説明

防護柵継手構造および固定構造

【課題】 防護柵継手構造および固定構造を提供すること。
【解決手段】 ブラケット2を有する支柱1と、インナースリーブ19の外側に直列に嵌合したビーム3をブラケット2に設けた防護柵継手構造であって、支柱1のブラケット2と、ビーム3及びインナースリーブ19の接合穴とが同心で配置される共に、ブラケット1に隣接する位置のビーム3の接合穴とインナースリーブ19の接合穴が同心で配置され、各々の接合穴を利用して接合金具で固定してなり、接合金具は、舌片付き座金14と、回転止め座金8と、ボルト4を備え、舌片付き座金14は、ブラケット2または支柱1側に係合して回転が阻止される長尺の舌片16と、折り曲げられて回転止め座金8におけるアーム13に係合する舌片18によるストッパ29とを一体に備えており、回転止め座金8は、ボルト頭部5に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつストッパに係合するアームを備えてなる。前記接合金具で支柱1を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防護柵における支柱とビームの継手接合構造や、支柱の固定のための固定構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防護柵における継手構造の中でも、ボルトまたはナットの廻り止め機能を有する構造として、(1)支柱側のブラケットに矩形状凹部を設け、前記凹部に矩形状のナットを嵌合して、ナットの廻り止めを図るようにした構造が知られている。(例えば、特許文献1参照 実開昭60−50219号公報)。
【0003】
また、(2)ビーム側に間隔をおいて凹部を設けて、前記凹部にナットを溶接により固定するようにした形態の構造も知られている(例えば特許文献2参照 実公昭63−38265号公報)。
【0004】
また、(3)図9に示すように、支柱1におけるブラケット2に、インナースリーブ29を内装したビーム3を架設する場合に、ボルト4の弛み止めとして、ボルト頭部5と平ワッシャ6の間に、さらにスプリングワッシャ7を介在させて、ボルト4を締付ける際に、このスプリングワッシャ7の本体の段差部がなくなるまで(スプリング作用がなくなるまで)締付けることによって廻り止め機能を果たし、軸方向のスプリング作用部のずれ(段差)がなくなっていることが外観上わかる廻り止め機能を備えている形態も知られている。
【0005】
また、部材間の締結構造として、(4)ワッシャーに係止フックを設けると共に、折り曲げ部を設けて、前記係止フックを締結物の側面に係止させ、折り曲げ部をボルト頭部側に折り曲げて、前記折り曲げ部により廻り止め機能をもたせる回り止めワッシャーを使用した部材相互間の締結構造も知られている(例えば、特許文献3参照 特開2002−39141号公報)。
【0006】
また、防護柵における支柱の固定構造として、(5)前記支柱におけるベースプレートを、道路体近傍のコンクリート基礎に埋め込み固定の雌ねじ金具またはアンカーボルトに固定する固定構造として場合、ボルトまたはナットの弛み止めとして、ボルト頭部またはナットと平ワッシャの間に、さらにスプリングワッシャを介在させて、ボルトまたはナットを締付ける際に、このスプリングワッシャの本体の段差部がなくなるまで(スプリング作用がなくなるまで)締付けることによって廻り止め機能を果たし、軸方向のスプリング作用部のずれ(段差)がなくなっていることが外観上わかる廻り止め機能を備えている形態も知られている。
【特許文献1】実開昭60−50219号公報
【特許文献2】実公昭63−38265号公報
【特許文献3】特開2002−39141号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記(1)および(2)従来の場合は、ブラケットまたはビーム側に特殊な加工が必要になるので、コストアップの要因になるという問題があり、また、前記(3)および(5)の場合には、スプリング作用がなくなるまで締め付けると、軸方向のスプリング部のずれ(段差)がなくなっていることが外観上わかるので、回り止め機能が働いていることが判別できるが、より簡単に外観上判別できる廻り止め機能を備えている形態が求められる。(4)の場合には、部材の上面と側面とが直角に外形状露出する形態では利用できるが、ほぼ筒状の部材となるビーム型の防護柵では適用できないという問題がある。
本発明は、前記の課題を有利に解決することができる防護柵継手構造および固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明の防護柵継手構造においては、支柱とビームを接合する防護柵継手構造であって、
支柱とビームの接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、これらに軸部が挿通されるボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなることを特徴とする。
【0009】
また、第2発明の防護柵継手構造では、支柱とビームを接合する防護柵継手構造であって、
支柱と、インナースリーブと、そのインナースリーブの外側に嵌合したビームを備え、
支柱の上端部にはブラケットが固設され、このブラケットにインナースリーブを内挿した前記ビームが載置され、
支柱のブラケットとビームとインナースリーブとを接合する接合部Aと、ビームとインナースリーブとを接合する接合部Bの少なくとも一方の接合部を接合金具で接合してなり、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、これらに軸部が挿通されるボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、前記ブラケットまたは支柱側に係合して回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなる。
【0010】
また、第3発明では、第1発明の防護柵継手構造において、舌片付き座金における舌片が周方向に複数設けられ、いずれか一つの舌片が折り曲げられて、ストッパが形成されている。
【0011】
また、第4発明では、第1または第2発明の防護柵継手構造における舌片付き座金における舌片の折り曲げによるストッパに代えて、折り曲げのない舌片によるストッパとされている。
【0012】
また、第5発明の防護柵の固定構造では、防護柵の支柱を基礎に埋め込み固定されたアンカーボルトに接合金具により固定する防護柵の固定構造において、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ナットを備え、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ナットに係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなることを特徴とする。
【0013】
また、第7発明の防護柵の固定構造では、第1発明〜第5発明のいずれかの防護柵継手構造を備えた防護柵であって、前記防護柵の支柱を基礎に埋め込み固定されたアンカーボルトに接合金具により固定する防護柵の固定構造において、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
第1発明によると、支柱とビームの接合金具に、舌片付き座金と、回転止め座金と、ボルトとからなる接合金具を使用して、舌片付き座金における長尺の舌片を支柱または支柱に固定される部材に係合させて舌片付き座金を回転不能にすることができる。また、他の舌片を折り曲げて、ストッパを形成することができるため、回転止め座金がボルトと共に回転しても、回転止め座金におけるアームが、前記ストッパに係合して、回転止め座金およびボルトの緩みを防止することができる。
【0015】
また、特に第1発明の場合には、舌片付き座金は、長い舌片を備えているので、これを支柱側に係合させて、その回転を防止することができ、そのため舌片付き座金のストッパに係合する回転止め座金のアームの回転を防止して、回転止め座金の支承部にボルトが挿通配置された状態では、通常の座金と異なり、舌片付き座金のみが回転することがないため、これに形成されたストッパの位置が変わることがなく、確実に、回転止め座金およびボルトの緩み止めを図ることができる。
また、回転止め座金におけるアームと、舌片付き座金におけるストッパとは、外観に現れており、ボルトを締め込んだ後、舌片付き座金における舌片を折り曲げてストッパを形成するだけでよく、また、これらが係合して廻り止め機能を果たす位置関係にあるか否か容易に判別することができ、セッティング作業および管理作業が容易になる。
【0016】
第2発明によると、支柱のブラケットとビームとインナースリーブとの接合部A、またはビームとインナースリーブとの接合部Bの一方または両方の接合部に、舌片付き座金と、回転止め座金と、ボルトとからなる接合金具を使用して、舌片付き座金をブラケットまたは支柱のウエブに係合させて舌片付き座金を回転不能にすることができる。 また、第2発明によると、長い舌片を有する舌片付き座金を使用しているので、長い舌片をブラケットまたは支柱あるいは支柱に固定される隣接する長尺の舌片などの部材に係合させて舌片付き座金の回転を防止することができる。
【0017】
また、第3発明では、舌片付き座金における舌片が周方向に複数設けられ、いずれか一つの舌片が折り曲げられて、ストッパが形成されているので、舌片付き座金における舌片の一つと回転止め座金におけるアームとが同じ位置にあっても、他の舌片を折り曲げてストッパを形成することができる。
【0018】
また、第4発明では、第1発明または第2発明の防護柵継手構造における舌片付き座金における舌片の折り曲げによるストッパに代えて、折り曲げない舌片によるストッパとされているので、舌片付き座金の構成を単純にし、その製作が容易になり、舌片付き座金の舌片を外向きに折り曲げないので、外向きに突出する突出部が生じることがない。そして、外側に配置される回転止め座金のアームをビーム側に向って内向きに折り曲げればよいので、折り曲げも容易である。
【0019】
また、第5発明によると、支柱と基礎に埋め込み固定されたアンカーボルトとの接合金具に、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ナットを備えた接合金具を使用し、しかも長尺の舌片を有する舌片付き座金を使用しているので、舌片付き座金が回転した場合、舌片付き座金における長尺の舌片を支柱または支柱に固定される部材に突き当たらせて舌片付き座金を回転不能にすることができる。また、他の舌片を折り曲げて、ストッパを形成することができるため、回転止め座金がナットと共に回ろうとしても、回転止め座金におけるアームが、前記ストッパに係合して、回転止め座金およびナットの緩みを防止することができる。
【0020】
また、特に舌片付き座金は、長い舌片を備えているので、これを支柱側に係合させて、その回転を防止することができ、そのため舌片付き座金のストッパに係合する回転止め座金のアームの回転を防止し、また、舌片付き座金のみが回転することがないため、これに形成されたストッパの位置が変わることがなく、確実に、回転止め座金およびナットの緩み止めを図ることができる。
また、回転止め座金におけるアームと、舌片付き座金におけるストッパとは、外観に現れており、ナットを締め込んだ後、舌片付き座金における舌片を折り曲げてストッパを形成するだけでよく、また、これらが係合して廻り止め機能を果たす位置関係にあるか否か容易に判別することができ、セッティング作業および管理作業が容易になる。
【0021】
また、第6発明によると、支柱と基礎に埋め込み固定された雌ねじ金具との接合金具に、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ボルトとからなる接合金具を使用し、しかも長尺の舌片を有する舌片付き座金を使用しているので、舌片付き座金が回転した場合、舌片付き座金における長尺の舌片を支柱または支柱に固定される部材に突き当たらせて舌片付き座金を回転不能にすることができる。また、他の舌片を折り曲げて、ストッパを形成することができるため、回転止め座金がボルトと共に回ろうとしても、回転止め座金におけるアームが、前記ストッパに係合して、回転止め座金およびナットの緩みを防止することができる。
また、特に舌片付き座金は、長い舌片を備えているので、これを支柱側に係合させて、その回転を防止することができ、そのため舌片付き座金のストッパに係合する回転止め座金のアームの回転を防止し、また、舌片付き座金のみが回転することがないため、これに形成されたストッパの位置が変わることがなく、確実に、回転止め座金およびボルトの緩み止めを図ることができる。
また、回転止め座金におけるアームと、舌片付き座金におけるストッパとは、外観に現れており、ボルトを締め込んだ後、舌片付き座金における舌片を折り曲げてストッパを形成するだけでよく、また、これらが係合して廻り止め機能を果たす位置関係にあるか否か容易に判別することができ、セッティング作業および管理作業が容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1〜図6は本発明の一実施形態の橋梁用等の防護柵継手構造を示し、図7は前記防護柵継手構造に使用される一形態の回転止め座金の部品図を、図8は舌片付き座金の部品図を示すものである。
【0023】
まず、本発明において使用する主要な部品について説明する。図7は、鋼製等の回転止め座金8を示すものであって、ボルト軸部挿通孔9を有する本体10の外周側に、等角度間隔おいて本体10から起立された、ボルト頭部外側面に係合する回り止め片11が複数(図示の場合は、120°間隔をおいて3つ)設けられ、前記各回り止め片11の内面側によって形成された溝内に六角ボルト4の頭部5が配置され、前記各回り止め片11の内面側が、図1および図5並びに図6に示すように、六角ボルト4等のボルト頭部5の多角形外側面12に近接または係合されるように構成されている。
【0024】
前記本体10における一対の回り止め片11間において、本体10と同面状で、本体10の半径方向外側に延長するように、廻り止め用のアーム13が設けられている。この廻り止め用のアーム13は、後記する舌片付き座金14における折り曲げ形成されたストッパ29に係合されるようにされる部分である。
【0025】
図8は、前記回転止め座金8の下側に配置される、鋼製等の舌片付き座金14を示すものであって、この舌片付き座金14は、座金本体であり、かつ前記回転止め座金8を支承する部分でもある座金支承部15を有しており、その座金支承部15には、ボルト軸部挿通孔17からなる接合穴が設けられていると共に、座金支承部15の外周側には、座金支承部15と同面状で、前記ボルト軸部挿通孔17の中心から半径方向外側に突出する複数の短尺の舌片18と、下面が円弧状に湾曲する円弧状下面部16aを有する長尺の舌片16とを、所定の角度間隔をおいて備えている。各座金支承部15に設けられた短尺の各舌片18および長尺の舌片16は、各座金支承部15において等角度間隔をおいて設けると、舌片付き座金14の製作が容易になる。
【0026】
前記長尺の舌片16の下面の円弧状下面部16aは、先端部が座金支承部15の下面よりも、後記する少なくとも支柱1に設けられるブラケット2の板厚以上、下位に位置する下面レベルとされ、このようにすることにより、前記長尺の舌片16がブラケット2またはビーム3の円弧状外面に沿って設置可能にされている。長尺の舌片16の先端部16bには、折り返し部が形成されて、舌片16の先端角部がブラケット2またはビーム3に接触して、傷がつかないようにされている。図示の形態では、円弧状下面部16aの曲率半径は、ブラケット2またはビーム3の円弧状外面の曲率半径よりも小さくされて、ブラケット2またはビーム3の半径方向外面に弾性的に圧着される。前記の長尺の舌片16は長尺の帯板状であるので、その先端部が横方向にブラケット2またはビーム3に、点接触ではなく、線接触または面接触されるので、これらの接触形式によっても、長尺の舌片16自身の回転が防止される。
【0027】
また、前記座金支承部15中心と、長尺の舌片16先端部までの寸法は、ビーム3に取付けられる舌片付き座金14にあっては、ビーム3に設けられる外側に一致する接合穴中心と、ブラケット2までの寸法L(図5A参照)よりも長い寸法とされて、長尺の舌片16が回転した場合に、ブラケット2の軸方向の側面に係合し廻り止めされるようにされる。また、ブラケット2の外側に取付けられる舌片付き座金14にあっては、ブラケット2に設けられる接合穴中心と支柱1のウエブ21との間の寸法L1(図5B参照)よりも長く設定され、長尺の舌片16が回転した場合に支柱1のウエブ21に係合し廻り止めされるようにされる。このように、長尺の舌片16が、ブラケット2または支柱1のウエブ21に係合することにより、これらを長尺の舌片16のストッパとして機能させ、これに係合する舌片付き座金14の回転を防止している。
【0028】
また、各座金支承部15に、複数の舌片18を周方向に偏心した位置に複数設ける理由は、一方の舌片18に、前記回転止め座金8における廻り止め用のアーム13が重なるようになった場合に、前記一方の舌片18を折り曲げることができなくなるため、複数の舌片18を設けて、いずれか他方の舌片18を前記廻り止め用のアーム13と重ならないようにし、その他方の舌片18を折り曲げ可能にするためである。ただし、ボルトの締め込みを強くして、前記各舌片18からアーム13が離れた位置とすることも可能であり、このような場合には、1つの舌片18でもよい。
【0029】
このように舌片18をアーム13の幅以上の間隔をおいて複数設けることにより、回転止め座金8における廻り止め用のアーム13が、ボルトと共に締め付けるように回転されて、いずれの位置に停止しても、一つの舌片18をボルト頭部側に起立させるように折り曲げて、振動等によるボルト4の弛みが生じた場合に、ボルト4と共に廻り止め用のアーム13が回転した場合でも、前記廻り止め用のアーム13が、起立された他方の舌片18に係合し、廻り止め用のアーム13の回転が阻止され、回転止め座金8を介してこれに回転不能に係合するボルト4の回転を防止し、ボルト4の弛み止めを図ることが可能にされている。
【0030】
次に、図1〜図6を参照して、図7および図8に示す前記の回転止め座金8と、複数の座金支承部15を有する舌片付き座金14とを使用した本発明の防護柵継手構造を説明する。なお、図6(A)および(B)に、回転止め座金におけるアームが舌片付き座金における舌片と重ならない位置である場合の図1(A)(B)に相当する図が示されている。
【0031】
橋梁等の道路側部に沿って、断面H形の鋼製の支柱1が間隔をおいて設置され、その支柱1の上端部は、道路側に向って位置する内側フランジ20の上端部が所定の低レベル位置に配置されると共に、ウエブ21が円弧状に切り欠かれ、かつ横向きに屈曲するように反対側に位置する外側フランジ22が設けられて、これらに支承されるように道路側に向って窪む、断面円弧状の鋼製のブラケット2の背面側が溶接W等により固設されている。
【0032】
前記ブラケット2には、支柱1のフランジ20,22とウエブ21により形成される両側の溝内に位置するように、ボルト軸部挿通用孔からなる接合穴23がそれぞれ一つ設けられている。
【0033】
前記ブラケット2には、端部にインナースリーブ19を内挿した直列配置の各ビーム3の端部が載置され、前記インナースリーブ19には、部材長手方向に間隔をおいて、部材軸方に2つづつ合計4つのボルト接合穴(第1の接合穴が2つと、第2の接合穴が2つ)が間隔をおいて直列に設けられている。図4に示すように、前記インナースリーブ19の軸方向内側に配置されている各接合穴(第1の接合穴)24は、それぞれ支柱1の左右両側の溝に対応した位置に設けられると共に、ブラケット2の接合穴23に対応した位置に配置され、かつ各ビーム3の軸方向外側に位置する接合穴(第1の接合穴)26に対応する位置に設けられ、これらの接合穴が利用されてボルトにより接合される接合部Aとされ、前記インナースリーブ19の軸方向外側の2つの接合穴25は、軸方向のブラケット2の外側に位置し、インナースリーブ19の接合穴25と各ビーム3の接合穴(第2の接合穴)27が同心に配置され、これらの接合穴が利用されてボルトにより接合される接合部Bとされる。
【0034】
前記インナースリーブ19の各接合穴は、図示のように、ボルト軸部挿通孔およびこれと同心状に内面に固定されたナット28の雌ねじ孔により構成されるか、前記インナースリーブ19に直接設けられる雌ねじ孔(図示を省略した)により構成される。
【0035】
前記のように、インナースリーブ19と各ビーム3の各接合穴24(25),26(27)が配置された状態で、前記各ビーム3の接合穴および前記ブラケット2の接合穴にそれぞれ舌片付き座金14を配置すべく、支柱1の左右両側において、それぞれ舌片付き座金14の各座金支承部15の孔に、回転止め座金8を装着した六角ボルト4の軸部が挿通され、各六角ボルト4の軸部30にさらにスプリングワッシャ7および平ワッシャ6が順次装着された状態で、前記各六角ボルト4の軸部30が各接合孔に挿通されると共に、インナースリーブ19の接合穴24(25)を構成するナット28の雌ねじ孔にねじ込まれて、ブラケット2とインナースリーブ19と各ビーム3とが一体化される。
【0036】
前記六角ボルト4を回動するときには、その六角頭部に装着されている回転止め座金8における回り止め片11の外側から回動工具により回転止め座金8と共に回動されて締め込まれ、所定の値に締め込まれた状態で、前記回転止め座金8における廻り止め用のアーム13から外れた位置となっている、前記舌片付き座金14における少なくとも一つの舌片18をボルト軸方向の頭部側に位置するように折り曲げる。
【0037】
また、ブラケット2から外れてビーム3の外面に係合している舌片付き座金14における長尺の舌片16の先端部16bは、長尺の舌片16における円弧状部が弾性変形されて、ビーム3の外面に圧着され、長尺の舌片16の弾性変形による圧着により、これに当接して設けられる回転止め座金8およびボルト4の廻り止めを図っている。また、ブラケット2の外面に係合している舌片付き座金14における長尺の舌片16の先端部16bは、その円弧状ブラケットが弾性変形されて、ブラケット2の外面に圧着され、前記と同様に、回転止め座金8およびボルト4の廻り止めを図っている。
【0038】
前記のように、少なくと一つの舌片18を折り曲げることにより、廻り止め用のアーム13の回転可能な範囲において交差する位置に、舌片18によるストッパ29が形成される。
【0039】
前記のように、舌片18によりストッパ29が形成されることにより、回転止め座金8と共にボルト4が回転した場合には、廻り止め用のアーム13がストッパ29に係合して回転が阻止され、ボルト4の回転による弛みが防止される。前記本発明のように、アーム13とストッパ29が外観上明確に現れているため、ボルトの弛み止め機能が作用していることを簡単に点検することができるので、管理が容易である。
【0040】
次に、図9から図13を参照して、前記実施形態と同様な接合金具を使用し、防護柵における支柱1を道路橋における基礎コンクリート40に埋め込み固定されたアンカーボルト41(図9の場合)または雌ねじ金具42(図12の場合)に固定する固定構造について説明する。なお、同様な要素には同様な符号を付して説明を簡単にする。
【0041】
図9〜図11は、防護柵における支柱1を、基礎コンクリート40に埋め込み固定されたアンカーボルト41に接合金具により固定する防護柵の固定構造の形態を示したもので、接合金具は、舌片付き座金14と、回転止め座金8およびナット43から構成している。図2に示す実施形態のボルト4がナット43に置き換えられている。
【0042】
コンクリート製基礎40に、前後方向および左右方向に間隔をおいて複数のアンカーボルト41の下部が埋め込み固定され、各アンカーボルト41に、防護柵における支柱1のベースプレート44の前後左右の4つのボルト挿通孔(接合穴)がそれぞれ挿通されるように、支柱1が基礎コンクリート40上に載置され、ベースプレート44の上面に、平ワッシャ6と、スプリングワッシャ7と、舌片付き座金14と、回転止め座金8およびナット43が配置されている。前記の舌片付き座金14と、回転止め座金8とは、前記実施形態と同じ構成であるので、同様な符号を付している。回転止め座金8における各回転止め片11を六角ナット43の多角形外側面12に係合して、回転止め座金8を前記ナット43に装着してこれらをアンカーボルト41にねじ込み装着するようにすればよい。
【0043】
この形態では、各アンカーボルト41が舌片付き座金14の各ボルト軸部挿通孔17に挿通され、その回転が防止され、舌片付き座金14のストッパ29に係合する回転止め座金8の廻り止め用アーム13により、回転止め座金8を介してナット43の弛み回転を防止している。
【0044】
この形態では、アンカーボルト41にねじ込み固定される部材がナット43であるために、このナット43の回り止めを確実に図るようにしている。防護柵の支柱1の固定構造としてより信頼性の高い固定構造とすることができる。
【0045】
図12および図13の形態では、防護柵における支柱1を道路橋における基礎コンクリート40に埋め込み固定された雌ねじ金具42に固定する形態が示されている。雌ねじ金具42は基礎コンクリート40に埋め込み固定されたアンカーボルト41の上部に雌ねじ金具42の下部がねじ込み固定され、必要に応じ溶接により固定されている。この形態では、接合金具は、舌片付き座金14と、回転止め座金8およびボルト4から構成している。
【0046】
コンクリート製基礎40に、前後方向および左右方向に間隔をおいて複数の雌ねじ金具42が埋め込み固定され、各雌ねじ金具42に、防護柵における支柱1のベースプレート44のボルト挿通孔がそれぞれ位置するように、支柱1がコンクリート基礎40上に載置され、ベースプレート44の上面に、平ワッシャ6と、スプリングワッシャ7と、舌片付き座金14と、回転止め座金8およびボルト4が配置されている。前記の舌片付き座金14と、回転止め座金8およびボルト4は、図2に示す前記実施形態と同様な構成であるので、同様な符号を付している。各ボルト4が、雌ねじ金具42にねじ込まれて、ベースプレート44をコンクリート基礎40に固定している以外は、図2に示す形態と同様である。
【0047】
この形態でも、図9に示す形態と同様に、各ボルト4が舌片付き座金14の各ボルト軸部挿通孔17に挿通されて、舌片付き座金14の回転が防止され、舌片付き座金14のストッパ29に係合する回転止め座金8の廻り止め用アーム13により、回転止め座金8を介してボルト4の弛み回転を防止している。
【0048】
この形態では、雌ねじ金具42にねじ込み固定される部材がボルト4であるために、このボルト4の回り止めを確実に図るようにしている。防護柵の支柱1を固定するボルト4の緩みが生じない信頼性の高い固定構造とすることができる。
【0049】
前記実施形態では、舌片付き座金14における各座金支承部15に2つの舌片18を設けるようにしているが、本発明を実施する場合、各座金支承部15に1つの舌片18を設けるようにしてもよい。この場合には、適宜回転止め座金8におけるアーム13を前記舌片18から外れた位置に設定すればよい。また、舌片18を等角度等の間隔をおいて3つ以上設けて、アーム13と舌片18によるストッパ29を早期に係合して、ボルト4の弛み止めを図るようにしてもよい。
【0050】
また、本発明実施する場合、舌片付き座金14における舌片と、回転止め座金8におけるアーム13とは、いずれか一方が折り曲げられてストッパ機能を果たすようになればよいので、舌片付き座金における舌片の折り曲げによるストッパに代えて、折り曲げられない舌片によるストッパとされていてもよい。舌片付き座金における舌片を外側に折り曲げてもよいが、回転止め座金におけるアームを内向きに折り曲げてもよい。舌片の折り曲げにより、外向きに突出部が生じる場合に比べて、内向きに突出部が隠れるようにした方が、美観上好ましいが、保守・点検あるいは防錆塗装上は、舌片の外向き折り曲げが有利である。
【0051】
また、本発明を実施する場合、ボルト頭部(またはナット)と回転止め座金との非回転の係合関係は、前記実施形態のように回転止め座金の折り曲げ片としてもよいが、これに代えて、ボルト頭部(またはナット43)に係合し、互いに相対的に回転しないような六角凹部等の非回転係合部を回転止め座金に設け、前記非回転係合部と同心状に、ボルト軸部挿通孔とを設けるようにしてもよい。
【0052】
また、本発明を実施する場合、回転止め座金8とボルト4の頭部(またはナット43)との当接面を粗面として、ボルト(またはナット43)の初期の廻り止めを図るようにしてもよい。
【0053】
本発明を実施する場合、ビームとしては、前記実施形態の円形断面のビームに代えて、楕円形断面あるいは角形断面のビームとしてもよく、角形断面のビームの場合には、ブラケットを平板状あるいはL型断面状にすればよく、また、舌片付き座金14における下面が円弧状に湾曲する円弧状下面部16aを有する長尺の舌片16または平坦状の下面部16aを有する長尺の舌片16とすればよい。
【0054】
なお、本発明の防護柵継手構造および固定構造は、新設の防護柵における継手構造または固定構造ばかりでなく、既存の防護柵における継手構造あるいは固定構造に適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】(A)は本発明の一実施形態の防護柵継手構造を示す一部縦断背面図、(B)はその一部の拡大図である。
【図2】(A)は図1に示す防護柵継手構造の縦断側面図、(B)は(A)の一部を拡大して示す図である。
【図3】(A)および(B)は、図1に示す防護柵継手構造におけるボルト等を分解して示す一部分解側面図および斜視図である。
【図4】インナースリーブとブラケットとビームの関係の一部を示す横断平面図である。
【図5】(A)はビーム側に配置された舌片付き座金がブラケットに係合して、その回転が防止されることを説明するための説明図、(B)は舌片付き座金が支柱のウエブに係合して、その回転が防止されることを説明するための説明図である。
【図6】(A)および(B)は、回転止め座金におけるアームが舌片付き座金における舌片と重ならない位置である場合の図1(A)(B)に相当する図である。
【図7】回転止め座金を示すものであって、(A)は正面図、(B)は底面図である。
【図8】舌片付き座金を示すものであって、(a)は正面図、(b)は平面図である。
【図9】防護柵における支柱の固定構造の一形態を示す縦断側面図である。
【図10】図9の一部横断平面図である。
【図11】コンクリート基礎に埋め込み固定されたアンカーボルトと支柱との関係を示す概略斜視図である。
【図12】防護柵における支柱の固定構造の他の形態を示す縦断側面図である。
【図13】図12の一部横断平面図である。
【図14】従来の防護柵継手構造を示す一部分解斜視図である。
【符号の説明】
【0056】
1 支柱
2 ブラケット
3 ビーム
4 ボルト
5 ボルト頭部
6 平ワッシャ
7 スプリングワッシャ
8 回転止め座金
9 ボルト軸部挿通孔
10 本体
11 回転止め
12 多角形外側面
13 廻り止め用のアーム
14 舌片付き座金
15 座金支承部
16 長尺の舌片
16a 円弧状下面部
16b 先端部
17 ボルト軸部挿通孔
18 舌片
19 インナースリーブ
20 内側フランジ
21 ウエブ
22 外側フランジ
23 ブラケットの接合穴
24 インナースリーブの第1の接合穴
25 インナースリーブの第2の接合穴
26 ビームの第1の接合穴
27 ビームの第2の接合穴
28 ナット
29 ストッパ
40 基礎コンクリート
41 アンカーボルト
42 雌ねじ金具
43 ナット
44 ベースプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱とビームを接合する防護柵継手構造であって、
支柱とビームの接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、これらに軸部が挿通されるボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなる
防護柵継手構造。
【請求項2】
支柱とビームを接合する防護柵継手構造であって、
支柱と、インナースリーブと、そのインナースリーブの外側に嵌合したビームを備え、
支柱の上端部にはブラケットが固設され、このブラケットにインナースリーブを内挿した前記ビームが載置され、
支柱のブラケットとビームとインナースリーブとを接合する接合部Aと、ビームとインナースリーブとを接合する接合部Bの少なくとも一方の接合部を接合金具で接合してなり、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、これらに軸部が挿通されるボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、前記ブラケットまたは支柱側に係合して回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなる
防護柵継手構造。
【請求項3】
舌片付き座金における舌片が周方向に複数設けられ、いずれか一つの舌片が折り曲げられて、ストッパが形成されてなる請求項1または2に記載の防護柵継手構造。
【請求項4】
請求項1または2における舌片付き座金における舌片の折り曲げによるストッパに代えて、折り曲げない舌片によるストッパとされてなる防護柵継手構造。
【請求項5】
防護柵の支柱を基礎に埋め込み固定されたアンカーボルトに接合金具により固定する防護柵の固定構造において、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ナットを備え、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ナットに係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなる
防護柵の固定構造。
【請求項6】
防護柵の支柱を基礎に埋め込み固定された雌ねじ金具に接合金具により固定する防護柵の固定構造において、
該接合金具は、舌片付き座金と、これに重ねられる回転止め座金と、ボルトとからなり、
前記舌片付き座金は、接合穴を有する座金支承部を備えていると共に、支柱または支柱に固定された部材に突き当たり回転が阻止される長尺の舌片と、折り曲げられて回転止め座金におけるアームに係合する舌片によるストッパとを一体に備えており、
前記回転止め座金は、ボルト頭部に係合してその回転を規制する折り曲げ片を備え、かつ前記ストッパに係合可能なアームを備えてなる
防護柵の固定構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−23599(P2007−23599A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−206789(P2005−206789)
【出願日】平成17年7月15日(2005.7.15)
【出願人】(000231110)JFE建材株式会社 (150)
【出願人】(000192615)神鋼建材工業株式会社 (61)
【出願人】(000101949)住友金属建材株式会社 (44)
【出願人】(000003528)東京製綱株式会社 (139)
【出願人】(000006839)日鐵住金建材株式会社 (371)
【Fターム(参考)】