説明

離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム

【課題】3次元形状を有するエポキシプリプレグ成型用の離型フィルムを提供することであり、成型品の表面欠点、皺抑制、離型性に優れた離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムを提供すること。
【解決手段】実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のみからなる二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであり、基材層(A層)および粒子含有層(B層)を有し、A層の粒子含有量Wが0.5質量%以下であり、B層に含有する粒子の平均粒径Dが2μm以上8μm以下であり、B層の厚さTに対するB層に含有する粒子の平均粒径Dの比率(D/T)が0.5以上、2以下である離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムに関し、特に金型プレス成型で製造する際に好適に使用される離型フィルムに関する。より詳細には、3次元形状に成型されるエポキシプリプレグの金型プレス成型の製造に好適に用いることができる離型フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスクロス、炭素繊維、アラミド繊維などの強化繊維基材にエポキシ樹脂など未硬化マトリクス樹脂を含浸・硬化させてなる繊維強化複合材料は、成型性、薄肉、軽量、高剛性、生産性、経済性に優れ、電気・電子機器部品、自動車機器部品、パソコン、OA機器、AV機器、携帯電話、電話機、ファクシミリ、家電製品、玩具用品などの電気・電子部品や筐体に頻繁に使用されている。
【0003】
繊維強化複合材料の代表的な製造方法として、連続した強化繊維に未硬化の樹脂を含浸させた繊維強化プリプレグを積層配置して加熱、加圧プレスして硬化させる方法があるが、加熱プレスする際に離型フィルムが使用されている。
【0004】
これら用途に使用される離型フィルムとしては、フッ素系フィルム、シリコン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどが用いられてきた。しかしながら、従来から離型フィルムとして用いられているフッ素系フィルムは、耐熱性、離型性には優れているが、高価である上、使用した後の廃棄焼却処理において燃焼し難く、かつ、有毒ガスを発生するという問題点があり、また、エポキシプリプレグの離型フィルムとして用いた場合、成型金型汚れが発生しやすく、生産性が悪化するという問題点があった。また、シリコン塗布ポリエチレンテレフタレートフィルムは、シリコン成分の移行により、金型汚れや、プリプレグの品質を損なうおそれがあった。また、ポリメチルペンテンフィルムは、離型性には優れているが、成型時にフィルムの皺が入りやすいという問題があった。また、ポリプロピレンフィルムは、耐熱性に劣り離型性が不十分であった。
【0005】
一方、二軸延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムは、耐熱性、耐薬品性に優れることから、離型用途に用いられていることが知られており、(1)シリコーン樹脂からなる塗布層を設けたポリフェニレンスルフィドフィルムが提案されている(特許文献1参照)。また、(2)表面欠陥が少なく、加工性、表面平滑性に優れたポリフェニレンスルフィドフィルムが提案されている(特許文献2、3参照)。しかし、これらの離型用ポリフェニレンスルフィドフィルムは、3次元形状を有するエポキシプレプレグ成型の離型フィルムとして用いた場合、表面が平滑であるため、成型品の表面欠点が転写しやすく、成型時に皺が入りやすい問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−286084号公報
【特許文献2】特開2007−152761号公報
【特許文献3】特開2008−110549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は上記問題点を解決すること、すなわち、3次元形状を有するエポキシプリプレグ成型用の離型フィルムを提供することであり、表面が粗面化され、成型品の表面欠点、皺抑制、離型性に優れた離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィドフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、
(1)少なくとも2層(かかる2層をそれぞれA層、B層という)の実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のみからなる層が含まれる二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、A層に含まれる粒子含有量Wが0.5質量%以下であり、B層に含まれる粒子の平均粒径Dが2μm以上8μm以下であり、B層の厚さTに対するB層に含まれる粒子の平均粒径Dの比率(D/T)が0.5以上、2以下である離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(2)B層の中心面平均粗さ(SRa)が150nm以上、350nm以下である(1)に記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(3)フィルムの長手方向あるいは幅方向のいずれか一方の160℃、10分の熱収縮率が1.6%以上、3.0%以下である(1)または(2)に記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(4)B層に含まれる粒子が炭酸カルシウムおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種である(1)〜(3)のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(5)B層に含まれる粒子の含有量Wが1質量%以上、5質量%以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(6)B層の厚さTに対するA層の厚さTの比率(T/T)が2以上である(1)〜(5)のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(7)B層が露出する面側で離型工程が行われる(1)〜(6)のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、
(8)3次元成型用である(1)〜(7)のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム、である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面が粗面化され、成型品の表面欠点、皺抑制、離型性に優れた離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを得ることができ、3次元成型用エポキシプリプレグの離型フィルムとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムについて説明する。本発明でいうポリアリーレンスルフィドとは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するホモポリマーあるいはコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などで表される基などが挙げられる。
【0011】
【化1】

【0012】
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい。)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される繰り返し単位が採用されたものが好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと称する場合がある)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体及びそれらの混合物などが挙げられる。特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、PPSが好ましく例示される。本発明においては、上記ポリアリーレンスルフィドの繰り返し単位としては、下記構造式で示されるパラフェニレンスルフィド単位を好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上含むことが望ましい(パラフェニレンスルフィドからなるPPSをp−PPSを称する)。パラフェニレンスルフィド単位が95モル%未満では、ポリマーの結晶性や熱転移温度などが低く、離型用フィルムとして耐熱性、離型性などを損なう場合がある。
【0013】
【化2】

【0014】
ポリアリーレンスルフィドの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、温度300℃で剪断速度1,000(1/sec)のもとで、100〜2000Pa・sの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは200〜1,000Pa・sの範囲である。
【0015】
ポリアリーレンスルフィド樹脂は種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0016】
本発明において得られたポリアリーレンスルフィド樹脂を空気中加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水および酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネートおよび官能基ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化など、種々の処理を施した上で使用することも可能である。
【0017】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のみからなるが、ここでいう「実質的に」とは、フィルム中のポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のフィルム単位面積あたり質量がフィルムの単位面積あたり質量に対し、99質量%以上、望ましく99.5質量%以上を占めることをいう。ポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子以外の樹脂あるいは添加物が含有された場合、離型性が悪化する場合がある。
【0018】
本発明の複合フィルムは、少なくとも2層の実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のみからなる層が含まれる(かかる2層をそれぞれA層(「基材層」ともいう)、B層(「粒子リッチ層」ともいう)を有し、B層が少なくとも片方の表層を形成した複合フィルムであり、離型面としてはB層を用いることが好ましい。離型性を向上する観点からA層/B層の2層複合フィルムであることが好ましい態様である。また複合方法としてはA層、B層のフィルムを別々につくり、ラミネート等の手法により複合フィルムとすることもできるが、生産性の観点から口金で溶融ポリマーを合流させる共押出による方法が好ましい。
【0019】
本願発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの基材層(A層)の粒子含有量Wは、A層のフィルム質量に対して0.5質量%以下であることが必要であり、より好ましくは、0.2質量%以下である。Wが0.5質量%を超えると、粒子周りのボイド増加により離型性が悪化する場合がある。A層に用いられる粒子の平均粒径Dは1μm以下が好ましい態様である。また、A層は無粒子であっても良い。
【0020】
粒子リッチ層(B層)の粒子含有量Wは、B層の質量に対して1質量%以上、5質量%以下であることが好ましく、より好ましくは、1質量%以上、3質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以上、2質量%以下である。Wが1質量%未満の場合、B層表面の粗面化が不十分となり、成型品の外観が悪化する場合がある。Wが5質量%を超えると、フィルムの破断伸度低下する場合があり、3次元成型時の成型追従性が悪化する場合があり、また、離型性が悪化する場合がある。
【0021】
また、B層に含有する粒子の平均粒径Dは、2μm以上、8μm以下であることが必要である。後述するとおりここでの平均粒径は二次粒子の数平均粒径を意味する。より好ましくは、3μm以上、8μm以下であり、さらに好ましくは4μm以上、7μm以下である。Dが2μm未満の場合、B層のフィルム表面の粗面化が不十分となり、成型品の外観が悪化する。Dが8μmを超えると、フィルムの破断伸度低下する場合があり、3次元成型時の成型追従性が悪化する場合があり、また、離型性が悪化する。
【0022】
ここで平均粒径は以下のとおり算出する。
【0023】
ミクロトームを用いて断面切削したフィルムのスライス片を作成し、走査型電子顕微鏡の試料台に固定したスライス片を、スパッタリング装置を用いて真空度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施す。次に、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡にて10000〜30000倍の厚み方向断面写真を撮影し、平均粒径(D)は、上記写真から10個以上n個(100個位が適切である)の粒子の面積円相当径(Di)を求め、下記式(式1)により求める。
【0024】
(式1)
【0025】
【数1】

【0026】
さらに、B層の厚さTに対するB層に含有する粒子の平均粒径Dの比率(D/T)が、0.5以上、2以下であることが必要である。より好ましくは、1以上、2以下であり、さらに好ましくは、1.5以上、2以下である。D/Tが0.5未満の場合、B層表面の粗面化が不十分となり、成型品の外観が悪化する。D/Tが2を超えると、フィルムの破断伸度が低下し、3次元成型時の成型追従性が悪化し、また、離型性が悪化する。
【0027】
本発明の複合フィルムの基材層(A層)の厚さTおよび粒子リッチ層(B層)の厚さTのうち、B層の厚さに対するA層の厚さの比率(T/T)は、2以上であることが好ましく、より好ましくは、3以上である。T/Tが2未満の場合、粒子含有層の比率が高くなるため、フィルムの破断伸度が低下する場合あり、3次元成型時の成型追従性が悪化する場合があり、また、離型性が悪化する場合がある。
【0028】
A層およびB層に含まれる粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、酸化チタン、アルミナ、カオリン、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、酸化亜鉛などの無機粒子や架橋スチレン系粒子のような300℃までは溶融しない有機粒子があげられる。2種類以上の粒子を用いることは差し支えない。無機粒子としては、炭酸カルシウム、シリカが離型性の観点から好ましく、中でもシリカが好ましい。特にシリカ粒子の中でも、商品名がサイリシア、サイロイド、サイロブロック等が挙げられるが、ポリアリーレンスルフィドとの親和性や離型性の観点からサイリシアが好ましく用いられる。
【0029】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、B層側の面に被離型材を載置して離型工程を行うことが好ましい態様である。A層面側に被離型材を載置して離型工程を行うと表面の粗面化が不十分であるために、成型品の外観が悪化する場合がある。
【0030】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの160℃、10分間処理したときのフィルムの長手方向あるいは幅方向のいずれか一方の熱収縮率が1.6%以上、3.0%以下であることが成型後の皺抑制、離型性の観点から好ましい。より好ましくは1.6%以上、2.0%以下である。160℃、10分間処理したときのフィルムの長手方向あるいは幅方向のいずれか一方の熱収縮率が1.6%よりも小さい場合、3次元形状を有するエポキシプレプレグ成型時にプリプレグと離型フィルムの間に皺が発生し、皺の形状がプリプレグに転写する場合がある。また、160℃、10分間処理したときのフィルムの長手方向あるいは幅方向のいずれか一方の熱収縮率が3.0%を越えると離型性が悪化する場合がある。
【0031】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムにおいては、B層の中心面平均粗さ(SRa)が150nm以上、350nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以上、350nm以下であり、さらに好ましくは、250nm以上、350nm以下である。該中心面平均粗さが150nm未満の場合、表面の粗面化が不十分となり、成型品の外観が悪化する場合があり、該中心面平均粗さが350nmを超えると離型性が悪化する場合がある。
【0032】
ここで、中心面平均粗さ(SRa)とは触針曲率半径2μmの触針式の3次元粗さ計にて、カットオフ値を0.25mmとし、測定長0.5mmで、ある方向に対して直交する方向に5μm間隔で40回測定したときの中心線平均粗さである。
【0033】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの厚さは、特に限定されないが、離型性、経済性の観点から10μm以上、300μmが好ましく、より好ましくは、20μm以上、200μm以下、さらに好ましくは20〜100μmの範囲である。
【0034】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、離型フィルムに適して利用される。具体的には、プリプレグ成型用離型フィルム、FPC製造用離型フィルム、航空機部品に使用されるACM材料用離型フィルム、リジットプリント基板製造用離型フィルム、半導体封止材用離型フィルム、ゴムシート硬化用離型フィルム、特殊粘着テープ離型フィルムが挙げられる。
【0035】
中でも、本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、ガラスクロス、炭素繊維、または、アラミド繊維などの強化繊維基材にエポキシ樹脂などの未硬化マトリクス樹脂を含浸・硬化させてなるプリプレグ材料をプレス成型金型内またはオートクレーブ内で硬化し、成型型とプリプレグとの接着を防ぐために特に好適に用いられる。
【0036】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを用いた成型時に好適に用いられるプリプレグとしては、強化繊維として炭素繊維、ガラスクロス、アラミド繊維などをあげることができる。これら強化繊維に含浸せしめるマトリックス樹脂としては、熱硬化性樹脂あるいは熱可塑性樹脂を用いることができ、その具体例としては、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、フェノール樹脂、ポリアミド樹脂などを挙げることができる。本発明においては、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂として用いたプリプレグの離型用フィルムとして好適に用いることができるものである。
【0037】
本発明の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、2次元の平板形状の成型においても好適に使用されるが、特に3次元の曲面形状を有するプリプレグの成型において、皺抑制の観点から特に好適に使用されるものである。
【0038】
本発明の離型用ポリアリーレンスルフィド複合フィルムの離型性の目安としては、エポキシプリプレグと重ね合わせて、160℃で3〜5分間、1MPaの圧力をかけた後に常温に冷却してもフィルムが破断することなく、離型できることが好ましい態様である。
【0039】
次いで、本発明の離型用ポリアリーレンスルフィド複合フィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィドとしてp−PPSを用いた二軸配向ポリフェニレンスルフィド複合フィルムの製造方法を例にとって説明するが、他のポリアリーレンスルフィドは下記を参考とすれば得ることに困難性はなく、p−PPSを用いたときと同様の効果が期待できる。すなわち、本発明は、下記の記載に限定されないことは無論である。
【0040】
(1)ポリフェニレンスルフィドの重合方法
p−PPSは種々の方法、例えば、特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法、あるいは、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きい重合体を得る方法などによって製造することができる。
【0041】
p−PPS樹脂の製造法を例示するが、本発明では特にこれに限定されない。例えば、硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンをN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で、高温高圧下で反応させる。必要に応じて、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることも可能である。重合度調整剤として苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し230〜280℃で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを酢酸カルシウムなどの水溶液中で30〜100℃、10〜60分攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃で数回洗浄、乾燥してPPS粉末を得る。この粉末ポリマーを酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃のイオン交換水で数回洗浄し、5トール以下の減圧下で乾燥し、p−PPS粉末を得る。
【0042】
(2)粒子分散ペレットの調製
上述のようにして得られたp−PPS粉末と液体中に粒子を分散させたスラリー、あるいは粒子粉末とを混合し、該混合物をベント押出機に供給して、p−PPS中に粒子を分散させる。ここで、p−PPS粉末に対する粒子粉末の割合は、特に限定されないが、分散性観点から20質量%以下が好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。押出機から吐出されたガット状のポリマは、常法により水浴中などで冷却後、切断してポリマ中に粒子が分散したペレット(以下粒子ペレットと称することがある)となる。
【0043】
また、(1)で得たp−PPS粉末のみを(2)と同様の方法で粒子を含まないペレット(以下無粒子ペレットと称することがある)とし、フィルム製造の際に上記粒子ペレットと混合して使用することができる。
【0044】
(3)ポリフェニレンスルフィド複合フィルムの製法
上述のようにして得られた無粒子ペレットおよび/または粒子ペレットを減圧下で乾燥した後、無粒子ペレット、無粒子ペレット/粒子ペレットを別々の押出機に投入する。押出機の温度は、溶融部を300〜350℃の温度、好ましくは310〜340℃に加熱することが好ましい。その後、溶融押出装置と口金出口の間に設けられた合流装置で溶融状態で2層または3層に積層され、スリット状の口金出口からシート状に押し出される。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸複合シートを得る。
【0045】
次に、この未延伸複合シートを二軸延伸し、二軸配向させる。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いた例で説明する。
【0046】
未延伸複合フィルムを加熱ロール群で加熱した後、長手方向(MD方向)に皺抑制の観点から3.5〜4.0倍、好ましくは3.5〜3.7倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(PPSのガラス転移温度)〜(Tg+40)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
【0047】
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg〜(Tg+40)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。延伸倍率は、皺の抑制の観点から3.4〜4倍、好ましくは3.4〜3.8倍に1段もしくは2段以上の多段で延伸する(TD延伸)。
【0048】
次に、この二軸延伸フィルムを緊張下で熱固定する。本発明においては、本願規定の熱収縮率達成の観点、および離型性の観点から、2段以上の異なる温度で熱固定を行うことが好ましく、1段目の熱固定温度は160〜200℃、好ましくは180〜200℃であり、続いて行う後段の熱固定および/または弛緩熱処理の最高温度は230〜255℃、好ましくは、240〜255℃である。該弛緩処理温度でフィルム幅方向に0〜5%の範囲で弛緩処理することが好ましく、より好ましくは0〜3%であり、さらに好ましくは0%、すなわち定長で熱処理する。さらに、フィルムを室温まで、冷やして巻き取り、目的とする二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムを得る。
【0049】
本発明の特性値の測定方法ならびに効果の評価方法は次の通りである。
【0050】
(1)熱収縮率
幅10mm、長さ200mmにサンプリングした試料に、約100mm間隔となるように直線を引き、その間隔の長さを万能投影機により測定し、L0(mm)とする。次に、該サンプルを2.5gの荷重下で、160℃に加熱されたギアオーブン中で、10分間保持し、その後、室温で2時間冷却した後、再び、直線の間隔を万能投影機で測定し、L(mm)とする。この測定結果から、熱収縮率=((L0−L)/L0)×100)(%)とし、フィルム長手方向および幅方向につきそれぞれn数5サンプルの平均値を採用した。なお、熱収縮率の符号が、「−(負)」の場合は伸びを示している。
【0051】
(2)中心線平均粗さ(SRa)
小坂研究所製Surfcorder ET30HKを用い、下記条件にてB層表面の平均中心線粗さ(SRa)を求めた。
【0052】
触針曲率半径 : 2μm
カットオフ : 0.25mm
測定長 : 0.5mm
測定間隔 : 5μm
測定回数 : 40回。
【0053】
(3)フイルム中の粒子の平均粒径(D)
走査型電子顕微鏡の試料台に固定した測定フィルム表面を、スパッタリング装置を用いて真空度10−3Torr、電圧0.25KV、電流12.5mAの条件にて10分間、イオンエッチング処理を施す。次に、同装置にて該表面に金スパッタを施し、走査型電子顕微鏡にて10000〜30000倍の写真を撮影する。平均粒径(D)は、100個の粒子の面積円相当径(Di)を求め、下記式(式1)により求める。ここで面積円相当径(Di)は個々の二次粒子(但し、一次粒子にて分散しているときは一次粒子)の像に外接する円の直径である。
【0054】
(式1)
【0055】
【数2】

【0056】
(4)積層厚み
日本ミクロトーム研究所製電動ミクロトームST−201を用いて断面切断したフィルムのスライス片を透過型電子顕微鏡で観察し、各層の厚みを測定した。
【0057】
(5)金型成型テストによる皺、離型性
幅600mmで巻き取られたフィルムロール品を幅500mm×長さ900mmサイズに切り出し、フィルムおよびエポキシプリプレグを重ね合わせ、曲面形状を有した金型を設置したプレス成型機で160℃、1MPaの圧力を5分間加えたのちにサンプルを取り出して、室温中に十分冷却してから、エポキシプリプレグと離型フィルムを手で引き剥がした。離型性、皺、外観について、以下の基準で判断した。○、△が合格水準である(○が△よりも優れる)。
【0058】
離型性
○:フィルムが破断することなくプリプレグから容易に剥がれた
△:フィルムが一部破断するがプリプレグから剥がれた
×:プリプレグから剥がれなかった

○:プリプレグ表面にフィルム皺の転写が存在しない
×:プリプレグの製品部分にフィルム皺が転写する
外観
◎:プリプレグ表面光沢がなく、成型品表面に表面凹凸欠点が10個以下である
○:プリプレグ表面光沢がなく、成型品表面に表面凹凸欠点が20個以下である
△:プリプレグ表面光沢がなく、成型品表面に表面凹凸欠点が30個以下である
×:プリプレグ表面光沢があり、成型品表面に表面凹凸欠点が30個を超える
【実施例】
【0059】
以下、実施例ではポリアリーレンスルフィドとしてPPS、粒子としてシリカの例を具体例として挙げて説明しているが、ポリアリーレンスルフィドを作製する場合は下記方法と同様の方法で得ることができ、また、他の粒子を用いた場合でも、下記実施例を参考として本発明にかかるフィルムを作製すれば、所定の効果を得ることができることはいうまでもない。
【0060】
(1)ポリフェニレンスルフィドの作製
50Lオートクレーブ(SUS316製)に水硫化ナトリウム(NaSH)56.25モル、水酸化ナトリウム54.8モル、酢酸ナトリウム16モル、およびN−メチルピロリドン(NMP)170モルを仕込む。次に、窒素ガス気流下に撹拌しながら内温を220℃まで昇温させ脱水を行なった。脱水終了後、系を170℃まで冷却した後、55モルのp−ジクロロベンゼン(p−DCB)と0.055モルの1,2,4,−トリクロロベンゼン(TCB)を2.5LのNMPとともに添加し、窒素気流下に系を2.0kg/cmまで加圧封入した。235℃にて1時間、さらに270℃にて5時間撹拌下にて加熱後、系を室温まで冷却、得られたポリマーのスラリーを水200モル中に投入し、70℃で30分間撹拌後、ポリマーを分離する。このポリマーをさらに約70℃のイオン交換水(ポリマー重量の9倍)で撹拌しながら5回洗浄後、約70℃の酢酸カルシウムの1質量%水溶液にて窒素気流下にて約1時間撹拌した。さらに、約70℃のイオン交換水で3回洗浄後、分離し、120℃、1torrの雰囲気下で20時間乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド粉末を得た。
【0061】
次に、このポリフェニレンスルフィド粉末を市販の窒素ガス雰囲気下90℃のNMP(ポリフェニレンサルファイドポリマー重量の3倍量)にて0.5時間の撹拌処理を2回行なった。このポリフェニレンサルファイド粉末をさらに約70 ℃ のイオン交換水で4回洗浄した後分離し、上記のようにして乾燥することによって白色のポリフェニレンスルフィド粉末を得た。このポリフェニレンスルフィド粉末の300℃ における溶融粘度は5000ポイズであった。
【0062】
(2)ペレットの作製
〔粒子ペレット1〕
平均粒径5μmのシリカ微粉末(富士シリシア社製サイリシア)をヘンシェルミキサを用いて(1)で得られたPPS粉末にシリカの含有量が5質量%となるように混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度320℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、粒子含有量5質量%の粒子ペレット1を得た。
〔粒子ペレット2〕
平均粒径1μmの炭酸カルシウム粒子をエチレングリコール中に50質量%分散させたスラリーを調製した。このスラリーをフィルタで濾過した後、ヘンシェルミキサーを用いて、(1)で得られたPPS粉末に炭酸カルシウムの含有量が7質量%となるよう混合した。得られた混合物を、30mm径の二軸のスクリューを有するベント押出機に供給し、温度320℃で溶融した。この溶融物を金属繊維からなる95%カット孔径10μmのフィルタに通して瀘過した後、2mm孔径ダイから押し出し、ガット状の樹脂組成物を得た。さらに該組成物を約3mm長に裁断し、粒子含有量7質量%の粒子ペレット2を得た。
〔粒子ペレット3〕
粒子ペレット1で平均粒径5μmの炭酸カルシウムを用いる以外は粒子ペレット1と同様にして粒子ペレット3を得た。
〔無粒子ペレット〕
粒子を添加しなかった他は、上記粒子ペレットと同様にして溶融押出し、粒子を含有しない無粒子ペレットを得た。

(実施例1)
無粒子ペレットおよび粒子ペレット1をシリカ粒子が1.0質量%となるよう混合し、回転式真空乾燥機で150℃、3mmHgの減圧下で3時間処理して結晶化ペレットとした(PPS−B)。また無粒子ペレットを回転式真空乾燥機で150℃、3mmHgの減圧下で3時間処理して結晶化ペレットとした(PPS−A)。次いで、このPPS−Bを65mmφの単軸押出機(押出機−1)に、PPS−Aを90mmφ単軸押出機(押出機−2)にPPS−BとPPS−Aの吐出比がA:B=4:1になるよう供給した。該PPSの溶融温度を330℃とし、瀘過精度30μmのフィルターを通過させて、角形ブロック式合流部を経て、PPS−Bが粒子含有層であるB層に、PPS−Aが基材層であるA層となるようにし、リップ幅400mm、スリット間隙1.5mmのステンレス製Tダイから吐出させ、表面を30℃に保った金属ドラム上で静電荷を印加させながら密着冷却固化して、A/Bの2層複合非晶シ−トとした。
【0063】
この2層複合非晶シートを、加熱された複数のロール群からなる縦延伸機を用い、予熱後、ロールの周速差を利用して、101℃のフィルム温度でフィルムの縦方向に3.6倍の倍率で延伸した。その後、このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、延伸温度101℃、延伸倍率3.4倍でフィルムの幅方向に延伸を行い、引き続いて温度200℃で5秒間熱処理(1段目熱処理)を行い、続いて、横方向に定長下で245℃、15秒間熱処理(2段目熱処理)を行ったのち、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚さ25μmの二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0064】
得られた二軸配向PPS複合フィルムをフィルム厚み方向に薄くスライスし、断面をプラズマエッチングし走査型電子顕微鏡を用いて断面観察した。A/Bの厚み構成は22.5μm/2.5μmであった。
【0065】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0066】
(実施例2)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子を平均粒径が3μmのものとした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0067】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0068】
(実施例3)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子を平均粒径が2μmのものとした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0069】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0070】
(実施例4)
実施例1で用いたPPS−Aで、粒子ペレット2の炭酸カルシウム粒子を0.5質量%となるよう供給する以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0071】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPS複合フィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0072】
(実施例5)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子の含有量を3.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0073】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0074】
(実施例6)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子の含有量を5.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0075】
(実施例7)
実施例1でPPS−AとPPS−Bの吐出比が4:1になるよう供給し、A層/B層の厚み構成を20μm/5μmとする以外は実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0076】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0077】
(実施例8)
実施例1でPPS−AとPPS−Bの吐出比が3:2になるよう供給し、A層/B層の厚み構成を15μm/10μmとする以外は実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0078】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0079】
(実施例9)
実施例1で用いたPPS―Bで、粒子ペレット3の炭酸カルシウムを1質量%となるよう供給する以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0080】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0081】
(実施例10)
実施例1で2段目熱処理温度を230℃とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0082】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPS複合フィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0083】
(実施例11)
実施例1で2段目熱処理温度を265℃とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0084】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPS複合フィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0085】
(実施例12)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子の含有量を7.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0086】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0087】
(実施例13)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子の含有量を0.5質量%とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0088】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観、離型性に優れたものであった。
【0089】
(実施例14)
実施例1で、延伸倍率を縦方向に3.2倍、横方向に3.4倍とした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPS複合フィルムは外観、離型性に優れたものであったが、製品部分に皺が発生した。
【0090】
(比較例1)
実施例1でPPS−AとPPS−B吐出比がA:B=24:1になるよう供給し、A/Bの厚み構成を24μm/1μmとする以外は実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0091】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観に優れたものであったが、プリプレグからの剥離の際、密着部分が発生した。
【0092】
(比較例2)
実施例1で、無粒子ペレットおよび粒子ペレット1をシリカ粒子が1.0質量%となるよう混合し、回転式真空乾燥機で150℃、3mmHgの減圧下で3時間処理して結晶化ペレットとし、65mmφの単軸押出機(押出機−1)に供給して単膜とする以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPSフィルムを作製した。
【0093】
得られた二軸配向PPSフィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPSフィルムは、皺、離型性に優れたものであったが、プリプレグ表面光沢があり、表面欠点が増加した。
【0094】
(比較例3)
実施例1でPPS−AとPPS−B吐出比がA:B=49:1になるよう供給し、A/Bの厚み構成を24.5μm/0.5μmとする以外は実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0095】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観に優れたものであったが、プリプレグからの剥離の際、密着部分が発生した。
【0096】
(比較例4)
実施例1で用いた粒子ペレット1のシリカ粒子を平均粒径が10μmのものとした以外は、実施例1と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
【0097】
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向複合PPSフィルムは、皺、外観に優れたものであったが、プリプレグからの剥離の際、密着部分が発生した。
【0098】
(比較例5)
比較例2で、延伸倍率を縦方向に3.2倍、横方向に3.4倍とした以外は、比較例2と同様にして二軸配向PPS複合フィルムを作製した。
得られた二軸配向PPS複合フィルムの構成や特性についての測定、評価結果は、表1に示したとおりであり、この二軸配向PPS複合フィルムは、外観に優れたものであったが、製品部分に皺が発生し、プリプレグからの剥離の際、密着部分が発生した。
【0099】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の離型用ポリアリーレンスルフィド複合フィルムは、成型品の表面欠点、皺抑制、離型性に優れ、3次元成型用エポキシプリプレグ離型フィルムとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2層(かかる2層をそれぞれA層、B層という)の実質的にポリアリーレンスルフィド樹脂と粒子のみからなる層が含まれる二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルムであって、A層に含まれる粒子含有量Wが0.5質量%以下であり、B層に含まれる粒子の平均粒径Dが2μm以上8μm以下であり、B層の厚さTに対するB層に含まれる粒子の平均粒径Dの比率(D/T)が0.5以上、2以下である離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項2】
B層の中心面平均粗さ(SRa)が150nm以上、350nm以下である請求項1に記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項3】
フィルムの長手方向あるいは幅方向のいずれか一方の160℃、10分の熱収縮率が1.6%以上、3.0%以下である請求項1または2に記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項4】
B層に含まれる粒子が炭酸カルシウムおよびシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項5】
B層に含まれる粒子の含有量Wが1質量%以上、5質量%以下である請求項1〜4のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項6】
B層の厚さTに対するA層の厚さTの比率(T/T)が2以上である請求項1〜5のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項7】
B層が露出する面側で離型工程が行われる請求項1〜6のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。
【請求項8】
3次元成型用である請求項1〜7のいずれかに記載の離型用二軸配向ポリアリーレンスルフィド複合フィルム。

【公開番号】特開2012−81741(P2012−81741A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191285(P2011−191285)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】