説明

防滑靴底

【課題】 防滑性能の優れた靴底を提供する。
【解決手段】 ゴム又は熱可塑性樹脂の弾性体で構成し、意匠ブロックパターン2を構成する多数の接地突部2aを互いに独立して弾性変形する間隙aを存して前後に並設する。接地突部2aは移動時に同時に接地する前後の平滑面3a,3aと、該平滑面3a,3a間に介在して、しかも、凸部3b´が前記平滑面3aと同時に接地する無数の凹凸の有る粗面3bとで成る接地面3を備える。そして、該接地面3に対して前記接地突部2aの側面2a´を垂直面とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防滑靴底に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば衛生環境が重視される食品加工工場などでは、掃除がしやすいように床面に非常に平滑なステンレス板がもちいられていることが多く、水や食用油に濡れた場合に非常に滑りやすくなる。このように労働現場によっては、床表面に凹凸を設けるなどの設計により耐滑性を確保することが難しい場合も多い。そのため、靴底の設計によって耐滑性を確保することが必要となってくる。
【0003】
以上のことから、近年では主に水や油などの液体で濡れた面に対して優れた耐滑性を有する靴底の開発が強く望まれている。
【0004】
靴底の耐滑設計には大きく分けて2通りがあり、一つは、靴底の意匠ブロックパターンにおいて、各ブロック(接地突部)の接地面を平滑にし、この接地面にブロックの側面(立上り面)を直交方向に配するようにした構成を採るもの(例えば、特許文献1の図3、図4)、後一つは、意匠ブロックパターンにおいて、各ブロックの接地面を微細な凹凸を備えた粗面とするものである。
【0005】
濡れた床面と靴底の接地面との間で摩擦力が高いと滑りにくくなることは勿論であるが、前者の構造のものは接地面(靴底)と床面の接触界面に流体膜が形成されないようにして、また、後者は流体を接触界面から排除するようにしてそれぞれ前記の摩擦力の向上を図るものである。
【0006】
【特許文献1】特開2005−288159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、接地面を平滑面とした前者のもの(前記公報所載の構造のもの)は動摩擦について高い数値の係数を得られることができるが、静摩擦についてはそれほどの数値を期待できず、結局、滑っているときの中断すなわち止まりにくさは期待できるが、歩行に際して着地時つまり滑り始めのコントロールがむずかしく、後者の粗面の場合は、これとは逆に、静摩擦的には防滑機能を期待し得ても動摩擦的には期待できず、静、動いずれの摩擦係数も基準値以上で、従って、防滑機能の優れた防滑靴底が望まれていた。
【0008】
本発明は、それに答えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
ゴム又は熱可塑性樹脂の弾性体で構成し、意匠ブロックパターンを構成する多数の接地突部を、該接地突部が互いに独立して弾性変形する許与間隙を存して前後に並設し、接地突部は移動時に同時に接地する前後の平滑面と、該平滑面間に介在して、しかも、凸部が前記平滑面と同時に接地する無数の凹凸の有る粗面とで成る接地面を備えると共に、該接地面に対して前記接地突部の側面を垂直面とした、構成としたものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、歩行に際しての着地時に接地面の前後の平滑面と該平滑面間に存する粗面の凸部が同時に接地する(床面に)ものであるから、平滑面の流体との接触による滑りが生じても粗面の凸部が流体を通じての床面の接触によりその滑りを規制し、充分な係数の静的摩擦を得ることができ、また、移動時には平滑面が流体を切るようにして移動するから、平滑面と床面との間の流体が排除される一方、粗面の内の流体は凸部間の間隙を通じて接地突部外部に排出され、流体の存在による滑りが生じることがなく、従って、防滑効果の優れた靴底を提供できる。
【実施例】
【0011】
図面は本発明に係る靴底の一実施例を示し、図1は靴底の正面図、図2は図1の平面図、図3は図2の一部拡大図、図4乃至図6は他の実施例の正面図、図7は接地突部の他の実施例の拡大図である。
【0012】
本発明に係る靴底Aは、ゴム又は熱可塑性樹脂で成る弾性体で構成し、靴底主体1の表面に、意匠ブロックパターン2を構成する多数の接地突部2a,…2b,…を、該接地突部2a,2bが互いに独立して弾性変形(圧縮変形)する許与間隙aを存して並設して構成する。
【0013】
接地突部2a,2bは、相対する両側の平滑面3a,3aと該平滑面3a,3a間に介在する粗面3bとで成る接地面3を備え、該接地面3の粗面3bを介する両側の前記平滑面3a,3aは歩行(着地)時に同時に接地(床面に)する領域内に位置させ、しかも、該平滑面3a,3aに対して接地突部2a,2bの側面(立上り面)2a´,2b´は垂直面とし(平滑面3a,3bと側面2a´,2b´は互いに直交する方向に配し)てある。
【0014】
粗面3bは、無数の凹凸を設けて成り、該凹凸は、凸部3b´,…が前記平滑面3a,3aと同時に接地したとき、該凸部3b´,3b´間の間隙が流体(概し、油)の流路となって接地面3の外部に排出される関係にしてある(粗さ計による計測に従えば、この凹凸は3.0〜40μm好ましくは10〜40μmである)。
【0015】
なお、粗面3bは、図3で示すように平滑面3a,3a間に一段凹んだ凹入部5を設け、該凹入部5の底面を粗面3bとして構成するようにすると、平滑面3aの接地時に粗面3bの一部すなわち凸部3b´,…が凹入部5より突出して圧平されないで接地し、前記の、流体の経路となる間隙が確実に形成される。この間隙は、例えば、図7で示す粗面3bのように、凸部3b´,…の先端を平滑面3aと同一面上に配置した場合にも形成され、接地時に該間隙を通じて粗面3bからの流体の接地面3外へ排出されるが、前記の凹入部5の底面を粗面とする場合と比較すると機能上の低下は否めない。しかし、粗面が平滑面3aより突出した粗面(の凹部)の場合と較べると静摩係数の向上を期待できるので、図7に示すような粗面3b構成でも本発明の実施に必ずしも不都合とはいえない。
【0016】
図1で示す第一実施例の靴底は、平滑面3a,3aを靴底A(靴)の前後方向に並べた各接地突部2aを、靴底Aの幅方向いっぱいの長さにして意匠ブロックパターン2を縞模様として構成したもので、各接地突部2aが、前記の通り、靴底Aの前後方向に並ぶものであるから、歩行にあたってそれぞれが防滑機能を果たすようにしたもので、図4乃至図6で示すものは、平滑面3a,3aを靴底A(靴)の前後方向に並べた接地突部2aと、平滑面3a,3aを靴底A(靴)の左右方向に並べた接地空部2bを用いて意匠ブロックパターン2と成し、足を拡げるなど横方向に移動させる際にも、接地突部2bの存在により防滑効果を図れるようにしたものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】靴底の正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】図2の一部拡大図。
【図4】第二実施例の正面図。
【図5】第三実施例の正面図。
【図6】第四実施例の正面図。
【図7】接地突部の他の実施例の拡大図。
【符号の説明】
【0018】
2 意匠ブロックパターン
2a 接地突部
2a´ 側面
3 接地面
3a 平滑面
3b 粗面
3b´ 凸部
a 間隙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム又は熱可塑性樹脂の弾性体で構成し、意匠ブロックパターンを構成する多数の接地突部を、該接地突部が互いに独立して弾性変形する許与間隙を存して前後に並設し、接地突部は移動時に同時に接地する前後の平滑面と、該平滑面間に介在して、しかも、凸部が前記平滑面と同時に接地する無数の凹凸の有る粗面とで成る接地面を備えると共に、該接地面に対して前記接地突部の側面を垂直面とした、防滑靴底。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−22406(P2010−22406A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183711(P2008−183711)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(000167853)弘進ゴム株式会社 (12)
【Fターム(参考)】