説明

開閉体制御装置

【課題】本発明の目的は、車両速度を検知し、この検知した車両速度に応じて、開閉体の開閉のための駆動源となるモータを制御することにより、確実に開閉体を閉め切ることが可能な開閉体制御装置を提供することにある。
【解決手段】車両に搭載された開閉体2が閉め切り位置付近に到達すると開閉体2の駆動速度を減速させる開閉体制御装置3に関する。
開閉体2の駆動源となるモータ31と、モータ31の出力部の回転力を開閉体2の開閉動作に変換するための駆動機構32と、スイッチ42からの指令信号と車両速度とを少なくとも入力し、指令信号入力時の車両速度に応じてモータ31の回転速度を制御する制御手段40とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開閉体制御装置に係り、特に車両のパワーウインドウ等の開閉体の開閉を行う開閉体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のウインドウガラスを電動にて開閉するパワーウインドウは、モータを動力として開閉するものであり、車両が置かれる様々な条件下において、支障なく開閉運動を行うことが可能となるように高トルクのモータが使用されている。
しかし、このように高トルクのモータが使用されているため、モータの回転速度の制御を行わなければ、開閉の起動時及び停止時に、振動や騒音が生じるという不具合が起こる可能性があった。
このような問題を解決するために、車両の走行状況や環境に応じてモータを制御し、緩やかにウインドウを開閉する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3374446号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、車両の走行状況及び現在置かれている環境を検知することによって、その検知信号に応じた制御を行うことができるパワーウインドウ制御装置が開示されている。
このパワーウインドウ制御装置では、車速センサ、ハンドル角センサ、パワーウインドガラス位置センサ等のセンサにより、現在の車両の状況が、旋回中か、加速状態か、減速状態か、定速状態かを検知して、その検知信号により、適切な速度マップを選択してモータの制御を行うことができる。
このため、旋回中、加速中、減速中、定速中等の車両状態に応じたモータ制御を行うことができ、これにより微小な開閉コントロールを良好に行えるとともに、「ガタ」音を防止することができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の技術は、車両の現在の状態を考慮してモータの回転制御を行うものであり、「ガタ」音等を防止することはできても、車両の速度を考慮したものではなく(車両速度は加速中、減速中等の状態を判断するために使用される)、パワーウインドウ動作の終端付近においては、モータの回転速度を減速させるため、高速走行中に、車両のパワーウインドウが閉め切れないという不具合が生じる恐れがあった。
つまり、車両の走行速度が速くなるにつれ、パワーウインドウが車両外側へ引っ張られる負荷が増加する。
このため、走行速度に関係なくモータ制御を行うと(モータの回転速度を減速させてしまうと)、特に高速走行中においては、ウインドウを閉め切れないという不具合が生じる可能性があった。
【0006】
本発明の目的は、上記各問題点を解決することにあり、車両速度を検知し、この検知した車両速度に応じて、開閉体の開閉のための駆動源となるモータを制御することにより、確実に開閉体を閉め切ることが可能な開閉体制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、本発明に係る開閉体制御装置によれば、車両に搭載された開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、開閉体の駆動速度を減速させる開閉体制御装置において、前記開閉体の駆動源となるモータと、該モータの出力部の回転力を前記開閉体の開閉動作に変換するための駆動機構と、前記開閉体の開閉動作を指令するスイッチからの指令信号と、前記車両の走行速度を検知する車両速度センサからの車両速度とを少なくとも入力し、前記指令信号入力時の前記車両速度に応じて前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を備えたことにより解決される。
【0008】
このように、本発明においては、車両速度に応じて、開閉体を駆動するモータの回転速度を制御することができる。
通常、車両の走行速度が速くなるにつれ、車両が受ける負圧が大きくなり開閉体が受ける負荷が増加する。つまり、車両の走行速度が速くなるにつれ、開閉体が車両の外側へ引っ張られる力が大きくなる。
このため、車両速度に関係なくモータを回転させると、高速走行中に、開閉体を閉め切ることができなくなる可能性がある。
よって、本発明のように、車両速度に応じて、開閉体を駆動するモータの回転速度を制御することにより、高速走行中であっても、開閉体を完全に閉め切ることができる。
【0009】
また、このとき、前記制御手段には、前記車両速度に対応し、前記モータの回転速度を規定する複数のチャートが備えられており、前記制御手段は、前記指令信号入力時に、入力時点の前記車両速度に対応する前記チャートを選択して、選択された前記チャートに従い前記モータを制御するよう構成されていると、簡易な構成でモータの回転速度を制御できるため好適である。
【0010】
また、請求項2に記載の開閉体制御装置において、前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えており、
複数の前記チャートの減速期間は、それぞれ異なるよう構成されていると、緻密な制御を行うことができるため好適である。
更に、請求項3に記載の開閉体制御装置において、前記減速期間は、前記車両速度が速くなるに従い短くなるように構成されている。
このように構成されていることにより、高速走行中に、開閉体の閉め切り直前まで、通常速度でモータを回転駆動することができるため、高速走行中であっても、開閉体が車両の外側へ引っ張られる力に抗って、開閉体を確実に閉め切ることができる。
【0011】
更に、請求項2に記載の開閉体制御装置において、前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えており、複数の前記チャートの減速期間における減速度合は、それぞれ異なるよう構成されていると、緻密な制御を行うことができるため好適である。
また、請求項5に記載の開閉体制御装置において、前記減速期間における減速度合は、前記車両速度が速くなるに従い小さくなるよう構成されている。
このように構成されていることにより、高速走行中に、開閉体の閉め切り直前まで、通常速度に近い速度でモータを回転駆動することができるため、高速走行中であっても、開閉体が車両の外側へ引っ張られる力に抗って、開閉体を確実に閉め切ることができる。
【0012】
また、請求項2に記載の開閉体制御装置において、前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えたものと、該減速期間が備えられていないものとが双方備えられ、複数の前記チャートのうち減速期間を備えたものの減速期間若しくは該減速期間における減速度合は、それぞれ異なるよう構成されていると、更に緻密な制御を行うことができるため好適である。
このとき、減速期間が備えられていないチャートを高速走行中に使用すれば、閉め切り位置まで、通常回転速度でモータを駆動させることができ、より大きな負圧(開閉体が車両の外側へ引っ張られる力)に抗って、開閉体を移動させることができる。
このため、高速走行中であっても、確実に開閉体を閉め切ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、車両速度を検知し、この検知した車両速度で走行する際に生じる空気負圧に対応する回転速度でモータ制御を行うことができる。
このため、車両がどのような速度で走行していても、パワーウインドウ等の開閉体を確実に閉め切ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下に説明する構成は本発明を限定するものでなく、本発明の趣旨の範囲内で種々改変することができるものである。
本実施形態は、車両速度を検知し、この検知した車両速度に応じて、開閉体の開閉を行う駆動源となるモータを制御することにより、確実に開閉体を閉め切ることが可能な開閉体制御装置に関するものである。
【0015】
図1乃至図4は、本発明の第1実施形態を示すものであり、図1はパワーウインドウ装置を備えた車両ドアの説明図、図2はパワーウインドウ装置の電気的構成図、図3は速度制御パターンを示すパターン図、図4はウインドウECUの制御を示すフローチャートである。
また、図5は、本発明の第2実施形態に係る速度制御パターンを示すパターン図である。
【0016】
(第1実施形態)
はじめに、図1により、本実施形態に係る開閉体制御装置としてのパワーウインドウ装置3を備えた車両ドアDの構成について説明する。
本実施形態に係る車両ドアDは、ドアパネル1と、開閉体としてのウインドウガラス2と、パワーウインドウ装置3とを有して構成される。
【0017】
ドアパネル1は公知のドアパネルであり、図示しないドアトリムとともに車両ドアDの骨格を構成する。
ウインドウガラス2は、サイドウインドウに配設される公知のウインドウガラスである。
また、パワーウインドウ装置3は、ウインドウガラス2を上下動させるための装置であり、本実施形態においてはXアーム式が使用されている。
なお、本実施形態においては、Xアーム式を使用しているが、これに限られることはなく、モータ31の動力を変換してウインドウガラス2を昇降させることができるものであればどのような形式のものであってもよい。
【0018】
本実施形態に係るパワーウインドウ装置3は、モータ31と、駆動機構としてのレギュレータ32とを有して構成されている。
モータ31は、パワーウインドウ装置3の駆動源であり、出力ギア31aを有して構成されている。
【0019】
レギュレータ32は、Xアーム式のレギュレータであり、Xアーム32aと、セクタギア32bと、固定アーム32cと、昇降アーム32dとを有して構成されている。
Xアーム32aは、モータ31からの動力をウインドウガラス2に伝達するためのアームである。
セクタギア32bは、モータ31の出力ギア31aと噛合し、モータ31からの出力を伝達する。
【0020】
固定アーム32cは、ドアパネル1に固定されており、昇降アーム32dにはウインドウガラス2の下端部が固定されている。
Xアーム32aの下端側の一方には、セクタギア32bが固定されるとともに、下端側の他方側には固定アーム32cが連結されている。また、Xアーム32aの上端部は双方昇降アーム32dに連結されている。
【0021】
このように構成されているので、モータ31が駆動し、出力ギア31aが回転すると、この動力がセクタギア32bより伝達されてXアーム32aが回転し、昇降アーム32dを上下動させる。
この昇降アーム32dの上下動に伴い、この昇降アーム32dに固定されたウインドウガラス2が上下動することとなる。
【0022】
図2は、本実施形態に係るパワーウインドウ装置3の電気的構成を示すブロック図である。
なお、本図は、本実施形態における説明を行うための構成を簡略に記載したものであり、本説明に直接関与しないものについては省略してある。
【0023】
モータ31は、制御手段としてのウインドウECU40(electric computer unit)に接続されており、このウインドウECU40により駆動制御される。
ウインドウECU40は、車両のバッテリ41より電源供給されている。
【0024】
また、ウインドウECU40には、パワーウインドウ入力回路40a及び通電制御回路40bが備えられている。
このウインドウECU40には、パワーウインドウスイッチ42と、車両速度センサ43と、モータ31が接続されている。
なお、このウインドウECU40には、他の機器及びセンサ等が適宜接続されるが、本発明に直接関与しないものに関しては省略してある。
【0025】
パワーウインドウスイッチ42には、ウインドウガラス2を閉動作させる閉スイッチ(UP SW)42aと、ウインドウガラス2を開動作させる開スイッチ(DOWN SW)42bと、ウインドウガラス2を全開若しくは全閉位置まで一気に開閉動作させるオートスイッチ(AUTO SW)42cと、が備えられており、ウインドウECU40のパワーウインドウ入力回路40aに接続されている。
【0026】
パワーウインドウスイッチ42からの入力信号は、このパワーウインドウ入力回路40aに入力され、このパワーウインドウ入力回路40aを介して通電制御回路40bに入力される。
【0027】
閉スイッチ(UP SW)42aと、開スイッチ(DOWN SW)42bと、オートスイッチ(AUTO SW)42cとは、本実施形態においては、一のパワーウインドウスイッチ42に備えられる。このパワーウインドウスイッチ42は、例えばシーソー式の2段階スイッチであって、一端を一段目まで操作するとウインドウガラス2を通常開動作させるべく開スイッチ(DOWN SW)42bのみがオンされ、他端を一段目まで操作すると、ウインドウガラス2を通常閉動作させるべく閉スイッチ(UP SW)42aのみがオンされる。
【0028】
また、パワーウインドウスイッチ42の一端を二段目まで操作すると、ウインドウガラス2をオート開動作させるべく、開スイッチ(DOWN SW)42b及びオートスイッチ(AUTO SW)42cが双方オンされ、他端を二段目まで操作すると、ウインドウガラス2をオート閉動作させるべく、閉スイッチ(UP SW)42a及びオートスイッチ(AUTO SW)42cが双方オンされる。
【0029】
つまり、ウインドウECU40は、閉スイッチ(UP SW)42a若しくは開スイッチ(DOWN SW)42bが単独でオンされると、その信号が入力されている間(すなわち、パワーウインドウスイッチ42が操作されている間)のみ、ウインドウガラス2を指定方向へ動作させるようにモータ31に電源を供給し、これら閉スイッチ(UP SW)42a若しくは開スイッチ(DOWN SW)42bとともにオートスイッチ(AUTO SW)42cからの信号がオンされると、その後信号入力が途絶えても(すなわち、パワーウインドウスイッチ42の操作が止められても)、全閉若しくは全開位置まで、ウインドウガラス2を指定方向へ動作させるようにモータ31に電源を供給する。
【0030】
また、車両速度センサ43は、通電制御回路40bに接続されている。この通電制御回路40bでは、パワーウインドウ入力回路40aを介して入力されたパワーウインドウスイッチ42からの入力信号と車両速度センサ43からの車両速度とから速度制御パターンが選択されモータ31に供給される電流又は電圧が制御される。
【0031】
次いで、図3により、本実施形態で使用されているモータ31の速度制御パターンについて説明する。この速度制御パターンがチャートに相当する。
速度制御パターン1は、図3に示すように従来採用されていた速度制御パターンである。
このパターン1では、モータ31の回転速度を徐々に上昇させる。そしてウインドウガラス2が所定の距離又は所定の時間移動した後、所定の速度でモータ31を駆動又は所定の電力をモータ31へ供給してモータ31を駆動する。そして、ウインドウガラス2が更に上昇して、その位置が位置H1に達するとモータ31回転速度を徐々に減速させ、位置H2に達するとモータ31の回転速度をその速度で保持するパターンである。
【0032】
つまり、一定の回転速度でモータ31を回転させるが、上端に近づくとウインドウガラス2の上端部をウエザーストリップ内に穏やかに格納するためにモータ31の回転速度を減速するように構成されている。
【0033】
パターン2では、モータ31の回転速度を徐々に上昇させる。そしてウインドウガラス2が所定の距離又は所定の時間移動した後、所定の速度でモータ31を駆動又は所定の電力をモータ31へ供給してモータ31を駆動する。そして、ウインドウガラス2が更に上昇して、その位置が位置H1´に達するとモータ31回転速度を徐々に減速させ、位置H2´に達するとモータ31の回転速度をその速度で保持するパターンである。
【0034】
ただし、モータ31の回転速度を減速するタイミングがパターン1とは異なり、H1´の位置にずれている。つまり、モータの回転速度を通常速度で保持する期間がパターン1より長くなっている。これは、車両速度が速くなると、ウインドウガラス2が受ける負圧(ウインドウガラス2が車両外側に引っ張られる力)が大きくなるため、通常速度でモータ31を回転させる期間をできるだけ長くして(つまり減速期間をできるだけ短くして)ウインドウガラス2の上端をウエザーストリップ内にできるだけ確実に格納するためである。
換言すれば、ウインドウガラス2を迅速に動かして動作時間を減少させることにより、ウインドウガラス2が受ける負荷の積算値を減らして、確実に閉め切ることとしたものである。
【0035】
パターン3では、モータ31の回転速度を徐々に上昇させる。そしてウインドウガラス2が所定の距離又は所定の時間移動した後、所定の速度でモータ31を駆動又は所定の電力をモータ31へ供給してモータ31を駆動するパターンである。つまり、モータ31の減速期間を無くしたパターンである。
車両速度が更に速くなると、ウインドウガラス2が受ける負荷(ウインドウガラス2が車両外側に引っ張られる力)が更に大きくなる。
このため、モータ31を減速してしまうと、ウインドウガラス2の上端がウエザーストリップ内に格納されない可能性があるため、減速期間を無くして確実にウインドウガラス2の上端をウエザーストリップ内に格納できるようにしたものである。
換言すれば、ウインドウガラス2を更に迅速に動かして動作時間を更に減少させることにより、ウインドウガラス2が受ける負荷の積算値を減らして、確実に閉め切ることとしたものである。
【0036】
なお、本実施形態において、モータ31の回転速度を減速させる領域は、サイドウインドウの開口幅が100mmとなる位置までウインドウガラス2が上昇した位置から、ウインドウガラス2の上端がウエザーストリップに格納されるまでの領域としている。
ただし、これに限られることはなく、適宜この領域は変更することができる。
【0037】
次いで、図4によりウインドウECU40の制御を、フローチャートを用い説明する。本実施形態においては、ウインドウガラス2を閉める場合、すなわちウインドウ2が上昇してその上端部がウエザーストリップ内に格納される場合を示す。
【0038】
まず、ステップS1で車両速度センサ43より車両速度が取得される。
次いで、ステップS2で車両速度が5km/h以下か否かが判断される。
ステップS2で車両速度が5km/h以下であると判断された場合(ステップS2:Yes)、ステップS3により速度制御パターン1が選択される。
【0039】
ステップS2で車両速度が5km/h以下ではないと判断された場合(ステップS2:No)、処理はステップS4に進み、車両速度が100km/h以下か否かが判断される。
ステップS4で車両速度が100km/h以下であると判断された場合(ステップS4:Yes)、ステップS5により速度制御パターン2が選択される。
【0040】
つまり、5km/h<車両速度≦100km/hの場合には、速度制御パターン2が選択される。
前述した通り、速度制御パターン2は、回転速度を減速するタイミングがパターン1とは異なり、H1´の位置にずれている。
つまり、モータ31の回転速度を一定速度で保持する期間がパターン1より長くなっている。
このため、一定速度でモータ31を回転させる期間が長くなり(つまり減速期間が短くなり)ウインドウガラス2の上端をウエザーストリップ内に確実に格納することができる。
【0041】
ステップS4で車両速度が100km/h以下ではないと判断された場合(ステップS4:No)、ステップS6により、車両速度が150km/h以下か否かが判断される。
ステップS6で車両速度が150km/h以下であると判断された場合(ステップS6:Yes)、ステップS7により速度制御パターン3が選択される。
【0042】
つまり、100km/h<車両速度≦150km/hの場合には、速度制御パターン3が選択される。
前述した通り、速度制御パターン3は、モータ31の回転速度を比例的に上昇させ、一定値に達すると(もしくはウインドウガラス2の位置が一定位置に達すると)その速度で保持し続けるパターンである。
【0043】
つまり、モータ31の減速期間を無くしたパターンである。
このため、車両速度が更に速くなり、ウインドウガラス2が受ける負荷が更に大きくなっても、ウインドウガラス2が受ける負荷の積算値を減らして確実にウインドウガラス2の上端をウエザーストリップ内に格納できる。
このように車両速度を区切り、次々にパターンを選択していくが、同様に速度を区切り、速度制御パターンを適用するだけであるため説明を省略する。
【0044】
速度制御パターンが選択され、ステップS8でパワーウインドウスイッチ42からの入力信号を受信すると、ステップS9により選択された速度制御パターンに従いモータ31に通電される。
このように、車両速度を検知し、この検知した車両速度で走行する際に生じる空気負圧に対応する回転速度でモータ制御を行うことができる。
【0045】
なお、本実施形態では、速度制御パターンとして3例を例示したが、速度制御パターンの種類はこれに限られることはなく、必要に応じて、モータ31の減速位置を更に細かく振り分けたパターン(位置Hの位置を更に細かく振分けたパターン)を多数採用してもよいし、速度制御パターン1と速度制御パターン2のみ等、少ないパターンでモータ31を制御してもよい。
【0046】
上記実施形態は、以下のように改変することができる。
改変例として他の実施形態を以下、説明する。
なお、上記実施形態と同様の構成要素には同一符号を付すとともに、重複する構成の説明は省略する。
【0047】
(第2実施形態)
本実施形態においては、速度制御パターンを改変している。
その他の構成は、第1実施形態と同様である。
図5は、本実施形態に係る速度制御パターン4を示す。
本実施形態においては、第1実施形態の速度制御パターン2を速度制御パターン4に改変している。
【0048】
速度制御パターン4は、モータ31の回転速度を徐々に上昇させる。そしてウインドウガラス2が所定の距離又は所定の時間移動した後、所定の速度でモータ31を駆動又は所定の電力をモータ31へ供給してモータ31を駆動する。そして、ウインドウガラス2が更に上昇して、その位置が位置H1に達するとモータ31回転速度を徐々に減速させ、位置H2に達し、速度V1´となるとモータ31の回転速度をその速度で保持するパターンである。
【0049】
ただし、モータ31の回転速度を減速する度合いがパターン1とは異なり、ウインドウガラス2が上端に達したときの回転速度が速度V1´の位置にずれている。つまり、ウインドウガラス2が上端に達したときのモータ31の回転速度がパターン1より速くなっている。
これは、車両速度が速くなると、ウインドウガラス2が受ける負荷が大きくなるため、モータ31の回転速度をできるだけ速くして、ウインドウガラス2の上端をウエザーストリップ内にできるだけ確実に格納するためである。
【0050】
なお、第1実施形態においてはモータ31の減速期間を短くし、第2実施形態においてはモータの減速度合いを小さくしたが、両パターン(速度制御パターン2、速度制御パターン4)を適宜組み合わせてもよいし、この両パターン及び速度制御パターン3を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の第1実施形態に係るパワーウインドウ装置を備えた車両ドアの説明図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るパワーウインドウ装置の電気的構成図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る速度制御パターンを示すパターン図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るウインドウECUの制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る速度制御パターンを示すパターン図である。
【符号の説明】
【0052】
1‥ドアパネル、2‥ウインドウガラス、
3‥パワーウインドウ装置、31‥モータ、31a‥出力ギア、
32‥レギュレータ、32a‥Xアーム、32b‥セクタギア、32c‥固定アーム、
32d‥昇降アーム、
40‥ウインドウECU、40a‥パワーウインドウ入力回路、40b‥通電制御回路、
41‥バッテリ、
42‥パワーウインドウスイッチ、42a‥閉スイッチ、42b‥開スイッチ、42c‥オートスイッチ、
43‥車両速度センサ、
D‥車両ドア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、開閉体の駆動速度を減速させる開閉体制御装置において、
前記開閉体の駆動源となるモータと、
該モータの出力部の回転力を前記開閉体の開閉動作に変換するための駆動機構と、
前記開閉体の開閉動作を指令するスイッチからの指令信号と、前記車両の走行速度を検知する車両速度センサからの車両速度とを少なくとも入力し、前記指令信号入力時の前記車両速度に応じて前記モータの回転速度を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする開閉体制御装置。
【請求項2】
前記制御手段には、
前記車両速度に対応し、前記モータの回転速度を規定する複数のチャートが備えられており、
前記制御手段は、前記指令信号入力時に、入力時点の前記車両速度に対応する前記チャートを選択して、選択された前記チャートに従い前記モータを制御することを特徴とする請求項1に記載の開閉体制御装置。
【請求項3】
前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えており、
複数の前記チャートの減速期間は、それぞれ異なるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項4】
前記減速期間は、前記車両速度が速くなるに従い短くなるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の開閉体制御装置。
【請求項5】
前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えており、
複数の前記チャートの減速期間における減速度合は、それぞれ異なるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉体制御装置。
【請求項6】
前記減速期間における減速度合は、前記車両速度が速くなるに従い小さくなるように構成されていることを特徴とする請求項5に記載の開閉体制御装置。
【請求項7】
前記チャートは、前記開閉体が閉め切り位置付近に到達すると、前記モータの回転速度が減少する減速期間を備えたものと、該減速期間が備えられていないものとが双方備えられ、
複数の前記チャートのうち減速期間を備えたものの減速期間若しくは該減速期間における減速度合は、それぞれ異なるよう構成されていることを特徴とする請求項2に記載の開閉体制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−24423(P2009−24423A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−189796(P2007−189796)
【出願日】平成19年7月20日(2007.7.20)
【出願人】(000101352)アスモ株式会社 (1,622)
【Fターム(参考)】