説明

遠心圧縮機及び車両用過給機

【課題】遠心圧縮機の搭載自由度を高めつつ、インペラ13内におけるエネルギー損失の増大を十分に抑えて、遠心圧縮機1の性能の向上を図ること。
【解決手段】ハウジング3内におけるインペラ13の上流側に導入口23が形成され、ハウジング3内における導入口23の径方向外側に渦巻き状の給気スクロール流路25が形成され、ハウジング5に給気口27が形成され、給気口27はエアクリーナ29に接続可能であって、ハウジング5内におけるインペラ13の下流側に環状のディフューザ流路33が形成され、ハウジング5内におけるディフューザ流路33の周縁側に渦巻き状の排気スクロール流路35が形成され、ハウジング5に排気口37が形成されたこと。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用過給機に用いられかつ遠心力を利用して空気等のガスを圧縮する遠心圧縮機等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用過給機等の過給器に用いられる遠心圧縮機については種々の開発がなされており、先行技術に係る遠心圧縮機として特許文献1及び特許文献2等に示すものがある。そして、先行技術に係る遠心圧縮機の構成等について説明すると、次のようになる。
【0003】
先行技術に係る遠心圧縮機は、ハウジングを具備しており、このハウジングは、内側に、シュラウド壁を有している。また、ハウジングのシュラウド壁内には、インペラが軸心(インペラの軸心)周り回転可能に配設されており、このインペラは、外周面が軸方向ら径方向外側に向かって延びてあってかつ軸心周りに回転可能なディスク、及びディスクの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ先端縁が前記ハウジングの前記シュラウド壁に沿うように延びた複数枚のブレードを備えている。なお、ディスクは、別のハウジングに回転可能に設けられたロータ軸(タービン軸)の一端部に同軸状に一体的に連結してある。
【0004】
ハウジングにおけるインペラの上流側(入口側)には、インペラ側へ空気を給気する給気口が形成されており、この給気口は、空気を浄化するエアクリーナに接続可能である。また、ハウジング内におけるインペラの下流側(出口側)には、圧縮された空気を減速して昇圧する環状のディフューザ流路が形成されている。そして、ハウジング内におけるディフューザ流路の周縁側には、渦巻き状の排気スクロール流路が形成されており、この排気スクロール流路は、ディフューザ流路に連通してあって、排気スクロール流路の流路面積は、インペラの回転方向に沿って徐々に拡大するようになっている。更に、ハウジングの適宜位置には、ハウジングの外側へ圧縮された空気を排気する排気口が形成されており、この排気口は、排気スクロール流路に連通してある。
【0005】
従って、ロータ軸を回転させて、インペラを一体的に回転させることにより、給気口からインペラ側へ給気された空気を圧縮することができる。そして、圧縮された空気は、ディフューザ流路によって減速して昇圧され、排気スクロール流路を経由して排気口からハウジングの外側へ排気される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−231934号公報
【特許文献2】特開2004−197611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、遠心圧縮機の搭載自由度を高めようとすると、通常、給気口とエアクリーナとの間を接続する接続ダクトの形状を屈曲部(曲がり部)を有した複雑な形状にする必要がある。一方、接続ダクトの形状を複雑な形状にすると、偏流を伴った流れ(空気の流れ)が給気口からインペラ側に流入して、ブレードの前縁に対する空気の流入角にバラツキが生じる。そのため、インペラ内におけるエネルギー損失(圧力損失)が増大して、遠心圧縮機の性能(圧縮機効率)の低下を招くことになる。
【0008】
つまり、遠心圧縮機の搭載自由度を高めつつ、遠心圧縮機の性能を向上させることは容易でないという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、前述の問題を解決することができる、新規な構成の遠心圧縮機等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の特徴は、遠心力を利用してガスを圧縮する遠心圧縮機において、内側にシュラウド壁を有したハウジングと、前記ハウジングの前記シュラウド壁内に軸心周りに回転可能に配設され、軸心周りに回転可能なディスク(ハブ)、及び前記ディスクの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ先端縁(外縁)が前記ハウジングの前記シュラウド壁に沿うように延びた複数枚のブレードを備えたインペラと、を具備し、前記ハウジング内における前記インペラの上流側(入口側)にガスを前記インペラ側へ導入する導入口(導入流路)が形成され、前記ハウジング内における前記導入口の径方向外側(周縁側)に前記導入口に連通した渦巻き状の給気スクロール流路が形成され、前記ハウジングに前記給気スクロール流路に連通しかつ前記給気スクロール流路側へガスを給気する給気口が形成され、前記給気口がガスを浄化するガスクリーナに接続可能であって、前記ハウジング内における前記インペラの下流側(出口側)に圧縮されたガスを減速して昇圧する環状のディフューザ流路が形成され、前記ハウジング内における前記ディフューザ流路の周縁側に前記ディフューザ流路に連通した渦巻き状の排気スクロール流路が形成され、前記ハウジングに前記排気スクロール流路に連通しかつ前記ハウジングの外側へ圧縮されたガスを排気する排気口が形成されことを要旨とする。
【0011】
なお、特許請求の範囲及び明細書において、「上流側」とは、ガスの流れ方向から見て上流側のことであって、「下流側」とは、ガスの流れ方向から見て下流側のことである。また、「配設され」とは、直接的に配設されたことの他に、別部材を介して間接的に配設されたことを含む意であって、同様に、「設けられ」とは、直接的に設けられたことの他に、別部材を介して間接的に設けられたことを含む意である。
【0012】
第1の特徴によると、前記インペラを軸心周りに回転させることにより、前記給気口及び前記給気スクロール流路を経由して前記導入口から前記インペラ側へ導入されたガスを圧縮することができる。そして、圧縮されたガスは、前記ディフューザ流路によって減速して昇圧され、前記排気スクロール流路を経由して前記排気口から前記ハウジングの外側へ排気される。
【0013】
ここで、前記給気口から給気されたガスが前記給気スクロール流路を流通(経由)することにより、偏流を伴った流れ(ガスの流れ)が前記給気口から流入する場合でも、前記給気スクロール流路の整流作用によって前記ブレードの前縁に対するガスの流入角のバラツキをなくすことができる。
【0014】
本発明の第2の特徴は、エンジン側に供給されるガスを過給する車両用過給機において、第1の特徴からなる遠心圧縮機を具備したことを要旨とする。
【0015】
第2の特徴によると、第1の特徴による作用と同様の作用を奏する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、偏流を伴った流れが前記給気口から流入する場合でも、前記給気スクロール流路の整流作用によって前記ブレードの前縁に対するガスの流入角のバラツキをなくすことができるため、前記遠心圧縮機の搭載自由度を高めつつ、前記インペラ内におけるエネルギー損失(圧力損失)の増大を十分に抑えて、遠心圧縮機の性能(圧縮機効率)の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機の側断面図である。
【図2】図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る遠心圧縮機の側断面図である。
【図4】図3におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態について図1及び図2を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向をそれぞれ指してある。
【0019】
図1に示すように、本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機1は、エンジン(図示省略)側に供給される空気(ガスの一例)を過給する車両用過給機等の過給器に用いられ、遠心力を利用して空気を圧縮するものである。そして、本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機1の具体的な構成は、以下のようになる。
【0020】
遠心圧縮機1は、ハウジング(コンプレッサハウジング)3を具備しており、このハウジング3は、フロントハウジング5と、フロントハウジング5の後側に一体的に接合されたリアハウジング7とからなっている。また、リアハウジング7は、内側に、シュラウド壁7sを有してあって、後側に、取付シールプレート(シールプレート)9を備えている。ここで、取付プレート9は、車両用過給機における別のハウジング(ベアリングハウジング)11に一体的に連結されている。
【0021】
リアハウジング7のシュラウド壁7s内には、インペラ13が軸心(インペラ13の軸心)C周りに回転可能に配設されている。具体的には、リアハウジング7のシュラウド壁7s内には、ディスク(ハブ)15が設けられており、このディスク15の外周面15fは、軸方向(軸心方向)から径方向外側に向かって延びている。また、ディスク15は、別のハウジング11に回転可能に設けられたロータ軸(タービン軸)17の一端部(前端部)に固定ナット19を介して一体的に連結してあって、ディスク15の軸心(換言すれば、ロータ軸17の軸心)C周りに回転可能である。そして、ディスク15の外周面15fには、複数枚のブレード21が間隔を置いて設けられており、各ブレード21の先端縁(外縁)21tは、リアハウジング7のシュラウド壁7sに沿うように延びている。なお、本発明の第1実施形態にあっては、複数枚のブレード21の軸長は同じであるが、軸長の異なる複数種のブレードを用いても構わない。
【0022】
図1及び図2に示すように、ハウジング3内(フロントハウジング5内からリアハウジング7内にかけての部位)におけるインペラ13の上流側(入口側)には、空気をインペラ13側へ導入する導入口(導入流路)23が形成されており、この導入口23は、後方向(下流側)に向かって縮径するようになっている。また、フロントハウジング5内における導入口23の径方向外側には、渦巻き状の給気スクロール流路25が形成されており、この給気スクロール流路25は、導入口23に連通してあって、給気スクロール流路25の流路断面積は、インペラ13の回転方向(空気の流れ方向)に沿って徐々に縮小するようになっている。更に、フロントハウジング5の適宜位置には、給気スクロール流路25側へ空気を給気する給気口27が形成されており、この給気口27は、給気スクロール流路25の始端側に連通しあって、空気を浄化するエアクリーナ(ガスクリーナの一例)29に接続ダクト31を介して接続可能である。
【0023】
リアハウジング7内におけるインペラ13の下流側(出口側)には、圧縮された空気を減速して昇圧する環状のディフューザ流路33が形成されている。また、リアハウジング7内におけるディフューザ流路33の周縁側(径方向外側)には、渦巻き状の排気スクロール流路35が形成されており、この排気スクロール流路35は、ディフューザ流路33に連通してあって、排気スクロール流路35の流路面積は、インペラ13の回転方向(空気の流れ方向)に沿って徐々に拡大するようになっている。更に、リアハウジング7の適宜位置には、リアハウジング7の外側へ圧縮された空気を排気する排気口37が形成されており、この排気口37は、排気スクロール流路35の終端側に連通してあって、エンジンの給気マニホールド(図示省略)に接続可能である。
【0024】
続いて、本発明の第1実施形態の作用及び効果について説明する。
【0025】
ロータ軸17を回転させて、インペラ13を軸心C周りに一体的に回転させることにより、給気口27及び給気スクロール流路25を経由して導入口23からインペラ13側へ導入された空気を圧縮することができる。そして、圧縮された空気は、ディフューザ流路33によって減速して昇圧され、排気スクロール流路35を経由して排気口37からリアハウジング7の外側へ排気される。
【0026】
ここで、給気口27から給気された空気が給気スクロール流路25を流通(経由)することにより、偏流を伴った流れ(空気の流れ)が給気口27から流入する場合でも、給気スクロール流路25の整流作用によってブレード21の前縁21aに対する空気の流入角のバラツキをなくすことができる。
【0027】
従って、本発明の第1実施形態によれば、遠心圧縮機1の搭載自由度、換言すれば、過給機の搭載自由度を高めつつ、インペラ13内におけるエネルギー損失(圧力損失)の増大を十分に抑えて、遠心圧縮機1の性能(圧縮機効率)の向上を図ることができる。
【0028】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態について図3及び図4を参照して説明する。なお、図面中、「FF」は、前方向、「FR」は、後方向をそれぞれ指してある。
【0029】
図3及び図4に示すように、本発明の第2実施形態に係る遠心圧縮機39は、エンジン(図示省略)側に供給される空気を過給する車両用過給機等の過給機に用いられ、遠心力を利用して空気を圧縮するものであって、本発明の第1実施形態に係る遠心圧縮機1と同様の構成を有している。以下、遠心圧縮機39の具体的な構成のうち、遠心圧縮機1の具体的な構成と異なる点についてのみ説明する。なお、遠心圧縮機39の複数の構成要素のうち、遠心圧縮機1の複数の構成要素に相当するものについては、図中に同一番号を付している。
【0030】
給気スクロール流路25には、渦巻き状の仕切壁41が形成されており、給気スクロール流路25は、仕切壁41によって、径方向内側に位置する渦巻き状のインナー流路43と、径方向外側に位置する渦巻き状のアウター流路45とに分割されている。また、給気口27は、インナー流路43及びアウター流路45に連通した第1連通状態と、アウター流路45と遮断されかつインナー流路43に連通した第2連通状態とに切り替え可能になっている。更に、給気口27の近傍には、給気口27を第1連通状態と第2連通状態に切り替える板状の切替部材47が揺動可能に設けられており、フロントハウジング5の適宜位置には、切替部材47を揺動させるシリンダ等のアクチュエータ(図示省略)が設けられている。
【0031】
そして、本発明の第2実施形態によれば、本発明の第1実施形態の作用を奏する他に、アクチュエータによって切替部材47を図1において実線で示す位置から仮想線で示す位置に一方向へ揺動させることにより、給気口27を第1連通状態から第2連通状態に切り替えて、給気スクロール流路25の実際の流路面積を小さくすることができる(この場合、インナー流路43の流路面積が給気スクロール流路25の実際の流路面積になる)。反対に、アクチュエータによって切替部材47を図1において仮想線で示す位置から実線で示す位置に他方向へ揺動させることにより、給気口を第2連通状態から第1連通状態に切り替えて、給気スクロール流路25の実際の流路面積を大きくすることができる(この場合、インナー流路43の流路面積とアウター流路45の流路面積の和が給気スクロール流路25の実際の流路面積になる)。これにより、空気の流量に応じて、ブレード21の前縁21aに対する空気の流入角を変えることができる。
【0032】
従って、本発明の第2実施形態によれば、本発明の第1実施形態による効果を奏する他に、遠心圧縮機39を安定して作動させることができ、遠心圧縮機39の性能の向上をより一層図ることができる。
【0033】
なお、本発明は、前述の実施形態の説明に限られるものではなく、種々の態様で実施可能である。また、本発明に包含される権利範囲は、これらの実施形態に限定されないものである。
【符号の説明】
【0034】
1 遠心圧縮機
3 ハウジング
5 フロントハウジング
7 リアハウジング
7s シュラウド壁
9 取付プレート
13 インペラ
15 ディスク
15f ディスクの外周面
17 ロータ軸
21 ブレード
21a ブレードの前縁
21t ブレードの先端縁
23 導入口(導入流路)
25 給気スクロール流路
27 給気口
29 エアクリーナ
31 接続ダクト
33 ディフューザ流路
35 排気スクロール流路
37 排気口
39 遠心圧縮機
41 仕切壁
43 インナー流路
45 アウター流路
47 切替部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心力を利用してガスを圧縮する遠心圧縮機において、
内側にシュラウド壁を有したハウジングと、
前記ハウジングの前記シュラウド壁内に軸心周りに回転可能に配設され、軸心周りに回転可能なディスク、及び前記ディスクの外周面に周方向に間隔を置いて設けられかつ先端縁が前記ハウジングの前記シュラウド壁に沿うように延びた複数枚のブレードを備えたインペラと、を具備し、
前記ハウジング内における前記インペラの上流側にガスを前記インペラ側へ導入する導入口が形成され、前記ハウジング内における前記導入口の径方向外側に前記導入口に連通した渦巻き状の給気スクロール流路が形成され、前記ハウジングに前記給気スクロール流路に連通しかつ前記給気スクロール流路側へガスを給気する給気口が形成され、前記給気口がガスを浄化するガスクリーナに接続可能であって、
前記ハウジング内における前記インペラの下流側に圧縮されたガスを減速して昇圧する環状のディフューザ流路が形成され、前記ハウジング内における前記ディフューザ流路の周縁側に前記ディフューザ流路に連通した渦巻き状の排気スクロール流路が形成され、前記ハウジングに前記排気スクロール流路に連通しかつ前記ハウジングの外側へ圧縮されたガスを排気する排気口が形成されことを特徴とする遠心圧縮機。
【請求項2】
前記給気スクロール流路は、径方向内側に位置する渦巻き状のインナー流路と、径方向外側に位置する渦巻き状のアウター流路とに分割されてあって、
前記給気口は、前記インナー流路及び前記アウター流路に連通した第1連通状態と、前記アウター流路と遮断されかつ前記インナー流路に連通した第2連通状態との間で切り替え可能になっていることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機。
【請求項3】
エンジン側に供給されるガスを過給する車両用過給機において、
請求項1又は請求項2に記載の遠心圧縮機を具備したことを特徴とする車両用過給機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76365(P2013−76365A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216484(P2011−216484)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】