説明

難燃化用スラリー及び不燃化粧板

【課題】 不燃性能を有し、かつ強度が優れ、寸法変化が小さく、更に、コア層に用いるプリプレグ中に含まれる有機樹脂分を層間剥離が生じない程度まで増量し、密着性に優れた化粧板を得る。
【解決手段】 バインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む難燃化用スラリーを用いる。コア層に、繊維シートにバインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む難燃化用スラリーが含浸、乾燥されたプリプレグを用い、表裏に化粧板用の化粧紙に熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥させた熱硬化性樹脂含浸紙を配して熱圧成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は難燃化用スラリー及び不燃化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防火、不燃性等の機能を付与した化粧板が知られており、化粧板用の化粧紙に熱硬化性樹脂を主な成分とする樹脂液を含浸した樹脂含浸化粧紙と、無機繊維不織布にフェノール樹脂或いはメラミン樹脂をバインダー成分とし、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物を含むスラリーを含浸したプリプレグをコア層とし、両者を積層し、熱圧成形していた。
【0003】
【特許文献1】特表2004−516956号公報
【特許文献2】特開2004−358814号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、不燃性の化粧板用のコア層に用いるプリプレグは、不燃性を確保する目的からバインダー成分としての有機樹脂分の配合量には限界があり、有機樹脂分が多いと不燃性が劣り、有機樹脂分が少ないとプリプレグ同士の密着が悪く、層間剥離を生じることがあった。
【0005】
また、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどの金属水酸化物は結晶水を放出する際の吸熱作用により不燃性を付与するものであるが、少量の配合では不燃効果が小さいため、有機樹脂分に比べて多量に配合しなければならず、その結果コア層の密着性の低下や刃物を傷めるなど切削性や作業性が劣るものとなっていた。
【0006】
更に、ハロゲン系の難燃剤は環境保全の面から近年の規制により使用が抑制されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、かかる状況に鑑み検討されたもので、コア層の少なくとも片面に化粧層が形成された不燃化粧板であって、該コア層は、繊維シートにバインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む難燃化用組成物が含浸、乾燥されたプリプレグであることを特徴とする不燃化粧板である。これにより、不燃性能を有し、かつ強度が優れ、寸法変化が小さく、更に、コア層に用いるプリプレグ中に含まれる有機樹脂分を層間剥離が生じない程度まで増量し、密着性の向上を図ろうとするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の難燃用組成物に配合される有機リン化合物は、可塑化効果があり、これによりバインダー成分のフロー性が向上し、低樹脂量でも層間密着性の優れた不燃化粧板となる。また、リン酸エステルには難燃効果もあり、不燃性能を付与することができる。以下、本発明について詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明の難燃化スラリーは、バインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む。有機樹脂としては、アミノ−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂などの熱硬化性樹脂が仕上がった製品の耐熱性、寸法変化などの諸物性に優れることから好適に用いることができ、とりわけ耐衝撃性にも優れるフェノール−ホルムアルデヒド樹脂が好ましい。
【0010】
アミノ−ホルムアルデヒド樹脂は、アミノ化合物、例えばメラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミンなどのアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応させて得られる。
【0011】
フェノール−ホルムアルデヒド樹脂は、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどのフェノール類のフェノール性水酸基1モルに対してホルムアルデヒドを1〜3モルの割合でアンモニア、水酸化ナトリウム、トリエチルアミンなどの塩基性触媒下で反応させて得られる。
【0012】
有機リン化合物には可塑化効果と難燃化効果があり本発明では極めて重要な構成要件である。有機リン化合物は燃焼に伴う熱を受けた際にリンによる脱水作用を受けて炭化層となる。また、加熱環境下において、発生した自己縮合水と粒体内反応し、ガスを発生し、また、脱水触媒として作用するほか、自らも不燃性の無機質リン酸被膜を形成する働きを有する。
【0013】
具体的な化合物としては、例えば、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリペンチルホスフェート、トリヘキシルホスフェ−ト、トリシクロヘキシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、ジメチルエチルホスフェート、メチルジブチルホスフェート、エチルジプロピルホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェートなどのリン酸エステル、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド等のホスファフェナントレン系化合物などが挙げられる。これらのなかでも、リン含有量が7〜30重量%のトリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、各種芳香族縮合リン酸エステル、などのリン酸エステルの難燃効果が顕著である。有機リン化合物は有機樹脂成分の固形分1重量部に対して0.14〜0.5重量部配合する。下限に満たないと難燃、可塑化効果が少なく、上限を超えるとスラリー中での溶解性に限界があり、樹脂が凝集しやすくなる。
【0014】
非含水無機物としては、炭酸カルシウム、タルク、フライアッシュ、シリカなどが挙げられるが、とりわけ炭酸カルシウムが好ましい。炭酸カルシウムとしては特に制約はなく、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム(沈降性炭酸カルシウム)などを用いることができる。平均粒子径が0.05〜20μm、より好ましくは1〜10μmの重質炭酸カルシウムが好ましく、下限に満たないと二次凝集しやすく塊ができ含浸適正が悪くなりやすく、上限を超えると熱硬化性樹脂化粧板の表面が平滑にならず、外観不良となる。尚、軽質炭酸カルシウムとは石灰石を焼成し化学的に製造される炭酸カルシウムをいい、重質炭酸カルシウムとは白色結晶質石灰石を乾式又は湿式粉砕して造った微粉炭酸カルシウムをいう。
【0015】
有機樹脂分と炭酸カルシウムの配合割合は固形分比で1:18〜26とするのが好ましく、炭酸カルシウムが下限に満たないと不燃性を満たさず、さらに化粧板の反りが大きくなる。上限を超えると化粧板の耐水性、強度が低下することとなる。
【0016】
バインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む難燃化用スラリーが含浸されるコア層の基材は、無機繊維の織布又は不織布であり、無機繊維としては、ガラス繊維、ロックウール、炭素繊維などが挙げられ、基材の坪量は、10〜200g/mの範囲が好適であり、とりわけ、スラリーの含浸性が優れるガラス繊維不織布を用いるのが好ましい。
【0017】
基材へのスラリーの含浸率は数1で示される算出方法で500〜3000%とするのが好ましく、含浸率が上限を超えると固形分の脱落が多くなり取り扱いにくく、また下限に満たないと層間剥離しやすくなる。
【数1】

【0018】
プリプレグ中の有機樹脂成分の含有率は、数2で示される算出方法で3〜5%とするのが望ましく、下限に満たないと強度、密着性が劣りやすく、上限を超えると不燃性を満たさない。
【数2】

【0019】
本発明の不燃化粧板は、基材にスラリーを含浸し、乾燥させて得られるプリプレグを複数枚と、化粧層としての樹脂含浸化粧紙と、必要に応じて樹脂含浸表面紙を積層し、平板プレス機、連続プレス機などで熱圧成形して得られる。熱圧条件は、温度120〜140℃、圧力40〜70kgf/cmであればよい。
【0020】
樹脂含浸化粧紙は、80〜160g/mの化粧板用の化粧紙に熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥させたもので、熱硬化性樹脂としては、前述のアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が、耐熱性、耐摩耗性などに優れ好適に用いられる。
【0021】
樹脂含浸表面紙は、化粧紙として印刷紙を用いた際の耐摩耗性を向上させる目的で用いられ、20〜40g/mの含浸後透明となる表面紙に、熱硬化性樹脂からなる樹脂液を含浸し、乾燥させたもので、熱硬化性樹脂としては、化粧紙の場合と同様にアミノ−ホルムアルデヒド樹脂が好適に用いられる。
【0022】
以下、実施例を挙げてより詳細に説明するが、本発明をより具体的に示すものであって、特に限定するものではない。尚、実施例、比較例中の部は固形分を示す。
【実施例1】
【0023】
コア層
80g/mのガラス繊維不織布に、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂50部に対して、平均粒子径8μmの炭酸カルシウム1300部、トリフェニルホスフェート10部を配合したスラリーを、数1に示す含浸率が1200%となるように含浸してプリプレグを得た。
尚、この場合、数1よりスラリー含浸後固形分重量は1040g/mであり、スラリー分は1040g/mからガラス繊維不織布の重量を差し引き960g/mである。
更に、960g/mは、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂50部、炭酸カルシウムを1300部、トリフェニルホスフェート10部を含むことより、有機樹脂成分は35g/m、炭酸カルシウムは915g/mである。
従って、数2より算出されるプリプレグ中の有機樹脂成分の含有率(%)は35/(80+35+915)×100により3.4%である。
化粧層
坪量80g/mの無地柄の化粧紙に,メラミン−ホルムアルデヒド樹脂を数1で示す含浸率が130%となるように含浸してメラミン樹脂含浸化粧紙を得た。
熱硬化性樹脂化粧板
下から順に、メラミン樹脂含浸化粧紙を1枚、プリプレグを4枚、メラミン樹脂含浸化粧紙を1枚積層して、フラット仕上げプレートを用いて140℃,70kg/cm、90分間の条件で熱圧成形して実施例1の不燃化粧板を得た。
【実施例2】
【0024】
表1に示す難燃化用スラリーを実施例1と同様に含浸、乾燥させ、積層し、熱圧プレスした。
【実施例3】
【0025】
表1に示す難燃化用スラリーを実施例1と同様に含浸、乾燥させ、積層し、熱圧プレスした。
【0026】
比較例1
表1に示す組成物を実施例1と同様に含浸、乾燥させ、積層し、熱圧プレスした。
【0027】
比較例2
表1に示す組成物を実施例1と同様に含浸、乾燥させ、積層し、熱圧プレスした。
【0028】
比較例3
表1に示す組成物を実施例1と同様に含浸、乾燥させ、積層し、熱圧プレスした。
【0029】
【表1】

【0030】
評価方法は以下の通りとした。
不燃性;ISO5660準拠したコーンカロリーメーターによる20分試験の発熱性試験・評価方法において総発熱量が8MJ/m以下であり、最高発熱速度が10秒以上継続して200kW/mを超えない場合を○とする。
密着性;沸騰水の中に2時間浸漬後、化粧層の剥離、コア層と化粧層の間での著しい亀裂が無かったものを合格、剥離および亀裂があったものを不合格とした。上記の試験を行い、共に合格のものを○、そうでないものを×とした。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の不燃化粧板の構成断面図。
【符号の説明】
【0032】
2 樹脂含浸化粧紙層
3 プリプレグ
6 不燃化粧板



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー成分としての有機樹脂成分と、有機リン化合物と、非含水性無機物を含む難燃化用スラリー。
【請求項2】
コア層の少なくとも片面に化粧層が形成された不燃化粧板であって、該コア層は、繊維シートに請求項1に記載のスラリーが含浸、乾燥されたプリプレグであることを特徴とする不燃化粧板。


【図1】
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【公開番号】特開2012−21102(P2012−21102A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161127(P2010−161127)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】