説明

電動ポンプ

【課題】ドライバ部の基板用のグラウンド配線を不要とする電動ポンプを提供する。
【解決手段】ポンプ部2と、ポンプ部2を駆動するモータ部3と、少なくともモータ部3を収容する導電性のモータハウジング31と、モータ部3を制御するドライバ部4と、を備え、ドライバ部4の基板42をモータハウジング31を介して接地する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ部と、ポンプ部を駆動するモータ部と、モータ部を制御するドライバ部と、を備えた電動ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
このような電動ポンプとして、例えば特許文献1に記載されたものがある。この電動ポンプにおいては、外部の電源や制御装置に接続されたハーネスのコネクタを、ドライバ部の側のコネクタに挿着することにより、ドライバ部の駆動及び制御が可能となる。ドライバ部により制御される電流が、モータ部(センサレスブラシレスDCモータ)を構成するステータのコイルに印加されると、回転磁界によってロータが回転し、ポンプ部(ポンプ作動部)が作動する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−353537号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような電動ポンプにおいては、ドライバ部の不具合発生や安全性確保のために、ドライバ部の基板を接地しておく必要がある。すると、ドライバ部への電力供給や制御のためのハーネスに加えて、基板の接地のためのグラウンド配線が必要となり、配線の複雑化を招来する。又、配線が増えることにより、コネクタの端子数も増加して、コネクタが大型化する虞がある。このような問題は、大電力の電動ポンプの場合には、電力供給用のハーネスが複数必要となるため一層深刻となり、電動ポンプのコスト上昇や搭載性悪化といった問題が生じ得る。
【0005】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたもので、ドライバ部の基板用のグラウンド配線を不要とする電動ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る電動ポンプの第1特徴構成は、ポンプ部と、前記ポンプ部を駆動するモータ部と、少なくとも前記モータ部を収容する導電性のモータハウジングと、前記モータ部を制御するドライバ部と、を備え、前記ドライバ部の基板が前記モータハウジングを介して接地されている点にある。
【0007】
本構成によると、ドライバ部の基板がモータハウジングを介して接地されているので、基板用のグラウンド配線や当該配線用の端子が不要となる。よって、配線の簡素化及びコネクタの小型化を実現でき、コスト面においても有利なものとなる。又、モータハウジングに電気が流れることにより、モータ部で発生する電気雑音を除去し易くなる。
【0008】
第2特徴構成は、前記基板と前記モータハウジングとを電気的に接続する接続部材を、前記基板を取り付ける樹脂製の台座と一体的に成形してある点にある。
【0009】
本構成によれば、接続部材が台座と一体的に成形されているので、基板を台座に固定する際に基板と接続部材との接続を容易に行うことができ、基板と台座とからなるドライバASSYの製造効率が向上する。又、台座を樹脂製としているので、接続部材をインサート成形で台座と一体的に成形することができ、接続部材を台座に組み付ける工程が不要となる。
【0010】
第3特徴構成は、前記接続部材のうち、前記モータハウジングに固定される一端部と前記基板に接続される他端部との間の胴体部が、前記台座によって固定されている点にある。
【0011】
モータ部やポンプ部等で発生する振動が接続部材に伝わると、モータハウジング及び基板に固定された接続部材の両端部に負荷が集中し、接続部材がモータハウジングや基板から外れたり、破損したりする虞がある。特に、基板に固定した側の接続部材の端部には、接続部材の高さに応じた振動の増幅が生じるので、上記の虞が大きい。
【0012】
そこで、本構成のごとく、接続部材の胴体部を台座で固定しておけば、モータ部やポンプ部等からの振動により接続部材に発生する振動を低減することができる。従って、接続部材の両端部への負荷を軽減することができる。又、接続部材の胴体部を台座で固定しておくことにより、接続部材の高さに応じた振動の増幅を低減することができ、基板に固定した側の接続部材の端部への負荷を軽減できる。
【0013】
第4特徴構成は、前記モータハウジングと、前記ポンプ部を収容する導電性のポンプハウジングとを、導電性のボルトを用いて固定してある点にある。
【0014】
本構成によれば、モータハウジング及びポンプハウジングの何れかを接地しておけば、ドライバ部の基板を接地できることになるので、電動ポンプの組み付けの自由度が増す。又、このように構成しておけば、モータハウジングとポンプハウジングとの間に非導電性の部材が存在しても、確実に基板の接地を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電動ポンプの実施形態を示す断面図である。
【図2】ドライバ部の構成を示す分解図である。
【図3】接続部材の固定状態を示す斜視図である。
【図4】電動ポンプにおける電気の流れを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る電動ポンプの実施形態について図面に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態に係る電動ポンプ1は、ポンプ部2と、ポンプ部2を駆動するモータ部3と、モータ部3を制御するドライバ部4と、を備えて構成される。この電動ポンプ1は、ポンプ部2の側が不図示の車両用のエンジン部に取り付けられ、エンジン冷却水を循環させるためのウォータポンプとして機能する。
【0017】
ポンプ部2を収容しているポンプハウジング21は導電性の材料で構成されており、エンジン部から冷却水を吸入する吸入口21aと、エンジン部に冷却水を送り出す吐出口21bとが形成されている。この吸入口21a及び吐出口21bは、ポンプハウジング21の内部に形成されたインペラ室21cとそれぞれ連通している。インペラ室21cにはインペラ22が収容されており、インペラ22が回転すると、吸入口21aからインペラ室21cに冷却水が吸入されると共に、インペラ室21cから吐出口21bに冷却水が吐出される。
【0018】
モータ部3を収容しているモータハウジング31はアルミ材で構成されている。アルミ材は導電性を有するので、ドライバ部4の基板42を接地するために利用することが可能である。又、アルミ材は熱伝導性も有するので、モータ部3で発生した熱を、モータハウジング31を介して放熱し易くなる。但し、ある程度の導電性及び熱伝導性を有する材料であれば、モータハウジング31を他の材料で構成することも可能である。
【0019】
モータハウジング31の内部には、ステータ32、ステータ32の径方向内側に配設されるロータ36、及びロータ36の回転支軸である支軸38が設けられる。ステータ32にはコイル33が設けられ、ステータ32とコイル33とは樹脂で構成されるステータハウジング35によって鋳ぐるまれている。
【0020】
モータハウジング31の端面31aに形成された開口部31bからは、コイル33とドライバ部4の基板42との電気的な接続を行うためのターミナル34がドライブ部4の側に突出している。又、モータハウジング31の端面31aの内側には、インペラ室21cからモータハウジング31の内部に流入したエンジン冷却水が流通可能な環状溝の放熱部31cが形成される。よって、ドライバ部4にて発生した熱はモータハウジング31を経由し、放熱部31cにおいて冷却水に回収されるので、ドライバ部4の温度上昇を抑制することができる。
【0021】
ロータ36は樹脂で成形された回転部材37の一端部と一体的に構成されており、コイル33に通電が行われてステータ32に回転磁界が発生すると、ロータ36及び回転部材37が支軸38を回転支軸として一体回転する。回転部材37が回転すると、回転部材37の他端部に形成されたインペラ22が回転して、吸入口21aからインペラ室21cにエンジン冷却水が吸入されると共に、インペラ室21cから吐出口21bに冷却水が吐出され、ポンプ部2がウォータポンプとして機能する。
【0022】
ドライバ部4は、モータハウジング31の端面31aとカバー41とによって画定される空間内に、基板42と樹脂製の台座43とからなるドライバASSY48を備えて構成される。台座43にはコネクタ部43aが形成されており、コネクタ部43aには不図示の電源と基板42とを電気的に接続するコネクタ端子46が設けられる。このコネクタ端子46のうち、台座43から突出した端子部46aが基板42と接続される。
【0023】
図2及び図3に示すように、台座43には接続部材44が一体的に設けられている。接続部材44のうち、基板42に接続される二股状の端子部44a(本発明における「他端部」)と、モータハウジング31に固定される固定部44b(本発明における「一端部」)との間の胴体部44cは、インサート成形により台座43に埋め込まれている。
【0024】
台座43には、接続部材44と同様に、U字型端子47がインサート成形により埋め込まれている。U字型端子47のうち、一方の端部は基板42に接続される端子部47aとして、他方の端部は組み付け時にターミナル34と接触する凸部47cを有した接続部47bとして構成される。さらに、台座43には、FET45を収容するための収容空間43bやターミナル34を挿通するための貫通孔43cが形成されている。FET45は、基板42に接続するための端子部45aを有している。
【0025】
尚、基板42にはFET45の他にも各種の電子素子が配設される。各種の電子素子は、基板42に直接配設するものでもよいし、FET45のように台座43に本体を設けて、端子部により基板42と接続するようにしてもよい。ここでは、FET45以外の電子素子については、図示及び説明を省略する。
【0026】
基板42には、接続部材44の端子部44a、FET45の端子部45a、コネクタ端子46の端子部46a、及びU字型端子47の端子部47aを挿通するための各端子穴42a〜42dが形成されている。ドライバASSY48の組み付けに際しては、まず台座43に設けた突起状の固定部43dに基板42をネジ止めする。次に、各端子部44a〜47aを、対応する各端子穴42a〜42dに挿通し基板42に半田付けする。このように、接続部材44の端子部44aの基板42への半田付けを、他の端子部45a〜47aの半田付けと同時に行うことができるので、ドライバASSY48の製造が効率的に行える。
【0027】
上記のごとく組み付けられたドライバASSY48を、ターミナル34を台座43の貫通孔43cに挿通させた状態でモータハウジング31に固定する。固定手段としては、ボルト締め、溶着、接着等の適当な手段を選択することができるが、FET45の背面はモータハウジング31に接着させることが望ましい。FET45の背面をモータハウジング31に接着することにより、FET45からの発生熱がモータハウジング31に直接伝わるので、ドライバ部4の放熱性という点において有利である。さらに、本実施形態では、FET45をモータハウジング31の放熱部31cの近傍に配置することにより、放熱性をより向上させている。
【0028】
ドライバASSY48をモータハウジング31に固定すると、ターミナル34がU字型端子47の凸部47cと接触して、基板42からコイル33に通電可能となる。このように、基板42とコイル33との電気的な接続を実現するために、ターミナル34を貫通孔43cに挿通するのみでよく、半田付けが不要な構成となっているので、製造工程の簡略化を図ることができる。
【0029】
ドライバASSY48をモータハウジング31に固定した後、接続部材44の固定部44bをモータハウジング31にネジ止めする。図3に示すように、基板42及び台座43には、ネジ止め用の工具を挿入するための切欠部42e、43eがそれぞれ形成されている。接続部材44の固定部44bをモータハウジング31にネジ止めすることにより、接続部材44とモータハウジング31とを確実に接触させることができるので、基板42をモータハウジング31を介してより確実に接地することができる。又、接続部材44とモータハウジング31との接触を確実にすることにより、基板42の熱を接続部材44を介してモータハウジング31の側に放熱できるという作用も生ずる。最後に、カバー41を設けてドライバ部4が完成する。
【0030】
本実施形態においては、図3に示すように、接続部材44の胴体部44cは台座43に埋め込まれた状態で固定されている。従って、ポンプ部2、モータ部3或いは不図示のエンジン部等からの振動により、接続部材44に発生する振動を低減することができ、その結果、接続部材44の両端部44a、44bへの負荷を軽減することができる。特に、接続部材44の胴体部44cを台座43で固定しておくことにより、接続部材44における振動の増幅を低減することができるので、端子部44aに対する負荷が軽減される。
【0031】
図1に示すように、ポンプハウジング21とモータハウジング31とは、間に樹脂製のステータハウジング35のフランジ部35aを挟んだ状態で、導電性のボルト51により共締めされる。このように構成すれば、ポンプハウジング21とモータハウジング31との間に非導電性のステータハウジング35が存在しても、図4の破線で示すように、基板42を、接続部材44、モータハウジング31、ボルト51、ポンプハウジング21、及びエンジン部等を介して接地できる。
【0032】
さらに、本実施形態においては、ステータハウジング35のフランジ部35aのボルト締結部に金属製のスリーブ材39を設けてある。従って、スリーブ材39がポンプハウジング21とモータハウジング31とに接触することにより、図4の一点鎖線で示すように、スリーブ材39を介してポンプハウジング21とモータハウジング31との電気的接続が確立できるので、基板42の接地がより確実に実現される。
【0033】
〔他の実施形態〕
(1)上記実施形態においては、基板42とモータハウジング31との電気的接続を、別部材である接続部材44により実現した。しかし、別部材を設けずに、基板42とモータハウジング31とを直接接触させることも可能であるし、基板42をモータハウジング31に固定するネジ部材を電気的接続に利用すること等も可能である。
【0034】
(2)上記実施形態においては、ポンプハウジング21とモータハウジング31とを別体で構成し、これらをボルト51で固定することにより、ポンプハウジング21の側に存在するエンジン部等を介して基板42を接地するものとした。しかし、ポンプハウジング21又はモータハウジング31から直接接地される構成としてもよい。又、ポンプハウジング21とモータハウジング31とを一体的に構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明に係る電動ポンプは、インペラを用いた種類のポンプのみならず、他の種類のポンプ、例えば容積式ポンプ等に適用することも可能である。又、本電動ポンプは車両用エンジンのウォータポンプ以外のポンプとして用いることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 電動ポンプ
2 ポンプ部
3 モータ部
4 ドライバ部
21 ポンプハウジング
31 モータハウジング
42 基板
43 台座
44 接続部材
44a 端子部(他端部)
44b 固定部(一端部)
44c 胴体部
51 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ部と、
前記ポンプ部を駆動するモータ部と、
少なくとも前記モータ部を収容する導電性のモータハウジングと、
前記モータ部を制御するドライバ部と、を備え、
前記ドライバ部の基板が前記モータハウジングを介して接地されている電動ポンプ。
【請求項2】
前記基板と前記モータハウジングとを電気的に接続する接続部材を、前記基板を取り付ける樹脂製の台座と一体的に成形してある請求項1に記載の電動ポンプ。
【請求項3】
前記接続部材のうち、前記モータハウジングに固定される一端部と前記基板に接続される他端部との間の胴体部が、前記台座によって固定されている請求項2に記載の電動ポンプ。
【請求項4】
前記モータハウジングと、前記ポンプ部を収容する導電性のポンプハウジングとを、導電性のボルトを用いて固定してある請求項1〜3の何れか一項に記載の電動ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−92742(P2012−92742A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240749(P2010−240749)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】