説明

金属コアプリント配線板の製造方法、及びこれに用いられる部品

【課題】剥離、エッチング不良、白化、マイグレーションなどの製品不良のない金属コアプリント配線板を得られるようにする。
【解決手段】金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板21を次のように構成する。基材となる金属板22に設けられた貫通穴23を塞ぐように、樹脂からなる閉塞部24を備える。これにより、金属コア板21の両面にプリプレグ33と金属箔32を積層一体化して金属張積層板31を得たときに、銅箔32の表面に窪みが発生することを防止するともに、内部にボイドが発生することも防ぐ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属コアプリント配線板に関し、より詳しくは、不良の発生を回避できるような金属コア板、金属張積層板、金属コアプリント配線板、及びこれらの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属コアプリント配線板は、図12に示したような工程を経て製造されている。
【0003】
まず、コアとなる所定厚の銅板を所定大所定形状に裁断して素材101を得る(図12(a)参照)。続いて、この素材101の所定位置に貫通穴102をあける穴あけ加工をする(図12(b)参照)。
【0004】
つぎに、穴あき素材101の表面に、樹脂のくっつきをよくするための粗化処理を施す。
【0005】
この後、下記特許文献1に開示されているように、粗化処理後の穴あき素材103の両面にプリプレグ104と銅箔105をこの順で重ね(図12(c)参照)、圧板であるステンレス板で挟み、これらを加熱プレスにより積層一体化させる(図12(d)参照)。この一体化のときに、プリプレグ104の樹脂が貫通穴102の中に充填される。
【0006】
この積層一体化により、穴あき基材103の両面に絶縁層104aを介して銅箔105が存在することになる。一体にしたものが銅張積層板106である。
【0007】
つづいて、所定位置にスルーホール用の穴107をあけ(図12(e)参照)、この後、スルーホールめっき108(図12(f)参照)、パターン109形成(図12(g)参照)、ソルダレジスト110(図12(h)参照)形成などの必要な処理を行うと、金属コアプリント配線板111が得られる。
【0008】
しかし、上記の加熱プレスによる積層一体化では、プリプレグの溶けた樹脂を貫通穴102に流し込むため、図12(d)のB部分を示す図13(a)にみられるように、表面の銅箔105における貫通穴102部分に窪み112が発生してしまう。この窪みは、図13(b)に示したように表面からも視認できるものである。
【0009】
また、貫通穴102の中に充填された樹脂のうち、貫通穴102の内周面近傍に相当する部分にはボイド113が発生しやすい。
【0010】
これは、プリプレグ104のガラスクロス104bに含浸させた樹脂を素材103の両面に対して一体化するとともに、貫通穴102にも充填することが原因である。
【0011】
上記の窪み112は、図14(a)の単なる積層状態から図14(b)に示したように、貫通穴102内に樹脂が流れ込もうとするときに樹脂の粘性でガラスクロス104bが樹脂に追従して貫通穴102の中に潜るように変形し、この変形に伴って表面の銅箔105も樹脂に追従することから発生する。
【0012】
上記のボイド113は、貫通穴102の中の内周面の近傍Pが、図14(b)に仮想線で示した樹脂の流れ、充填の過程で樹脂が一番遅れて届く位置にあることから発生する。
【特許文献1】特開昭64−89592号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような窪みやボイドがあると、次のような問題がある。
窪み部分では、銅箔に重ねられたステンレス板からの圧力と熱が積層プレス時に加わりにくいので、銅箔と樹脂の密着性やガラスクロスと樹脂との密着性が悪くなり、剥離の原因になりやすい。
【0014】
また、配線パターンを形成するためのエッチングに際して、ドライフィルムの貼り付けや露光を行うが、このときに窪みがあると、ドライフィルムの密着不良や露光のピントずれが起こり、エッチングしたくない部分がエッチングされてしまうというようなエッチング不良を引き起こしてしまう。
【0015】
ボイドがあると、ドリルで貫通穴をあける際の衝撃によるクラックの起点となったり、ハンダ耐熱試験や信頼性試験での冷熱サイクルでボイドが膨張収縮してクラックが入ったりすることがある。
【0016】
また、貫通穴の形成によってボイドが表面に露出し、そこにスルーホールめっきが付着すると、スルーホールとコアの間の絶縁不良が生じることがある。
【0017】
これらに加えて、プリプレグに含浸できる樹脂量には限度があるので、ガラスクロスを用いたプリプレグで特に薄いプリント配線板を製造する場合には、プリプレグも薄くする必要があり、貫通穴を十分に埋めるための樹脂量を確保できない場合もある。この場合には、ガラスクロスのクロス目が銅箔の表面に浮き出ることがあり、微細な配線パターンの形成に障害となる。
【0018】
また、樹脂とガラスクロスの密着性が悪いと、ガラスクロスを用いたプリプレグでは、銅イオンがガラスクロスの繊維に沿って移動する、銅イオンのマイグレーションが起こりやすく、短絡の原因となる。
【0019】
そこで、この発明は、上述のような剥離、エッチング不良、マイグレーションなどの不良の発生をなくすことを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そのための手段は、金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板であって、基材となる金属板に設けられた貫通穴の中に、樹脂からなる閉塞部が保持された金属コア板である。
【0021】
上記の樹脂は、電気絶縁性フィラーを含有するものであるとよい。
【0022】
別の手段は、金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板の製造方法であって、金属板に形成された貫通穴に、熱硬化性樹脂からなる液状の樹脂ワニスを充填したのちに硬化処理をして半硬化状態にし、上記樹脂ワニスからなる閉塞部を貫通穴内に保持させる金属コア板の製造方法である。
【0023】
貫通穴を有する金属板に対して、熱硬化性樹脂からなる液状の樹脂ワニスを塗布する樹脂ワニス塗布工程と、該樹脂ワニス塗布工程で塗布された樹脂ワニスに圧力をかけて厚さを調整するプレス工程と、該プレス工程を経た樹脂ワニスに硬化処理をして半硬化状態にし、金属板の貫通穴内に上記樹脂ワニスからなる閉塞部を保持させる半硬化処理工程を有する金属コア板の製造方法であるもよい。
【0024】
また、金属板に形成された貫通穴に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填したのちに冷却固化し、上記熱可塑性樹脂からなる閉塞部を貫通穴内に保持させる金属コア板の製造方法であるもよい。
【0025】
別の手段は、上記の金属コア板の両面に、絶縁層と金属箔が形成された金属張積層板である。
【0026】
別の手段は、金属コアプリント配線板の製造に用いられる金属張積層板の製造方法であって、上記の金属コア板の製造方法で金属コア板を製造した後、該金属コア板の両面に、プリプレグと金属箔を積層する積層工程と、該積層工程で積層された金属コア板とプリプレグと金属箔を加熱プレスして一体化する加熱プレス工程を有する金属張積層板の製造方法である。
【0027】
貫通穴を有する金属板または該金属板に絶縁層を介して重合される金属箔に、電気絶縁性フィラー入りの液状の樹脂ワニスを塗布する樹脂ワニス塗布工程と、該樹脂ワニス塗布工程で塗布された樹脂ワニスに圧力をかけて厚さを調整するプレス工程と、該プレス工程を経た樹脂ワニスに硬化処理をして半硬化状態にし、金属板の貫通穴内に上記樹脂ワニスからなる閉塞部を、金属板の両面に上記樹脂ワニスからなる被覆部を保持させる半硬化処理工程と、該半硬化処理工程で半硬化状態になった閉塞部と被覆部を加熱して硬化するとともに金属板および金属箔と一体化する加熱プレス工程を有する金属張積層板の製造方法であるもよい。
【0028】
別の手段は、上記の金属張積層板の製造方法で金属張積層板を製造した後に、エッチングにより上記金属箔からなる配線パターンを形成することを特徴とする
金属コアプリント配線板の製造方法である。
【発明の効果】
【0029】
以上のように、この発明によれば、金属コア板の貫通穴が樹脂からなる閉塞部で優先的に塞がるので、金属コア板の両面に絶縁層を形成したときに表面の窪みや内部のボイドが発生しにくい。
【0030】
さらに、窪みが生じにくいことで、積層プレス時に銅箔に重ねられるステンレス板からの熱と圧力が均一に伝わり、銅箔と樹脂、ガラスクロスと樹脂の密着性も向上する。
【0031】
このため、金属コアプリント配線板を製造したときに、窪みやボイドに起因する種々の製品不良をなくし、良品を効率よく得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
剥離、エッチング不良、マイグレーションなどの製品不良の発生をなくすという目的を、基材となる金属板に設けられた貫通穴の中に、樹脂からなる閉塞部を保持して貫通穴を優先的に塞ぐという構成にて実現した。
【0033】
以下、この発明を実施するための一形態を、図面を用いて説明する。
【0034】
図1は、金属コアプリント配線板11の一部分の拡大断面図であり、図2はその製造工程のうちの前工程を示している。図1中、12はコア、13は絶縁層、14は金属箔からなる配線パターン、15はソルダレジストである。
【0035】
この金属コアプリント配線板11の製造においては、コアとなる金属板に、樹脂付きの金属コア板21が用いられる。樹脂付きの金属コア板21を用いることによって、金属張積層板31を製造したときに、図3に示したように表面の金属箔32の窪みや内部のボイドの発生を回避できる。このため、層間の剥離や配線パターン形成時のエッチング不良、マイグレーションなどの製品不良の発生をなくすことが可能である。
【0036】
まず、樹脂付きの金属コア板21について説明する。
【0037】
樹脂付きの金属コア板21は、図2に示したように基材となる金属板22に設けられた貫通穴23の中に、樹脂からなる閉塞部24が保持されたものである。貫通穴23は、後にスルーホールを形成する部位などの所定の位置に形成される。そして、閉塞部24を形成する樹脂には、熱硬化性樹脂や熱可塑性樹脂が用いられ、閉塞部24の存在によって金属コア板21は、図2(c)に示したように貫通穴を塞いで穴のない1枚の板状となる。
【0038】
この閉塞部24は、図4(a)に示すように、両面が金属板22の両面と面一になる状態であるとよいが、図4(b)に示したように金属板22の両面を膜状に被覆する被覆部25と一体となるものであるもよい。また、図示を省略するが、被覆部25は金属板22の片面のみにあるものであってもよい。
【0039】
また、閉塞部24を構成する樹脂には、図5(a)、図5(b)に示したように、電気絶縁性フィラー26を含有させるのが好ましい。電気絶縁性フィラー26としては無機物からなり、熱膨張率の小さいものが好適に使用できる。たとえばEガラスの短繊維を用いることができる。また、シリカ、シリコンカーバイドなども使用できる。
【0040】
電気絶縁性フィラー26を含有させることで、樹脂の収縮を防止できるとともに、熱膨張率の低い電気絶縁性フィラー26によって、樹脂の熱膨張を抑えて金属板22のそれに近づけて、樹脂と金属板22との剥離やクラックの発生を抑制できる。また、閉塞部24の強度を高めることができ、閉塞部24が半硬化状態の熱硬化性樹脂の場合であっても貫通穴23からの脱落などを回避できる。さらに、電気絶縁性フィラー26を短繊維で構成した場合には、フィラーがぶつ切り状態となる、イオンが移動するためのチャンネルがない状態となり、この結果、マイグレーションが発生しにくい。
【0041】
このような樹脂付きの金属コア板21は、図6に示したような装置41を利用して製造する。
【0042】
装置41は、貫通穴23を有する金属板22に対して熱によって硬化する液状の樹脂ワニス27を塗布(樹脂ワニス塗布工程)したのち、樹脂ワニス27に圧力をかけて厚さを調整(プレス工程)し、続いて、樹脂ワニス27に硬化処理をして半硬化状態にし、金属板22の貫通穴23内に樹脂ワニス27からなる上記の閉塞部24を保持させ、場合によっては上記の被覆部25も形成する(半硬化処理工程)ものである(図4、図5参照)。このため、樹脂ワニス27の塗布のための塗布装置42,43と、厚さ調整のための圧延ロール44と、硬化のためのヒータ45を上流側から順に有する。また、金属板22には長いウェブ状のものが用いられ、所定の貫通穴パターンが長さ方向に複数形成された後に、ロール状に巻回された金属条46が使用される。
【0043】
樹脂ワニス塗布工程部分には、金属条46の引き出し位置より上流側における搬送路の下側と、引き出し位置より下流側における搬送路の上側に、ロール状に巻回された離型フィルム47,48が配設されている。各離型フィルム47,48は、離型フィルム47,48の離型層が金属条46に対向するように配設される。そして、上流側の離型フィルム47と金属条46の間には、引き出された離型フィルム47の離型層の上に樹脂ワニス27を塗布する、カーテンコータからなる上流側の塗布装置42が備えられる。また、金属条46と下流側の離型フィルム48との間には、引き出された金属条46の上面に樹脂ワニス27を塗布する、カーテンコータからなる下流側の塗布装置43が備えられている。上流側の塗布装置42は樹脂ワニス27を金属板22に対して間接に塗布するもので、下流側の塗布装置43は樹脂ワニス27を金属板22に対して直接に塗布するものである。
【0044】
プレス工程部分には、それぞれに引き出されて樹脂ワニス27も塗布された金属条46と離型フィルム47,48を重ねて接着するように圧力をかけて厚さを所定の値に調整するため、搬送路を挟むように上記の圧延ロール44が備えられている。
【0045】
半硬化処理工程部分には、圧延ロール44によって圧延されて所定の厚さになった金属条46と樹脂ワニス27と離型フィルム47,48の積層物に熱をかけて樹脂ワニス27を半硬化状態にするため、所定の温度で所定の時間加熱できるように所定長さのヒータ45が搬送路の上下に配設されている。
【0046】
そして、ヒータ45よりも下流側には、送りローラ49と、送りローラ49より下流側の巻き取りローラ50が配設されている。巻き取りローラ50は、半硬化状態に固められた樹脂ワニス27から離型フィルム47,48を剥ぎ取るものである。
【0047】
このような装置41で製造された半製品は長尺であるので、金属条46に形成された貫通穴パターンごとに裁断すれば、樹脂付きの金属コア板21が得られる。
【0048】
閉塞部24、または閉塞部24と被覆部25を形成する樹脂に熱可塑性樹脂を使用する場合には、図7に示したような装置51を用いる。
【0049】
この装置51は、貫通穴23を有する金属板22に対して溶融状態の熱可塑性樹脂28を塗布した(溶融樹脂塗布工程)のち、熱可塑性樹脂28に圧力をかけて厚さを調整(プレス工程)し、続いて、熱可塑性樹脂28を冷却固化させる(冷却固化工程)ものである。冷却固化によって、金属板22の貫通穴23には閉塞部24が保持され、場合によっては金属板22の表面に被覆部25が形成される(図4、図5参照)。このため、溶融状態の熱可塑性樹脂28を塗布するための手段としてのロール状に巻回された熱可塑性樹脂製の熱可塑性樹脂シート52および引き出されて供給された熱可塑性樹脂シート52を加熱して溶融状態にする加熱装置53と、厚さ調整のための圧延ロール54を上流側から順に有する。また、この場合も、金属板22には長いウェブ状のものが用いられ、所定の貫通穴パターンが長さ方向に複数形成された後に、ロール状に巻回された金属条55が使用される。
【0050】
溶融樹脂塗布工程部分には、金属条55の引き出し位置より上流側における搬送路の下側と、引き出し位置より下流側における搬送路の上側に、ロール状に巻回された離型フィルム56,57が配設されている。各離型フィルム56,57は、離型フィルム56の離型層が金属条55に対向するように配設される。また、金属条55と下流側の離型フィルム57との間に上記の熱可塑性樹脂シート52が備えられている。
【0051】
そして、下流側の離型フィルム57より下流側には、金属条55と離型シート56,57と熱可塑性樹脂シート52を重合するように配設された一組の送りロール58と、上記の加熱装置53が順に配設されている。加熱装置53は、ヒータ53aと上記の圧延ロール54を有する。ヒータ53aは、熱可塑性樹脂シート52を溶融状態にすべく加熱するもので、所望の加熱ができるように温度や搬送距離などが設定される。
【0052】
圧延ロール54は、溶融状態の熱可塑性樹脂28が塗布された状態になった金属条55と離型フィルム56,57を重ねて接着するように圧力をかけて厚さを所定の値に調整するためのもので、搬送路を挟むように備えられている。この圧延ロール54による圧延が、プレス工程である。
【0053】
冷却固化工程は、搬送による自然冷却で行ない、離型フィルム56,57間に存在する熱可塑性樹脂を冷却固化する。
【0054】
そして、搬送路における冷却工程部分より下流側には、送りローラ58と、送りローラ58より下流側の巻き取りローラ59が配設されている。巻き取りローラ59は、固化された熱硬化性樹脂から離型フィルム56,57を剥ぎ取るものである。
【0055】
このような装置51で製造された半製品は長尺であるので、金属条55に形成された貫通穴パターンごとに裁断すれば、樹脂付きの金属コア板21が得られる。
【0056】
このようにして得られた樹脂付きの金属コア板21を用いて、金属張積層板31を製造し、さらに、金属コアプリント配線板11を製造する。
【0057】
金属張積層板31は、図2(d)に示したように、樹脂付きの金属コア板21の両面にプリプレグ33を重ね、このプリプレグ33の上にさらに金属箔32を重ねて(積層工程)、これらを圧板で挟み周知の方法で加熱プレスして、積層一体化する(加熱プレス工程)と得られる(図2(e)参照)。
【0058】
このようにして得られた金属張積層板31の貫通穴23部分(図2(e)のA部分)は、加熱プレス工程において、プリプレグ33から貫通穴23内に流れ込む樹脂が基本的にないので、図3に示したような状態になる。すなわち、窪みやボイドの発生を回避できる。
【0059】
金属コアプリント配線板11は、上記のようにして得られた金属張積層板31に対して、図8、図9に示すような後工程を行うことで製造できる。
【0060】
後工程ではまず、図8(e)に示すような断面構造をなす金属張積層板31に対して、図8(f)に示すようにスルーホール35形成を行う。このスルーホール形成工程は、樹脂付き金属コア板21の貫通穴23のうちの必要な貫通穴23に対応する位置に、その貫通穴23よりも小径のスルーホール35を開ける工程である。
【0061】
つづいて、図8(g)に示すようにスルーホールめっき36を行なう。このスルーホールめっき工程では、上記のスルーホール35の内周面に導電性を付与するめっきを行う工程で、このスルーホールめっき36によって表裏の金属箔32が電気的に接続可能となる。図示はしないが、このあとスルーホール35付きの金属張積層板31の表面を研磨して、後のドライフィルム37との密着性を高める。
【0062】
つぎに、配線パターン14(図1、図9(m)参照)の形成のため、図8(h)に示したように、スルーホール35付きの金属張積層板31の表面にドライフィルム37を貼着する(ドライフィルム貼着工程)。図中37aは支持体、37bは感光層である。
【0063】
このあと、図8(i)に示すように露光(露光工程)と、図9(j)に示したように現像(現像工程)を行って、金属箔32における配線パターンとして残したい部分のみに光硬化したドライフィルム37の感光層37bを残す。
【0064】
つづいて、図8(k)に示したようにエッチングを行って金属箔32のうちの不要な部分を除去し(エッチング工程)、配線パターン14を形成する。最後に、苛性ソーダ水溶液などの強アルカリで洗浄して図8(l)に示したようにドライフィルム37の感光層37bを剥離・除去(ドライフィルム除去工程)し、ソルダレジスト15を施せば(ソルダレジスト工程)、図8(m)に示したような金属コアプリント配線板11が完成する。
【0065】
このようにして得られた金属コアプリント配線板11は、金属張積層板31が、図3に示したように、金属箔32の表面に窪みを持たず、また内部にボイドを有することもないので、これらによって引き起こされる剥離などの不良の発生をなくすことができ、良品を安く大量に生産することができる。
【0066】
具体的には、金属箔32の表面に窪みがないので、絶縁層13を形成するプリプレグ33の樹脂と金属箔32との密着性がよい。また、プリプレグ33を構成しているガラスクロス33aに変形はなかった。このため、剥離の発生を抑制できる。
【0067】
また、窪みがないのでドライフィルム37の貼着に際して密着不良が起こらず、露光に際してもピントずれが起こることはない。このため、エッチングは、エッチングしたい部分のみに正確に所望の配線パターン14を形成できる。
【0068】
ボイドは熱の作用により膨張収縮するが、このようなボイドがないので、従来のようにクラックが入るようなこともない。
【0069】
また、ボイドがないので、従来のようにスルーホールとコアの間の絶縁不良が生じることもない。
【0070】
これらに加えて、金属コア板21の貫通穴23は閉塞部24で閉塞されているので、薄いプリプレグ33を用いても、プリプレグ33のガラスクロス33aのクロス目が表面に浮き出るようなことがなく、微細な配線パターン14の形成も正確に行える。
【0071】
また、絶縁層13が必要以上に薄くなることを防止できるうえに、樹脂とガラスクロス3aの密着性が良好であるので、マイグレーションの発生を抑制し、短絡を起こらないようにすることができる。
【0072】
さらに、圧延ロール44,54で圧延して厚さを調整するので、所望の正確な厚さの金属張積層板31や金属コアプリント配線板11を得られる。
【0073】
なお、基材となる金属板22に設けられた貫通穴23の中に、樹脂からなる閉塞部24を保持して貫通穴23を優先的に塞ぐという構成によれば、樹脂付きの金属コア板21を得ないで、直接金属張積層板31を製造することもできる。
【0074】
以下、別の形態を説明する。
【0075】
図10は、そのようにして製造した金属張積層板31の断面図である。すなわち、基材となる金属板22の貫通穴23内に樹脂からなる閉塞部24を有するとともに、この閉塞部24と一体の被覆部25を金属板22の両側面に有し、被覆部25の両側面に金属箔32を有する構造である。図中13が絶縁層で、閉塞部24と被覆部25が絶縁の機能を果たす。
【0076】
このような金属張積層板31は、図11に示したような装置61で製造できる。
【0077】
すなわち、前述した図6の装置41における離型フィルム47,48に代えて、ロール状に巻回された長尺の金属箔62(32),63(32)を有するものである。また、樹脂には電気絶縁性のフィラーの入った樹脂ワニス27が使用される。
【0078】
具体的には、貫通穴23を有する金属板22に対して熱によって硬化する液状の樹脂ワニス27を塗布(樹脂ワニス塗布工程)したのち、樹脂ワニス27に圧力をかけて厚さを調整(プレス工程)し、続いて、樹脂ワニス27に硬化処理をして半硬化状態にし、金属板22の貫通穴23内に樹脂ワニス27からなる閉塞部24を保持させるとともに、金属板22の両面に被覆部25も形成する(半硬化処理工程)ものである。このため、樹脂ワニス27の塗布のための塗布装置64,65と、厚さ調整のための圧延ロール66と、硬化のためのヒータ67を上流側から順に有する。また、金属板22には長いウェブ状のものが用いられ、所定の貫通穴パターンが長さ方向に複数形成された後に、ロール状に巻回された金属条68が使用される。
【0079】
樹脂ワニス塗布工程部分には、金属条68の引き出し位置より上流側における搬送路の下側と、引き出し位置より下流側における搬送路の上側に、ロール状に巻回された上記の金属箔62,63が配設されている。金属箔62,63としては電解銅箔を使用するとよい。この場合、各金属箔62,63は、電析した側である凹凸を有するマット面が金属条68に対向するように配設される。そして、上流側の金属箔62と金属条68の間には、引き出された金属箔62の上に樹脂ワニス27を塗布する、カーテンコータからなる上流側の塗布装置64が備えられる。また、金属条68と下流側の金属箔63との間には、引き出された金属条68の上面に樹脂ワニス27を塗布する、カーテンコータからなる下流側の塗布装置65が備えられている。上流側の塗布装置64は樹脂ワニス27を金属板22に対して間接に塗布するもので、下流側の塗布装置65は樹脂ワニス27を金属板22に対して直接に塗布するものである。
【0080】
プレス工程部分には、それぞれに引き出されて樹脂ワニス27も塗布された金属条68と金属箔62,63を重ねて接着するように圧力をかけて厚さを所定の値に調整するため、搬送路を挟むように上記の圧延ロール66が備えられている。
【0081】
半硬化処理工程部分には、圧延ロール66によって圧延されて所定の厚さになった金属条68と樹脂ワニス27と金属箔62,63に熱をかけて樹脂ワニス27を半硬化状態にするため、所定の温度で所定の時間加熱できるように所定長さのヒータ67が搬送路の上下に配設されている。ヒータ67よりも下流側には、送りローラ69が備えられる。
【0082】
このような装置61で製造された半製品は長尺であるので、金属条68に形成された貫通穴パターンごとに裁断すれば、金属張積層板31が得られる。
【0083】
このようにして得られた金属張積層板31を用いて、金属コアプリント配線板11を製造するには、上述した図8、図9に示したような工程を経て行う。これらの工程については、繰り返しになるので説明を省略する。
【実施例1】
【0084】
金属板として銅板を用い、上述の図6に示した装置41を利用して樹脂付きの金属コア板を得た。
【0085】
銅板には厚さ0.4mmで、幅325mmの長尺のものを用い、一定の貫通穴パターンを長さ方向に繰り返し形成して貫通穴が開いた状態にし、ロール状に巻回した。
【0086】
また、熱硬化性樹脂として、エポキシ系の樹脂ワニス27を用意した。
【0087】
離型フィルム47,48には、耐熱性を有するものを使用した。
【0088】
これらを用いて半製品を得た。半硬化処理工程は140℃で3分間行った。
【0089】
得られた半製品を貫通穴パターンに対応した530mmごとの所定長さで切断し、樹脂付きの金属コア板を得た。
【0090】
そして、このようにして得られた樹脂付きの金属コア板をプリプレグ及び銅箔と積層一体化して、金属張積層板を得た。この金属張積層板を目視により確認したところ、銅箔の表面に窪みはほとんどみられなかった。比較例として、従来の製法で製造した金属張積層板における目視できる窪みの深さ(窪みの中心付近)を計測したところ、8〜10μmであった。これに対して、本願発明の製法により製造した上記の金属張積層板について貫通穴に対応する部分の凹みらしい箇所を計測してみたところ、5μmに満たなかった。このため、窪みの深さが5μmかそれよりも小さければ目視できるような窪みとはならず、ドライフィルムの密着不良や露光時のピントずれも起こらないと考えられるので、窪みの深さは5μmであるのが好ましい。
【0091】
また、表面の銅箔を剥がして貫通穴の部分に光を透過してボイドの有無を観察したが、ボイドは見つからなかった。
【0092】
このような金属張積層板を用いて金属コアプリント配線板を得て、ハンダ耐熱試験(260℃−30秒)を実施したが、銅箔の剥離は生じなかった。
【実施例2】
【0093】
電気絶縁性フィラー入りの樹脂ワニスを用い、実施例1と同様の方法で樹脂付き金属コア板を得た。
【0094】
樹脂ワニスは、実施例1と同じ樹脂ワニスに、平均直径6μm、平均繊維長100μmのEガラスの短繊維をフィラーとして樹脂固形分100重量部に対し30体積%となるように配合し、フィラーが均一に分散するまで撹拌して調製した。
【0095】
この電気絶縁性フィラー入りの樹脂ワニスを用いて、実施例1と同一の方法で、樹脂付きの金属コア板を製造した。
【0096】
そして、この樹脂付きの金属コア板を用いて金属張積層板を製造したところ、この場合も、表面の銅箔に窪みはほとんどなく、貫通穴の内部にボイドは見つからなかった。
【0097】
また、この金属張積層板を用いて金属コアプリント配線板を製造し、実施例1の場合と同様にハンダ耐熱試験を行ったところ、銅箔の剥離は生じなかった。
【0098】
加えて、金属板の貫通穴に保持されている閉塞部はフィラーを含有しているので、閉塞部の剛性が高い。このためドリルでスルーホールを開けたときのクラックの発生を回避できた。この結果、無電解のスルーホールめっきを施すときに、クラックにめっき液が浸み込むことがなくなり、金属コア板とスルーホールの短絡を防ぐことができるようになる。
【実施例3】
【0099】
図10に示したような金属張積層板を、図11に示す装置で製造した。
【0100】
図11に示す装置61を用い、実施例2の樹脂と同じEガラスの短繊維フィラーの入った樹脂ワニスを用いて、2個のカーテンコータから通常より厚い0.3mm厚に塗布し、所定の厚さに調整してから半硬化状態にした。金属板には実施例1の場合と同様に0.4mm厚の銅板を用いた。得られた半製品を所定長さに裁断した後、加熱プレスをして、半硬化状態の樹脂ワニスを硬化させて、金属張積層板を作製した。
そして、この金属張積層板を用いて、金属コアプリント配線板を製造した。
【0101】
樹脂ワニスにはフィラーが入っているので強度を得られ、ガラスクロスに樹脂を含浸させたプリプレグを用いた金属張積層板と変わらぬ強度を有することが確認できた。
【0102】
また、ガラスクロスに樹脂を含浸させたプリプレグを用いた場合には、表面の銅箔にガラスクロスのクロス目が浮き出てしまうことがあったが、このような凹凸はできず、表面は平滑であった。このため、微細な配線パターンの形成がしやすく、また、銅イオンのマイグレーションによる短絡を防ぐことができるものと考えられる。
【0103】
以上はこの発明を実施するための一形態であり、この発明は上記の構成のみに限定されるものではなく、その他の形態を採用することもできる。
【0104】
たとえば、貫通穴に対する樹脂の充填は、貫通穴に樹脂を滴下するように行うこともできる。
【0105】
また、閉塞部や被覆部に用いる樹脂ワニスには、熱によって硬化するタイプ以外のものを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】金属コアプリント配線板の一部の拡大断面図。
【図2】金属張積層板の製造工程を示す断面図。
【図3】図2のA部分の拡大図。
【図4】金属コア板の断面図。
【図5】金属コア板の断面図。
【図6】金属コア板を製造する装置の概略構成図。
【図7】金属コア板を製造する装置の概略構成図。
【図8】金属コアプリント配線板の製造工程を示す断面図。
【図9】金属コアプリント配線板の製造工程を示す断面図。
【図10】金属張積層板の断面図。
【図11】図10の金属張積層板を製造する装置の概略構成図。
【図12】従来の金属コアプリント配線板の製造工程を示す断面図。
【図13】従来技術の問題点を示す断面図と平面図。
【図14】従来技術の作用状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0107】
11…金属コアプリント配線板
12…コア
13…絶縁層
14…配線パターン
21…金属コア板
22…金属板
23…貫通穴
24…閉塞部
25…被覆部
26…電気絶縁性フィラー
27…樹脂ワニス
28…溶融状態の熱可塑性樹脂
31…金属張積層板
32…金属箔
33…プリプレグ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板であって、
基材となる金属板に設けられた貫通穴の中に、樹脂からなる閉塞部が保持された
金属コア板。
【請求項2】
前記樹脂が、電気絶縁性フィラーを含有するものである
請求項1に記載の金属コア板。
【請求項3】
金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板の製造方法であって、
金属板に形成された貫通穴に、熱硬化性樹脂からなる液状の樹脂ワニスを充填したのちに硬化処理をして半硬化状態にし、上記樹脂ワニスからなる閉塞部を貫通穴内に保持させる
金属コア板の製造方法。
【請求項4】
金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板の製造方法であって、
貫通穴を有する金属板に対して、熱硬化性樹脂からなる液状の樹脂ワニスを塗布する樹脂ワニス塗布工程と、
該樹脂ワニス塗布工程で塗布された樹脂ワニスに圧力をかけて厚さを調整するプレス工程と、
該プレス工程を経た樹脂ワニスに硬化処理をして半硬化状態にし、金属板の貫通穴内に上記樹脂ワニスからなる閉塞部を保持させる半硬化処理工程を有する
金属コア板の製造方法。
【請求項5】
金属コアプリント配線板のコアに用いられる金属コア板の製造方法であって、
金属板に形成された貫通穴に溶融状態の熱可塑性樹脂を充填したのちに冷却固化し、上記熱可塑性樹脂からなる閉塞部を貫通穴内に保持させる
金属コア板の製造方法。
【請求項6】
前記請求項1または請求項2に記載の金属コア板の両面に、絶縁層と金属箔が形成された
金属張積層板。
【請求項7】
金属コアプリント配線板の製造に用いられる金属張積層板の製造方法であって、
前記請求項3から請求項5のうちのいずれか一項に記載の金属コア板の製造方法で金属コア板を製造した後、
該金属コア板の両面に、プリプレグと金属箔を積層する積層工程と、
該積層工程で積層された金属コア板とプリプレグと金属箔を加熱プレスして一体化する加熱プレス工程を有する
金属張積層板の製造方法。
【請求項8】
金属コアプリント配線板の製造に用いられる金属張積層板の製造方法であって、
貫通穴を有する金属板または該金属板に絶縁層を介して重合される金属箔に、電気絶縁性フィラー入りの液状の樹脂ワニスを塗布する樹脂ワニス塗布工程と、
該樹脂ワニス塗布工程で塗布された樹脂ワニスに圧力をかけて厚さを調整するプレス工程と、
該プレス工程を経た樹脂ワニスに硬化処理をして半硬化状態にし、金属板の貫通穴内に上記樹脂ワニスからなる閉塞部を、金属板の両面に上記樹脂ワニスからなる被覆部を保持させる半硬化処理工程と、
該半硬化処理工程で半硬化状態になった閉塞部と被覆部を加熱して硬化するとともに金属板および金属箔と一体化する加熱プレス工程を有する
金属張積層板の製造方法。
【請求項9】
前記請求項7または請求項8に記載の金属張積層板の製造方法で金属張積層板を製造した後に、
エッチングにより前記金属箔からなる配線パターンを形成することを特徴とする
金属コアプリント配線板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−200299(P2009−200299A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41318(P2008−41318)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】