説明

集成シート

【課題】廃プラスチックや古タイヤを破砕したチップを利用し、集成したシートを、強度特に引っ張り強度を持たせ、且つ透水性と通気性を確保しながら板厚を小さく形成し、材料節減を図ると共に重量を軽減し、それによって、持ち運びを容易にし、保管場所の使用を効果的にし、搬送効率を向上させ、トータルコストの低減を可能とした集成シートを提供する。
【解決手段】廃プラスチックや古タイヤ等を破砕して成形した複数のチップ2を、接着剤8でもって、シート状に集成固着すると共に、シート状に集成固着した前記チップ2の上下何れか一方の面に網目状シートを接着して、板厚を小さくする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工事現場に於ける仮通路上の補強鉄板の上に敷設され、自動車が通行する際の溜まり水によるスリップ防止や振動防止を図ったり、台車等で荷物を移動する際に床面に敷設して、床面の損傷等を防止する集成シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、台車等によって荷物を移動する際の床面保護として、合成樹脂製のシートが知られている。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニル系樹脂等を材料としたシートであって、表と裏両面に凹凸を形成し、緩衝作用を持たせて床面等を保護し、加えて荷物の移動作業を円滑にし、台車等の移動装置から受ける加圧力や荷物が当たったりした時に発生する窪みを効果的に復元させるようにしたものがある。(特許文献1参照)
【0003】
こうした従来技術には、確かに相応の利点があり使用されてはいるものの、近年では更に安価にという要望と環境対策の一環としての産業廃棄物処理を兼ねて、台車等によって荷物を移動する際の床面保護や工事現場に於ける仮通路上の補強鉄板の上に敷設し、自動車等の通行を良好ならしめるシートとして、廃プラスチックを利用したものが開発されている。そして廃プラスチックを利用したシートの成形方法としては、廃プラスチックを溶融して板状に成形する方法もあるが、この方法は当然の如く溶融するという工程が必要であって、価格的にも問題があり、多くは廃プラスチックや古タイヤを破砕してチップ状とし、これを接着剤を使用して集成し、圧縮成形するという方法が取られている。
【特許文献1】特開平8−119333
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
然しながら、従来技術に於いてはチップの破砕平均寸法との関係で、シートの厚さは、比較的大きくせざるを得ないのが現状である。何故なら、チップを集成して圧縮成形すると、チップ同士の多くは点接触している関係で、点接合とならざるを得ず、シートとしての一般的な強度を確保するには、接触点を多くする必要があるからである。接触点を多くするということは、圧縮成形時にチップを比較的多くの段数に並べるようにする(沢山のチップを集める)ことである。2段並べとして単純計算すると、チップの破砕平均寸法が3mm程であることから、6mm前後となるが、これではチップ同士の接触点が少なく強度的に問題があり、同様に3段とすると9mmとなる。こうした状況から、廃プラスチックや古タイヤを破砕したチップを利用したシートの厚さは10mm前後とするのが一般的である。特に、工事現場に於ける仮通路上の補強鉄板の上に敷設するシートや屋外で使用するシートに於いては、雨水等の除去を行うために透水性や通気性を持たせることが大切で、板厚と強度的なことのみを考えて、チップの圧縮成形時、極端な圧力を加えて点接触を少なくするのではなく、点接触即ち点接合部分を適当に残す必要があり、この点からも板厚は大きくならざるを得ないのであるが、どちらかというと板厚や強度に重点がかかり透水性や通気性への配慮が疎かになりがちであった。板厚が大きいということは、重量が嵩み、それに伴い持ち運びが困難となり、保管場所も広く必要であり、搬送に於いても効率が悪く、材料も多く使用することになり、コスト的にも問題があり、更なる改良が望まれていた。
【0005】
本発明は、こうした従来技術に鑑み、廃プラスチックや古タイヤを破砕したチップを利用し、集成したシートを、強度特に引っ張り強度を持たせ、且つ透水性と通気性を確保しながら板厚を小さく形成し、材料節減を図ると共に重量を軽減し、それによって、持ち運びを容易にし、保管場所の使用を効果的にし、搬送効率を向上させ、トータルコストの低減を可能とした集成シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、廃プラスチックや古タイヤ等を破砕して成形した複数のチップを、接着剤でもって、シート状に集成固着すると共に、シート状に集成固着した前記チップの上下何れか一方の面に網目状シートを接着して、板厚を小さくするようにしたものである。この様な構成にしたことにより、雨等により発生する溜まり水等の除去或いは排水機能やシートとしての強度特に引っ張り強度を確保した状態で、材料の節減が可能となり、それに伴い材料費の低減と重量の軽減が図れ、重量軽減により持ち運びを容易にし、板厚を小さくしたことで保管場所の使用を効果的にし、更に搬送効率が向上し、トータルコストを低減させ得る集成シートを提供することが出来る。
【0007】
請求項2記載の発明は、シート状に集成固着した前記チップの上下両面に網目状シートを接着したものである。この様な構成にしたことにより、材料節減を図りながら、シートとしての強度を更に向上させ、且つシートとしての耐久性を向上させた集成シートを提供することが出来る。
【0008】
請求項3記載の発明は、シート状に集成固着した各チップ間に、適度の隙間を残すようにして、透水性及び通気性を持たせたものである。この様な構成にしたことにより、雨等により発生する溜まり水等の除去或いは排水をより効率的に行なえる集成シートを提供することが出来る。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上説明したように構成されているので、下記に説明するような効果を奏する。
【0010】
本発明による集成シートは、廃プラスチックや古タイヤ等を破砕して成形した複数のチップを、接着剤でもって、シート状に集成固着すると共に、シート状に集成固着した前記チップの上下何れか一方の面に網目状シートを接着して、板厚を小さくするようにしたので、雨等により発生する溜まり水等の除去或いは排水機能やシートとしての強度特に引っ張り強度を確保した状態で、材料の節減が可能となり、それに伴い材料費の低減と重量の軽減が図れ、重量軽減により持ち運びを容易にし、板厚を小さくしたことで保管場所の使用を効果的にし、更に搬送効率が向上し、トータルコストを低減させることが出来る。
【0011】
更に、本発明による集成シートは、シート状に集成固着した前記チップの上下両面に網目状シートを接着したので、材料節減を図りながら、シートとしての強度を更に向上させ、且つシートとしての耐久性を向上させることが出来る。
【0012】
更に、本発明による集成シートは、シート状に集成固着した各チップ間に、適度の隙間を残すようにして、透水性及び通気性を持たせたので、雨等により発生する溜まり水等の除去或いは排水をより効率的に行なうことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図3に基づき詳細に説明する。図1は本発明による集成シートの一実施形態を示す平面図で、図2は本発明による集成シートの内部を説明する図1のA−A断面図、図3は本発明による集成シートの成形方法の概要を示す簡略図である。
【0014】
それでは、図1及び図2を用いて、その構成を説明する。1は、産業廃棄物である廃プラスチックや古タイヤ等を破砕してチップ状としたものを集成し、接着剤を使用してシート状に圧縮成形した集成シートであり、図1に於いては、平面視長方形を呈しているが、これは実施の形態を示す一例であって、特に限定したものではない。更に、大きさ(縦、横の長さ)についても使用目的や使用する場所或いは使用の仕方によっても異なるので、平面形状と同様に限定するものではなく、必要に応じて大きさを決めることが可能である。但し、製品として考える場合、沢山の種類を生産するのは、管理上の問題を含めて、合理的でないのは明らかであり、汎用性のある大きさのものを幾つか用意して、用意した以外の大きさへの対応は、用意したものを効果的に利用(例えば単にカット)するようにしなければならないのは当然のことである。
【0015】
図2は、集成シート1の内部構造を示す拡大図でもあり、本図を用いて、更に詳細に説明する。集成シート1は、廃プラスチック(プラスチックの種類はこだわらずに多種多様使用可能であるが、同一の材料を使用するのが好ましい。)や古タイヤ等を破砕して作られた複数個のチップ2と、ウレタン或いは他の適当な材料で作られた接着剤8と、上下両面に接着された網目状シート3及び4でもって構成されている。複数個のチップ2は、前記接着剤8を介在させてシート状に集成成形されていて、集成成形されたシート状のチップ2の上下両面に網目状シート3及び4が接着されている。網目状シート3及び4は、ナイロン繊維を使用するのが好ましいが、綿や麻或いは竹等の繊維を使用しても良い。尚、本実施形態では、網目状シートを上下両面に接着するとしているが、両面にこだわる必要は無く、いずれか一方の面に設けるだけでも良い。
【0016】
図2によって明らかなように、チップ2は、前述したように、廃プラスチックや古タイヤ等を破砕したものであるので、角張った形状をしており、平均寸法は3mm程のものである。不規則状に配列された隣り合う各チップ2は、点接触しているものと若干の面接触をしているものとがあり、点接触している部分は接合点7となり、面接触している部分は接合面5となっている。そして接合面5は、接着剤8によって固着され、同様に接合点7も固着されている。接着剤8は、ウレタンゴムを使用していて、これはウレタンゴムが比較的弾性力に富んでおり、シートに適しているからであるが、ウレタンゴムに代えて他の材料を使用しても良いのは云うまでもなく、更に、接着剤の材料として、ウレタンゴム等の廃材を利用すれば、さらに効果的である。
【0017】
この様な構成を有する集成シート1について、引き続き説明する。チップ2は、図2を参照して判るように、大雑把に見ると2段に積み重ねられた状態となっている。前述した如くチップ2が角張った形状をしているので、多くが点接触である為、接合強度が弱く、結果として、シートとしての強度は弱くなっている。網目状シート3,4は、これを補強するものであって、該網目状シート3,4により、各チップ2の接合強度不足を補い、板厚Xを小さく抑えながら、シートとしての強度を充分に確保しているのである。図2による実施形態では、チップ2の配列が2段並べとなっているので、板厚Xは略5mmとなっている。
【0018】
更に、本発明にとって重要な点は、隙間6と網目状シート3,4である。網目状シート3,4が、シートとしての強度を補強する機能を有していることは、既に述べた通りであるが、前記隙間6と協働して、集成シート1に於ける透水性と通気性を良好ならしめている。仮に、集成シート1を工事現場で使用した場合を想定すると、雨等により水が溜まることが往々にしてあり、溜まった状態で自動車等が走行すると、スリップして事故につながりかねない。従って、水溜りを残さぬことが大切で、早目に水を除去或いは排水する必要がある。本発明に於いては、集成シート1上に溜まった水は、網目状シート3の網目を通して、チップ2を集成してシート状となった部分に至り、隙間6に入り込み、網目状シート4の網目より流れ出すように考慮されており、水の除去或いは排水を可能としている。この様な観点から、隙間6の存在は重要であり、シートの強度確保と厚さを小さくすることのみを考え、成形(例えば圧縮成形)すると、水の除去或いは排水機能がなくなることはないものの、悪くなってしまうことになる。本発明に於いては、網目状シートの働きで強度的な部分の心配が無くなるので、集成成形時の隙間6の調整が簡単に行なえるようになる。
【0019】
次に、図3を用いて、集成シート1の成形方法の概要を説明する。図3は、集成プレス雄型9と同じく雌型10を示す簡略図であり、他の部分は省略してある。集成プレス雌型10に、予めウレタンゴム等で作られた接着剤8を適量まぶした(或いは、接着剤の中にさっと浸して引き上げた)チップ2を、必要量投入し、集成プレス雌型10上部には網目状シート3を配置した後、集成プレス雄型をP方向に駆動させ、圧縮成形する。尚、成形時に於ける集成プレス雄型9と集成プレス雌型10は、適度に加熱されていて、接着剤8をまぶしたチップ2及び網目状シート3は、加熱圧縮されて良質の集成シート1として成形されることとなる。又、網目状シート3とチップ2との接着は、前記接着剤8のみでも良いが、必要によっては、網目状シート3用の接着剤(図示せず)を、前記網目状シート3に於けるチップ2との接合面に塗布して加熱圧縮成形するようにしても良い。尚、図2に示すように上下両面に網目状シートを設ける場合は、集成プレス雌型10にチップ2を投入する前に、網目状シート4を前記集成プレス雌型10内に配置させれば良いのである。
【0020】
本発明による集成シート1は、既に述べたように、工事現場に於ける仮通路上の補強鉄板の上に敷設され、自動車が通行する際の溜まり水によるスリップ防止や振動防止を図ったり、台車等で荷物を移動する際に床面に敷設して、床面の損傷等を防止する為に使用されるのを主とするが、ビル等屋上の歩廊マットや幼稚園等の屋外運動場マットそして老人ホームの廊下マット更には室内カーペットの下敷きクッション材としても使用可能であり、単に防音や防振を狙ったシートとしても効果的であるので、念のため付言して置くこととする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明による集成シートの一実施形態を示す平面図である。
【図2】本発明による集成シートの内部を説明する図1のA−A断面図である。
【図3】本発明による集成シートの成形方法の概要を示す簡略図である。
【符号の説明】
【0022】
1 集成シート
2 チップ(廃プラスチックチップ)
3 網目状シート
4 網目状シート
5 接合面
6 隙間
7 接合点
8 接着剤
9 集成プレス雄型
10 集成プレス雌型
11 チップ(廃プラスチックチップ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックや古タイヤ等を破砕して成形した複数のチップを、接着剤でもって、シート状に集成固着すると共に、シート状に集成固着した前記チップの上下何れか一方の面に網目状シートを接着して、板厚を小さくするようにしたことを特徴とする集成シート。
【請求項2】
シート状に集成固着した前記チップの上下両面に網目状シートを接着したことを特徴とする請求項1記載の集成シート。
【請求項3】
シート状に集成固着した各チップ間に、適度の隙間を残すようにして、透水性及び通気性を持たせたことを特徴とする請求項1及び2記載の集成シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−2550(P2006−2550A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206578(P2004−206578)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(301038438)株式会社ケーエス商会 (7)
【Fターム(参考)】