説明

離型用フィルム

【課題】金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備える離型用フィルムを提供する。
【解決手段】融点が140℃以上のフッ素含有ポリマーからなり、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下である離型用フィルム。なお、フッ素含有ポリマーは、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光半導体素子や半導体素子のモールド成形時、特には、LEDレンズのモールド成形時に用いられる離型用フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、LED、フォトアイソレータ、フォトトランジスター、フォトダイオード、CCD、CMOS等の光半導体素子や、トランジスター、IC、LSI、超LSI等の半導体素子は、シリコーンゴム組成物やエポキシ樹脂組成物を封止材とし、モールド成形により封止されている。
【0003】
上述の光半導体素子や半導体素子の封止にはモールド成形装置が用いられ、シリコーンゴム組成物やエポキシ樹脂組成物が封止材として金型へ充填され、成形される。
【0004】
金型と成形品とを離型する方法としては、例えば、金型と充填される封止材との間に離型用フィルムを介在させる方法が実用化されている(特許文献1参照)。離型用フィルムは、モールド成形装置内でRoll to Rollで供給され、成形加工温度に温調されている金型に入り、真空で吸引されて金型に密着し、その後、封止材が充填される。一定時間後に金型が開かれると、離型用フィルムは金型に吸引された状態で、成形品が離型用フィルムから剥がされる。この離型用フィルムには、例えば、熱可塑性フッ素樹脂の四フッ化エチレン−エチレン共重合樹脂(ETFE樹脂)や四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP樹脂)からなる単層のフィルムが使用されている(特許文献2参照)。
【0005】
しかし、このような離型用フィルムを、シリコーンゴム組成物を封止材とするLEDレンズの成形に用いると、例えば底面がφ6mm程度で高さが4mm程度の砲弾型レンズ形状に対しては、離型用フィルムが真空で吸引されても伸びないことがあり、伸びても金型に密着せず、設計寸法通りのLEDレンズが得られない不具合がある。また、離型用フィルムの厚さを薄くして伸びを改善すると、真空で吸引される際に金型のエッジで離型用フィルムが切れる不具合がある。このように離型用フィルムの真空成形時の成形倍率(成形前のフィルム面積に対する成形後のフィルム面積の比)が2倍以上になる場合において、上記の不具合が発生しやすい。
【0006】
また、離型用フィルムとして、結晶成分にブチレンテレフタレートを含む結晶性芳香族ポリエステル含有の樹脂組成物からなるフィルムを使用する方法が知られている(特許文献3参照)。
【0007】
しかし、離型用フィルムとして、特許文献3に示すように、ブチレンテレフタレートを含む結晶性芳香族ポリエステル含有の樹脂組成物からなるフィルムをLEDレンズの成形に用いる場合、離型用フィルムが真空で吸引されると金型へ密着はするものの、降伏点を超えて伸ばされるため離型用フィルムが部分的に薄くなり、成形されたLEDレンズ表面に凹凸や皺が生じる不具合がある。また、シリコーンゴム組成物としては付加型液状シリコーンゴムが用いられるが、離型用フィルム中に存在する化合物が付加型液状シリコーンゴムの触媒毒となって硬化阻害が起こり、離型用フィルムとの接触面が硬化せずにゲル状粘着物が残る不具合がある。このため、付加型液状シリコーンゴムによるLEDレンズのモールド成形においては、離型用フィルムとして好適に使用できるフィルムがないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平8−142105号公報
【特許文献2】特開2001−310336号公報
【特許文献3】特開2007−224311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記に鑑みなされたもので、付加型液状シリコーンゴムのモールド成形において、金型や成形品との剥離性に優れる離型用フィルムであって、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、140℃前後の使用温度における耐熱性も有する離型用フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の離型用フィルムの特徴は、融点が140℃以上のフッ素含有ポリマーからなり、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下であることを要旨とする。
【0011】
本発明の離型用フィルムに係るフッ素含有ポリマーは、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体であるのが好ましい。
【0012】
本発明の離型用フィルムに係るフッ素含有ポリマーは、酸化防止剤、熱安定剤、シリカ粒子などの無機フィラー、帯電防止剤、滑剤、着色剤、顔料に属する1つ又は複数の添加剤をさらに含むことができる。
【0013】
本発明の離型用フィルムは、光半導体素子や半導体素子を樹脂モールド成形する際に用いられるのが好ましい。
【0014】
本発明の離型用フィルムは、シリコーン樹脂組成物からなるLEDレンズをモールド成形する際に用いられるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写製に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備える離型用フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの側面図である。
【図2】(a)本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの金型の上面図である。(b)本発明の実施形態に係る砲弾型LEDレンズの金型の図2(a)のA−A矢視断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る離型用フィルムのフィルム製造装置の概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る、図3に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明者らは、上記目的を達成するために種々検討した結果、融点が140℃以上のフッ素含有ポリマーからなり、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下である離型用フィルムは、金型や成形品との剥離性に優れ、しかも、金型の形状が設計寸法通りに成形品へ転写される型形状転写性に優れるとともに、成形品の表面にゲル状粘着物が残ることなく成形品の表面平滑性が得られ、さらには、耐熱性をも備えることができることを究明した。
【0018】
本発明におけるフッ素含有ポリマーは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、ポリビニルフロライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・エチレン・プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・ヘプタフルオロペンテン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・(パーフルオロブチル)エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・エチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・プロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・パーフルオロアルキルビニルエ−テル共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド・テトラフルオロヨードプロポキシトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフロライド共重合体、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体、クロロトリフルオロエチレン・ビニリデンフロライド共重合体、ビニリデンフロライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド・トリフルオロエチレン共重合体などの重合体または共重合体があげられ、また、これらの重合体のグラフト、ブロック、ブレンドポリマーでもよく、たとえば、ビニリデンフロライド共重合体にクロロトリフルオロエチレン・ビニリデンフロライド共重合体をグラフトさせたもの、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体とビニリデンフロライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体のブロックポリマーなどが挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して使用してもよい。上記の中でも、PVDF、PVF、THV、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフロライド共重合体、クロロトリフルオロエチレン・ビニリデンフロライド共重合体、ビニリデンフロライド・ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ビニリデンフロライド・トリフルオロエチレン共重合体が好ましく、THVが特に好ましい。市販品としては、例えば、住友スリーエム(株)社が販売しているダイニオンTHVシリーズ(X310G、400G、415G、500G、500GZ、610G、610GZ、815G、815GZ)が挙げられる。
【0019】
フッ素含有ポリマーには、必要に応じて各種添加剤を本発明の特性を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、酸化防止剤、熱安定剤、シリカ粒子などの無機フィラー、帯電防止剤、滑剤、着色剤、顔料などが挙げられる。帯電防止剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤系、両性イオン界面活性剤系、π電子共役系高分子、導電性カーボンブラックが好ましい。
【0020】
本発明で用いるフッ素含有ポリマーの融点(JIS K7121に従い示差走査熱量測定により加熱速度毎分20℃で求めた融解ピーク温度である。)は、140℃以上であり、140〜250℃が好ましく、150〜230℃がより好ましい。付加型液状シリコーンゴムのモールド成形温度が120〜140℃程度であるため、フッ素含有ポリマーの融点が140℃未満であると、離型用フィルムがモールド成形時に収縮したり、溶融あるいは溶断してしまう懸念がある。他方、融点が250℃を超える場合、離型用フィルムの140℃における貯蔵弾性率が所望の範囲を超える傾向が有る。
【0021】
本発明の離型用フィルムは、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下であり、0.1〜50MPaが好ましく、0.5〜45MPaがより好ましい。140℃における貯蔵弾性率が高すぎると、離型用フィルムが真空で吸引されても伸びないことがあり、伸びても金型に密着せず、所望の寸法が得られなかったり、金型のエッジで破れるといった不具合を生じる。特に、成形倍率(成形前のフィルム面積に対する成形後のフィルム面積の比)が2倍以上の場合において、このような不具合が発生しやすいため好ましくない。他方、140℃における貯蔵弾性率が小さすぎる場合は、モールド成形時に離型用フィルムに皺が入ったり、溶断してしまう懸念がある。
【0022】
本発明の離型用フィルムは、例えば、溶融押出法、溶融キャスト法、カレンダー法等、従来公知の方法によって成形することができ、溶融押出法が生産性が高く好ましい。溶融押出法としては、Tダイ法、インフレーション法等が挙げられる。以下の例では、Tダイスを用いた溶融押出法により離型用フィルムを成形する方法を挙げる。
【0023】
このような方法で得られる離型用フィルムは、フッ素含有ポリマーを単軸押出機あるいは二軸押出機等の押出機を使用し、フッ素含有ポリマーの特性に応じて押出機内及び成形材料間の間隙に存在する空気を窒素ガスで置換した雰囲気下において、溶融混練し、押出機先端に配置されたTダイス先端のリップ部から溶融押し出された離型用フィルムを引取機内の圧着ロールと冷却ロールとの間に直接挟んで冷却し、あるいは、圧着ロール側と冷却ロール側の両方もしくは片方からセパレータを挿入して挟んで冷却し、次いで巻取機で巻取管に順次巻取ることにより得られる。
【0024】
図3は、上述の方法で離型用フィルムを製造するフィルム製造装置の概略を示した構成図である。また、図4は、図3に示したフィルム製造装置の材料投入ホッパーの周辺の断面図である。図3において、フィルム製造装置は、大略、材料投入ホッパー2、押出機1、Tダイス7、引取機11、巻取機15を備えて構成される。材料投入ホッパー2は、成形材料を投入するようになっており、図4に示すように、材料投入ホッパー2の押出機1に接続される途中において、窒素ガス供給用パイプ3がスペーサー3aを介して挿入されている。また、窒素ガス供給用パイプ3は、材料投入口1cのほぼ中心軸に沿うように屈曲され、その先端は押出機1内の押出スクリュー1aの外周近傍まで延設されている。材料投入ホッパー2から投入される成形材料中あるいは押出機1内に含まれる酸素は、押出機1の押出スクリュー1aで成形材料が混合、撹拌される際に、窒素ガス供給用パイプ3に供給される窒素ガスで置換されるようになる。
【0025】
押出機1は、成形材料を押出スクリュー1aによって混合、撹拌しながら矢印B方向に搬送させ、押出機1のシリンダー1b内に組み込まれた電熱手段によって、成形材料を加熱、溶融する。このように溶融されて搬送される成形材料は、図3に示す接続管4を介してフィルター手段5に送給される。そして、フィルター手段5によって、未溶融の成形材料を分離し、溶融された成形材料をギヤポンプ6へ送給する。ギヤポンプ6では、溶融された成形材料の圧力を高めながらTダイス7に溶融成形材料を押し出す。Tダイス7では、所定圧力で溶融成形材料を押し出し、Tダイス7のリップ部7aから所定厚み、所定幅のフィルム8を成形する。このようにして成形されたフィルム8は、引取機11の冷却ロール10の外周面上に引き取られながら圧着ロール9で所定厚みに調整され、さらに、冷却、固化され、搬送ロール対12、13で巻取機15に搬送される。
【0026】
巻取機15では、フィルム8は、案内ロール15a、15b、15cで案内されて巻取管16によって巻き取られる。なお、搬送ロール対12、13と案内ロール15aとの間には、厚さ測定器14が配設されており、所望の厚さとなるように、厚さ測定器14で測定された厚さに基づいて、冷却ロール10の周速度を調整、制御するようになっている。これにより上記離型用フィルムが形成される。
【0027】
離型用フィルムは、成形品が必要とする表面形状に応じて、フィルムの表面形状を形成すればよい。例えば、LED等でその表面が鏡面となる場合、離型用フィルムの表面を鏡面にした離型用フィルムを用いる。また、ICやLSI等はその表面に微細な凹凸を形成させるので、離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成した離型用フィルムを用いる。
【0028】
離型用フィルムの表面形状を形成する方法としては、表面を鏡面にする場合は、前述した金属製の冷却ロールの表面を鏡面にしておき、該冷却ロールに溶融状態にある離型用フィルムを圧着ロールで圧着し、離型用フィルムの表面を鏡面に整面する方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして鏡面仕上げのPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
【0029】
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合は、前述した金属製の冷却ロールの外周面に微細な凹凸を形成しておき、該冷却ロールに溶融状態にある離型用フィルムを圧着ロールで圧着する際、冷却ロールの外周面に形成された微細な凹凸を離型用フィルム表面に転写させる方法がある。また、セパレータを用いる場合、セパレータとして表面をマット加工したPETフィルムやOPPフィルムを使用し、その表面を転写させる方法がある。
【0030】
離型用フィルムの表面を鏡面とする場合、その表面粗さが、JIS B0601−2001に準拠し、速度0.6mm/秒、カットオフ値0.8mm、評価長さ8.0mmで測定される算術平均粗さRaが0.10以下、最大高さ粗さRzが1.00以下になるように、表面を適宜形成すればよい。算術平均粗さRaが0.10以下及び最大高さ粗さRzが1.00以下であれば、離型用フィルムの表面が転写される成形品の表面は平滑となる。
【0031】
離型用フィルムの表面に微細な凹凸を形成する場合、その表面粗さが、上記と同様に測定される算術平均粗さRaが0.5以上、最大高さ粗さRzが5.00以上となるように、表面を適宜形成すればよい。
【0032】
本発明の離型用フィルムは、厚さが5μm〜500μmの範囲であり、好ましくは10μm〜400μmの範囲であって、使用する金型の形状に応じて適宜選択すればよい。離型用フィルムの厚さを5μm未満とした場合、使用時に金型に追従した際、離型用フィルムが伸ばされて薄くなって裂けたり、封止材の圧力で破れたりする不具合があるので好ましくない。また、500μmを超える場合、離型用フィルムの厚さが障害になり、微細な構造を有する金型に追従できなくなることや、金型の複雑な形状が成形品に転写されなくなる不具合があるので好ましくない。
【実施例】
【0033】
以下に実施例を示すが、これらにより本発明は何ら制限を受けるものではない。
【0034】
表1に示す、実施例1〜4、比較例1、2で順に用いた離型用フィルムの材料(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)は下記の通りである。
(a)THV415G:商品名、ダイニオン社製、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、融点155℃
(b)THV500GZ:商品名、ダイニオン社製、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、融点165℃
(c)THV610GZ:商品名、ダイニオン社製、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、融点185℃
(d)THV815G:商品名、ダイニオン社製、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体、融点225℃
(e)アフレックス25N−1250NT:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
(f)アフレックス100KN−500NT−10:商品名、旭硝子社製、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体、融点260℃
【0035】
以下、表1に基づき、離型用フィルムの作製、貯蔵弾性率の測定、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性及び実使用性について詳述する。なお、比較例においても同様に適用される内容となっている。
【0036】
【表1】

【0037】
(離型用フィルムの作製)
フッ素含有ポリマーをφ30mm、L/D=28の単軸押出機(田辺プラスチックス機械社製)に供給し、圧縮比2.9のフルフライト押出スクリューを使用してシリンダー温度230℃〜270℃の条件下で溶融混練し、幅500mmのTダイスからダイス温度260℃〜270℃の条件下で連続的に押し出した。この押し出しした離型用フィルムを、引取機内で圧着ロールと冷却ロールとの間に挟んで冷却し、巻取機において両端部をスリット刃で裁断し、離型用フィルムを巻取管に巻き取ることにより、表1に記載の厚さで、幅300mm、長さ50mの離型用フィルムを製造した。尚、離型用フィルムの表面は、圧着ロール側がマット面、冷却ロール側が鏡面である。
【0038】
(貯蔵弾性率の測定)
離型用フィルムの流れ方向(MD)と幅方向(TD)それぞれについて、レオメトリックス社製SOLIDS ANALYZER RSAII〔商品名〕を使用し、引張モード、周波数1Hz、昇温速度5℃/min、歪み0.1%の条件下で温度140℃における貯蔵弾性率を測定した。結果を表1に示した。
【0039】
(評価の方法)
図1は、リード線21a、21bを備えた砲弾型LEDレンズ20の側面図である。評価は、図1に示すレンズ形状を具備する、図2(a)、(b)に示す金型を使用し、金型30の表面に複数のレンズ成形凹部31に沿って離型用フィルムを吸着させた後、シリコーンゴム組成物を滴下して熱プレス成形し、剥離性、耐熱性、型寸法転写性、表面平滑性をそれぞれ評価した。
【0040】
具体的には、140℃に加熱した金型に対して離型用フィルムのマット面が金型側、鏡面がエアー側になるよう離型用フィルムを張設し、真空で吸引して離型用フィルムを金型に吸着させた。次いで、離型用フィルム上にシリコーンゴム組成物RHODORSIL RTV141(BLUESTAR SILICONES社製)を滴下し、これらに表面がハードクロムメッキされた平板金型を押し当て、二つの金型で挟持させて熱プレス成形した。成形した積層品の、離型用フィルムと硬化したシリコーンゴムとの剥離性、離型用フィルムの耐熱性、硬化したシリコーンゴムについて型寸法転写性と表面平滑性を評価した。熱プレス成形は、温度140℃、圧力10kg/cm、5分間の条件で実施した。図2の砲弾型レンズ成形部1箇所における成形倍率は計算上で約2.7倍である。
【0041】
(剥離性)
剥離性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物が離型用フィルム上に残ることなく剥離できた場合は「○」、シリコーンゴム組成物が部分的に破断して離型用フィルム上に残存した場合は「×」として示した。
【0042】
(耐熱性)
耐熱性の評価は、硬化したシリコーンゴム組成物を剥離した離型用フィルムを目視で観察し、溶融、溶断がなくフィルム形状を保持していた場合は「○」、離型用フィルムに溶融、溶断があった場合を「×」として示した。
【0043】
(型寸法転写性)
型寸法転写性は、硬化したシリコーンゴム組成物の寸法を測定し評価した。レンズ高さの評価基準を、穴深さ4mmについて離型用フィルムの厚さを減じた寸法からさらに−0.1mm以内の範囲、すなわち、((4−離型用フィルムの厚さ)−0.1)mm以上とした。25個のレンズについてすべて基準以内だった場合は「○」、1個でも基準を満たさない形状があった場合を「×」として示した。
【0044】
(表面平滑性)
表面平滑性は、硬化したシリコーンゴム組成物の表面状態を目視で評価した。シリコーンゴムの表面に凹凸や皺の発生がなかった場合を「○」、凹凸や皺の発生があった場合を「×」として示した。
【0045】
(実使用性)
実使用性については、モールド成形装置で樹脂モールド成形することにより確認・評価した。具体的には、モールディング装置として、アピックヤマダ社製のモールド成形装置G-LINE manual press(商品名)において、シリコーンゴム組成物としてRHODORSIL RTV141(BLUESTAR SILICONES社製商品名)を用い、実使用性を目視により確認した。
【0046】
実使用性の評価は、下記の項目全て満足した場合を「○」、どれかに不具合があった場合を「×」とした。
(1)モールド成形装置内で離型用フィルムが搬送される際にフィルムが弛むことなく供給された。
(2)吸着時にフィルムに皺の発生がなかった。
(3)熱プレス成形後、離型用フィルムとシリコーンゴム組成物との剥離性が良好であった。
(4)硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形され、表面に凹凸や皺がなく平滑であった。
(5)離型用フィルムに破れや溶断、シリコーンゴム組成物の残りがなく、金型に汚れがなかった。
【0047】
このような結果から、比較例1の厚さ25μmのETFEフィルムは、金型内で吸着される際にフィルムが破れたため実使用性が得られなかった。比較例2の厚さ100μmのETFEフィルムは、型寸法転写性が劣り、硬化したシリコーンゴム組成物が所望の形状に成形されなかったため実使用性が得られなかった。
【0048】
これに対し、本発明による各実施例の離型用フィルムは、剥離性が得られていることに加え耐熱性を有し、型寸法転写性と表面平滑性に優れ、さらに、実使用性が付与されていることが明らかとなる。このことから、本発明によれば、封止材を成形加工して得られる成形品との剥離性に優れ、しかも、形状と表面性に優れる成形品を得られる離型用フィルムを得ることができる。
【0049】
本発明の実施例の離型用フィルムは、上記のように、シリコーン樹脂組成物からなるLEDレンズの成形モールドについて評価したが、本発明の離型用フィルムは光半導体素子や半導体素子を樹脂モールド成形する際にも有用であることは言うまでもない。
【0050】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、そのような変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0051】
1 押出機
2 材料投入ホッパー
3 窒素ガス供給用パイプ
4 接続管
5 フィルター
6 ギヤポンプ
7 Tダイス
7a リップ部
8 フィルム
9 圧着ロール
10 冷却ロール
11 引取機
12、13 搬送ロール対
14 厚さ測定器
16 巻取管
17a、17b 送り出しロール
18a、18b セパレータ
20 砲弾型LEDレンズ
21a、21b リード線
30 モールド金型
31 レンズ成形凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融点が140℃以上のフッ素含有ポリマーからなり、動的粘弾性での140℃における貯蔵弾性率が50MPa以下であることを特徴とする離型用フィルム。
【請求項2】
前記フッ素含有ポリマーは、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の離型用フィルム。
【請求項3】
前記熱可塑性エラストマー組成物は、酸化防止剤、熱安定剤、シリカ粒子などの無機フィラー、帯電防止剤、滑剤、着色剤、顔料に属する1つ又は複数の添加剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の離型用フィルム。
【請求項4】
前記離型用フィルムは、光半導体素子や半導体素子を樹脂モールド成形する際に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型用フィルム。
【請求項5】
前記離型用フィルムは、シリコーン樹脂組成物からなるLEDレンズをモールド成形する際に用いられることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の離型用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−71382(P2013−71382A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213445(P2011−213445)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】