位置決めピンを係入する係合凹部を、操作アームの長手方向複数箇所に形成するとともに、第1可動部材を操作アームに引き寄せ移動させて位置決めピンを係合凹部に係合押圧させるねじ込み操作部を設け、第2可動部材を第1可動部材に対して揺動アームの長手方向に位置調節するねじ送り調節部を備え、この第2可動部材に操作ロッドを枢支連結したものが知られている。
【特許文献1】特開2003−310017号公報(図17、図18)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来構造においては、第2可動部材と操作ロッドとを枢支連結する連結ピンが第1可動部材に形成された前後長孔にも挿通されており、操作ロッドが往復作動する際に、連結ピンが第1可動部材の前後長孔の内縁に繰り返し接当されて打滅や摩耗が発生しやすいものとなっていた。
【0006】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、繰返される往復作動によって操作ロッドと操作アームとの連結点に打滅や摩耗によるガタが発生することを抑制することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、繰出し操作軸から延出された操作アームにクランク機構から延出された操作ロッドを連結し、操作ロッドの押し引き作動によって前記操作アームを往復揺動させるよう構成するとともに、操作アームに対する操作ロッドの連結点を操作アームの長手方向に位置調節して繰出し量調節を行うよう構成した農用繰出し装置において、
前記操作アームの長手方向に移動可能な第1可動部材に、第2可動部材を操作アームの長手方向に移動可能に支持し、第1可動部材に位置固定に備えた位置決めピンが選択係脱される複数の係合凹部を操作アームの長手方向に沿って並列形成し、第2可動部材を第1可動部材に対して操作アームの長手方向にネジ送り移動させる微調節手段を備え、第2可動部材に挿通した連結ピンに前記操作ロッドを枢支連結してあることを特徴とする。
【0008】
上記構成によると、第1可動部材の移動調節によって多段の繰出し量調節を行うとともに、第1可動部材に対する第2可動部材のネジ送り調節によって無段階の繰出し量微調節を行うことができる。操作ロッドの押し引き駆動力は連結ピンを介して第2可動部材に伝達される。
【0009】
従って、第1の発明によると、第2可動部材に丸孔を介して枢支連結された連結ピンが打滅や摩耗することが少なくなり、長期間にわたってガタつきのない円滑な作動を期待することができる。
【0010】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記連結ピンに牽制金具を連結固定し、この牽制金具を前記位置決めピンに対して操作アームの長手方向に相対移動可能、かつ、連結ピンの軸心周りに回動不能に係合してあるものである。
【0011】
上記構成によると、位置決めピンの回動による摩耗を抑制することができ、第1の発明の上記効果を助長する。
【0012】
第3の発明は、上記第1または2の発明において、
前記位置決めピンを係合凹部に係入固定した状態において、前記微調節手段に備えた回動操作部材を前記操作アームに干渉接当させて回動阻止するよう構成してあるものである。
【0013】
上記構成によると、繰出し駆動中の振動等によって回動操作部材が勝手に回動することが阻止され、作動中に繰出し量が変化することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1に、8条植え仕様に構成された施肥装置付き田植機の全体側面が示されている。この施肥装置付き田植機は、操向可能な前輪1および操向不能な後輪2を備えて4輪駆動で走行する走行機体3の後部に、8条植え仕様の苗植付け装置4が、油圧シリンダ5によって駆動される平行四連リンク構造の昇降リンク機構6の後端部に連結されるとともに、機体後部に施肥装置7が備えられた基本構造を有している。
【0015】
前記走行機体3の前部にはエンジン8が搭載され、その出力が前後進の切り換えが可能な主変速装置である静油圧式無段変速装置(HST)9に伝達され、その変速出力がミッションケース10に入力されて更にギヤ変速された後、前輪1と後輪2に伝達されるようになっている。
【0016】
前記苗植付け装置4は昇降リンク機構6の後端部に脱着可能に連結支持されており、横長角筒状の植付けフレーム11、前記ミッションケース10から取り出された作業用動力を受けるフィードケ−ス12、マット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動する苗のせ台13、苗のせ台13の下端から一株分づつ苗を切り出して植付ける8組の回転式の植付け機構14、圃場の植付け予定箇所を均平にする5個の整地フロート15が備えられており、前記植付け機構14は、植付けフレーム11に後向き片持ち状に並列連結された4個の植付けケース16の後部左右に2組づつ装着されている。
【0017】
前記施肥装置7は、その主部が機体後部に配備された運転座席14と前記苗植付け装置4との間において走行機体3に搭載されており、粉粒状の肥料を貯留する肥料ホッパ21、この肥料ホッパ21内の肥料を繰り出す4組の繰出し機構22、繰り出された肥料を供給ホース23を介して苗植付け装置4の各整地フロート15に備えた作溝器24に風力搬送するブロワ25、これを駆動する電動モータ26、ブロワ25からの搬送風を繰出し機構22に分配供給する送風ダクト27、などを備えている。
【0018】
図2,3に示すように、4組の繰出し機構22は、肥料ホッパ21の下端に連結される4個の繰出しケース30のそれぞれに2条分の繰出しロール(図示せず)を装備して構成されており、各繰出し機構22に2本ずつ前記供給ホース23が接続され、もって、8条分の肥料繰り出し供給が可能となっている。
【0019】
次に、繰出し機構22の駆動構造について説明する。並列配備された4組の繰出し機構22に亘って全条共通の繰出し操作軸41が横架され、この繰出し操作軸41に備えた駆動ギヤ42と繰出しロール軸43に備えた従動ギヤ44とが咬合連動されるとともに、繰出し操作軸41自体は、ミッションケース10から後向きに導出されて走行機体3の下部に沿って配備された施肥駆動軸45の後端にクランク機構46を介して連動連結されている。
【0020】
前記クランク機構46は、施肥駆動軸45の後端に連結されたクランクアーム47と、これから上方に延出された操作ロッド48とで構成されており、前記繰出し操作軸41に装着した操作アーム47と操作ロッド48の上端部とが連動連結され、クランクアーム47の一定方向回転に伴って操作アーム47が往復揺動し、その往復揺動が繰出し操作軸41に伝達され、繰出し操作軸41が脈動的に所定方向に回転駆動されることで、繰出し操作軸41にギヤ連動された繰出しロール軸43が、所定の繰出し回転方向(この例では反時計方向)に回転駆動されるようになっており、その詳細な構造が図4,5に示されている。
【0021】
繰出し操作軸41には回転伝達方向が同じ特性の一方向回転クラッチ51,52が一対並列装着されており、その一方の一方向回転クラッチ51に前記操作アーム47が外嵌装着されるとともに、他方の一方向回転クラッチ52に作動アーム53が外嵌装着され、操作アーム47と作動アーム53とが反転リンク機構54を介して反転連動されている。
【0022】
反転リンク機構54は、操作アーム47の基部から一体延出された連係アーム47aと、支点軸55周りに回動可能に配備された中継リンク56の一端部56aとを、短いリンク部材57で連動連結するとともに、中継リンク56の他端部56bと作動アーム53とを長いリンク部材58で連動連結して構成されている。
【0023】
上記構成によると、操作アーム47の下方揺動(往動)が一方の一方向回転クラッチ51を介して繰出し操作軸41に伝達されて、繰出し操作軸41が所定角度だけ所定方向(図4では時計方向)に揺動され、操作アーム47の上方揺動(復動)が作動アーム53および他方の一方向回転クラッチ52を介して繰出し操作軸41に伝達されて、繰出し操作軸41が所定角度だけ所定方向(図4では時計方向)に揺動され、もって、操作アーム47の往復揺動に伴って繰出し操作軸41が脈動的に一定方向に回転駆動されて、繰出しローラ軸43が繰出し方向にピッチ送りされるのである。
【0024】
前記反転リンク機構54におけるリンク部材58は、その両端に装着された抜け止めピン59を取り外すことで、作動アーム53および中継リンク56から取外すことができるように構成されており、このリンク部材58を取外して反転リンク機構54の機能を無くすと、操作アーム47の往復作動の内の復動による繰出し操作軸41への伝達が遮断され、操作アーム47の往動のみによって繰出し操作軸41が間欠的に所定方向に揺動される。従って、繰出し操作軸41にギヤ連動された繰出しロール軸43が間欠的に所定の繰出し方向(図2では反時計方向)に順送り回動され、操作アーム47の往動および復動で繰出し操作軸41を駆動する通常時に比べて、単位時間当たりの肥料繰出し量が半減されるのである。
【0025】
肥料繰出し量の調節は、前記操作アーム47と操作ロッド48との連結位置を操作アーム47の長手方向に変更調節し、操作ロッド48の一定ストロークの押し引き移動に対する操作アーム47の揺動角度を変更して行うよう構成されており、その詳細な構造が、図4〜図8に示されている。
【0026】
操作アーム47は、下向きコの字形の断面形状に形成された板金材で構成されており、下向きに開放された内部空間に板金部材からなる第1可動部材61と第2可動部材62がそれぞれアーム長手方向に移動可能に内嵌されている。
【0027】
第1可動部材61は下向きコの字形に形成されており、その上面に溶接固定されたスタッドボルト63が操作アーム47の上面に形成されたスリット64を通して上方に突出され、その突出部に座金65およびノブ付きナット66が装着される。第1可動部材61には六角ボルトを利用したネジ軸67が、操作アーム47の長手方向に軸心を向けて後向きに溶接固定され、このネジ軸67に回動操作部材68がネジ込み装着されている。
【0028】
第2可動部材62は前方および下方に開放された箱形に形成されており、その内部に第1可動部材61が左右移動不能に内嵌配備され、第1可動部材61から突設された前記スタッドボルト63が第2可動部材62の上面に形成された切欠き69を通して上方に延出されている。第2可動部材62は第1可動部材61より下方に大きく延出されており、その延出箇所に前記操作ロッド48の上端部が連結ピン70を介して枢支連結されている。
【0029】
第1可動部材61には左右に貫通して丸孔71が形成されるとともに、第2可動部材62に62は左右に貫通して前後長孔72が形成され、これら丸孔71および前後長孔72に亘って位置決めピ73が挿通止着されている。
【0030】
操作アーム47の下端縁には、複数個の係合凹部74がアーム長手方向に所定ピッチで形成されており、操作アーム47の長手方向に移動させてノブ付きナット66を締め込むことで、第1可動部材61を上方に引き寄せて、前記位置決めピン73をいずれかの係合凹部74に押し込み係合して、第1可動部材61を操作アーム47の長手方向に位置固定するように構成されている。
【0031】
第1可動部材61のネジ軸67に装着された回動操作部材68の外周には環状溝75が形成されており、第2可動部材62の後壁部に切欠き形成した案内凹部76に回動操作部材68を挿入して案内凹部76の左右端縁を環状溝68に係入することで、回動操作部材68の回動が許容されるとともに、回動操作部材68と第2可動部材62のネジ軸軸心方向での相対移動が阻止されるようになっている。なお、回動操作部材68には板材を屈曲してなる摘み部68aが設けられており、ノブ付きナット66の締め込みによって第1可動部材61が位置固定された状態では摘み部68aが操作アーム47の内部空間に係合されて、回動操作部材68の回動が接当阻止されるようになっている。
【0032】
上記調節構造によると、ノブ付きナット66を緩めて位置決めピン73を係合凹部74から外れる位置まで第1可動部材61を下方移動させた後、第1可動部材61を操作アーム47の長手方向に任意に移動させ、再びノブ付きナット66を締め込んで第1可動部材61を引き上げ、位置決めピン73を所望の係合凹部74に押しつけることで、操作アーム47と操作ロッド48との連結点を多段に位置調節することができる。
【0033】
第1可動部材61を下方に移動させて摘み部68aを操作アーム47との係合から外した状態で、回動操作部材68を回動操作してネジ軸67に対して螺進移動させると、回動操作部材68に環状溝75を介して係止された第2可動部材62が第1可動部材61に対して前後移動されることになり、これによって操作アーム47と操作ロッド48との連結点を操作アーム47の長手方向に無段階に位置調節(微調節)することができる。
【0034】
〔別実施例〕
(1)第1可動部材61を操作アーム47に引き寄せて固定する手段としては、上記のようにスタッドボルト63とノブ付きナット66を利用する他に、図9,10に示すように、第1可動部材61から突設した支持ロッド82の突出部に、基部にカム部83aを備えた締め込みレバー83を支点a周りに回動可能に装備し、締め込みレバー83を起立操作することで第1可動部材61の下方移動を許容し、締め込みレバー83を前方あるいは後方に倒し込み操作して、カム部83aの先端で操作アーム47の上面を接当押圧することで、相対的に支持ロッド82および第1可動部材61を引き上げ保持しておくように構成することもできる。
【0035】
(2)図11に示すように、前記連結ピン70に牽制金具78を鍔状に溶接固定し、この牽制金具78に形成した前後向きの凹部79を位置決めピン73に係合させることで、連結ピン70のピン軸心周りの回動を不能にしながら第2可動部材62の操作アーム47の長手方向への移動を可能にすることができ、連結ピン70の回動による摩耗を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】施肥装置付き田植機の全体側面図
【図2】施肥装置の側面図
【図3】施肥装置の背面図
【図4】繰出し操作部の側面図
【図5】繰出し操作部の横断平面図
【図6】繰出し量調節構造を示す縦断側面図
【図7】繰出し量調節構造の要部を示す分解斜視図
【図8】繰出し量調節構造の縦断正面図
【図9】繰出し量調節構造の別実施例を示す縦断側面図
【図10】繰出し量調節構造の別実施例における要部の縦断正面図
【図11】繰出し量調節構造の更に別の実施例を示す側面図
【符号の説明】
【0037】
41 繰出し操作軸
46 クランク機構
47 操作アーム
48 連結ロッド
61 第1可動部材
62 第2可動部材
68 回動操作部材
70 連結ピン
73 位置決めピン
74 係合凹部
78 牽制金具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰出し操作軸から延出された操作アームにクランク機構から延出された操作ロッドを連結し、操作ロッドの押し引き作動によって前記操作アームを往復揺動させるよう構成するとともに、操作アームに対する操作ロッドの連結点を操作アームの長手方向に位置調節して繰出し量調節を行うよう構成した農用繰出し装置において、
前記操作アームの長手方向に移動可能な第1可動部材に、第2可動部材を操作アームの長手方向に移動可能に支持し、第1可動部材に位置固定に備えた位置決めピンが選択係脱される複数の係合凹部を操作アームの長手方向に沿って並列形成し、第2可動部材を第1可動部材に対して操作アームの長手方向にネジ送り移動させる微調節手段を備え、第2可動部材に挿通した連結ピンに前記操作ロッドを枢支連結してあることを特徴とする農用繰出し装置。
【請求項2】
前記連結ピンに牽制金具を連結固定し、この牽制金具を前記位置決めピンに対して操作アームの長手方向に相対移動可能、かつ、連結ピンの軸心周りに回動不能に係合してある請求項1記載の農用繰出し装置。
【請求項3】
前記位置決めピンを係合凹部に係入固定した状態において、前記微調節手段に備えた回動操作部材を前記操作アームに干渉接当させて回動阻止するよう構成してある請求1または2記載の農用繰出し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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