説明

鏡餅容器

【課題】容器から餅を取り出す際における指の滑りを抑制して、円滑なる餅の取り出しを実現することのできる鏡餅容器を提供する。
【解決手段】鏡餅容器1は、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に上鍔部12が延設されている上餅容器10と、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に下鍔部22が延設されている下餅容器20とを備え、下餅容器20の上に上餅容器10を係合させることにより、上餅と下餅とを重ねた鏡餅を模した形状をなしている。上鍔部12の下面及び下鍔部22の下面には、各下面に対する指の滑りを抑制する滑り防止手段が設けられている。上鍔部12は、その下面に滑り防止手段としての上溝16が凹設されるとともに、上面が滑面状に形成されている。下鍔部22は、その下面に滑り防止手段としての下溝26が凹設されるとともに、上面に下溝26の形成位置に対応した膨出部27が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鏡餅を模した形状の鏡餅容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鏡餅の容器としては、大型の下餅に小型の上餅を重ねた形状に模したものが知られている。この種の容器には、底部等に設けられた開口を介して軟化状態の餅や真空パック詰めの切り餅が充填されているとともに、その開口がフィルム等で封止されている(たとえば、特許文献1参照。)。特許文献1に開示される鏡餅容器は、側方に向かって湾曲した湾曲部分の肉厚を調節することにより、容器を包丁等で分断することなく、容器内に充填された餅の取り出しを実現するものである。具体的には、上記湾曲部分の肉厚について、外周面が丸みを帯びるように外方へ膨出するようにしつつ、内周面の内径が開口に向かって広がるように或いは同内径が一定となるように設定されている。これにより、容器の鏡餅風の外観を損なうことなく、また、容器内に充填された餅の取り出しを容易にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−8059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような鏡餅容器に充填された餅は、容器底部の開口周縁に形成される鍔部に人差指や中指等の指先を掛けつつ、親指により容器の頂面を底部方向へ押圧することで、容器の開口から押し出される。このとき、餅は容器内面に密着していることから相当の押圧力をもって押し出す必要があり、特許文献1の鏡餅容器では、その押圧力によって容器を変形させなければならない。また、容器底部に形成される鍔部の幅が小さければ小さいほど指先は引っ掛かりにくく、これらの場合では、容器の鍔部から指先が滑りやすく、容器からの餅の取り出し作業が不便であるといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、請求項1の鏡餅容器は、鏡餅を模した形状に成形され、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に鍔部が延設されている鏡餅容器において、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に上鍔部が延設されている上餅容器と、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に下鍔部が延設されている下餅容器とを備え、前記下餅容器の上に前記上餅容器を係合させることにより、上餅と下餅とを重ねた鏡餅を模した形状をなし、前記上鍔部の下面及び前記下鍔部の下面には、各下面に対する指の滑りを抑制する滑り防止手段が設けられ、前記上鍔部は、その下面に前記滑り防止手段としての上溝が凹設されるとともに、上面が滑面状に形成され、前記下鍔部は、その下面に前記滑り防止手段としての下溝が凹設されるとともに、上面に前記下溝の形成位置に対応した膨出部が形成されている。
【0006】
上記構成によれば、鍔部に滑り防止手段が設けられていることにより、鍔部の下面に対する指の滑りが抑制される。これにより、鏡餅容器から餅を取り出す際に生じる鍔部における指の滑りが抑制されて、円滑なる餅の取り出しが可能となる。
【0007】
さらに、上鍔部の下面に滑り防止手段としての上溝を凹設したとしても、鏡餅容器の鏡餅風の外観を損ねることはない。また、滑り防止手段としての下溝を設けたことによる下鍔部の強度低下が抑制される。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、容器から餅を取り出す際における指の滑りを抑制して、円滑なる餅の取り出しを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態の鏡餅容器の分解状態を示す斜視図。
【図2】本実施形態の鏡餅容器を組み合わせた状態を示す半断面図。
【図3】(a)、(b)は、本実施形態の上段側係合部と下段側係合部との係合状態を示す断面図。
【図4】本実施形態の鏡餅容器の底面を示す斜視図。
【図5】本実施形態の滑り防止手段を示す断面図。
【図6】本実施形態の鏡餅容器から餅を取り出す状態を示す断面図。
【図7】(a)、(b)、(c)は、別例の鏡餅容器の頂部を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した鏡餅容器1を図1〜図6に基づいて説明する。図1は、鏡餅容器1を分解した状態を示している。図1に示すように、鏡餅容器1は、プラスチック等の樹脂材により成形される上餅容器10と下餅容器20とから構成されている。上餅容器10は、扁平な餅形状を成すとともに底部を開口する上容器本体11と、上容器本体11の下端縁から水平方向に向かって延出する円環状の上鍔部12と、上容器本体11の頂部に突設される略円柱状の橙取付部13とから形成されている。また、図2に示すように、上容器本体11の内側面には、中央から放射状に延びるリブ14が複数設けられている。
【0011】
図1に示すように、上鍔部12の外周面12aの下側には、4つの上段側係合部15が等間隔に水平方向に突設されている。この上段側係合部15は、上面視略半円状に形成され、その上側面15aは、平らに形成されているとともに、下側面15bは、その基端から先端に向かって上方に湾曲した円弧状に形成されている(図3参照)。
【0012】
また、図2及び図3に示すように、上鍔部12には、滑り防止手段としての円環状の上溝16が上容器本体11の開口を囲むように同開口の周縁について全周に設けられている。図3に示すように、この上溝16は、上鍔部12の下面に凹設されているとともに、その断面が略半円状に形成されている。また、上鍔部12の上面は、凹凸のない滑面状に形成されている。なお、上容器本体11、上鍔部12、橙取付部13、リブ14、及び上段側係合部15は一体に成形されている。
【0013】
次に、下餅容器20について説明する。図1に示すように、下餅容器20は、扁平な餅形状を成すとともに底部を開口する下容器本体21と、下容器本体21の下端縁から水平方向に向かって延出する四角枠状の下鍔部22とから形成されている。なお、下容器本体21は、上容器本体11よりも大きく形成されている。また、図2に示すように、下容器本体21の内側天井面には、断面半円状のリブ24が複数平行に設けられている。
【0014】
図1及び図2に示すように、下容器本体21の上面には、上餅容器10を載置するための載置部23が凹設されている。この載置部23は、上餅容器10の底部を収容するための、略円柱状の空間が生じるように、下容器本体21の上面から凹むように形成されている。この載置部23の側面23aには、その上下方向(高さ方向)の下端に溝状の下段側係合部25が全周にわたって形成されている。
【0015】
また、図4に示すように、下鍔部22には、滑り防止手段としての円環状の下溝26が下容器本体21の開口を囲むように同開口の周縁について全周に設けられている。図5に示すように、この下溝26は、下鍔部22の下面に凹設されているとともに、その断面が略半円状に形成されている。また、下鍔部22の上面には、下溝26の形成位置に対応した円環状の膨出部27が形成されており、この膨出部27を設けることにより、下鍔部22の強度が確保されている。
【0016】
次に、下餅容器20に対して上餅容器10を取り付ける方法について説明する。まず、上餅容器10の内部に軟化状態の餅を充填した後に、フィルム状のシート30によって上餅容器10の開口を封止する。このとき、シート30は、上容器本体11の下端縁に設けられる上鍔部12の下面に貼り付けられる。なお、図3に示すように、シート30は、上鍔部12の下面の外径と略同径の円状に形成されており、上鍔部12の下面全体に貼り付けられる。また、下餅容器20においても同様の方法により、軟化状態の餅が充填される。このようにして、軟化状態の餅の充填を行なった後に、下餅容器20に対する上餅容器10の取り付けが行なわれる。
【0017】
図2は、下餅容器20に対して上餅容器10を取り付けた状態の鏡餅容器1を示している。ここに示すように、上段側係合部15を下段側係合部25内に位置させることで両者は係合されて、下餅容器20に対して上餅容器10が取り付けられる。具体的には、図3(a)に示すように、上餅容器10を下餅容器20の載置部23の上方に位置決めさせた後、上餅容器10を下方に向かって押し込むことで、図3(b)に示すように、上段側係合部15が下段側係合部25内に進入するとともに、載置部23内に上餅容器10が載置される。このとき、上段側係合部15の下側面15bが、その基端から先端に向かって上方に湾曲した円弧状に形成されているため、その円弧面に案内されて上段側係合部15はスムーズに下段側係合部25内に移動する。鏡餅容器1は、このようにして下餅容器20に対して上餅容器10を取り付け、橙取付部13に橙を取り付けた後、三方、御幣等の飾り体を装着させた状態で使用される。
【0018】
次に、鏡餅容器1の内部に充填した餅を取り出す方法について説明する。餅の取り出し方法については、上餅容器10も下餅容器20も同様であるため、ここでは、下餅容器20について説明する。まず、下鍔部22の下面に貼り付けられているシート30を剥離させる。次いで、図6に示すように、下溝26内に人差指又は中指等の爪を掛けるとともに、親指で下餅容器20の上面を押さえるようにして下餅容器20を把持する。この状態から、下溝26内に掛けた爪によって下鍔部22を下餅容器20の径方向に引きつつ、親指によって下餅容器20の上面を下方に向かって押圧することで、下餅容器20に充填された餅は、下餅容器20の開口から押し出される。
【0019】
次に本実施形態における作用効果について、以下に記載する。
(1)本実施形態では、上餅容器10の上鍔部12及び下餅容器20の下鍔部22の下面には、滑り防止手段としての上溝16及び下溝26が設けられている。これにより、上鍔部12又は下鍔部22の下面に対して指先が掛かりやすくなり、上餅容器10又は下餅容器20から餅を取り出す際に生じる上鍔部12又は下鍔部22の下面に対する指の滑りが抑制されて、円滑なる餅の取り出しが可能となる。
【0020】
(2)本実施形態では、滑り防止手段を上溝16及び下溝26から形成している。これにより、餅の取り出し時における押圧作用によって上鍔部12又は下鍔部22が変形したとしても、指先又は爪と滑り防止手段との引っ掛かり状態が維持されやすく、上鍔部12又は下鍔部22の下面に対する指の滑りがより効果的に抑制される。
【0021】
また、滑り防止手段が溝状に形成されていることから、餅を取り出す際に、指先によって下餅容器20の下鍔部22を下餅容器20の径方向に引っ張ることが可能となる。この下鍔部22に対する引っ張り作用によって、下容器本体21と餅との間に隙間が形成されやすく、下容器本体21からの餅の剥離が促進される。この点は、上餅容器10についても同様である。よって、上記構成によれば、より一層円滑に餅を取り出すことができる。
【0022】
(3)本実施形態では、滑り防止手段としての上溝16及び下溝26が、上容器本体11又は下容器本体21の開口を囲むように同開口の周縁について全周に設けられている。これにより、指先を上鍔部12又は下鍔部22にあてて上餅容器10又は下餅容器20を把持する際に、上餅容器10又は下餅容器20をその周方向におけるどの方向に把持したとしても、指先が滑り防止手段である上溝16又は下溝26に接触することになる。よって、上餅容器10又は下餅容器20から餅を取り出す際に、滑り防止手段の位置に合わせて把持位置の位置合わせをするという煩わしさがない。
【0023】
(4)本実施形態では、上鍔部12は、その下面に上溝16が凹設されているとともに、上面が凹凸のない滑面状に形成されている。これにより、上鍔部12の下面に上溝16を凹設したとしても、鏡餅容器1の鏡餅風の外観を損ねることはない。また、本実施形態では、下鍔部22は、その下面に下溝26が凹設されているとともに、上面には、下溝26の形成位置に対応した円環状の膨出部27が形成されている。これにより、下溝26を設けたことによる下鍔部22の強度低下が抑制されている。
【0024】
(5)本実施形態では、底部が開口するとともに下端縁に上鍔部12又は下鍔部22が設けられている上餅容器10及び下餅容器20を組み合わせることで鏡餅形状をなす構成の鏡餅容器1を採用している。これにより、鏡餅容器1からは、段毎に分割された状態の餅が取り出されることになるため、容易に取り出された餅の区分けを行なうことができる。
【0025】
(6)本実施形態では、上餅容器10の上鍔部12の外周面12aに設けた上段側係合部15と、下餅容器20の載置部23の側面23aに設けた下段側係合部25とを係合させることにより、下餅容器20に対する上餅容器10の取り付けがなされる。そのため、上鍔部12の下面に対して貼り付けられたシート30が上段側係合部15と下段側係合部25との係合関係に影響を与えることはない。よって、上餅容器10と下餅容器20の双方に軟化状態の餅を充填した場合においても、下餅容器20に対する上餅容器10の取り付けに不都合が生じることはなく、下餅容器20に対して上餅容器10を容易に取り付けることができる。
【0026】
(7)本実施形態では、上段側係合部15が、上鍔部12の外周面12aから水平方向に突出するように設けられているとともに、溝状の下段側係合部25が載置部23の側面23aに設けられている。これにより、上段側係合部15と下段側係合部25とが係合した状態においては、上段側係合部15は下段側係合部25内に位置することとなり、仮に上餅容器10のみを持ち上げても、下餅容器20が上餅容器10から脱落することが抑制される。
【0027】
(8)本実施形態では、上餅容器10の内側面及び下餅容器20の内側天井面に、それぞれリブ14、24が設けられている。これにより、鏡餅容器1に軟化状態の餅を充填した場合には、上餅容器10及び下餅容器20から取り出された餅の表面には、リブ14、24に対応した形状の溝が形成される。この溝は、餅を包丁で切る際の誘導線となり、包丁が滑りにくくなる。
【0028】
(9)本実施形態では、上段側係合部15の下側面15bは、その基端から先端に向かって上方に湾曲した円弧状に形成されている。これにより、下餅容器20に上餅容器10を取り付ける際に、上段側係合部15が自身の円弧面に案内されて下段側係合部25内にスムーズに進入する。そのため、下餅容器20に対して上餅容器10を容易に取り付けることができる。
【0029】
なお、本実施形態は、次のように変更して具体化することも可能である。
・ 本実施形態では、上溝16及び下溝26により滑り防止手段を構成していたが、滑り防止手段の構成はこれに限られるものではない。たとえば、各鍔部の下面から下方に向かって膨出する膨出部により滑り防止手段を構成してもよいし、各鍔部を貫通する貫通孔により滑り防止手段を構成してもよい。このように構成した場合においても、上記(1)〜(3)の効果を得ることができる。また、各鍔部の下面に粗面部分を形成して、指先と
各鍔部との摩擦抵抗を高めるようにして、同下面に対する指先の滑りを抑制する構成としてもよい。このように、滑り防止手段の具体的構成は様々であり、それらを組み合わせるようにして鍔部の下面に形成してもよい。なお、上餅容器10と下餅容器20とに異なる形状の滑り防止手段を設ける構成を採用してもよいし、上餅容器10及び下餅容器20のいずれか一方のみに滑り防止手段を設ける構成を採用してもよい。
【0030】
・ 本実施形態では、上鍔部12又は下鍔部22において、上溝16及び下溝26は、上容器本体11又は下容器本体21の開口を囲むように同開口の周縁について全周に設けられるとともに、断面略半円状に形成されていたが、上溝16及び下溝26の形状はこれに限られるものではない。たとえば、複数の溝が上記開口の周縁に沿って並設されていてもよいし、上記開口の周縁とは無関係に、たとえば直線状に形成されていてもよい。また、上溝16及び下溝26は、断面多角形状に形成されていてもよいし、扇状に形成されていてもよい。
【0031】
・ 本実施形態では、図6に示すように、上溝16及び下溝26は、爪先が入る程度の大きさに形成されていたが、指先まで入るような大きさに形成してもよい。その際、上溝16及び下溝26の外周面を指先の形状に合わせた曲面凹状に形成すると、指先から鏡餅容器1に力が伝わりやすくなり、より一層円滑に餅を取り出すことが可能となる。
【0032】
・ 本実施形態では、下鍔部22の上面には、下溝26の形成位置に対応した円環状の膨出部27が形成されていたが、この膨出部27は設けなくてもよい。
・ 本実施形態では、上餅容器10と下餅容器20とを組み合わせることで鏡餅形状をなす構成の鏡餅容器1を採用したが、上餅及び下餅が一体に形成された鏡餅容器1を採用してもよい。
【0033】
・ 上餅容器10における橙取付部13を、上餅容器10に充填された餅を取り出す際に容器の頂部を開口させるための頂部開口手段の一構成として機能させてもよい。図7(a)に示す上餅容器10は、上容器本体11の橙取付部13の基端周縁に、同橙取付部13を囲むような薄肉部17が設けられている。この薄肉部17は、上容器本体11の外面側に設けられる非連続的な切込によって形成されている。このように構成した場合、上容器本体11に対して橙取付部13を上方に引っ張る又は捩じると、薄肉部17に沿って上容器本体11から橙取付部13が分離され、これにより、上容器本体11の頂部が開口する。よって、上餅容器10から餅を取り出す際において、上容器本体11から橙取付部13を分離させて上容器本体11の頂部を開口させることで、上餅容器10と餅との間に空気が流入し易くなって押し出し易くなり、より円滑なる餅の取り出しを実現することができる。
【0034】
図7(b)に示す上餅容器10では、薄肉部17が橙取付部13の基端周縁ではなく、上容器本体11の頂部全体を囲むように形成されている。このように構成した場合、橙取付部13を下方に押圧すると、橙取付部13は上餅容器10の頂部とともに、上容器本体11から分離して下方に陥没するように移動する(図7(b)の鎖線部分)。そのため、図6に示すような餅の取り出し動作を行うことによって、上容器本体11の頂部に対する開口形成と餅の取り出しとを同時に行なうことができる。このとき、上容器本体11から分離された頂部は、餅を下方に押し出すための押し出し手段としても機能するため上容器本体11からの餅の取り出しをより一層円滑に行なうことができる。
【0035】
また、図7(c)に示す上餅容器10では、薄肉部17が上容器本体11の橙取付部13の基端周縁に形成されるとともに、その一部が上容器本体11の径方向に延びるように略鍵穴状に形成されている。このように構成した場合には、上容器本体11から橙取付部13を分離させる際には、薄肉部17の形成方向に沿って橙取付部13側から上容器本体11の径方向に分離が進行していく(図7(c)の鎖線部分)。よって、単に薄肉部17を大きな枠状に形成する場合よりも、小さな力で開口を大きく形成することができる。
【0036】
なお、ここでは、上容器本体11の外面側に設けられる非連続的な切込によって薄肉部17を形成する構成について説明したが、薄肉部17は、上容器本体11の内面側に形成される切込みによって形成されていてもよいし、内外両面に設けられる切込みによって形成されていてもよい。また、薄肉部17は、非連続的に形成されている必要はなく、連続的に設けられていてもよい。つまり、溝状の切込みによって形成されていてもよい。
【0037】
・ 本実施形態では、シート30は、上鍔部12の下面の外径と略同径の円状に形成されていたが、シート30の大きさはこれに限られるものではない。たとえば、シート30は、上鍔部12の外径より小さく形成されていてもよいし、同外径よりも大きく形成されていてもよい。また、容器の開口よりも大きく形成されていれば、シート30の形状はとくに限定されるものではなく、たとえば、多角形状であってもよい。
【0038】
・ 本実施形態では、上餅容器10の内側面には、リブ14が中央から放射状に延びるように複数設けられていたが、このリブ14の配置構成はこれに限られるものではない。たとえば、複数のリブ14を平行に配置してもよいし、格子状に配置してもよい。また、このリブ14は設けなくてもよい。なお、下餅容器20の内側天井面に設けられているリブ24についても同様であり、どのような配置構成としてもよいし、リブ24を設けなくてもよい。
【0039】
・ 本実施形態では、リブ14及びリブ24は、断面半円状に形成されていたが、リブ14及びリブ24の形状はこれに限られるものではなく、たとえば、断面多角形状に形成してもよい。
【0040】
・ 本実施形態では、その内部に軟化状態の餅を充填させて使用する場合について説明したが、容器内に真空パック詰めの切り餅やご祈祷米など他のお供えを収容させて使用してもよいことは言うまでもない。
【0041】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について記載する。
(イ) 上餅と下餅とを重ねた形状に成形される鏡餅容器において、底部が開口するとともに下端縁に鍔部が設けられている上餅容器及び下餅容器を備え、前記上餅容器の前記鍔部の外周面には、上段側係合部が設けられ、前記下餅容器の上面には、前記上餅容器を載置するための載置部が形成されているとともに、前記載置部には下段側係合部が設けられ、前記上段側係合部と前記下段側係合部とを係合させることにより、前記下餅容器に対して前記上餅容器を取り付け可能であり、前記鍔部の下面には、該下面に対する指の滑りを抑制する滑り防止手段が設けられていることを特徴とする鏡餅容器。
【0042】
(ロ) 鏡餅を模した形状に成形され、底部に開口を有するとともに頂部に橙取付部が設けられている鏡餅容器において、前記頂部には、該橙取付部を分離させて前記頂部に開口を形成するための頂部開口手段が設けられており、前記頂部開口手段は、前記橙取付部を囲むように形成される薄肉部であることを特徴とする鏡餅容器。この構成によれば、頂部開口手段によって頂部が開口されると、容器と該容器に充填される餅との間に外気が流入しやすくなって、餅の取り出し時に、容器から餅が離れるのを支援する。従来の技術では、容器の頂部や橙取付部を下方に押圧したとしても、容器から餅が離れにくい場合があったが、頂部開口手段の構成によって、そうした不都合が解消される。
【符号の説明】
【0043】
1…鏡餅容器、10…上餅容器、12…上鍔部、16…滑り防止手段としての上溝、20…下餅容器、22…下鍔部、26…滑り防止手段としての下溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鏡餅を模した形状に成形され、底部に開口を有するとともに該開口の周縁に鍔部が延設されている鏡餅容器において、
底部に開口を有するとともに該開口の周縁に上鍔部が延設されている上餅容器と、
底部に開口を有するとともに該開口の周縁に下鍔部が延設されている下餅容器とを備え、
前記下餅容器の上に前記上餅容器を係合させることにより、上餅と下餅とを重ねた鏡餅を模した形状をなし、
前記上鍔部の下面及び前記下鍔部の下面には、各下面に対する指の滑りを抑制する滑り防止手段が設けられ、
前記上鍔部は、その下面に前記滑り防止手段としての上溝が凹設されるとともに、上面が滑面状に形成され、
前記下鍔部は、その下面に前記滑り防止手段としての下溝が凹設されるとともに、上面に前記下溝の形成位置に対応した膨出部が形成されていることを特徴とする鏡餅容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−188172(P2012−188172A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−145490(P2012−145490)
【出願日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【分割の表示】特願2007−110732(P2007−110732)の分割
【原出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(391003794)押尾産業株式会社 (32)
【Fターム(参考)】