説明

配線基板、実装構造体および電子装置

【課題】電子部品との接続信頼性を向上させる要求に応える配線基板を提供すること。
【解決手段】金属板2と、複数の絶縁層3および絶縁層3上に配された導電層4を有し、金属板2の少なくとも一主面上に配された配線層5とを備え、絶縁層3は、金属板2の一主面に接して設けられた、金属板2よりも平面方向の熱膨張率が大きい樹脂を主成分とする第1の絶縁層6と、第1の絶縁層6上に積層された、金属板2よりも平面方向の熱膨張率が小さい第2の絶縁層7とを具備しており、第2の絶縁層7は、無機絶縁材料から成る互いに接続した複数の第1粒子を含んでいるとともに、第1粒子同士の間隙に第1の絶縁層6の一部が介在している配線基板1である。配線層5と金属板2との熱膨張差を小さくすることができ、電子部品との接続信頼性を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(例えば、各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器およびその周辺機器)等に使用される配線基板、この配線基板に電子部品を実装した実装構造体、およびこの実装構造体を有する電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器に使用される電子部品の高機能化に伴い電子部品の発熱量が増大してきている。そこで、電子部品で発生した熱を効率的に放出させるため、配線基板の芯材に金属板を使用することがある。
【0003】
特許文献1には、芯材となる金属板と、この金属板の表裏両面に被覆された樹脂および導電層から成る配線層とを備えた、メタルコア基板が記載されている。
【0004】
ところで、一般的に金属と樹脂とは互いの熱膨張率が異なり、メタルコア基板に熱が印加された場合に、金属板と絶縁物との平面方向の熱膨張差が大きくなるため、金属板と配線層との境界面に応力が印加され、この応力によって金属板から配線層が剥離するおそれがある。
【0005】
その結果、メタルコア基板の接続信頼性が低下し、ひいては実装構造体の電気的信頼性が低下するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−353584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、電子部品との接続信頼性を向上させる要求に応える配線基板、この配線基板に電子部品を実装した実装構造体、およびこの実装構造体を有する電子装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る配線基板は、金属板と、複数の絶縁層および該複数の絶縁層上に配された導電層を有し、前記金属板の少なくとも一主面上に配された配線層とを備え、
該配線層の前記複数の絶縁層は、前記金属板の前記一主面に接して設けられた、前記金属板よりも平面方向の熱膨張率が大きい樹脂を主成分とする第1の絶縁層と、該第1の絶縁層に接するように該第1の絶縁層上に積層された、前記金属板よりも平面方向の熱膨張率が小さい第2の絶縁層とを具備しており、該第2の絶縁層は、無機絶縁材料から成る互いに接続した複数の第1粒子を含んでいるとともに、該複数の第1粒子同士の間隙に前記第1の絶縁層の一部が介在していることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一形態に係る配線基板によれば、金属板の一主面に配された配線層が、金属板よりも平面方向の熱膨張率が大きい第1の絶縁層と、金属板よりも平面方向の熱膨張率が小さい第2の絶縁層とから構成され、かつ第2の絶縁層と第1の絶縁層とを積層して、第2の絶縁層に含まれている互いに接続した複数の第1粒子の間隙に第1の絶縁層の一部が介在していることにより、第1の絶縁層の熱膨張を第2の絶縁層が抑制するため、配線層
と金属板との熱膨張差を小さくすることができ、電子部品との接続信頼性を向上させることができ、配線基板の信頼性を向上させることができる。また、ひいては、電子部品が実装された実装構造体、およびこの実構造体を有する電子装置についての電気的な信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の断面図である。
【図2】図1に示した配線基板の第2の絶縁層の拡大断面図である。
【図3】図1と異なる他の配線基板の断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る実装構造体の断面図である。
【図5】図4とは異なる実装構造体の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る電子装置の断面図である。
【図7】配線基板が有する金属板に形成されたスルーホール周辺の拡大断面図である。
【図8】配線基板が有する金属板に形成された切り欠き部周辺の拡大断面図である。
【図9】図1に示した配線基板に係る金属板を準備する工程を説明する断面図である。
【図10】図1に示した配線基板の積層シートを準備する工程を説明する断面図である。
【図11】図1に示した配線基板に係る複数の絶縁層を作製する工程を説明する断面図である。
【図12】図1に示した配線基板に係るスルーホール導体を作製する準備をする工程を説明する断面図である。
【図13】図1に示した配線基板に係るスルーホール導体を作製する工程を説明する断面図である。
【図14】図1に示した配線基板に係る埋め込み絶縁体を作製する工程を説明する断面図である。
【図15】図1に示した配線基板に係る配線層を作製する工程を説明する断面図である。
【図16】図1に示した配線基板に係る配線層の積層工程を説明する断面図である。
【図17】図6に示した電子装置の第1実装構造体に係る配線層を除去する工程を説明する断面図である。
【図18】図6に示した電子装置の第1実装構造体に係る樹脂前駆体を塗布する工程を説明する断面図である。
【図19】図6に示した電子装置の第1実装構造体に係る凹部および第2のハンダボールを作製する工程を説明する断面図である。
【図20】図6に示した電子装置の第2実装構造体を準備する工程を説明する断面図である。
【図21】図6に示した電子装置を作製する工程を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<配線基板>
以下、本発明の一実施形態に係る配線基板について、図1、図2および図7を用いて説明する。
【0012】
図1に示した配線基板1は、金属板2と、金属板2の両主面に設けられ、各々で複数の絶縁層3および導電層4を有する複数の配線層5とを有しており、金属板2の両主面の配線層5同士が、金属板2を貫通したスルーホール導体21によって電気的に接続されている。
【0013】
金属板2は、例えば銅、アルミニウム、ニッケルまたはこれらの合金等の高伝熱性の金属によって形成されており、配線基板1上に設けられる電子部品が発する熱を放出するための放熱部材として機能するとともに、配線基板1の芯材として機能する。金属板2は、端面が露出しているため、この端面から良好に熱が放出される。この金属板2は、熱伝導率が例えば50W/m・K以上430W/m・K以下に設定されており、各方向の熱膨張率が例えば1ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定されている。
【0014】
なお、熱伝導率は、JISC2141−1992に準じた測定方法により、例えばレーザフラッシュ法で測定される。熱膨張率は、市販のTMA(Thermo-Mechanical Analysis)装置を用いてJISK7197−1991に準じた測定方法により測定される。
【0015】
配線層5は、上述した金属板2の両主面に複数ずつ(本実施形態では3層ずつ)積層されており、各々が複数の絶縁層3および複数の絶縁層3上に配された導電層4を有している。具体的には、配線層5は、金属板2側から、第1の絶縁層6、第2の絶縁層7および導電層4の順に積層された構成を有している。なお、配線層5の積層数は、1層以上であれば何層でも構わず、また金属板2の一主面側または他主面側で積層数が異なっていても構わない。
【0016】
第1の絶縁層6は、基層部6Aと、基層部6Aの主面に接続され、後述する第2の絶縁層7内の間隙中に充填された充填部6Bとを有している。基層部6Aは、金属板2と導電層4との絶縁および金属板2と第2の絶縁層7との接着を図り、充填部6Bは、第1の絶縁層6と第2の絶縁層7との密着性を高めている。
【0017】
この第1の絶縁層6は樹脂材料を主成分として形成される。樹脂材料としては、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等が挙げられる。なお、第1の絶縁層6の各方向の熱膨張率は、例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に、ヤング率は0.5GPa以上5GPa以下にそれぞれ設定されている。なお、ヤング率は、例えばMTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。
【0018】
第2の絶縁層7は、第1の絶縁層6の樹脂材料よりも熱膨張率の小さい無機絶縁材料で形成された多数の粒子から成る。かかる粒子は第1粒子8と、第1粒子8よりも粒径が大きい第2粒子9とを有しており、例えば第1粒子8の粒径は例えば3nm以上110nm以下、第2粒子9の粒径は0.5μm以上5μm以下となっている。
【0019】
このような第1粒子8および第2粒子9は、各第2粒子9間に粒径の小さな多数の第1粒子8が充填された形で配置されている。そして、図2に示すように、充填された第1粒子8同士が互いに結合するとともに、第2粒子9とその周囲に配された多数の第1粒子8とが互いに結合することにより、第2粒子9同士が多数の第1粒子8を介して接着されている。
【0020】
また、第1粒子8同士あるいは第1粒子8と第2粒子9との結合は、ある程度の粒形を保持したまま互いの外周の一部で結合している。これは、一般的なセラミックスの焼結のように、セラミック粒子が粒子間の間隙を消滅させるように粒成長し、これら粒成長した粒子同士がその表面の大部分で結合するのとは、結合状態が異なる。本実施形態では、第2の絶縁層7は、同絶縁層7中における多数の粒子間の間隙は、多数の粒子の結合により消滅せず、ある程度の粒形を保持したまま結合した多数の粒子間に残存する。この間隙は、三次元的に見れば互いに連結し、例えば、網目状をなしている。
【0021】
そして、第2の絶縁層7内における粒子間の間隙には、上述した第1の絶縁層6の充填部6Bが介在している。かかる充填部6Bは、第1粒子8あるいは第2粒子9と接着しており、これによって、第1の絶縁層6は、単に第2の絶縁層7の主面に対して接着するのみならず、第2の絶縁層7の間隙の内面にも接着することとなり、第1の絶縁層6と第2の絶縁層7との接着面積が大きくなり、第1の絶縁層6と第2の絶縁層7とが強固に接着される。その結果、配線基板1に熱が印加された場合に、金属板2よりも熱膨張係数の大きい第1の絶縁層6が熱膨張しようとしても、その熱膨張が熱膨張係数の小さい第2の絶縁層7によって良好に抑制され、熱膨張係数が第1の絶縁層6よりも小さくなる。それゆえ、配線層5と金属板2との熱膨張の差が小さくなり、両者の界面における熱応力が緩和され、金属板2と複数の配線層5との剥離を良好に抑制できる。
【0022】
なお、第2の絶縁層7は、35体積%以下の間隙を有しており、その間隙中に第1の絶縁層6の樹脂が充填されている。また、第2の絶縁層7の65体積%以上を第1粒子8および第2粒子9が占めており、そのうち第1粒子8は20体積%以上40体積%以下含まれており、第2粒子9は60体積%以上80体積%以下含まれている。第1粒子8および第2粒子9を構成する無機絶縁材料としては、例えば、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウムまたは酸化カルシウム等が挙げられる。これらの材料によって形成された第2の絶縁層7の各方向の熱膨張率は、例えば0.6ppm/℃以上3ppm/℃以下に、ヤング率は100GPa以上150GPa以下にそれぞれ設定されている。
【0023】
また、第2の絶縁層7は、第1の絶縁層6に比較してヤング率が高く、十分に剛性があるため、図3に示すように、第2の絶縁層7を第1の絶縁層6よりも薄く形成しても、樹脂と粒子との熱膨張差から生じる熱応力によって第2の絶縁層7が破壊されることなく、第1の絶縁層6の熱膨張を抑制することができる。その結果、配線層5を薄型化することが可能となり、配線基板5に実装された電子部品の熱を金属板2に効率的に伝導して放熱することができ、ひいては配線基板の信頼性を向上させる。
【0024】
また、第2の絶縁層7は、第1粒子8よりも粒径の大きな第2粒子9を含んで構成されている。したがって、第1粒子8同士の結合が破壊されることで生じた亀裂が第2粒子9にまで達したとしても、この亀裂が粒径の大きい第2粒子9の表面に沿って迂回するように伸長することになるため、亀裂の伸長に大きなエネルギーが必要となる。その結果、亀裂の伸長を低減でき、第2の絶縁層7が破壊されることを良好に防止できる。
【0025】
第1粒子8および第2粒子9は、互いに同じ材料で形成しても、異なる材料で形成しても構わないが、同じ材料で形成した方が、粒子同士の結合が強固になり、第2の絶縁層7に生じるクラックを抑制するため好ましい。
【0026】
導電層4は、各第2の絶縁層7上に部分的に配され、例えば銅等の導電材料によって形成される。また、各配線層5の導電層4同士は、厚み方向に互いに間をあけて配され、ビア導体18によって上下層の互いの導電層4が電気的に接続されている。なお、導電層4およびビア導体18は、例えば鉛、錫、銀、金、銅、亜鉛、ビスマス、インジウムまたはアルミニウム等の導電材料によって構成されている。
【0027】
一方、金属板2および金属板2に接する配線層5の第1および第2の絶縁層6、7には、図7に示すように、これらの厚み方向に貫通する複数のスルーホール19が設けられ、これらスルーホール19内にスルーホール絶縁層20を介してスルーホール導体21が設けられている。
【0028】
スルーホール導体21は、図7に示すように、内部に埋め込み絶縁体22が充填された筒状体から成り、例えば銅、銀、金、ニッケルまたはクロム等の導電材料により形成され
、金属板2とこの金属板2の両主面に配された一対の複数の絶縁層3を貫通した、スルーホール19内のスルーホール絶縁層20の内面に形成され、配線層5同士を電気的に接続している。
【0029】
なお、スルーホール絶縁層20は、スルーホール導体21と金属板2とが接触してスルーホール導体21同士が電気的に短絡することを良好に防止するためのものである。また、スルーホール絶縁層20および埋め込み樹脂22は、例えばエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂またはビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料から成る。
【0030】
<配線基板の製造方法>
次に、上述した配線基板1の製造方法について、図9〜図16を用いて説明する。
【0031】
(1)まず、図9に示すように、金属板2を準備する。
【0032】
金属板2は、例えば銅、アルミニウムまたはニッケル等の高伝熱性材料から成る板体に、金属板2の両主面に積層される配線層5同士を電気的に接続するための複数のスルーホール19を従来周知のエッチング技術等で形成することによって作製される。
【0033】
なお、金属板2と複数の積層シート3’との接着強度を向上させるために、金属板2の表面を粗化してもよい。金属板2表面の粗化は、例えば蟻酸を主成分とするエッチング液等で金属板2の表面に微細な凹凸を形成することによって行なう。
【0034】
(2)次に、図10に示すように、第2の絶縁層7と、第1の絶縁層6に対応する未硬化の樹脂シート6’と、それらを支持する導電性支持体27とから成る一対の積層シート3’を準備する。
【0035】
積層シート3’は、次の方法によって作製される。まず、銅箔等の導電性支持体27上に、多数の第1粒子8および第2粒子9を含む無機絶縁ゾルを塗布し、例えば150℃〜230℃で2時間加熱することにより、無機絶縁ゾルを乾燥させて支持体17上に第2の絶縁層7を形成する。この無機絶縁ゾルは、粒径が微小な範囲、例えば110nm以下に設定された多数の第1粒子8を含んでいるため、150℃〜230℃程度の熱で第1粒子8の表面の原子が活性化し、第1粒子8と第2粒子9とが、および第1粒子8同士が結合し、これによって、粒子8、9同士が強固に結合した第2の絶縁層7が形成される。なお、第2の絶縁層7の内部には粒子間に間隙が形成されている。
【0036】
一方、樹脂シート6’を別途準備するため、未硬化樹脂を溶剤に溶かしたワニスをPETフィルム上に塗布し、これを乾燥させることによりPETフィルム状に樹脂シート6’を形成する。なお、未硬化とは、ISO472:1999に準ずるA−ステージまたはB−ステージの状態である。
【0037】
そして、例えば真空ラミネーター、ロールラミネーターあるいは真空プレスによって樹脂シート6’を第2の絶縁層7と接するように貼り合わせ、しかる後、PETフィルムを樹脂シート6’から剥離することで、積層シート3’が作製される。この貼り合わせの工程では、貼り合わせ時に加圧するともに、樹脂が熱硬化しない温度範囲(樹脂のガラス転移点温度以上、重合開始温度未満)で樹脂シート6’を加熱することにより、樹脂シート6’の樹脂を流動化させ、この流動化した樹脂を第2の絶縁層7の間隙中に充填させる。
【0038】
なお、導電性支持体27は、後にパターニングされることでスルーホール導体12の一部となる。
【0039】
(3)次に、図11に示すように、一対の積層シート3’を金属板2の両主面に積層した状態で、この積層体の両主面を加圧しながら加熱する。
【0040】
積層シート3’は、樹脂シート6’が金属板に接するように積層される。
【0041】
加熱は、例えば170℃〜220℃の温度で行なわれ、かかる加熱によって樹脂シート6’を熱硬化させる。この樹脂シート6’の加熱温度がガラス転移点温度を超えると、樹脂が流動化し、この流動化した樹脂が金属板2のスルーホール19の内部に充填される。そして、さらに加熱が進み加熱温度が樹脂の重合開始温度を超えると、充填された樹脂が熱硬化する。この熱硬化した樹脂のうち、スルーホール内部の樹脂は、後の工程で加工されることでスルーホール絶縁層20と成り、また、金属板2の両主面上の樹脂は、第1の絶縁層6の基層部6Aと成り、第2の絶縁層7の間隙に充填された樹脂は、第1の絶縁層6の充填部6Bとなる。
【0042】
(4)続いて、図12に示すように、導電性支持体27、第1の絶縁層6、第2の絶縁層7およびスルーホール19に充填された樹脂を貫通する貫通穴を形成する。
【0043】
貫通穴は、例えばドリル加工やレーザー加工等によって形成される。
【0044】
(5)次に、図13に示すように、前記貫通穴の内面および導電性支持体27の上面全体に対して、導電材料を被着させ、これを従来周知のフォトリソグラフィ技術およびエッチング技術等によってパターニングすることにより、スルーホール導体21を形成する。
【0045】
導電材料は、例えば無電解めっき法あるいは電気めっき法により、貫通穴の内壁に被着される。
【0046】
(6)続いて、図14に示すように、円筒状のスルーホール導体21の内部に、樹脂材料等を充填し、埋め込み絶縁体22を形成する。
【0047】
埋め込み絶縁体22は、流動性を有した未硬化樹脂を、スルーホール導体21の内面に充填し、これを熱硬化させて形成される。
【0048】
(7)次に、図15に示すように、第2の絶縁層7上に導電層4を、スルーホール導体21の端面および埋め込み絶縁体22を覆うように形成し、第1の絶縁層6、第2の絶縁層7および導電層4から成る配線層5を形成する。
【0049】
導電層4は、例えば従来周知のセミアディティブ法あるいはサブトラクティブ法等により、所定のパターンに形成される。
【0050】
(8)その後は、図16に示すように、(2)、(3)および(7)の工程を順次繰り返すことにより、配線層5が順次積層される。また、必要に応じて、互いに離間した導電層4同士を電気的に接続するためのビア導体18を配線層5に形成する。
【0051】
ビア導体18は、上記(3)および(7)の間のタイミングで、例えばYAGレーザー装置または炭酸ガスレーザー装置により、第1の絶縁層6および第2の絶縁層7にレーザー光を照射し、第1の絶縁層6および第2の絶縁層7を貫通するビアホールを形成するとともに、このビアホール内に、従来周知のセミアディティブ法あるいはサブトラクティブ法等によって導電材料を被着させることで形成される。
【0052】
以上の工程を経て、配線基板1が完成する。
【0053】
<実装構造体>
次に、図4に示した、配線基板に電子部品が実装された実装構造体について説明する。
【0054】
実装構造体17は、配線基板1Aと、配線基板1Aの一主面に第1のハンダボール14を介して実装された電子部品10と、配線基板1Aと第1の電子部品10との間に配されたアンダーフィル26とを備えたものである。
【0055】
本実施形態における配線基板1Aは、基本的な構成は上述した配線基板1と同様であるが、配線基板1Aにおいては、配線層5の導電層4の一部を露出するように、金属板2の両主面にそれぞれ第1および第2のソルダーレジスト層24、25が形成されている点、および第2のソルダーレジスト層25より露出した導電層4上に、マザーボードとの接続するための第2のハンダボール15が配されている点が、配線基板1と異なっている。第1および第2のソルダーレジスト層24、25は、電子部品を配線基板1Aに実装する際、および配線基板1Aをマザーボートへ実装する際に、第1および第2のハンダボール14、15が導電層4上で濡れ広がることを抑制し、所望の箇所以外の導電層4に半田が付着することを良好に防止するためのものである。
【0056】
配線基板1Aに実装された第1の電子部品10は、例えばLSIおよびメモリチップ等が挙げられ、例えば複数の第1のハンダボール14を介してフリップチップ実装等により配線基板1Aに実装される。
【0057】
アンダーフィル26は、配線基板1Aと第1の電子部品10との間に充填され、配線基板1Aと第1の電子部品10との接続面を保護するためのものであり、例えばエポキシ樹脂あるいはポリイミド樹脂等の樹脂材料により形成される。
【0058】
<実装構造体17の変形例>
実装構造体17の変形例として、図5のような実装構造体17Aを示す。
【0059】
実装構造体17Aは、実装構造体17とは配線基板の構成が異なっている。具体的には、実装構造体17の配線基板1Aでは、配線層5が金属板2の両主面に設けられていたのに対して、本例における実装構造体17Aの配線基板1Bでは、金属板2の一主面にのみ配線層5が設けられ、金属板2の他主面が雰囲気中に露出している点で異なる。また、配線基板1Aでは、第2のハンダボール13Bが金属板2の他主面に配されていたのに対し、本例の配線基板1Bでは、第1の電子部品10の周辺に第2のハンダボール15が配されている点で、実装構造体17と異なる。
【0060】
本例では、このような構成としても実装構造体17と同様の効果を奏することに加え、金属板2の他主面が雰囲気中に露出していることから、この他主面と外部との間に伝熱を遮るものがなくなり、前記他主面を介して外部に良好に放熱され、実装構造体17よりもさらに放熱効率を向上させるという顕著な効果を奏する。
【0061】
<電子装置>
次に、図6に示した、電子装置29について説明する。
【0062】
図6に示した電子装置29は、配線基板1Cの一主面に第1の電子部品10が実装された第1実装構造体17Bと、回路基板12に第2の電子部品11が実装された第2実装構造体17Cとを備えている。そして、第1実装構造体17Bが、第2実装構造体17Cが有する第2の電子部品11を覆うように配され、第1実装構造体17Bと第2実装構造体
17Cとが第2のハンダボール15を介して電気的に接続されている。
【0063】
第1実装構造体17Bは、先に述べた実装構造体17と基本的な構成は共通しているが、配線基板の構成が異なっている。具体的には、第1実装構造体17Bの配線基板1Cにおいては、金属板2の他主面に設けられた配線層5が凹部を有し、この凹部から金属板2の一部が露出している点で、実装構造体17の配線基板1Aとは異なっている。
【0064】
一方、第2実装構造体17Cは、上述した通り回路基板12の一主面において、第2の電子部品11が実装されており、回路基板12の他主面において、マザーボートと接続するための第3のハンダボール16を有している。回路基板12は、第2の電子部品11を支持する支持部材として機能するとともに、第2の電子部品11を図示しないマザーボードに電気的に接続するための接続部材として機能するものであり、第3のハンダボール16によってマザーボードに実装される。
【0065】
この回路基板12は、上述した支持部材としての機能ならびに接続部材としての機能を満たす構成であれば、特定の構成に限定されないが、第1実装構造体17Bおよび第2実装構造体17Cの間に印加される熱応力を緩和するために、回路基板12が、配線基板1〜1Cが有する配線層5を順次積層した構成を有することが好ましい。その結果、回路基板12と配線基板1との熱膨張の差を小さくすることができる。
【0066】
第2の電子部品11には、第1の電子部品10と同様に、例えば発生熱量の大きいLSIおよびメモリチップ等が挙げられる。
【0067】
そして、第2実装構造体17Cの第2の電子部品11は、第1実装構造体17Bの配線基板1Cが有する凹部に収容され、接着剤28を介して凹部内から露出する金属板2に接続されている。これにより、第2の電子部品11が発する熱を、金属板2を介して良好に放出することができる。
【0068】
なお、接着剤28は、伝熱性の良い接着材料、例えば未硬化の樹脂材料に銀あるいは銅等の金属粉末を50体積%〜70体積%程度、高充填したものが挙げられる。
【0069】
また、第1実装構造体17Bと第2実装構造体17Cとの間には、第2のハンダボール15の高さがソルダーレジスト層25の厚みよりも大きいことに起因して、空間が形成されている。この空間は、樹脂材料等で埋めても構わないが、樹脂材料で埋めずに空気を導入し、この空気を循環させることにより、放熱効率をより向上させることができる。
【0070】
<電子装置の製造方法>
次に、上述した電子装置29の製造方法を説明する。
【0071】
(1)まず、第1実装構造体17Bを準備する。
【0072】
第1実装構造体17Bは、具体的には次のように作製される。まず、上述した配線基板1を準備し、この配線基板1の金属板2の他主面において、配線層5の一部を従来周知のサンドブラスト法によって除去することにより、金属板2の一部を露出させる(図17参照)。
【0073】
次に、金属板2の露出面を覆うように、ソルダーレジスト層25に対応するフィルム状の樹脂前駆体25’を貼り付ける(図18参照)。
【0074】
続いて、従来周知のフォトリソグラフィ技術等により、樹脂前駆体25’の一部を除去
することによって、再び金属板2の一部を露出させるように配線層5の一部に凹部を形成するとともに、導電層4の一部を露出させる。
【0075】
そして、露出した導電層4の一部に、例えばスクリーン印刷法によって第2のハンダボール15を形成し、第1の電子部品10を実装することによって第1実装構造体17Bが作製される(図19参照)。
【0076】
(2)次に、図20に示すように、第2実装構造体17Cを準備する。
【0077】
第2実装構造体17Cは、まず、回路基板12を準備し、この回路基板12に対して、第2の電子部品11を実装することによって作製される。なお、回路基板12としては、従来周知の有機配線基板が用いられる。
【0078】
(3)最後に、図21に示すように、第1実装構造体17Bと第2実装構造体17Cとを接続する。
【0079】
第1実装構造体17Bと第2実装構造体17Cとの接続は、まず、第2実装構造体17Cが有する第2の電子部品11の第1実装構造体17Bとの接続面に接着剤28を塗布する。
【0080】
次に、第1実装構造体17Bの凹部に第2実装構造体17Cの第2の電子部品11が収容されるように、第1実装構造体17Bを、第2実装構造体17C上に位置合わせし、載置する。
【0081】
続いて、第1実装構造体17Bと第2実装構造体17Cとの積層体を加熱することによって、第1実装構造体17Bが有する第2のハンダボール15をリフローするとともに、接着剤28を熱硬化させることによって第1実装構造体17Bと第2実装構造体17Cが接続され、これによって電子装置29が完成する。
【0082】
なお、本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更・改良が可能である。
【0083】
例えば、上記の実施形態に係る配線基板1〜1Cでは、金属板2の両主面に設けた電気的な接続を、スルーホール導体21を介して行なっていたが、金属板2の端部に設けられた配線23を介して電気的に接続してもよい。その金属板2の端面に設けられた配線23は、金属板2の端面において切り欠き部を形成して、この切り欠き部の内面に設けるようにしてもよい。金属板2の切り欠き部内面に設けられた配線23は、図9に示すように、切り欠き部の内面に樹脂体を介して設けられ、スルーホール導体21の代わりに、金属板2の両主面を電気的に接続するものである。なお、切り欠き部の内面に設けられる配線23は、配線基板1〜1Cを多数個取りするための母基板を、スルーホール導体21をほぼ半分に分割するように切断することによって形成される。このような方法により、配線23を形成すれば、スルーホール導体21を形成することに比較して、金属板2に設けられた樹脂部の体積が小さくなり、放熱効率をより向上させることができる点で好ましい。
【0084】
また、上述した電子装置29においては、第2の電子部品11を金属板2に接着剤28を介して接続するようにしたが、接着剤はなくても構わない。この場合、第2の電子部品11を金属板2に接触させることにより、第2の電子部品11の熱を良好に金属板2に伝熱させることができる。
【符号の説明】
【0085】
1、1A、1B、1C 配線基板
2 金属板
3 絶縁層
3’ 積層シート
4 導電層
5 配線層
6 第1の絶縁層
6’ 樹脂シート
6A 基層部
6B 充填部
7 第2の絶縁層
8 第1粒子
9 第2粒子
10 第1の電子部品
11 第2の電子部品
12 電子装置
13 回路基板
14 第1のハンダボール
15 第2のハンダボール
16 第3のハンダボール
17、17A 実装構造体
17B 第1実装構造体
17C 第2実装構造体
18 ビア導体
19 スルーホール
20 スルーホール絶縁層
21 スルーホール導体
22 埋め込み絶縁体
23 配線
24 第1のソルダーレジスト層
25 第2のソルダーレジスト層
25’ 前駆体
26 アンダーフィル
27 支持体
28 接着剤
29 電子装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板と、複数の絶縁層および該複数の絶縁層上に配された導電層を有し、前記金属板の少なくとも一主面上に配された配線層とを備え、
該配線層の前記複数の絶縁層は、前記金属板の前記一主面に接して設けられた、前記金属板よりも平面方向の熱膨張率が大きい樹脂を主成分とする第1の絶縁層と、該第1の絶縁層に接するように該第1の絶縁層上に積層された、前記金属板よりも平面方向の熱膨張率が小さい第2の絶縁層とを具備しており、
該第2の絶縁層は、無機絶縁材料から成る互いに接続した複数の第1粒子を含んでいるとともに、該複数の第1粒子同士の間隙に前記第1の絶縁層の一部が介在していることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記配線層は、前記金属板の前記一主面上のみに配されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第2の絶縁層は、前記第1粒子を介して互いに接続した、該第1粒子よりも粒径の大きい複数の無機絶縁材料より成る第2粒子をさらに含むことを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第2の絶縁層の厚みは、前記第1の絶縁層の厚みよりも小さいことを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板と、
該配線基板の前記配線層上に実装された電子部品とを備えたことを特徴とする実装構造体。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板と、該配線基板が実装された回路基板と、該回路基板上に実装されるとともに、前記配線層と前記回路基板との間に配置された電子部品とを備えた電子装置において、
前記金属板は、他主面の少なくとも一部が露出しており、この露出部に前記電子部品が接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電子装置において、
前記電子部品は、前記金属板の前記露出部に対して接着剤を介して接続されていることを特徴とする電子装置。
【請求項8】
請求項6に記載の電子装置において、
前記電子部品は、前記金属板の露出部に接していることを特徴とする電子装置。
【請求項9】
請求項8に記載の電子装置において、
前記金属板は、両主面に前記配線層を有しているとともに、側面に切り欠き部と、該切り欠き部の内面に形成された絶縁体と、該絶縁体上に形成され、前記金属板の両主面に配された配線層を電気的に接続するための導体とをさらに備えていることを特徴とする電子装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2013−77699(P2013−77699A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216758(P2011−216758)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】