説明

陸上車両の地面係合型推進装置を不能にする装置および方法

地面係合型推進装置に孔を開けるように構成された少なくとも1つの穿刺具と、短縮状態と伸長状態との間で移動するように構成された関節連結ストラップと、関節連結ストリップを伸長状態に配備するように構成された膨張可能なブラダと、関節連結ストリップを短縮状態に短縮するように構成されたリトラクタとを有する、陸上車両の地面係合型推進装置を不能にする装置および方法。関節連結ストラップは、穿刺具に連結された複数のプレートと、複数のジョイントとを備え、個々のジョイントが個々の隣接プレートを連結している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年8月6日付米国特許出願第12/537,224号(発明の名称「陸上車両の地面係合型推進装置を不能にする装置および方法(APPARATUS AND METHOD FOR DISABLING A GROUND ENGAGING TRACTION DEVICE OF A LAND VEHICLE)」)および2008年10月6日付米国仮特許出願第61/195,281号(発明の名称「遠隔操作型車両拘束装置(REMOTELY DEPLOYED VEHICLE RESTRAINT DEVICE)」)に係る米国特許法(35U.S.C.)第119条の利益を主張する。尚、これらの出願は本願に援用する。
【0002】
本発明は、広くは陸上車両の走行を減速させ、不能にし、不動にしおよび/または制限する装置および方法に関する。より詳しくは、本発明は、陸上車両の空気タイヤ、エアレスタイヤ、無限軌道(キャタピラ)または他の地面係合型推進装置(ground engaging traction device)を不能にするストラップを配備しおよび短縮する装置および方法に関する。本発明による或る実施形態は、圧縮ガス、ガス発生器により発生された圧力、および他の形式のポテンシャルエネルギ源による弾性要素により配備されるストラップを有している。ストラップとして、スパイク、菱角(caltrops)、爆発性装薬(火薬)または上方に突出した他の物体があり、車両のタイヤに突き刺さって空気タイヤから空気を放出させるように構成されている。
【背景技術】
【0003】
陸上車両の走行を減速させ、不能にし、不動にしおよび/または制限する慣用装置として、バリヤ、タイヤスパイクストリップ、菱角、わなおよび電気システム不能化デバイスがある。例えば、慣用のスパイクストリップとして、巻上げ型デバイスまたはアコーディオン型デバイスとして保管される細長ベース構造体から上方に突出するスパイクがある。これらの慣用スパイクストリップは、巻上げまたは折畳み不能で、接近する目標車両が踏み付けることを予想して道路上に置かれる。慣用のスパイクストリップが目標車両の通路に首尾よく置かれた場合には、目標車両の1本以上のタイヤがスパイク(単一または複数)により破損され、これによりタイヤ(単一または複数)の空気が抜け、車両の制御が困難になるため、運転者は車両を減速させるか、停止せざるを得なくなる。
【0004】
慣用のスパイクストリップは、通報の第一対応者、法律執行担当者、武力担当者または他の警備担当者により使用される。これらの担当者は、スパイクストリップを配備するときに近接位置に留まらなくてはならないことが頻繁に生じる。例えば、スパイクストリップを配備する慣用方法は、担当者が、接近する目標車両の通路内にスパイクストリップを放り投げることである。この慣用方法は、目標車両の運転者が警備担当者を跳ねようと試みるか、運転者がスパイクストリップの回りで操縦を試みる間に目標車両の制御を喪失して警備担当者に衝突する限り、警備担当者を危険に曝すことになる。また、操舵輪のタイヤの1つのみがパンクすると、目標車両を激しく傾け、近くの警備担当者または見物人または構造物に衝突することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
慣用のスパイクストリップには、目標車両の通路にストリップを配備するのが困難なこと、およびストリップを配備しまたは短縮する間にスパイクの1つが警備担当者を負傷させること等を含む多くの欠点がある。目標車両がストリップを踏み付けたときに目標車両の近くに居る警備担当者は、目標車両が衝突する危険に曝される。また、目標車両がストリップを通過した後にストリップが配備されたまま残されると、他の車両がストリップを踏み付ける危険に曝される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施形態による装置に接近する陸上車両を示す概略斜視図である。
【図2A】本発明の一実施形態による装置が非武装状態にあるところを示す斜視図である。
【図2B】本発明の一実施形態による装置が武装状態にあるところを示す斜視図である。
【図2C】本発明の一実施形態による装置が配備状態にあるところを示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態によるインフレータ装置およびリトラクタ装置を備えたストラップパッケージが配備される前の状態を示す斜視図である。
【図4】図3のストラップパッケージが配備された後の状態の一部を示す詳細図である。
【図5A】本発明の一実施形態による装置の断面図であり、発泡スパイクプロテクタを示すものである。
【図5B】本発明の一実施形態による装置の断面図であり、発泡スパイクプロテクタを示すものである。
【図6】スパイク起立器を備えた本発明の一実施形態による装置を示す部分斜視図である。
【図7A】図6のスパイク起立器の作動を示す概略図である。
【図7B】図6のスパイク起立器の作動を示す概略図である。
【図8A】本発明の一実施形態による装置の発泡スパイクプロテクタを覆うカバーを示す図面である。
【図8B】本発明の一実施形態による装置の発泡スパイクプロテクタを覆うカバーを示す図面である。
【図8C】本発明の一実施形態による装置の発泡スパイクプロテクタを覆うカバーを示す図面である。
【図8D】本発明の一実施形態による装置の発泡スパイクプロテクタを覆うカバーを示す図面である。
【図9A】本発明の一実施形態による装置の配備動力学を特徴付ける幾つかの段階の1つを示す概略図である。
【図9B】本発明の一実施形態による装置の配備動力学を特徴付ける幾つかの段階の1つを示す概略図である。
【図9C】本発明の一実施形態による装置の配備動力学を特徴付ける幾つかの段階の1つを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
陸上車両の走行を減速させ、不能にし、不動にしおよび/または制限する装置を参照して、本発明による実施形態の特別な詳細を以下に説明する。本発明の他の実施形態では、このセクションで説明するものとは異なった構成、コンポーネンツ、特徴または手順にすることができる。したがって、当業者ならば、本発明は、付加要素を備えた他の実施形態、または図1〜図8Dに関連して以下に示しかつ説明する幾つかの要素をもたない他の実施形態をも含むものであることは理解されよう。
【0008】
図1は、本発明の一実施形態による装置10に接近する陸上車両を示す概略斜視図である。通報の第一対応者、法律執行担当者、武力担当者または他の警備担当者は、装置10を使用して、陸上車両の走行を減速させ、不能にし、不動にしおよび/または制限する。陸上車両の例として、乗用車、トラック、ブルドーザまたはタンク等の軌道付き車両、または陸上車両を加速させ、操縦しかつ支持すべく空気タイヤ、エアレスタイヤ、無限軌道または他の地面係合型推進装置を使用する他の車両がある。用語「地面」とは、進歩した車道、砂利道、砂道、ダート等を含む自然地形または人工地形をいう。図1は、進歩した車道Rに対して空気タイヤTにより支持され、操縦されおよび/または加速される乗用車Cを示している。
【0009】
本発明による或る実施形態は、目標車両(例えば乗用車C)の予想通路内に装置10を配備する。未配備の装置10は、地面例えば路面R上に置かれ、次に武装(armed)される。例えば、装置10は、該装置の配備を予想するときに電源を利用可能にすることにより武装される。装置10は、目標車両が装置10に接近すると、車両の予想通路を横切って配備(例えば伸長)される。装置10は、目標車両が短距離内(例えば100フィート以内)に入ると配備されるように構成できる。これにより、装置10の存在を運転者が気付くことが回避され、したがって、目標車両が一層首尾よく装置10を踏み付けるようにする。同様に、装置10を遠隔位置で自動的に配備することは、運転者が装置10に気付く傾向、または装置10の踏付けを回避する逃避的行動を起こす傾向を低減させる。装置10の遠隔配備はまた、装置のオペレータ(図示せず)が目標車両から離れることを可能にし、これにより車両がオペレータに衝突する傾向を低減させるか、なくすことができる。
【0010】
図2A〜図2Cは、装置10が非配備状態にあるところ(図2A)、武装状態にあるところ(図2B)および配備状態にあるところ(図2C)を示す概略斜視図である。図2Aは、非配備状態にある装置10を保管し、輸送しおよび/またはハンドリングするためのハウジング20を備えている本発明による一実施形態を示している。より詳しくは、ハウジング20は、弾薬ボックス形式の形態で頂部20bおよび前部20cに連結された底部20aを有している。ハウジング20を開き(図2B)および/または他の操作(例えばスイッチを入れること)により、装置10が武装される。ひとたび武装されると、装置10は、配備の準備が整えられる。目標車両が装置10に接近すると、ストラップパッケージ30は、目標車両の予想通路内で折畳みが開かれまたは巻き解かれるようにして配備される(図2C)。
【0011】
図3は、装置10が配備される前の本発明の一実施形態によるインフレータ装置40およびリトラクタ装置60を備えたストラップパッケージ30を示す斜視図である。ストラップパッケージ30は複数のプレート32(図3には10枚のプレート32a〜32jが示されている)を有し、これらのプレート32は交互の第1および第2ジョイントによりピボット連結されている。個々の第1ジョイント34(図3には4つの第1ジョイント34a〜34dが示されている)は隣接プレート32間の単一ピボット軸線を有し、個々の第2ジョイント36(図3には5つの第2ジョイント36a〜36eが示されている)は隣接プレート32間のリンクにより間隔を隔てられた2つの別々のピボット軸線を有している。図3に示す実施形態によれば、第2ジョイント36aはプレート32a、32bをピボット連結し、第1ジョイント34aはプレート32b、32cをピボット連結し、第2ジョイント36bはプレート32c、32dをピボット連結し、第1ジョイント34bはプレート32d、32eをピボット連結し、第2ジョイント36cはプレート32e、32fをピボット連結し、第1ジョイント34cはプレート32f、32gをピボット連結し、第2ジョイント36dはプレート32g、32hをピボット連結し、第1ジョイント34dはプレート32h、32iをピボット連結し、第2ジョイント36eはプレート32i、32jをピボット連結する。したがって、ストラップパッケージ30は、関節連結された一連の連結レート32およびジョイント34、36を有している。第2ジョイント36は「短い方の」プレートであり、これらの短い方のプレート36が、個々のピボット軸線によって、隣接する「長い方の」プレート32に連結されていると考えることができる。
【0012】
図3に示すストラップパッケージ30の非配備状態すなわちスタック状態は、互いに横たえられたプレート32a〜32jを有している。より詳しくは、プレート32jはプレート32iの上に横たわり(これらのプレートは第2ジョイント36eにより分離されている)、プレート32iはプレート32hの上に直接横たわり(これらのプレートは第1ジョイント34dにより連結されている)、プレート32hはプレート32gの上に横たわり(これらのプレートは第2ジョイント36dにより分離されている)、プレート32gはプレート32fの上に直接横たわり(これらのプレートは第1ジョイント34cにより連結されている)、プレート32fはプレート32eの上に横たわり(これらのプレートは第2ジョイント36cにより分離されている)、プレート32eはプレート32dの上に直接横たわり(これらのプレートは第1ジョイント34bにより連結されている)、プレート32dはプレート32cの上に横たわり(これらのプレートは第2ジョイント36bにより分離されている)、プレート32cはプレート32bの上に直接横たわり(これらのプレートは第1ジョイント34aにより連結されている)、プレート32bはプレート32aの上に横たわっている(これらのプレートは第2ジョイント36aにより分離されている)。第2ジョイント36により付与される分離によるプレート32間の間隔は、より詳細に後述するように、プレート32に連結されるペネトレータを収容するためのものである。
【0013】
プレート32および/または第2ジョイント36は、適度の強度および軽量性を有するガラス繊維、波型プラスチックまたは厚紙、木材または他の材料で形成できる。例えばG-10は、樹脂中に浸漬されかつ高度に圧縮および焼成されたガラス繊維の層からなる極めて耐久性に優れた組成物である。またG-10は、湿気または液体を浸透せずかつ気候変化の下で物理的に安定している。プレート32は、目標車両のタイヤを突き刺すスパイク、菱角、爆発性装薬等を分配するのに適したプラットホームを形成する。したがって、プレート32のサイズおよび形状は、緩い地面または不安定な地面例えば砂の上でも充分な支持が得られるように選択される。例えば、厚さ1/32インチのG-10から作られた6インチ×17.5インチのプレートは、適当なプラットホームを提供する。プレート32のサイズはまた、配備状態においてストラップパッケージ30が延びる大きさに影響を与え、例えば、プレート32が短いほど、配備されるストラップパッケージ30は短くなる。
【0014】
インフレータ装置40は膨張可能なブラダ42を有し(図4には、膨張可能な2つのブラダ42a、42bが示されている)、これらのブラダ42a、42bも、第2ジョイント36による分離によってプレート32同士の間に形成されるスペース内に収容されている。インフレータ装置40は更に、圧力源44(例えば、加圧されたガスシリンダ、ガス発生器、アキュムレータ等)と、圧力源44をブラダ42に連結するマニホルド46とを有している。ブラダ42はプレート32に取付けられており、圧力源44による膨張に応答して膨張し、ストラップパッケージ30を配備する。本発明による或る実施形態は管状ブラダ42を有し、該管状ブラダ42は、ストラップパッケージ30のスタック状態において、ブラダ42が第1ジョイント34および第2ジョイント36で一時的に折目が付されるようにして、プレート32に沿って長さ方向に取付けられる。したがって、各ブラダ42は、マニホルド46に連結されたブラダ42の端部からスタートして連続的に膨張される一連のチャンバを形成している。各チャンバが膨張されると、ブラダ42が図2Cに示すようにほぼ完全に拡大されかつストラップパッケージが配備されるまで、拡大するブラダのスタックが解かれ、隣接して横たわるプレート32の折畳みを開き、巻き解き、さもなくば配備を開始する。第1ジョイント34および第2ジョイント36のピボット軸線は、ストラップパッケージ30が配備されるときに、例えばストラップパッケージ30の長手方向軸線の回りでの捩れを最小にしまたは無くすことにより、ストラップパッケージ30を一平面内に配備する補助をする。
【0015】
インフレータ装置40はまた、接近する車両を検出してストラップパッケージ30を自動的に配備するセンサ(図示せず)を有している。適当なセンサの例として、接近する車両を検出しかつ該車両が装置10に到達する前にストラップパッケージ30を配備する磁気センサ、レンジセンサまたは他の任意の装置がある。これに代えてまたはこれに加えて、インフレータ装置40には、ストラップパッケージ30を手動で配備するための遠隔アクチュエータ装置(図示せず)を設ける事ができる。センサおよび/または遠隔アクチュエータ装置は、「配備信号」を装置10に送信する有線、無線または他の通信システムに接続することができる。無線通信技術の例として、電磁通信(例えば無線周波数)および光通信(例えばレーザまたは赤外線)がある。
【0016】
図4は、配備された後のストラップパッケージ30の一部を示す詳細図である。目標車両が、配備されたストラップパッケージ30上に乗り上げると、目標車両の空気タイヤは、これを突き刺してパンクさせる穿刺具50(例えば中空スパイク、とげ状具、フックまたは他の器具)と係合する。プレート32上の穿刺具50の個数および分布は所望のままに変えられるが、穿刺具50の個数の増大および/または穿刺具50間の相対間隔の減少は、目標車両の少なくとも1本のタイヤが穿刺される傾向を増大させると考えられる。
【0017】
穿刺具50に代えてまたは穿刺具に加えて、1つ以上の爆発性装薬(図示せず)を設けることができる。陸上車両の空気タイヤ、エアレスタイヤおよび/または地面係合型推進装置のトレッドまたは他のコンポーネンツを破裂させまたは切断させるには、これらの装薬は、例えば線形装薬のような定型装薬が適している。これらの爆発性装薬は、例えば前述のように、ストラップパッケージ30の配備後の目標車両の重量検出に応答してトリガされる。本発明による穿刺具50の或る実施形態として、個々のプレート32に沿って延びる独立型装薬および/または細長線形装薬を含めることができる。また、穿刺具には、スパイクと装薬との組合せを含めることができる。作動に際しては、目標車両と係合される穿刺具50のみが作動される。例えばスパイクがピックアップされ、装薬が爆発する等々である。
【0018】
本発明による或る実施形態には、空気タイヤをパンクさせかつ収縮させる中空スパイクを設けることができる。1本以上のタイヤが収縮すると、車両の制御がより困難になる。例えば、操舵に使用されるタイヤが収縮すると、目標車両の操縦能力が制限されまたは防止され、および/または目標車両の駆動に使用されるタイヤが収縮すると加速または制動が制限されまたは防止される。中空スパイクは、スパイクがタイヤに接触しかつ穿刺した後、プレート32上のスパイクホルダ(図4には示されていない)から引き抜かれる。次に、中空スパイクはタイヤ内の空気を逃がすことができる。空気が逃げる速度は、例えば中空スパイクを通る空気流が妨げられないようにして比較的大きくするか、例えば、中空スパイク内にバルブまたは他の流量制限器(図示せず)を設けて比較的小さくすることができる。
【0019】
図3および図4に示すように、リトラクタ装置60は、ケーブル64を巻上げるウインチ62を有している。ウインチ62の動力として、電気的動力、空気圧による動力、機械的動力(例えばトーションスプリング等の弾性要素)またはその他の動力を使用できる。ケーブル64は、これに代えてまたはこれに加えて、図2Cに示した配備状態からストラップパッケージ30を短縮するためのモノフィラメントライン、テープまたは他の適当なフレキシブル引っ張り具を用いることができる。本発明による或る実施形態は、図2Bに示すスタック状態においてプレート32および第2ジョイント36に沿って通されたケーブル64を有している。ケーブル64は、一端がウインチ62に固定され、プレート32の孔66(できれば、鳩目(図示せず)でラインニングされた孔)を通って延び、他端がプレート32jに固定されている。孔66は、第1ジョイント34の近くに配備される。これにより、ケーブル64は、ストラップパッケージ30の配備を妨げることがなく、かつプレート32を、これらが配備される前のスタック状態に近い短縮状態に引き込むことができる。短縮状態とスタック状態との相違は、短縮状態においてはウインチ62がケーブル64を巻き上げてしまっている点にある。リトラクタ装置60は、例えば目標車両が装置10上を走行した後であるが、追跡車両が装置10上を走行する前、または自動的配備後に目標車両が装置10上を走行することなく所定時間が経過してしまった後のような種々の状況下で、図2Cに示す配備状態からストラップパッケージ30を短縮するのに使用される。本発明によるウインチ62の或る実施形態には、ケーブル64を自由に巻き解くことができるようにするクラッチ機構および/またはロック解放機構を設け、次の再配備のためにプレート32を再スタックしかつケーブル64を再緊張できるようにする。本発明の他の或る実施形態では、ケーブル64を短縮状態において切断する切断装置が設けられる。これにより、ウインチ62は、装置10の第2回目の配備は可能であるが、その後に装置10の短縮はできなくなる。
【0020】
図5Aおよび図5Bは、発泡スパイクプロテクタ70を備えた装置10を示す断面図である。ストラップパッケージ30を配備すると、鋭い穿刺具50と一緒にプレート32が飛び開かれる。発泡プロテクタ70は、不意に穿刺具50に接触することを防止する。図5Aは、穿刺具50をほぼ包囲するようにプレート32に取付けられた発泡体のブロック(例えば発泡ポリスチレン、EPS)を備えた一実施形態を示すものである。EPSのような発泡体は適した材料である。なぜならば、EPS発泡体は軽量でありかつ目標車両により容易に破壊されるため、タイヤを突き刺す穿刺具50の機能を妨げないからである。これに代えてまたはこれに加えて、同様な特性を有する他の材料および形状を使用することができる。図5Bは、相互ロックする発泡プロテクタ70a、70bが第2ジョイント36の両側で隣接プレート32に連結された他の構成を示すものである。図5Bの構成は、図5Aの構成に比べ、より長い穿刺具50をプレート32により支持することができる。前述のように、プレート32は、装置10が緩い地面または不安定な地面上に配備される場合でも、穿刺具50の支持プラットホームを形成する。
【0021】
プロテクタ70の他の長所は、プレート32に取付けられたホルダ52内に穿刺具50が保持されることである。したがって、プロテクタ70は、穿刺具50が、例えば目標車両のタイヤが1つ以上の穿刺具50に突き刺さる前にホルダ52から早期に解放されてしまうことを防止できる。本発明の或る実施形態は、プレート32に当接してすなわち接触して保持される穿刺具50および/またはホルダ52を有している。穿刺具50は、タイヤに突き刺さる逆とげ付先端部を備えた中空スパイクで形成できる。この場合、このような穿刺具50はホルダ52から引き抜かれ、タイヤ内の空気を中空スパイクの内部を通して排出させることができる。
【0022】
図6は、スパイク起立器80を備えた装置10を示す部分斜視図である。図5Bに関連して説明したように、より長い穿刺具50が望ましい。図6は本発明による一実施形態を示し、この実施形態では、穿刺具50は、例えば、鋭い先端部から個々のプレート32にピボット連結された基部まで延びている中空スパイクで形成されている。ブラダ42の膨張に応答して穿刺具50を起立させるロッド82が、プロテクタ70を通って延びている。より詳しくは、ブラダ42は、穿刺具50を装置10の非配備状態の傾斜位置から配備状態のほぼ垂直位置まで駆動すべく、スロット84内でロッド82を駆動する。
【0023】
図7Aおよび図7Bを参照して、起立器80の作動を更に説明する。図7Aに示す装置10の非配備状態では、ブラダ42は膨張されておらず、3つの穿刺具50は単一プレート32に対して傾斜して配備されている。より詳しくは、各穿刺具50は、それぞれのピボットブロック88によりプレート32にピボット連結されている。プロテクタ70内の個々のポケット86は、例えば非配備状態(図7A)でのプレート32に対する傾斜位置と、配備状態(図7B)でのプレート32に対するほぼ垂直位置との間の穿刺具50の移動範囲を定める。これに代えてまたはこれに加えて、ピボットブロック88には、プレート32と穿刺具50の基部との間に配備されるディスクを設けることができる。ディスクの弾性「ヘア」すなわちスライバは、ロッド82が穿刺具50を起立させるまで、穿刺具50を非配備状態に向かって押圧することができる。ブラダ42の膨張によりスロット84内でロッド82を駆動し、次に、図7Bに示すように穿刺具50の少なくとも一部がポケット86の外部に突出するように、ピボットブロック88内で穿刺具50をピボット運動させる。したがって、起立器80は、装置10の非配備状態においてプロテクタ70により隠されておりかつ装置10の配備状態において露出される長い穿刺具50の使用を容易にする。本発明の他の或る実施形態は、できるならば配備される装置10に応答してまたは例えばウインチ62により行われる特別な起立作用により穿刺具50を起立させおよび/または引っ込めるのに、テープまたは他のフレキシブルな引っ張り部材(図示せず)を使用できる。したがって、第1および第2ジョイント34、36に配備されるヒンジスプリングにより、ストラップパッケージ30を配備しおよび/またはフレキシブル部材を引っ張って穿刺具50を起立させる付加エネルギを付与させることも考えられる。
【0024】
図8A〜図8Dは、図5Bに示す発泡プロテクタ70a、70bを覆うカバーを示すものである。図8Aおよび図8Cは、それぞれカバー90a、90bを含む相互ロックプロテクタ70a、70bを示す斜視図である。図8Bおよび図8Dは、それぞれカバー90a、90bを示す断面図である。カバー90は、発泡プロテクタ70に固定(例えば接着)されおよび/またはプレート32の回りに巻かれかつ固定される。カバー90はまた、膨張されたブラダ42を収容できるサイズのチャネルを有している。カバー90は、プロテクタ70を強化しおよび/またはシースを形成するのに適した成形プラスチック、ファイバテープまたは他の材料からなる。
【0025】
拡大可能なストラップパッケージ30の配備は、装置10が使用のために配備された後に行われる。ストラップパッケージ30を配備する圧力源44として、ガス発生器を使用できる。ガス発生器は、無線信号発生器または他の遠隔スイッチングデバイス等のアクチュエータデバイスを使用して、オペレータにより遠隔位置から作動される。あるいは、目標車両が接近検出器の範囲内に入ったときに、装置10を作動させかつストラップパッケージ30を配備するのに接近検出器を使用できる。ガス発生器で発生されたガスによりまたは貯蔵装置から放出されるガスにより管状ストラップを迅速に充填することにより、膨張ブラダ42およびストラップパッケージ30は、図2Bに示す武装位置から図2Cに示す配備位置に配備される。
【0026】
作動に際し、装置10は、目標車両が装置10上を通ることが予想される場所に置かれる。装置10は、バリヤの内側またはバリヤの間のチェックポイントまたはチョークポイントまたは目標車両が通ることが予想される場所で路面上に置くことができる。本発明による或る実施形態は、装置10の存在をカムフラージするため、装置10を一般的な環境の特徴内に置くことを含む。ひとたび目標車両の予想通路内に置かれると、装置10は、接近センサ、無線遠隔アクチベータ、有線コントローラ等により装置を遠隔から安全に武装することにより配備の準備がなされる。或いは、装置10は、人がハウジング20を開くことにより、または使用者が装置10のスイッチを入れることにより武装される。目標車両が装置10に接近すると、例えばオペレータが装置10に信号を送ってガス発生器を作動させ、管状ブラダ42を膨張させることにより、ストラップパッケージ30が配備される。目標車両はストラップパッケージ30上に乗り上げ、穿刺具50が目標車両の地面係合型推進装置(例えばタイヤ)と係合する。その後、管状ブラダ42が収縮されかつウインチ62によりストラップパッケージ30が短縮される。したがって、装置10を短縮することにより、車両(例えば警備担当者の車両)がストラップパッケージ30および穿刺具50上に乗り上げることなく、目標車両を追跡できる。
【0027】
本発明による一実施形態の作動を、図9A〜図9Cを参照して以下に説明する。配備動力学を特徴付ける幾つかの段階がある。図9Aは、初期スタック回転を含む第1段階を示す。この第1段階中に、全バッキングプレートスタックが第2ジョイント36aの回りで回転する。ジョイント36aは回転構造体を整合状態に維持しかつスタックを、「平面外れ(out of plane)」が生じないようにすなわち捩れ回転しないようにバランスさせる。図9Bは、スタック回転および初期投入(initial launch)を含む第2段階を示す。全スタックは第2ジョイント36aの回りで約45°を超えて回転しかつ開方向(direction of unfurlment)(z軸線)に沿う「リニア」トラジェクトリを呈し始める。今や、スタックはプレート32bから「リフト」し始める。第1段階と同様に、第1ジョイント34および第2ジョイント36は、回転構造体を整合状態に維持しかつ「平面外れ」変位を最小にすべくスタックをバランスさせる。図9Bはまた、次の「チャンバ」すなわち管状ブラダ42のセグメントが膨張を開始するように、管状ブラダ42が第1ジョイント34aで「もつれない(unkinking)」ようにするところを示している。図9Cは、スタックを投入することを含む第3段階を示す。スタックは垂直から数度傾斜し、前方速度および運動エネルギを呈している。首尾よく投入された後、第1および第2ジョイント34、36は、配備中の自由度が「平面外れ」すなわち捩れ回転を最小にするか無くすことを続けることを確保する。配備動力学は、スタックがその元のサイズの約1/2であるときを含み、この場合には残りのプレートを完全配備すべく伸長させる充分な運動エネルギがシステムに存在する。この場合にも、第1および第2ジョイント34、36は、地面に「着陸(touched down)」するプレートにより、「平面外れ」すなわち捩れ回転を最小にするか無くすことを続ける。配備動力学の最終段階では、全てのプレート32が完全に伸長される。配備後、ストラップパッケージ30は、ブラダ42を収縮させかつウインチ62によりケーブル64を巻回することにより短縮できる。ブラダ42は、ブラダ内のガス圧力を放出するのに適したバルブ、電磁ソレノイドまたは他の任意の装置を手動または自動計時作動することにより収縮される。
【0028】
装置10の長所は、装置10が所定位置に置かれ、次に遠隔から配備および/または短縮できるため、警備担当者を危険に曝すことを回避できることである。かくして、装置10を配置する人は、目標車両の予想通路から安全距離を隔てた位置で装置10から離れることができ、かつ装置10のストラップパッケージ30は、目標車両が装置10に接近するときに配備できる。したがって、遠隔配備型装置10は、接近する目標車両の前方で投げ入れなくてはならない慣用スパイクストリップを用いるより安全である。
【0029】
装置10の他の長所は、ストラップパッケージ30は再装填できることである。より詳しくは、装置10の配備後に、プレート32、穿刺具50および圧力源44を再装填できることである。また、使用される装置10のこれらの部分のみが、交換する必要がある。これらの部分として、例えば、発泡体70の壊れたセクション、除去された穿刺具50および/または使用済みのガス発生器44がある。
【0030】
装置10の更に別の長所は、目標車両の下に比較的無造作に配置される装置により、陸上車両の走行を減速させ、不能にし、不動にしおよび/または制限できることである。また、装置10は、使用者による最小の労力により装置10を配備すべく、自動的におよび/または遠隔から武装されかつトリガされる。
【0031】
本発明の実施形態の上記説明は、本発明を上記正確な形態に限定するものではない。また、本発明の実施形態が不必要に不明瞭になることを回避すべく、良く知られた構造および機能は詳細に示されまたは説明されていない。例えば本発明の特定実施形態は例示の目的で上述されたが、当業者ならば理解されるように、本発明の範囲内で種々の均等変更例が可能である。一例として、本発明による或る実施形態には、装置の制御ハウジング内に配置される圧力発生器に、圧力分配マニホルド、ストラップ(単一または複数)を武装しかつ配備する制御回路、接近センサ、信号受信および送信回路、および装置10の作動に必要または有効な他の任意のハードウェア、ソフトウェアまたはファームウェア(但しこれらに限定されない)を設けることができる。他の例として、装置10は、クラムシェル型ブリーフケースまたは弾薬ボックス型ハウジング内に収容できかつ圧力マニホルドおよび該マニホルドに連結される圧縮ガスのような圧力発生装置またはガス発生器を設けることができる。他の実施形態では、装置10に1つ以上のマニホルドおよび1つ以上の圧力発生装置またはこれらの任意の組合せを設けることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面係合型推進装置に孔を開けるように構成された穿刺具と、
短縮状態と伸長状態との間で移動するように構成された関節連結ストラップとを有し、該関節連結ストラップが、
穿刺具に連結された複数のプレートと、
複数のジョイントとを備え、個々のジョイントが個々の隣接プレートを連結し、
関節連結ストリップを伸長状態に配備するように構成された膨張可能なブラダと、
関節連結ストリップを短縮状態に短縮するように構成されたリトラクタとを更に有することを特徴とする陸上車両の地面係合型推進装置を不能にする装置。
【請求項2】
前記穿刺具は、鋭い先端部から個々のプレートに連結される基部まで延びている中空スパイクからなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記穿刺具を、個々のプレートに対して傾斜した状態とほぼ垂直な状態との間で移動させるように構成された起立器を更に有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項4】
前記穿刺具は爆発性装薬からなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項5】
前記関節連結ストリップの短縮状態はプレートをスタック状態に横たわらせることからなり、関節連結ストラップの伸長状態は、プレートを端と端とを突き合わせた状態に位置決めすることからなることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項6】
前記複数のジョイントは第1および第2ジョイントからなり、個々の第1ジョイントは個々の隣接プレートを連結する単一ピボット軸線を有し、個々の第2ジョイントは、個々の隣接プレートを連結するリンクにより間隔を隔てられた別々のピボット軸線を有し、複数のジョイントは交互の第1および第2ジョイントを有していることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項7】
前記ブラダは一連のチャンバを有し、個々のチャンバは個々のプレートに連結されかつ連続的に膨張されて関節連結ストラップを伸長状態に移動させることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項8】
前記リトラクタは、パネルに連結されたケーブルと、該ケーブルに連結されたウインチとを有し、ウインチは複数のプレートの第1端部に連結され、ケーブルは複数のプレートの第2端部に固定され、ケーブルは、複数のプレートの第1端部と第2端部との間の中間プレートにスライド可能に連結されていることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項9】
前記ブラダを膨張させるように構成された圧力源と、
関節連結ストリップの配備を制御するように構成されたコントローラとを更に有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項10】
個々のプレートに連結されかつ穿刺具を保護するように構成された発泡体と、
該発泡体の上に横たわるカバーとを更に有することを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項11】
関節連結ストラップを、短縮状態から伸長状態に配備する段階を有し、関節連結ストラップは、一連のプレートに連結された穿刺具を備え、
関節連結ストラップを、伸長状態から短縮状態に短縮する段階を有することを特徴とする陸上車両を選択的に走行不能にする方法。
【請求項12】
前記関節連結ストラップを配備する段階は、一連のプレートに連結されたブラダを膨張させることを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記関節連結されたストラップを短縮する段階は、一連のプレートに連結されたケーブルを巻き取ることを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記関節連結ストラップを短縮する段階は、一連のプレートに連結されたブラダを収縮させることを更に含むことを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記関節連結ストラップを配備する段階は、一連のプレートのスタックを解放することを含み、関節連結ストラップを短縮する段階は、一連のプレートをスタッキングすることを含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記関節連結ストラップに接近する陸上車両に応答して関節連結ストラップを配備する段階を更に有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記関節連結ストラップに接近する陸上車両を検出して関節連結ストラップを配備する段階を更に有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記関節連結ストラップ上に乗り上げた陸上車両に応答して関節連結ストラップを短縮する段階を更に有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項19】
個々のプレートに対して傾斜した方向とほぼ垂直な方向との間で穿刺具を移動させる段階を更に有することを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記関節連結ストラップを第1位置で短縮状態に配置しかつ第1位置から間隔を隔てた第2位置から遠隔で関節連結ストラップを配備する段階を更に有することを特徴とする請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【公表番号】特表2012−504722(P2012−504722A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531096(P2011−531096)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/US2009/059554
【国際公開番号】WO2010/042443
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(511080454)パシフィック サイエンティフィック エナジェティック マテリアルズ カンパニー (4)
【Fターム(参考)】