説明

金属キャビネット、及びそれを用いたキッチン台

【課題】キッチン台などに使用され、配置替えの自由度が高く見栄えや強度を維持した現地組立が行い安い金属キャビネットを提供する
【解決手段】前面が開放された金属製キャビネット10であって、少なくとも側板11の一方に切り欠き14、又は開口部15を有し、該切り欠き14又は開口部15の周端に折り曲げ形成した縁部16を有し、切り欠き14又は開口部15の周端近傍に穴17が複数個設けられている。また、切り欠き14又は開口部15には、蓋板20が止着され、該蓋板にはハーフカット22が所定領域に施されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ステンレス鋼板などで製作される箱体である金属キャビネット、及びそれを用いたキッチン台に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロや流しを配したキッチン台は、数十年使用される耐久性消費材であると共に、近年ではダイニングルームなどに配置されるようになり、室内環境を左右する装飾家具として位置付けられるようになってきている。
そのため、キッチン台のレイアウトにあっても、従来の壁密着配置のみに限らず、部屋の中央部に独立配置される所謂アイランドタイプも多く、対面キッチンが脚光を浴びている。
【0003】
また、一方キッチンの使用方法にあっても、従来は主婦が料理専用機器として使用することが一般的であったが、子供と一緒に料理を楽しんだりするようになってきており、生活スタイルに合わせたキッチンに多様化している。この生活スタイルも独身時代、新婚時代、子供同居時代、そして子供が巣立った後の夫婦二人の家族構成と一度設置したキッチンの利用形態も変化する。そのため、生活スタイルに合わせて自由にキッチン構成を変更可能なシステムキッチンの出現が望まれている。
【0004】
このような背景のもとに、出願人はキッチン構造を門型フレーム構造としてそのフレーム部の空間部に物品収納ユニット体を自由に選択又は配置できるシステムキッチンとして、特許文献1に示すようなシステムキッチンを発明し開示した。
また、金属キャビネットとしては、組立作業を容易にした特許文献2も開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−102568号公報
【特許文献2】特開2000−50980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述の特許文献1の発明では、ガスコンロのガス管や流しの給配水管がキッチン台両側のフレーム部から立ち上がり、流しやガスコンロに接続するに際して物品収納ユニット体と緩衝し、物品収納ユニット体を自由に配置変更できないという制約があった。また、特許文献2の発明にあってはキッチン収納部の模様替え要望に対する適切な解決手段を与えるものではなかった。
【0007】
この発明は、かかる現状に鑑み創案されたものであって、その目的とするところは、見栄えや強度を維持しつつ、物品収納ユニット体である金属キャビネットの配置替えの自由度を向上させるとともに、配管スペースのメンテナンスや現地配管が簡単な金属キャビネットを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、請求項1記載の発明は、前面が開放された金属製キャビネットであって、少なくとも側板の一方に切り欠き、又は開口部を有し、該切り欠き又は開口部の周端に折り曲げ形成した縁部を有するようにしたものである。
本発明によると、金属製キャビネットの側板に予め用意された切り欠き又は開口部があるため、門型キッチン台内にキャビネットを配置する場合に配管等との緩衝を避けることができ、中央部、端部等の配置場所を現地で任意に選択できるとともに、開口部に縁部を有するため側板のバタツキを防止でき強固な金属キャビネットとすることができる。
尚、縁部の長さは、側板に引き出しレールなどを取り付けるための取付具が設置できるように3mm以上とし、キャビネット収納部を最大限とするために20mm以下とすることが好ましい。
【0009】
更に請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、切り欠き又は開口部の周端近傍には、切り欠きを塞ぐ蓋板を着脱自在に止着するための穴を複数個設けることを追加したものである。
本発明によると、予め蓋板の止着用穴があるため、蓋板を簡単にビス止め又はラッチ具止めでき、点検口として利用することができる。
好ましくは、蓋板を工具未使用で着脱するため、ラッチ具(商品名;ニフラッチ)を使用する。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、切り欠き又は開口部には、ガスコンロ、給水管等の配管用貫通孔を現地施工するためのハーフカットが所定領域に施されている蓋板が用いられている。
本発明によると、必要に応じてハーフカット部分を槌などで打抜き貫通孔を製作できるため、ガスコンロ下や流し下の金属キャビネットと配管が緩衝する個所の配管作業が容易となるとともに、貫通孔が不要な場所にあってはそのまま使用できるため、見栄えが良く防虫効果が維持できる。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、請求項1乃至3に記載の金属キャビネットを、単独又は多段積みでキッチン台のフレーム部内空間部に配置したものである。
本発明によると、上述の如く、所定間口の数種類の金属キャビネットを用いることにより、キャビネット配置が自由にできるため、金属キャビネットの標準化ができ生産性を向上することができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明にかかる金属キャビネットは、以上説明した如き内容のものなので、見栄えや強度を維持しつつ、物品収納ユニット体である金属キャビネットの配置替えの自由度を向上させるとともに、配管スペースのメンテナンスや現地配管作業を容易とし且つ生産性を向上できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面に基づき、この発明の詳細を説明する。
図1は、本発明が適用されるキッチン台の部品構成図であり、図2及び図3は本発明の金属キャビネット側板の実施例を示す斜視図である。図4は、本発明で使用する蓋板の実施例を示す斜視図であり、図5は本発明の金属キャビネットをキッチン台に組み込んだ組立完成図である。
【実施例1】
【0014】
本発明の金属キャビネットは、図1に示すように、キッチン台1のフレーム部4に囲まれた空間部5に取り付けてキッチンの物品収納ユニット体として使用されるものである。本実施例1の金属キャビネット10は、SUS304の0.8mm鋼板のライン仕上げを使用している。鋼板厚みはキャビネットの大きさにもよるがキャビネット前後左右からの押圧力やキャビネット内へのキッチン関連収納物の重量等を考慮するとキャビネット強度を保つために0.5mm以上1mm以下が強度的に好ましい。
【0015】
金属キャビネット10は前面が開放されており、底板13と背板12とそして両側の側板11及び上部の補強桟18より構成される。本実施例では、底板13、背板12、各側板11及び補強桟18はそれぞれ個別に製作されたものを使用しており、各板を接続して箱体に組立てられる構造となっているため、各板体は必要周辺部分がL字状に折り曲げられ、その折り曲げ部分に連結ネジ用のネジ穴が設けられている。金属キャビネット10は、これらのネジ穴を利用して各板体を螺着して箱体に組立てられる。箱体の上部はキャビネットの強度を保つためにC字状のステンレス折板である補強桟18が螺着固定されている。
【0016】
この金属キャビネット10の側板11には、図2及び図3に示すように、少なくとも両側板11の一方に切り欠き14、又は開口部15を設け、その周端は折り曲げ形成した縁部16を形成させている。図2の側板11は図1に示す金属キャビネット10の上段キャビネット10bを、図3の側板11は図1に示す金属キャビネット10の下段キャビネット10cを例に示している。縁部16は共に箱体の外側向きに折り曲げられでおり、その長さはキッチン台空間部の収納効率を上げるためになるべく短いほうが良いものの、キャビネット強度を保つ為には3mm以上が好ましい。この折り曲げ形成した縁部16は開口部15又は切り欠き14がある側板11のバタツキを防止しキャビネットの強度を向上させる。
【0017】
この金属キャビネット10の上段キャビネット10b及び下段キャビネット10cは、図示していないが、例えば図1の図面右側の金属キャビネット10dと入れ替え配置した場合に、上段キャビネット10bの切り欠き14は排水管9の通路となり、下段キャビネット10cの開口部15は排水管9、給水管7、給湯管8等のバルブ位置に対応してメンテナンス開口部となる。そのためキッチン使用者の金属キャビネット10の配置換えを事前に考慮して開口部15又は切り欠き14を側板11に成形しておけば使用者の好みに応じて配置換えができるという使用環境に追従したキッチン収納を提供できる。また、配置換え仕様の金属キャビネット10の製造にあっても事前に切り欠き14又は開口部15を設けたものを標準製造できるため製造の合理化を図ることができる。
【0018】
また、本実施例の金属キャビネット10は側板11の切り欠き14又は開口部15に蓋板20が止着可能である。そのために、切り欠き14又は開口部15の周端近傍には、切り欠き14を塞ぐ蓋板20を着脱自在に止着するための穴17が2個設けられている。特に穴17の個数や位置を限定するものではないが、図2には切り欠き14の両側に穴17を設けており、その切り欠き14に対応する蓋板20を図4に示している。切り欠き14への蓋板20の取り付けは図4に示す矢印方向にキャビネット内側から側板11にある切り欠き両側の穴17に対応させて図示しないラッチ具(商品名;ニフラッチ)を挿入することで簡単に止着できる。このように蓋体20を金属キャビネット10の内側から着脱自在に使用できるため、キッチン台フレーム部内に配置された給水管等のメンテナンスが、金属キャビネット内の収納物をキャビネットから取り外すことで簡単に実施することができる。
【0019】
更に、蓋体20には貫通孔21を設けることが可能なハーフカット22が所定領域に施されている。このハーフカット22は切り欠き14又は開口部15に、ガスコンロ2や配水管の配管を通す場合に貫通孔21を現地製作するもので槌等を使用して打抜くことで簡単に開口を製作できる。この実施例では打抜き成形で貫通孔21の3箇所を5mm幅残してハーフカット貫通孔21を事前に準備している。現地ではステンレス鋼板に湾曲部を有する開口を設けることは専用器具が用意できないため頗る困難な作業となるが、このように一般的な工具である槌で貫通孔21を容易に製作することができる。貫通孔21はその後ヤスリなどでバリ取りされる。
【0020】
以上、本発明の実施例を説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、例えば、前述した金属キャビネット10の組立方法は各側板11を溶接接合しても良く、また、一枚のステンレス鋼板を折り曲げ成形して底板13、両側板11、背板12並びに天板を成形しても良い。また、金属キャビネット上部の補強桟18についても本実施例ではステンレス鋼板の材料費低減のため、両側2箇所にのみ設けているがそれ以上にしても良く、補強桟18の変わりに天板で全面を覆っても良い。更に金属キャビネット10の材質もSUS304を用いているが、SUS430系等のその他のステンレス、塗装鋼板、亜鉛鉄板、ホーロー鋼板なども用いることもできる。
【0021】
また、金属キャビネット内の収納構造については前述しなかったが、このような金属キャビネット10を用いることで、金属キャビネット10を多段にしたり単独とすることもでき、内部にレールを設けて引き出し30を取り付けたり,単に扉31を設けた収納とすることもできるため、キッチン台空間部5の収納体を使用者の好みに応じてレイアウトできる。
尚、図5は図1の収納部品を組立てた後の完成したキッチン台1を示している。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明が適用されるキッチン台の部品構成図である。
【図2】本発明の金属キャビネットで側板の実施例を示す斜視図である。
【図3】本発明の金属キャビネットで側板の他の実施例を示す斜視図である。
【図4】本発明で使用する蓋板の実施例を示す斜視図である。
【図5】本発明の金属キャビネットをキッチン台に組み込んだ組立完成図である。
【符号の説明】
【0023】
1 キッチン台
2 ガスコンロ
3 流し
4 フレーム部
5 空間部
6 ガス管
7 給水管
8 給湯管
9 排水管
10 金属キャビネット
11 側板
12 背板
13 底板
14 切り欠き
15 開口部
16 縁部
17 穴
18 補強桟
20 蓋板
21 貫通孔
22 ハーフカット
30 引き出し
31 扉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面が開放された金属製キャビネット(10)であって、少なくとも側板(11)の一方に切り欠き(14)、又は開口部(15)を有し、該切り欠き(14)又は開口部(15)の周端に折り曲げ形成した縁部(16)を有することを特徴とする金属製キャビネット。
【請求項2】
前記切り欠き(14)又は開口部(15)の周端近傍には、切り欠き(14)を塞ぐ蓋板(20)を着脱自在に止着するための穴(17)が複数個設けられていることを特徴とする請求項1に記載の金属製キャビネット。
【請求項3】
前記切り欠き(14)又は開口部(15)には、ガスコンロ(2)、給水管(7)等の配管用貫通孔(21)を現地施工するためのハーフカット(22)が所定領域に施されている蓋板(20)が用いられていることを特徴とする請求項1乃至2に記載の金属製キャビネット。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の金属キャビネットを、単独又は多段積みでキッチン台(1)のフレーム部(4)内空間部(5)に配置したことを特徴とするキッチン台。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−87532(P2006−87532A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−274333(P2004−274333)
【出願日】平成16年9月22日(2004.9.22)
【出願人】(000002222)サンウエーブ工業株式会社 (196)
【Fターム(参考)】