説明

開閉駆動装置

【課題】蓋体の開動作時の荷重方向の急激な反転による衝撃によりギヤや油圧シリンダ等が故障することを防止する。
【解決手段】所定の重量を有する蓋体3を回動させて開閉する開閉駆動装置は、前記蓋体に軸着されたピニオンギヤ5と、前記ピニオンギヤに噛合し、互いに対向配置された第1及び第2のラック6,7と、前記第1及び第2の各ラックを夫々独立して駆動する第1及び第2の駆動部8,9と、を有し、前記第1及び第2の各駆動部は、前記蓋体の開動作の際に、前記蓋体から前記第1のラックが上向き及び前記第2のラックが下向きに夫々荷重を受けるときは前記第1のラックを下降及び前記第2のラックを上昇させ、前記第1のラックが前記蓋体から受ける荷重が反転するのに伴い前記第2のラックを下降させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、重量物である蓋体をラック&ピニオン機構により回動させて開閉する開閉駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、フックで固定された蓋をフックを外すことで蓋の自重により下方に回動させて開放する際に、蓋が急激に落下しないようにダンパーを設けた構成が記載されている。また、特許文献2には、上方からの落下物により原料ダンパーに生じる衝撃を吸収する構成が記載されている。
【特許文献1】特開平11−020782号公報
【特許文献2】特開平06−207781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
重量物である平板状の蓋体を片側を支点としてラック&ピニオン機構により回動させて開閉する構成においては、開動作の途中までは蓋体を持ち上げるためラックを上昇させる方向に荷重がかかるが、一定の開度を超えると反対に蓋体の自重によりラックを下降させる方向に荷重がかかるようになる。ここで、ラックとピニオンギヤとの間には必ず所定のバックラッシュ(隙間)があるため、上記荷重方向の急激な反転による衝撃によりギヤや油圧シリンダ等が故障する原因となる。
【0004】
また、特許文献1,2は、被駆動物の開動作時に、開閉駆動装置が重量物である被駆動物から受ける衝撃を吸収する構成ではない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、蓋体の開動作時の荷重方向の急激な反転による衝撃によりギヤや油圧シリンダ等が故障することを防止することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る開閉駆動装置は、所定の重量を有する蓋体3を回動させて開閉する開閉駆動装置であって、前記蓋体に軸着されたピニオンギヤ5と、前記ピニオンギヤに噛合し、互いに対向配置された第1及び第2のラック6,7と、前記第1及び第2の各ラックを夫々独立して駆動する第1及び第2の駆動部8,9と、を有し、前記第1及び第2の各駆動部は、前記蓋体の開動作の際に、前記蓋体から前記第1のラックが上向き及び前記第2のラックが下向きに夫々荷重を受けるときは前記第1のラックを下降及び前記第2のラックを上昇させ、前記第1のラックが前記蓋体から受ける荷重が反転するのに伴い前記第2のラックを下降させる。
【0007】
また、好ましくは、前記第1及び第2の各駆動部は、前記第1及び第2の各ラックに接続されて当該ラックを上下方向に駆動する第1及び第2の油圧シリンダ10,11と、前記第1及び第2の各油圧シリンダへ供給する油圧を調整する第1及び第2の調整弁12,13と、を有する。
【0008】
また、好ましくは、油圧源14,15から前記第1及び第2の各調整弁を介して前記第1及び第2の各油圧シリンダへ供給する油圧を切り替える切替弁16を更に有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ピニオンギヤに噛合して互いに相反する方向に駆動される一対のラックを設け、一方のシリンダにより蓋体の開動作を行うと共に、荷重方向が反転するのに伴い他方のシリンダにより蓋体が閉動作する方向に駆動力を付与していくことで、蓋体の開動作時の荷重方向の急激な反転による衝撃によりギヤや油圧シリンダ等が故障することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態の開閉駆動装置の構成及び動作を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の開閉駆動装置1は、屋外に設置された排水処理槽等の水槽2を開閉するための蓋体3をラック&ピニオン機構5,6,7により回動させる機能を有する。水槽2は、例えば、開口が2m×4m程度のサイズを有し、蓋体3は支持部4により水槽2に回転可能に軸支される。上記蓋体3は、例えば、200〜300kg程度の重量を有する重量物である。
【0013】
上記開閉駆動装置1は、上記蓋体3に軸着されたピニオンギヤ5と、このピニオンギヤ5に噛合し、互いに対向配置された第1及び第2のラック6,7と、これら第1及び第2の各ラック6,7を夫々独立して駆動する第1及び第2の駆動部8,9と、を有する。
【0014】
上記第1及び第2の各駆動部8,9は、蓋体3の開動作の際に、図1(b)のように蓋体3から第1のラック6が上向きに荷重f1及び第2のラック7が下向きに荷重f2を受けるときは第1のラック6を下降及び第2のラック7を上昇させる一方、図1(c)のように第1のラック6が蓋体3から受ける荷重f3,f4が反転するときには第2のラック7を下降させる。
【0015】
上記第1及び第2の各駆動部8,9は、第1及び第2の各ラック6,7に接続されて当該ラックを上下方向に駆動する第1及び第2の油圧シリンダ10,11と、第1及び第2の各油圧シリンダ10,11へ供給する油圧を調整し、第1及び第2の油圧シリンダ10,11を夫々独立して作動させる第1及び第2の調整弁12,13と、を有する。
【0016】
更に、上記開閉駆動装置1には、所定の油圧を生成する油圧タンク14や油圧ポンプ15等からなる油圧源と、この油圧源から第1及び第2の各調整弁12,13を介して第1及び第2の各油圧シリンダ10,11へ供給する油圧を切り替える切替弁16と、を有する。これら第1及び第2の各油圧シリンダ10,11にはエアフィルタ17が設けられている。
【0017】
上記構成によれば、ピニオンギヤ5に噛合して互いに相反する方向に駆動される一対のラック6,7を設け、第1のシリンダ10により蓋体3の開動作を行うと共に、所定の開度で蓋体の荷重方向が反転するのに伴い、第2のシリンダ11により蓋体3が閉動作する方向に駆動力を付与していくことで、蓋体3の開動作時の荷重方向の急激な反転による衝撃によりギヤや油圧シリンダ等が故障するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る実施形態の開閉駆動装置の構成及び動作を説明する図である。
【符号の説明】
【0019】
1 開閉駆動装置
2 水槽
3 蓋体
4 支持部
5 ピニオンギヤ
6 第1のラック
7 第2のラック
8 第1の駆動部
9 第2の駆動部
10 第1の油圧シリンダ
11 第2の油圧シリンダ
12 第1の調整弁
13 第2の調整弁
14 油圧タンク
15 油圧ポンプ
16 切替弁
17 エアフィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の重量を有する蓋体を回動させて開閉する開閉駆動装置であって、
前記蓋体に軸着されたピニオンギヤと、
前記ピニオンギヤに噛合し、互いに対向配置された第1及び第2のラックと、
前記第1及び第2の各ラックを夫々独立して駆動する第1及び第2の駆動部と、を有し、
前記第1及び第2の各駆動部は、前記蓋体の開動作の際に、前記蓋体から前記第1のラックが上向き及び前記第2のラックが下向きに夫々荷重を受けるときは前記第1のラックを下降及び前記第2のラックを上昇させ、
前記第1のラックが前記蓋体から受ける荷重が反転するのに伴い前記第2のラックを下降させることを特徴とする開閉駆動装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の各駆動部は、前記第1及び第2の各ラックに接続されて当該ラックを上下方向に駆動する第1及び第2の油圧シリンダと、
前記第1及び第2の各油圧シリンダへ供給する油圧を調整する第1及び第2の調整弁と、を有することを特徴とする請求項1に記載の開閉駆動装置。
【請求項3】
油圧源から前記第1及び第2の各調整弁を介して前記第1及び第2の各油圧シリンダへ供給する油圧を切り替える切替弁を更に有することを特徴とする請求項2に記載の開閉駆動装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2009−30650(P2009−30650A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192635(P2007−192635)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】