説明

酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物

【課題】水溶液のpHが酸性を呈する酸性粉末状化合物と、水溶液のpHがアルカリ性を呈するアルカリ性粉末状化合物との混合物が、大気中において、急激な連続的中和反応が起こらないように改善された混合組成物の提供。
【解決手段】酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物との混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量、混合してなる混合組成物により課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水溶液のpHが酸性を呈する酸性粉末状化合物と、水溶液のpHがアルカリ性を呈するアルカリ性粉末状化合物との混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を混合することによって、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の大気中における中和反応を抑制した混合組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物との両者を組み合わせた混合組成物の実用例は多数存在している。
例えば、掘削したふっ素汚染土を、アルミニウム塩及びカルシウム塩とともに攪拌し混合処理する第1の工程と、この第1の工程で混合処理したふっ素汚染土、アルミニウム塩、及びカルシウム塩の混合土を、固化材とともに攪拌し混合処理する第2の工程とを有する汚染土壌処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
この方法では、カルシウム塩とふっ素との反応により、難溶性のふっ化カルシウムを生成させる効果と、アルミニウム塩へふっ素を吸着させる効果によって、ふっ素汚染土中のふっ素の溶出量を低減するものである。
特許文献1で使用できるアルミニウム塩としては、硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、などの酸性化合物が挙げられ、カルシウム塩としては、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、などのアルカリ性化合物が挙げられている。
そして特許文献1の段落[0003]には、第1の工程を容易に達成にするための手段として、アルミニウム塩及びカルシウム塩の粉末を予め混合しておき、一種類の添加剤として、粉体供給装置によって供給する方法が提示されている。
アルミニウム塩及びカルシウム塩の粉末を予め混合した組成物によって、ふっ素の溶出量を低減する効果を得るためには、混合組成物を汚染土壌に添加し、土壌中の水分を介して、ふっ素イオンと反応を開始するまでに、両者が反応することは、好ましくないことは明らかである。しかし、特許文献1にはその対応策についてはなんら記載がない。
【0003】
一方、硫酸アルミニウムおよび/または硫酸鉄と酸化マグネシウムより成る組成物を必須成分とする、含水土壌用固化材が提案されている(特許文献2参照)。
特許文献2は、土壌のpHの上昇を抑えて含水土壌を固化することを目的としている。アルカリ性化合物である酸化マグネシウムが水和反応によって固化する特性を利用して、含水土壌を固化し、そのときに上昇する土壌のpHを、酸性化合物である硫酸アルミニウム/又は硫酸鉄で中和することで目的を達成している。酸化マグネシウムの水和反応によって固化する特性を十分に発揮させるためには、固化材を含水土壌に添加する前に、酸化マグネシウムと、硫酸アルミニウム/又は硫酸鉄が中和反応してしまうことは、好ましくないことは明らかである。
【0004】
また、カルシウム化合物、リン酸化合物、および鉄化合物を有効成分として含有する重金属固定化剤が提案されている(特許文献3参照)。
特許文献3は、土壌、焼却灰に含まれる鉛、水銀、カドミウム、アンチモン、ヒ素などの重金属が溶出しないように固定化させる重金属固定化剤として、アルカリ性カルシウム化合物(ケイ酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、セメント、など)、リン酸化合物、酸性鉄化合物(硫酸鉄、塩化鉄から選ばれた1種以上)を含有している。
特許文献3の重金属固定化機構は、水の存在下において、アルカリ性カルシウム化合物と酸性鉄化合物によりカルシウム−酸化鉄複合物を作り、この複合物構造の中に重金属を取り込んで重金属を不動体化すること、及びリン酸化合物の金属吸着能により重金属を吸着して不動体化するというものである。
しかし重金属固定化効果を十分に得るためには、不動体化させるための反応が、適度な含水比に調整された土壌、焼却灰と混合した状態で開始しなければならず、アルカリ性カルシウム化合物、リン酸化合物、および酸性鉄塩を混合した組成物が、土壌や焼却灰に添加する前に反応を開始してしまうことは、好ましくないことは明らかである。
【0005】
また、有機酸と炭酸カルシウムとを含む、水溶性の固形カルシウムが提案されている(特許文献4参照)。
特許文献4は、単独では水に溶け難い炭酸カルシウムに、相溶性及び安全性の優れた有機酸を混合することにより、水に短時間で溶解させることが可能で、水溶性カルシウム補給剤としての目的を達成している。
しかし、有機酸は潮解性や吸湿性が高いものが多く、吸湿した水を介して炭酸カルシウムと有機酸が中和反応を開始してしまうので、組成物の取り扱いが容易ではない。また、クエン酸、リンゴ酸、及びこれらの混合物と中和反応した場合、中和反応生成物が難溶化してしまうことは、好ましくないことは明らかである。
【0006】
また、被燃焼物の燃焼により生じる、酸性ガス及び重金属類を含む排煙を、カルシウム化合物及びリン酸塩類と接触させ、排煙中の酸性ガス、重金属類を処理することを特徴とする排煙の処理方法が提案されている(特許文献5参照)。
特許文献5は、排煙中の有害な酸性ガスと重金属類とを効果的に処理でき、排煙から分離された煤塵からの重金属溶出による汚染問題を生じる虞もない程に処理することができるもので、アルカリ性カルシウム化合物である水酸化カルシウムと、リン酸肥料を排煙中で接触させることを特徴とし、さらにpH調整剤として、酸性硫酸塩である硫酸アルミニウムや硫酸第一鉄を添加することで、より優れた重金属不溶化能力を発揮する。
しかし、特許文献5の明細書の段落[0008]に記載されているように、各化合物を混合した組成物を使用せずに、各化合物を別々に排煙中に接触させる方法では、装置が複雑化することや、手間がかかることから、コストアップは避けられない。
また作業軽減、及びコスト削減のために、各化合物を混合した組成物を使用する場合、酸性ガス、重金属類の処理効果を十分に得るためには、組成物を排煙中に接触させる前にリン酸肥料、又は酸性硫酸塩と水酸化カルシウムが中和反応してしまうことは、好ましくないことは明らかである。
【0007】
これらの特許文献1〜5では、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物のそれぞれが有する効果や特性を利用すること、あるいは混合組成物が目的に使用される段階で、両者の中和反応を起こさせることにより、生成する中和反応生成物の効果や特性を利用することによって目的を達成している。したがって、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の両者が、目的に使用される前に中和反応を起こすことは避けなければならない。
【0008】
しかしながら、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の混合物は、大気中で取り扱われる場合でも、僅かな自由水が存在した状態では、自由水を介して両者の中和反応が起こってしまう。
自由水は、湿度の高い環境におかれた材料が湿気を吸着・脱離する場合や、材料に付着(吸着)している水分が脱離する場合、潮解性の高い材料の潮解、材料への結露、などによって生じる。
中和反応は、発熱反応であるため、反応が起きると共に熱が生じる。この発熱は、結晶水の脱離、材料に吸着している水分の脱離、融点の低い化合物の融解、などを促進し、更なる中和反応を発生させる原因となる。
これらの現象の繰り返しによって、中和反応が連続的に急激に進行し、結果として酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の混合物の状態を維持できなくなる。また、両者の混合物の組合せによっては、中和反応による生成物が原因で、材料の硬化、材料の膨張、ガスの発生、可燃性・引火性ガスの発生、有毒・有毒ガスの発生、などの問題を起こす。
【0009】
酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の混合物を、紙袋、ビニール袋、フレキシブルコンテナなどに保管した場合、急激な連続的中和反応による発熱が原因で、包装が発火し、火災に繋がる恐れがある。
更に、両者の組合せによっては、包装内での硬化、膨張による包装の破断、可燃性・引火性ガスの発生による爆発や火災発生、作業者への健康被害、などの恐れがあり、非常に危険である。
【0010】
また、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の混合物を、サイロ・タンク、海上輸送船、ジェットパック車、などに保管する場合、スクリューコンベア、フローコンベア、バケットエレベーター、高圧空気による管内(ホース内)圧送、などで輸送する場合、装置内部での材料硬化、膨張による装置破壊、周囲の可燃物への引火による火災、装置の爆発、作業者への健康被害、などの発生原因となる恐れがあり、非常に危険である。
そのため従来は酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物とを別々に包装して1つの容器に入れたり、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の中和反応を抑制するために、混合物を収納した容器内に乾燥剤を配設して水分を低減させたり、混合物を収納した容器内を乾燥窒素雰囲気とするなどの工夫が行なわれていたが、これらは手間がかかりコストアップになるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−243192号公報
【特許文献2】特開2000−109830号公報
【特許文献3】特開2003−290759号公報
【特許文献4】特開2004−238248号公報
【特許文献5】特開2009−131726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上述のような現状に鑑み、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物を混合した混合物が、大気中において、湿気の吸着・脱離、材料に付着する水分の脱離、潮解性の高い材料の潮解、材料への結露、などによって生じる自由水を起因とする急激な連続的中和反応が起こらないように改善された、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物の混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を混合することによって、大気中における急激な連続的中和反応の発生が抑制される効果を有することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、前記課題を解決するための本発明の請求項1は、水溶液のpHが酸性を呈する酸性粉末状化合物と、水溶液のpHがアルカリ性を呈するアルカリ性粉末状化合物との混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量、混合してなることを特徴とする酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物である。
【0015】
本発明の請求項2は、請求項1記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物が、水に溶解する有機酸類、アミノ酸類、塩化物、硫酸塩化合物、リン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、6.5以下であることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物が、水に溶解する無機化合物であることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物が、アルカリ土類金属塩の酸化物、水酸化物、炭酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項8は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項9は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、7.5以上であることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項10は、請求項1から請求項9のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項11は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の混合組成物において、前記粉末状中和反応抑制剤のBET比表面積が、0.5m/g以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項12は、請求項1から請求項11のいずれかに記載の混合組成物において、前記粉末状中和反応抑制剤中にSiOが30〜100質量%含有されていることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項13は、請求項1から請求項12のいずれかに記載の混合組成物において、混合組成物全体中に前記粉末状中和反応抑制剤が、5.0〜40質量%含有されていることを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項14は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物と前記アルカリ性粉末状化合物の混合割合が、質量比で1:100〜100:1であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の請求項1は、水溶液のpHが酸性を呈する酸性粉末状化合物と、水溶液のpHがアルカリ性を呈するアルカリ性粉末状化合物との混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量、混合してなることを特徴とする酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物であり、
安価な工業製品で構成され、複雑な操作を必要とせず、幅広い環境条件で取り扱いでき、粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量混合することで、大気中において、湿気の吸着・脱離、材料に付着する水分の脱離、潮解性の高い材料の潮解、材料への結露、などによって生じる自由水を起因とする急激な連続的中和反応を抑制することが可能であり、急激な連続的中和反応による様々な事故を防ぐことが可能となり、重金属類の不溶化材、水処理材、土質安定処理材、低アルカリ性土質安定処理材、排煙の処理材、食品素材などの様々な用途に利用できるという顕著な効果を奏する。
【0029】
本発明の請求項2は、請求項1記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物が、水に溶解する有機酸類、アミノ酸類、塩化物、硫酸塩化合物、リン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とするものであり、
これらは僅かにでも水に溶解するものであれば使用可能であり、しかも工業製品として流通しており、容易に入手可能であり、経済的であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0030】
本発明の請求項3は、請求項1あるいは請求項2記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とするものであり、
酸性粉末状組成物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、5.0質量%以下であれば、種々の酸性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0031】
本発明の請求項4は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、6.5以下であることを特徴とするものであり、
pHが6.5以下であれば、種々の酸性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0032】
本発明の請求項5は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とするものであり、
最大粒子径が5.0mm以下であれば、多様な粒子径を有する酸性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0033】
本発明の請求項6は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物が、水に溶解する無機化合物であることを特徴とするものであり、
僅かにでも水に溶解する無機化合物であれば、種々のアルカリ性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0034】
本発明の請求項7は、請求項1から請求項6のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物が、アルカリ土類金属塩の酸化物、水酸化物、炭酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とするものであり、
工業製品として流通しており、容易に入手可能であり、一般的に多岐に渡って使用されているアルカリ性粉末状化合物が適用可能であるので、経済的であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0035】
本発明の請求項8は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とするものであり、
アルカリ性粉末状組成物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、5.0質量%以下であれば、種々のアルカリ性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0036】
本発明の請求項9は、請求項1から請求項8のいずれかに記載の混合組成物において、前記アルカリ性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、7.5以上であることを特徴とするものであり、
pHが7.5以上であれば、種々のアルカリ性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0037】
本発明の請求項10は、請求項1から請求項9のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とするものであり、
最大粒子径が5.0mm以下であれば、多様な粒子径を有するアルカリ性粉末状化合物を使用できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0038】
本発明の請求項11は、請求項1から請求項10のいずれかに記載の混合組成物において、前記粉末状中和反応抑制剤のBET比表面積が、0.5m/g以上であることを特徴とするものであり、
BET比表面積が0.5m/g以上であることによって、前記粉末状中和反応抑制剤が多量の自由水を吸着し、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制することが可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0039】
本発明の請求項12は、請求項1から請求項11のいずれかに記載の混合組成物において、前記粉末状中和反応抑制剤中にSiOが30〜100質量%含有されていることを特徴とするものであり、
化合物がSiOを30質量%以上含有することによって、SiO表面に存在するシラノール構造が水を選択的に吸着し、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制することが可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0040】
本発明の請求項13は、請求項1から請求項12のいずれかに記載の混合組成物において、混合組成物全体中に前記粉末状中和反応抑制剤が、5.0〜40質量%含有されていることを特徴とするものであり、
混合組成物全体中に5.0質量%以上であれば、大気中における中和反応を抑制するための必要量を目的に応じて調整できるというさらなる顕著な効果を奏する。
【0041】
本発明の請求項14は、請求項1から請求項13のいずれかに記載の混合組成物において、前記酸性粉末状化合物と前記アルカリ性粉末状化合物の混合割合が、質量比で1:100〜100:1であることを特徴とするものであり、
酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合割合が、質量比で1:100〜100:1の範囲であれば、酸性粉末状化合物、およびアルカリ性粉末状化合物を種々の割合で混合可能であるというさらなる顕著な効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で使用する酸性粉末状化合物は、その水溶液のpHが酸性であり、かつ粉末状の化合物であればよく、別段限定されるものではない。
本発明で使用する酸性粉末状化合物は、大気中でアルカリ性粉末状化合物と混合されると中和反応を起こす恐れが非常に高く、よく水に溶解するものから、僅かにでも水に溶解するものまである。
代表的な酸性粉末状化合物としては、具体的には、例えば、有機酸、アミノ酸類、塩化物、硫酸塩化合物、リン酸塩化合物などが挙げられる。
これらは、工業製品として流通しており、容易に入手可能であり、一般的に多岐に渡って使用されているので、本発明において好適に使用できる。
【0043】
本発明で使用する有機酸類としては、具体的は、例えば、脂肪酸(蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、ベヘン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、など)、芳香族カルボン酸(サリチル酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸(ベンゼンカルボン酸)、フタル酸、β-フェニルアクリル酸、メリト酸、など)、その他の酸(シュウ酸、乳酸、酒石酸、マレイン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、アコニット酸、グルタル酸、アジピン酸、L−アスコルビン酸、グルコン酸、など)などを挙げることができる。
これらは、その水溶液のpHが酸性を呈し、粉末状であり、僅かにでも水に溶解するものであれば、本発明で使用できる。
【0044】
本発明で使用するアミノ酸類としては、具体的には、例えば、アミノ酸(バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、グリシン、アラニン、プロリン、スレオニン、トリプトファン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、チロシン、ヒスチジン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン)を挙げることができる。
これらは、その水溶液のpHが酸性を呈し、粉末状であり、僅かにでも水に溶解するものであれば、本発明で使用できる。
【0045】
本発明で使用する塩化物は、塩素イオン(Cl)と塩を形成する化合物(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄、塩化バリウム、塩化銅、塩化亜鉛、などの水和物、または無水物)のうち、その水溶液のpHが酸性を呈し、粉末状であり、僅かにでも水に溶解するものであれば、本発明で使用できる。
【0046】
本発明で使用する硫酸塩化合物は、硫酸イオン(SO2−)、亜硫酸イオン(SO2−)と塩を形成する化合物(硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、亜硫酸カリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、亜硫酸マグネシウム、硫酸ストロンチウム、亜硫酸ストロンチウム、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、硫酸第一鉄、亜硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、亜硫酸第二鉄、硫酸バリウム、亜硫酸バリウム、硫酸銅、亜硫酸銅、硫酸亜鉛、亜硫酸亜鉛、などの水和物、または無水物)であり、そのうち、その水溶液のpHが酸性を呈し、粉末状であり、僅かにでも水に溶解するものであれば、本発明で使用できる。
【0047】
本発明で使用するリン酸塩化合物は、リン酸イオン(PO3−)、リン酸水素イオン(HPO2−)、リン酸二水素イオン(HPO)、ピロリン酸イオン(P4−)、三リン酸イオン(P105−)、メタリン酸イオン(PO)と塩を形成する化合物(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、アルミニウム塩、第一鉄塩、第二鉄塩、バリウム塩、銅塩、亜鉛塩、などの水和物、または無水物)であり、そのうち、その水溶液のpHが酸性を呈し、粉末状であり、僅かにでも水に溶解するものであれば、本発明で使用できる。
【0048】
本発明で使用する酸性粉末状化合物に含まれる水分は、大気中で粉末状態を維持する程度であれば別段限定されるものではない。しかしながら、より確実に急激な連続的中和反応を抑制できる条件としては、酸性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることが望ましい。また、酸性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、20.0質量%以上であると、貯蔵中や取り扱い中などに混合組成物中で多量の自由水が発生することになり、急激な連続的中和反応を抑制できなくなる恐れがある。
【0049】
本発明で使用する酸性粉末状化合物は、20℃、100mlの蒸留水に前記酸性粉末状化合物を10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが酸性であれば、特にpHが6.5以下であると、大気中でアルカリ性粉末状化合物と混合されると中和反応を起こす恐れが非常に高く、本発明の混合組成物を使用することが必要となるが、逆にpHが6.5を超えて高い値を示す場合は、アルカリ性粉末状化合物との中和反応が起こりにくくなるか、または起こらないため、実際には急激な連続的中和反応を心配しなくてよい場合が多くなり、本発明による急激な連続的中和反応を抑制する必要性が無くなる恐れがある。
【0050】
本発明で使用する酸性粉末状化合物は、粉末状であれば構成する粒子の大きさは別段限定されない。しかし、JIS規格ふるいにより確認した最大粒子径が5.0mmを超えると、アルカリ性粉末状化合物との中和反応が起こりにくくなり、粉末状の本発明の混合組成物への利用が難しくなる恐れがある。
前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることが好ましい。
【0051】
本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物は、水溶液のpHがアルカリ性であり、かつ粉末状の化合物であれば、別段限定されるものではない。本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物は、大気中で酸性粉末状化合物と中和反応を起こす恐れが非常に高く、多くは水によく溶解するが、僅かに水に溶解するものもある。
【0052】
代表的な本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物として知られているものは、無機化合物である。
中でも工業製品として流通しており、容易に入手可能であり、一般的に多岐に渡って使用されているアルカリ土類金属塩の酸化物、水酸化物、炭酸塩(酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、焼成ドロマイト、焼成ドロマイト水和物、ドロマイト、酸化バリウム、水酸化バリウム、炭酸バリウム、酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、など)などが、本発明において好適に使用できる。
【0053】
本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物に含まれる水分は、大気中で粉末状態を維持するものであればよく、別段限定されるものではない。
しかしながら、より確実に急激な連続的中和反応を抑制できる条件としては、アルカリ性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%以下であることが望ましい。
また、アルカリ性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、20.0質量%以上であると、貯蔵中や取り扱い中などに混合組成物中で多量の自由水が発生することになり、急激な連続的中和反応を抑制できなくなる恐れがある。
【0054】
アルカリ性を呈する粉末状の化合物は、20℃、100mlの蒸留水にアルカリ性粉末状化合物を10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHがアルカリ性であれば、特にpHが7.5以上であると、大気中で酸性粉末状化合物と混合されると中和反応を起こす恐れが非常に高く、本発明の混合組成物を使用することが必要となるが、逆にpHが7.5よりも低い値を示す場合、酸性粉末状化合物との中和反応が起こりにくくなるか、または起こらないため、実際には急激な連続的中和反応を心配しなくてよい場合が多くなり、本発明による急激な連続的中和反応を抑制する必要性が無くなる恐れがある。
【0055】
本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物は、粉末状であれば構成する粒子の大きさは別段限定されない。しかし、JIS規格ふるいにより確認した最大粒子径が5.0mmを超えると、酸性粉末状化合物との中和反応が起こりにくくなり、粉末状の本発明の混合組成物への利用が難しくなる恐れがある。
前記アルカリ性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることが好ましい。
【0056】
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤は、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有し、かつ粉末状であればよく、別段組合せや組成が限定されるものではない。
好ましい本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤は、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))の中から選ばれた1種以上を主成分として含有し、かつ粉末状であればよく、別段組合せや組成が限定されるものではない。
【0057】
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤のステアリン酸塩化合物(ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アミド、ステアリン酸グリセル、など)は、本発明で使用する酸性粉末状化合物や本発明で使用するアルカリ性粉末状化合物の表面に付着して疎水膜を形成し、存在する自由水へのこれらの粉末状化合物の溶解を抑制することによって、急激な連続的中和反応を抑制する効果を発揮する。
【0058】
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤のケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物は、熱伝導率が低いため、存在する僅かな自由水を介して酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の中和反応が起きた際に、反応熱が周囲に伝わり難くなる効果を発揮し、急激な連続的中和反応を抑制する効果を発揮する。
例えば、本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤のケイ酸(SiO)の熱伝導率の測定値は、2.0W/(m・K)、酸化アルミニウム(Al)の熱伝導率の測定値は、40W/(m・K)である。本発明において、より優れた効果を得るためには、20℃における熱伝導率が、100W/(m・K)以下である粉末状中和反応抑制剤を使用することが望ましい。
【0059】
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤は、表面積が大きいことが望ましい。表面積が大きく多孔質な粒子表面構造を有する場合、これらの孔に自由水が吸着し、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制することができる。
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤のうち、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))は、一般的に、表面積が大きく多孔質な粒子表面構造をとっている。
表面積の大きさについては別段限定されるものではないが、多量の自由水を吸着するため、BET比表面積が、0.5m/g以上であることが望ましい。
BET比表面積が0.5m/g未満であると、自由水を吸着する能力が低くなってしまい、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制する効果が得られなくなる恐れがある。
【0060】
本発明で使用する粉末状中和反応抑制剤の効果を一層高めるためには、粉末状中和反応抑制剤中にSiOを30〜100質量%含有していることが望ましい。
SiOを30質量%以上含有することによって、SiO表面に存在するシラノール構造が水を選択的に吸着し、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制することが可能であるためである。SiOが30質量%未満の場合、自由水に起因する急激な連続的中和反応を抑制する効果が十分に得られない恐れがある。
【0061】
酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物に対する粉末状中和反応抑制剤の含有量は、別段限定されるものではなく、目的に応じて中和反応を抑制するための必要量を調整できる。
本発明においては、混合組成物全体対する粉末状中和反応抑制剤の含有量は5.0〜40質量%であることが好ましい。
粉末状中和反応抑制剤の混合組成物に対する含有量が5.0質量%未満の場合には、添加量が少な過ぎるため効果が発揮されない恐れがある。粉末状中和反応抑制剤の混合組成物に対する含有量が40質量%を超えると、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の含有量が少なくなってしまい、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物によって得られる様々な効果が十分に期待できなくなる恐れがある。
【0062】
本発明において、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合割合については、別段限定されるものではない。
本発明においては、酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比が1:100〜100:1の範囲内において、中和反応を抑制することができる。
前記範囲外であると、酸性粉末状化合物、又はアルカリ性粉末状化合物が、本発明の混合組成物中のどちらか一方の含有量が少なくなり過ぎるため、中和反応による発熱量も小さくなり、急激な連続的中和反応が起きなくなる。よって、急激な連続的中和反応を抑制する重要性が低くなる。
但し、両者を中和反応の抑制を確実にしたい場合はその限りではなく、酸性粉末状化合物、およびアルカリ性粉末状化合物の質量比が1:100〜100:1の範囲以外でも本発明を適用することが可能である。この場合、質量比が少ない方の粉末状化合物と、粉末状中和反応抑制剤を予め均一に混合し、酸性粉末状化合物、又はアルカリ性粉末状化合物の表面に粉末状中和反応抑制剤を十分に付着させることによって、一方の粉末状化合物との中和反応の抑制を確実にできる。
【0063】
本発明において、本発明の混合組成物を製造する混合装置は、特に限定されるものではなく公知の混合装置を使用できる。しかし、粉末状の物質を混合でき、混合時の摩擦熱などによる大きな発熱のない混合装置は本発明において好ましく使用できる。
【0064】
本発明の混合組成物中の酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物とによる急激な連続的中和反応が起きないか、あるいは起きにくい環境条件としては、大気中であることが望ましく、温度が70℃以下の大気中であることがより望ましい。
70℃を超えた場合、結晶水を持つ酸性粉末状化合物および/またはアルカリ性粉末状化合物からの結晶水の脱離が起き易くなること、低融点の化合物が融解し易くなること、混合組成物を構成する種々の化合物に吸着している自由水の多くが脱離し、その自由水によって中和反応を促進させてしまうこと、などによって急激な連続的中和反応が起きてしまう恐れがある。
【0065】
本発明の混合組成物中の酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物とによる急激な連続的中和反応が起きないか、あるいは起きにくい他の環境条件としては、大気の相対湿度が低いことであり、相対湿度が90%以下であることがより望ましい。
相対湿度が90%を超えた場合は、混合組成物を構成する種々の化合物への結露や、著しい水分吸着量の増加を促し、急激な連続的中和反応起きてしまい、中和反応抑制効果が得られなくなる恐れがある。
【実施例】
【0066】
以下、実施例および比較例によって本発明の酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物の具体例およびその効果を説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0067】
以下の実施例および比較例において、酸性粉末状化合物は、クエン酸カルシウム四水和物、DL−リンゴ酸、グルタミン酸、塩化アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、無水塩化第二鉄、硫酸アルミニウム十八水和物、硫酸第一鉄一水和物、硫酸第一鉄七水和物、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム一水和物、リン酸水素マグネシウム三水和物を使用した。
これらの酸性粉末状化合物の最大粒子径(JIS規格ふるいにより確認)、pH(20℃、100mlの蒸留水に前述の酸性粉末状化合物を10g加えて、1時間攪拌後に測定した値)、70℃、2時間加熱時の質量減少を表1に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
以下の実施例および比較例において、アルカリ性粉末状化合物は、生石灰(酸化カルシウム)、消石灰(水酸化カルシウム)、炭酸カルシウム、軽焼マグネシア(酸化マグネシウムと炭酸マグネシウムの混合物)、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム三水和物、焼成ドロマイト(酸化カルシウムと酸化マグネシウムの混合物)、焼成ドロマイト水和物(水酸化カルシウムと水酸化マグネシウムの混合物)、ドロマイト、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウムを使用した。
これらの化合物の最大粒子径(JIS規格ふるいにより確認)、pH(20℃、100mlの蒸留水に前述のアルカリ性粉末状化合物を10g加えて、1時間攪拌後に測定した値)、70℃、2時間加熱時の質量減少を表2に示す。
【0070】
【表2】

【0071】
以下の実施例および比較例において、粉末状中和反応抑制剤としては、沈降法シリカ(湿式沈降法で製造した非晶質ケイ酸、SiO含有量:98.0質量%)、シリカフューム(金属シリコンの精錬過程で発生する副産物、SiO含有量:91.8質量%)、ゲル法シリカ(ケイ酸ナトリウムと鉱酸の中和反応で生成したケイ酸、SiO含有量:99.6質量%)、ケイ石微粉砕品(ケイ石を微粉砕したもの、SiO含有量:95.2質量%)、α−アルミナ(酸化アルミニウム、Al含有量:99.5質量%)、水酸化アルミニウム(Al含有量:62.1質量%)、非晶質水酸化アルミニウム(アルミ工業で副生する非晶質水酸化アルミニウムスラッジを、結晶化させない温度で乾燥した後、粉砕したもの、Al含有量:47.8質量%)、フライアッシュ(石炭燃焼施設で発生する焼却飛灰、SiO含有量:54.7質量%、Al含有量:27.1質量%)、加圧流動床石炭灰(加圧流動床石炭燃焼施設で発生する焼却飛灰(PFBC灰とも呼ばれる)、SiO含有量:42.4質量%、Al含有量:12.8質量%)、常圧流動床石炭灰(常圧流動床石炭燃焼施設で発生する焼却飛灰、SiO含有量:45.0質量%、Al含有量:7.1質量%)、ペーパースラッジ焼却灰(製紙工場で発生する廃パルプスラッジの焼却時に発生する製紙スラッジ焼却灰、SiO含有量:26.6質量%、Al含有量:21.2質量%)、下水汚泥焼却灰(下水汚泥焼却施設で発生する焼却飛灰、SiO含有量:33.1質量%、Al含有量:13.4質量%)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸亜鉛を使用した。
これらの化合物は、全て最大粒子径5.0mm以下の粉末状であり、70℃、2時間加熱時の質量減少が2.0質量%以下であり、20℃における熱伝導率(非定常・熱伝導率測定方法である熱線法で測定した熱伝導率)が100W/(m・K)以下であった。また、BET法により測定したBET比表面積を表3に示す。
【0072】
【表3】

【0073】
(比較例1)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物2.0gに対し、消石灰200gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:100となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。温度を50℃、70℃、80℃のいずれかに設定し、相対湿度を80%、90%、99%のいずれかに設定した恒温装置内に組成物を保管し、1時間、2時間、3時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間経過時の組成物の変化を確認した。
結果を表4に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0074】
(比較例2)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表4に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0075】
(比較例3)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物100gに対し、消石灰100gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表4に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0076】
(比較例4)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物134gに対し、消石灰66gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表4に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0077】
(比較例5)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物200gに対し、消石灰2gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は100:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表4に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0078】
【表4】

【0079】
(実施例1)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物2.0gに対し、沈降法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて1分間攪拌した。さらに消石灰200gを加え、粉体混合用ミキサーで5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:100、沈降法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表5に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例1の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0080】
(実施例2)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、沈降法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、沈降法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表5に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0081】
(実施例3)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物100gに対し、消石灰100g、沈降法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、沈降法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表5に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例3の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0082】
(実施例4)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物134gに対し、消石灰66g、沈降法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、沈降法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表5に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例4の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0083】
(実施例5)
温度20℃、相対湿度20%の大気中で、消石灰2.0gに対し、沈降法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて1分間攪拌した。さらに硫酸第一鉄一水和物200gを加え、粉体混合用ミキサーで5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は100:1、沈降法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表5に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例5の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0084】
【表5】

【0085】
(比較例6)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物2.0gに対し、焼成ドロマイト水和物200gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:100となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表6に示す。保管時間3時間以上の全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化、および膨張していることが確認された。
【0086】
(比較例7)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物66gに対し、焼成ドロマイト水和物134gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表6に示す。保管時間3時間以上の全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化、および膨張していることが確認された。
【0087】
(比較例8)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物100gに対し、焼成ドロマイト水和物100gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表6に示す。保管時間3時間以上の全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化、および膨張していることが確認された。
【0088】
(比較例9)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表6に示す。保管時間3時間以上の全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化、および膨張していることが確認された。
【0089】
(比較例10)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物200gに対し、焼成ドロマイト水和物2.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は100:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表6に示す。保管時間3時間以上の全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化、および膨張していることが確認された。
【0090】
【表6】

【0091】
(実施例6)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物2.0gに対し、フライアッシュ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて1分間攪拌した。さらに焼成ドロマイト水和物200gを加え、粉体混合用ミキサーで5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:100、フライアッシュ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表7に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、温度条件が80℃では比較例6の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0092】
(実施例7)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物66gに対し、焼成ドロマイト水和物134g、フライアッシュ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、フライアッシュ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表7に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、温度条件が80℃では比較例7の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0093】
(実施例8)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物100gに対し、焼成ドロマイト水和物100g、フライアッシュ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、フライアッシュ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表7に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、温度条件が80℃では比較例8の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0094】
(実施例9)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66g、フライアッシュ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、フライアッシュ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表7に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、温度条件が80℃では比較例9の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0095】
(実施例10)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、焼成ドロマイト水和物2.0gに対し、フライアッシュ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて1分間攪拌した。さらに硫酸アルミニウム十八水和物200gを加え、粉体混合用ミキサーで5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は100:1、フライアッシュ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表7に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、温度条件が80℃では比較例10の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0096】
【表7】

【0097】
(比較例11)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物66gに対し、軽焼マグネシア134gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表8に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0098】
(比較例12)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物100gに対し、軽焼マグネシア100gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表8に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0099】
(比較例13)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物134gに対し、軽焼マグネシア66gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表8に示す。全ての条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
温度が高く、かつ相対湿度が高い程、ビーカーの中で組成物が早く硬化していることが確認された。
【0100】
【表8】

【0101】
(実施例11)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物66gに対し、軽焼マグネシア134g、非晶質水酸化アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、非晶質水酸化アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表9に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例11の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0102】
(実施例12)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物100gに対し、軽焼マグネシア100g、非晶質水酸化アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、非晶質水酸化アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表9に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例12の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0103】
(実施例13)
温度25℃、相対湿度70%の大気中で、リン酸二水素カルシウム一水和物134gに対し、軽焼マグネシア66g、非晶質水酸化アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、非晶質水酸化アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表9に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、温度条件が80℃では比較例13の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
【0104】
【表9】

【0105】
(実施例14)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、沈降法シリカ9.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、沈降法シリカ含有量は4.3質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表10に示す。温度条件が70℃以上で組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
これは、沈降法シリカの添加量が5.0質量%以下であるため、十分な中和反応抑制効果が得られなかったことが原因であると考えられる。
【0106】
(実施例15)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、沈降法シリカ50gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、沈降法シリカ含有量は20質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表10に示す。得られた組成物は、温度条件が80℃でも硬化しなかった。
これは、沈降法シリカの添加量が多くなり、十分な中和反応抑制効果が得られたことに起因していると考えられる。
【0107】
(実施例16)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、シリカフューム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、シリカフューム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表10に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
しかし、実施例2よりも早く硬化してしまった。これは、使用したシリカフュームのBET比表面積が、沈降法シリカよりも小さいことが原因であると考えられる。
【0108】
(実施例17)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、ゲル法シリカ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、ゲル法シリカ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表10に示す。得られた組成物は、温度条件が80℃でも硬化しなかった。
これは、使用したゲル法シリカのBET比表面積が非常に大きく、十分な中和反応抑制効果が得られたことに起因していると考えられる。
【0109】
【表10】

【0110】
(実施例18)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、ケイ石微粉末品11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、ケイ石微粉末品含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表11に示す。温度条件が70℃以上で組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
沈降法シリカ、シリカフューム、ゲル法シリカと比較して、ケイ石微粉末の効果が低いのは、ケイ石微粉末品のBET比表面積が小さいことが原因であると考えられる。
【0111】
(実施例19)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、α−アルミナ11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、α−アルミナ含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表11に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまい、実施例16の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が短くなっていることが確認された。
使用したα−アルミナと実施例16で使用したシリカフュームのBET比表面積が同じであるにもかかわらず、硬化するまでの時間に差が生じたのは、シリカフュームの方が、熱伝導率が低いこと、およびシラノール構造による自由水の吸着能力が高いことに起因していると考えられる。
【0112】
(実施例20)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、水酸化アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、水酸化アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表11に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、実施例19の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
これは、使用した水酸化アルミニウムのBET比表面積がα−アルミナよりも大きいことに起因していると考えられる。
【0113】
(実施例21)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、非晶質水酸化アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、非晶質水酸化アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表11に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、実施例20の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
これは、使用した非晶質水酸化アルミニウムのBET比表面積が水酸化アルミニウムよりも大きいことに起因していると考えられる。
【0114】
【表11】

【0115】
(実施例22)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、ステアリン酸カルシウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、ステアリン酸カルシウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。結果を表12に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
しかし、実施例16の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が短かった。使用したステアリン酸カルシウムと実施例16で使用したシリカフュームのBET比表面積が同じであるにもかかわらず、硬化するまでの時間に差が生じたのは、シリカフュームの方がシラノール構造による自由水の吸着能力が高いこと、などの中和反応抑制効果が高いことに起因していると考えられる。
【0116】
(実施例23)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、ステアリン酸アルミニウム11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、ステアリン酸アルミニウム含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表12に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
しかし、実施例16の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が短かった。使用したステアリン酸アルミニウムと実施例16で使用したシリカフュームのBET比表面積が同じであるにもかかわらず、硬化するまでの時間に差が生じたのは、シリカフュームの方がシラノール構造による自由水の吸着能力が高いこと、などの中和反応抑制効果が高いことに起因していると考えられる。
【0117】
(実施例24)
温度25℃、相対湿度20%の大気中で、硫酸第一鉄一水和物66gに対し、消石灰134g、ステアリン酸亜鉛11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、ステアリン酸亜鉛含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表12に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化してしまったが、比較例2の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が長くなっていることが確認された。
しかし、実施例16の同じ条件よりも、硬化するまでの時間が短かった。使用したステアリン酸亜鉛と実施例16で使用したシリカフュームのBET比表面積が同じであるにもかかわらず、硬化するまでの時間に差が生じたのは、シリカフュームの方がシラノール構造による自由水の吸着能力が高いこと、などの中和反応抑制効果が高いことに起因していると考えられる。
【0118】
【表12】

【0119】
(実施例25)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66g、加圧流動床石炭灰11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、加圧流動床石炭灰含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表13に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、実施例9の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
これは、使用した加圧流動床石炭灰のBET比表面積が、フライアッシュよりも大きいことに起因していると考えられる。
【0120】
(実施例26)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66g、常圧流動床石炭灰11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、常圧流動床石炭灰含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表13に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまったが、実施例25の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が長くなっていることが確認された。
使用した加圧流動床石炭灰と常圧流動床石炭灰のBET比表面積が同じであるにも関わらず常圧流動床石炭灰の性能が高いのは、SiO含有量の差に起因していると考えられる。
【0121】
(実施例27)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66g、ペーパースラッジ焼却灰11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、ペーパースラッジ焼却灰含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表13に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまい、実施例25の同じ条件よりも、硬化、および膨張するまでの時間が短くなっていることが確認された。
これは、使用したペーパースラッジ焼却灰と常圧流動床石炭灰のBET比表面積の差よりも、SiO含有量の差の方が中和反応抑制効果に影響を与えたためであると考えられる。
【0122】
(実施例28)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物134gに対し、焼成ドロマイト水和物66g、下水汚泥焼却灰11gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は2:1、下水汚泥焼却灰含有量は5.2質量%相当となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカー9個に10gずつ取り分けた。以下、比較例1と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
結果を表13に示す。温度条件が80℃では組成物全体が硬化、および膨張してしまい、実施例27の同じ条件と、硬化、および膨張するまでの時間が同じであることが確認された。
これは、使用した下水汚泥焼却灰とペーパースラッジ焼却灰のBET比表面積、SiO含有量による総合的な中和反応抑制効果が同等になったためであると考えられる。
【0123】
【表13】

【0124】
(比較例14)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、クエン酸カルシウム5.0gに対し、炭酸カルシウム5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物を、ガラス製100mLビーカーに入れた。温度を50℃、相対湿度を80%に設定した恒温装置内に組成物を保管し、1時間、2時間、4時間、8時間、12時間、24時間、48時間経過時の組成物の変化を確認した。
当該条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
【0125】
(実施例29)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、クエン酸カルシウム5.0gに対し、炭酸カルシウム5.0g、ステアリン酸カルシウム0.60gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、ステアリン酸カルシウム含有量は5.7質量%相当となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、組成物は硬化、および膨張しなかった。
【0126】
(比較例15)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、DL−リンゴ酸5.0gに対し、炭酸カルシウム5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
【0127】
(実施例30)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、DL−リンゴ酸5.0gに対し、炭酸カルシウム5.0g、ゲル法シリカ0.60gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、ゲル法シリカ含有量は5.7質量%相当となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、組成物は硬化、および膨張しなかった。
【0128】
(比較例16)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、グルタミン酸5.0gに対し、ドロマイト5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
【0129】
(実施例31)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、グルタミン酸5.0gに対し、ドロマイト5.0g、ゲル法シリカ0.50g、ステアリン酸亜鉛0.10gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、ゲル法シリカとステアリン酸亜鉛の合計含有量は5.7質量%相当となる。
以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。当該条件において、組成物は硬化、および膨張しなかった。
【0130】
(比較例17)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、塩化アルミニウム5.0gに対し、生石灰5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、中和反応により組成物全体が硬化、膨張、および組成物の温度が100℃以上に達し、多量の水蒸気が発生してしまった。
【0131】
(実施例32)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、塩化アルミニウム5.0gに対し、生石灰5.0g、非晶質水酸化アルミニウム2.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、非晶質水酸化アルミニウム含有量は17質量%相当となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、8時間経過に至るまで、中和反応による硬化、膨張、および水蒸気の発生を抑制することができた。
【0132】
(比較例18)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、ポリ塩化アルミニウム5.0gに対し、生石灰5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物は、混合直後から急激な中和反応を開始し、硬化、膨張、および多量の水蒸気が発生してしまった。
【0133】
(実施例33)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、ポリ塩化アルミニウム5.0gに対し、生石灰5.0g、水酸化アルミニウム2.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、水酸化アルミニウム含有量は17質量%相当となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
8時間経過に至るまで、中和反応による硬化、膨張、および水蒸気の発生を抑制することができた。
【0134】
(比較例19)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、無水塩化第二鉄5.0gに対し、水酸化マグネシウム5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
【0135】
(実施例35)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、無水塩化第二鉄5.0gに対し、水酸化マグネシウム5.0g、フライアッシュ1.1gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、水酸化アルミニウム含有量は9.9質量%相当となる。以下、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認した。
当該条件において、組成物は硬化しなかった。
【0136】
(比較例20)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸第一鉄七水和物5.0gに対し、塩基性炭酸マグネシウム三水和物5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物は、混合直後から中和反応を開始し、4時間程度で硬化、および膨張してしまった。硫酸第一鉄七水和物の潮解性が高いことが原因であると考えられる。
【0137】
(実施例36)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、硫酸第一鉄七水和物5.0gに対し、塩基性炭酸マグネシウム三水和物5.0g、加圧流動床石炭灰1.1gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、加圧流動床石炭灰含有量は9.9質量%相当となる。
得られた組成物は、混合直後から48時間経過後も変化がなかった。硫酸第一鉄七水和物の潮解に起因する中和反応の発生を抑制することができた。
しかし、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認したところ、当該条件において、4時間程度で中和反応により組成物全体が硬化、および膨張してしまった。
【0138】
(比較例21)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、リン酸水素カルシウム5.0gに対し、水酸化バリウム5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物は、混合直後から中和反応を開始し、8時間程度で硬化してしまった。水酸化バリウムの付着水分が多いため、自由水を介して中和反応が進行してしまったことが原因であると考えられる。
【0139】
(実施例34)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、リン酸水素カルシウム5.0gに対し、水酸化バリウム5.0g、α−アルミナ0.50gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、α−アルミナ含有量は5.7質量%相当となる。
得られた組成物は、混合直後から48時間経過後も変化がなかった。しかし、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認したところ、当該条件において、12時間程度で中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
【0140】
(比較例22)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、リン酸水素マグネシウム三水和物5.0gに対し、水酸化ストロンチウム5.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1となる。
得られた組成物は、混合直後から中和反応を開始し、4時間程度で硬化してしまった。水酸化ストロンチウムの付着水分が多いため、自由水を介して中和反応が進行してしまったことが原因であると考えられる。
【0141】
(実施例38)
温度25℃、相対湿度50%の大気中で、リン酸水素マグネシウム三水和物5.0gに対し、水酸化ストロンチウム5.0g、下水汚泥焼却灰1.1gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、下水汚泥焼却灰含有量は9.9質量%相当となる。
得られた組成物は、混合直後から48時間経過後も変化がなかった。しかし、比較例14と同じ環境条件にて組成物の変化を確認したところ、当該条件において、8時間程度で中和反応により組成物全体が硬化してしまった。
【0142】
(実施例39)
温度30℃、相対湿度70%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物20gに対し、消石灰40g、加圧流動床石炭灰40gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、加圧流動床石炭灰含有量は40質量%相当となる。温度を70℃、相対湿度を90%に設定した恒温装置内に組成物を保管した。
当該条件において、48時間経過しても組成物は変化しなかった。
【0143】
(実施例40)
温度30℃、相対湿度70%の大気中で、硫酸第一鉄一和物30gに対し、消石灰60g、常圧流動床石炭灰7.0g、沈降法シリカ3.0gを加え、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:2、常圧流動床石炭灰と沈降法シリカの合計含有量は10質量%相当となる。
温度を70℃、相対湿度を90%に設定した恒温装置内に組成物を保管した。当該条件において、48時間経過しても組成物は変化しなかった。
【0144】
(実施例41)
温度30℃、相対湿度70%の大気中で、硫酸第一鉄一和物15g、硫酸アルミニウム十八水和物20g、焼成ドロマイト水和物25g、加圧流動床石炭灰40gを、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は7:5、加圧流動床石炭灰含有量は40質量%相当となる。温度を70℃、相対湿度を90%に設定した恒温装置内に組成物を保管した。
当該条件において、48時間経過しても組成物は変化しなかった。
【0145】
(実施例42)
温度30℃、相対湿度70%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物40g、軽焼マグネシア40g、フライアッシュ15g、非晶質水酸化アルミニウム5.0gを、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、フライアッシュと非晶質水酸化アルミニウムの合計含有量は20質量%相当となる。温度を70℃、相対湿度を90%に設定した恒温装置内に組成物を保管した。
当該条件において、48時間経過しても組成物は変化しなかった。
【0146】
(実施例43)
温度30℃、相対湿度70%の大気中で、硫酸アルミニウム十八水和物40g、軽焼マグネシア40g、フライアッシュ15g、シリカフューム5.0gを、粉体混合用のミキサーを用いて5分間攪拌した。酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の質量比は1:1、フライアッシュとシリカフュームの合計含有量は20質量%相当となる。温度を70℃、相対湿度を90%に設定した恒温装置内に組成物を保管した。
当該条件において、48時間経過しても組成物は変化しなかった。
【0147】
実施例1〜43、及び比較例22の組成物について、各々10gをガラス製100mLビーカーに入れ、温度を100℃、相対湿度を80%に設定した恒温装置内に組成物を保管したところ、すべての組成物が1時間以内に速やかに中和反応し、硬化、膨張、などの変化が確認された。この結果から、これらの組成物の全てが、温度100℃、相対湿度80%の環境条件において、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物が中和反応することを示している。
【0148】
ガラス製100mLビーカーに入っている20℃の水100mlに、実施例1〜43、及び比較例22の組成物を各々10g添加したところ、すべての組成物の全てが添加直後に、発熱により水溶液の温度が上昇した。さらに、1時間攪拌後に測定した水溶液のpHは、各組成物を構成している、酸性粉末状化合物、又はアルカリ性粉末状化合物の水溶液のpHと異なることが確認された。この結果から、これらの組成物は、水に添加すれば、酸性粉末状化合物と、アルカリ性粉末状化合物が中和反応していることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明の酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物は、安価な工業製品で構成され、複雑な操作を必要とせず、幅広い環境条件で取り扱いでき、粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量混合することで、大気中において、湿気の吸着・脱離、材料に付着する水分の脱離、潮解性の高い材料の潮解、材料への結露、などによって生じる自由水を起因とする急激な連続的中和反応を抑制することが可能であり、急激な連続的中和反応による様々な事故を防ぐことが可能となり、重金属類の不溶化材、水処理材、土質安定処理材、低アルカリ性土質安定処理材、排煙の処理材、食品素材などの様々な用途に利用できるという顕著な効果を奏するので産業上の利用価値が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶液のpHが酸性を呈する酸性粉末状化合物と、水溶液のpHがアルカリ性を呈するアルカリ性粉末状化合物との混合物に対し、ケイ酸(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、水酸化アルミニウム(Al(OH))、ステアリン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上を主成分として含有する粉末状中和反応抑制剤を、70℃以下でかつ相対湿度が90%以下の大気中における前記酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物との中和反応を抑制するのに必要な量、混合してなることを特徴とする酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物。
【請求項2】
前記酸性粉末状化合物が、水に溶解する有機酸類、アミノ酸類、塩化物、硫酸塩化合物、リン酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1記載の混合組成物。
【請求項3】
前記酸性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の混合組成物。
【請求項4】
前記酸性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、6.5以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項5】
前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項6】
前記アルカリ性粉末状化合物が、水に溶解する無機化合物であることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項7】
前記アルカリ性粉末状化合物が、アルカリ土類金属塩の酸化物、水酸化物、炭酸塩化合物の中から選ばれた1種以上であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項8】
前記アルカリ性粉末状化合物を70℃、2時間加熱したときの水分蒸発による質量減少が、0〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項9】
前記アルカリ性粉末状化合物を20℃、100mlの蒸留水に10g加えて、1時間攪拌後に測定したpHが、7.5以上であることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項10】
前記酸性粉末状化合物の最大粒子径がJIS規格ふるいにより確認して5.0mm以下であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の酸性粉末状化合物とアルカリ性粉末状化合物の混合組成物。
【請求項11】
前記粉末状中和反応抑制剤のBET比表面積が、0.5m/g以上であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項12】
前記粉末状中和反応抑制剤中にSiOが30〜100質量%含有されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項13】
混合組成物全体中に前記粉末状中和反応抑制剤が、5.0〜40質量%含有されていることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の混合組成物。
【請求項14】
前記酸性粉末状化合物と前記アルカリ性粉末状化合物の混合割合が、質量比で1:100〜100:1であることを特徴とする請求項1から請求項13のいずれかに記載の混合組成物。

【公開番号】特開2012−21064(P2012−21064A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−159007(P2010−159007)
【出願日】平成22年7月13日(2010.7.13)
【出願人】(000203047)村樫石灰工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】