説明

連結具

【課題】連結部に組み込まれたボルトが塑性変形した後もある程度の強度を維持でき、しかも全体を棒材の中に埋め込み可能で美感にも優れた連結具を提供する。
【解決手段】面接触している一方材41と他方材51のうち、一方材41の下穴42にねじ込まれるラグスクリュー11と、他方材51の下穴52に埋め込まれ接着剤55で固定される埋設具21と、ラグスクリュー11と埋設具21を引き寄せるスタッドボルト31と、で連結具を構成して、ラグスクリュー11と埋設具21には、スタッドボルト31と螺合する内ネジ15、25を設ける。さらにスタッドボルト31の全長を増大するため、ラグスクリュー11と埋設具21の少なくとも一方に中穴13、23を設ける。この連結具は、スタッドボルト31が塑性変形した後も緩みが生じないため、ある程度の強度を維持でき、また埋設具21を接着剤55で固定することで、全体を棒材の中に埋め込むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種木造構造において、棒材同士をつなぐための連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅などの建築方法として普及している木造軸組構法は、土台や柱や横架材などの各種棒材を組み合わせて建物の骨格を構築している。この骨格の強度を確保するには、隣接する棒材同士を強固に連結する必要があり、古くからホゾとホゾ溝を組み合わせるなどの対策が講じられている。しかしホゾは、部材の断面欠損が大きくなるなどの課題があり、近年は耐震性の確保などを目的として、各種金具を使用することも多くなっており、その例として後記の特許文献が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、柱を基礎などに据え付けるための木部材接合構造が開示されており、柱にねじ込まれたスクリュー部材と、基礎の表面に固定された接合金具と、を長ボルトで連結している。この長ボルトをできるだけ長くすることで、柱などに外力が作用した際、終局状態に至るまでの塑性変形量を大きくでき、粘り強い構造とすることができる。
【0004】
また特許文献2では、柱や梁などの二部材を締結するための締結金物が開示されている。この締結金物は、側周面に螺旋状の凸条を形成してあり、その軸心に設けた雌ネジにボルトを螺合させて部材同士を締結している。ただし、単に二部材をボルトで締結している訳ではなく、締結金物に導入穴を設けてボルトを長尺化して、弾塑性変形を生じやすくしている。そのため地震などによる衝撃を吸収しやすくなり、構造物の破損を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−77611号公報
【特許文献2】特開2010−7428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記の特許文献は、いずれも部材同士の連結部に組む込まれるボルトをできるだけ長尺化して、その弾塑性変形でエネルギーを吸収して、構造物の安全性を確保する技術である。しかしこれらの技術は、ボルトに引張荷重が作用して塑性変形した後、ボルトの頭部に緩みが生じてしまい、以降は連結部の強度を維持できなくなる。したがって余震などで繰り返して外力が作用する場合、耐久性が失われて構造物に及ぶ被害が増大する恐れがある。
【0007】
また従来から使用されている各種金具は、その一部が柱などの表面に露出することが多い。例えば特許文献1では、柱の下部に接合金具が露出するほか、特許文献2でも、金具の表面やボルトの頭部などが露出する。この点は、何らの問題も生じないことも多いが、和室などで柱や横架材などを視認可能な構造とする場合、美感の観点から金属部品を覆い隠すなどの対策が必要である。
【0008】
本発明はこうした実情を基に開発されたもので、連結部に組み込まれたボルトが塑性変形した後もある程度の強度を維持でき、しかも全体を棒材の中に埋め込み可能で美感にも優れた連結具の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するための請求項1記載の発明は、面接触している一方材と他方材とを連結するために用い、両材の接触面から延びる一対の下穴のうち一方材側の下穴にねじ込まれるラグスクリューと、他方材側の下穴に埋め込まれ且つ接着剤で固定される棒状の埋設具と、前記ラグスクリューと前記埋設具とを引き寄せるためのスタッドボルトと、を備え、前記ラグスクリューの内部には、前記スタッドボルトの一端側に螺合する内ネジを設けてあり、前記埋設具の内部には、前記スタッドボルトの他端側に螺合する内ネジを設けてあり、前記内ネジのうちの一方または両方は、前記ラグスクリューと前記埋設具との境界から延びる中穴の奥方に位置することを特徴とする連結具である。
【0010】
本発明は、面接触している二本の棒材を一体化するためのものだが、棒材の配置は自在であり、一方の棒材の側面に他方の棒材の端面を接触させたT字状やL字状のほか、二本の棒材の端面同士を接触させて一直線に並ぶ形態でも構わない。なお一方材や他方材という称呼は、一体化される二本の棒材を識別するため、便宜上付与したに過ぎず、二本の棒材のうち、いずれか一方を一方材として、他方を他方材とする。次に下穴は、棒材同士の接触面を基点として、一方材側と他方材側の両方に設ける穴であり、当然ながら一方材側と他方材側の下穴は同心で対向する配置となる。なお一箇所の連結部において、対になる下穴は一組だけとは限らず、複数組とする場合もある。
【0011】
ラグスクリューは、金属製の丸棒状で一方材の下穴に埋め込まれるもので、側周面には螺旋状に延びる凸条を形成してある。この凸条が一方材の中に食い込み、ラグスクリューと一方材が強固に一体化する。なお一方材に加工する下穴の直径は、ラグスクリューの直径(凸条は除外)とほぼ同じとして、下穴の入口にラグスクリューの端面を接触させた後、ねじ込みによって埋め込んでいく。
【0012】
埋設具は、金属製の棒状でラグスクリューと対向する他方材の下穴に埋め込む。ただしラグスクリューのような凸条は形成しておらず、下穴に注入された接着剤によって他方材と一体化する。そのため埋設具は、下穴に余裕で詰め込むことのできる大きさであり、また接着剤の付着性を向上するため、側周面に複数のリブを形成することもある。
【0013】
スタッドボルトは、全ネジボルトとも呼ばれ、単純な丸棒の両端側または全域に雄ネジを形成したもので、本発明では、対向する下穴に埋め込まれたラグスクリューと埋設具とを引き寄せて、双方の端面同士を密着させるために使用する。このスタッドボルトを螺合できるよう、ラグスクリューと埋設具のいずれにも、軸線方向に沿って延びる雌ネジ状の内ネジを形成する。
【0014】
このようにスタッドボルトは、一方材と他方材を一体化する機能を担っているほか、一方材と他方材を引き離す方向に荷重が作用した場合、弾塑性変形をすることで衝撃を緩和して、棒材のヒビ割れなどを防止する。しかもスタッドボルトは、引張荷重で塑性変形した後も、螺合するラグスクリューや埋設具との間で緩みを生じることがなく、一方材と他方材との連結強度をある程度の水準で維持できる。
【0015】
中穴は、スタッドボルトをできるだけ長尺化するための機能を有する。本発明は、スタッドボルトの弾塑性変形を利用して衝撃を緩和しており、スタッドボルトの変形量をできるだけ多くすることが好ましい。そのため対向する内ネジは、遠ざけて配置する必要があり、ラグスクリューと埋設具の一方または両方には、単にスタッドボルトを通過させるためだけの中穴を設ける。当然ならら中穴の内径は、スタッドボルトの外径よりも大きい。
【0016】
スタッドボルトは、両端側または全域に右ネジを形成してある物のほか、一端側に左ネジを、他端側に右ネジを形成してある物も使用できる。なお右ネジだけを形成してあるスタッドボルトの場合、ラグスクリューの内ネジに一定の深さまでねじ込むと、双方の間に何からの接触や噛み込みが生じて、ねじ込み深さを制限できるようにする。
【0017】
右ネジだけを形成してあるスタッドボルトを用いて、実際に一方材と他方材を連結する際は、まずラグスクリューを一方材の下穴にねじ込み、次にラグスクリューの内ネジにスタッドボルトの一端側を螺合させて、スタッドボルトが回転不能になるまでねじ込みを続ける。その後、スタッドボルトの他端側に埋設具の内ネジを螺合させて、さらに埋設具のねじ込みを続けて、ラグスクリューと埋設具の端面同士を密着させる。
【0018】
この段階では、一方材の表面から埋設具が突出した状態になっており、次に他方材の下穴や埋設具の側周面に接着剤を塗布した後、埋設具を下穴に埋め込み、一方材と他方材を密着させて接着剤の凝固を待つ。なおラグスクリューと埋設具の端面同士が接触している位置は、一方材と他方材の接触面と一致させる必要はなく、ある程度の食い違いが生じていても構わない。
【0019】
他の形態として、一端側に左ネジを、他端側に右ネジを形成してあるスタッドボルトを使用する場合、当然ながらラグスクリューと埋設具の内ネジのうち、いずれか一方を左ネジとする。そして一方材と他方材を実際に連結する際は、まずスタッドボルトの一端側にラグスクリューの内ネジをわずかに螺合させて、さらに他端側に埋設具の内ネジをわずかに螺合させて、次にスタッドボルトだけを回転させて、ラグスクリューと埋設具の端面同士を密着させる。
【0020】
そのほかにも、両端側からスタッドボルトを差し込んで螺合できるラグスクリューを用いて、一方材の側面に二本の他方材の端面を接触させて十字状に連結することもできる。この場合、一方材の側面を貫通するように下穴を加工して、この中にラグスクリューをねじ込み、次に両面からスタッドボルトを差し込み、一方材の側面に二個の埋設具を対向するように固定する。
【0021】
請求項2記載の発明は、中心材とその側面に接触する二本の枝部材とを十字状に連結するために用い、中心材を貫通して両枝部材との接触面に開口する中心孔にねじ込まれるラグスクリューと、前記中心孔に連通して一方の枝部材に延びる下穴に埋め込まれ且つ接着剤で固定される棒状の埋設具と、前記中心孔に連通して他方の枝部材に延びる下穴に固定される係留具と、前記埋設具と前記係留具とを引き寄せるためのスタッドボルトと、を備え、前記埋設具の内部には、前記スタッドボルトの一端側に螺合する内ネジを設けてあり、前記係留具の内部には、前記スタッドボルトの他端側に螺合する内ネジを設けてあり、前記ラグスクリューには、前記スタッドボルトを挿通可能な中穴を設けてあることを特徴とする連結具である。
【0022】
この発明は、請求項1記載のものとは異なり、一本の中心材の側面に二本の枝部材の端面が接触する十字状の連結部を構成するためのものだが、ラグスクリューや埋設具やスタッドボルトを使用する点は、請求項1に記載したものと何ら変わりがない。ただしスタッドボルトは、対向する枝部材同士を引き寄せている。またラグスクリューは、中心材の側面を貫通する中心孔にねじ込まれ、しかもスタッドボルトを挿通できるよう両端面を貫通する中穴を形成してあり、これまでのような内ネジは不要である。
【0023】
二本の枝部材のうち、一方には埋設具が埋め込まれ、他方には係留具が埋め込まれる。埋設具は、請求項1に記載したものと同じであり、下穴の中に接着で固定される。対する係留具は、ラグスクリュー状または接着で固定される棒状(埋設具と同様の物)である。そして埋設具と係留具の内部には、スタッドボルトと螺合できるよう内ネジを形成してある。なおスタッドボルトは、右ネジだけを形成したものと、左ネジと右ネジを形成したものの、いずれも使用できる。
【0024】
ラグスクリュー状の係留具を用いる場合、中心材の中心孔にラグスクリューをねじ込み、一方の枝部材の下穴に係留具をねじ込む。次に、スタッドボルトの一端側を係留具の内ネジに螺合させ、他端側を中心材にねじ込まれたラグスクリューの中穴に差し込み、反対側に突出させる。その後、スタッドボルトの他端側に埋設具を螺合させて締め上げると、中心材の一側面に枝部材が接触して、対向する側面に埋設具が突出する。そして埋設具に接着剤を塗布してから、他方の枝部材を埋設具に固定すると、十字状の連結部が完成する。なお係留具として、棒状の物を使用する場合、中心材の側面に埋設具と係留具を対向するように取り付けた後、接着で二本の枝部材を固定する。
【発明の効果】
【0025】
請求項1記載の発明のように、一方材にねじ込むラグスクリューと、他方材に接着で固定する埋設具と、ラグスクリューと埋設具とを引き寄せるスタッドボルトと、で連結具を構成することで、過大な荷重が作用してスタットボルトが塑性変形した後も、ラグスクリューおよび埋設具との螺合が維持される。そのため連結部に緩みを生じることがなく、ある程度の強度を維持でき、余震などで繰り返して外力が作用する場合でも、構造物に及ぶ被害を軽減できる。
【0026】
また本発明は、他方材と埋設具を接着で固定しているため、連結具の全体を棒材の中に覆い隠すことができ、柱などが室内に露出する場合でも、金属部品が見えることはなく、美感に優れている。しかも結露や火災に対しても有利である。なお本発明から外れて、埋設具の代替としてラグスクリューを使用する場合、スタッドボルトを締め上げるため何らかの開口部が必要になり、連結具の全体を覆い隠すことができない。
【0027】
請求項2記載の発明のように、中心材にねじ込むラグスクリューと、一方の枝部材に埋め込む埋設具と、他方の枝部材に埋め込む係留具と、対向する埋設具と係留具とを引き寄せるスタッドボルトと、で連結具を構成することで、中心材の側面に二本の枝部材を十字状に連結することができる。しかも請求項1記載の発明と同様、スタッドボルトが引き延ばされて塑性変形した場合でも、連結部の強度をある程度維持できるほか、連結具の全体を中心材や枝部材の中に埋め込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明による連結具の構成例とその使用状態を示す斜視図である。
【図2】図1の連結部の詳細を示す縦断面図である。
【図3】T字状の連結部に本発明を使用した状態を示す斜視図である。
【図4】一端側に左ネジを形成して他端側に右ネジを形成したスタッドボルトを使用した構成を示す斜視図と縦断面図である。
【図5】一方材の側面に二本の他方材を接触させて、十字状の連結部を構成する形態を示す斜視図である。
【図6】図5の連結部の詳細を示す縦断面図である。
【図7】中心材の側面に二本の枝部材を接触させて、十字状の連結部を構成する形態を示す斜視図である。
【図8】図7の連結部の詳細を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明による連結具の構成例とその使用状態を示している。一方材41と他方材51はいずれも棒状であり、その端面同士を密着させて一本化するため、一組の連結具を使用している。連結具は、ラグスクリュー11と埋設具21とスタッドボルト31で構成され、ラグスクリュー11は一方材41にねじ込み、埋設具21は他方材51に埋め込む。そしてスタッドボルト31は、ラグスクリュー11と埋設具21とを引き寄せるために使用している。
【0030】
ラグスクリュー11は金属製の円柱状であり、側周面には螺旋状に延びる凸条12を形成してあり、また一端面には、工具を掛けるために六角部14を形成してある。さらに六角部14の中心には、単純な円断面で軸線方向に延びる中穴13を形成してある。なお中穴13は、スタッドボルト31を余裕で差し込める内径としてある。そして中穴13の下には、スタッドボルト31を螺合するための内ネジ15を形成してある。
【0031】
一方材41の端面中央には、ラグスクリュー11をねじ込むための下穴42を加工してある。この内径は、ラグスクリュー11の外径(円柱状の部分の外径であり、凸条12は除外)に等しく、凸条12が一方材41の中に食い込むことで、ラグスクリュー11と一方材41が強固に一体化する。なおラグスクリュー11をねじ込む際は、回転力を与えるため必ず六角部14が後端側に位置する。
【0032】
埋設具21も金属製の円柱状だが、側周面には円周方向と軸線方向に延びるリブ22を形成してあり、また一端面には、工具を掛けるために六角部24を形成してある。さらに六角部24の中心には、スタッドボルト31を螺合するための内ネジ25を形成してある。そして内ネジ25の下には、単純な円断面で下端面に達する中穴23を形成してある。なお中穴23は、スタッドボルト31を余裕で差し込める内径としてある。
【0033】
他方材51の端面中央には、埋設具21を埋め込むための下穴52を加工してある。この内径は、埋設具21のリブ22の外径よりもわずかに大きい。そして埋設具21を埋め込む前に、埋設具21の側周面や下穴52の内周面に接着剤55を塗布しておき、接着によって埋設具21と他方材51を一体化する。なおリブ22は、接着強度を向上するために形成してあり、同様に下穴52の内周面にも溝を加工してもよい。
【0034】
スタッドボルト31は、単純な円断面の金属棒で上下の両端側に右ネジ32、33を形成してあるが、両右ネジ32、33の間は単純な円断面である。さらに弾塑性変形を円滑に引き起こすため、低降伏点鋼を素材とすることもできる。また全長は、ラグスクリュー11と埋設具21を確実に引き寄せることができるよう調整してあり、しかも各右ネジ32、33の形成範囲も一連の作業に支障がないよう調整してある。なおラグスクリュー11と埋設具21のぞれぞれの内ネジ15、25は、当然ながらスタッドボルト31と螺合可能な右ネジである。
【0035】
この連結具を用いて、一方材41と他方材51を連結する際は、図中の矢印のように作業を進める。最初の段階では、左上の図のように、一方材41の下穴42にラグスクリュー11をねじ込む。この際、六角部14が後端側になるため、内ネジ15は下穴42の奥方に位置することになる。次に右上の図のように、ねじ込まれたラグスクリュー11の中穴13にスタッドボルト31を差し込み、その下方の右ネジ32をラグスクリュー11の内ネジ15に螺合させる。螺合が進んで、右ネジ32の全体が内ネジ15に入り込むと、双方の間に噛み込みが生じてスタッドボルト31が固定され、左下の図のように、一方材41の端面からスタッドボルト31の上半分が突出する。
【0036】
次に、突出するスタッドボルト31に埋設具21を差し込み、上方の右ネジ33を内ネジ25に螺合させて、さらに六角部24に工具を掛けて締め上げると、右下の図のように、スタッドボルト31を介してラグスクリュー11と埋設具21の端面同士が密着して、埋設具21が一方材41と一体化する。最後に、埋設具21の側周面や他方材51の下穴52の内周面に接着剤55を塗布して、埋設具21を下穴52に埋め込み、接着剤55が凝固するまでの間、一方材41と他方材51を強制的に密着させる。
【0037】
図2は、図1の連結部の詳細を縦断面で示している。左上の図のように、ラグスクリュー11と埋設具21は、双方の中穴13、23が対向しており、その奥に内ネジ15、25を形成してあり、必然的にスタッドボルト31の全長が増大する。そのほか、スタッドボルト31下方の右ネジ32の延長は、対になる内ネジ15よりも短く、右ネジ32と内ネジ15が螺合できる範囲が限られている。そのため螺合を続けていくと、右ネジ32と内ネジ15との間で噛み込みが生じて、スタッドボルト31が内ネジ15に固定された状態になり、ラグスクリュー11と埋設具21を強固に密着させることができる。
【0038】
施工後は、右上の図のように、スタッドボルト31を介して一方材41と他方材51が連結される。なお、ラグスクリュー11は凸条12によって一方材41と一体化しており、埋設具21は接着剤55によって他方材51と一体化している。その後、地震などで過大な外力が作用すると、左下の図のように、スタッドボルト31に塑性変形が生じる。この変形によって衝撃が緩和され、一方材41や他方材51などの破損を防止する。さらにスタッドボルト31が塑性変形した後も、ラグスクリュー11や埋設具21との螺合部分には、何らの緩みも生じることがなく、連結部の強度がある程度維持される。
【0039】
スタッドボルト31が塑性変形した後、一方材41と他方材51を押し付けるような外力が作用すると、右下の図のように、スタッドボルト31が押し潰されて蛇行するように塑性変形して、連結部が当初のように復元する。なお図2では、ラグスクリュー11と埋設具21との境界と、一方材41と他方材51との境界と、を一致させているが、実際にはある程度の段差が生じていても構わない。
【0040】
図3は、T字状の連結部に本発明を使用した状態を示している。本発明は、部材に下穴42、52が加工できるならば、図1のような二本の棒材の端面同士をつなぐ場合のほか、この図のような横架材の側面に柱の端面が接触するT字状の連結部など、様々な箇所に使用できる。しかも一箇所の連結部において、使用する連結具は一組だけとは限らず、複数組を使用してもよい。この図では、四組の連結具を使用しており、そのうちの二組は、横架材にラグスクリュー11をねじ込んでおり、残る二組は、柱にラグスクリュー11を埋め込んでおり、強度のアンバランスを解消している。
【0041】
図4は、一端側に左ネジ36を形成して他端側に右ネジ33を形成したスタッドボルト35を使用した構成を示している。これまでの各図は、両端に右ネジ32、33を形成した一般的なスタッドボルト31を使用していたが、この図のように、左ネジ36と右ネジ33を形成したものも使用できる。その場合は当然ながら、対になる内ネジ15、25のうち、一方を左ネジとする必要があり、この図ではラグスクリュー11の内ネジ15を左ネジとしている。なおスタッドボルト35を円滑に回転させるため、その端面に六角穴37を設けてある。
【0042】
図5は、一方材41の側面に二本の他方材51を接触させて、十字状の連結部を構成する形態を示している。この場合、一方材41に加工してある下穴42は側面を貫通しており、この下穴42にねじ込まれるラグスクリュー17は、両端面に中穴13を形成してあり、その奥には、上下の中穴13を結ぶように内ネジ15を形成してあり、両側からスタッドボルト31を差し込むことができる。そのほか二本の他方材51は、端面に下穴52を加工してあり、この中に埋設具21を接着剤55で固定する。なおスタッドボルト31と埋設具21のいずれも、上下の二個は同形状で対称の配置となっている。
【0043】
図6は、図5の連結部の詳細を縦断面で示している。一方材41にねじ込まれるラグスクリュー17は、両端面に中穴13を形成してあり、その奥に内ネジ15を形成してあり、上下からスタッドボルト31を差し込むことができる。施工時は、内ネジ15に計二本のスタッドボルト31を螺合させた後、埋設具21の内ネジ25にスタッドボルト31を螺合させて、二個の埋設具21をラグスクリュー17に密着させる。その後、接着剤55で枝部材51を埋設具21に固定すると、一方材41の両側面から他方材51が突出する十字状の連結部が完成する。
【0044】
図7は、中心材61の側面に二本の枝部材63、66を接触させて、十字状の連結部を構成する形態を示している。中心材61には、側面を貫通する中心孔62を加工してあり、この中にラグスクリュー18をねじ込む。ラグスクリュー18には、凸条12や六角部14を形成してあるが、内ネジ15はなく、中穴13が両端を貫通している。また下方の枝部材66には、下穴67を加工して係留具19を埋め込んでいる。係留具19は、実質的にはラグスクリューであり、側周面に凸条12を形成してあり、さらに上端面に内ネジ15を形成してある。
【0045】
上方の枝部材63には、埋設具21を埋め込む。この点は図1などと同じである。またスタッドボルト31は、対向する係留具19と埋設具21とを引き寄せるためのもので、中心材61にねじ込まれるラグスクリュー18と螺合することはない。施工時は、まず中心材61にラグスクリュー18をねじ込み、さらに下方の枝部材66に係留具19をねじ込む。次に、中心材61側の中穴13にスタッドボルト31を差し込み、その先端側の右ネジ32を係留具19の内ネジ15に螺合させる。その後、スタッドボルト31の後端側の右ネジ33に埋設具21の内ネジ25を螺合させて、中心材61を挟んで枝部材66と埋設具21を対向するように固定する。
【0046】
図8は、図7の連結部の詳細を縦断面で示している。中心材61にねじ込まれるラグスクリュー18は、中穴13が両端面を貫通しており、スタッドボルト31を通過させることができる。また下方の枝部材66には係留具19がねじ込まれており、その上端には、スタッドボルト31を螺合するための内ネジ15を形成してある。さらに上側の枝部材63は、埋設具21を介して中心材61に固定される。施工時は、中心材61を挟んで枝部材66と埋設具21を対向するように固定した後、接着剤55で枝部材63を埋設具21に固定する。なお、この図の形態についても、一箇所の連結部に複数組の連結具を組み込むことができるほか、図4のような左ネジ36と右ネジ33を形成したスタッドボルト35も使用できる。
【0047】
図7および図8では、係留具19としてラグスクリュー状のものを使用しているが、この係留具19は、接着剤55で枝部材66に固定する棒状の物(埋設具と同様の物)に置き換えることもできる。この場合、中心材61にラグスクリュー18をねじ込んだ後、対向する係留具19と埋設具21とをスタッドボルト31で引き寄せて、中心材61の側面に係留具19と埋設具21を固定して、最後に、係留具19と埋設具21に接着剤55を塗布して、二本の枝部材63、66を固定する。
【符号の説明】
【0048】
11 ラグスクリュー
12 凸条
13 中穴
14 六角部
15 内ネジ
16 ラグスクリュー(内ネジが左ネジ)
17 ラグスクリュー(両端に中穴、内部に内ネジ)
18 ラグスクリュー(中穴が貫通、内ネジなし)
19 係留具(ラグスクリュー状)
21 埋設具
22 リブ
23 中穴
24 六角部
25 内ネジ
31 スタッドボルト(両端側に右ネジ)
32 右ネジ(一端側)
33 右ネジ(他端側)
35 スタッドボルト(一端側に左ネジ、他端側に右ネジ)
36 左ネジ
37 六角穴
41 一方材
42 下穴(一方材側)
51 他方材
52 下穴(他方材側)
55 接着剤
61 中心材
62 中心孔
63 枝部材
64 下穴
66 枝部材
67 下穴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
面接触している一方材(41)と他方材(51)とを連結するために用い、
両材(41、51)の接触面から延びる一対の下穴(42、52)のうち一方材(41)側の下穴(42)にねじ込まれるラグスクリュー(11、16又は17)と、
他方材(51)側の下穴(52)に埋め込まれ且つ接着剤(55)で固定される棒状の埋設具(21)と、
前記ラグスクリュー(11、16又は17)と前記埋設具(21)とを引き寄せるためのスタッドボルト(31又は35)と、
を備え、
前記ラグスクリュー(11、16又は17)の内部には、前記スタッドボルト(31又は35)の一端側に螺合する内ネジ(15)を設けてあり、
前記埋設具(21)の内部には、前記スタッドボルト(31又は35)の他端側に螺合する内ネジ(25)を設けてあり、
前記内ネジ(15、25)のうちの一方または両方は、前記ラグスクリュー(11、16又は17)と前記埋設具(21)との境界から延びる中穴(13、23)の奥方に位置することを特徴とする連結具。
【請求項2】
中心材(61)とその側面に接触する二本の枝部材(63、66)とを十字状に連結するために用い、
中心材(61)を貫通して両枝部材(63、66)との接触面に開口する中心孔(62)にねじ込まれるラグスクリュー(18)と、
前記中心孔(62)に連通して一方の枝部材(63)に延びる下穴(64)に埋め込まれ且つ接着剤(55)で固定される棒状の埋設具(21)と、
前記中心孔(62)に連通して他方の枝部材(66)に延びる下穴(67)に固定される係留具(19)と、
前記埋設具(21)と前記係留具(19)とを引き寄せるためのスタッドボルト(31又は35)と、
を備え、
前記埋設具(21)の内部には、前記スタッドボルト(31又は35)の一端側に螺合する内ネジ(25)を設けてあり、
前記係留具(19)の内部には、前記スタッドボルト(31又は35)の他端側に螺合する内ネジ(15)を設けてあり、
前記ラグスクリュー(18)には、前記スタッドボルト(31又は35)を挿通可能な中穴(13)を設けてあることを特徴とする連結具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−77545(P2012−77545A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225070(P2010−225070)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(500292851)
【Fターム(参考)】