説明

遠赤外線暖房機

【課題】発熱体を遠赤外線放射板に押圧して密着させる必要をなくし、部品点数を削減した遠赤外線暖房機を提供する。
【解決手段】抵抗ペーストからなる発熱体52が密着された面が内側になるように角筒形状に形成された遠赤外線放射板51と、その遠赤外線放射板51の内側面に対向して通気路54を形成する遮熱板53とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を放射する遠赤外線暖房機に関し、特に面状の発熱体および遠赤外線放射板を中央部に配置して遠赤外線を放射する遠赤外線暖房機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の遠赤外線暖房機は、設置された周辺全体を暖房するために、アルミ板に遠赤外線放射性セラミック材をコーティングしてなる半円筒形状の遠赤外線放射板と、厚さ0.1mm以上0.3mm未満のマイカフィルムに薄板状電熱線を貼り合わせて略半円筒曲面形状を保持するようにラミネートしてなる面状発熱体と、半円筒形状の断熱材と、半円筒形状の金属製の押さえ板が、遠赤外線放射板が最外周となるように順次重ね合わされた半円筒形状の発熱パネルユニット一対を軸垂直な略円筒形状になるように暖房機の基台に垂設された取り付け、用筒状金属板の外周面に対して遠赤外線放射板の側縁部にて向かい合わせに固定しているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2003−97811号公報(段落「0016」〜段落「0023」、図2、図3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述した従来の技術においては、放熱効率を向上させるため、半円筒形状の断熱材および押さえ板等の部品でマイカフィルムに薄板状電熱線を貼り合わせて略半円筒曲面形状を保持するようにラミネートしてなる面状発熱体を、アルミ板に遠赤外線放射性セラミック材をコーティングしてなる半円筒形状の遠赤外線放射板に押圧して密着させる必要があり、多数の部品が必要になるという問題がある。
【0004】
本発明は、このような問題を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そのため、本発明は、遠赤外線を放射する遠赤外線放射部を備えた遠赤外線暖房機において、前記遠赤外線放射部を、抵抗ペーストからなる発熱体を密着させた面を有する遠赤外線放射板で形成するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
このようにした本発明は、発熱体を遠赤外線放射板に押圧して密着させる必要がなくなり、部品点数を削減することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明による遠赤外線暖房機の実施例を説明する。
【実施例】
【0008】
図1は実施例における遠赤外線暖房機の斜視図、図2は実施例における遠赤外線暖房機の内部を示す側面図、図3は実施例における遠赤外線暖房機の内部を示す平面図である。
図において、1は遠赤外線暖房機であり、全体が円柱形状を形成し、その中央内部に発熱体および遠赤外線放射板等からなる発熱ユニットを配置して遠赤外線を放射する暖房機である。
【0009】
2は基台であり、円柱形状の遠赤外線暖房機1の底部を形成するとともにその内部に電源回路等を備えられている。また、基台2の底部には遠赤外線暖房機1を移動自在にするための脚車10が設けられ、遠赤外線暖房機1と床面との間に空気の入口となる間隙を形成し、その間隙から空気を取り入れて遠赤外線暖房機1の内部に対流を発生させ、遠赤外線暖房機1の内部の熱を外部へ排出させるようにしている。
【0010】
3は上部カバーであり、遠赤外線暖房機1の上部を形成し、発熱ユニットを保護するためのものである。
4は操作パネルであり、遠赤外線暖房機1の前面を形成するとともに電源のON/OFFを切り替える電源スイッチおよび発熱量を切り替えるための切替スイッチ等が配置されたものである。
【0011】
5は発熱ユニットであり、後述する発熱体、遠赤外線放射板および遮熱板等で構成され、角筒形状に形成されたものである。この発熱ユニット5は、遠赤外線を遠赤外線暖房機1の略全周に向けて放射するため、基台2の中央上部にネジ等で固着されている。
なお、本実施例では発熱ユニット5を六角筒形状に形成されたものとして説明するが、それに限られることなく、遠赤外線を遠赤外線暖房機1の略全周に向けて放射することができるものであれば四角筒形状や八角筒形状等の多角筒形状に形成されたものであってもよい。
【0012】
6は金属細線で構成された防護用金網であり、操作パネル4が配置された部位を除いて中央内部に配置された発熱ユニット5を囲むように縦横に配置されたものである。したがって、操作パネル4が配置された部位を除く遠赤外線暖房機1の略全周に向けて発熱ユニット5から遠赤外線を放射することができるようになっている。
7および8は熱を遮蔽する遮熱板としての板材であり、発熱ユニット5が発生した熱を遮り、上部カバー3の温度上昇を抑制するための円形板状のものである。この板材7および板材8は、図2に示すようにその間に外周に通じる通気路を形成するように所定の間隔を確保して板材7が発熱ユニット5側の下段、板材8が上部カバー3側の上段になるように固着され、発熱ユニット5との間に所定の間隔を確保しつつその発熱ユニット5と上部カバー3の間に略水平に配置されている。
【0013】
また、板材7および板材8は、図3に示すように遠赤外線暖房機1の外周円と略同心同径円になるように形成されて発熱ユニット5の上方に所定の間隔を確保して配置され、発熱ユニット5が発生した熱を遮り、後述する図6および図7に示すように上部カバー3の温度上昇を抑制することができるようになっている。
さらに、発熱ユニット5により加熱された空気は板材8に誘導されて発熱ユニット5との間に形成される通気口から外部へ排出されることにより遠赤外線暖房機1の周辺を対流熱として暖房することもできるようになる。
【0014】
9は通気筒であり、発熱ユニット5により過熱された遠赤外線暖房機1の中央部の空気を対流させるためのものである。この通気筒9は板材7に設けられた円筒形状または角筒形状の筒状のものであり、その一端(上端)が板材7の中央部近傍に形成された通気孔に整合させて垂設され、他端(下端)が発熱ユニット5の内側に位置するように形成されている。また、通気筒9の長さは、その下端が発熱ユニット5の高さの約2/5の高さに位置するように形成されている。
【0015】
なお、本実施例では通気筒9は四角筒形状としたが、筒状のものであれば角筒形状または円筒形状のものであってもよい。また、本実施例では通気筒9の下端が発熱ユニット5の高さの約2/5の高さに位置するようにしたが、遠赤外線暖房機1の中央部の過熱された空気を対流させることができるものであれば、通気筒9の長さはその長さに限定されるものではない。
【0016】
このように板材7、8および通気筒9を形成することにより、発熱ユニット5で過熱された空気は通気筒9の内部を上昇し、板材7に設けられた通気孔を通過し、さらに板材7および板材8で形成された通気路を通過して遠赤外線暖房機1の外部へ排出される。したがって、板材7,8で発熱ユニット5が発生した熱を遮ることにより上部カバー3の温度上昇を抑制して安全性を確保するとともに通気筒9および板材7ならびに板材8で形成された通気路により発熱ユニット5が過熱した空気を誘導して外部へ排出することにより遠赤外線暖房機1の周辺を暖房することもできるようになる。
【0017】
なお、操作パネル4や基台2の内部に設けられた電源回路等は従来の遠赤外線暖房機(特開2003−97811号公報)と同様なのでその説明を省略する。
次に、発熱ユニット5の構成を図4の実施例における発熱ユニットの構造を示す断面図に基づいて説明する。
図4に示すように発熱ユニット5は、遠赤外線放射板51、発熱体52、および遮熱板53により構成されている。
【0018】
遠赤外線放射板51は、衝撃に強く、短時間に加熱できて遠赤外線の放射効率が優れているホーロー板等で構成され、操作パネル4が配置される部位を除き略六角筒形状等の多角筒形状に形成されている。このように遠赤外線放射板51を角筒形状に形成して遠赤外線放射部を構成している。
発熱体52は、熱膨張しても遠赤外線放射板51との密着性が良好な素材で構成された抵抗ペースト(例えば、遠赤外線放射板51がホーロー板の場合、ホーロー板との密着性に優れた銀系焼成型ペースト)を角筒形状の内側を形成する遠赤外線放射板51の一面にスクリーン印刷し、焼成(例えば600℃、60分)して形成したものである。
【0019】
このように遠赤外線放射板51にスクリーン印刷した発熱体52は、遠赤外線放射板51との良好な密着性を維持することができるため、断熱材等の部材で遠赤外線放射板51に押圧する必要がなくなる。
ここで、遠赤外線放射板51および発熱体52を図5の実施例における遠赤外線放射板および発熱体を示す説明図(遠赤外線放射板51の展開図)に基づいて説明する。
【0020】
図5に示すように遠赤外線放射板51は、1枚の矩形状の遠赤外線放射板51に五箇所の折曲部511を形成し、1枚の遠赤外線放射板51を六面(51a〜51f)に分割するようにしている。したがって、この折曲部511を折り曲げることで略六角筒形状の遠赤外線放射部を形成することができるようになっている。
その折曲部511で分割されたそれぞれの面には発熱体52がスクリーン印刷され、焼成されるが、この発熱体52は折曲部511が折り曲げられていない1枚の遠赤外線放射板51に形成することでその製造を容易に行うことができるようになっている。なお、折曲部511には発熱体52を形成しないようにすることが望ましい。
【0021】
分割されたそれぞれの面に発熱体52が形成されるとその発熱体52が形成された面が内側になるように折曲部511を折り曲げて略六角筒形状を形成する。分割されたそれぞれの面の発熱体52の電極55a、電極55bおよび電極55cは図示しない被覆線等で基台2内部の電源回路に通電可能に結線するものとする。
このように1枚の矩形状の遠赤外線放射板51に発熱体52をスクリーン印刷および焼成するようにしたことにより、発熱体52を均一の厚さで密着させることができるようになるとともにその製造工程を簡素化することができるようになる。
【0022】
図4の説明に戻り、遮熱板53は、発熱体52が発生した熱を遮り、遠赤外線暖房機1の中央部に熱が篭るのを防止するためのものであり、遠赤外線放射板51と同様に操作パネル4が配置される部位を除き略六角筒形状等の多角筒形状に形成されたものである。この遮熱板53は遠赤外線放射板との間に所定の間隔を確保して通気路54を形成し、その遠赤外線放射板51の内側面に対向するように配置されている。このように遮熱板53を遠赤外線放射板51の内側面に対向するように配置して遮熱部を構成している。
【0023】
なお、本実施例では遮熱部を構成する遮熱板53は遠赤外線放射板51と同形状の六角筒形状に形成されたものとするが、遠赤外線放射板51と同形状なものに限定されるものでなく略円筒形状等に形成されていてもよい。
このように構成された発熱ユニット5は基台2の中央部に設置され、発熱体52が発生した熱を遠赤外線放射板51で遠赤外線暖房機1の略外周に向けて遠赤外線を放射することができるようになり、また、遮熱板53により遠赤外線暖房機1の中央部に熱が篭るのを防止するとともにその遮熱板53と遠赤外線放射板51とが形成する通気路54で発熱体52が加熱した空気を誘導して通気路54の上部から遠赤外線暖房機1の略外周に向けて対流熱として排出することができるようになる。
【0024】
図6は実施例における遠赤外線暖房機内の熱を排出する様子を示す説明図であり、遮熱板53と通気筒9との間の熱は図中矢印A、遮熱板53と遠赤外線放射板51との間の熱は図中矢印B、遠赤外線放射板51の熱は図中矢印C、遮熱板53の内部の熱は通気筒9に誘導されて図中矢印Dが示すように遠赤外線暖房機1の略外周に向けて対流熱として排出することができるようになる。
【0025】
また、図7は実施例における遠赤外線暖房機内の各部位の温度を示す説明図であり、室温20℃、通気筒9を80ミリメートルの四角筒にした場合の時間経過と遠赤外線暖房機内の各部位の温度変化を示したグラフである。図7において、温度変化71は板材7の温度変化を示し、温度変化72は板材8の温度変化を示し、温度変化73は上部カバー3の温度変化を示している。なお、このときの遠赤外線放射板51の表面温度は約250℃、遮熱板53の表面温度は約150℃である。
【0026】
図8は実施例における遠赤外線暖房機内の熱解析を示す説明図であり、図8(a)に示すように本発明の遠赤外線暖房機1の熱解析モデルを作成し、その熱解析モデルにおける機内の熱フローを矢印で示したものである。なお、図8(b)は遠赤外線暖房機1の上部の拡大図であり、また図8(a)および(b)における太い矢印は温度が高い部分、細い矢印は温度が低い部分の熱フローを示している。
【0027】
このように板材7,8で発熱ユニット5が発生した熱を遮ることにより上部カバー3の温度上昇を抑制して安全性を確保するとともに通気筒9および板材7ならびに板材8で形成された通気路により発熱ユニット5が過熱した空気を誘導して外部へ排出することにより遠赤外線暖房機1の周辺を暖房することもできるようになる。
以上説明したように、本実施例では、遠赤外線放射板51にスクリーン印刷した発熱体52は、遠赤外線放射板51との良好な密着性を維持することができるため、断熱材等の部材で遠赤外線放射板51に押圧する必要がなくなり、部品点数を削減することができるという効果が得られる。なお、発熱体52は、酸化による劣化を防ぐため無機質のコート材を塗布するとよい。
【0028】
また、遮熱板53により遠赤外線暖房機1の中央部に熱が篭るのを防止するとともにその遮熱板53と遠赤外線放射板51とが形成する通気路54で発熱体52が加熱した空気を誘導して通気路54の上部から遠赤外線暖房機1の略外周に向けて対流熱として排出することができるようになるという効果が得られる。
さらに、遠赤外線暖房機1の中央部に通気筒9を設けたことにより、発熱ユニット5で過熱された空気は通気筒9の内部を上昇し、板材7および板材8で形成された通気路を通過して遠赤外線暖房機1の外部へ排出されるため、遠赤外線暖房機1の中央部に熱が篭るのを防止するとともに遠赤外線暖房機1の略外周に向けて加熱された空気を対流熱として排出することができるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施例における遠赤外線暖房機の斜視図
【図2】実施例における遠赤外線暖房機の内部を示す側面図
【図3】実施例における遠赤外線暖房機の内部を示す平面図
【図4】実施例における発熱ユニットの構造を示す断面図
【図5】実施例における遠赤外線放射板および発熱体を示す説明図
【図6】実施例における遠赤外線暖房機内の熱を排出する様子を示す説明図
【図7】実施例における遠赤外線暖房機内の各部位の温度を示す説明図
【図8】実施例における遠赤外線暖房機内の熱解析を示す説明図
【符号の説明】
【0030】
1 遠赤外線暖房機
2 基台
3 上部カバー
4 操作パネル
5 発熱ユニット
6 防護用金網
7 板材
8 板材
9 通気筒
10 脚車
51 遠赤外線放射板
52 発熱体
53 遮熱板
54 通気路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠赤外線を放射する遠赤外線放射部を備えた遠赤外線暖房機において、
前記遠赤外線放射部を、抵抗ペーストからなる発熱体を密着させた面を有する遠赤外線放射板で形成するようにしたことを特徴とする遠赤外線暖房機。
【請求項2】
請求項1の遠赤外線暖房機において、
前記遠赤外線放射部を、多角筒形状に形成したことを特徴とする遠赤外線暖房機。
【請求項3】
請求項1または請求項2の遠赤外線暖房機において、
前記各遠赤外線放射板の内側面に対向させて遮熱板を配置して通気路を形成する遮熱部を設けたことを特徴とする遠赤外線暖房機。
【請求項4】
請求項3の遠赤外線暖房機において、
外周に通じる通気路を形成する間隔が保持された2枚の遮熱板を前記遠赤外線放射部の上部に所定の間隔を保持して略水平配置し、前記下方の遮熱板の中央部近傍に形成された通気孔に上端が整合し、下端が前記遮熱部の内側に位置するように垂設された通気筒からなる通気部を設け、
前記通気部の通気筒および通気路が、前記発熱体により加熱された空気を外周に向けて排出させるようにしたことを特徴とする遠赤外線暖房機。
【請求項5】
請求項1から請求項3または請求項4の遠赤外線暖房機において、
前記遠赤外線放射部を、発熱体を密着させた面が内側になるように遠赤外線放射板を折り曲げて多角筒形状を形成するようにしたことを特徴とする遠赤外線暖房機。
【請求項6】
請求項1から請求項3または請求項4の遠赤外線暖房機において、
前記遠赤外線放射部を、発熱体を密着させた面が内側になるようにそれぞれの遠赤外線放射板を連結して多角筒形状を形成するようにしたことを特徴とする遠赤外線暖房機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−162391(P2009−162391A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339328(P2007−339328)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(508003583)
【Fターム(参考)】