説明

配線基板

【課題】実装密度を低下させることなく、電子機器を静電気や雷サージから保護することが可能な配線基板を提供する。
【解決手段】電子素子5が実装される実装パッド8,10を備えた第1配線パターン3と、第1配線パターン3よりも低いインピーダンスの配線パターンである第2配線パターン21と、第1配線パターン3の実装パッド8,10から延設されたICT配線13,15と、ICT配線13,15の延設終端に形成されたICTパッド17,19とを備えている。ICT配線13,15は、ICTパッド13,15が第2配線パターン21の近傍に位置するように、第2配線パターン21に向かって延設されて、ICTパッド13,15と第2配線パターン21との間に放電ギャップGが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば静電気や雷サージ等の外部からの高電圧が印加される環境下で用いられる配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所定の配線パターンを備え電子素子が実装される配線基板には、電子素子の特性値を測定する検査を行うためのICT(In Circuit Tester)パッドを、対応する電子素子の近傍で配線パターン毎に設けたものがある(例えば、特許文献1)。
【0003】
図4は、そのようなICTパッドが設けられた配線パターンを有する配線基板60の概略図である。配線基板60は、2本の端子を有する破線で示す電子素子61、例えばコンデンサが接続される配線パターン63を有している。配線パターン63は、電子素子61の一方の端子61aが実装される実装パッド64を備えた第1配線63aと、電子素子61の他方の端子61bが実装される実装パッド65を備えた第2配線63bとからなる。実装パッド64,65には、終端にICTパッド69,70が形成されたICT配線67,68が延設されている。各ICTパッド69,70は、対応する電子素子61の特性測定用の検査素子として用いられる。
【0004】
ところで、図4に示す配線基板60が、数千〜数万Vの静電気や雷サージに曝されると、電子素子61の入出力端子に高電圧が印加され、該電子素子61の内部破壊が起こる可能性がある。内部破壊が起こると、その電子素子61は機能が低下し、または機能を失う。
【0005】
静電気や雷サージに対する対策として、例えば特許文献2および3に記載されているように、第1配線63aに一点鎖線で示す放電用配線72を接続すると共に、第2配線63bにも一点鎖線で示す放電用配線73を接続し、それらの放電用配線72,73の配線エッジ72a,73a間で所定の間隔の放電ギャップ75を形成する方法が知られている。この方法によれば、電子素子61に印加された静電気や雷サージによる電圧Vを、矢印で示すように、放電ギャップ75を介して配線エッジ72aから配線エッジ73aに放電して、放電用配線73に接続された図示しないアース回路から逃がすことにより、電子素子61を静電気や雷サージから保護している。
【特許文献1】特開2003−110212号公報
【特許文献2】実開昭63−80871号公報
【特許文献3】特開2006−216699号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
放電ギャップは、上述のような効果を奏するものの、近年の電子機器では、配線基板の実装密度を高くすることが要求されているため、放電ギャップを形成するための回路パターンを別途付加的に設けるスペースを確保することが困難化している。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたもので、電子素子の実装密度を低下させることなく、電子機器を静電気や雷サージから保護することが可能な配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明に係る配線基板は、電子素子が実装される実装パッドを備えた第1配線パターンと、前記第1配線パターンよりも低いインピーダンスの配線パターンである第2配線パターンと、前記第1配線パターンの前記実装パッドから延設されたICT配線と、前記ICT配線の延設終端に形成されたICTパッドとを備えており、前記ICT配線は、前記ICTパッドが前記第2配線パターンの近傍に位置するように、前記第2配線パターンに向けて延設されて、前記ICTパッドと前記第2配線パターンとの間に放電ギャップが形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の配線基板によれば、電子素子が実装された第1配線パターンに静電気や雷サージによる高電圧が印加された場合において、前記高電圧を、まず前記電子素子が実装された第1配線パターンから延設されたICT配線を通し、つづいて前記ICT配線のICTパッドと前記第2配線パターンとの間に形成された放電ギャップを介して放電させた後、該ICTパッドの近傍に位置し、かつ第1配線パターンよりも低いインピーダンスの第2配線パターンに向けて逃がすことができる。したがって、電子素子に前記電圧が直接印加することを防止できる。これにより、電子素子を、静電気や雷サージによる内部破壊から保護することが可能である。
【0010】
また、本発明の配線基板によれば、前記第1配線パターンの実装パッドから延設されている前記ICT配線を利用することにより、前記ICTパッドと前記第2配線パターンとの間で放電ギャップを形成できるので、この放電ギャップを介して静電気や雷サージによる高電圧を放電できる。このように、本発明は、電子素子の特性値を測定する検査を行うためだけに設けていたICTパッドを、放電用の回路パターンとしても活用するものである。したがって、静電気や雷サージによる高電圧を放電させるために、別途専用の配線パターンを設ける必要はないので、配線基板の高密度化の要求に合致する配線基板を提供することができる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態では、前記第2配線パターンには接地ランドが形成されており、前記ICTパッドは前記接地ランドの近傍に配置されて、前記ICTパッドと前記接地ランドとの間に放電ギャップが形成されている。この構成によれば、静電気や雷サージによる高電圧が第1配線パターンに印加されたとしても、前記高電圧を、前記ICTパッドと前記接地ランドとの間に形成された放電ギャップを介して放電することができるので、前記接地ランドから前記高電圧をアースすることができる。その結果、電気素子を前記高電圧からより保護し易くなる。
【0012】
本発明の好ましい実施形態では、前記第2配線パターンには、電子部品実装用ランドが形成されており、前記ICTパッドは前記電子部品実装用パッドの近傍に配置されて、前記ICTパッドと前記電子部品実装用パッドとの間に放電ギャップが形成されている。この構成によれば、静電気や雷サージによる高電圧が第1配線パターンに印加されたとしても、前記高電圧を、前記ICTパッドと前記電子部品実装用パッドとの間に形成された放電ギャップを介して放電し、第2配線パターンに導くことができる。その結果、電子素子を前記高電圧からより保護し易くなる。この構成は、特に、配線設計の制約から、前記ICTパッドを前記接地ランドの近傍に配置することが困難であるときに有利である。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る配線基板によれば、電子素子の実装密度を低下させることなく、電子機器を静電気や雷サージから保護することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0015】
(実施形態1)
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板1Aの主要部分を示す概略図である。配線基板1Aは、第1配線パターン3および第2配線パターンを含む。第1配線パターン3は、2本の端子を有する二点鎖線で示す電子素子5、例えばコンデンサが接続される第1配線パターン3を有している。第1配線パターン3は、電子素子5の一方の端子5aが実装される第1実装パッド8を備えた第1配線7と、電子素子5の他方の端子5bが実装される第2実装パッド10を備えた第2配線9とを含む。第1配線パターン3は、他の電子素子(図略)が実装される他の配線パターン(図略)に接続されている。
【0016】
第2配線パターン21は、第1配線パターン3よりも低いインピーダンスを有する配線パターンであり、アース経路に接続された接地ランド23を有している。接地ランド23は、例えばGNDスルーホールである。
【0017】
第1配線7の第1実装パッド8には、導電性のICT配線13が延設されていると共に、第2配線9の第2実装パッド10にも、導電性のICT配線15が延設されている。各ICT配線13,15は、その延設終端に形成されたICTパッド17,19が、第2配線パターン21の接地ランド23の近傍に位置するように延長されて設けられている。ここでの“近傍”とは、数千〜数万Vの静電気が第1配線パターン3へ印加されたときに、ICTパッド17,19と接地ランド23との間で他の配線パターン部分よりも優先して放電が生起される程度に接近することを意味する。これにより、各ICTパッド17,19と接地ランド23との間には、ギャップGが形成されており、このギャップGは、後述するように、第1配線パターン3に印加された静電気を放電するための放電ギャップとして作用する。
【0018】
ICTパッド17,19は、第1配線パターン3に実装された電子素子5が回路に電気的に接続されているか否かを確認する検査、および電子素子5の特性値を測定する検査を行うために、インサーキットテスタ(ICT)をプローブ接触させるためのパッドである。
【0019】
第1実施形態によれば、静電気や雷サージによる電圧Vが、例えば第1配線パターン3に加わったとしても、該高電圧Vを、接地経路を備えた第2配線パターンを通して逃がす経路が確保されている。すなわち、電圧Vは、矢印で示すように、まず第1実装パッド8から導電性ICT配線13に導かれ、つづいてICTパッド17と第2配線パターン21の接地ランド23との間に形成された放電ギャップGを介して放電され、該接地ランド23の接地経路を介してアースされる。これにより、電子素子5に直接電圧Vが印加されることを防止できる。したがって、電子素子5の内部破壊を防止でき、ひいては電子素子5を実装する配線基板1A、およびこの配線基板1Aを内蔵する電子機器(図示せず)が、機能を低下させる、または機能を失うことを防止できる。
【0020】
また、第1実施形態では、放電ギャップGを形成するために放電用の配線パターンを別途設けることなく、上記検査用に設けられるICT配線13,15を配線設計の制約に従って延設し、ICTパッド17,19を接地ランド23との間で放電ギャップGを形成するために用いているだけなので、配線基板1Aの実装密度を低下させることはなく、実装密度の高度化の要求に応えることができる。なお、ICTパッドを備えるものであれば、実装パッドに代えて実装ランドに適用してもよく、また接地ランド23に代えて、第2配線パターン21上に接地パッドを形成してもよい。
【0021】
(実施形態2)
図2は、本発明の第2実施形態に係る配線基板1Bの主要部分を示す概略図である。配線基板1Bは、第1配線パターン30、第2配線パターン47および第3配線パターン50を含む。第1配線パターン30は、3本の端子を有する二点鎖線で示す電子素子35、例えばトランジスタが接続される配線パターンである。第1配線パターン30は、電子素子35の端子35a、例えばエミッタ端子が実装される第1実装パッド36を備えた第1配線31と、電子素子35の端子35b、例えばコレクタ端子が実装される第2実装パッド37を備えた第2配線32と、電子素子35の端子35c、例えばベース端子が実装される第3実装パッド38を備えた第3配線33とからなる。第1配線パターン30の第1〜第3配線31,32,33はそれぞれ、所定の電子素子が接続される他の配線(図示せず)に接続されている。
【0022】
第2配線パターン47は、第1配線パターン30よりも低いインピーダンスを有する配線パターンであり、アース経路に接続された接地ランド48を有している。第3配線パターン50も、第2配線パターン47と同様に、第1配線パターン30よりも低いインピーダンスを有する配線パターンであり、アース経路に接続された接地ランド51を有している。接地ランド48,51は、例えばGNDスルーホールである。
【0023】
第1〜第3配線31,32,33の各実装パッド36,37,38には、導電性のICT配線40,41,42が延設されている。各ICT配線40,41は、その延設終端に形成されたICTパッド43,44が、第2配線パターン47の接地ランド48の近傍に位置するように延長されて設けられている。一方、ICT配線42は、その延設終端に形成されたICTパッド45が、第3配線パターン50の接地ランド51の近傍に位置するように延長されて設けられている。これにより、各ICTパッド43,44と接地ランド48との間、およびICTパッド45と接地ランド51との間には、ギャップGが形成されており、これらのギャップGは、後述するように、第1配線パターン30に印加された静電気を放電するための放電ギャップとして作用する。
【0024】
第2実施形態によれば、静電気や雷サージによる電圧Vが、第1配線パターン30に加わったとしても、該高電圧Vを、アース経路を備えた第2配線パターン47または第3配線パターン50を通して逃がす経路が確保されている。すなわち、例えば第1配線パターン30の第1配線31に高電圧が印加された場合、電圧Vは、矢印で示すように、まず第1実装ランド36から導電性ICT配線40に導かれ、つづいてICTパッド43と接地ランド48との間に形成された放電ギャップGを介して放電され、該接地ランド48のアース経路を介してアースされる。これにより、電子素子35に直接電圧Vが印加されることを防止できる。したがって、電子素子35の内部破壊を回避でき、ひいては、電子素子35を実装する配線基板1B、およびこの配線基板1Bを内蔵する電子機器(図示せず)が、機能を低下させる、または機能を失うことを防止できる。
【0025】
また、第2実施形態では、放電ギャップGを形成するために放電用の配線パターンを別途設けることなく、上記検査用に設けられるICT配線40,41,42を配線設計の制約に従い延設し、ICTパッド17,19を、接地ランド23との間で放電ギャップGを形成するために用いているだけなので、配線基板1Bの実装密度を低下させることはなく、実装密度の高度化の要求に応えることができる。なお、ICTパッドを備えるものであれば、実装パッドに代えて実装ランドを適用してもよく、また接地ランド23に代えて第2配線パターン21上に接地パッドを形成してもよい。
【0026】
図3は、図1の第1実施形態を変形させた変形例の概略図である。この変形例では、第2配線パターン21は、例えば2本の端子を有する二点鎖線で示す電子素子26が接続されるものであり、電子素子26の一方の端子26aが実装される第1実装パッド24を備えた第1配線27および電子素子26の他方の端子26bが実装される第2実装パッド25を備えた第2配線28を有している。そして、ICT配線13は、ICTパッド17が、第2配線パターン21の接地ランド23の近傍ではなく、第1配線27の第1実装パッド24の近傍に位置するように延設されている。これにより、ICTパッド17と実装パッド24との間には、ギャップGが形成されており、このギャップGは、後述するように、第1配線パターンに印可された高電圧を放電するための放電ギャップとして作用する。
【0027】
第2配線パターン21の実装パッド24,25に実装される電子素子26は、図1の第1配線パターン3に実装される電子素子5よりも十分に抵抗値が低い電子素子であればよい。また、そのような電子素子26として、アバランシェ効果を有する電子素子、例えばツェナーダイオードやMOS FETを用いてもよい。
【0028】
変形例の構成によれば、ICT配線13に導かれた静電気や雷サージによる電圧Vは、まずICTパッド17と第1実装パッド24との間に形成された放電ギャップGを介して放電され、つづいて実装パッド24,25に実装された電子素子26を通じて、第2配線28の接地ランド23のアース経路を介してアースされる。これにより、第1配線パターン3(図1)に実装される電子素子5(図1)に直接電圧が印加されることを防止できる。なお、実装パッド24,25に代えて、リード部品が実装される実装ランドであってもよい。
【0029】
図3の変形例は、特に、配線設計の制約から、ICTパッド17を第2配線パターン21の接地ランド23の近傍に配置することが困難であるときに有利である。
【0030】
なお、図3の変形例は、図2の第2実施形態にも適用できる。
【0031】
以上説明した配線基板は、強い静電気(±25kv程度)が印加されても故障なく動作することが求められる自動車用の車載電装品に好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線基板の主要部分を示す概略図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る配線基板の主要部分を示す概略図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る配線基板の変形例を示す概略図である。
【図4】従来の配線基板の一部を示す概略図である。
【符号の説明】
【0033】
1A 配線基板
3 第1配線パターン
5 電子素子
8,10 実装パッド
13,15 ICT配線
17,19 ICTパッド
21 第2配線パターン
23 接地ランド
G 放電ギャップ
V 静電気や雷サージによる高電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子素子が実装される実装パッドを備えた第1配線パターンと、前記第1配線パターンよりも低いインピーダンスの配線パターンである第2配線パターンと、前記第1配線パターンの前記実装パッドから延設されたICT配線と、前記ICT配線の延設終端に形成されたICTパッドとを備えた配線基板において、
前記ICT配線は、前記ICTパッドが前記第2配線パターンの近傍に位置するように、前記第2配線パターンに向けて延設されて、前記ICTパッドと前記第2配線パターンとの間に放電ギャップが形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1において、前記第2配線パターンには接地ランドが形成されており、
前記ICTパッドは前記接地ランドの近傍に配置されて、前記ICTパッドと前記接地ランドとの間に放電ギャップが形成されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1において、前記第2配線パターンには、電子部品実装用パッドが形成されており、
前記ICTパッドは前記電子部品実装用パッドの近傍に配置されて、前記ICTパッドと前記電子部品実装用パッドとの間に放電ギャップが形成されていることを特徴とする配線基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−88396(P2009−88396A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−258920(P2007−258920)
【出願日】平成19年10月2日(2007.10.2)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】