説明

重質油燃焼ボイラ

【課題】重質油燃焼ボイラにおいて、装置の大型化や高コスト化を招くことなくばいじん濃度を制御可能とする。
【解決手段】移送される重質油の状態を検出する重質油状態検出部と、この重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部と、重質油状態検出部が検出した重質油の状態に基づいてこの重質油の状態を重質油状態変更部を用いてバーナにより燃焼させる最適な状態に変更する重質油状態制御部とを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原油を精製して燃料油や石油化学製品などを製造した後、取り出される石油残渣などの重質油を燃料とする重質油燃焼ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
原油を石油精製設備により精製することで、燃料油や石油化学製品などを製造した後、この設備からは石油残渣などの重質油が取り出される。この重質油は、粘度が非常に高いことから、エネルギとして利用する場合には、粘度調整油を混合することで粘度を低下させて火炉まで移送し、燃焼可能な温度まで加熱してから火炉内に供給している。
【0003】
ところが、石油精製プロセスにて行われる重質油の粘度調整は、移送に対しては高い調整精度を必要としないが、この重質油をボイラに供給して燃焼させる場合には、重質油の粘度調整がボイラから排出される排気ガス中のばいじん濃度に大きな影響を与えてしまう。即ち、重質油の粘度がボイラでの燃焼粘度範囲を超えると、燃焼不良を招き、ばいじん濃度が増加してしまう。従来では、石油精製プロセスにて行われる重質油の粘度調整が不確定であり、重質油の粘度が燃焼粘度範囲を超えて運用されているときには、ボイラの煙突から黒煙が発生してしまうという問題がある。
【0004】
従来は、ボイラ側にて、ばいじんの排出を防止しており、例えば、下記特許文献1、2に記載されたものがある。特許文献1では、電気集じん装置によりばいじん濃度を制御しており、特許文献2では、排煙脱硫装置により出口煤塵濃度を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平09−173903号公報
【特許文献2】特開2000−015043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のように、ボイラにおける排気ガスの排出側でばいじん濃度を制御すると、ボイラに電気集じん装置や排煙脱硫装置を装着する必要があり、装置の大型化、高コスト化を招いてしまう。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するものであり、装置の大型化や高コスト化を招くことなくばいじん濃度を制御可能な重質油燃焼ボイラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための本発明の重質油燃焼ボイラは、燃料油として重質油を使用し、この重質油をバーナにより燃焼させる重質油燃焼ボイラにおいて、重質油の状態を検出する重質油状態検出部と、重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部と、前記重質油状態検出部が検出した重質油の状態に基づいてこの重質油の状態を前記重質油状態変更部を用いて前記バーナにより燃焼させる最適な状態に変更する重質油状態制御部と、を備えることを特徴とするものである。
【0009】
従って、移送される重質油の状態を確認し、この重質油をバーナにより燃焼させる最適な状態に変更することで、重質油の燃焼管理を行うことができ、装置の大型化や高コスト化を招くことなく、ばいじん濃度を適正に制御することができる。
【0010】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記重質油状態検出部は、移送される重質油の温度を計測する温度センサと、移送される重質油の濃度を計測する濃度センサを有し、前記重質油状態制御部は、重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を判定することを特徴としている。
【0011】
従って、重質油状態検出部として温度センサと濃度センサを適用することで、簡単な構成で重質油の種類を適正に判定することができる。
【0012】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記重質油状態変更部は、重質油を加熱する加熱装置を有し、前記重質油状態制御部は、判定された重質油の種類に応じて燃焼粘度範囲に対応する加熱温度を特定し、前記加熱装置により重質油をこの加熱温度まで加熱することを特徴としている。
【0013】
従って、判定した重質油の種類に応じて、この重質油を燃焼粘度範囲に対応する適正な加熱温度まで加熱することができ、最適な燃焼状態を確保することができる。
【0014】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記重質油状態検出部は、前記加熱装置により加熱された重質油の温度を計測する第2温度センサを有し、前記重質油状態制御部は、前記第2温度センサが検出した加熱後の重質油の温度に基づいて前記加熱装置による加熱温度を調整することを特徴としている。
【0015】
従って、加熱後の重質油の温度をフィードバック制御することで、重質油の温度管理を高精度に行うことができる。
【0016】
本発明の重質油燃焼ボイラでは、前記重質油状態変更部は、前記バーナに蒸気を投入する蒸気投入装置を有し、前記重質油状態制御部は、判定された重質油の種類に応じてバーナ蒸気割合を特定し、前記蒸気投入装置によりこの特定されたバーナ蒸気割合の蒸気を前記バーナに投入することを特徴としている。
【0017】
従って、判定した重質油の種類に応じて、この重質油に応じた適正なバーナ蒸気割合を特定することができ、バーナ蒸気により重質油を微粒化して最適な燃焼状態を確保することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の重質油燃焼ボイラによれば、移送される重質油の状態を確認し、この重質油をバーナにより燃焼させる最適な状態に変更するので、装置の大型化や高コスト化を招くことなくばいじん濃度を適正に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図である。
【図2】図2は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフである。
【図3】図3は、油粘度に対するばいじん濃度を表すグラフである。
【図4】図4は、本発明の実施例2に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図である。
【図5】図5は、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を表すグラフである。
【図6】図6は、バーナ蒸気割合とプラント効率との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る重質油燃焼ボイラの好適な実施例を詳細に説明する。なお、本発明は、この実施例に限定されるものではなく、また、実施例が複数ある場合には、各実施例を組み合わせて構成するものも含むものである。
【実施例1】
【0021】
図1は、本発明の実施例1に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図、図2は、石油の移送粘度範囲及び燃焼粘度範囲を表すグラフ、図3は、油粘度に対するばいじん濃度を表すグラフである。
【0022】
近年、燃料油の白油化指向に伴って粘度の高い重質油が増加してきている。このような重質油を燃料とする重質油燃焼ボイラにおいては、高粘度の重質油を昇温させたり、粘度調整剤を混合したりして低粘度化する必要がある。
【0023】
石油の精製過程では、図2に示すように、軽油などの低粘度油Aや重油やアスファルトなどの高粘度重質油Bが精製される。しかし、この高粘度重質油Bは、燃焼粘度範囲が非常に高温であり、取り扱いが難しいことから、粘度調整油として低粘度油を混合させて使用している。即ち、高粘度重質油Bに30%の低粘度油を混合して重質油B1、高粘度重質油Bに20%の低粘度油を混合して重質油B2、高粘度重質油Bに10%の低粘度油を混合して重質油B3などとして使用される。そして、このような低粘度油A、重質油B1,B2,B3を重質油燃焼ボイラで使用する場合、燃料タンクからボイラまで移送するとき、所定の移送粘度範囲(300〜700mm/sec)まで低下させ、更に、ボイラで燃焼するとき、所定の燃焼粘度範囲(15〜30mm/sec程度)まで低下させる必要がある。
【0024】
しかし、重質油燃焼ボイラに移送される燃料油の粘度は不確定である。重質油燃焼ボイラでは、燃焼粘度範囲まで低粘度化した燃料油をバーナに導入して燃焼させているものの、油粘度とばいじん濃度との関係は不明確であった。しかし、図3に示すように、油粘度の上昇に伴ってばいじん濃度が上昇する傾向があることがわかり、特に、燃料油の燃焼粘度範囲を超えた高粘度では、ばいじん濃度が著しく上昇している。粘度が不明な燃料油を加熱してからバーナにより重質油燃焼ボイラに投入して燃焼するとき、粘度が高い場合には、ばいじん濃度の高い排ガスを発生させてしまうおそれがある。
【0025】
本実施例では、燃料油として高粘度重質油を使用し、この重質油をバーナにより燃焼させるとき、重質油の移送状態に基づいてこの重質油の状態をバーナにより燃焼させる最適な状態に変更するようにしている。
【0026】
なお、ここで軽油(軽質油)とは、比重が0.80〜0.84程度の油であり、重油(重質油)とは、比重が0.83〜0.96程度の油であり、アスファルト(石油残渣C)とは、比重が1.02〜1.06程度の油であり、石油残渣Dは、比重が1.06以上の油を表している。
【0027】
実施例1の重質油燃焼ボイラは、図1に示すように、燃料タンク11と、輸送配管12と、輸送ポンプ13と、油加熱器14と、ボイラ本体15と、バーナ16とを有する構成となっている。
【0028】
燃料タンク11は、高粘度重質油が移送される重質油移送ライン21と、この移送ライン21を移送される高粘度重質油に対して粘度調整油(低粘度油)が供給される粘度調整油供給ライン22が連結されている。そのため、この燃料タンク11は、移送粘度範囲に加熱された燃料油として使用する所定粘度の重質油が貯留されることとなる。
【0029】
輸送配管12は、燃料タンク11からボイラ本体15まで延設された配管であり、輸送ポンプ13により燃料タンク11内の重質油をボイラ本体15まで輸送可能となっている。油加熱器(加熱装置)14は、輸送配管12内を流れる燃料油を所定の燃焼粘度範囲まで加熱するものである。この油加熱器14は、シェル14aと、このシェル14a内に設けられて重質油が流れる多数のチューブ14bとを有している。そして、シェル14aは、内部に加熱蒸気を供給してチューブ14b内を流れる重質油を加熱する加熱蒸気供給配管23が連結され、この加熱蒸気供給配管23に流量を調整する流量調整弁24が装着されている。
【0030】
従って、燃料タンク11は、重質油移送ライン21から移送される高粘度重質油に、粘度調整油供給ライン22から供給される粘度調整油が混合されて構成された重質油が貯留されており、輸送ポンプ13を作動すると、燃料タンク11内の重質油を輸送配管12により輸送し、油加熱器14により加熱されてからバーナ16に輸送することができる。
【0031】
そして、この実施例1の重質油燃焼ボイラでは、燃料タンク11から重質油移送ライン21の取り出された重質油の状態を検出する重質油状態検出部として、移送される重質油の温度を計測する第1温度センサ31と、移送される重質油の濃度を計測する濃度センサ32とが設けられている。また、重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部として、上述した油加熱器14が設けられている。そして、重質油状態検出部が検出した重質油の状態、つまり、第1温度センサ31が計測した重質油の温度と、濃度センサ32が計測した重質油の濃度に基づいて油加熱器14を制御する重質油状態制御部としての制御装置33が設けられている。この制御装置33は、重質油の温度と濃度に基づいて油加熱器14の加熱温度を調整することで、重質油の状態がバーナ16により燃焼させる最適な状態となるように変更する。
【0032】
具体的に、制御装置33は、重質油の温度と濃度に基づいて、図2のグラフを用いて重質油の種類を判定する。即ち、輸送配管12内の重質油は、移送粘度範囲に加熱されていることから、濃度センサ32が計測した濃度が移送されている重質油の移送粘度であり、第1温度センサ31が計測した温度がこの移送粘度となるものを特定することで、重質油の種類を判定することができる。そして、判定された重質油の種類に応じて燃焼粘度範囲を特定し、この燃焼粘度範囲に対応する加熱温度(油温度)を求め、油加熱器14による重質油の加熱温度を調整することで、重質油の温度が燃焼粘度範囲に対応する加熱温度になるように加熱する。
【0033】
また、重質油状態検出部として、油加熱器14により加熱された重質油の温度を計測する第2温度センサ34を設けている。制御装置33は、第2温度センサ34が検出した加熱後の重質油の温度をフィードバックし、この加熱後の重質油の温度が燃焼粘度範囲に対応する加熱温度となるように流量調整弁24の開度を調整する。
【0034】
従って、図1に示すように、高粘度重質油が重質油移送ライン21により燃料タンク11に移送され、粘度調整油が粘度調整油供給ライン22から重質油移送ライン21に供給され、両者が混合した所定粘度の重質油(燃料油)が燃料タンク11に貯留される。そして、輸送ポンプ13が作動すると、燃料タンク11内の重質油が輸送配管12により輸送され、油加熱器14により加熱された後に各バーナ16まで輸送され、このバーナ16からボイラ本体15の内部に供給される。
【0035】
このとき、第1温度センサ31は、重質油移送ライン21を流れる加熱前の重質油の温度を計測し、濃度センサ32は、重質油移送ライン21を流れる加熱前の重質油の濃度を計測している。そして、制御装置33は、検出した重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を判定し、判定した重質油の種類に応じた燃焼粘度範囲を特定し、この燃焼粘度範囲に対応する加熱温度(油温度)を求め、油加熱器14による重質油の加熱温度を調整することで、重質油の温度がこの加熱温度になるように油加熱器14を制御する。
【0036】
このように実施例1の重質油燃焼ボイラにあっては、移送される重質油の状態を検出する重質油状態検出部と、この重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部と、重質油状態検出部が検出した重質油の状態に基づいてこの重質油の状態を重質油状態変更部を用いてバーナにより燃焼させる最適な状態に変更する重質油状態制御部とを設けている。
【0037】
従って、移送される重質油の状態を確認し、この重質油をバーナにより燃焼させる最適な状態に変更する。即ち、重質油の燃焼管理を行うことで、ボイラ本体内で重質油を適正に燃焼することができ、装置の大型化や高コスト化を招くことなく、ばいじん濃度を適正に制御することができる。
【0038】
また、実施例1の重質油燃焼ボイラでは、重質油状態検出部として、移送される重質油の温度を計測する第1温度センサ31と、移送される重質油の濃度を計測する濃度センサ32を設け、検出した重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を判定している。従って、温度センサと濃度センサを適用することで、簡単な構成で重質油の種類を適正に判定することができ、また、温度センサと濃度センサにより重質油の種類を判定することで、重質油をバーナにより燃焼させる最適な状態に容易に変更することができる。
【0039】
また、実施例1の重質油燃焼ボイラでは、重質油状態変更部として、重質油を加熱する油加熱器14を設け、重質油状態制御部としての制御装置33は、判定された重質油の種類に応じて燃焼粘度範囲に対応する加熱温度を特定し、油加熱器14により重質油をこの加熱温度まで加熱するようにしている。従って、判定した重質油の種類に応じて、この重質油を燃焼粘度範囲に対応する適正な加熱温度まで加熱することができ、バーナによる最適な燃焼状態を確保することができる。
【0040】
また、実施例1の重質油燃焼ボイラでは、重質油状態検出部として、油加熱器14により加熱された重質油の温度を計測する第2温度センサ34を設け、制御装置33は、第2温度センサ34が検出した加熱後の重質油の温度に基づいて油加熱器14による加熱温度を調整している。従って、加熱後の重質油の温度を用いてフィードバック制御することで、重質油の温度管理を高精度に行うことができる。
【実施例2】
【0041】
図4は、本発明の実施例2に係る重質油燃焼ボイラを表す概略構成図、図5は、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を表すグラフ、図6は、バーナ蒸気割合とプラント効率との関係を表すグラフである。なお、上述した実施例と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0042】
実施例2の重質油燃焼ボイラは、図4に示すように、燃料タンク11と、輸送配管12と、輸送ポンプ13と、油加熱器14と、ボイラ本体15と、バーナ16とを有する構成となっている。
【0043】
そして、この実施例1の重質油燃焼ボイラでは、移送される重質油の温度を計測する第1温度センサ31と、移送される重質油の濃度を計測する濃度センサ32とが設けられている。また、重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部として、油加熱器14と、バーナ16に蒸気を投入する蒸気投入装置が設けられている。この蒸気投入装置は、バーナ16にバーナ蒸気を供給するバーナ蒸気供給配管41と、このバーナ蒸気供給配管41に設けられて流量を調整する流量調整弁42とから構成されている。
【0044】
そして、第1温度センサ31が計測した重質油の温度と、濃度センサ32が計測した重質油の濃度に基づいて蒸気投入装置を制御する制御装置33が設けられている。この制御装置33は、重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類に応じた蒸気投入装置におけるバーナ蒸気割合を調整することで、重質油の状態がバーナ16により燃焼させる最適な状態となるように変更する。
【0045】
具体的に、制御装置33は、重質油の温度と濃度に基づいて、図2のグラフを用いて重質油の種類を判定する。そして、判定された重質油の種類に応じて蒸気投入装置におけるバーナ蒸気割合を特定し、このバーナ蒸気割合に対応する流量調整弁42の開弁開度を調整する。
【0046】
即ち、実施例2では、バーナの重質油に対して蒸気を投入することで、この重質油を微粒化することで、その状態を変更するようにしている。バーナ16に投入して重質油を微粒化する蒸気の投入量が、図5に示すような制御マップに基づいて算出される。この制御マップは、重質油の粘度領域毎に得られるバーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係を示す線図であり、図示の制御マップ例では、適正粘度油(15〜30mm/sec)、高粘度油(30〜100mm/sec)、超高粘度油(100〜500mm/sec)の3領域が示されている。この場合のバーナ蒸気割合は、バーナ16に投入される重質油及び蒸気の重量割合である。
【0047】
バーナ16に投入する蒸気量は、この図5の制御マップで表すように、バーナ蒸気割合とばいじん濃度との相関関係を用い、使用する重質油の粘度領域及び所定のばいじん濃度に対応するバーナ蒸気割合を求めて算出される。例えば、重質油の温度と濃度に基づいて特定される重質油の種類が、超高粘度油に相当する場合、所定のばいじん濃度(例えば、300mg/Nm)に対応するバーナ蒸気割合の12%が求められる。従って、バーナ16に対する蒸気の投入量は、バーナ16に投入される重質油量に対し、重量比で12%となるように算出される。なお、所定のばいじん濃度は一例であり、重質油燃焼ボイラの諸条件に応じて適宜変化する値である。
【0048】
なお、図3に示すように、油粘度が燃焼粘度範囲の領域では、油粘度の上昇に応じてばいじん濃度が略直線的に変化する関係(略比例関係)にある。しかし、油粘度が燃焼粘度範囲を大幅に超えた高粘度(概ね、100mm/sec以上)になると、油粘度とばいじん濃度との間に存在する略比例関係が崩れ、油粘度の上昇に伴ってばいじん濃度は急増する。従って、高粘度の燃料油をバーナ16に供給する場合には、その粘度領域に応じたバーナ蒸気割合が存在すると推測される。このため、重質油の粘度領域毎に実験を行い、図1に表すバーナ蒸気割合とばいじん濃度との関係(制御マップ)を得た。
【0049】
この図5の制御マップでは、ばいじん濃度を所定の値に抑える場合、粘度の高い重質油ほどバーナ蒸気割合を高く設定できることが分かる。更に、例えば、超高粘度油のように、粘度が高い領域にある重質油ほど、バーナ蒸気割合の増加に伴うばいじん濃度の低下は顕著である。従って、図6に示すように、ばいじん濃度(ばいじん量)の低減はプラント効率の向上に貢献するので、ばいじん濃度を低減するためにはバーナ蒸気割合を高く設定することが望ましい。
【0050】
一方、バーナ蒸気割合を高く設定することは、ボイラ本体15へ投入される蒸気量が増して炉内温度を低下させる要因になる。従って、重質油燃焼ボイラのプラント効率にとって、ばいじん濃度及びバーナ蒸気割合は相反する関係にあるので、諸条件を考慮して良好なプラント効率が得られる最適なバーナ蒸気割合の設定が望ましい。この図6に示す場合、ばいじん低減によるプラント効率の向上と、蒸気投入によるプラント効率の悪化とが交差するバーナ蒸気割合は12%程度となり、この値が超高粘度の領域にある燃料油を所定のばいじん濃度(300mg/Nm)にして燃焼させるバーナ蒸気割合と一致している。
【0051】
なお、この実施例2にて、油加熱器14は、輸送配管12内の重質油が予め設定された所定温度となるように加熱しており、制御装置33は、第2温度センサ34が計測した加熱後の重質油の温度をフィードバック制御している。この場合、重質油の所定温度とは、使用する重質油の中で比較的低粘度の重質油の燃焼粘度範囲に対応する加熱温度である。
【0052】
従って、図4に示すように、高粘度重質油が重質油移送ライン21により燃料タンク11に移送され、粘度調整油が粘度調整油供給ライン22から重質油移送ライン21に供給され、両者が混合した所定粘度の重質油(燃料油)が燃料タンク11に貯留される。そして、輸送ポンプ13が作動すると、燃料タンク11内の重質油が輸送配管12により輸送され、油加熱器14により加熱された後に各バーナ16まで輸送される。このバーナ16は、バーナ蒸気供給配管41からバーナ蒸気が供給されることで、このバーナ16からバーナ蒸気により微粒化した重質油がボイラ本体15の内部に供給される。
【0053】
このとき、第1温度センサ31は、重質油移送ライン21を流れる加熱前の重質油の温度を計測し、濃度センサ32は、重質油移送ライン21を流れる加熱前の重質油の濃度を計測している。そして、制御装置33は、検出した重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を判定し、判定した重質油の種類に応じた蒸気投入装置によるバーナ蒸気割合が特定され、バーナ蒸気供給配管41からバーナ16に供給するバーナ蒸気割合を制御する。
【0054】
このように実施例2の重質油燃焼ボイラにあっては、重質油状態変更部として、バーナ16に蒸気を投入する蒸気投入装置(バーナ蒸気供給配管41、流量調整弁42)を設け、制御装置33は、判定された重質油の種類に応じてバーナ蒸気割合を特定し、流量調整弁42の開度を調整してこの特定されたバーナ蒸気割合の蒸気をバーナ16に投入している。
【0055】
従って、判定した重質油の種類に応じて、この重質油に応じた適正なバーナ蒸気割合を特定し、このバーナ蒸気により重質油を微粒化して最適な燃焼状態を確保することができ、その結果、装置の大型化や高コスト化を招くことなく、ばいじん濃度を適正に制御することができる。
【0056】
この場合、バーナ16へ投入する蒸気の投入量が、重質油の粘度領域毎に得られるバーナ蒸気割合とばいじん濃度との相関関係(制御マップ)から、使用する重質油の粘度領域及び所定のばいじん濃度に対応するバーナ蒸気割合を求めて算出される重質油燃焼ボイラは、バーナ16の蒸気投入量を最適化して高粘度の重質油を燃焼させることができる。このようにして最適化した蒸気投入量を採用することにより、重質油の粘度を低下させる事前の加熱処理を全くなくすか最小限に抑えることが可能になり、比較的高粘度の重質油を良好に燃焼させることができる。
【0057】
なお、この実施例2にて、油加熱器14により加熱された重質油の濃度を検出する濃度センサを設け、加熱された重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を特定し、バーナ蒸気割合を決定してもよい。この場合、濃度センサ32をなくすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明に係る重質油燃焼ボイラは、重質油の状態をバーナにより燃焼させる最適な状態に変更することで、装置の大型化や高コスト化を招くことなくばいじん濃度を制御可能とするものであり、いずれの重質油燃焼ボイラにも適用することができる。
【符号の説明】
【0059】
11 燃料タンク
12 輸送配管
13 輸送ポンプ
14 油加熱器(重質油状態変更部、加熱装置)
15 ボイラ本体
16 バーナ
23 加熱蒸気供給配管
24 流量調整弁
31 第1温度センサ(重質油状態検出部)
32 濃度センサ(重質油状態検出部)
33 制御装置(重質油状態制御部)
34 第2温度センサ(重質油状態検出部)
41 バーナ蒸気供給配管(蒸気投入装置)
42 流量調整弁(蒸気投入装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料油として重質油を使用し、この重質油をバーナにより燃焼させる重質油燃焼ボイラにおいて、
重質油の状態を検出する重質油状態検出部と、
重質油の状態を変更可能な重質油状態変更部と、
前記重質油状態検出部が検出した重質油の状態に基づいてこの重質油の状態を前記重質油状態変更部を用いて前記バーナにより燃焼させる最適な状態に変更する重質油状態制御部と、
を備えることを特徴とする重質油燃焼ボイラ。
【請求項2】
前記重質油状態検出部は、移送される重質油の温度を計測する温度センサと、移送される重質油の濃度を計測する濃度センサを有し、前記重質油状態制御部は、重質油の温度と濃度に基づいて重質油の種類を判定することを特徴とする請求項1に記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項3】
前記重質油状態変更部は、重質油を加熱する加熱装置を有し、前記重質油状態制御部は、判定された重質油の種類に応じて燃焼粘度範囲に対応する加熱温度を特定し、前記加熱装置により重質油をこの加熱温度まで加熱することを特徴とする請求項2に記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項4】
前記重質油状態検出部は、前記加熱装置により加熱された重質油の温度を計測する第2温度センサを有し、前記重質油状態制御部は、前記第2温度センサが検出した加熱後の重質油の温度に基づいて前記加熱装置による加熱温度を調整することを特徴とする請求項3に記載の重質油燃焼ボイラ。
【請求項5】
前記重質油状態変更部は、前記バーナに蒸気を投入する蒸気投入装置を有し、前記重質油状態制御部は、判定された重質油の種類に応じてバーナ蒸気割合を特定し、前記蒸気投入装置によりこの特定されたバーナ蒸気割合の蒸気を前記バーナに投入することを特徴とする請求項2に記載の重質油燃焼ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−21749(P2012−21749A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161771(P2010−161771)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】