説明

通信装置

【課題】燃料補給スタンドから燃料ガスを車両の燃料タンクに充填する際に、燃料ガスの漏洩を検知可能な通信装置を提供する。
【解決手段】燃料ガスが充填される燃料タンク101を備える車両100に設けられた送信部200から、燃料タンク101に燃料ガスを供給する燃料供給スタンド300に設けられた受信部304に、燃料タンク101内における燃料ガスの状態を示す情報を送信する通信装置において、送信部200あるいは受信部304の少なくとも一方の近傍に、燃料供給スタンド300から燃料タンク101に燃料ガスを供給する際における燃料ガスの漏洩を検出する燃料ガス検出手段204を設ける。燃料ガスは水素であり、送信部200と受信部304との間の通信は赤外線通信によって行われ、燃料ガス検出手段204は、水素と反応して光の反射率が変化するマグネシウム−ニッケル合金薄膜から構成されているとともに搬送波の経路に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に燃料補給を行う燃料補給システムで用いられる通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素燃料車両に燃料である水素を補給する燃料補給システムとして、車両側と燃料補給スタンド側にそれぞれ通信装置を設け、車両側から燃料タンクの燃料残量情報を燃料補給スタンド側に伝送し、燃料補給スタンドが燃料残量情報に基づいて車両への燃料補給を制御する構成が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−153586号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の燃料補給システムでは、水素補給口近傍での水素漏洩について考慮されていない。このため、水素漏洩が発生しても燃料供給が継続して行われてしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑み、燃料補給スタンドから燃料ガスを車両の燃料タンクに充填する際に、燃料ガスの漏洩を検知可能な通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、燃料ガスが充填される燃料タンク(101)を備える車両(100)に設けられた送信部(200)から、前記燃料タンク(101)に燃料ガスを供給する燃料供給スタンド(300)に設けられた受信部(304)に、前記燃料タンク(101)内における燃料ガスの状態を示す情報を送信する通信装置であって、
前記送信部(200)あるいは前記受信部(304)の少なくとも一方の近傍に、前記燃料供給スタンド(300)から前記燃料タンク(101)に燃料ガスを供給する際における燃料ガスの漏洩を検出する燃料ガス検出手段(204)が設けられていることを特徴としている。
【0007】
これにより、燃料供給スタンド(300)から燃料タンク(101)に燃料ガスを供給する際における燃料ガスの漏洩を検出することができ、燃料供給スタンド(300)からの燃料ガスの供給を停止することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明のように、燃料ガスとして水素を用いることができる。可燃性ガスである水素の漏洩を検出可能とすることで、安全性を向上させることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明は、前記送信部(200)と前記受信部(304)との間の通信は、光を搬送波として用いる光無線通信によって行われ、前記燃料ガス検出手段(204)は、水素と反応して光の反射率が変化する材料から構成されているとともに、前記送信部(200)と前記受信部(304)との間における前記搬送波の経路に配置されていることを特徴としている。
【0010】
このように、燃料ガス検出手段(204)として、水素と反応することで反射率が変化する材料を光無線通信の搬送波の経路に配置することで、水素の有無によって送信部と受信部との間の情報の伝送状態が変化する。このため、送信部と受信部との間の情報の伝送状態に基づいて水素の漏洩を容易に検出することができる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明のように、搬送波として赤外線を用いることができる。
【0012】
また、請求項5に記載の発明は、前記燃料ガス検出手段(204)は、マグネシウム−ニッケル合金薄膜から構成されていることを特徴としている。
【0013】
マグネシウム−ニッケル合金薄膜は、水素と反応することで反射率が変化する特性を有しており、燃料ガス検出手段として好適に用いることができる。
【0014】
また、請求項6に記載の発明は、前記燃料ガス検出手段(204)は、前記送信部(200)に一体的に設けられていることを特徴としている。
【0015】
これにより、通信装置を大型化することなく、燃料ガスの漏洩を検出することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】燃料補給システムのブロック図である。
【図2】水素補給口付近を示す図である。
【図3】車両側送信部の構成を示す斜視図である。
【図4】車両側送信部の変形例を示す断面図である。
【図5】車両側送信部の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
以下に、本発明の燃料補給システムの第1実施形態を図1〜図3に基づいて説明する。本実施形態の燃料補給システムでは、水素を燃料として走行する水素燃料車両に水素を供給するように構成されている。水素燃料車両としては、例えば水素と酸素の電気化学反応で発電する燃料電池を用いた燃料電池車両とすることができる。
【0018】
図1は、本実施形態の燃料補給システムの構成を示すブロック図である。図1に示すように、本実施形態の燃料補給システムは、水素燃料車両100に設けられた通信装置200と、水素燃料車両100に対して水素を補給する燃料補給スタンド300とから構成されている。
【0019】
水素燃料車両100には、燃料となる水素が充填される水素タンク(燃料タンク)101が設けられている。水素タンク101には、高圧水素が充填されており、水素タンク101内の水素圧力を検出する圧力センサ102と、水素タンク101の温度を検出する温度センサ103が設けられている。これらの圧力センサ102および温度センサ103は、センサ信号を後述の車両側制御部105に出力するように構成されている。また、水素タンク101には、水素補給スタンド300から水素の補給を受けるための補給口104が設けられている。
【0020】
車両側制御部105は、各種入力信号に基づいて各種演算処理を実行するもので、CPU、およびROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路で構成されている。車両側制御部105は、圧力センサ102からのセンサ信号から水素タンク101の圧力情報を取得し、温度センサ103からのセンサ信号から水素タンク101の温度情報を取得する。また、車両側制御部105は、圧力センサ102と温度センサ103からのセンサ信号に基づいて演算処理し、水素タンク101内の水素残量を算出する。そして、車両側制御部105は、圧力情報、温度情報、燃料残量情報を車両側通信部200に出力することにより、これらの水素の状態を示す情報を燃料補給スタンド300に伝送させる。
【0021】
車両側通信部200は、燃料補給スタンド300に設けられたスタンド側通信部304と互いに情報を送受信可能に構成されている。具体的には、車両側通信部200は、車両側制御部105から受信した情報をスタンド側通信部304へ送信するとともに、スタンド側通信部304から信号を受信した情報を車両側制御部105に出力する。車両側通信部200の具体的構成は後述する。なお、車両側通信部200が本発明の送信部に相当し、スタンド側通信部304が本発明の受信部に相当している。
【0022】
燃料供給スタンド300には、水素を貯蔵する水素貯蔵タンク301が設けられている。水素貯蔵タンク301に貯蔵された水素は、水素補給装置302によって、水素供給ノズル303を介して水素燃料車両100の水素タンク101に供給される。本実施形態では、700kPa程度の高圧水素が水素タンク101に供給される。水素供給ノズル303は、水素燃料車両100の水素タンク101の補給口104に対応した形状となっている。このため、水素供給ノズル303を補給口104に挿入することで、水素供給ノズル303は補給口104に嵌合する。
【0023】
図2は、補給口104と水素供給ノズル303の構成を示しており、(a)は斜視図、(b)は側面図である。図2(a)に示すように、フューエルリッド106の内部に補給口104と車両側通信部200が配置されており、フューエルキャップ107を開放することでこれらが露出する。
【0024】
また、図2(b)に示すように、水素燃料車両100の水素タンク101に水素を充填する際には、補給口104に燃料供給ノズル303が挿入される。このとき、車両側通信部200とスタンド側通信部304は近接して対向する位置関係となる。本実施形態では、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間の通信は、赤外線を搬送波とする光無線通信(赤外線通信)を用いている。このため、車両側通信部200とスタンド側通信部304が近接して対向することで、これらの間での赤外線通信が可能となる。
【0025】
図1に戻り、スタンド側通信部304は、車両側通信部200から情報を受信すると、受信した情報をスタンド側制御部305に出力する。スタンド側制御部305は、各種入力信号に基づいて各種演算処理を実行するもので、CPU、およびROM、RAMといった記憶手段等からなる周知のマイクロコンピュータと、その周辺回路で構成されている。スタンド側制御部305は、スタンド側通信部304を介して受信した水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報に基づいて水素補給装置302を制御することにより、水素燃料車両100に対する水素供給を制御するように構成されている。
【0026】
図3は、車両側通信部200の斜視図である。図3(a)は、車両側通信部200から照射された赤外線がスタンド側通信部304に到達する状態を示し、図3(b)は、車両側通信部200から照射された赤外線がスタンド側通信部304に到達しない状態を示している。また、図3における破線は、車両側通信部200から照射された赤外線の進行方向を示している。
【0027】
図3に示すように、車両側通信部200には、筐体201が設けられている。筐体201におけるスタンド側通信部304に対向する上面部202は、透光性を有する材料から構成されている。また、図3は、水素供給ノズル303を補給口104に挿入した状態を示しており、図3における車両側通信部200の上面部202に対向してスタンド側通信部304が位置している。
【0028】
筐体201の内部には、発光素子203が設けられている。本実施形態では、発光素子203として、赤外線通信のための赤外線を発光可能な赤色LEDを用いている。発光素子203は、筐体201の1つの側面(図3における右側面)に向かって、赤外線を照射するように構成されている。
【0029】
筐体201における発光素子203から赤外線が照射される側面には、ガス反応部材204が設けられている。つまり、ガス反応部材204は車両側通信部200の一部として発光素子203と一体的に構成されている。ガス反応部材204は、水素の有無によって光の反射率(透過率)が変化する調光ミラーとして構成されている。本実施形態では、ガス反応部材204として、ニッケル−マグネシウム合金薄膜を用いている。ニッケル−マグネシウム合金薄膜は、水素と反応していない状態では金属光沢を有しており、水素と反応して水素を吸着すると、金属光沢を失い光を透過する状態となる。図3(a)に示す斜線が付された状態がガス反応部材204が金属光沢を有している状態を示し、図3(b)に示す斜線が付されていない状態がガス反応部材204が透光性を有している状態を示している。このように、ガス反応部材204は水素の有無によって反射率(透過率)が変化するので、ガス反応部材204の反射率(透過率)の変化に基づいて水素を検出することが可能となる。なお、ガス反応部材204が本発明の燃料ガス検出手段に相当している。
【0030】
また、発光素子203の発光方向とガス反応部材204の位置関係は、発光素子203から照射された光がガス反応部材204で反射した場合に、その反射光が筐体201の上面部202に向かうようになっている。このため、図3(a)に示すガス反応部材204が金属光沢を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204で反射し、筐体201の上面部202を透過して、スタンド側通信部304に到達する。一方、図3(b)に示すガス反応部材204が透光性を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱する。図示を省略しているが、スタンド側通信部304には、車両側通信部200の発光素子203から照射された赤外線を受光する受光部が設けられている。
【0031】
上記構成を有する車両側通信部200によれば、以下のように作動する。まず、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じていない場合には、ガス反応部材204が金属光沢を有する状態(図3(a))となり、発光素子203からの赤外線は、スタンド側通信部304に到達する。これにより、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信が可能となり、車両側通信部200から水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報がスタンド側通信部304に伝達され、さらにスタンド側制御部305に伝達される。スタンド側制御部305は、水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報に基づいて水素供給装置302の制御を行い、水素タンク101が水素で満タンになるまで水素供給装置302による水素の供給を行う。
【0032】
次に、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じている場合には、ガス反応部材204が透光性を有する状態(図3(b))となり、発光素子203からの赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱するため、スタンド側通信部304に到達しない。これにより、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信が不能となる。この結果、燃料供給ノズル303が補給口104に挿入されているにも関わらず、スタンド側制御部305には、車両側通信部200から圧力情報、温度情報、燃料残量情報が伝達されないこととなる。スタンド側制御部305は、燃料供給ノズル303が補給口104に挿入された状態で、車両側通信部200からの情報が伝達されない場合に、補給口104の近傍で水素漏洩が発生していることを判定することができる。スタンド側制御部305は、補給口104の近傍で水素漏洩が発生していると判定した場合には、水素供給装置302からの水素供給を停止する。
【0033】
以上説明した本実施形態によれば、水素の有無によって反射率(透過率)が変化するガス反応部材204を用いた車両側通信部200を用いることによって、ガス反応部材204の反射率(透過率)の変化に基づいて水素の有無を検出することができる。本実施形態では、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間の赤外線通信で用いられる赤外線の経路にガス反応部材204を配置している。このため、スタンド側制御部305は、スタンド側通信部304への赤外線の到達状態に基づいて、燃料供給ノズル303からの水素供給時における補給口104近傍での水素漏洩を認識することができ、水素供給装置302による水素供給を停止することができる。
【0034】
また、本実施形態では、ガス反応部材204は車両側通信部200の一部として発光素子203と一体的に構成されている。このため、車両側通信部200を大型化することなく、水素の漏洩を検出することが可能となる。
【0035】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態を図4に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態に比較して、車両側通信部200の構成が異なっている。以下、上記第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0036】
図4は、本第2実施形態の車両側通信部200の側面図である。図4(a)は、ガス反応部材204が光を透過しない状態を示し、図4(b)は、ガス反応部材204が光を透過する状態を示している。また、図4における破線は、発光素子203から照射された光の進行方向を示している。
【0037】
図4に示すように、本実施形態では、筐体201の下面部がガス反応部材204として構成されている。そして、本実施形態の発光素子203では、筐体201の下面部を構成するガス反応部材204に向かって赤外線が照射される。図4(a)に示すガス反応部材204が金属光沢を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204で反射し、筐体201の上面部202を透過して、スタンド側通信部304に到達する。一方、図4(b)に示すガス反応部材204が透光性を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱するため、スタンド側通信部304に到達しない。
【0038】
上記構成を有する本第2実施形態の車両側通信部200によっても、上記第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じていない場合には、ガス反応部材204が金属光沢を有する状態(図4(a))となる。この結果、発光素子203からの赤外線は、スタンド側通信部304に到達して、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信が可能となり、車両側通信部200から水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報がスタンド側通信部304に伝達され、さらにスタンド側制御部305に伝達される。
【0039】
また、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じている場合には、ガス反応部材204が透光性を有する状態(図4(b))となる。この結果、発光素子203からの赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱するため、スタンド側通信部304に到達しない。これにより、スタンド側制御部305は、補給口104の近傍で水素漏洩が発生していることを判定することができる。
【0040】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態を図5に基づいて説明する。本第3実施形態は、上記各実施形態に比較して、車両側通信部200の構成が異なっている。以下、上記各実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0041】
図5は、本第3実施形態の車両側通信部200の側面図である。図5(a)は、ガス反応部材204が光を透過しない状態を示し、図5(b)は、ガス反応部材204が光を透過する状態を示している。また、図5における破線は、発光素子203から照射された光の進行方向を示している。
【0042】
図5に示すように、本実施形態では、筐体201の側面部がガス反応部材204として構成されている。そして、発光素子203からガス反応部材204に向かって赤外線が照射される。また、本実施形態では、発光素子203とスタンド側通信部304とが直接対向しないように、上面部202の一部に遮光部205が設けられている。これにより、発光素子203から照射される赤外線は、遮光部205に遮られて、スタンド側通信部304に直接到達することがない。そして、図5(a)に示すガス反応部材204が金属光沢を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204で反射し、筐体201の上面部202を透過して、スタンド側通信部304に到達する。一方、図5(b)に示すガス反応部材204が透光性を有している状態では、発光素子203から照射された赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱するため、スタンド側通信部304に到達しない。
【0043】
上記構成を有する本第3実施形態の車両側通信部200によっても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じていない場合には、ガス反応部材204が金属光沢を有する状態(図5(a))となる。この結果、発光素子203からの赤外線は、スタンド側通信部304に到達して、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信が可能となり、車両側通信部200から水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報がスタンド側通信部304に伝達され、さらにスタンド側制御部305に伝達される。
【0044】
また、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じている場合には、ガス反応部材204が透光性を有する状態(図5(b))となる。この結果、発光素子203からの赤外線は、ガス反応部材204を透過若しくは散乱するため、スタンド側通信部304に到達しない。これにより、スタンド側制御部305は、補給口104の近傍で水素漏洩が発生していることを判定することができる。
【0045】
(他の実施形態)
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各請求項に記載した範囲を逸脱しない限り、各請求項の記載文言に限定されず、当業者がそれらから容易に置き換えられる範囲にも及び、かつ、当業者が通常有する知識に基づく改良を適宜付加することができる。
【0046】
例えば、上記各実施形態では、車両側通信部200に水素と反応して反射率(透過率)変化するガス反応部材204を設けたが、これに限らず、スタンド側通信部304にガス反応部材を設けてもよい。この場合、車両側通信部200では発光素子203から照射される光が直接スタンド側通信部304に到達するようにし、スタンド側通信部304では車両側通信部200の発光素子203から照射された光がガス反応部材に反射して受光素子に到達するようにすればよい。
【0047】
このような構成によれば、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じていない場合には、スタンド側通信部304に設けられたガス反応部材が金属光沢を有する状態となり、車両側通信部200の発光素子203からの赤外線は、スタンド側通信部304において、ガス反応部材で反射して受光素子に到達する。これにより、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信が可能となり、車両側通信部200から水素タンク101の圧力情報、温度情報、燃料残量情報がスタンド側通信部304に伝達され、さらにスタンド側制御部305に伝達される。
【0048】
一方、燃料供給ノズル303から補給口104を介して水素タンク101に水素を供給する際に、補給口104の近傍で水素の漏洩が生じている場合には、スタンド側通信部304に設けられたガス反応部材が透光性を有する状態となり、車両側通信部200の発光素子203からの赤外線は、スタンド側通信部304において、ガス反応部材で透過若しくは散乱し、受光素子に到達しない。これにより、スタンド側制御部305は、補給口104の近傍で水素漏洩が発生していることを判定することができる。
【0049】
また、上記各実施形態では、ガス反応部材204としてマグネシウム−ニッケル合金薄膜を用いたが、これに限らず、水素と反応して反射率(透光率)が変化する材料であればガス反応部材として異なる材料を用いることができる。例えば、マグネシウム−ニッケル合金薄膜は、水素と反応していない場合に金属光沢を有し、水素と反応した場合に透光性を有するという特性を有しているが、水素と反応していない場合に透光性を有し、水素と反応した場合に金属光沢を有する材料を用いてもよい。
【0050】
また、上記各実施形態では、水素と反応して反射率(透過率)が変化するガス反応部材を用いて水素の漏洩を検出可能としたが、これに限らず、水素以外のガスと反応して反射率(透過率)が変化するガス反応部材を用いてもよい。この場合には、ガス反応部材と反応するガス燃料の漏洩を検出することが可能となる。
【0051】
また、上記各実施形態では、車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で赤外線通信を行うように構成したが、これに限らず、赤外線以外の光線を車両側通信部200とスタンド側通信部304との間で通信に用いてもよく、ガス反応部材の反射率(透過率)の変化によって、ガス反応部材での反射状態が変化する光線であればよい。
【符号の説明】
【0052】
100 水素燃料車両
101 水素タンク
102 圧力センサ
103 温度センサ
104 補給口
105 車両制御部
200 車両側通信部(送信部)
203 ガス反応部材(燃料ガス検出手段)
204 発光素子
300 燃料補給スタンド
301 水素貯蔵タンク
302 水素補給装置
303 水素供給ノズル
304 スタンド側通信部(受信部)
305 スタンド側制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスが充填される燃料タンク(101)を備える車両(100)に設けられた通信部(200)から、前記燃料タンク(101)に燃料ガスを供給する燃料供給スタンド(300)に設けられた通信部(304)に、前記燃料タンク(101)内における燃料ガスの状態を示す情報を送信する通信装置であって、
前記車両に設けられた通信部(200)あるいは前記燃料供給スタンド(300)に設けられた通信部(304)の少なくとも一方の近傍に、前記燃料供給スタンド(300)から前記燃料タンク(101)に燃料ガスを供給する際における燃料ガスの漏洩を検出する燃料ガス検出手段(204)が設けられていることを特徴とする通信装置。
【請求項2】
前記燃料ガスは水素であることを特徴とする請求項1の通信装置。
【請求項3】
前記車両に設けられた通信部(200)と前記燃料供給スタンド(300)に設けられた通信部(304)との間の通信は、光を搬送波として用いる光無線通信によって行われ、
前記燃料ガス検出手段(204)は、水素と反応して光の反射率が変化する材料から構成されているとともに、前記車両に設けられた通信部(200)と前記燃料供給スタンド(300)に設けられた通信部(304)との間における前記搬送波の経路に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記搬送波として用いる光は、赤外線であることを特徴とする請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記燃料ガス検出手段(204)は、マグネシウム−ニッケル合金薄膜から構成されていることを特徴とする請求項2ないし4のいずれか1つに記載の通信装置。
【請求項6】
前記燃料ガス検出手段(204)は、前記車両に設けられた通信部(200)もしくは燃料供給スタンド(300)に設けられた通信部(304)に一体的に設けられていることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96528(P2013−96528A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241219(P2011−241219)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】