説明

部分耕耘直播装置

【課題】複数の耕起溝Uを耕起した後、播種、覆土そして鎮圧をするという部分耕耘直播を行うにあたり、降り積もった雨が耕起溝Uに入り込んでしまうことを防止する。
【解決手段】部分耕耘直播装置1の耕耘軸8に、耕起溝Uを形成するための耕耘爪10に加えて排水溝X形成用の爪20を、耕起溝Uのあいだに位置するようにして設けて、耕起溝Uの耕起と同時に排水溝Xも作耕できるように、これによって、地表面に溜まった雨水を排水溝Xに誘導して排水することができ、耕起溝Uが水浸しになってしまうことを回避することができるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不耕起状態の圃場を部分的に耕起して複数条の耕起溝を形成すると共に、該各耕起溝にそれぞれ播種を行う部分耕耘直播装置の技術分野に属するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、不耕起状態の圃場を部分的に耕起して複数条の耕起溝を作耕し、これら耕起溝に播種をし、また必要において施肥まで行う部分耕耘直播装置において、耕耘軸に植設された爪ホルダを介して取り付けた耕耘爪の回転によって耕起していた(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−299030号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが前記従来のものは、耕起溝を作耕し、直播するものであるため、雨が降った場合に、該雨は不耕起面での吸収が悪いため、不耕起面から耕起溝に流れ込んで覆土を流してしまうだけでなく、ひどいときには種や肥料の流出までをも招来するという問題があり、ここに本発明が解決せんとする課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、耕耘軸に取付けた耕耘爪によって耕起した複数条の耕起溝にそれぞれ播種するように構成した部分耕耘直播装置において、前記耕耘軸に、排水溝を作耕するための排水溝作耕手段を設けたことを特徴とする部分耕耘直播装置である。
請求項2の発明は、排水溝作耕手段は、作耕用の爪またはディスクであることを特徴とする請求項1記載の部分耕耘直播装置である。
請求項3の発明は、排水溝は、耕起溝同志のあいだに形成されることを特徴とする請求項1または2記載の部分耕耘直播装置である。
【発明の効果】
【0005】
請求項1の発明とすることにより、耕起溝の作耕と同時に排水溝の作耕もできることになって作業性が向上すると共に、耕起溝を雨から保護することができる。
請求項2の発明とすることにより、作耕された排水溝を、溝側面が固く締まったものにできて排水溝が早期のうちに崩れてしまうことを回避できる。
請求項3の発明とすることにより、耕起溝の雨からの保護をより確実にできることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次ぎに、本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。図中、1はトラクタ等の牽引走行車に昇降リンク機構を介して連結される部分耕耘直播装置であって、該部分耕耘直播装置1は、耕耘ユニット2と、該耕耘ユニット2から後方に突出したツールバー3にホルダ4および平行リンク機構5を介して昇降可能に連結した播種ユニット6とを備えて構成されている。
【0007】
耕耘ユニット2は、トラクタ等の牽引走行車側からPTO動力が入力されるギアケース7と、該ギアケース7の左右両側に位置して耕耘ユニット2の横伝動筒を兼ねる左右のアーム8とを備え、左右方向一方(本実施の形態では左側)アーム8の外端(左端)には伝動ケースであるチエンケース9が設けられ、他方のアーム8には図示しないサイドプレートが取付けられている。そしてチエンケース9およびサイドプレートのあいだには、後述するように耕耘爪10が爪ホルダ11を介して取付けられた耕耘軸12が回転可能に軸支した所謂サイドドライブタイプの伝動機構を本実施の形態では採用している。そして耕耘ユニット2のリヤカバー2aの後方には耕深調節用の尾輪13をツールバー3に支持している。
【0008】
一方、播種ユニット6は、稲や麦等の種子を収容する種子タンク14と、該種子タンク14に収容した種子を播種する播種部15と、播種溝形成用の溝切り刃16と、播種溝を覆土する覆土板17と、播種溝の上面を鎮圧する鎮圧ローラ18と、接地輪19とを備えて構成されている。
そして耕耘爪10で作耕した耕起溝Uをリヤカバー2aで埋め戻した後、該埋め戻した耕起溝Uの一部に溝切り刃16で播種溝を形成し、該播種溝に播種、覆土、そして鎮圧をすることで部分耕起直播が実行されるようになっている。
【0009】
前記耕耘軸12には、複数条の耕起溝Uを所定の間隔を存して部分耕起すべく対応する位置に耕耘爪10を取付けるための爪ホルダ11が軸回り方向に複数取付けられているが、爪ホルダ11は、耕起溝Uの幅中心Oに対して左右にオフセット(振り分け)される状態で軸回り方向左右交互に放射状に取り付けられている。つまり一つの耕起溝Uを形成するための爪ホルダ11は、耕起溝Uの溝幅中心Oを基準(中心)として左側に寄って左側爪ホルダ11Lと、右側に寄っている右側爪ホルダ11Rとが交互に軸周り方向位置をずらせて設けられており、これによって左右爪ホルダ11L、10Rの基部が側面視で互いにオーバーラップする状態で取付けられ、これによって爪ホルダ11の取付け本数を増加できる配慮がなされている。
【0010】
そして前記各爪ホルダ11に、背面視(正面視でも良い)で先端部が左右方向一方に折曲した折曲部10aを有する耕耘爪(耕耘刃)10が取付けられるが、この場合に、図2、3に示す第一の実施の形態のものでは、耕耘爪10は、前記折曲部10aが溝幅中心Oを向く内向きになるものと、溝幅中心Oとは反対側を向く外向きになるものとが左右の爪ホルダ11L、11Rにそれぞれ設けられている。つまり本実施の形態では、4本ある左側爪ホルダ11Lのうち、3本の爪ホルダ11Lには折曲部10aoが外向き(図2において折曲部10aが左側(溝幅中心Oとは逆側)を向く状態)になるようにして耕耘爪10Loが取付けられ、1本の爪ホルダ11Lには折曲部10aiが内向き(図2において折曲部10aが右側(溝幅中心O側)を向く状態)になるようにして耕耘爪10Liが取付けられている。
【0011】
これに対し、4本ある右側爪ホルダ11Rのうち、3本の爪ホルダ11Rには折曲部10aが外向き(図2において折曲部10aが右側(溝幅中心Oとは逆側)を向く状態)になるようにして耕耘爪10Roが取付けられ、1本の爪ホルダ11Lには折曲部10aが内向き(図2において折曲部10aが左側(溝幅中心O側)を向く状態)になるようにして耕耘爪10Riが取付けられている。
そして主に、外向きの耕耘爪10で耕起溝Uの溝側面と溝底面とを作耕することになるが、耕耘爪10について外向きだけとした場合、オフセットした左右耕耘爪10L、10Rのあいだが空いてしまうため耕耘不足となった残耕部Wがリブ状に形成されてしまうことになり、そこでこの残耕部Wを、内向きの耕耘爪10の折曲部10aを、オフセット配置される外向きの耕耘爪10の折曲部10aと側面視において重合させて耕耘するようになっている。
【0012】
因みに、図6に耕耘爪10について方向を変えて取付けた場合に作耕される耕起溝Uの例について図示するが、(A)のものは、前述したように左右の耕耘爪10L、10Rをそれぞれ外側に向けて耕起した場合の耕起溝であって、最も幅広の耕起溝となる。これに対し、(B)のものは左右の耕耘爪10L、10Rをそれぞれ内向きに取り付けた場合の耕起溝であって、最も幅狭な耕起溝Uとなる。これに対し(C)(D)のものは、左右の耕耘爪10L、10Rの向きを内向き、外向きにしたものと、逆に外向き、内向きにしたものであって、耕起溝Uの溝幅が前記(A)(B)の耕起溝Uの溝幅の中間で同じになるが、耕起溝Uが形成される位置が、右側爪ホルダ11R側に偏倚しているか、左側爪ホルダ11L側に偏倚しているかの違いが生じる。そして、このようにすることで、耕起溝Uの溝幅を異ならしめたり、耕起位置を変更したりすることが必要においてできることになる。
【0013】
また本実施の形態では、6条の耕起溝Uを形成するようになっているが、そのうちの左右中央位置の耕起溝U間には排水溝Xを作耕するための排水溝形成用爪20が排水溝形成用爪ホルダ21を介して取付けられている。この爪ホルダ21も左右にオフセットされているが、本実施の形態では耕耘爪用の爪ホルダ11よりも本数が少ない設定になっている。そして排水溝形成用爪20は、折曲部20aが何れも内向きとなるようにして取付けられるが、これは作耕された排水溝Xの溝側面Yが、排水溝形成用爪20の爪基端部20bによって恰もコテで撫で付けられて固く締まる状態で形成され、これによって排水溝Xの溝側面Yが早期のうちに崩れ落ちてしまわないよう配慮されている。尚、排水溝Xを形成する場合、排水溝形成手段としては前記実施の形態のように爪体でなく、図5に示すディスク体22のようなものを採用してもコテで撫で付けられた状態になって良いことは勿論である。また、排水溝Xは、各耕起溝Uのあいだに形成したり、耕起溝Uの一つおきに形成する等、必要において形成場所や数を設定できることは言うまでもない。
【0014】
叙述の如く構成された本発明の実施の形態において、複数の耕起溝Uを耕起した後、播種、覆土そして鎮圧をするという部分耕耘直播を行うことになるが、この場合に、耕耘軸8には、耕耘爪10に加えて排水溝X形成用の爪20が耕起溝Uのあいだに位置するようにして設けられていて、耕起溝Uの耕起と同時に排水溝Xも作耕できることになる。この結果、雨が降ったような場合に、地表面に溜まった雨水を排水溝Xに誘導して排水することができ、耕起溝Uが水浸しになってしまうことを回避することができる。しかも排水溝Xは、耕起溝U同志のあいだに耕起溝Uと同時に作耕できるため、作業性が向上するだけでなく、後作業で排水溝を形成する場合のように耕起溝Uに沿わせて形成するという面倒な作業や、作物を傷付けてしまうようなことも回避される。
【0015】
しかもこの場合に、排水溝作耕手段としては、作耕用の爪体またはディスク体のようなものでよく、汎用性が高いものとなる。そして爪体とした場合には、爪ホルダ21をオフセット式に耕耘軸8に取付け、先端折曲部20aが内向きになるよう爪20を取付けることで、排水溝Xの溝側面を押し固めた強い状態にできる結果、排水溝Xが早期のうちに崩れてしまうことを防止できることになる。そしてこのような溝側面を押し固めた状態に形成するものとしては前述したようにディスク体を採用しても良いものである。
【0016】
そしてこのような排水溝Xを形成するにあたり、排水溝Xは、深さを耕起溝Uより浅くしても深くしてもよく、また溝幅についても、耕起溝Uよりも狭くしても広くしてもよく、これらは必要において適宜選択できることは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】部分耕耘直播装置の側面図である。
【図2】爪ホルダと耕耘爪の配設状態を示す背面図である。
【図3】爪ホルダと耕耘爪の配設状態を示す側面図である。
【図4】排水溝成形用爪を設けた耕耘軸の背面図である。
【図5】排水溝成形用ディスクを設けた耕耘軸の背面図である。
【図6】(A)〜(D)は耕耘爪の取り付けの変形例を示す背面図である。
【符号の説明】
【0018】
1 部分耕耘直播装置
8 耕耘軸
10 耕耘爪
11 爪ホルダ
20 排水溝形成用爪
21 爪ホルダ
22 排水溝形成用ディスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
耕耘軸に取付けた耕耘爪によって耕起した複数条の耕起溝にそれぞれ播種するように構成した部分耕耘直播装置において、前記耕耘軸に、排水溝を作耕するための排水溝作耕手段を設けたことを特徴とする部分耕耘直播装置。
【請求項2】
排水溝作耕手段は、作耕用の爪またはディスクであることを特徴とする請求項1記載の部分耕耘直播装置。
【請求項3】
排水溝は、耕起溝同志のあいだに形成されることを特徴とする請求項1または2記載の部分耕耘直播装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−244257(P2007−244257A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−70296(P2006−70296)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】