説明

限定された空間を有する構造における同期的なロボット動作

【課題】主翼ボックスの組立てのように、ある作業が構造の反対側で同時に行われる作業の自動システムを提供すること。
【解決手段】構造は限定された空間の内部及び限定された空間の外部から識別可能な位置を有する。第1のロボットシステムは第1のエンドエフェクタが所定の位置上に位置付けられるように限定された空間内で第1のエンドエフェクタを動かす。その位置に対応する第1のベクトルが発生される。第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタが前記位置上に位置付けられるように限定された空間の外部で第2のエンドエフェクタを動かす。その位置に対応する第2のベクトルが発生される。第1および第2のベクトルは第1及び第2のエンドエフェクタが対向して動作するように第1及び第2のエフェクタを新しい位置に動かすために使用される。第1及び第2のエンドエフェクタは新しい位置で同期的に動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は限定された空間を有する構造における同期的なロボット動作に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の組立て期間中、ある動作が構造の反対側で同時に行われる。主翼ボックスにおける固定動作を考慮する。主翼ボックス外部のロボットシステムは穿孔、皿穴開け、ファスナ挿入作業を行う。主翼ボックス内の人員がこれらの仕事をサポートし、さらにロボットシステムがファスナを保持している間に挿入されたファスナにスリーブ及びナットを配置する。
【0003】
手作業をなくし、このような固定動作を完全に自動化することが望ましい。ボルトのねじ山にナットを設置することは人間にとっては簡単であるが、ロボットシステムではそれ程簡単ではない。ボルト上にナットを正確に位置させて配向することは複雑な作業である。
【0004】
ロボットシステムはナットを限定された空間中で取付けなければならないので、この作業はより一層複雑である。ロボットシステムはアクセス穴を通して限定された空間に入らなければならないので、この作業はより一層複雑である。航空機の許容度は極めて厳しいので、この作業はより一層複雑である。限定された空間内のロボットシステムは作業を限定された空間の外部のロボットシステムの作業と同期しなければならないので、この作業はより一層複雑である。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態によれば、十分に自動化された方法が限定された空間を有する構造で行われる。その構造は限定された空間の内部及び限定された空間の外部からは識別可能ではない位置を有する。第1のロボットシステムは第1のエンドエフェクタがその位置上に位置されるように限定された空間内で第1のエンドエフェクタを動かす。その位置に対応する第1のベクトルが発生される。第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタがその位置上に位置されるように限定された空間の外部で第2のエンドエフェクタを動かす。その位置に対応する第2のベクトルが発生される。第1および第2のベクトルは第1及び第2のエンドエフェクタが対向して動作するように第1及び第2のエフェクタを新しい位置に動かすために使用される。第1及び第2のエンドエフェクタは新しい位置で同期動作を行う。
【0006】
ここでの別の実施形態によれば、構造の限定された空間内にエンドエフェクタを位置させる方法は、構造のアクセスポートを通って限定された空間へエンドエフェクタを動かすためにコンプライアントなロボットアームを使用し、限定された空間内の表面の位置上にエンドエフェクタをおおよそに位置付けるためにロボットアームを使用し、エンドエフェクタを表面に対して加圧するためにロボットアームを使用し、エンドエフェクタを位置に正確に位置させるために表面に沿ってエンドエフェクタをシフトするためにエンドエフェクタに取付けられた装置を使用することを含んでいる。
【0007】
ここでの別の実施形態によれば、方法は航空機の予め組み立てられた主翼ボックス上で行われる。予め組み立てられた主翼ボックスは複数のファスナを含んでいる。第1のロボットシステムは第1及び第2の仮のファスナ上で主翼ボックス内の第1のエンドエフェクタを動かし、第1及び第2のファスナに対して第1のベクトルを発生する。第2のロボットシステムは第1及び第2のファスナ上で主翼ボックスの外部の第2のエンドエフェクタを動かし、第1及び第2のファスナに対する第2のベクトルを発生する。第1及び第2のベクトルは第1及び第2のファスナ間の永久ファスナ位置を計算するために使用される。第1のロボットシステムの永久ファスナ位置は第1のベクトルから計算され、第2のロボットシステムの永久ファスナ位置は第2のベクトルから計算される。
【0008】
15.複数のファスナにより予め組み立てられる航空機の予め組み立てられた主翼ボックスで行われる方法において、
第1及び第2のファスナ上で主翼ボックス内部の第1のエンドエフェクタを動かし、第1及び第2のファスナに対する第1のベクトルを発生するために第1のロボットシステムを使用し、
第1及び第2のファスナ上で主翼ボックスの外部の第2のエンドエフェクタを動かし、第1及び第2のファスナに対する第2のベクトルを発生するために第2のロボットシステムを使用し、
第1及び第2のファスナ間の永久ファスナ位置を計算するために第1及び第2のベクトルを使用するステップを含み、第1のロボットシステムの永久ファスナ位置は第1のベクトルから計算され、第2のロボットシステムの永久ファスナ位置は第2のベクトルから計算される方法。
【0009】
16.さらに、第1のエンドエフェクタを主翼ボックス内の永久ファスナ位置に動かすために第1のロボットシステムを使用し、第2のエンドエフェクタを主翼ボックス外の対応する永久ファスナ位置に動かすために第2のロボットシステムを使用し、それぞれの位置で同期組立て動作を行うためにエンドエフェクタを使用するステップを含んでいる請求項15記載の方法。
【0010】
17.さらに第1及び第2のロボットシステムを使用する前に、主翼ボックスを予め組み立てることを含む請求項15記載の方法。
【0011】
18.主翼ボックスは機器を備えたファスナで予め組み立てられ、第1及び第2のベクトルは第1及び第2のファスナから生じるビーコンの方向を感知することにより生成される請求項17記載の方法。
【0012】
19.第1及び第2のロボットシステムに請求項15記載の方法を実行させるためのデータによって符合化されているコンピュータメモリを具備するアーティクル。
【0013】
20.第1及び第2のロボットシステムと、第1及び第2のロボットシステムに請求項15記載の方法を実行させるためのロボット制御装置を具備しているシステム。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は第1及び第2のロボットシステムとロボット制御装置を含んでいるシステムを示す図である。
【図2】図2はロボットシステムの動作方法を示す図である。
【図3a】図3aは限定された空間内での正確な配置のための装置を示す図である。
【図3b】図3bは限定された空間内での正確な配置のための方法を示す図である。
【図4】図4は航空機の主翼ボックスを示す図である。
【図5a】図5aはロボットシステムの動作方法を示す図である。
【図5b】図5bはロボットシステムの動作方法を示す図である。
【図6】図6は2つの予め組み立てられたファスナに関する永久ファスナ位置を示す図である。
【図7】図7は固定動作を行うための方法を示す図である。
【図8】図8は隣接する限定された空間における2つのロボットアームを示す図である。
【図9】図9は航空機の製造と運用方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
限定された空間を有する構造で1以上の動作を行うための第1及び第2のロボットシステム110と120を示す図1を参照する。第1のロボットシステム110は第1のエンドエフェクタ114を限定された空間中へ動かし、限定された空間内で第1のエンドエフェクタ114を位置させ配向するための位置付け及び配向システム112を含んでいる。第2のロボットシステム120は第2のエンドエフェクタ124を限定された空間の外部で動かすための位置付け及び配向システム122を含んでいる。第1及び第2のエンドエフェクタ114と124が配向され位置付けられると、これらは1以上の動作(例えば組立て動作)を構造上で行う。
【0016】
ロボット制御装置130はロボットシステム110と120を動作するようにプログラムされたコンピュータを含むことができる。そのコンピュータは第1及び第2のロボットシステム110と120に命令するためのデータにより符合化されたコンピュータメモリを含んでいる。
【0017】
限定された空間を有する構造上で同期動作を行うために第1及び第2のロボットシステム110と120を動作する方法を示す図2を参照する。その構造は限定された空間内および限定された空間の外部から識別可能な位置を有する。その位置は限定ではないが、視覚手段(例えばマーク、ファスナ又は穴或いはその他の構造の特徴)、磁石手段(例えば埋設磁石による)、或いは(以下説明する)機器を備えたファスナにより識別されることができる。
【0018】
ブロック210で、第1のロボットシステム110は第1のエンドエフェクタ114を限定された空間中へ動かすように命令され、それによって第1のエンドエフェクタ114は位置上に配置される。第1のエンドエフェクタ114が位置付けられると、第1のロボットシステム110は第1のベクトルをロボット制御装置130へ通信する。第1のベクトルは位置情報(例えばx−y座標)および/または(表面の法線に関する)角度方位を含むことができる。
【0019】
第1のエンドエフェクタ114の配置位置の正確度は用途特定である。例えば航空機アセンブリの正確度は他のタイプの産業アセンブリよりも高い。
【0020】
ブロック220で、第2のロボットシステム120は第2のエンドエフェクタ124を限定された空間の外部で動かすように命令され、それによって第2のエンドエフェクタ124は位置上に位置付けられる。第2のエンドエフェクタ124が位置されると、第2のロボットシステム120は第2のベクトルをロボット制御装置130へ通信する。第2のベクトルは位置情報および/または角度方位を含むことができる。
【0021】
したがって2つのベクトルはロボット制御装置130へ通信される。第1のベクトルは第1のロボットシステム110の基準のフレームとして使用される。同様に、第2のベクトルは第2のロボットシステム120の基準のフレームとして使用される。
【0022】
ブロック230で、第1及び第2のロボットシステム110と120は第1及び第2のエンドエフェクタ114と124をそれぞれ新しい位置へ動かすために第1及び第2のベクトルをそれぞれ使用する。この新しい位置で、第1及び第2のエンドエフェクタ114と124は対向動作し、即ち第1のエンドエフェクタ114は限定された空間の内部で、第2のエンドエフェクタ124は限定された空間の外部で対向して動作する。
【0023】
ブロック240で、第1及び第2のエンドエフェクタ114と124は新しい位置で同期的に動作を行うように指令される。例えば同期組立て動作が新しい位置で行われることができる。
【0024】
したがって図2の方法を使用して、第1のエンドエフェクタ114が限定された空間の外部から見えなくても、同期的な動作は構造上で行われることができる。さらに同期動作はロボットシステム110と120が単一の固定された基準フレームをもたなくても行われることができる。
【0025】
図2の方法は自律的に行われることができる。このような自律動作は手作業の組立てを減少させ、なくすことさえできる。
【0026】
図2の方法は単一位置から基準フレームを得ることに限定されない。構造が限定された位置の内部および外部から見える多数の位置を含むならば、2以上の位置は基準フレームを設定するために使用されることができる。基準フレームを設定するために2つの位置を使用する例を以下説明する。
【0027】
限定された空間内で第1のエンドエフェクタの正確な位置付けを実現するための装置310と方法を示す図3aと3bを参照する。装置310は多くの自由度を有する長いコンプライアントなアーム312を含んでいる。このようなアームの1例はスネークアームである。第1のエンドエフェクタはロボットアーム312の自由端にある。装置310はさらに第1のエンドエフェクタに取付けられた位置付け装置314を含んでいる。
【0028】
ブロック310で、コンプライアントなアームは限定された空間の内部の表面の位置上に第1のエンドエフェクタの粗位置付けのために使用される。その位置はアームのコンプライアンスにより粗位置である。
【0029】
ブロック320で、ロボットアーム312は第1のエンドエフェクタを表面に対して加圧される。第1のエンドエフェクタと表面の間の摩擦は第1のエンドエフェクタがアーム312のコンプライアンスによりそのx−y位置をシフトすることを阻止する。
【0030】
ブロック330で、位置付け装置314は表面に沿って第1のエンドエフェクタの位置をシフトするのに使用される。視覚システム316または他の感知装置は第1のエンドエフェクタが正確な位置に配置されるときを決定するために使用されることができる。装置314は第1のエンドエフェクタの実際の位置が位置の許容限度内になるまで第1のエンドエフェクタを繰り返しシフトするように指令されることができる。位置付け装置314はロボット制御装置130によってまたは第1のロボットシステム110に搭載された制御装置により指令されることができる。
【0031】
同期動作及び構造は特に何かに限定されない。しかし1例として、固定動作は限定された空間を有する航空機構造で行われることができる。少なくとも1つの限定された空間を有する航空機構造は主翼、水平及び垂直安定舵、貨物室、及び他の胴体室を含んでいるがそれらに限定されない。
【0032】
主翼ボックスの翼ベイ410を示す図4を参照する。主翼ボックスは外装パネル420、スパー430、およびリブ(リブは示されていない)のようなコンポーネントを含んでいる。各翼ベイ410は限定内部空間と、限定された空間に通じるアクセスポート440を有する。主翼ボックスは複数の翼ベイ410を有する。
【0033】
図2および3bの方法は予め組み立てられた主翼ボックスで永久固定動作を行うように適用されることができる。予め組み立てる期間中に、主翼ボックス部(例えばスパー、外装パネル、リブ)の接合する(即ちオーバーラップする)表面は密封剤により被覆され、共に加圧される。密封剤はまくれのない穿孔を促すため接合表面間のギャップをなくす。主翼ボックスの共に加圧された部分はその後、タックファスナにより(一時的又は永久に)固定されることができる。タックファスナはスパーを外装パネルへ、スパーをリブへ、リブを外装パネルへ固定することができる。
【0034】
幾つかの実施形態では、主翼ボックスはここで参考文献として含まれている2007年3月31日提出の米国特許出願第11/756,447号明細書で開示されている機器を備えたファスナと共に予め組み立てられることができる。1実施形態では、機器を備えたファスナは光ビーコンを発生するように構成されている1以上の光源(例えば発光ダイオード)を含んでいる。機器を備えたファスナに関する情報(例えばファスナ番号)は光ビーコン中で符合化されることができる。
【0035】
これらの機器を備えたファスナは第1のロボットシステムがファスナ位置を通って延在する軸の位置および方向を決定することを可能にする。光ビーコンは翼ベイ内及び外に向けられ、それによってこれらはロボットシステム110と120により感知されることができる。
【0036】
航空機の予め組み立てられた主翼ボックス上での永久的な固定動作を行う方法を示す図5aと5bをさらに参照する。固定動作は主翼ボックスを通るまくれのない穴を開け、ファスナが主翼ボックスに延在するように穴にファスナを挿入し、主翼ボックスからのボルトへナットを固定することを含んでいる。
【0037】
ブロック510で、第1及び第2のロボットシステムは第1の翼ベイへ動かされる。ブロック512で、第1のロボットシステムのロボットアームは翼ベイのアクセスポートを通って第1のエンドエフェクタを翼ベイ内で動かす。
【0038】
ブロック514で、第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタが第1のファスナ上に存在するまで主翼ボックスの外部で第2のエンドエフェクタを動かす。例えば第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタをおおよその位置へ動かし、(例えば視覚システムを使用して)ΔX、ΔYオフセットを決定し、オフセットが許容範囲内であるか否かを決定し、許容範囲内ではない場合には、オフセットが許容範囲内になるまで第2のエンドエフェクタの位置を調節することができる。ブロック514の機能の完了後は、第2のエンドエフェクタは第1のファスナに関して適切な平面内の位置に配置されている。
【0039】
予め組み立てられた主翼ボックスは典型的に各翼ベイで幾つかのタックファスナを有する。これらのファスナの1つを「第1」として識別する。第1の例として、ロボット制御装置は第1のエンドエフェクタが特定の位置、恐らくは第1のファスナが粗位置として配置されている位置に動かされるようにプログラムされることができる。第2の例として、視覚システムが第1のファスナを位置付けるために使用される。第3の例として、主翼ボックスは機器を備えたファスナと共に一時的に組み立てられ、そのビーコンはファスナ番号で符合化される。ビーコンの復号により、エンドエフェクタが「番号1」の機器を備えたファスナ上に位置されるか否かが決定されることができる。
【0040】
ブロック516で、第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタ上の電磁石を翼ベイの表面に垂直に配向する。例えば第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタをおおよその回転配向に動かし、表面の法線からのΔA、ΔBの角度オフセットを決定し、オフセットが許容範囲内であるか否かを決定し、許容範囲内ではないならば、オフセットが許容範囲内になるまで第2のエンドエフェクタの回転配向を調節することができる。
【0041】
表面の法線に関する方位は接触または非接触センサにより感知されることができる。例えばセンサは円に配置された(例えば0゜、90゜、180゜、270゜で)4つの検出器を有することができる。各検出器はビーコンの強度を測定する。第2のエンドエフェクタは全ての強度測定が同じになるまで動かされ、その地点で第2のエンドエフェクタは第1のファスナ上の中心に置かれ、翼ベイの表面に垂直である。
【0042】
ブロック518で、第2のロボットアセンブリは第1のファスナに関する第2のエンドエフェクタの位置および配向[X1、Y1、A1、B1]を発生し、このベクトルをロボット制御装置へ通信する。ブロック520で、第2のロボットシステムは第1のロボットシステムからの入力を待機する。
【0043】
ブロック522で、第1のロボットシステムのロボットアームは第1のエンドエフェクタを第1の第1のタックファスナ上のおおよその位置である粗位置に動かす。例えば第1のロボットシステムは第1のエフェクタを粗位置へ動かし、(例えば視覚システムを使用して)第1のファスナに対するΔXとΔYオフセットを決定し、オフセットが粗位置の許容度範囲内にあるか否かを決定し、粗位置許容度範囲内にないならば、オフセットがおおよその位置許容度内になるまで第1のエンドエフェクタの位置を調節する。
【0044】
ブロック524で第1のエンドエフェクタは第1のタックファスナ上の正確な配向方位に動かされる。例えば第1のエンドエフェクタは回転方位に動かされる。内部センサ又は読取りエンコーダがΔA、ΔB、ΔCの配向方位のオフセットを決定するために使用される。配向方位のオフセットは許容限度に比較され、配向方位はさらに配向方位オフセットが許容限度内になるまで調節される。
【0045】
ブロック526で第1のロボットシステムは第1のエンドエフェクタを主翼ボックスの内部表面に対して加圧する。表面間の摩擦は(ロボットアームのコンプライアンスにより)第1のエンドエフェクタが位置をシフトするのを阻止する。
【0046】
ブロック528で、第1のエンドエフェクタに取付けられた位置付け装置は第1のエンドエフェクタを第1のタックファスナ上の正確な位置へ動かす。例えば第1のロボットシステムは(例えば視覚システムを使用して)第1のファスナに対するΔXとΔYオフセットを決定し、オフセットが精密な位置許容限度内にあるか否かを決定し、位置許容限度内にないならば、オフセットが精密な位置許容限度内になるまで第1のエンドエフェクタの位置をシフトするように装置に命令する。
【0047】
ブロック530で、第1のロボットシステムは第1のタックファスナに関する第1のエンドエフェクタの位置及び配向方位[X1、Y1、A1、B1、C1]を生成する。このベクトルはロボット制御装置へ通信される。
【0048】
ブロック532で、第1及び第2のロボットシステムは隣接する(第2の)ファスナ上に正確に位置付けられ配向され、第2のタックファスナにおけるベクトル[X2、Y2、A2、B2、C2]と[X2、Y2、A2、B2]が発生され、ロボット制御装置へ通信される。ブロック514−530の機能はこれらが第2のファスナで行われる点を除いてここで反復されることができる。
【0049】
ブロック534で、ロボット制御装置は第1と第2のファスナ間の永久ファスナ位置を計算する。図6は第1のファスナTF1と第2のファスナTF2との間の線上に等間隔に離れた永久ファスナ位置(十字により表されている)を示している。しかしながら永久ファスナ位置はそのように限定されない。例えば永久ファスナ位置は第1のファスナTF1と第2のファスナTF2との間で曲線をたどることができる。
【0050】
ブロック536で、固定動作が各永久ファスナ位置で行われる。固定動作の1例が図7に示されている。しかしながら図5の方法はこのような固定動作に限定されない。他の固定動作は鋲留めを含んでいるがそれに限定されない。
【0051】
ブロック538−540で、最後に永久固定動作が行われた後、第1のファスナの座標は第2のファスナの座標に設定される。即ち、
[X1、Y1、A1、B1、C1]=[X2、Y2、A2、B2、C2]
[X1、Y1、A1、B1]=[X2、Y2、A2、B2]
制御はその後、ブロック532に戻る。
【0052】
翼ベイで最後の永久固定動作が行われた後、制御はブロック510へ戻り、それによって第1及び第2のロボットアセンブリは次の翼ベイに動かされ、そこで永久固定動作が行われる。方法は固定動アが主翼ボックスの各翼ベイで行われるまで継続する(ブロック542)。
【0053】
第1及び第2のロボットシステムにより行われる固定動作の1例を示している図7を参照する。固定動作には第1及び第2のエンドエフェクタをそれらのそれぞれの表面に対してクランプすることが含まれている(ブロック710)。これは例えば第1のエンドエフェクタ上のスチールプレートを磁力で引き付けるために第2のエンドエフェクタ上の電磁石を付勢することにより行われてもよい(電磁石からの磁束は共にクランプされている部品を貫通する)。
【0054】
このクランプ力は密封剤を締め出し、部品の接合表面間のギャップをなくす。これはまくれのない穿孔を容易にし、第2のエンドエフェクタはブロック720でこれを行う。第2のエンドエフェクタはブロック720で皿穴開けも行うことができる。ブロック730で、第2のエンドエフェクタは穿孔された穴を通してファスナを挿入する。
【0055】
ブロック740で、挿入されたボルトに関する第1のエンドエフェクタの位置が決定される。オフセットが許容限度内ではないならば(ブロック750)、第1のエンドエフェクタの端部の位置付け装置は第1のエンドエフェクタの位置をシフトしおよび/またはその配向方位を変化するために使用される(ブロック760)。第1のエンドエフェクタと第2のエンドエフェクタの磁気クランプ力は位置調節を可能にするために緩められることができる。
【0056】
ブロック770で、第1のエンドエフェクタはファスナの端部を終端する。例えば第1のエンドエフェクタはスリーブとナットをファスナに設置する。
【0057】
図8を参照する。他の実施形態では、第2のロボットシステム820は第1のロボットシステム810と同じ構造を有し、同じ機能を行うことができる。例えば第1のロボットシステム810及び第2のロボットシステム820は隣接するベイで第1及び第2のエンドエフェクタ814と824を動かすためのコンプライアントなアーム812と822を含み、リブ又は他の構造で上半分Rと下半分Rで固定動作を行うことができる。勿論、これらの他の実施形態は主翼ボックスに限定されず、他の隣接する限定された空間を横切って行われる同期動作に適用されることができる。
【0058】
ここでのシステムはエンドエフェクタを限定された空間内で位置付けるためのロボットアームに限定されない。例えばエンドエフェクタを限定された空間内で位置付けるためのロボットアームの代わりにクローラー(crawler)が使用されることができる。
【0059】
ここで記載した方法は固定動作に限定されない。ここで記載した方法は航空機における他の動作を行うために使用されることができる。このような動作の例には限定された空間内での密封剤適用、洗浄、塗装、検査が含まれているがこれに限定されない。
【0060】
この方法は航空機における同期動作に限定されない。例えばこの方法はコンテナ、乗用車、トラック、船、限定された空間を有するその他の構造に適用されることができる。
【0061】
航空機に関しては、この方法は製造に限定されない。ここでの方法は航空機製造及び運用サービスの他の段階に適用されることができる。
【0062】
航空機の製造と運用サービス方法の1例を示す図9を参照する。製造前の期間中に、方法は航空機の仕様及び設計910と材料の調達920を含んでいる。製造期間中、コンポーネントおよびサブアセンブリの製造930と航空機のシステムの統合940が行われる。その後、航空機は運用サービス960されるために検定及び運送950されることができる。カスタマにより運用されながら、航空機は日常のメンテナンス及び運用970のスケジュールを定められる(変更、再構成、一新等を含むこともできる)。
【0063】
方法の各プロセスはシステムインテグレータ、第3パーティ、および/またはオペレータ(例えばカスタマ)により行われまたは実行されることができる。この説明の目的に対しては、システムインテグレータは限定せずに任意の複数の航空機製造業と主要システムの下請け会社を含むことができ、第3のパーティは限定的ではなく、任意の多数の販売業者、下請け会社、供給業者を含むことができ、オペレータは航空機、リース会社、軍事エンティティ、運用組織等であってもよい。
【0064】
ここに記載された実施例は製造及び運用方法の任意の1以上の段階の期間中に使用されることができる。例えば、製造プロセス930に対応するコンポーネントまたはサブアセンブリは航空機が運用中に製造されるコンポーネントまたはサブアセンブリと類似した方法で製造または生産されることができる。また1以上の装置の実施形態、方法の実施形態またはその組合せは例えば実質的に航空機の組み立てを実質的に促進するか、その価格を減少することにより製造段930および940期間中に使用されることができる。同様に、ここに記載された1以上の実施形態は限定としてではなく例えばメンテナンス及び運用サービス970のような航空機が運用中の間に使用されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
限定された空間を有し、その限定された空間の内部及び限定された空間の外部から識別可能な位置を有する構造で動作を行う自動化された方法において、
第1のロボットシステムを使用して、第1のエンドエフェクタが所定の位置に位置付けられるように限定された空間の内部で第1のエンドエフェクタを動かし、その位置に対応する第1のベクトルを生成し、
第2のロボットシステムを使用して、第2のエンドエフェクタが前記位置上に位置付けられるように限定された空間の外部で第2のエンドエフェクタを動かし、その位置に対応する第2のベクトルを生成し、
第1および第2のベクトルを使用して、第1及び第2のエンドエフェクタが対向して動作するように第1及び第2のエフェクタを新しい位置に動かし、
第1及び第2のエンドエフェクタを使用して、新しい位置で動作させるステップを含んでいる自動化された方法。
【請求項2】
各ロボットシステムは正確な位置が得られたときロボット制御装置へそのベクトルを通信する請求項1記載の方法。
【請求項3】
動作は同期的な組立てを含んでいる請求項1記載の方法。
【請求項4】
同期的な組立ては新しい位置に穴を開けその穴を通してファスナを挿入する第2のロボットシステムと、ファスナを終端する第1のロボットシステムを含んでいる請求項3記載の方法。
【請求項5】
さらに、まくれのない穴の穿孔が行われるように第1と第2のエンドエフェクタ間に磁気吸引力を発生させる処理を含んでいる請求項4記載の方法。
【請求項6】
さらに、第1及び第2のロボットシステムを使用して、第1及び第2のエンドエフェクタを第2の位置に位置付け、第2の位置に対応する第1及び第2のベクトルを生成するステップを含んでおり、第1のエンドエフェクタの新しい位置は第1のベクトルに関して計算され、第2のエンドエフェクタの新しい位置は第2のベクトルから計算される請求項1記載の方法。
【請求項7】
さらに、第1と第2の位置間の複数の永久ファスナ位置の計算を含んでいる請求項6記載の方法。
【請求項8】
第1のロボットシステムのコンプライアントなアームは、第1のエンドエフェクタを所定の位置上のおおよその位置に位置付け、第1のエンドエフェクタを表面に対して加圧し、第1のエンドエフェクタに取付けられる装置は表面に沿って第1のエンドエフェクタをシフトするために使用される請求項1記載の方法。
【請求項9】
機器を備えたファスナが前記所定の位置に存在し、ベクトルが機器を備えたファスナにより発生されるビーコンから得られる請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記構造は航空機の主翼ボックスである請求項1記載の方法。
【請求項11】
第2のロボットシステムは第2のエンドエフェクタをアクセスポートを通って隣接する主翼ボックスの限定された空間中へ動かす請求項10記載の方法。
【請求項12】
第1及び第2のロボットシステムに請求項1記載の方法を実行するように指令するためのデータで符合化されたコンピュータメモリを具備するアーティクル。
【請求項13】
第1及び第2のロボットシステムと、第1及び第2のロボットシステムに請求項1記載の方法を実行させるロボット制御装置を具備しているシステム。
【請求項14】
構造の限定された空間内にエンドエフェクタを位置付ける方法において、
コンプライアントロボットアームを使用して、エンドエフェクタを構造のアクセスポートを通って限定された空間中へ動かし、
ロボットアームを使用して、限定された空間内の表面の位置上にエンドエフェクタをおおよその位置に位置付け、
ロボットアームを使用して、表面に対してエンドエフェクタを加圧し、
エンドエフェクタに取付けられている装置を使用して、エンドエフェクタを正確に位置に位置付けるように表面に沿ってエンドエフェクタをシフトするステップを含んでいる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3a】
image rotate

【図3b】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2009−269168(P2009−269168A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2009−113369(P2009−113369)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(500520743)ザ・ボーイング・カンパニー (773)
【氏名又は名称原語表記】The Boeing Company
【Fターム(参考)】