説明

障子の改修方法

【課題】アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の改修を簡単に、かつ、改修にかかる費用を低廉にすることができる障子の改修方法を提供する。
【解決手段】障子1の既設下框2が、既設下框材21に、一対の既設戸車22と既設シール部材23とを組み込んで構成されたものにおいて、新設下框材31に、一対の新設戸車32と新設シール部材33とを組み込んで構成され、少なくとも新設下框材31が既設下框材21と同一形状に形成された新設下框3を用意し、障子1の両縦框11に既設下框2を固定している複数の取付ビス12を外すビス離脱工程S1と、両縦框11から既設下框2を取り外す既設下框取外し工程S2と、両縦框11間に新設下框3を装着する新設下框装着工程S3と、両縦框11に新設下框3を複数の取付ビス12で固定するビス止め工程S4と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の改修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、引戸(障子)の下框に形成された収容空間に固定された取付具本体と、取付具本体に取り付けられる戸車と、取付具本体に対し戸車を着脱可能に掛合する掛合手段と、を設けた戸車取付具を用いた戸車の交換方法が知られている(特許文献1参照)。
この交換方法では、障子の下框の収容空間に予め固定された取付具本体に設けられた掛合手段を介して戸車の着脱が簡単に行えるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−018680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、戸車の機能低下は、磨耗、経年劣化による変形、損傷等によるものが多い。他方、障子の下框には、止水性および気密性を高めるためにゴム等からなるシール部材が設けられている。このシール部材も、磨耗、経年劣化による変質、変形または損傷等により、その機能が低下し、室内側への漏水等の問題が生じていた。このため、戸車の交換のみでは、障子本来の機能の改修としては不十分であった。
また、戸車やシール部材の交換が必要な場合には、下框自体が腐食し、損傷等していることも多い。さらに、劣化したシール部材が、下框に固着して交換不能になっている場合も多い。このような場合、障子の両縦框に何らの損傷がなくとも、障子全体を交換する必要があり、改修にかかる費用の増大を招いていた。
【0005】
本発明は、アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の改修を簡単に、かつ、改修にかかる費用を低廉にすることができる障子の改修方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の障子の改修方法は、アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の改修方法であって、障子の既設下框が、既設下框材に、一対の既設戸車と見付け方向に延在する既設シール部材とを組み込んで構成されたものにおいて、新設下框材に、一対の新設戸車と見付け方向に延在する新設シール部材とを組み込んで構成され、少なくとも新設下框材が既設下框材と同一形状に形成された新設下框を用意し、障子の両縦框に既設下框を固定している複数の取付ビスを外すビス離脱工程と、ビス離脱工程の後、両縦框から既設下框を取り外す既設下框取外し工程と、既設下框取外し工程の後、両縦框間に新設下框を装着する新設下框装着工程と、新設下框装着工程の後、両縦框に新設下框を複数の取付ビスで固定するビス止め工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、新設下框は、既設下框材と同一形状に形成された新設下框材を有しているため、障子の両縦框に対する新設下框の取付ビスの位置は変わらない。すなわち、新設下框に特別な加工を行う必要がない。これにより、既設下框から新設下框への交換作業は、アルミサッシが設置されている現場で簡単に、かつ、短時間で行うことができる。また、下框のみの部分修繕であるため、改修にかかる費用を低く抑えることができる。
【0008】
この場合、各新設戸車は、各既設戸車と同一形状に形成されていることが好ましい。
【0009】
この構成によれば、各既設戸車と同一形状に形成された各新設戸車は、既設のサッシ枠のレールに適合しているため、改修した障子は、円滑な開閉が可能となる。
【0010】
また、この場合、新設下框材には、小口方向から新設シール部材が装着されるシール取付部が、既設シール部材のシール取付部と同一形状に形成され、新設シール部材は、シール取付部から見込み方向に延び引違い窓のレールに摺接する新設摺接部を有していることが好ましい。
【0011】
この構成によれば、改修した障子は、新設シール部材により、止水性および気密性等の機能を回復することができる。また、劣化した既設シール部材が、シール取付部に固着した状態であっても、新設シール部材を組み込んだ新設下框に交換することで、既設シール部材を取り外す手間を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】障子において、(a)は既設下框の断面図、(b)は新設下框の断面図である。
【図2】本実施形態に係る障子の改修方法のフローチャートである。
【図3】本実施形態に係る障子の改修方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して、本発明の一実施形態に係る障子の改修方法について説明する。この障子の改修方法は、アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の下框(既設下框)を、新しい下框(新設下框)に交換することで、障子本来の機能を回復させるものである。そこで、先ず、既設下框および新設下框について説明する。
【0014】
図1において、(a)は既設下框2の断面図、(b)は新設下框3の断面図である。図1(a)に示すように、既設下框2は、昭和40年代に建造された集合住宅に施工されたアルミサッシの障子1の下框であって(図3参照)、下框の外形を構成する既設下框材21と、既設下框材21に組み込まれ、アルミサッシのサッシ枠の下レール(図示省略)に転接する一対の既設戸車22と、既設下框材21の見付け方向に延在する既設シール部材23と、を備えている。
【0015】
既設下框材21は、アルミ合金を押し出し加工することにより、見付け方向に同一の断面形状を有している。障子1は、縦框11通しで框組み構造を有しており、既設下框材21の両端部は、障子1の両縦框11の下端部に嵌合し(図3参照)、それぞれ取付ビス12により固定されている。既設下框材21は、上部が開放され、ガラス押えパッキン(図示省略)が装着されたガラス13が嵌合するガラス溝部24と、下部が開放され、一対の既設戸車22が組み込まれる戸車溝部25と、障子1の両縦框11の外側から貫通した取付ビス12が螺合するビスホール26と、小口側から既設シール部材23が装着されるシール取付部27と、を有している。
【0016】
ビスホール26は、断面視、戸車溝部25の天面から、下側を開放した「C」字型をなし、見付け方向に延在して形成されている。シール取付部27は、屋外に面する戸車溝部25の内側下部において、見付け方向に延在している。シール取付部27の断面形状は、戸車溝部25の内側を開放した「C」字型に形成されており、シール取付部27には、既設シール部材23が係合するようになっている。
【0017】
各既設戸車22は、戸車溝部25の所定の位置に配設され、室内側から戸車溝部25内に貫通する支軸ネジ28により回転自在に支持されている。なお、図示は省略するが、各既設戸車22は、数ミリ程度の上下に移動可能に構成されており、各支軸ネジ28により各既設戸車22の高さを調整することで、障子1の建て付けを調整することができるようになっている。
【0018】
既設シール部材23は、断面視、上下に延在し、シール取付部27に対して小口側から挿入され係合する被取付部23aと、被取付部23aから見込み方向に凸設した摺接部23bと、を有しており、横向きの「T」字型に形成されている。摺接部23bは、サッシ枠の下レールの側面に摺接し、外気や雨水等の浸入を阻止する。
【0019】
次に、新設下框3について説明する。図1(b)に示すように、新設下框3は、既設下框2を復刻したものであり、既設下框材21と同一形状に形成された新設下框材31と、一対の既設戸車22と同一形状に形成された一対の新設戸車32と、既設シール部材23と異なる形状に形成された新設シール部材33と、を備えている。なお、各新設戸車32の下レールとの転接部は、下レールに対し、見込み方向への微小移動(数mm)が可能となるような湾曲形状に形成されている。また、既設下框2と同一形状となる新設下框3の各構成については、説明を省略し、図1および図3において同一の符号を付している。
【0020】
新設シール部材33は、既設シール部材23と同様の被取付部23aと、被取付部23aから見込み方向に向かって斜め下方に延在した新設摺接部33bと、を有している。新設摺接部33bは、シール取付部27の下側に延び、その先端部が二股に分かれている。一方の新設摺接部33bは、「C」字型のシール取付部27の開口部の下側において、見込み方向に凸設しており、他方の新設摺接部33bは、シール取付部27の下端から見込み方向斜め下方に凸設している。この二股に分かれた新設摺接部33bが、サッシ枠の下レール(の側面)に摺接することで、外気や雨水等の浸入をさらに有効に阻止することができる。なお、新設摺接部33bの先端部は、二股に分かれているものに限定されるものではない。
【0021】
続いて、図2および図3を参照して、障子1の改修方法について説明する。なお、改修を行う障子1は、サッシ枠から取り外しているものとして説明する。障子1の改修方法は、障子1の両縦框11に既設下框2を固定している複数の取付ビス12を外すビス離脱工程S1と、ビス離脱工程S1の後、両縦框11から既設下框2を取り外す既設下框取外し工程S2と、既設下框取外し工程S2の後、両縦框11間に新設下框3を装着する新設下框装着工程S3と、新設下框装着工程S3の後、両縦框11に新設下框3を複数の取付ビス12で固定するビス止め工程S4と、を備えている。
【0022】
ビス離脱工程S1において、作業者は、サッシ枠から取り外した障子1を一方の縦框11が上側にした状態とし、ドライバー(ねじ回し)を用いて、既設下框材21のビスホール26に螺合した取付ビス12を取り外す。他方の取付ビス12も同様に取り外す(図3(a)参照)。なお、障子1を平置きして、側方から取付ビス12を取り外してもよい。
【0023】
既設下框取外し工程S2では、取付ビス12を取り外した既設下框2を図3(b)の矢印で示す方向に引っ張って取り外す。なお、既設下框2の取り外しは、一方の縦框11との嵌合状態を解除した後、他方の縦框11との嵌合状態を解除する。また、既設下框2の取り外す際に、ガラス押えパッキンがガラス13から外れた場合には、再びガラス押えパッキンをガラス13に装着させておく。
【0024】
新設下框装着工程S3は、既設下框取外し工程S2とは逆の手順で、新設下框3を各縦框11に取り付け、ガラス13をガラス溝部24に嵌合させる(図3(c)参照)。このとき、新設下框3は、既設下框材21と同一形状に形成された新設下框材31を有しているため、各縦框11等への新設下框3の装着を容易に行うことができる。
【0025】
最後に、ビス止め工程S4では、新規の取付ビス12を使用して、新設下框3と各縦框11とを固定する(図3(d)参照)。既設下框材21と新設下框材31とは、それぞれビスホール26の形状が同一であるため、両縦框11に対する新設下框3の取付ビス12の位置は変わらない。すなわち、新設下框3に特別な加工を行う必要がなく、既設下框2から新設下框3への交換作業は、アルミサッシが設置されている現場で簡単に、かつ、短時間で行うことができる。なお、既設下框2を固定していた取付ビス12をそのまま使用してもかまわないが、下框の交換を必要としている場合、取付ビス12も痛んでいることが多いため新規の取付ビス12に交換することが好ましい。
【0026】
以上の構成によれば、下框のみの部分修繕であるため、改修にかかる費用を低く抑えることができる。また、各既設戸車22と同一形状に形成された各新設戸車32は、既設のサッシ枠のレールに適合しているため、改修した障子1は、円滑な開閉が可能となる。さらに、改修した障子1は、新設シール部材33により、止水性および気密性等の機能を回復することができる。また、劣化した既設シール部材23が、シール取付部27に固着して取り外しが不可能となった場合であっても、新設シール部材33を組み込んだ新設下框3に交換することで、既設シール部材23を取り外す手間を省略することができる。
【符号の説明】
【0027】
1:障子、2:既設下框、3:新設下框、11:縦框、21:既設下框材、22:既設戸車、23:既設シール部材、23b:摺接部、31:新設下框材、32:新設戸車、33:新設シール部材、33b:新設摺接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミサッシで構成された既設の引違い窓における障子の改修方法であって、前記障子の既設下框が、既設下框材に、一対の既設戸車と見付け方向に延在する既設シール部材とを組み込んで構成されたものにおいて、
新設下框材に、一対の新設戸車と見付け方向に延在する新設シール部材とを組み込んで構成され、少なくとも前記新設下框材が前記既設下框材と同一形状に形成された新設下框を用意し、
前記障子の両縦框に前記既設下框を固定している複数の取付ビスを外すビス離脱工程と、
前記ビス離脱工程の後、前記両縦框から前記既設下框を取り外す既設下框取外し工程と、
前記既設下框取外し工程の後、前記両縦框間に前記新設下框を装着する新設下框装着工程と、
前記新設下框装着工程の後、前記両縦框に前記新設下框を複数の取付ビスで固定するビス止め工程と、を備えたことを特徴とする障子の改修方法。
【請求項2】
前記各新設戸車は、前記各既設戸車と同一形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の障子の改修方法。
【請求項3】
前記新設下框材には、小口方向から前記新設シール部材が装着されるシール取付部が、前記既設シール部材のシール取付部と同一形状に形成され、
前記新設シール部材は、前記シール取付部から見込み方向に延び前記引違い窓のレールに摺接する新設摺接部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の障子の改修方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−1970(P2012−1970A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137813(P2010−137813)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000150006)日本総合住生活株式会社 (35)
【出願人】(596178866)株式会社 セイワメタル (2)
【Fターム(参考)】