説明

防蟻機能をもつ基礎断熱構造及びその施工方法

【課題】基礎の外側に配設される断熱材の外側面上に外装材が施工される基礎断熱構造において、土台側への白蟻の這い上がりを有効に防ぐ機能を備えたものを提供し、さらには、当該構造を容易に施工する。
【解決手段】本発明の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100は、基礎2と、この基礎の上面22aに載せられる土台5と、基礎2の外側面に沿って配設される断熱材3と、この断熱材3の外側面上に設けられる外装材9と、防蟻材41、42とを備えている。とくに、防蟻材41、42は、基礎の上面と断熱材の上面と外装材の上面とに跨るように配置され、少なくとも下面側に防蟻機能を有する底部41a、42aと、この底部41a、42aから立ち上がって土台5を外側から覆い、かつ防蟻機能を有する側部41b、42bとを有する。また、防蟻材41、42の側部41b、42bの外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材7が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎の外側に断熱材が設けられる基礎断熱構造であってかつ防蟻機能を有する構造、及びその施工方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の断熱化、気密化が進むにつれ、床に断熱材が施工される床断熱構造に代え、基礎の外側に断熱材を施工する基礎断熱構造の採用が活発化されている。しかし、このような構造では、下記のように前記断熱材を蟻道にして白蟻が這い上がるおそれがある。
【0003】
前記白蟻は、暗がりをその行動範囲としている。従って、基礎の外側に断熱材が存在しない場合には、当該基礎の外側から土台側へ白蟻が這い上がってくることはない。ところが、その基礎の外側に例えば発泡樹脂からなる断熱材が施工されていると、この断熱材を白蟻が食い破りながら地中から這い上がり、土台に到達してしまうおそれがある。
【0004】
従来、このような断熱材を経路とする白蟻の這い上がりを防ぐための構造として、例えば特許文献1に記載されるように、当該断熱材の上端部分を覆う遮断材を備えたものが知られている。
【特許文献1】特開2000−17747号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記断熱材の外側面上には、モルタル等からなる外装材が施工される場合がある。その場合、当該外装材と前記断熱材との隙間が蟻道になるおそれがある。すなわち、当該外装材が施工された構造では、たとえ前記断熱材の上端が遮断材で覆われていても、この断熱材を食い破った白蟻が当該断熱材と外装材との隙間から土台側に這い上がり、あるいは当該断熱材と外装材との隙間をそのまま這い上がるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑み、基礎の外側に配設される断熱材の外側面上に外装材が施工される基礎断熱構造において、土台側への白蟻の這い上がりを有効に防ぐ機能を備えたものを提供し、さらには、当該構造を容易に施工することができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の防蟻機能をもつ基礎断熱構造によれば、基礎と、この基礎の上面に載せられる土台と、前記基礎の外側面に沿って配設される断熱材と、この断熱材の外側面上に設けられる外装材と、防蟻材とを備えた基礎断熱構造であって、前記防蟻材は、前記基礎の上面と前記断熱材の上面と前記外装材の上面とに跨るように配置され、少なくとも下面側に防蟻機能を有する底部と、この底部から立ち上がって前記土台を外側から覆い、かつ防蟻機能を有する側部とを有し、さらに、前記防蟻材の側部の外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材が固定されることにより、上記目的が達成される。
【0008】
また、前記防蟻材は、土台側防蟻テープと断熱材側防蟻テープとにより構成され、前記土台側防蟻テープは、前記基礎の上面と前記土台の底面との間に介在しかつ少なくとも基礎の上面側に防蟻機能を有する基礎防蟻部と、前記土台の外側面を覆いかつ防蟻機能を有する第1土台防蟻部とを一体に有し、前記断熱材側防蟻テープは、前記断熱材の上面を覆いかつ少なくとも断熱材の上面側に防蟻機能を有する断熱材防蟻部と、前記第1土台防蟻部に対して外側から重なりかつ防蟻機能を有する第2土台防蟻部とを一体に有することが好ましい。
【0009】
また、前記防蟻材の底部が前記外装材の外側面からさらに外側に突出することが好ましい。
【0010】
また、前記遮断材は、前記防蟻材の底部のうち前記側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材であることが好ましい。
【0011】
さらに、本発明の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、基礎と、この基礎の上面に載せられる土台と、前記基礎の外側面に沿って配設される断熱材と、この断熱材の外側面上に設けられる外装材と、を備え、かつ防蟻機能をもつ基礎断熱構造を施工するための方法であって、前記基礎の上面と前記断熱材の上面とが略同一の高さに揃うように当該基礎の外側面に沿って断熱材を配設する工程と、少なくとも一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である土台側防蟻テープを、その防蟻面が前記基礎の上面に密着し、かつ、当該基礎の外側面から外側にはみ出るように当該基礎の上面上に設置する工程と、前記土台側防蟻テープの上に前記土台を設置する工程と、前記土台側防蟻テープのうち前記土台から外側にはみ出る部分を上側に折り返して前記土台の外側に止着する工程と、少なくとも一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である断熱材側防蟻テープを、その防蟻面が前記土台側防蟻テープの外側面及び前記断熱材の上面に跨ってこれらの面に密着しかつ当該断熱材側防蟻テープが前記断熱材の外側面よりも外側にはみ出る位置に、固定する工程と、前記断熱材側防蟻テープの外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材を固定する工程と、前記断熱材側防蟻テープが前記断熱材の外側面よりも外側にはみ出る部分よりも下側の領域で当該断熱材の外側面上に前記外装材を設ける工程と、を含むことにより、上記目的が達成される。
【0012】
また、前記土台側防蟻テープ及び前記断熱材側防蟻テープとして、その防蟻面側に防蟻機能を有する粘着層が配された粘着テープを用いることが好ましい。
【0013】
また、前記断熱材側防蟻テープを固定する工程では、当該断熱材側防蟻テープの上端部を前記土台側防蟻テープの上端よりも高い位置で前記土台側に固定することが好ましい。
【0014】
また、前記断熱材側防蟻テープが前記外装材の外側面からさらに外側に突出するように当該断熱材側防蟻テープを固定することが好ましい。
【0015】
また、前記遮断材として、前記防蟻材の底部のうち前記側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の請求項1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造によれば、基礎の外側に配設される断熱材の外側面上に外装材が施工される基礎断熱構造において、防蟻材の底部によって、基礎、断熱材および外装材の上面に白蟻が這い上がるのを防止し、さらに、万が一、白蟻が防蟻材の底部の上方まで這い上がって来たとしても、防蟻材の側部が、土台の外側面の防御壁のように機能し、また、側部の外側面に固定された遮断材が、側部の上端へ白蟻が這い上がるのを阻止するので、白蟻は土台の外側面に到達しえない。したがって、土台側への白蟻の這い上がりを有効に防ぐことができる。
【0017】
また、請求項2の防蟻機能をもつ基礎断熱構造によれば、2枚の防蟻テープをそれぞれ折り曲げて土台の回りに取り付けるだけで、既存の防蟻テープを用いても、2方向からの白蟻の侵入を簡単かつ確実に防ぐことができる。
【0018】
また、請求項3の防蟻機能をもつ基礎断熱構造によれば、防蟻材の底部が前記外装材の外側面からさらに外側に突出することにより、白蟻が、防蟻材を乗り超えて土台側へ辿り着くのを防止することができる。
【0019】
また、請求項4の防蟻機能をもつ基礎断熱構造によれば、遮断材は、防蟻材の底部のうち側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材であることにより、防蟻施工部分を雨水等から保護しつつ、土台の外側面への白蟻の這い上がりを防ぐ、という2つの機能を単一の部材に受け持たせることができる。
【0020】
さらに、請求項5の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、土台側防蟻テープおよび断熱材側防蟻テープをそれぞれ折り曲げて土台の周りに固定するだけで、土台側への白蟻の這い上がりを有効に防ぐ機能を備えた基礎断熱構造を容易に施工することができる。
【0021】
また、請求項6の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、土台側防蟻テープ及び断熱材側防蟻テープとして、その防蟻面側に防蟻機能を有する粘着層が配された粘着テープを用いることにより、防蟻材を取り付け面に対して密着させた状態で簡単に固定することができる。
【0022】
また、請求項7の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、断熱材側防蟻テープを固定する工程では、断熱材側防蟻テープの上端部を土台側防蟻テープの上端よりも高い位置で土台側に固定することにより、土台の外側面を防蟻材で広範囲に被覆することができる。
【0023】
また、請求項8の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、断熱材側防蟻テープが外装材の外側面からさらに外側に突出するように断熱材側防蟻テープを固定することにより、白蟻が、断熱材側防蟻テープを乗り超えて土台の方へ這い上がるのを防止できる。
【0024】
また、請求項9の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法によれば、遮断材として、防蟻材の底部のうち側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材を用いることにより、防蟻施工部分を雨水等から保護しつつ、土台の外側面への白蟻の這い上がりを防ぐ、という2つの機能を単一の部材に受け持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の防蟻機能をもつ基礎断熱構造は、基礎と、この基礎の上面に載せられる土台と、基礎の外側面に沿って配設される断熱材と、この断熱材の外側面上に設けられる外装材と、防蟻材とを備えている。とくに、防蟻材は、基礎の上面と断熱材の上面と外装材の上面とに跨るように配置され、少なくとも下面側に防蟻機能を有する底部と、この底部から立ち上がって土台を外側から覆い、かつ防蟻機能を有する側部とを有する。さらに、防蟻材の側部の外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材が固定される。
【0026】
ここで、本明細書中において、土台とは、土台そのものに加えて、土台および土台に隣接して設けられたスペーサをも含む概念である。
【0027】
以下で、本発明の防蟻機能をもつ基礎断熱構造について図面を用いて詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100を説明するための断面図である。実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100は、図1に示されるように、基礎2と、基礎2の上面22aに載せられる土台5と、基礎2の外側面22bに沿って配設される断熱材3と、断熱材3の外側面上に設けられる外装材9と、防蟻材4と、遮断材7とから構成されている。なお、基礎2の内側(図1中、紙面右側)の地盤面G.L上に設けられているのは土間コンクリートである。
【0028】
基礎2は、図1の紙面垂直方向に連続して延びており、この実施の形態では横断面が逆T字状を呈したコンクリート製の布基礎である。基礎2は、裾部21と、裾部21のほぼ中央から直立するように設けられた立直部22とから構成されている。裾部21の全体と、立直部22の下側部分は、地中に埋設されている。
【0029】
土台5は、柱8の底部を支えるための木製の長尺部材である。土台5は、基礎2の立直部上面22a上に、その長手方向を基礎2の長手方向に沿わせて載置され、立直部22に埋め込まれたアンカーボルトを介して基礎2に固定される。
【0030】
断熱材3は、基礎2の外方(図1中、紙面左側)側面を被覆するように、立直部22の立直部外側面22bに当接させて設けられている。断熱材3の上面(以下、端面という)3aおよび基礎2の立直部上面22aは、同一の高さに揃えられている。断熱材3としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどの発泡樹脂などを用いることができる。
【0031】
外装材9は、断熱材3の外側、すなわち、断熱材3が立直部外側面22bと接している面の反対側の面に接するように設けられている。外装材9としては、とくに限定されるものではないが、たとえば、モルタルなどを用いることができる。
【0032】
防蟻材4は、基礎2の立直部上面22aと断熱材3の端面3aと外装材9の上面とに跨るように配置されている。具体的には、図1に示されるように、防蟻材4は、2枚の防蟻テープからなり、さらに、防蟻材4を構成する2枚の防蟻テープには、その貼り付け位置と防蟻箇所に応じて、土台側防蟻テープ41と、断熱材側防蟻テープ42とがある。防蟻テープの長手方向が基礎2の長手方向に沿うように配置されている。本実施の形態では、防蟻テープとして、片面に粘着層が配されており、その粘着層に防蟻機能を有し、帯状のものを用いる。本発明では、従来から防蟻テープとして使用されているものをそのまま活用することもできる。とくに、防蟻テープの幅は土台5の幅より長いことが好ましい。
【0033】
土台側防蟻テープ41は、基礎2の立直部上面22aと土台5の底面(以下、下面という)5bとの間に介在しかつ基礎2の立直部上面22a側に防蟻機能を有する基礎防蟻部41aと、土台5の外側面5aを覆いかつ防蟻機能を有する第1土台防蟻部41bとを一体に有する。具体的には、土台側防蟻テープ41は、土台5に直接接するように設けられている。また、土台側防蟻テープ41は、土台5の下面5b側であって、基礎2の立直部上面22a上に、その粘着面を立直部上面22aへ向けて隙間なく密着して貼り付けられている基礎防蟻部41aと、土台5の外側面5aに粘着面を外側(図1中、紙面左側)へ向けてピン6などにより固定された第1土台防蟻部41bとを有する。基礎防蟻部41aと第1土台防蟻部41bとは、一体に設けられたものであり、本実施の形態では、一枚の土台側防蟻テープ41が、その横断面が略L字状になるように長手方向に沿って折り曲げられることによって、土台側防蟻テープ41に基礎防蟻部41aと第1土台防蟻部41bとが形成される。
【0034】
断熱材側防蟻テープ42は、断熱材3の端面3aを覆いかつ断熱材3の端面3a側に防蟻機能を有する断熱材防蟻部42aと、第1土台防蟻部41bに対して外側から重なりかつ防蟻機能を有する第2土台防蟻部42bとを一体に有する。具体的には、断熱材側防蟻テープ42は、その粘着面を土台5側、および、断熱材3の端面3a側へ向けて固定されている。さらに、断熱材側防蟻テープ42は、上述の土台側防蟻テープ41の第1土台防蟻部41bによって覆われている土台5の外側面5aを超えて、土台5の外側面5aを広く被覆するように設けられた第2土台防蟻部42bと、断熱材3の端面3aおよび外装材9の端面を覆うように水平に設けられ、断熱材防蟻テープ42の長手側の側部を外装材9より外方(図1中、紙面左方向)へ突出させた蟻返し42cを含む断熱材防蟻部42aとを有する。蟻返し42cは、いわゆる鼠返しと同様に機能し、外装材9の外側上方に到達した白蟻が、断熱材防蟻テープ42の長手側の側縁を乗り越えて土台5に到達するのを防ぐ。第2土台防蟻部42bと断熱材防蟻部42aとは、一体に設けられたものであり、本実施の形態では、一枚の断熱材側防蟻テープ42が、その横断面が略L字状になるように長手方向に沿って折り曲げられることによって、断熱材側防蟻テープ42に断熱材防蟻部42aと第2土台防蟻部42bとが形成される。
【0035】
このように、本実施の形態の防蟻材4は、土台5の下面側に防蟻機能を有する底部(前述の基礎防蟻部41a、断熱材防蟻部42a)と、この底部(前述の基礎防蟻部41a、断熱材防蟻部42a)から立ち上がって土台5を外側から覆い、かつ防蟻機能を有する側部(前述の第1土台防蟻部41b、第2土台防蟻部42b)とを有する。
【0036】
さらに、本実施の形態の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100は、防蟻材4の側部すなわち、第2土台防蟻部42bおよび第1土台防蟻部41bの外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように、その外側面に遮断材7が固定されている。遮断材7は、防蟻材4の底部(基礎防蟻部41a、断熱材防蟻部42a)のうち側部(第1土台防蟻部41b、第2土台防蟻部42b)よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材である。遮断材7は、土台5の外側に、土台5の長手方向(図1中、紙面垂直方向)に沿って設けられる長尺の部材である。遮断材7は、図1に示されるように、第2土台防蟻部42bの外側に密着して設けられた当接部71と、当接部71の下部から突出し、当接部71に対して傾斜して設けられた傾斜部72と、傾斜部72の端部から垂直下方に突出して設けられた垂下部73とを有する。遮断材7は、当接部71を釘打ちすることにより、第2防蟻部42の外側に密着して固定される。遮断材7の材質としては、防水性があり、白蟻が食い破ることができない素材であればとくに限定されないが、たとえば、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、鉄、プラスチック、合金、セラミックなどを用いることができる。遮断材7に対しても、防蟻機能が付加されていることがより好ましい。
【0037】
この基礎断熱構造では、次のようにして防蟻効果が達成される。白蟻は、断熱材3を食って、あるいは断熱材3と外装材9の間を通って断熱材3の端面3aへ到達するおそれがあるが、断熱材3の端面3aと外装材9の上面とに跨って断熱材防蟻部42aが存在し、その断熱材防蟻部42aの下面には防蟻粘着面が設けられているので、白蟻は断熱材防蟻部42aよりも上側に這い上がることができない。また、土台側では、基礎2の立直部上面22aに基礎防蟻部41aが存在し、その基礎防蟻部41aの下面には防蟻粘着面が設けられているので、白蟻は土台5の下面5bと基礎2の立直部上面22aとの間から侵入することもできない。さらに、この実施の形態では、蟻返し41cが存在するので、仮に白蟻が外装材9から外に抜け出ることができたとしても、白蟻が断熱材防蟻部42aの上側に乗り越えることを効果的に抑制することができる。万が一、白蟻が断熱材防蟻部42aの上面まで辿り着いたとしても、防蟻機能をもつ第1土台防蟻部41bと第2土台防蟻部42bとの重なり部分が土台5の外側面5aを覆っているので、白蟻は、第2土台防蟻部42bおよび第1土台防蟻部41bを食い破って土台5の外側面5aに到達することができない。また、第2土台防蟻部42bに遮断材7が密着固定されているので、白蟻は、第2土台防蟻部42bの外側面を伝って上方に這い上がることもできない。したがって、土台5の外側面5aを白蟻から完全に防御することができる。
【0038】
上記の構成をもつ基礎断熱構造100の施工方法について、以下で図2〜図6を用いて説明する。本実施の形態の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100の施工方法は、(1)基礎2の立直部上面22aと断熱材3の端面3aとが略同一の高さに揃うように基礎2の外側面22bに沿って断熱材3を配設する工程と、(2)一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である土台側防蟻テープ41を、その防蟻面が基礎2の立直部上面22aに密着し、かつ、当該基礎22の外側面22bから外側にはみ出るように当該基礎2の立直部上面22a上に設置する工程と、(3)土台側防蟻テープ41の上に土台5を設置する工程と、(4)土台側防蟻テープ41のうち土台5から外側にはみ出る部分を上側に折り返して土台5の外側面5aに止着する工程と、(5)一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である断熱材側防蟻テープ42を、その防蟻面が土台側防蟻テープ41の外側面及び断熱材3の端面3aに跨ってこれらの面に密着しかつ断熱材側防蟻テープ42が断熱材3の外側面よりも外側にはみ出る位置に、固定する工程と、(6)断熱材側防蟻テープ42の外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように外側面に遮断材7を固定する工程と、(7)断熱材側防蟻テープ42が断熱材3の外側面よりも外側にはみ出る部分よりも下側の領域で断熱材の外側面上に外装材9を設ける工程とを含む。以下で、本実施の形態の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100の施工方法について、順を追って具体的に説明する。
【0039】
(1)まず、地中に基礎2を設置する。基礎2の立直部上面22aと断熱材3の端面3aとが略同一の高さに揃うように基礎2の外側面22bに沿って断熱材3を配設する(図2参照)。
【0040】
(2)つぎに、作業者は、出隅部(2つの壁などが或る角度をもって出会う所の外方の隅)および入隅部(2つの壁などが或る角度をもって出会う所の内方の隅)において、土台側防蟻テープ41を貼り付ける前に、あらかじめ、防蟻テープの小片を隅部の上面を覆うように貼り付けておく。つぎに、作業者は、土台側防蟻テープ41を、土台側防蟻テープ41の長手方向を基礎2の長手方向に沿わせて、その防蟻機能を有する面(すなわち粘着面)を基礎2の立直部上面22aに向けて貼り付ける。このとき、土台側防蟻テープ41の基礎2の立直部上面22a上に位置している部分については、作業者が手作業で土台側防蟻テープ41を押圧することにより、土台側防蟻テープ41を基礎2の立直部上面22aに圧着させ、基礎2の立直部上面22aから外側(図3中、紙面左側)、すなわち、断熱材3の端面3a上にはみ出している部分には、作業者による押圧作業を行わず、土台側防蟻テープ41を圧着させない。また、出隅部および入隅部では、土台側防蟻テープ41が交差するように重ねる。このように、防蟻テープの隙間が発生しやすい出隅部と入隅部では、防蟻テープの境界を覆うように防蟻テープを重複させて設ける。
【0041】
(3)つぎに、作業者は、図4に示されるように、基礎22の立直部上面22a上であって、土台側防蟻テープ41上に土台5を載置する。このときに、土台側防蟻テープ41の土台5が載せられた部分が、基礎防蟻部41a(底部)であり、土台5が載せられていない部分は、第1土台防蟻部41b(側部)である。
【0042】
(4)つぎに、作業者は、第1土台防蟻部41bを土台5の外側面5aに接するように約90度折り曲げる。このとき、土台側防蟻テープ41の粘着面は土台5に接する側ではなく外方(図5中、紙面左側)を向いている。したがって、作業者は、第1土台防蟻部41bの表面から土台5へ向けて、タッカーなどを用いてピン6を打ち込むことにより、第1土台防蟻部41bが折り曲げられた状態を維持する。このとき、前処理で出隅部および入隅部に貼り付けた防蟻テープの小片は、そのまま折り曲げずに基礎2の立直部上面22aおよび断熱材3の端面3aに貼り付けておく。
【0043】
(5)つぎに、作業者は、断熱材側防蟻テープ42を、防蟻テープ42の長手方向が土台5の長手方向に沿うように、かつ、その粘着面が土台5の外側面5aに向かい合うように貼り付ける。このとき、作業者は、断熱材側防蟻テープ42の第2土台防蟻部42bの長手側側縁(断熱材側防蟻テープの上端部)が、第1土台防蟻部41bの長手側側縁(土台側防蟻テープの上端)より上方の位置になるように、断熱材側防蟻テープ42を土台5の外側面5bに貼り付ける。そして、作業者は、貼り付けた断熱材側防蟻テープ42の横断面が略L字状になるように、木片、ヘラ、コテなどを用いて断熱材側防蟻テープ42を型押しする。なお、断熱材防蟻部42aに蟻返し部42cを設ける場合には、断熱材3の外側面より外方へ後述の外装材9の厚さに応じて約18〜30mmだけ突出させておく(図6参照)。
【0044】
この後、土台5上に柱8や外壁などの施工を行う。
【0045】
(6)つぎに、作業者は、遮断材7の当接部71を、断熱材側防蟻テープ42の第2土台防蟻部42bの外側に密着させて、釘打ちすることにより固定する(図1参照)。
【0046】
(7)最後に、作業者は、断熱材3の外側面を覆うように外装材9を設ける(図1参照)。上述の蟻返し部42a1は、少なくとも15mm程度、この外装材9の外側面より外方(図1中、紙面左側)に突出していることが好ましい。
【0047】
以上の実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造100によれば、土台5の周縁の白蟻が到達しやすい部分を直接防御するように、2枚の防蟻テープ41、42からなる防蟻材4を土台5の周りに配置することにより、基礎2の外側に配設される断熱材3の外側面上に外装材9が施工される基礎断熱構造において、土台5側への白蟻の這い上がりを有効に防ぎつつ、当該構造を容易に施工することができる。
【0048】
なお、上記実施の形態では、防蟻材4が、土台側防蟻テープ41と断熱材側防蟻テープ42との別々の2つのテープにより構成されている形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻材4として用いられるテープは、単一のテープであってもよいし、別々のテープであってもよい。
【0049】
また、上記実施の形態では、防蟻材4が2枚の防蟻テープ(土台側防蟻テープ41と断熱材側防蟻テープ42)である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻機能をもつ底部および側部がある防蟻材であれば、必ずしもテープでなくてよい。たとえば、底部と側部とが一体に形成された単一の成型品であってもよい。
【0050】
また、上記実施の形態では、布基礎に防蟻材4を貼り付けた形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スラブ状に施工されたベタ基礎に防蟻材4を貼り付けた形態であってもよい。
【0051】
また、上記実施の形態では、防蟻テープ41、42の片面のみが防蟻機能をもつ粘着面である場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、防蟻機能をもつ粘着面が防蟻テープの両面にあるものであってもよいし、防蟻テープの粘着層ではなく、シート本体に防蟻機能を付加したものであってもよい。
【0052】
また、上記実施の形態では、防蟻材4の側部(第1土台防蟻部41b、第2土台防蟻部42b)が直接土台5そのものに当接するように設けられた形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図7に示されるように、柱8の外側に断熱材30を設けて建築物を断熱構造にする場合に、土台5に隣接して設けられたスペーサ51に対して側部(第1土台防蟻部41b、第2土台防蟻部42b)を固定してもよい。とくに、防蟻機能が付加されたスペーサ51を用いると、より効果的に白蟻の侵蝕を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造を説明するための断面図である。
【図2】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法を説明するための断面図であり、基礎と断熱材が設置された状態を示す。
【図3】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法を説明するための断面図であり、基礎と断熱材の上面に土台側防蟻テープが配置された状態を示す。
【図4】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法を説明するための断面図であり、土台側防蟻テープ上に土台が設置された状態を示す。
【図5】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法を説明するための断面図であり、土台側防蟻テープの第1土台防蟻部を土台の側面に接するように折り曲げた状態を示す。
【図6】実施の形態1の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法を説明するための断面図であり、断熱材側防蟻テープを貼り付けた状態を示す。
【図7】他の実施の形態の防蟻機能をもつ基礎断熱構造を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0054】
2 基礎
22a 立直部上面(基礎の上面)
3 基礎断熱材(断熱材)
3a 端面(断熱材の上面)
4 防蟻材
41 土台側防蟻テープ
41a 基礎防蟻部(底部)
41b 第1土台防蟻部(側部)
42 断熱材側防蟻テープ
42a 断熱材防蟻部(底部)
42b 第2土台防蟻部(側部)
42c 蟻返し
5 土台
5a 外側面(土台の外側面)
5b 下面(土台の底面)
7 水切り部材(遮断材)
9 外装材
100 防蟻機能をもつ基礎断熱構造

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎と、この基礎の上面に載せられる土台と、前記基礎の外側面に沿って配設される断熱材と、この断熱材の外側面上に設けられる外装材と、防蟻材とを備えた基礎断熱構造であって、
前記防蟻材は、前記基礎の上面と前記断熱材の上面と前記外装材の上面とに跨るように配置され、少なくとも下面側に防蟻機能を有する底部と、この底部から立ち上がって前記土台を外側から覆い、かつ防蟻機能を有する側部とを有し、
さらに、前記防蟻材の側部の外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材が固定されることを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造。
【請求項2】
請求項1記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造において、
前記防蟻材は、土台側防蟻テープと断熱材側防蟻テープとにより構成され、
前記土台側防蟻テープは、前記基礎の上面と前記土台の底面との間に介在しかつ少なくとも基礎の上面側に防蟻機能を有する基礎防蟻部と、前記土台の外側面を覆いかつ防蟻機能を有する第1土台防蟻部とを一体に有し、
前記断熱材側防蟻テープは、前記断熱材の上面を覆いかつ少なくとも断熱材の上面側に防蟻機能を有する断熱材防蟻部と、前記第1土台防蟻部に対して外側から重なりかつ防蟻機能を有する第2土台防蟻部とを一体に有することを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造。
【請求項3】
請求項1または2記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造において、
前記防蟻材の底部が前記外装材の外側面からさらに外側に突出することを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造において、
前記遮断材は、前記防蟻材の底部のうち前記側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材であることを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造。
【請求項5】
基礎と、この基礎の上面に載せられる土台と、前記基礎の外側面に沿って配設される断熱材と、この断熱材の外側面上に設けられる外装材と、を備え、かつ防蟻機能をもつ基礎断熱構造を施工するための方法であって、
前記基礎の上面と前記断熱材の上面とが略同一の高さに揃うように当該基礎の外側面に沿って断熱材を配設する工程と、
少なくとも一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である土台側防蟻テープを、その防蟻面が前記基礎の上面に密着し、かつ、当該基礎の外側面から外側にはみ出るように当該基礎の上面上に設置する工程と、
前記土台側防蟻テープの上に前記土台を設置する工程と、
前記土台側防蟻テープのうち前記土台から外側にはみ出る部分を上側に折り返して前記土台の外側に止着する工程と、
少なくとも一方の面が防蟻機能を有する防蟻面である断熱材側防蟻テープを、その防蟻面が前記土台側防蟻テープの外側面及び前記断熱材の上面に跨ってこれらの面に密着しかつ当該断熱材側防蟻テープが前記断熱材の外側面よりも外側にはみ出る位置に、固定する工程と、
前記断熱材側防蟻テープの外側面を伝っての白蟻の這い上がりを阻止するように当該外側面に遮断材を固定する工程と、
前記断熱材側防蟻テープが前記断熱材の外側面よりも外側にはみ出る部分よりも下側の領域で当該断熱材の外側面上に前記外装材を設ける工程と、を含むことを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法。
【請求項6】
請求項5記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法において、
前記土台側防蟻テープ及び前記断熱材側防蟻テープとして、その防蟻面側に防蟻機能を有する粘着層が配された粘着テープを用いることを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法。
【請求項7】
請求項5または6記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法において、
前記断熱材側防蟻テープを固定する工程では、当該断熱材側防蟻テープの上端部を前記土台側防蟻テープの上端よりも高い位置で前記土台側に固定することを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法において、
前記断熱材側防蟻テープが前記外装材の外側面からさらに外側に突出するように当該断熱材側防蟻テープを固定することを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法において、
前記遮断材として、前記防蟻材の底部のうち前記側部よりも外側に位置する部分を上から覆う部分を有する水切り部材を用いることを特徴とする防蟻機能をもつ基礎断熱構造の施工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−308834(P2008−308834A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−155540(P2007−155540)
【出願日】平成19年6月12日(2007.6.12)
【出願人】(000010065)フクビ化学工業株式会社 (150)
【Fターム(参考)】