説明

通気管接続用の管継手

【課題】管継手の本管部と枝管部の継手構造が極めてコンパクトで逆流防止機能付きの通気管接続用の管継手を提供することを目的とする。
【解決手段】両端に上流側排水管接続口と下流側排水管接続口とを備える本管部と、通気管接続口を備え、前記本管部の管軸に対し直交する平面であって該平面に対し平行に延びており、かつ、前記本管部と流体連通にある枝管部を含み、前記枝管部の内径は、前記本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内にあり、かつ、前記枝管部の内部管底は、前記本管部の内径に対し60%以上の高さの位置において、前記本管部の内壁面から外方へ向けて水平に延びていることを特徴とする通気管接続用の管継手を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、戸建て住宅や多層階の集合住宅の屋内排水管に接続される通気管接続用の管継手(及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁)に関し、特に、床下などの狭小スペースの中で横引きされた排水管から分岐して通気管を接続しなければならない場合に極めて有効な省スペース型の通気管接続用の管継手(及び/又は通気弁)に関する。
【背景技術】
【0002】
戸建て住宅や多層階の集合住宅において屋内排水管を配管する場合、一般的には、空気を取り込むことにより排水の流れをスムーズにするための通気管が排水管の経路中に接続される。また、流し台、洗面台、トイレなどの排水設備の下流側には、通常、臭気等の流入を防止するための排水トラップが設けられているため、通気管は、排水トラップ内の封水が排水のサイフォン効果等より吸引されないように排水トラップの近くに接続されることが好ましい。
【0003】
ところで、近年では、従来の固定観念にとらわれないデザインや機能性を重視した外観や室内レイアウト有する戸建て住宅およびマンション等が増えてきている。また、都市部においては、土地の有効活用等を目的とした戸建て住宅の多層化や、マンション等の集合住宅の高層化が進んでいる。
【0004】
このような背景の中、近年では排水設備・排水管においても、流し台、洗面台、トイレ等の自由なレイアウトを許容しながら、限られた空間を効率良く利用することが求められている。特に、多層化が進んだ集合住宅等においては、室内に配置された流し台等の排水設備と、上下階を結ぶために外壁近くに配管された排水管とを接続する必要があるため、横引きされた排水管を多用して狭小な床下スペースを有効利用することが重要である。このため、従来から、省スペース化を実現するためのコンパクトな配管構造やこれに使用されるコンパクトな管継手などが提案されてきた。
【0005】
例えば、特開2002−309639号公報では、トイレ等の排水設備とフレキシブルな通気管を建物の外壁と内壁の間に縦引きされた排水管へ直接接続することにより、本質的に床下配管を必要としない配管構造が提案されている。しかしながら、この配管構造では、トイレ等のあらゆる排水設備を縦引きされた排水管、すなわち建物の外壁から離して室内に自由にレイアウトできないという不都合を生じる。
【0006】
また、床下を利用した配管構造として、特開2000−74260号公報では、横引きされた排水管の排水が通気管へ流れ込むことがないようにした管継手を有する配管構造が示されており、特開2004−84212号公報では、ポンプ圧送により床下排水管の小径化、無勾配化を図り、床下排水管の省スペース化を実現した配管構造が示されている。
【0007】
しかしながら、前者の場合、通気管を接続するための管継手は、横引きされた排水管の末端部、すなわち、上下階を結ぶ縦引きされた配管との接続点に設置しなければならないという設計及び施工上の制約があり、さらに、この管継手は高さ方向にはコンパクトな構造でないため、特に、高さ方向に余裕のない床下スペースでは、事実上設置できないという問題があった。また、後者の場合は、圧送ポンプの設置により配管構造が複雑となり、ポンプのメンテナンスや信頼性が問題となる他、狭小スペースの中で通気管を分岐するための特別な配慮がなされていないため、通気管を分岐するためには、従来どおりの管継手や工法を用いて床下に比較的大きなスペースを確保しなければならないという問題があった。
【0008】
さらに、通気管を接続するためには、横引きされた排水管の途中に特開2001−165380号公報および特開2003−240181号公報に示されるような後付けタイプの分岐用管継手を取り付けたり、あるいは、特開2005−113419号公報に示されるような、本管部に対して偏心させた小径の枝管部が予め分岐されている分岐用管継手を利用することも考えられる。しかしながら、いずれの管継手の場合も、本管部および枝管部を排水管として使用して管継手の中で合流させることを前提に設計されているため、枝管部を空気しか流れない通気管として使用する場合は、分岐部において枝管部の内部管底の高さが本管部の内径に対して十分でない場合がある。
【0009】
すなわち、本管部および枝管部の両者を排水管として使用する場合は、枝管部の内部管底の高さを本管部の内径の半分程度の高さに設定し、多少、本管部から排水が逆流してくるのを許容する構造を採用しても、枝管部から流出する排水のカウンターフローにより、排水の逆流を阻止したり管内に残った異物を洗い流すことができる。しかし、枝管部を通気管として使用する場合は、枝管部の中に本管部から流入してくる排水を押し返す流体が一切存在しないため、排水が逆流したり、逆流してくる排水の中に含まれる異物等の堆積により配管詰まりを生ずるおそれがある。
【0010】
また、特開2005−113419号公報に示される分岐用管継手の場合、管継手の枝管部の内径は、本管部の内径に対し約40%未満に抑えたもの(呼び径50の排水管に対し、呼び径20又は25の分岐管が接続される)を用いて、管継手の枝管部の管頂が本管部の管頂を越えないように配置することにより、管継手の高さ方向の省スペース化を図ることが前提となっている。このため、種々の要因により、本管部の内径に対して40%以上の内径を有する通気管の接続が必要となる排水系統においては、このタイプの分岐用管継手を使用することができないという問題があった。
【0011】
さらに、特開2001−165380号公報および特開2003−240181号公報に示されるような後付けタイプの分岐用管継手の場合は、施工後の管継手取付け部の高さが大幅に拡大されるため、これに応じて、予め大きな床下スペースを確保しておかなければならないという不都合があり、また、この管継手は後付けタイプであるため、実際には、床下の限られたスペースの中で排水管を加工し、かつ、管継手を取り付けることは極めて困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開2002−309639号公報
【特許文献2】特開2000−74260号公報
【特許文献3】特開2004−84212号公報
【特許文献4】特開2001−165380号公報
【特許文献5】特開2003−240181号公報
【特許文献6】特開2005−113419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
そこで、本発明は上記の問題点に鑑み、通気管の内径が本管の内径に対して40%を超えるものであっても、床下などの狭小スペースにおいて横引きされた排水管から通気管の分岐を可能とする、本管部と枝管部の継手構造が極めてコンパクトで、かつ、本管部から枝管部への排水の逆流が防止される通気管接続用の管継手を提供することを目的とする。また、漏水防止のため、通気管の末端部を外壁等に沿って立ち上げる必要がなく、かつ、分岐された通気管にも殆ど勾配を設ける必要がなく排水設備近傍に接続可能な通気管接続用の管継手及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、床下のような狭小スペースにおいて、横引きされた排水管から通気管を分岐するための省スペース型の管継手について鋭意検討を重ねた結果、通気管を分岐するための管継手の枝管部の内径を排水管が接続される本管部の内径に対して40%〜90%の範囲内の大きさに制限し、かつ、管継手の枝管部の管軸と本管部の管軸とが互いに接する(交差する)ことがないように偏心させて配置し、さらに枝管部の内部管底が本管部の内径に対して一定の比率以上の高さで分岐させることが上記目的を達成するために最も効果的であるとの結論に達し、本発明の通気管接続用の管継手を完成するに至った。また、管継手の通気管接続口へ、直接的又は通気管や他の管継手を介在させて間接的に逆流防止機能付きの通気弁を接続しておけば、通気管末端部を立ち上げることなく、配管詰まりなど異常発生時の漏水を十分に防止できることが判った。
【0014】
すなわち、本発明によれば、両端に上流側排水管接続口と下流側排水管接続口とを備える本管部と、通気管接続口を備え、前記本管部の管軸に対し直交する平面であって該平面に対し平行に延びており、かつ、前記本管部と流体連通にある枝管部を含み、前記枝管部の内径は、前記本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内にあり、かつ、前記枝管部の内部管底は、前記本管部の内径に対し60%以上の高さの位置において、前記本管部の内壁面から外方へ向けて水平に延びていることを特徴とする通気管接続用の管継手が提供される。
【0015】
また、本発明では、このような構成を採用することにより、前記枝管部下半分の内壁面と本管部の内壁面とは、前記枝管部の管軸に対し平行な垂直断面で切り取った時、少なくとも90°未満の鋭角を形成するように接続されるという特徴を有する。
【0016】
本発明による管継手は、排水管を接続するための本管部と、これから直交するように外方へ分岐した通気管を接続するための枝管部とから構成される。
【0017】
枝管部の内径は、本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内の大きさで選択される。この中で下限値を設ける理由は、通常、1つの排水管に対しその約半分の内径を有する通気管を接続しておけば、排水トラップ内の封水の吸引による破壊を防止することができるからである。また、本発明の1つの目的が、管継手の枝管部の内径が本管部の内径に対し40%を超えることにより枝管部の管頂が本管部の管頂から突出してしまうような場合であっても、床下などの狭小スペース内において横引きされた排水管から通気管の分岐を可能とする省スペース型の通気管接続用の管継手を提供することを目的としているからでもある。
【0018】
上限値を設ける理由は、多数の排水設備および排水管が複雑に接続された排水系統では、排水による管内の大きな圧力変動に対処するために、排水管に対し大径の通気管を接続しておかなければならない場合があるが、実質的には、排水管の内径と同じか、又は排水管の内径より大きな内径を有する通気管を接続する意義は殆どないものと考えられるからである。
【0019】
なお、本発明において、管継手の枝管部の内径が本管部の内径に対して50%〜100%の範囲内ではなく40%〜90%の範囲内としているのは、例えば、実際に使用される塩化ビニル管は、各呼び径に対する外径や肉厚などの規格化された寸法に基づいて製造されているため、50%近傍、および100%近傍の比率で実際に組み合わせることができる通気管と排水管の内径およびその内径比率を考慮したからである。
【0020】
また、枝管部は、本管部の管軸に対し直交する平面において、該平面に対し平行に延びるように本管部から分岐される。すなわち、枝管部は本管部と直交するように分岐される。これは、排水管内において排水の流れによって生じる圧力変動に伴い、排水管の中で通気しなければならない区域が排水管の上流側及び下流側のいずれの側でも発生し得るため、枝管部を本管部の管軸に対して中立の角度である直交する位置に配置するのが円滑な空気流れを確保するために最も有利だからである。
【0021】
さらに、管継手の枝管部は、その内部管底が本管部の内径に対し60%以上の高さの位置において、本管部の内壁面から外方へ向けて水平に延びるように分岐される。すなわち、継手管の枝管部と本管部とは互いに直交するように分岐されるが、枝管部の管軸と本管部の管軸とは互いに接する(交差する)ことがないように偏心させて配置される。また、枝管部の内部管底は、本管部の内壁面から勾配を設けることなく外方へ向けて水平に延ばされる。
【0022】
これは、枝管部の内部管底を本管部の内径に対して60%より低い位置から分岐した場合、本管部を流れる排水の逆流を防止するためには不十分であり、また、枝管部の中には本管部から流入してくる排水を押し流す流体が一切存在しないため、逆流してくる排水の中に含まれる異物等の堆積により配管詰まりを生じるおそれがあるからである。
【0023】
また、枝管部の内部管底を本管部の内径に対し60%以上の高さの位置から分岐すると、枝管部下半分の内壁面と本管部の内壁面とは、枝管部の管軸に対し平行な垂直断面で切り取った時、少なくとも90°未満の鋭角を形成するように接続される。換言すれば、本管部と連通する枝管部接続端は、その直下に鉛直方向より本管部の中心方向へ傾斜した本管部内壁面を形成する。
【0024】
このため、本発明によれば、本管部を流れる排水が何らかの要因で枝管部接続端の直下に形成された本管部内壁面に衝突したり、該内壁面に沿って振幅運動をしたりするような場合であっても、本管部を流れる排水は本管部の中心方向へ、すなわち枝管部接続端(本管部分岐口)から遠ざかる方向へ案内若しくは跳ね返され、これにより、排水が枝管部内へ逆流するのが強力に防止される。
【0025】
また、管継手枝管部の内部管底は、勾配が設けられることなく、直接、本管部の内壁面から外方へ向けて水平に延ばされているため、本発明の管継手は、枝管部の内部管底高さを基準に枝管部の外部突出高さが最も抑制された、換言すれば、高さ方向に最も省スペース化された外部形状を形成することができる。
【0026】
また、本発明によれば、管継手の枝管部の内部管頂は、本管部の管軸を通る垂直断面を横断しないように本管部の内壁面へ接続され、かつ、少なくとも本管部の内部管頂より上位の高さに配置されることが好ましい。
【0027】
本発明の管継手は、枝管部の内径が本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内の大きさにあり、かつ、枝管部の内部管底が本管部の内径に対し60%以上の高さから分岐されているため、本管部の内部管頂より上位に位置する枝管部の内部管頂が本管部の管軸を通る垂直断面で、すなわち、本管部の内部管頂で収束するように接続されていることが管継手のコンパクト化を図る上で最も有利となるからである。
【0028】
ただし、枝管部の内径が本管部の内径に対し90%近くに達するような場合は、物理的に枝管部の内径をそのまま維持しながら、枝管部の内部管頂を本管部の内部管頂へ収束させることができない場合がある。したがって、このような場合は、本管部の分岐口を狭めてまで枝管部の内部管頂を本管部の管軸を通る垂直断面で終わらせて本管部の内壁面へ接続させる必要はない。
【0029】
さらに、本発明によれば、直接的に枝管部の通気管接続口へ、または間接的に通気管接続口に接続された通気管等を介して逆流防止機能付き通気弁が接続されていること、別言すれば、直接的に逆流防止機能付き通気弁の接続口へ、または間接的に通気弁の接続口に接続された通気管等を介して前記通気管接続用の管継手が接続されていることが好ましい。
【0030】
なぜなら、排水管に接続される通気管は、排水管の詰まりなどにより生じる万が一の異常事態発生に備えて、下流側へ向けて上り勾配を設けたり、あるいは通気管の末端部を外壁等に沿って立ち上げることにより排水が外部への漏出するのを防止しておく必要がある。しかし、本発明のように床下などの狭小スペースを利用して通気管を配管する場合は、通気管に十分な勾配を設けることができず、また、通気管を立ち上げるために、外壁近くまで通気管を延長することは配管構造、施工工事ともに複雑になり不利だからである。
【0031】
本発明の管継手に直接又は間接的に取り付けることができる通気弁は、逆流防止機能付きであれば特に限定されることなく市販されている通気弁を使用することができるが、特に、床下など高さ方向に余裕がないスペースにおいて使用されること、および本発明の管継手と同レベルの高さで直接接続して使用される場合があることなどを考慮すると、本発明の管継手と同様に高さ方向に省スペース化された通気弁が使用されることが好ましい。このため、具体的には、特開2004−353445号公報に記載されているような省スペース型で横方向から接続可能な通気弁(排水用通気装置)を導入することが推奨される。
【0032】
また、本発明において、管継手及び通気弁を異径配管接続継手を介して接続する場合、異径配管接続継手の内部管頂は、管継手枝管部の内部管頂と通気弁接続口の内部管頂と実質的に同じ高さを形成するように面一に接続されることが好ましい。
【0033】
このような各管頂を面一にした異径配管接続継手を介した管継手及び通気弁の接続配置は、高さ方向の無駄なスペースの形成を防止し、床下などの狭小スペースを利用して本発明の管継手及び通気弁を取り付ける場合に有利となる。
【0034】
また、この時、管継手及び異径配管接続継手、通気弁の内部管底は、各管頂の配置とは異なり、管継手枝管から通気弁接続口へ向けて上り勾配を設けることが可能であるため、逆流してくる排水が通気弁へ流入するのを強力に防止することができる。このため、異径配管接続継手を用いて管継手及び通気弁を接続する場合、異径配管接続継手の内部管底は、管継手枝管から通気弁接続口へ向けて上方に縮径されている状態で取り付けるのがより好ましい。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、接続された排水管からの排水の逆流が強力に防止され、分岐される通気管の内径が本管の内径に対して40%を超えるものであっても、床下のような狭小スペース内に配置することができる省スペース型の通気管接続用の管継手が提供される。これにより、排水管から分岐される通気管は、床下などの狭小スペース内において横引きされた排水管の任意の位置から分岐することが可能となり、排水管に接続される排水設備等のレイアウトの自由度が大幅に拡大される。
【0036】
また、本発明によれば、排水管に詰まりが生じるなどの異常発生時に、逆流してくる排水の漏水を確実に防止することができる逆流防止機能付き通気弁が取り付けられた、全体としても極めてコンパクトな通気管接続用の管継手及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁が提供される。これにより、排水管から分岐された通気管を外壁近くへ又は屋外まで延長したり、あるいは、通気管の末端部を外壁等に沿わせて立ち上げる必要性がなくなり、排水配管構造を床下スペースに合わせて簡素化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る通気管接続用の管継手及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示される実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。
【実施例1】
【0038】
図1〜3には、排水管の呼び径が75であり、これから分岐される通気管の呼び径が40である塩化ビニル管の接続に用いられる本発明の一実施形態に係る塩化ビニル製の通気管接続用の管継手1が示されている。本発明の管継手1に接続される排水管および通気管の組み合わせは、実施例1の組み合わせに限られるものではなく、管継手1の枝管部の内径が排水管と接続される本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内の大きさにあればよい。実施例1の場合、枝管部の内径は本管部の内径の約53%の大きさである。なお、図1は管継手1の平面図であり、図2は管継手1の側面図であり、そして、図3は管継手1を通気管接続口から見た正面図である。
【0039】
実施例1の管継手1は、排水管と接続される本管部2と、これから直交するように分岐する枝管部3とから構成される。また、本管部2は、その両端に上流側排水管を接続するための受口20と下流側排水管を接続するための受口21を含み、枝管部3は、通気管を接続するための受口30を含む。これらの受口20,21,30は差口とすることも可能であるが、VP管およびVU管等の塩化ビニル管は、共通する外径基準に基づいて各呼び径が割り当てられているため、管継手の端部を受口形状とする方が接続可能な塩化ビニル管の種類が拡大され有利である。
【0040】
図4,5は、図1〜3に示された管継手1の断面図である。図4は、管継手1を本管部2の管軸a沿って水平方向に切り取った中心断面(A−A断面)の一部に、枝管部3の中心断面(B−B断面)を組合せた水平断面図である。また、図5は、管継手1を枝管部2の管軸bに沿って縦方向に切り取った垂直断面(C−C断面)を示している。
【0041】
図5を参照して理解されるように、実施例1の管継手1は、枝管部3の管軸bを含み本管部2の管軸aに対し直交する平面(図示せず)に対し鏡面対称の形状を有する。また、管継手1の枝管部3は、該平面に対し平行に延びるように本管部2から分岐される。すなわち、枝管部3は本管部2と直交するように分岐される。
【0042】
本実施例において管継手1の形状が鏡面対称とされているのは、本管部2の上流側および下流側の排水管接続口(受口)20,21を共通の形状とすることにより、管継手1の汎用性を広げ、そして製作及び施工を容易にするためである。ただし、本発明による管継手は必ずしも鏡面対称の形状である必要はなく、例えば、上流側と下流側との間で本管部の長さや接続口の形状等が相違していてもよい。
【0043】
また、管継手1の枝管部3が本管部2と直交するように分岐されるのは、排水管の中で通気しなければならない区域は、排水管の上流側及び下流側のいずれの側でも発生し得るため、枝管部3を本管部2の管軸aに対して中立の角度である直交する位置に配置するのが円滑な空気の流れを確保するために最も有利だからである。
【0044】
また、枝管部3の内部管底31は、本管部2の内径d2に対し60%以上の高さhにおいて、本管部2の内壁面22から外方へ向けて水平に延びるように分岐される。すなわち、継手管1の枝管部3と本管部2とは直交するように分岐されるが、枝管部3の管軸bと本管部2の管軸aとは互いに接する(交差する)ことがないように偏心させて配置される。また、枝管部3の内部管底31は、本管部2の内壁面22から勾配を設けることなく外方へ向けて水平に延ばされる。
【0045】
枝管部3の内部管底31を本管部2の内径d2の半分の高さを超えて、内径d2の60%の高さから分岐させた場合、本管部2の分岐口23の直下には、枝管部3の管軸bに対し平行な平面で切り取った時、枝管部下半分の内壁面32とこれと折り返すように連続する本管部2の内壁面22とは、少なくとも90°未満の鋭角αを形成するように接続される。換言すれば、本管部2と連通する枝管部3の接続端33は、その直下に鉛直方向より本管部2の中心方向へ傾斜した本管部の内壁面22を形成する。
【0046】
このため、本発明によれば、本管部2を流れる排水が何らかの要因で枝管部3の接続端33の直下に形成された本管部内壁面22に衝突したり、該内壁面22に沿って振幅運動をしたりするような場合であっても、本管部2を流れる排水は本管部2の中心方向へ、すなわち、本管部2の分岐口23から遠ざかる方向へ案内若しくは跳ね返され、これにより、排水が枝管部3内へ逆流するのが強力に防止される。
【0047】
また、枝管部3の内部管底31は、勾配が設けられることなく、直接、本管部2の内壁面22から外方へ向けて水平に延ばされているため、実施例1の管継手1は、枝管部3の内部管底31高さを基準に枝管部3の外部突出高さが最も抑制された、換言すれば、高さ方向に最も省スペース化された外部形状を形成することができる。
【0048】
図4及び5を参照して理解されるように、管継手1の枝管部3の内部管頂34は、本管部2の管軸aを通る垂直断面を横断しないように本管部2の内壁面22へ接続され、かつ、少なくとも本管部2の内部管頂24より上位の高さに配置される。このように、枝管部3の内部管頂34を本管部2の内部管頂24で収束させるような接続は、枝管部3の内径d3が本管部2の内径d2に対し40%〜90%の範囲内の大きさにあり、かつ、枝管部3の内部管底31が本管部2の内径d2に対し60%以上の高さから分岐された管継手1における無駄なスペースの形成を排除する。
【0049】
ただし、本発明において、枝管部の内径d3が本管部の内径d2に対し90%近くに達するような場合は、本管部の分岐口23を狭めてまで枝管部の内部管頂34を本管部の管軸aを通る垂直断面で終わらせて本管部の内壁面22へ接続させる必要はない。
【実施例2】
【0050】
図6には、実施例1で示された管継手1の通気管接続口30へ、異径配管接続継手4を介して逆流防止機能付き通気弁5が接続された本発明による実施例2の通気管接続用の管継手(及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁)が示されている。ただし、管継手1の通気管接続口30と逆流防止機能付き通気弁5の接続口の大きさが適合する場合は、異径配管接続継手4を介して接続する必要性はなく、直接、管継手1と通気弁5を接続してもよい。
【0051】
また、本発明の管継手1に直接又は間接的に取り付けることができる通気弁は、逆流防止機能付きであれば特に限定されることなく市販されている通気弁を使用することができる。しかし、本発明の目的に従い、床下の高さ方向がないスペースにおいて使用されること、および本発明の管継手1と直接接続して使用される場合があることを考慮すると、本発明の管継手1と同様に高さ方向に省スペース化された通気弁が使用されることが好ましい。このため、実施例2の管継手1では、特開2004−353445号公報に記載されている省スペース型で横方向からの接続が可能な通気弁5(排水用通気装置)を採用している。
【0052】
この結果、逆流防止機能付き通気弁5を備えた実施例2の管継手1(及び/又はコンパクト接続を可能にする管継手1を備えた逆流防止機能付き通気弁5)によれば、排水管に詰まりが生じるなどの異常発生時に、逆流してくる排水の漏水を確実に防止することができ、このため、排水管から分岐された通気管を外壁近くへ又は屋外まで延長したり、あるいは、通気管の末端部を外壁等に沿わせて立ち上げる必要性がなくなり、排水配管構造を床下スペースに合わせて簡素化することができる。
【実施例3】
【0053】
図7には、実施例2で示された異径配管接続継手を介して管継手及び逆流防止機能付き通気弁を接続する場合の管継手(及び/又は該管継手へ接続された通気弁)の変形例であって、高さ方向の無駄なスペースの形成を排除し、かつ、逆流してくる排水が通気弁へ流入するのを防止することを目的として設計された本発明による実施例3の通気管接続用の管継手(及び/又は該管継手へ接続された逆流防止機能付き通気弁)が示されている。
【0054】
実施例3の管継手1(及び/又は通気弁5)の場合、管継手1と通気弁5の間に接続される異径配管接続継手4’の内部管頂40は、管継手枝管部3の内部管頂34と通気弁接続口50の内部管頂51と実質的に同じ高さを形成するように面一に接続される。
【0055】
このような各管頂34,40,51を面一にした異径配管接続継手4’を介した管継手1及び通気弁5の接続配置は、高さ方向の無駄なスペースの形成を防止し、床下などの狭小スペースを利用して本発明の管継手及び通気弁を取り付ける場合に有利となる。
【0056】
また、実施例3の管継手1(及び/又は通気弁5)によれば、異径配管接続継手4’の内部管底41は、管継手枝管3から通気弁接続口50へ向けて上方に縮径される状態で取り付けられるため、異径配管接続継手4’の内部管底41は各管頂34,40,51の配置とは異なり、管継手枝管3から通気弁接続口50へ向けて上り勾配が形成されることにより、逆流してきた排水が通気弁5へ流入するのを強力に防止することができる。
【0057】
この結果、実施例3の管継手1(及び/又は通気弁5)によれば、実施例2の管継手1(及び/又は通気弁5)の長所を維持しながら、さらに、排水管に詰まりが生じるなどの異常発生時に、逆流してくる排水の漏水を強力に防止することができる異径配管接続継手4’を介した通気管接続用の管継手1及び逆流防止機能付き通気弁5の接続構造が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明による通気管接続用の管継手を上から見た平面図である。
【図2】本発明による通気管接続用の管継手を排水管接続口から見た側面図である。
【図3】本発明による通気管接続用の管継手を通気管接続口から見た正面図である。
【図4】図1に示された管継手を本管部の管軸に沿って水平方向に切り取った中心断面(A−A断面)の一部に、枝管部の中心断面(B−B断面)を組合せた水平断面図である。
【図5】図1に示された管継手を枝管部の管軸に沿って縦方向に切り取った垂直断面(C−C断面)図である。
【図6】図1に示された管継手に異径配管接続継手を介して通気弁が接続された本発明による他の実施形態の管継手(及び/又は通気弁)であって、それを管継手枝管部の管軸に沿って縦方向に切り取った垂直断面図である。
【図7】図6に示された異径配管接続継手とは異なる形状の異径配管接続継手を介して管継手及び通気弁が接続された本発明による他の実施形態の管継手(及び/又は通気弁)であって、それを管継手枝管部の管軸に沿って縦方向に切り取った垂直断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 通気管接続用の管継手
2 本管部
3 枝管部
4、4’ 異径配管接続継手
5 逆流防止機能付き通気弁
20、21 受口
22 本管部内壁面
23 本管部分岐口
24 本管部内部管頂
30 通気管接続口
31 枝管部内部管底
32 枝管部下部内壁面
33 枝管部接続端
34 枝管部内部管頂
40 異径配管接続継手の内部管頂
41 異径配管接続継手の内部管底
50 通気弁接続口
51 通気弁内部管頂
























【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に上流側排水管接続口と下流側排水管接続口とを備える本管部と、
通気管接続口を備え、前記本管部の管軸に対し直交する平面であって該平面に対し平行に延びており、かつ、前記本管部と流体連通にある枝管部を含み、
前記枝管部の内径は、前記本管部の内径に対し40%〜90%の範囲内にあり、かつ、前記枝管部の内部管底は、前記本管部の内径に対し60%以上の高さの位置において、前記本管部の内壁面から外方へ向けて水平に延びていることを特徴とする通気管接続用の管継手。
【請求項2】
前記枝管部の下半分の内壁面と本管部の内壁面とは、前記枝管部の管軸に対し平行な垂直断面で切り取った時、少なくとも90°未満の鋭角を形成するように接続されていることを特徴とする請求項1に記載の通気管接続用の管継手。
【請求項3】
前記枝管部の内部管頂は、前記本管部の管軸を通る垂直断面を横断しないように前記本管部の管壁へ接続され、かつ、少なくとも前記本管部の内部管頂より上位の高さに配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の通気管接続用の管継手。
【請求項4】
前記枝管部の通気管接続口へ、直接または間接的に逆流防止機能付き通気弁が接続されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の通気管接続用の管継手。
【請求項5】
前記管継手及び通気弁は異径配管接続継手を介して接続されており、前記異径配管接続継手の内部管頂は、前記管継手枝管部の内部管頂及び前記通気弁接続口の内部管頂と実質的に同じ高さを形成するように面一に接続されていることを特徴とする請求項4に記載の通気管接続用の管継手。
【請求項6】
通気弁の接続口へ、請求項1ないし3のいずれかに記載の通気管接続用の管継手の枝管部が直接または間接的に接続されていることを特徴とする逆流防止機能付き通気弁。
【請求項7】
前記通気弁及び管継手は異径配管接続継手を介して接続されており、前記異径配管接続継手の内部管頂は、前記通気弁接続口の内部管頂及び前記管継手枝管部の内部管頂と実質的に同じ高さを形成するように面一に接続されていることを特徴とする請求項6に記載の逆流防止機能付き通気弁。
【請求項8】
前記異径配管接続継手の内部管底は、前記管継手枝管から通気弁接続口へ向けて上方に縮径されていることを特徴とする請求項5に記載の通気管接続用の管継手又は請求項7に記載の逆流防止機能付き通気弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−2031(P2009−2031A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−163452(P2007−163452)
【出願日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【出願人】(390002381)株式会社キッツ (223)
【Fターム(参考)】