説明

重量物支持台

【課題】 重量物の重量の大小に影響されることなく、常に一定の回転駆動力で回転部材を回転できるようにして、装置全体としての耐久性能を向上することができる重量物支持台を提供すること。
【解決手段】 重量物支持台1によれば、例えば、重量物50が回転中に障害物に当たったような場合、重量物50を手動で回転させるような場合、又は、支持部材4の回転角度が限界域に達したような場合に、重量物50を支持する支持部材4の回転を妨げる負荷が、弾性部材12によって支持部材4及び回転部材11間に生起される摩擦力を超えると、支持部材4と回転部材11との間に滑りが発生して、回転部材11のみが空転されて、駆動装置14に過負荷が作用することを回避することができる。また、支持部材4は、回転部材11上ではなく、固定部材5上で支持されているので、重量物50の荷重が回転部材11に加わることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビやディスプレイなどの重量物が据え置かれて、その重量物の左右方向の向きを変更することができる重量物支持台に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、従来の重量物支持台100の縦断面図である。図7に示すように、重量物支持台100は、テレビやディスプレイなどが重量物として載置されるものであり、その重量物を鉛直方向の中心軸周りに一定の角度範囲で回動可能に支持するものである。この重量物支持台100は、重量物の回動動作に必要な回転駆動力を操作信号に応じて発生させる駆動装置(図示せず)と、この駆動装置からの回転駆動力を重量物に伝達する回転機構101と、この回転機構101による回転動作を一定の角度範囲に規制するストッパ機構(図示せず)とを備えている。
【0003】
回転機構101は、重量物に固定される支持部材102と、基体103と、その基体103に固設される固定部材104と、この固定部材104と支持部材102との間に介挿されて駆動装置からの回転駆動力により回動される回転部材105と、この回転部材105及び支持部材102間、並びに、回転部材105及び固定部材104間にそれぞれ介挿され、その回転部材105に加わる重量物の重量によるスラスト方向の負荷が所定値を超える場合に滑りを発生させる状態で転支すると共に、当該回転部材105のラジアル方向の振れを規制する球体上の軸受球106とを備えている。
【0004】
この重量物支持台100によれば、使用者が重量物の向きを変えたいときに、リモコン(図示せず)から操作信号が重量物支持台100に向けて送られると、駆動装置が動作し、回転部材105が所望の方向に回転される。すると、回転部材105に軸受球106を介して載置されている支持部材102も、回転部材105と一緒に同方向に同時回転されて、重量物の向きが変えられるのである。
【0005】
ところで、万一、リモコンにより重量物の向きを変えているときに、その重量物が壁や家具などの障害物に当たったり、或いは、支持部材102の回転角度が限界角度に達したりすると、支持部材102に過負荷が加わるが、その過負荷は、重量物の荷重を利用して支持部材102と回転部材105との間の接触面間の滑り摩擦で回避され、駆動装置に過負荷が加わらないようになっている。
【0006】
つまり、従来の重量物支持台100では、重量物の左右方向の向きを変更する場合において、重量物が障害物に当たったり或いは重量物の回転が限界角度に達したりしたときに駆動装置に作用する過負荷状態を、重量物のスラスト方向荷重による接触面間の摩擦力を利用したクラッチ機構によって、回避できる回転機構を備えているのである。
【特許文献1】特開2004−150515公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した重量物支持台100では、重量物が支持部材102に及ぼす荷重を、回転部材105が軸受球106を介して受け支えている。このため、重量物が大型化すると、支持部材102と回転部材105の間の回転抵抗が増加して、駆動手段に及ぶ負荷が増大してしまうという問題点があった。
【0008】
しかも、このように支持部材102と回転部材105との間の回転抵抗が増加することは、例えば、重量物の向きを変えていて、重量物が近くの壁や家具などの障害物に当たったり、或いは、支持部材102の回転角度が限界角度に達した場合に、回転機構101に更に過大な負荷を及ぼすこととなり、結果、回転機構101の耐久性能が大幅に低下してしまうという問題点を招来もする。
【0009】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、重量物の重量の大小に影響されることなく、常に一定の回転駆動力で回転部材を回転できるようにして、装置全体としての耐久性能を向上することができる重量物支持台を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために請求項1記載の重量物支持台は、固定用の基部となる固定部材と、その固定部材上に回転自在に載置されて重量物を下方から支持する支持部材と、その支持部材の外周に外嵌されて、その支持部材の周囲で回転自在に形成されている回転部材と、その回転部材又は支持部材の一方を他方に圧接して、その回転部材及び支持部材間に所定の摩擦力を発生させる圧接部材と、その圧接部材を介して前記支持部材と圧接される前記回転部材に対して回転駆動力を付与する駆動手段とを備えており、前記支持部材に加わる負荷が前記圧接部材により発生される摩擦力を超える場合に、その回転部材と前記支持部材との間に滑りが発生して、前記回転部材を空転させるものである。
【0011】
この目的を達成するために請求項1記載の重量物支持台によれば、駆動手段から回転部材に回転駆動力が付与されると、回転部材が回転される。このとき、重量物の荷重やその他支持部材に加わる負荷が、圧接部材の圧接によって回転部材及び支持部材間に発生する所定の摩擦力(摩擦抵抗)以下ならば、この摩擦力を介した支持部材と回転部材との連結状態が維持されて、固定部材上に載置されている支持部材が回転部材と一緒になって回転される。この回転の結果、支持部材によって支持されている重量物の向きが変更される。
【0012】
一方、例えば、重量物が回転中に障害物に当たったり、重量物を手動で回転させたり、又は、支持部材の回転角度が限界域に達したりして、支持部材に加わる負荷が、圧接部材の圧接により支持部材及び回転部材間に発生する摩擦力を超えると、その摩擦力を介した支持部材と回転部材との連結状態が解除される。すると、支持部材と回転部材との間に滑りが発生し、回転部材のみが空転されて、駆動手段に過負荷が作用することが回避されるのである。
【0013】
請求項2記載の重量物支持台は、請求項1記載の重量物支持台において、前記支持部材は、その支持部材の外周に周設され上下に対向している一対のフランジ部を備えており、そのうち一方のフランジ部が前記回転部材の上面部に対向され、他方のフランジ部が前記回転部材の下面部に対向されており、前記圧接部材は、前記他方のフランジ部と前記回転部材の下面部との間に介在されて、その回転部材を前記一方のフランジ部へ向けて押圧して、この一方のフランジ部に前記回転部材の上面部を圧接するものである。
【0014】
請求項3記載の重量物支持台は、請求項1記載の重量物支持台において、前記支持部材は、その支持部材の外周に周設され上下に対向している一対のフランジ部を備えており、そのうち一方のフランジ部が前記回転部材の上面部に対向され、他方のフランジ部が前記回転部材の下面部に対向されており、前記圧接部材は、前記一方のフランジ部と前記回転部材の上面部との間に介在されて、その回転部材を前記他方のフランジ部へ向けて押圧して、この他方のフランジ部に前記回転部材の下面部を圧接するものである。
【0015】
請求項4記載の重量物支持台は、固定用の基部となる固定部材と、その固定部材上に回転自在に載置されて重量物を下方から支持する支持部材と、その支持部材の外周に外嵌されて、その支持部材の周囲で回転自在に形成されている回転部材と、その回転部材と支持部材との間に介在され、その回転部材及び支持部材の双方に圧接されて、その回転部材との間、及び、前記支持部材との間に、それぞれ所定の摩擦力を発生させる圧接部材と、その圧接部材が圧接される前記回転部材に対して回転駆動力を付与する駆動手段とを備えており、前記支持部材に加わる負荷が前記圧接部材により発生される摩擦力を超える場合に、その圧接部材と前記回転部材又は支持部材の少なくとも一方との間に滑りが発生して、前記回転部材を空転させるものである。
【0016】
この請求項4記載の重量物支持台によれば、駆動手段から回転部材に回転駆動力が付与されると、回転部材が回転される。このとき、重量物の荷重やその他支持部材に加わる負荷が、圧接部材と支持部材との間、及び、圧接部材と回転部材との間に、それぞれ発生する所定の摩擦力(摩擦抵抗)以下ならば、圧接部材を介した支持部材と回転部材との連結状態が維持されて、固定部材上に載置されている支持部材が回転部材と一緒になって回転される。この回転の結果、支持部材によって支持されている重量物の向きが変更される。
【0017】
一方、例えば、重量物が回転中に障害物に当たったり、重量物を手動で回転させたり、又は、支持部材の回転角度が限界域に達したりして、支持部材から回転部材に加わる負荷が、圧接部材と支持部材又は回転部材との間に発生する摩擦力のいずれかを超えると、圧接部材を介した支持部材と回転部材との連結状態が解除される。すると、圧接部材と回転部材又は支持部材との間に滑りが発生し、回転部材のみが空転されて、駆動手段に過負荷が作用することが回避される。
【0018】
請求項5記載の重量物支持台は、請求項4記載の重量物支持台において、前記圧接部材は、前記回転部材の内周面と前記支持部材の外周面との間に介在されている。
【0019】
請求項6記載の重量物支持台は、請求項1から5のいずれかに記載の重量物支持台において、前記回転部材の下面と前記固定部材との間に介装され、その回転部材を下方から転支する複数の転支部材を備えている。
【0020】
請求項7記載の重量物支持台は、請求項1から6のいずれかに記載の重量物支持台において、前記圧接部材は前記支持部材に一体的に形成されている。
【0021】
請求項8記載の重量物支持台は、請求項1から7のいずれかに記載の重量物支持台において、前記駆動手段を遠隔操作するために使用者により操作される操作キーを有して、その操作キーの押下中に操作信号を送信する遠隔操作手段と、その遠隔操作手段からの操作信号を受信した場合に前記駆動手段を動作させると共に、その操作信号を所定時間以上継続して受信し続ける場合に、前記駆動手段を動作を停止させる制御手段とを備えている。
【0022】
この請求項8記載の重量物支持台によれば、請求項1から7のいずれかに記載の重量物支持台と同様に作用する上、使用者により遠隔操作手段の操作キーが押下されて、遠隔操作手段から操作信号が送信されると、その操作信号を受信する間、制御手段によって駆動手段が動作されて、回転部材に回転駆動力が付与される。また、操作キーが押下し続けられて、制御手段が操作信号を所定時間以上継続して受信し続ける場合には、制御手段によって、駆動手段の動作が停止される。
【発明の効果】
【0023】
本発明の重量物支持台によれば、支持部材は、従来の重量物支持台とは異なって回転部材上ではなく、固定部材上に載置されて支持されるので、重量物の荷重が回転部材に加わることがない。従って、重量物の重量の大小とは無関係に、回転部材を常に一定の回転駆動力で回転でき、駆動手段が過負荷状態になることを防止でき、装置全体としての耐久性能を大幅に向上できるという効果がある。
【0024】
特に、請求項2記載の重量物支持台によれば、回転部材は支持部材における下側のフランジ部へ向けて圧接される。つまり、回転部材は圧接部材により重力方向に押し下げられる格好で支持部材に圧接されるので、回転部材と支持部材との間に安定した摩擦力を発生させることができるという効果がある。
【0025】
特に、請求項6記載の重量物支持台によれば、回転部材は、その回転部材の下面と固定部材との間に介装される複数の転支部材によって下方から転支されるので、回転部材と固定部材との間の摩擦抵抗が低減される。このため、支持部材に重量物の荷重が加わっても、支持部材を円滑に回転させることができ、駆動手段に加わる負荷を低減できるという効果がある。また、回転部材及び固定部材の双方の磨耗を軽減でき、その上、耐久性を向上できるという効果もある。更に、駆動手段に加わる負荷が小さくなる分、駆動手段を小型化できるという効果もある。
【0026】
特に、請求項7記載の重量物支持台によれば、支持部材と圧接部材とを一体化することで部品点数を減少でき、その分、安価で且つ簡素な構造とすることができるという効果がある。
【0027】
特に、請求項8記載の重量物支持台によれば、例えば、重量物が回転中に障害物に当たったり、又は、支持部材の回転角度が限界域に達したにも関わらず、なおも遠隔操作手段の操作キーが押下され続けるような場合において、制御手段によって、駆動手段の動作を自動的に停止でき、その結果、駆動手段に及ぶ過負荷状態を自動的に解除でき、駆動手段の耐久性能向上が図られるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施例について、添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施例である重量物支持台1の使用状態を示す外観図であって、重量物50が据え置かれた状態を図示している。図1に示すように、重量物支持台1には、重量物50としてテレビやディスプレイなどの表示機器が載置されている。
【0029】
リモコン15は、重量物支持台1を無線方式で遠隔操作するための機器であり、重量物50の左右の向きを変更させるための押しボタン型キースイッチである2個の操作キー15aが設けられている。このリモコン15は、2個の操作キー15aのいずれかが押されると、その押された操作キー15aに対応する操作信号を、後述する制御装置16(図2参照)へ向けて送信するものである。
【0030】
図2は、重量物支持台1の縦断面図である。図2に示すように、重量物支持台1は、重量物50が固定手段(図示せず)によって固定される重量物固定板2を備えており、この重量物固定板2の下面にネジ部品等の締結手段3によって支持部材4が固定されている。支持部材4は、重量物50を下方から支持するものであり、固定部材5の上に回転自在に載置されている。
【0031】
固定部材5は重量物支持台1の各部材を固定する基部となるものである。この固定部材5の上方にはカバー部材6が覆設されており、このカバー部材6の上部略中央からは支持部材4の上部が上方に突出されている。また、固定部材5は、その固定部材5の上面から平面視略円形状に凸設される座部5aを備えており、この座部5aの上面には、複数のコロ7がコロ用支持板8を介して配設されている。また、固定部材5には、その座部5aの略中央部から鉛直上方に向けて略柱状のボス部5bが立設されている。
【0032】
複数のコロ7は、支持部材4の下面と固定部材5(の座部5a)との間に介装される略円柱状の金属製または樹脂製の軸体であり、支持部材4を下方から転支することで支持部材4の回転時における抵抗を低減させるものである。このように、重量物50を支持する支持部材4を、複数のコロ7を介して固定部材5(の座部5a)の上に載置することで、重量物50の荷重が後述する回転部材11に作用することを回避でき、更に、重量物50の荷重が加わっていても支持部材4を固定部材5上で円滑に回転させることができる。
【0033】
なお、支持部材4と固定部材5との間の回転抵抗を低減させる手段は、必ずしも複数のコロ7に限定されるものではなく、例えば、金属製または樹脂製の球体を用いても良い。
【0034】
支持部材4は、略中空円筒状の筒状部4aと、その筒状部4aの下端部外周に一体的に周設される上下一対のフランジ部4b,4cとを備えている。また、支持部材4の筒状部4aの内部には上部が開放された内周凹部4dが凹設されており、この支持部材4の下端部中心には 内周凹部4dの底面から支持部材4の下端面まで連通した連通孔4eが穿設されている。
【0035】
そして、支持部材4は、この連通孔4e内に固定部材5のボス部5bが嵌入されており、このボス部5bを回転中心として空転自在とされている。また、上下一対のフランジ部4b,4cは互いに上下に対向して設けられており、これらのフランジ4b,4c間には支持部材4の回転中心方向(図2の上下方向)に所定間隔が設けられている。
【0036】
支持部材固定板9は、支持部材4の内周凹部4d内に配設される円環板状の座金であり、その内周に挿通されるボルト10とバネ座金とによってボス部5bの上端面に締着されている。この支持部材固定板9の外径はボス部5bの上端部が嵌入されている連通孔4eの内径より大きく形成されており、この結果、支持部材固定板9は、支持部材4がボス部5bから上方に抜脱することを防止している。
【0037】
回転部材11は、支持部材4の上下一対のフランジ部4b,4c間に挟入された状態で、支持部材4の周囲に外嵌されており、この支持部材4を回転中心として、この支持部材4の周囲で空転自在に形成されている。また、回転部材11の下面部には、固定部材5の座部5a及び支持部材4の下側のフランジ部4cが遊嵌される遊嵌凹部11aが凹設されている。
【0038】
また、この遊嵌凹部11aの天井面には下側のフランジ部4cが下方から当接されており、この当接によって回転部材11は支持部材4に対して載置されている。そして、この状態で、回転部材11は、固定部材5の座部5aより一段低い固定部材5の基準面5cから若干上方に離間されている。このため、回転部材11は固定部材5に接触することなく回転される。
【0039】
また、回転部材11の上面部には、その回転部材11の内周にある支持部材4の周囲を取り囲むように嵌合凹部11bが凹設されている。そして、この嵌合凹部11bには支持部材4の周囲を取り囲むように円環板状の弾性部材12が嵌め込まれており、この弾性部材12は、嵌合凹部11bの底面と支持部材4の上側のフランジ部4bの下面との間に、これらの両面に面接触する格好で介在されている。
【0040】
更に、回転部材11は、その外周に均一のピッチで複数のギア歯11cが刻設されており、この複数のギア歯11cには伝達ギア13が歯合されている。駆動装置14は、伝達ギア13を介して回転部材11に回転駆動力を付与する動力源であり、図示しないが、正逆転可能な駆動モータと、ウォームギヤと平歯車からなり駆動モータの回転数を減速させる減速機構とが内蔵されている。また、駆動装置14は、上記したリモコン15の操作キー15aが押され続けている場合にのみ動作されるように制御装置16によって駆動制御される。
【0041】
弾性部材12は、例えば、皿バネ座金、波座金又は軟質材などの弾性復元性を有する弾性材料で形成されたものであり、上記した回転部材11の嵌合凹部11bの底面と支持部材4の上側のフランジ部4bの上面との間に弾性的圧縮状態で挟入されている。このため、回転部材11は、弾性部材12の弾性復元力(弾性力)によって支持部材4に対して圧接された状態となっている。
【0042】
回転部材11が伝達ギア13を介して駆動装置14により回転されると、支持部材4と回転部材11との間には弾性部材12の弾性復元力による摩擦力が生じ、支持部材4と回転部材11とが一緒に同時回転されるのである。しかも、重量物50を支持する支持部材4の回転を妨げる負荷が、弾性部材12によって支持部材4及び回転部材11間に生起される摩擦力を超えると、支持部材4と回転部材11との間に滑りが発生して、回転部材11のみが空転されて、駆動装置14に過負荷が作用することが回避される。
【0043】
また、支持部材4と回転部材11との間に生じる摩擦力は弾性部材12の弾性復元力によって生起されるものであって、上記した従来の重量物支持台100のように支持部材102に加わる重量物の荷重を用いて支持部材102と回転部材105との間に摩擦力を発生させるものではないので、重量物50の重量の大小に関係なく、支持部材4及び回転部材11間の摩擦力を一定化することができる。
【0044】
つまり、弾性部材12によれば、重量物50の重量とは無関係に、回転部材11を回転させるための回転駆動力が所定閾値を超えて過負荷状態となれば、支持部材4に対して回転部材11が自動的に空転されるものであるので、回転部材11を定常的に一定の回転駆動力で回転させることができ、回転部材11や駆動装置14が過負荷状態となることを回避できるのである。
【0045】
制御装置16は、駆動装置14とともに固定部材5の基準面5c上に搭載されており、図示しない配線を介して駆動装置14と電気的に接続されている。この制御装置16は、操作キー15aの押下に伴ってリモコン15から送信されてくる操作信号を所定時間以上継続して受信し続ける場合に、駆動装置14の駆動モータの回転動作を停止させるタイマー停止手段として機能するものである。
【0046】
例えば、支持部材4が最大回転角度まで回転したにも関わらず、なおもリモコン15の操作キー15aが押下され続けるような場合において、制御装置16がリモコン15から操作信号を所定時間以上受信し続けると、制御装置16は、駆動装置14への通電を自動的に停止して、駆動装置14の駆動を停止させる。この結果、駆動装置14の駆動モータに及ぶ過負荷状態を自動的に解除でき、駆動装置14の耐久性能向上が更に図られる。
【0047】
図3は、重量物支持台1の固定部材5の斜視図である。図3に示すように、固定部材5の座部5aの上面であってボス部5bの周囲には、複数のコロ7が円環状にかつ放射状に配設されており、これらのコロ7は、支持部材4の筒状部4aの鉛直下方(真下)に位置するように配設されている(図1参照)。また、コロ用支持板8は、複数のコロ7同士が均一の位置で回転できるように、各コロ7をそれぞれ支持するものである。
【0048】
更に、ボス部5bの上部外周には、そのボス部5bを平面視した場合の対称位置に一対の凹部5d,5dが凹設されている。一方、このボス部5bが嵌入される支持部材4の一部には、各凹部5d内でそれぞれ移動する突起部(図示せず)が形成されており、各突起部と各凹部5dとによって、支持部材4が所定の最大角度以上に回転しないように、その支持部材4の回転角度を所定範囲以内で規制する角度規制機構17が構成されている。
【0049】
次に、上記のように構成された重量物支持台1の動作について説明する。まず、使用者が、重量物50の左右方向での向きを変えたいとき、例えば、右方向に少し向きを変えたいときには、リモコン15の操作キー15aが押されると、リモコン15から操作信号が重量物支持台1に向けて送信されて、その操作信号が重量物支持台1に内蔵された制御装置16により受信されると、その操作信号を受けた制御装置16によって、駆動装置14に駆動電流が通電されて、駆動装置14が動作され、伝達ギア13を介して回転部材11が右方向に回転される。
【0050】
このとき、支持部材4と回転部材11との間には回転部材11を下方に付勢する弾性部材12が配設されているので、回転部材11が支持部材4のフランジ部4cに圧接されて、支持部材4と回転部材11との間に摩擦力が生じる。このため、回転部材11が右方向に回転すると、摩擦抵抗によって支持部材4も回転部材11と一緒に右方向に同時に回転され、支持部材4により支持されている重量物50も右方向へ回転される。
【0051】
そして、重量物50が希望する向きになったときに、リモコン15の操作キー15aから使用者の手が離されて、リモコン15からの操作信号の送信が停止されると、制御装置16から駆動装置14への通電が停止されて駆動装置14の動作が停止され、重量物50の回転も停止される。
【0052】
また万一、リモコン15で重量物50の向きを変えているときに、その重量物50が、近くの壁や家具などの障害物に当たったり、角度規制機構17により支持部材4の回転角度が限界角度に達して、回転部材11と支持部材4との間の摩擦力を超える回転負荷が重量物50や支持部材4に加わると、回転部材11と支持部材4との間で滑りが発生し、回転部材11が支持部材4の周囲で空転して、駆動装置14に過負荷が加わるのが防止される。
【0053】
なお、重量物50の向きを変えるのに上記のようにリモコン15を用いる代わりに、重量物50を手動で、すなわち、手で直接重量物50の向きを変える場合も、回転部材11と支持部材4との間で滑りが発生し、駆動装置14に無理な力が加わることが防止されるのである。
【0054】
以上説明したように、本実施例の重量物支持台1によれば、例えば、重量物50が回転中に障害物に当たったような場合、重量物50を手動で回転させるような場合、又は、支持部材4の回転角度が限界域に達したような場合に、重量物50を支持する支持部材4の回転を妨げる負荷が、弾性部材12によって支持部材4及び回転部材11間に生起される摩擦力を超えると、支持部材4と回転部材11との間に滑りが発生して、回転部材11のみが空転されて、駆動装置14に過負荷が作用することを回避することができる。
【0055】
また、支持部材4は、従来の重量物支持台100とは異なって回転部材11上ではなく、固定部材5(の座部5b)上で支持されているので、重量物50の荷重が回転部材11に加わることがない。従って、重量物50の重量の大小とは無関係に、回転部材11を一定の回転駆動力で回転でき、駆動装置14の駆動モータが過負荷状態になることを防止でき、装置全体としての耐久性能を大幅に向上できる。しかも、重量物50の重量の大小に応じて耐荷重の異なる複数のバリエーションの重量物支持台を製造することも不要となるのである。
【0056】
また、支持部材4は、複数のコロ7によって下方から転支されているので、重量物50の荷重が加わっても円滑に固定部材5上で回転することでき、その結果、駆動装置14の駆動モータに加わる負荷を更に低減することができる。
【0057】
次に、図4から図6を参照して、上記実施例の変形例について説明する。以下、第1実施例と同一の部分には同一の符号を付して、その説明を省略し、第1実施例と異なる部分については異なる符号を付して、その相違点についてのみを説明する。
【0058】
図4は、第2実施例の重量物支持台20の要部縦断面図である。第2実施例の重量物支持台20は、上記した第1実施例の重量物支持台1に対して、弾性部材の介在位置及びそれに応じて回転部材の形態を若干変更したものである。
【0059】
図4に示すように、第2実施例の重量物支持台20は、支持部材4に回転駆動力を伝達するための回転部材21及び弾性部材12を備えている。回転部材21は、支持部材4の上下一対のフランジ部4b,4c間に挟入されており、この回転部材21の下面部には遊嵌凹部21aが凹設されている。
【0060】
この遊嵌凹部21aには、固定部材5の座部5aが遊嵌されており、この座部5a上に載置されている支持部材4の下側のフランジ部4cも遊嵌されている。一方、回転部材21の上面は支持部材4の下側のフランジ部4bの下面に当接されており、回転部材21の遊嵌凹部21aの天井面と、支持部材4の下側のフランジ部4cの上面との間に生じる空隙には、これらの両面に面接触する格好で弾性部材12が介在されている。
【0061】
弾性部材12は支持部材4の周囲を取り囲むように遊嵌凹部21aに嵌め込まれており、この弾性部材12を介することで、回転部材21は支持部材4に対して載置されている。また、弾性部材12は、回転部材21の遊嵌凹部21aの天井面と支持部材4の下側のフランジ部4cの上面との間に弾性的圧縮状態で挟入されている。このため、回転部材21は、弾性部材12の弾性復元力(弾性力)によって支持部材4に対して圧接された状態となっている。
【0062】
図5は、第3実施例の重量物支持台30の要部縦断面図である。第3実施例の重量物支持台30は、上記した第1実施例の重量物支持台1に対して、弾性部材の介在位置並びにそれに応じて弾性部材及び回転部材の形態を若干変更したものである。
【0063】
図5に示すように、第3実施例の重量物支持台30は、支持部材4に回転駆動力を伝達するための回転部材31及び弾性部材32を備えている。回転部材31は、支持部材4の上下一対のフランジ部4b,4c間に挟入されており、この回転部材31の下面部には遊嵌凹部31aが凹設されている。
【0064】
遊嵌凹部31aには、固定部材5の座部5aが遊嵌されており、この座部5a上に載置されている支持部材4の下側のフランジ部4cも遊嵌されている。一方、回転部材31の上面は支持部材4の上側のフランジ部4bの下面に当接されており、回転部材31の遊嵌凹部31aの天井面は支持部材4の下側のフランジ部4cの上面に当接されており、この結果、回転部材31は支持部材4に対して載置されている。
【0065】
弾性部材32は、支持部材4の上下一対のフランジ部4b,4c間で、且つ、回転部材31の内周面と支持部材4の外周面との間に、これら両面に面接触する格好で介在されている。弾性部材32は支持部材4の外周に巻回される円管状に形成されており、回転部材31の内周面と支持部材4の外周面との間に弾性的圧縮状態で挟入されている。このため、弾性部材32が支持部材4と回転部材31との双方に圧接された状態となっている。
【0066】
この第3実施例の重量物支持台30によれば、回転部材31が伝達ギア13を介して駆動装置14により回転されると、支持部材4及び弾性部材32間、並びに、回転部材31及び弾性部材32間には弾性部材32の弾性復元力による摩擦力が生じ、この弾性部材32を介して支持部材4と回転部材31とが一緒に同時回転される。
【0067】
しかも、重量物50を支持する支持部材4の回転を妨げる負荷が、弾性部材32と支持部材4との間及び弾性部材32と回転部材31と間に生起される摩擦力を超えると、支持部材4と回転部材31との間に滑りが発生して、回転部材31のみが空転されて、駆動装置14に過負荷が作用することが回避される。また、弾性部材32は、支持部材4の周りに巻回可能な形態となるので、第1実施例のように弾性部材12を円環状板状に形成する場合に比べて、その製造コストを低減することができる。
【0068】
図6(a)は、第4実施例の重量物支持台40の要部縦断面図であり、図6(b)は、図6(a)のB−B’線における拡大縦断面図である。第4実施例の重量物支持台40は、上記した第1実施例の重量物支持台1に対して、支持部材自体に弾性部材を一体的に設けたものである。
【0069】
図6(a)に示すように、第4実施例の重量物支持台40は、重量物50が重量物固定板2、締結手段3を介して固定される支持部材41と、この支持部材41に回転駆動力を伝達するための回転部材42とを備えている。支持部材41は、第1実施例と同様に筒状部4aと上下一対のフランジ部4b,4cを備えており、この一対のフランジ部4b,4c間には、回転部材42が支持部材41を回転中心として空転自在な状態で挟入されている。
【0070】
回転部材42の下面部には遊嵌凹部42aが凹設されており、この遊嵌凹部42aには、固定部材5の座部5aが遊嵌されており、この座部5a上に載置されている支持部材41の下側のフランジ部4cも遊嵌されている。一方、回転部材42の上面は支持部材41の上側のフランジ部4bの下面に当接されており、回転部材42の遊嵌凹部42aの天井面は支持部材41の下側のフランジ部4cの上面に当接されており、この結果、回転部材42は支持部材41に対して載置されている。
【0071】
また、回転部材42の上面部には、その回転部材42の内周にある支持部材41の周囲を取り囲むように断面視凹字形の係合溝42bが凹設されている。一方、支持部材41の上側のフランジ部4bからは、係合溝42bの底面に圧接される係合突起41aが突設されている。図6(b)に示すように、支持部材41の係合突起41aは、その支持部材41のフランジ部4bの一部が係合溝42bの底面に向けて略円弧状に湾出されたものである。この係合突起41aは弾性変形可能に形成されており、この弾性変形に伴う復元力によって、回転部材42を下側のフランジ部4cへ向けて押圧して付勢するものである。
【0072】
第4実施例の重量物支持台40によれば、回転部材42が伝達ギア13を介して駆動装置14により回転されると、支持部材41と回転部材42との間には係合突起41aの弾性的付勢力(押圧力)による摩擦力が生じ、支持部材41と回転部材42とが一緒に同時回転される。しかも、重量物50を支持する支持部材41の回転を妨げる負荷が、係合突起41aによって支持部材41及び回転部材42間に発生される摩擦力を超えると、支持部材41と回転部材42との間に滑りが発生して、回転部材42のみが空転されて、駆動装置14に過負荷が作用することが回避される。
【0073】
また、支持部材41と回転部材42との間に一定の摩擦力を発生させる係合突起41aは、支持部材41に一体的に形成されているので、その分、第1実施例に比べて部品点数を減少させて、装置全体の製造コストを低廉にでき、かつ、全体構造を簡素化できる。
【0074】
以上、実施例に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0075】
例えば、本実施例では、重量物支持台1によって支持される重量物50としてテレビやディスプレイなどの表示機器を例に説明したが、かかる重量物の種類は必ずしもこれらに限定されるものではなく、重量が大きくなおかつ利用状況に応じて左右の向きを変更するような機器やその他の物であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本発明の一実施例である重量物支持台の使用状態を示す外観図である。
【図2】重量物支持台の縦断面図である。
【図3】重量物支持台の固定部材の斜視図である。
【図4】第2実施例の重量物支持台の要部縦断面図である。
【図5】第3実施例の重量物支持台の要部縦断面図である。
【図6】(a)は、第4実施例の重量物支持台の要部縦断面図であり、(b)は、(a)のB−B’線における拡大縦断面図である。
【図7】従来の重量物支持台の縦断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1,20 重量物支持台
4 支持部材
5 固定部材
7 コロ(転支部材)
11,21 回転部材
12 弾性部材(圧接部材)
13 伝達ギア(駆動手段の一部)
14 駆動装置(駆動手段の一部)
4b,4c フランジ部
11a,21a 遊嵌凹部(回転部材の下面部の一部)
11b 嵌合凹部(回転部材の上面部の一部)
15 リモコン(遠隔操作手段)
15a 操作キー
16 制御装置(制御手段)
30 重量物支持台
31 回転部材
32 弾性部材(圧接部材)
31a 遊嵌凹部(回転部材の下面部の一部)
40 重量物支持台
41 支持部材
42 回転部材
41a 係合突起(圧接部材)
42a 遊嵌凹部(回転部材の下面部の一部)
42b 係合溝(回転部材の上面部の一部)
50 重量物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定用の基部となる固定部材と、
その固定部材上に回転自在に載置されて重量物を下方から支持する支持部材と、
その支持部材の外周に外嵌されて、その支持部材の周囲で回転自在に形成されている回転部材と、
その回転部材又は支持部材の一方を他方に圧接して、その回転部材及び支持部材間に所定の摩擦力を発生させる圧接部材と、
その圧接部材を介して前記支持部材と圧接される前記回転部材に対して回転駆動力を付与する駆動手段とを備えており、
前記支持部材に加わる負荷が前記圧接部材により発生される摩擦力を超える場合に、その回転部材と前記支持部材との間に滑りが発生して、前記回転部材を空転させるものであることを特徴とする重量物支持台。
【請求項2】
前記支持部材は、その支持部材の外周に周設され上下に対向している一対のフランジ部を備えており、そのうち一方のフランジ部が前記回転部材の上面部に対向され、他方のフランジ部が前記回転部材の下面部に対向されており、
前記圧接部材は、前記他方のフランジ部と前記回転部材の下面部との間に介在されて、その回転部材を前記一方のフランジ部へ向けて押圧して、この一方のフランジ部に前記回転部材の上面部を圧接するものであることを特徴とする請求項1記載の重量物支持台。
【請求項3】
前記支持部材は、その支持部材の外周に周設され上下に対向している一対のフランジ部を備えており、そのうち一方のフランジ部が前記回転部材の上面部に対向され、他方のフランジ部が前記回転部材の下面部に対向されており、
前記圧接部材は、前記一方のフランジ部と前記回転部材の上面部との間に介在されて、その回転部材を前記他方のフランジ部へ向けて押圧して、この他方のフランジ部に前記回転部材の下面部を圧接するものであることを特徴とする請求項1記載の重量物支持台。
【請求項4】
固定用の基部となる固定部材と、
その固定部材上に回転自在に載置されて重量物を下方から支持する支持部材と、
その支持部材の外周に外嵌されて、その支持部材の周囲で回転自在に形成されている回転部材と、
その回転部材と支持部材との間に介在され、その回転部材及び支持部材の双方に圧接されて、その回転部材との間、及び、前記支持部材との間に、それぞれ所定の摩擦力を発生させる圧接部材と、
その圧接部材が圧接される前記回転部材に対して回転駆動力を付与する駆動手段とを備えており、
前記支持部材に加わる負荷が前記圧接部材により発生される摩擦力を超える場合に、その圧接部材と前記回転部材又は支持部材の少なくとも一方との間に滑りが発生して、前記回転部材を空転させるものであることを特徴とする重量物支持台。
【請求項5】
前記圧接部材は、前記回転部材の内周面と前記支持部材の外周面との間に介在されていることを特徴とする請求項4記載の重量物支持台。
【請求項6】
前記回転部材の下面と前記固定部材との間に介装され、その回転部材を下方から転支する複数の転支部材を備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の重量物支持台。
【請求項7】
前記圧接部材は前記支持部材に一体的に形成されていることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の重量物支持台。
【請求項8】
前記駆動手段を遠隔操作するために使用者により操作される操作キーを有して、その操作キーの押下中に操作信号を送信する遠隔操作手段と、
その遠隔操作手段からの操作信号を受信した場合に前記駆動手段を動作させると共に、その操作信号を所定時間以上継続して受信し続ける場合に、前記駆動手段を動作を停止させる制御手段とを備えていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の重量物支持台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−303496(P2007−303496A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−130162(P2006−130162)
【出願日】平成18年5月9日(2006.5.9)
【出願人】(592165978)肥田電器株式会社 (3)
【Fターム(参考)】