説明

通報装置およびエレベータ遠隔監視システム

【課題】エレベータ遠隔監視システムにおいて、通信の途切れが発生しても、復旧後すぐにリアルタイムな通話を再開できるようにする。
【解決手段】エレベータかご120内の乗客と監視センター150の監視員との通話音声は音声パケット192により電話網140を介して送受信される。インターホン121への乗客の音声はVoIP処理部132により音声データとして音声パケット192に設定され、データ通信処理部133によりモデム134から監視センター150に送信される。データ通信処理部133は、監視センター150から音声パケット192を所定の時間受信しない場合、電話網140で通信の途切れが発生していると判断し、音声パケット192をモデム134に出力せずに破棄する。これにより、データ通信処理部133は、通信の途切れの復旧時に、即座にリアルタイムの音声パケット192をモデム134に送信させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声通信を行う通報装置およびエレベータ遠隔監視システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
監視センターからエレベータを遠隔監視するエレベータ遠隔監視システムでは、エレベータが停止してエレベータかご内に乗客が閉じ込められる閉じ込め事故が発生した場合、エレベータかご内のインターホンと監視センターのIP電話機(IP:Internet Protocol)との間で、エレベータかご内の乗客と監視センターの監視員との通話が行われている。
乗客や監視員の音声は、音声データに変換され、電話回線や無線網などの低速回線(データ通信速度:9.6K〜64Kbps程度)(通信網の一例)を経由して音声パケット(IPパケット)として送受信される。
IPパケットを用いた音声通信の技術を「VoIP(Voice over Internet Protocol)」という。
【0003】
一般に、VoIP技術によりデジタルデータ化・パケット化された通話音声(以下、音声パケットという)は、正常な通話の維持のため、一定間隔で送信されなければならない。音声パケットの到達が遅れた場合、その間は音声再生ができず、音声の途切れが発生する。
【0004】
一方、電話回線や無線網などの通信網での通信は、通信路のノイズや基地局の使用状況によって通信の途切れが発生する。
通信の途切れが発生した場合、音声パケットは相手側に受信されず送信が完了しないため通信機器(モデム、PHS[登録商標])により再送処理が繰り返され、再送処理が繰り返されている間、乗客と監視員との通話音声は順次、音声パケットとして蓄積される。
そして、通信の途切れが復旧した時、再送・蓄積されている古い音声パケットが順に送信され、相手側に受信される。この間の乗客と監視員との通話音声もまた、蓄積され、古い音声パケットとして送信される。また、VoIPでは、古い音声パケットは所定の条件により受信側で再生されることなく破棄される。
このため、通信の途切れが復旧しても、古い音声パケットの送信が完了するまで、新しい音声パケットをリアルタイムに送信することはできない。つまり、通信の途切れが復旧しても、乗客と監視員とが正常に通話を再開できるまでに時間がかかってしまう。
エレベータ遠隔監視システムを含め、VoIPを利用する音声通信システムでは、通信網に通信の途切れが発生し、その後復旧したときに、早期にリアルタイムな通話が再開されることが望まれる。
【特許文献1】特開2008−105851号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、例えば、VoIPを利用する音声通信システム(例えば、エレベータ遠隔監視システム)において、通信の途切れが発生しても、復旧後すぐにリアルタイムな通話を再開できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の通報装置は、音声データが含まれる音声パケットを通信網を介して特定の通信装置に送信する通報装置であり、マイクロホンから音声信号を入力し、入力した音声信号を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケットを生成する音声入力部と、前記通信網に通信遅延が発生しているか判定する通信判定部と、前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していないと判定された場合、前記音声入力部により生成された音声パケットを前記通信網を介して前記特定の通信装置に送信し、前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していると判定された場合、前記音声入力部により生成された音声パケットを破棄する音声送信部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、VoIPを利用する音声通信システム(例えば、エレベータ遠隔監視システム)において、通信の途切れが発生しても、その間に音声パケットが蓄積されないため、復旧後すぐにリアルタイムな通話を再開させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視システム100の構成図である。
実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視システム100の構成について、図1に基づいて以下に説明する。
【0009】
エレベータ遠隔監視システム100は、遠隔地にある監視センター150において各地の複数の建物それぞれに設置されているエレベータを監視するシステムである。
各建物のエレベータ制御装置110により検出されたエレベータの異常は、通報装置130により監視センター150に通知される。このとき、エレベータかご120内の乗客は、エレベータかご120内に取り付けられているインターホン121を用いて監視センター150の監視員と通話することができる。
乗客と監視員との通話の音声信号191は、音声データとして音声パケット(IPパケット)に含まれ、VoIPにより電話網140を介して送受信される。
エレベータ遠隔監視システム100は、VoIPを利用して音声通信が行われる音声通信システムの一例である。
【0010】
エレベータかご120内には、乗客が監視センター150の監視員を呼び出す際に押下される呼出ボタン122と乗客が監視センター150の監視員と通話する際に利用するインターホン121とが設置されている。
インターホン121は、乗客の通話音声を入力して音声信号191として出力するマイクロホン(以下、マイクという)と監視員の通話音声を出力するスピーカーとを備える。
【0011】
エレベータ制御装置110は、エレベータかご120を制御する装置である。
例えば、エレベータ制御装置110はエレベータかご120を昇降させる。また例えば、エレベータ制御装置110は、エレベータ装置(エレベータかご120を含む)に取り付けられている各種センサの計測値に基づいて、エレベータかご120の昇降途中での停止やエレベータかご120のドアの故障など、エレベータ装置の各種異常を検出する。そして、エレベータ制御装置110は、検出した異常を示す異常通知193(信号、データ)を通報装置130に出力する。また、エレベータ制御装置110は、エレベータかご120内の呼出ボタン122が押下され、呼出信号195の入力があったとき、呼出ボタン122の押下を示す異常通知193を通報装置130に出力する。
【0012】
通報装置130は、異常受信処理部131、VoIP処理部132およびデータ通信処理部133を備え、エレベータかご120内の乗客と監視センター150の監視員との通話音声を音声パケット192で送受信する。
【0013】
異常受信処理部131は、エレベータ制御装置110から出力された異常通知193を入力し、入力した異常通知193の内容を含んだ異常通知パケット194(IPパケット)を生成し、生成した異常通知パケット194をデータ通信処理部133に出力する。
【0014】
VoIP処理部132(音声入力部の一例)は、インターホン121から出力された乗客の音声信号191を入力し、入力した音声信号191を音声データ(デジタルデータ)に変換し、音声データを含んだ音声パケット192を生成し、生成した音声パケット192をデータ通信処理部133に出力する。
また、VoIP処理部132は、監視センター150から送信され、モデム134により受信され、データ通信処理部133から出力された監視員の音声データを含んだ音声パケット192を入力する。そして、VoIP処理部132は、入力した音声パケット192に含まれる音声データを音声信号191に変換し、音声信号191をインターホン121に出力する。
【0015】
データ通信処理部133(音声送信部、音声受信部、通信判定部の一例)は、異常受信処理部131から出力された異常通知パケット194およびVoIP処理部132から出力された音声パケット192を入力し、入力した異常通知パケット194および音声パケット192をモデム134に出力し、電話網140(電話回線、無線網ともいう)を介して監視センター150に送信する。
また、データ通信処理部133は、監視センター150から電話網140を介して送信された音声パケット192をモデム134から入力し、入力した音声パケット192をVoIP処理部132に出力する。
【0016】
モデム134は、電話網140を通信網とするデータ通信に用いられる通信機器の一例であり、送信データ(例えば、音声パケット192)をデジタル信号からアナログ信号に変調して電話網140に送出し、電話網140からの受信データ(例えば、音声パケット192)をアナログ信号からデジタル信号に復調する。モデム134の代わりに、例えば、PHS(登録商標)が用いられてもよい。
【0017】
電話網140は音声パケット192が送受信される通信網の一例であり、電話網140の代わりにインターネットやLANなど、その他の通信網が用いられてもよい。
【0018】
監視センター150は、通信装置151、集中監視装置152およびIP電話機153を備え、複数の建物それぞれのエレベータを集中監視すると共にエレベータの異常発生時にエレベータかご120内の乗客と監視センター150の監視員との通話音声を音声パケット192により送受信する。
【0019】
通信装置151は、電話網140を通信網としてデータ通信を行う。
例えば、通信装置151は、通報装置130から送信された異常通知パケット194および音声パケット192を電話網140を介して受信し、受信した異常通知パケット194を集中監視装置152に出力し、受信した音声パケット192をIP電話機153に出力する。
また例えば、通信装置151は、監視員の音声データを含んだ音声パケット192をIP電話機153から入力し、入力した音声パケット192を電話網140を介して通報装置130に送信する。
【0020】
集中監視装置152は、ディスプレイ装置、キーボード、マウスなどを備えたコンピュータであり、監視員により利用される。
例えば、集中監視装置152は、通信装置151から異常通知パケット194が入力されたとき、ディスプレイ装置へのメッセージ出力、LEDの点灯、警告音出力などにより、エレベータの異常の発生を監視員に知らせる。
【0021】
IP電話機153(特定の通信装置、特定受信部、特定出力部の一例)は、マイク、スピーカーおよびVoIP処理部を備え、VoIPを利用して音声通話を行う電話機である。
例えば、IP電話機153のVoIP処理部は、監視員の通話音声をマイクにより音声信号として入力し、入力した音声信号を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケット192を生成し、生成した音声パケット192を通信装置151に出力する。
また例えば、IP電話機153のVoIP処理部は、通信装置151から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192に含まれる音声データを音声信号に変換し、スピーカーから乗客の通話音声を出力する。
【0022】
エレベータ遠隔監視システム100を構成する各装置(IP電話機153を含む)は、CPUおよび記憶機器(例えば、磁気ディスク装置、半導体メモリ)を備え、実施の形態において説明するそれぞれの処理をCPUおよび記憶機器を用いて実行する。各装置の記憶機器には、音声信号191、音声パケット192、異常通知193、異常通知パケット194など、各装置の処理で使用される各種データが記憶される。OSと実施の形態において説明する各装置および各部(「〜部」)の処理方法を示すプログラムとは記憶機器に記憶され、各プログラムはCPUおよびOSにより実行される。
【0023】
図2は、実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視方法を示すフローチャートである。
実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視方法について、図2に基づいて以下に説明する。
【0024】
<S110:異常検出処理>
エレベータ制御装置110は、エレベータかご120が停止してエレベータかご120内に乗客が閉じ込められる閉じ込め事故を検出する。
例えば、エレベータ制御装置110は、エレベータ装置に取り付けられている各種センサの計測値に基づいて閉じ込め事故を検出する。
また例えば、エレベータ制御装置110は、エレベータかご120内の乗客が呼出ボタン122を押下したとき、呼出ボタン122からの呼出信号195の入力を閉じ込め事故として検出する。
【0025】
<S120:異常出力処理>
閉じ込め事故を検出したエレベータ制御装置110は、閉じ込め事故が発生したことを示す異常通知193を通報装置130に出力する。
【0026】
<S130:異常通知処理>
通報装置130の異常受信処理部131は、エレベータ制御装置110から出力された異常通知193を入力し、入力した異常通知193の内容を含んだ異常通知パケット194を生成し、生成した異常通知パケット194をデータ通信処理部133に出力する。
データ通信処理部133は、異常受信処理部131から出力された異常通知パケット194を入力し、入力した異常通知パケット194をモデム134に出力する。
モデム134は、データ通信処理部133から出力された異常通知パケット194をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換した異常通知パケット194を電話網140を介して監視センター150に送信する。
【0027】
<S140:回線接続処理>
監視センター150の通信装置151は、通報装置130のモデム134から送信された異常通知パケット194を電話網140を介して受信し、受信した異常通知パケット194をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した異常通知パケット194を集中監視装置152に出力する。
集中監視装置152は、通信装置151から異常通知パケット194が入力されたとき、ディスプレイ装置へのメッセージ出力、LEDの点灯、警告音出力などにより、閉じ込め事故の発生を監視員に知らせる。
閉じ込め事故の発生を知った監視員は、IP電話機153を操作して、閉じ込め事故が発生したエレベータかご120に設置されているインターホン121と電話回線を接続する(インターホン121に電話をかける)。
IP電話機153は、監視員による操作に応じて、閉じ込め事故が発生したエレベータかご120に設置されているインターホン121に対して電話網140を介して発呼する。IP電話機153からの発呼は電話網140を介してエレベータかご120のインターホン121に着呼し、監視センター150のIP電話機153とエレベータかご120のインターホン121との間で呼が確立する。呼の確立により、監視センター150のIP電話機153とエレベータかご120のインターホン121との間で電話回線が接続される(電話回線が繋がる)。
【0028】
<S150:音声通信処理>
電話回線の接続後、監視員はIP電話機153を用いてエレベータかご120内の乗客と通話する。
【0029】
IP電話機153のVoIP処理部は、監視員の通話音声をマイクにより音声信号として入力し、入力した音声信号を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケット192を生成し、生成した音声パケット192を通信装置151に出力する。
通信装置151は、IP電話機153から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換した音声パケット192を電話網140を介して通報装置130に送信する。
通報装置130のモデム134は、監視センター150の通信装置151から送信された音声パケット192を電話網140を介して受信し、受信した音声パケット192をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した音声パケット192をデータ通信処理部133に出力する。
データ通信処理部133は、モデム134から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192をVoIP処理部132に出力する。
VoIP処理部132は、データ通信処理部133から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192に含まれる音声データを音声信号191に変換し、音声信号191をエレベータかご120のインターホン121に出力する。
インターホン121は、VoIP処理部132から出力された音声信号191を入力し、入力した音声信号191(監視員の音声信号191)に基づいて、スピーカーから監視員の通話音声を出力する。
【0030】
エレベータかご120のインターホン121は、乗客の通話音声をマイクにより音声信号191として入力し、入力した音声信号191をVoIP処理部132に出力する。
VoIP処理部132は、エレベータかご120のインターホン121から出力された音声信号191を入力し、入力した音声信号191を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケット192を生成し、生成した音声パケット192をデータ通信処理部133に出力する。
データ通信処理部133は、VoIP処理部132から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192をモデム134に出力する。
モデム134は、データ通信処理部133から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192をデジタル信号からアナログ信号に変換し、アナログ信号に変換した音声パケット192を電話網140を介して監視センター150に送信する。
監視センター150の通信装置151は、通報装置130のモデム134から送信された音声パケット192を電話網140を介して受信し、受信した音声パケット192をアナログ信号からデジタル信号に変換し、デジタル信号に変換した音声パケット192をIP電話機153に出力する。
IP電話機153のVoIP処理部は、通信装置151から出力された音声パケット192を入力し、入力した音声パケット192に含まれる音声データを音声信号に変換し、スピーカーから乗客の通話音声を出力する。
【0031】
<S160:回線切断処理>
エレベータかご120内の乗客との通話の終了後、監視センター150の監視員は、IP電話機153を操作してエレベータかご120のインターホン121との電話回線を切断する(電話を切る)。
IP電話機153は、監視員の操作に応じて、エレベータかご120のインターホン121との間で確立している呼を解放する。呼の解放により、監視センター150のIP電話機153とエレベータかご120のインターホン121との間で電話回線が切断される。
【0032】
以上の処理により、エレベータの閉じ込め事故の発生時に、監視センター150の監視員とエレベータかご120内の乗客とが連絡を取ることができる。
【0033】
図3は、実施の形態1における音声通信方法を示すフローチャートである。
前述したエレベータ遠隔監視方法の音声通信処理(S150)において通報装置130が音声パケット192を送受信する音声通信方法について、図3に基づいて以下に説明する。
通報装置130の各部は、以下に説明する各処理をCPUを用いて実行する。
【0034】
<S210>
まず、データ通信処理部133は、音声送信フラグに“送信許可”を示す所定値(以下、“送信許可”とする)を初期値として設定する。音声送信フラグは通報装置130の記憶機器に記憶される。
音声送信フラグには、電話網140に通信遅延が発生していないときには“送信許可”が設定され(後述するS221)、電話網140に通信遅延が発生しているときには“送信不許可(所定値)”が設定される(後述するS231)。
音声送信フラグに“送信許可”が設定されている場合、VoIP処理部132により生成された音声パケット192がデータ通信処理部133からモデム134に出力され、モデム134から電話網140を介して監視センター150に送信される(後述するS251)。
音声送信フラグに“送信不許可”が設定されている場合、VoIP処理部132により生成された音声パケット192がデータ通信処理部133により破棄される(後述するS252)。
電話網140での通信遅延は、電話網140に生じたノイズの影響により誤りが発生したデータの通信エラー、データを中継する基地局装置の過負荷、電話網140を介して送受信されるデータ量の増大などの影響により発生する。電話網140にデータの通信遅延が発生することにより、音声パケット192は一定間隔で通信されず、VoIPを使用して行われる通話中、音声の途切れが生じる。
S210の後、処理はS220に進む。
【0035】
<S220>
S210の後、データ通信処理部133は、モデム134から音声パケット192が入力されたか、つまり、モデム134が音声パケット192を受信したか判定する。
モデム134が音声パケット192を受信した場合(YES)、データ通信処理部133は音声パケット192の受信時刻を記憶機器に記憶し、処理はS221に進む。
また、モデム134が音声パケット192を受信していない場合(NO)、処理はS230に進む。
【0036】
<S221>
S220においてモデム134が音声パケット192を受信した場合(YES)、データ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生していないと判定し、音声送信フラグに“送信許可”を設定する。
S221の後、処理はS222に進む。
【0037】
<S222>
S221の後、データ通信処理部133は、モデム134から入力された音声パケット192をVoIP処理部132に出力する。
VoIP処理部132は、データ通信処理部133から入力された音声パケット192に含まれる音声データを音声信号191に変換し、音声信号191をインターホン121に出力してインターホン121に通話音声を出力させる。
S222の後、処理はS240に進む。
【0038】
<S230>
S220においてモデム134が音声パケット192を受信していない場合(NO)、データ通信処理部133は、前回の音声パケット192の受信時から所定の時間経過したか判定する。
前回の音声パケット192の受信時から所定の時間経過した場合(YES)、処理はS231に進み、前回の音声パケット192の受信時から所定の時間経過していない場合(NO)、処理はS240に進む。
【0039】
<S231>
S230において前回の音声パケット192の受信時から所定の時間経過した場合(YES)、データ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生していると判定し、音声送信フラグに“送信不許可”を示す所定値(以下、“送信不許可”とする)を設定する。
S231の後、処理はS240に進む。
【0040】
<S240>
S222、S230またはS231の後、VoIP処理部132は、インターホン121から音声信号191が入力されたか、つまり、インターホン121への通話音声の入力が有るか判定する。
インターホン121への通話音声の入力が有る場合(YES)、処理はS241に進み、インターホン121への通話音声の入力が無い場合(NO)、処理はS220に戻る。
【0041】
<S241>
S240においてインターホン121への通話音声の入力が有る場合(YES)、VoIP処理部132は、インターホン121から入力された音声信号191を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケット192を生成し、生成した音声パケット192をデータ通信処理部133に出力する。
S241の後、処理はS250に進む。
【0042】
<S250>
S241においてVoIP処理部132から音声パケット192が入力されたデータ通信処理部133は、音声送信フラグが“送信許可”を示すか判定する。
音声送信フラグが“送信許可”を示す場合(YES)、処理はS251に進み、音声送信フラグが“送信不許可”を示す場合(NO)、処理はS252に進む。
【0043】
<S251>
S250において音声送信フラグが“送信許可”を示す場合(YES)、データ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生していないと判定し、音声パケット192をモデム134に出力する。音声パケット192はモデム134により電話網140を介して監視センター150に送信される。
S251の後、処理はS220に戻る。
【0044】
<S252>
S250において音声送信フラグが“送信不許可”を示す場合(NO)、データ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生していると判定し、音声パケット192をモデム134に出力せずに破棄する。
S252の後、処理はS220に戻る。
【0045】
以上の音声通信方法では、電話網140に通信遅延が発生している場合(音声送信フラグ=“送信不許可”)、音声パケット192がモデム134に出力されず、破棄されている(S252)。
これにより、電話網140に通信遅延が発生している間に、モデム134に音声パケット192が記憶機器に待ち行列として蓄積されることを防ぐことができる。
従って、電話網140に生じた通信遅延の解消時にはモデム134には音声パケット192が蓄積されておらず、通信遅延の解消後にインターホン121に入力された通話音声の音声パケット192はモデム134により即時に送信される。
つまり、通報装置130のデータ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生している間、生成された音声パケット192を破棄し続けることにより、電話網140に生じた通信遅延の解消後、すぐに、音声パケット192をリアルタイムに送信し、リアルタイムの通話を再開させることができる。
【0046】
上記の音声通信方法では、データ通信処理部133は、音声パケット192の受信が所定時間以上無いことを電話網140の通信遅延として検出している(S230)。S230において、音声パケット192には、通報装置130から送信された音声パケット192を受信したことを示す応答パケット(ACK)(音声データを含まないもの)を含むものとする。また、電話網140の通信遅延の検出方法は、これに限らない。
例えば、モデム134は送信先が通報装置130でないデータも受信してデータ通信処理部133に出力する。そして、データ通信処理部133は、上記のS230の代わりに、送信先が通報装置130でないデータも含めて、モデム134により所定時間以上、データが受信されていないことを電話網140の通信遅延として検出してもよい。
また例えば、データ通信処理部133は、上記のS230の代わりに、モデム134による音声パケット192の再送処理の回数が単位時間当たり又は同一の音声パケット192に対して所定数以上行われたことを電話網140の通信遅延として検出してもよい。
【0047】
また、上記の音声通信方法では、VoIP処理部132が音声パケット192を生成した後に、データ通信処理部133が電話網140に通信遅延が発生しているか判定し(S250)、電話網140に通信遅延が発生している場合に音声パケット192を破棄している(S252)。但し、処理順序はこれに限らない。
【0048】
図4は、実施の形態1における音声通信方法を示す第2のフローチャートである。
図4に示すように、VoIP処理部132は、S241における音声パケット192の生成前に、電話網140に通信遅延が発生しているか判定し(S250)、電話網140に通信遅延が発生していない場合(YES)にのみ音声パケット192を生成してもよい(S241)。
データ通信処理部133は、電話網140に通信遅延が発生しているかの判定(S250)を行わず、VoIP処理部132から入力された全ての音声パケット192をモデム134に出力して送信する(S251)。
【0049】
VoIP処理部132は、電話網140に通信遅延が発生している場合(NO)、インターホン121から入力された音声信号191を破棄し、音声パケット192を生成しない。処理はS220に戻る。
【0050】
また、監視センター150の通信装置151およびIP電話機153は、通報装置130と同様に、電話網140に通信遅延が発生しているか判定し、電話網140に通信遅延が発生していない場合にのみ音声パケット192の送信を行う。また、監視センター150の通信装置151およびIP電話機153は、電話網140に通信遅延が発生している場合には音声パケット192を送信も蓄積もせずに破棄し、または、音声パケット192を生成しない。
例えば、IP電話機153は通報装置130と同様にVoIP処理部132およびデータ通信処理部133を備え、通信装置151はモデム134として動作する。つまり、IP電話機153は通報装置の一例である。
また例えば、IP電話機153はVoIP処理部132を備え、通信装置151はデータ通信処理部133およびモデム134を備える。つまり、IP電話機153おおび通信装置151は通報装置の一例である。
【0051】
実施の形態1では、以下のようなエレベータ遠隔監視システム100について説明した。
音声パケット192を相互の機器(モデム134および通信装置151)にて一定間隔で送信している状態で、相手からの音声パケット192を一定時間受信しないことを検出したら、通信の途切れが発生したと判断し、音声パケット192の送信を一時的に停止する。
この手段により、電話回線や無線網のように、通信路のノイズや基地局の使用状況により通信の途切れが発生しうる回線を使用する場合でも、通信の途切れを検出したら、音声パケット192の送信を停止することで、通信路上の機器(モデム、PHS[登録商標]など)に古い音声パケット192が蓄積されることがなくなる。そして、通信の途切れが復旧したとき、即座にリアルタイムな音声パケット192の通信が可能になり、結果、早期に正常な通話の再開が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視システム100の構成図。
【図2】実施の形態1におけるエレベータ遠隔監視方法を示すフローチャート。
【図3】実施の形態1における音声通信方法を示すフローチャート。
【図4】実施の形態1における音声通信方法を示す第2のフローチャート。
【符号の説明】
【0053】
100 エレベータ遠隔監視システム、110 エレベータ制御装置、120 エレベータかご、121 インターホン、122 呼出ボタン、130 通報装置、131 異常受信処理部、132 VoIP処理部、133 データ通信処理部、134 モデム、140 電話網、150 監視センター、151 通信装置、152 集中監視装置、153 IP電話機、191 音声信号、192 音声パケット、193 異常通知、194 異常通知パケット、195 呼出信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声データが含まれる音声パケットを通信網を介して特定の通信装置に送信する通報装置であり、
マイクロホンから音声信号を入力し、入力した音声信号を音声データに変換し、音声データを含んだ音声パケットを生成する音声入力部と、
前記通信網に通信遅延が発生しているか判定する通信判定部と、
前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していないと判定された場合、前記音声入力部により生成された音声パケットを前記通信網を介して前記特定の通信装置に送信し、前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していると判定された場合、前記音声入力部により生成された音声パケットを破棄する音声送信部と
を備えたことを特徴とする通報装置。
【請求項2】
音声データが含まれる音声パケットを通信網を介して特定の通信装置に送信する通報装置であり、
前記通信網に通信遅延が発生しているか判定する通信判定部と、
マイクロホンから音声信号を入力し、前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していないと判定された場合、入力した音声信号を音声データに変換すると共に音声データを含んだ音声パケットを生成し、前記通信判定部により前記通信網に通信遅延が発生していると判定された場合、入力した音声信号を破棄する音声入力部と、
前記音声入力部により生成された音声パケットを前記通信網を介して前記特定の通信装置に送信する音声送信部と
を備えたことを特徴とする通報装置。
【請求項3】
前記通報装置は、さらに、
前記特定の通信装置により前記通信網を介して送信された音声パケットを受信する音声受信部を備え、
前記通信判定部は、
前記音声受信部による音声パケットの受信が所定の時間以上無かった場合に、前記通信網に通信遅延が発生していると判定する
ことを特徴とする請求項1〜請求項2いずれかに記載の通報装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3いずれかに記載の前記通報装置と、
前記特定の通信装置とを有し、
前記特定の通信装置は、
前記通報装置により送信された音声パケットを前記通信網を介して受信する特定受信部と、
前記特定受信部により受信された音声パケットに基づいてスピーカーから音声を出力する特定出力部と
を備え、
前記通報装置において、
前記音声入力部は、エレベータかご内に設置されるマイクロホンから前記エレベータかご内の乗客の音声を前記音声信号として入力する
ことを特徴とするエレベータ遠隔監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−284254(P2009−284254A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−134622(P2008−134622)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】