説明

鉄筋かごの浮き上がり検知装置、鉄筋かごの浮き上がり検知方法、地中コンクリート構造物の構築方法

【課題】地中コンクリート構造物を構築する方法における鉄筋かごが配置された孔内にコンクリートを打設する際に、鉄筋かごの浮き上がりを検知することができる簡易な構成の装置を提供する。
【解決手段】検知装置は、先端が鉄筋かごを構成する鉄筋22Aの先端に取り付けられたワイヤ140と、ぜんまいばね121により巻枠122に回転力を加え、ワイヤ140に上向きに引張力を加える巻取機構120と、鉄筋かごに浮き上がりが生じると、ワイヤ140が巻枠122が回転し、マグネット136がリードスイッチ131に近接することで、電池135からブザー133及びLEDランプ134への電力の供給を許可する警報機構130と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、場所打ちコンクリート杭や地中壁などの地中コンクリート構造物を構築する際に、コンクリートを打設する工程において、鉄筋かごの浮き上がりを検知するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、地盤を削孔することで形成された孔内に鉄筋かごを配置し、孔内にトレミー管を挿入し、トレミー管を通してコンクリートを打設することによりコンクリート杭や地中壁を構築する方法が用いられている。この方法では、コンクリートを打設した際に、鉄筋かごが打設したコンクリートから上方に向かって浮力を受けて、鉄筋かごに浮き上がりを生じてしまうことがある。特に、鉄筋かごの全長が短い場合には、鉄筋かご全体の自重が小さいため、浮き上がりを生じやすい。
【0003】
鉄筋かごが浮き上がりを生じてしまうと、コンクリート杭や地中壁の下端部に鉄筋が埋設されていないこととなり、コンクリート杭や地中壁に設計通りの耐力を期待できなくなる。このため、例えば、特許文献1には、コンクリートを打設する工程にいて、鉄筋かごの支持荷重を測定し、測定した結果に基づいて、鉄筋かごの浮き上がりを判断する方法が記載されている。
【特許文献1】特開平8―20943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記の方法では、鉄筋かごの支持荷重を測定するため、地上において鉄筋かごの重量を支持しなければならず、装置が大掛かりになり、コスト高になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の問題に鑑みなされたものであり、その目的は、地中コンクリート構造物を構築する方法における鉄筋かごが配置された孔内にコンクリートを打設した際に、鉄筋かごの浮き上がりを検知することができる簡易な構成の装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の鉄筋かごの浮き上がり検知装置は、地盤に形成された孔内に鉄筋かごを設置して、前記孔内にコンクリートを打設した際に前記鉄筋かごの浮き上がりを検知する装置であって、下端が前記鉄筋かごに取り付けられた索条体と、前記索条体に上向きの引張力を加える引張機構と、前記索条体が前記引張機構により引き上げられることを検知する検知機構と、を備えることを特徴とする。
上記の検知装置において、前記検知機構が、前記索条体が引き上げられたことを検知すると、警報を発する警報装置を備えてもよい。
【0007】
また、本発明の鉄筋かごの浮き上がり検知方法は、地盤に形成された孔内に鉄筋かごを設置して、前記孔内にコンクリートを打設した際に前記鉄筋かごの浮き上がりを検知する方法であって、前記鉄筋かごに取り付けられた索条体の下端を取付け、前記索条体に上向きの引張力を加え、前記索条体が引き上げられることを検知することを特徴とする。
【0008】
また、本発明の地中コンクリート構造物の構築方法は、地盤に形成された孔内に鉄筋かごを配置する鉄筋かご配置ステップと、前記孔内にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを含んでなる地中コンクリート構造物を構築する方法であって、前記コンクリート打設ステップでは、下端が前記鉄筋かごに取り付けられた索条体と、前記索条体に上向きの引張力を加える引張機構と、前記索条体が前記引張機構により引き上げられることを検知する検知機構と、を備えた検知装置を設置しておき、前記索条体が前記引張機構により引き上げられたことを前記検知機構が検知した場合には、前記コンクリートの打設速度を低下させること、前記トレミー管の下端高さを上昇させること、又は、所定の時間、コンクリートの打設を中止すること、のうち少なくとも何れかを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、鉄筋かごを支持する必要がないため、鉄筋かごに一端が取り付けられた索条体と、索条体に張力を加える機構と、索条態が引き上げられたことを検知する機構と、からなる簡単な構成で鉄筋かごの浮き上がりを検知することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の浮き上がり検知装置の位置実施形態を図面を参照しながら、詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、場所打ちコンクリート杭を構築する場合を例として説明する。
図1は、地下階を有する建物10の下部に接続された場所打ちコンクリート杭20を示す図である。同図に示すように、場所打ちコンクリート杭20は、円柱状のコンクリート部材21と、コンクリート部材21内に埋設された鉄筋かご22とにより構成される。鉄筋かご22の上端は、場所打ちコンクリート杭20を構成するコンクリート部材21の上端から突出し、建物10の下部を構成するコンクリート11内まで到達しており、これにより、場所打ちコンクリート杭20と建物10の下部とが接続されている。
【0011】
図2は、場所打ちコンクリート杭を構築する方法を説明するための図である。
場所打ちコンクリート杭を構築するには、まず、同図(A)に示すように、地上より掘削装置90により、所定の深さまで先行掘削を行い、先行掘削により形成された掘削孔91の外周に沿うようにケーシング30を挿入する。
次に、図2(B)に示すように、掘削装置90により、杭の下端深さに到達するまで、地盤を掘削するとともに、地盤を掘削して形成した掘削孔91内に安定液92を注入する。
【0012】
次に、図2(C)に示すように、掘削孔91内に鉄筋かご22を建て込む。なお、本実施形態では、建物が地下部を備えるため、鉄筋かご22の上端が地下部の上端高さとなるように全長の短い鉄筋かご22が用いられている。
次に、図2(D)に示すように、先端が掘削孔91の下端に到達するようにトレミー管93を挿入し、このトレミー管93を通して掘削孔91内にコンクリート21を打設する。
次に、図2(E)に示すように、所定の高さまでコンクリート21を打設した後、トレミー管93を撤去し、コンクリート21が硬化するまで養生する。
【0013】
次に、図2(F)に示すように、建物の下端の高さまで地盤を掘削するとともに、コンクリート部材21の上部をはつり、鉄筋かご22の上端を露出させる。
次に、図2(G)に示すように、鉄筋かご22の上端が、コンクリート11内に埋設されるように建物10の下部を構築する。
以上の工程により場所打ちコンクリート杭20を建物の下部と一体に構築することができる。
【0014】
ここで、従来技術の欄に記載したように、図2(D)を参照して説明した掘削孔91内にコンクリート21を打設する工程において、コンクリート21の打設圧により鉄筋かご22が浮力を受け、鉄筋かご21に浮き上がりが生じることがある。
【0015】
これに対して、本実施形態では、以下に説明する鉄筋かご22の浮き上がりを検知する検知装置100を用いることにより、コンクリート21を打設する際の鉄筋かご22の浮き上がりを防止することとした。
【0016】
図3は、本実施形態の鉄筋かご22の浮き上がりを検知する検知装置100の構成を示す図であり、図4は、検知装置100を構成する装置本体110の構成を示す図である。図3に示すように、検知装置100は、ケーシング30の内側の上端部に取り付けられた装置本体110と、装置本体110から下方に延びるワイヤ140と、により構成される。
【0017】
図4に示すように、装置本体110は、ワイヤ140に引張力を加えるワイヤ引張機構120と、ワイヤ140が引き上げられたことを検知し、警報を発する警報機構130とを備えてなる。
【0018】
ワイヤ引張機構120は、ワイヤ140が巻きつけられた巻枠122と、巻枠122に回転力を付与するぜんまいばね121とにより構成される。
ワイヤ140の先端は、掘削孔91内に配置された鉄筋かご22を構成する鉄筋22Aの上端部に接続されている。なお、ワイヤ140の先端を鉄筋かご22に取り付ける作業は、図2(C)を参照して説明した鉄筋かご22を掘削孔91内に建て込む工程において行えばよい。
ぜんまいばね121は、常時、巻枠122にワイヤ140を巻き取る方向の回転力を加えており、これにより、ワイヤ140には上方に向かって引張力が作用することとなる。
【0019】
また、警報機構130は、電池135と、電池135に並列に接続されたLEDランプ134及びブザー133と、電池135からの電力の供給が遮断された状態と、許可された状態とを切り替えるリードスイッチ131と、巻枠122に取り付けられたマグネット136とを備えてなる。
【0020】
リードスイッチ131は、常時は、電池135からLEDランプ134及びブザー133への電力の供給を遮断した状態となっており、マグネット136が近接すると、電力の供給を許可した状態へと切り替わる。
LEDランプ134は、電力が供給されると点灯する。また、ブザー133は電力が供給されると、浮き上がりが生じた旨の警報を発する。
【0021】
図2(D)を参照して説明した、掘削孔91内にコンクリート21を打設する工程において、鉄筋かご22に浮き上がりが生じると、巻枠122がぜんまいばね121により回転され、ワイヤ140を巻取方向に回転することとなる。このように、巻枠122が回転すると、リードスイッチ131とマグネット136とが近接するため、リードスイッチ131は、電池135からLEDランプ134及びブザー133への電力の供給を許可する。このように、リードスイッチ131とマグネット136が近接することにより、ワイヤ140が巻き取られたことを検知すると、LEDランプ134が点灯するとともに、ブザー133により浮き上がりが生じた旨の警報が発せられる。これにより、作業員は、鉄筋かご22に浮き上がりが生じたことを知ることができる。
【0022】
このように、鉄筋かご22に浮き上がりが生じた場合には、コンクリート21を打設する作業を一時中断する。そして、以下に説明する何れか一つの方法又はこれらの方法を組み合わせることにより鉄筋かご22浮き上がりを防止する。
(1) トレミー管の先端の高さを上昇させる。
これにより、コンクリート21の打設位置が高くなり、掘削孔91内に打設された後、上方に向かって移動するコンクリート21の量が減少するため、鉄筋かご22に作用する浮力が小さくなり、鉄筋かご22の浮き上がりを防止できる。
(2) コンクリート21の打設速度を下げる。
これにより、鉄筋かご22に作用する浮力が小さくなり、鉄筋かご22の浮き上がりを防止できる。
(3) 所定の時間、コンクリート21の打設を中止し、この時間の経過後、コンクリート21の打設を再開する。
【0023】
これにより、打設したコンクリート21が硬化するため、鉄筋かご22に作用する浮力に対する抵抗力が大きくなる。これにより、鉄筋かご22に作用する浮力が小さくなり、鉄筋かご22の浮き上がりを防止できる。
【0024】
これらの方法により、鉄筋かご22の浮き上がりを防止しながらコンクリート21を打設することにより、鉄筋かご22が所定の位置に埋設された場所打ちコンクリート杭20を構築することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態によれば、鉄筋かご22に浮き上がりが生じると、ぜんまいばね121により回転力が加えられた巻枠122が回転し、鉄筋かご22に先端が取り付けられたワイヤ140を巻き取る。これにより、巻枠122に取り付けられたマグネット136がリードスイッチ131に近接し、リードスイッチ131がLEDランプ134及びブザー133への電力の供給を許可し、LEDランプ134が点灯し、また、ブザー133が警報を発するため、作業員が鉄筋かご22の浮き上がりを知ることができる。特に、本実施形態では、上記のように建物が地下部を備えており、鉄筋かご22の上端が地下部の上端高さとなり、鉄筋かご22の全長が短いので、鉄筋かご22の浮き上がりが生じやすいため、有効である。
【0026】
また、本実施形態の浮き上がり検知装置100は、鉄筋かご22に取り付けられたワイヤ140と、ワイヤ140に引張力を加えるワイヤ引張機構120と、ワイヤ引張機構120によりワイヤ140が巻き取られたことを検知して警報を発する警報機構130とにより構成され、簡単な構成であるため、低コストで鉄筋かご22の浮き上がりを検知することができる。
【0027】
なお、本実施形態では、装置本体110のワイヤ引張機構120が、ぜんまいばね121と、ぜんまいばね121による回転力が作用する巻枠122とにより構成される場合について説明したが、ワイヤ引張機構120の構成はこれに限らない。図5は、ワイヤ引張機構を別の構成とした場合の装置本体210の構成を示す図である。同図に示すように、ワイヤ引張機構220は、ワイヤ140が巻きつけられた巻枠221と、軸方向中央を中心に回動可能なてこ部材222とにより構成される。てこ部材222の一端には、ワイヤ固定部224が設けられており、このワイヤ固定部224はワイヤ140を固定することができる。また、てこ部材222の他端側には、下向きのばね力をてこ部材222に作用させるばね部材223が接続されており、さらに、当該他端側の先端にはマグネット136が取り付けられている。なお、警報機構130の構成は上記の実施形態と同様である。
【0028】
かかる装置本体210を用いる場合には、図2(C)の鉄筋かご22を掘削孔91内に建て込む工程を行う際に、鉄筋かご22の上端にワイヤ140の先端を接続しておく。そして、装置本体210をケーシング30内部の上端に取り付け、巻枠221を回転させてワイヤ140を巻き取り、ワイヤ140のたるみを取り除く。そして、ばね部材223が復元力を発現するように、てこ部材222をばね部材223が伸長する方向に回動させ、この状態でワイヤ固定部224によりワイヤ140をてこ部材222の一端に固定する。これにより、てこ部材222には、ばね部材223の復元力によりマグネット136が取り付けられた側が下方に向かうような回転力が作用し、てこ部材222の一端側に接続されたワイヤ140には上方に向かう引張力が作用することとなる。
【0029】
したがって、鉄筋かごに22浮き上がりが生じると、ワイヤ140に作用する引張力が無くなり、てこ部材222がばね部材223の復元力により回転する。これにより、マグネット136がリードスイッチ131に近接し、リードスイッチ131がブザー133及びLEDランプ134への電力の供給を許可する。このようにして、リードスイッチ131とマグネット136が近接することにより、ワイヤ140が巻き取られたことを検知すると、ため、ブザー133により警報が発生られるとともに、LEDランプ134が点灯することとなる。
さらに、ワイヤ引張機構の構成は、図4や図5を参照して説明した構成に限定されず、要するに、ワイヤ140に引張力を加えることができる構成であればよい。
【0030】
また、上記実施形態では、リードスイッチ131とマグネット136が近接することにより、ワイヤ140が巻き取られたことを検知することとしたが、これに限らず、例えば、ワイヤ140に目印を取り付けておき、この目印の位置をエンコーダで読み取ることにより、ワイヤ140が巻き取られたことを検知することとしてもよい。
また、本実施形態では、ブザー133及びLEDランプ134により警報を発することとしたが、警報を発する方法はこれに問わない。
【0031】
また、本実施形態では、場所打ちコンクリート杭を構築する場合に本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、鉄筋かごが埋設された地中連続壁を構築する場合であっても本発明を適用することができ、要するに、鉄筋がごが埋設される地中コンクリート構造物であれば、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】地下階を有する建物の下部に接続された場所打ちコンクリート杭を示す図である。
【図2】場所打ちコンクリート杭を構築する方法を説明するための図である。
【図3】本実施形態の鉄筋かごの浮き上がりを検知する検知装置の構成を示す図である。
【図4】検知装置を構成する装置本体の構成を示す図である。
【図5】ワイヤ引張機構を別の構成とした場合の装置本体の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
10 建物 11 コンクリート
20 場所打ちコンクリート杭 21 コンクリート部材
22 鉄筋かご 22A 鉄筋
30 ケーシング 90 掘削装置
91 掘削孔 92 安定液
93 トレミー管
100 検知装置 110、210 装置本体
120、220 引張機構 121 ぜんまいばね
122、221 巻枠 130 警報機構
131 リードスイッチ 133 ブザー
134 LEDランプ 136 マグネット
140 ワイヤ
222 てこ部材 223 ばね部材
224 ワイヤ固定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に形成された孔内に鉄筋かごを設置して、前記孔内にコンクリートを打設した際に前記鉄筋かごの浮き上がりを検知する装置であって、
下端が前記鉄筋かごに取り付けられた索条体と、
前記索条体に上向きの引張力を加える引張機構と、
前記索条体が前記引張機構により引き上げられることを検知する検知機構と、を備えることを特徴とする鉄筋かごの浮き上がり検知装置。
【請求項2】
請求項1記載の鉄筋かごの浮き上がり検知装置であって、
前記検知機構が、前記索条体が引き上げられたことを検知すると、警報を発する警報装置を備えることを特徴とする鉄筋かごの浮き上がり検知装置。
【請求項3】
地盤に形成された孔内に鉄筋かごを設置して、前記孔内にコンクリートを打設した際に前記鉄筋かごの浮き上がりを検知する方法であって、
前記鉄筋かごに取り付けられた索条体の下端を取付け、
前記索条体に上向きの引張力を加え、
前記索条体が引き上げられることを検知することを特徴とする鉄筋かごの浮き上がり検知方法。
【請求項4】
地盤に形成された孔内に鉄筋かごを配置する鉄筋かご配置ステップと、前記孔内にコンクリートを打設するコンクリート打設ステップとを含んでなる地中コンクリート構造物を構築する方法であって、
前記コンクリート打設ステップでは、
下端が前記鉄筋かごに取り付けられた索条体と、前記索条体に上向きの引張力を加える引張機構と、前記索条体が前記引張機構により引き上げられることを検知する検知機構と、を備えた検知装置を設置しておき、
前記索条体が前記引張機構により引き上げられたことを前記検知機構が検知した場合には、前記コンクリートの打設速度を低下させること、前記トレミー管の下端高さを上昇させること、又は、所定の時間、コンクリートの打設を中止すること、のうち少なくとも何れかを行うことを特徴とする地中コンクリート構造物の構築方法。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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