説明

遠隔損傷検出システム、遠隔損傷検出方法およびコンピュータプログラム

【目的】 遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な技術を提供する。
【構成】 被写体を定点から連続撮像する長焦点系の撮像手順と、 その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、 その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、 その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を備えた遠隔損傷検出方法に係る。 前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理を含み、 前記の強調処理手段は、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠方に存在する被写体から損傷箇所を検出する遠隔損傷検出システムおよび遠隔損傷検出に用いるコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
遠方の画像を取得して処理する技術は、天体観測の分野で広く用いられている。たとえば、特許文献1に記載される技術である。
【特許文献1】特開2002−310616号公報
【0003】
この技術は、『観測した大量の観測画像から自動的に恒星とその他の天体の分離処理を行う』ことが可能な画像処理技術を実現する。
【0004】
一方、S/N比を高める技術は、様々な分野で用いられている。たとえば、特許文献2に記載される技術である。
【特許文献2】特開2002−15692号公報
【0005】
この技術は、『顕微鏡から試料の拡大した画像を取得して積算する画像処理装置および記録媒体に関し、顕微鏡で試料の同一の視野から順次取得した複数枚の画像を積算して一致する位置に重ねて加算し、視野のドリフトによる影響を軽減した高分解能かつ高いS/N比の画像を自動生成する』という技術である。
【0006】
ところで、発電施設などの煙突から排出される煙を遠方から観測するシステムとして、特許文献3、特許文献4に開示された技術が知られている。
【特許文献3】特開昭63−88428号公報
【特許文献4】特開平10−232198号公報
【0007】
これらの技術は、ITVカメラやカラーカメラを複数台用い、各カメラ間の視差や色差を利用して煙突から排出される煙の有無を検知する、というものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
たとえば、図6に示すように、遠方にある被写体(この図では室内に設置されたロッカー)を中望遠レンズと一眼レフデジタルカメラにて撮影し、デジタル画像を拡大しても被写体から傷を見つけ出すことはできない。
さて、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知する技術は、いろいろな分野で望まれている。たとえば、簡単には近づくことができない場所に設置された鉄塔、高温になっているパイプなどである。
しかし、特許文献1から4のいずれの技術を用いても、あるいはそれらを組み合わせても、遠方に存在する設備や建造物の異常発生を検知することは難しかった。
【0009】
本発明が解決すべき課題は、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な技術を提供することにある。
請求項1から請求項3に記載の発明は、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出システムを提供することにある。
また、請求項4から請求項5に記載の発明は、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出方法を提供することにある。
また、請求項6から請求項7に記載の発明は、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出のためのコンピュータプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するに当たって、本発明者らは、まず、長焦点光学系を利用することに着目した。その一方、長焦点光学系により撮像した場合、該光学系の倍率が高くなるほど画像が暗くなってしまうことに関する問題点、「異常」を「正常」と区別するための単純なアルゴリズム、広い範囲の撮影が必要であるためにパノラマ画像が必要な場合があることなどに着目し、本発明を完成するに至った。
【0011】
(請求項1)
請求項1記載の発明は、 被写体を定点から連続撮像する長焦点系の撮像手段と、 その撮像手段で取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手段と、 その画像重ね合わせ手段から抽出可能な非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手段と、を備えた遠隔損傷検出システムに係る。 前記の画像重ね合わせ手段は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理手段を備え、 前記の強調処理手段は、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする。
【0012】
(用語説明)
「被写体」とは、ダム、配管、塔などの建造物、ガスタンク、プラントなどの機械など、本発明に係る遠隔損傷検出システムによって検証を望むものである。
「長焦点系」とは、単焦点系のレンズ(以下、「単レンズ」という)を用いることが好ましい。この場合、ターレットを設け、複数種類の単レンズを選択可能な構成とすることがより好ましい。ターレットを用いることにより、単レンズの自動選択も可能となる。ズーム機能を有するレンズの場合、一般に像面湾曲が大きい点で欠点があるが、高屈折率のガラスで安定した像が得られるものであれば使用することができる。なお、撮像手段として、CCD撮像素子を備えたカメラ(CCDカメラ)の使用だけでなく、CMOS撮像素子を備えたカメラを用いることもできる。
【0013】
「サブピクセル処理」とは、一ピクセル以下の処理である。対象物の境界や位置を求める時、それらの検出(もしくは計測)精度は、二値化処理後の画像では、一画素となるが、対象物の境界近傍の輝度勾配を利用することによって一画素以下の精度を得ることができる。例えば、対象物の寸法計測では、境界近傍の輝度勾配を微分することによって境界を精度高く(たとえば、0.1画素程度)計算した結果を求められる。
「ハイパスフィルタ」とは、入力画像の輝度変化の多い部分を通過させるフィルタである。画像のエッジに反応し、エッジの両側に正負のピークを強調できる。
【0014】
(作用)
長焦点系の撮像手段を用いて、被写体を定点から連続撮像する。その撮像手段で取得した連続する複数時刻の画像データについて、画像重ね合わせ手段を用いて重ね合わせ処理を施す。画像データの重ね合わせ処理によって、S/N比を高めることができる。
重ね合わせ処理における画像データ間のずれは、サブピクセル処理手段が修正する。 その画像重ね合わせ手段から抽出可能な非正常箇所に対して、その非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を施し、非正常箇所を強調した画像データを強調処理手段が作成する。
以上によって、離れた場所にある被写体から、非正常箇所を強調した画像データを得ることができる。その「非正常箇所」は、変形、変質、破損などの異常が起きていると予想できる。
【0015】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遠隔損傷検出システムを限定したものである。
すなわち、前記の画像重ね合わせ手段によって重ね合わせ処理された重ね合わせ画像データから被写体における正常箇所を特定するとともに、正常箇所に該当しない非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手段を備え、 前記の強調処理手段は、非正常箇所抽出手段が抽出した非正常箇所を強調した画像データを作成することとしたことを特徴とする。
「非正常箇所抽出手段」とは、たとえば、周囲の画素と比較して色や輝度が異なることを発見するなどの手法による。
【0016】
(作用)
請求項2に記載の発明によれば、非正常箇所を自動抽出することができる。そのため、非正常箇所を強調した画像データの作成までを自動化できる。
【0017】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2のいずれかに記載の遠隔損傷検出システムを限定したものである。
すなわち、 前記の撮像手段には、撮像動作を制御する撮像制御手段を備え、 その撮像制御手段は、被写体が一画像で収まらない大きさである場合に当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように、当該撮像手段を動かすこととする。 また、前記の画像重ね合わせ手段は、前記の撮像手段によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対して、モザイク合成処理を施すモザイク合成手段を備えたことを特徴とする。
【0018】
(作用)
被写体が一画像で収まらない大きさである場合において、当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように、その撮像制御手段が当該撮像手段を動かす。 撮像手段によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対して、モザイク合成手段がモザイク合成処理を施す。 モザイク合成された画像データは、サブピクセル処理手段が修正する。 画像重ね合わせ手段から抽出可能な非正常箇所に対して、その非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を施し、非正常箇所を強調した画像データを強調処理手段が作成する。
以上によって、離れた場所にある被写体が一画像で収まらない大きさであっても、非正常箇所を強調した画像データを得ることができる。
【0019】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、 被写体を定点から連続撮像する長焦点系の撮像手順と、 その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、 その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、 その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を備えた遠隔損傷検出方法に係る。 前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理を含み、 前記の強調処理手段は、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする。
【0020】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、 被写体が一画像で収まらない大きさである場合において、当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように長焦点系の撮像手段を制御する撮像制御手順と、 その撮像制御手順によって制御された状態にて被写体を定点から連続撮像する撮像手順と、 その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、 その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、 その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、によって遠隔地にある被写体の損傷箇所を検出する方法に係る。
前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理と、前記の撮像手順によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対してモザイク合成処理を施すモザイク合成手順とを含むとともに、 前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする。
【0021】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、 被写体を定点から連続撮像することが可能な長焦点系の撮像手段を用いた遠隔損傷検出装置の制御プログラムに係る。
そのプログラムは、前記の撮像手段に対して被写体を定点から連続撮像させる撮像手順と、 その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、 その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、 その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を遠隔損傷検出装置の制御用コンピュータに実行させるものであり、 前記の画像重ね合わせ手順には、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理を含み、 前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする。
【0022】
(請求項7)
請求項7に記載の発明は、 被写体を定点から連続撮像することが可能な長焦点系の撮像手段と、被写体が一画像で収まらない大きさである場合に当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように前記の撮像手段を動かす撮像移動手段とを備えた遠隔損傷検出装置の制御プログラムに係る。
そのプログラムは、前記の撮像手段に対して被写体を定点から連続撮像させる撮像手順と、 その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、 その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、 その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を遠隔損傷検出装置の制御用コンピュータに実行させるものであり、 前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理と、前記の撮像手順によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対してモザイク合成処理を施すモザイク合成手順とを含むとともに、 前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする。
【0023】
請求項6から請求項7に係るコンピュータプログラムを、チップ化して遠隔損傷検出システムの制御装置とすることもできる。
また、記録媒体へ記憶させて提供することもできる。ここで、「記録媒体」とは、それ自身では空間を占有し得ないプログラムを担持することができる媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD−R、MO(光磁気ディスク)、DVD−Rなどである。
【発明の効果】
【0024】
請求項1から請求項3に記載の発明によれば、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出システムを提供することができた。
また、請求項4から請求項5に記載の発明によれば、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出方法を提供することができた。
また、請求項6から請求項7に記載の発明によれば、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出のためのコンピュータプログラムを提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて更に詳しく説明する。ここで使用する図面は、図1から図5である。図1は、本発明の実施形態を示すフローチャートである。図2は、長焦点系による画像の取得とその画像データの重ね合わせについて説明するための概念図である。図3は、パノラマ画像を合成する場合について説明する概念図である。図4は、画像処理の手段を示す概念図である。図5は、本実施形態による損傷箇所の抽出を示す画像データである。
【0026】
本実施形態は、遠方に存在する設備や建造物などに異常が発生していないかどうかを、現場に赴かずに検知することが可能な遠隔損傷検出システム、遠隔損傷検出方法である。 図1に基づいて、全体の手順を簡単に説明する。
まず、検査の対象となる被写体について、長焦点系による画像データを連続して取得する(ステップ1)。ここにおける画像データ取得のための長焦点系の撮像手段は、CCDカメラに、長焦点光学系が装着されるが、長焦点光学系としては、単焦点系のレンズ(以下、「単レンズ」という)を用いる。ターレットを設け、複数種類の単レンズを選択可能な構成も備えている。CCD撮像素子を備えたカメラ(CCDカメラ)を使用するが、これに代え、CMOS撮像素子を備えたカメラを用いることもできる。
【0027】
連続して取得した画像データは、理論的には全く同じ画像データとなるはずであるが、量子化誤差や光学系収差によって,実際には同じにはならない。そこで、連続して取得した複数の画像データの重ね合わせを行う(ステップ2)。
その画像重ね合わせによる重ね合わせ画像データから、平均的な画素を取り除くことによって非正常箇所を抽出する(ステップ4)。そして、抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する(ステップ5)。
なお、被写体が一画像で収まらない大きさである場合には、パノラマ画像の合成を実行する(ステップ3)。
【0028】
図2を用いて、ステップ1およびステップ2について説明する。
図2(A),(B),(C)に示すのは、連続撮影をして得た画像モデルである。前述したように、量子化誤差や光学系収差によって同じにはならない様子を図示している。すなわち、図2を目視しても明確ではないが、図2(B)は、図2(A)の三角形が上方向に0.6画素分移動しており、図2(C)は、図2(A)の 三角形が下方向に0.6画素分移動している。このようなズレが連続撮影によって発生してしまうのである。
そこで、複数画像の重ね合わせ処理を実行することによって、図2(A),(D),(E)という画像モデルを得る。
【0029】
重ね合わせ処理とは、画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理であり、境界近傍の輝度勾配を微分することによって境界を精度高く(たとえば、0.1画素程度)計算した結果を求めるのである。そうして、複数の画像データにおける境界を一致させ、ずれを解消するのである。
【0030】
続いて、図3を用いて、ステップ3について説明する。
撮像手段の撮影角度を変更することで、撮像データG1,G2を得たとする。それら撮像データG1,G2は、被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データとなっている。そして、部分的に重なる画像データHに対して、モザイク合成処理を施すことで、連続的な画像データを得るのである。
【0031】
次に、図4を用いて、ステップ4について説明する。ステップ4は、重ね合わせ画像データから、平均的な画素を取り除くことによって非正常箇所を抽出するものである。
この図4では、3×3の画素における中央の画素が処理対象である。
図4(A)に示すように、処理対象の画素が白であり、その周囲の8つの画素もまた全て白である場合には、図4(C)に示すように処理後の画素も「白」となる。
図4(B)に示すように、処理対象の画素が色つきであり、その周囲の複数の画素が色つきである場合には、図4(D)に示すように処理後の画素も「色つき」となる。前記「複数」がいくつであるかは、抽出アルゴリズムや処理手順などによって異なる。
【0032】
図示は省略するが、処理対象の画素が白であり、その周囲の8つ全ての画素が色つきである場合には、処理後の画素は「色つき」に変換される。同様に、処理対象の画素が色つきであり、その周囲の8つ全ての画素が白である場合には、処理後の画素は「白」に変換される。それらの画素は雑音であると判断されるからである。
【0033】
図5に示すのは、約10メートル離れた被写体(室内に設置されたロッカー)における約50ミクロンメートル幅の傷の画像である。非正常箇所を視認可能とするため、ハイパスフィルタ処理を施している。ハイパスフィルタ処理によって、入力画像の輝度変化の多い部分を通過させ、画像のエッジの両側に正負のピークを強調している。
図6との比較にて、本実施形態の効果は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、建設業、機器の製造業、建造物や機械のメンテナンス業、塗装業などにおいて、利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施形態を示すフローチャートである。
【図2】長焦点系による画像の取得とその画像データの重ね合わせについて説明するための概念図である。
【図3】パノラマ画像を合成する場合について説明する概念図である。
【図4】画像処理の手段を示す概念図である。
【図5】本実施形態による損傷箇所の抽出を示す画像データである。
【図6】従来技術による限界を示す画像データである。
【符号の説明】
【0036】
G1,G2 撮像データ H 重なった撮像データ
C 撮像手段(長焦点系のCCDカメラ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を定点から連続撮像する長焦点系の撮像手段と、
その撮像手段で取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手段と、
その画像重ね合わせ手段から抽出可能な非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手段と、を備え、
前記の画像重ね合わせ手段は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理手段を備え、
前記の強調処理手段は、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする遠隔損傷検出システム。
【請求項2】
前記の画像重ね合わせ手段によって重ね合わせ処理された重ね合わせ画像データから被写体における正常箇所を特定するとともに、正常箇所に該当しない非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手段を備え、
前記の強調処理手段は、非正常箇所抽出手段が抽出した非正常箇所を強調した画像データを作成することとしたことを特徴とする請求項1に記載の遠隔損傷検出システム。
【請求項3】
前記の撮像手段には、撮像動作を制御する撮像制御手段を備え、
その撮像制御手段は、被写体が一画像で収まらない大きさである場合に当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように、当該撮像手段を動かすこととし、
前記の画像重ね合わせ手段は、前記の撮像手段によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対して、モザイク合成処理を施すモザイク合成手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の遠隔損傷検出システム。
【請求項4】
被写体を定点から連続撮像する長焦点系の撮像手順と、
その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、
その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、
その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を備え、
前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理を含み、
前記の強調処理手段は、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする遠隔損傷検出方法。
【請求項5】
被写体が一画像で収まらない大きさである場合において、当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように長焦点系の撮像手段を制御する撮像制御手順と、
その撮像制御手順によって制御された状態にて被写体を定点から連続撮像する撮像手順と、
その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、
その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、
その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、によって遠隔地にある被写体の損傷箇所を検出する方法であって、
前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理と、前記の撮像手順によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対してモザイク合成処理を施すモザイク合成手順とを含むとともに、
前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とする遠隔損傷検出方法。
【請求項6】
被写体を定点から連続撮像することが可能な長焦点系の撮像手段を用いた遠隔損傷検出装置の制御プログラムであって、
そのプログラムは、前記の撮像手段に対して被写体を定点から連続撮像させる撮像手順と、
その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、
その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、
その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を遠隔損傷検出装置の制御用コンピュータに実行させるものであり、
前記の画像重ね合わせ手順には、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理を含み、
前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項7】
被写体を定点から連続撮像することが可能な長焦点系の撮像手段と、被写体が一画像で収まらない大きさである場合に当該被写体における撮影部位が部分的に重なる画像データを取得できるように前記の撮像手段を動かす撮像移動手段とを備えた遠隔損傷検出装置の制御プログラムであって、
そのプログラムは、前記の撮像手段に対して被写体を定点から連続撮像させる撮像手順と、
その撮像手順にて取得した連続する複数時刻の画像データについて重ね合わせ処理を施す画像重ね合わせ手順と、
その画像重ね合わせ手順による重ね合わせ画像から非正常箇所を抽出する非正常箇所抽出手順と、
その非正常箇所抽出手順にて抽出された非正常箇所を強調した画像データを作成する強調処理手順と、を遠隔損傷検出装置の制御用コンピュータに実行させるものであり、
前記の画像重ね合わせ手順は、重ね合わせ処理における画像データ間のずれを修正するサブピクセル処理と、前記の撮像手順によって取得した撮影部位が部分的に重なる画像データに対してモザイク合成処理を施すモザイク合成手順とを含むとともに、
前記の強調処理手順には、非正常箇所を視認可能とするハイパスフィルタ処理を含むこととしたことを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−246574(P2009−246574A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−88882(P2008−88882)
【出願日】平成20年3月29日(2008.3.29)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】