説明

電動乗用草刈機

【課題】バッテリーコントローラを小型化した電動ローンモアを提供する。
【解決手段】走行用モータ16と、モアブレードと、モアブレードを駆動する草刈用モータ15と、走行用モータ16と草刈用モータ15に電力を供給するバッテリー25とを備え、モアブレードの回転によって草刈を行う電動ローンモア10であって、バッテリー25の電圧を監視するバッテリーコントローラCRを備え、バッテリーコントローラCR内に、バッテリー25から草刈用モータ15および走行用モータ16に流れる電流の供給を遮断しうるリレー(電流遮断手段)103を設ける一方、バッテリーコントローラCRの外側にシステムコントローラ106を設け、システムコントローラ106にリレー103を操作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用モータと、モアブレードと、モアブレードを駆動するモアブレード用モータと、走行用モータとモアブレード用モータに電力を供給するバッテリーとを備え、モアブレードの回転によって草刈を行う電動乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用芝刈機(草刈機)はエンジンを搭載し、走行しながらエンジン動力にてモアブレードを回転させて芝を刈っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−290512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きへの対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0005】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用の芝刈機においては、走行と芝刈作業の双方を実施可能レベルとする電動乗用芝刈機の開発はなされていないのが現状である。
【0006】
芝刈機の走行と芝刈作業の両方を電動で行うためには、多くの電力を必要とする。電力供給のためのバッテリーを搭載する場合の問題点として挙げられるのは、芝刈機の連続作業時間とバッテリーの占有するスペースとの問題である。すなわち、連続作業時間を延ばすことは作業効率の向上という点から望ましい。一方、芝刈機の連続作業時間を延ばすためには、バッテリー自体の充電容量を大きくしたり、バッテリーを並列に接続するために複数のバッテリーを搭載したりしなければならない。このことは、結局、芝刈機におけるバッテリーの占有スペースをより多く確保しなくてはならないこととなり、芝刈機が大型化してしまうという問題があった。
【0007】
さらに、芝刈機を電動とすることで、バッテリーから駆動モータへの電力供給を遮断するための電流遮断手段が必要となる。従来、この種の電力供給制御システムは、バッテリーの電圧を制御するバッテリーコントローラ内に、ブレーカー(電流遮断手段)を備えていた。また、ブレーカーを操作するための制御手段である複数のリレーも、バッテリーコントローラ内に備えていた。
【0008】
しかし、全ての駆動力をバッテリーで賄う電動芝刈機では、バッテリーから駆動モータへ供給する電力が大きくなるので、リレーやブレーカーなどの大型化が想定される。これにより、バッテリーコントローラ全体が大型化してしまうという問題があった。そこで、この発明の目的は、バッテリーコントローラを小型化した電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため請求項1に記載の発明は、走行用モータと、モアブレードと、該モアブレードを駆動するモアブレード用モータと、前記走行用モータと前記モアブレード用モータに電力を供給するバッテリーとを備え、前記モアブレードの回転によって草刈を行う電動乗用草刈機であって、
前記バッテリーの電圧を監視するバッテリーコントローラを備え、
該バッテリーコントローラ内に、前記バッテリーから前記モアブレード用モータおよび前記走行用モータに流れる電流の供給を遮断しうる電流遮断手段を設ける一方、
前記バッテリーコントローラの外側にシステムコントローラを設け、該システムコントローラに前記電流遮断手段を操作させることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記電力供給回路に遅延ヒューズを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記電流遮断手段と前記システムコントローラとがCAN(Controller Area Network)通信によって接続されていることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記バッテリーコントローラに安全プラグを備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、走行速度、前記バッテリー残量を表示する表示部を備え、前記バッテリーコントローラが前記バッテリーの電圧に異常を感知したしたとき、前記表示部に警報を表示して運転者に警告することを特徴とする。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記バッテリーを並列に備え、該並列されたバッテリーの端子電圧を均等化して出力するための電圧均等化回路を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、走行用モータと、モアブレードと、そのモアブレードを駆動するモアブレード用モータと、走行用モータとモアブレード用モータに電力を供給するバッテリーとを備え、モアブレードの回転によって草刈を行う電動乗用草刈機であって、バッテリーの電圧を監視するバッテリーコントローラを備え、そのバッテリーコントローラ内に、バッテリーからモアブレード用モータおよび走行用モータに流れる電流の供給を遮断しうる電流遮断手段を設ける一方、バッテリーコントローラの外側にシステムコントローラを設け、そのシステムコントローラに電流遮断手段を操作させるので、電流遮断手段を操作するための制御手段をバッテリーコントローラ内に別途設ける必要がなくなる。これによって、バッテリーコントローラを小型化した電動乗用草刈機を提供することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、電力供給回路に遅延ヒューズを備えるので、短絡保護として大型のブレーカーを用いる必要がなくなり、いっそうバッテリーコントローラを小型化した電動乗用草刈機を提供することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、電流遮断手段とシステムコントローラとがCAN(Controller Area Network)通信によって接続されているので、電動乗用草刈機内にある全ての電子制御手段の間を同一の規格で、しかも、高速に通信することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、バッテリーコントローラに安全プラグを備えるので、バッテリーコントローラを電動乗用草刈機から安全に、かつ、容易に取り外すことができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、走行速度、バッテリー残量を表示する表示部を備え、バッテリーコントローラがバッテリーの電圧に異常を感知したしたとき、表示部に警報を表示して運転者に警告するので、警報ランプを別途設ける必要がなくなり、部品点数を低減することができる。
【0020】
請求項6に記載の発明によれば、バッテリーを並列に備え、その並列されたバッテリーの端子電圧を均等化して出力するための電圧均等化回路を備えるので、安定した電力を供給することが可能なバッテリーを提供することができる。また、並列モジュールごとにブレーカーなどの電流遮断手段を設ける必要がなくなり、バッテリーユニットまわりを小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一例としての電動ローンモアの側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】この発明の一例の電動ローンモアの要部の側面図である。
【図4】その斜視図である。
【図5】カウリングを回動して、バッテリーコントローラを露出させた状態を示す側面図である。
【図6】(a)はステップ支持板の要部概略平面図、(b)はステップ支持板に取り付けたダンパーの側面図、(c)はカウリング裏面に取り付けたダンパーの側面図である。
【図7】この例のバッテリーコントローラの回路図である。
【図8】従来のバッテリーコントローラの一例の回路図である。
【図9】(a)〜(c)は、電圧均等化回路の原理を示す図である。
【図10】(a)〜(c)は、過充電を保護するための回路の原理を示す図である。
【図11】電圧均等化回路の具体例を示す回路図である。
【図12】電圧均等化回路の実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1,2には、それぞれこの発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア10の平面図と左側面図を示す。電動ローンモア10は、左右一対のフレーム状のシャーシ11と、該シャーシ11の下方に、一対の前タイヤ12と、一対の後タイヤ13とを備える。また、前タイヤ12と後タイヤ13との間には、モアデッキ14を備える。モアデッキ14は略楕円状の縁のある皿型で、皿の底面を上にして備える。モアデッキ14の内側には、不図示のモアブレード(草刈刃)を、その長径方向に2つ並べて備える。このモアブレードの回転中心には、それぞれ草刈用モータ(モアブレード用モータ)15,15を取り付ける。なお、モアデッキ14は、その短径方向を(電動ローンモア10の直進方向より)やや右側に傾けて設けられる。すなわち、右側のモアブレードの回転中心は、左側のそれと比べて、直進方向やや後方となる。
【0023】
シャーシ11の上には、本体カバー20を被せる。本体カバー20は、シャーシ11全体を覆うものである。後タイヤ13のやや前方で本体カバー20上には、運転席21を設ける。運転席21の左右側方には、電動ローンモア10の走行操作をするための走行操作レバー22,22をそれぞれ備える。右の走行操作レバー22のさらに外側には、モアデッキ14の地面からの高さを調節するためのモアデッキ昇降操作レバー(昇降操作レバー)24を備える。運転席21の左右それぞれの下方には冷却口26A,26Aを、運転席21の前側の下方には、冷却口26Bを設ける。冷却口26A,26Bは、後述するバッテリー25を冷却するための空気を取り入れるためのものであり、本体カバー20に形成された開口である。また、運転席21の後方には排気口27を2つ設ける。排気口27,27は、冷却口26A,26Bから取り入れられた空気が車体内を通過して排出されるためのものであり、本体カバー20に形成された開口である。
【0024】
なお、電動ローンモア10は、草刈りに加えて、走行も電動モータによってまかなうものであり、一対の後タイヤ13,13の内側にそれぞれ走行用モータ16を備え、この走行用モータ16によって後タイヤ13,13を駆動させる(なお、後タイヤ13,13のホイール内にそれぞれホイールモータを備えてもよい)。
【0025】
前述の2つの草刈用モータ15および2つの走行用モータ16の電力は、同一のバッテリーから供給される。バッテリー25は、本体カバー20内で、運転席21の下方に6つ備える。詳しくは、バッテリー25を、後タイヤ13,13のアクスル間で、かつ、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べて備え、それら3つのバッテリー25の前後に、これらと直角に1つずつ備える。さらに、後タイヤ13,13の後方で、かつ、シャーシ11の下方に、走行方向と直角にバッテリー25を1つ備える。これら6つのバッテリー25は、不図示のブラケットを介してシャーシ11に取り付けられている。なお、バッテリー25は3個を直列に接続して1セットとし、この例では、これを2セット備える。したがって、バッテリー25の数は3個であってもよい。その場合には、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べるものとする。
【0026】
左後タイヤ13のフェンダーには、バッテリー25を充電する際にプラグを差し込むための給電口28を備える。給電口28は、本体カバー20に蓋付の開口である。給電口28にはプラグを備え、家庭の電源に接続した電気コードを差し込んで、バッテリー25を充電する。バッテリー25とプラグとの間にはACアダプタおよび充電装置を適宜備える。
【0027】
バッテリー25の上には、不図示の制御部を備える。この制御部は、電動ローンモア10の走行用モータ16を制御する。制御部は、走行操作レバー22の傾動量(後述)に応じて走行用モータ16の回転方向および回転速度を制御する。制御部は、走行用モータ16の制御に加えて、草刈用モータ15の回転制御、さらにバッテリー25の微小な電圧の変動を補正する役割も担っている。なお、草刈用モータ15の回転は、走行用モータ16の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0028】
前タイヤ12,12はそれぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット17に回転自在に取り付けられている。前タイヤブラケット17は、シャーシ11に回動自在に取り付けられている。2つの前タイヤブラケット17,17は、それぞれ独立に回動するものとする。
【0029】
走行操作レバー22は傾動可能に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行用モータ16が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー22が後に倒されると走行用モータ16は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー22の傾動度合いによって走行用モータ16の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー22を大きく前(後)に倒すと、走行用モータ16が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー22を小さく前(後)に倒すと、走行用モータ16が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転者は、走行操作レバー22,22を前後に適宜操作することで、直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0030】
そして、右側の走行操作レバー22の端部には、モアデッキ14内の2つのモアブレードの回転をON、OFFする草刈スイッチ23を設ける。草刈スイッチ23は、リミット型のスイッチを用い、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。
【0031】
左側のシャーシ11の略中央部には、モアデッキ14を昇降させるためのデッキ支持アーム18の一端を回動自在に取り付ける。デッキ支持アーム18の他端は、ステー19a(図1の裏面側は19a´)を介してモアデッキ14に取り付けられている。なお、ステー19aはモアデッキ14の表面に溶接などで固設されている。また、デッキ支持アーム18は、ステー19aに対して回動自在に取り付けられている。なお、デッキ支持アーム18の回動中心は、シャーシ11との連結部である。このデッキ支持アーム18は、不図示のリンク機構を介して、モアデッキ昇降操作レバー24に連結されている。一方、モアデッキ14の前側には、別のステー19b(図1の裏面側は19b´)が固設されている。このステー19bには、シャフトSの一端が回動自在に取り付けられている。シャフトSの他端は、不図示のステーを介してシャーシ11に回動自在に取り付けられている。
【0032】
図3,4にはこの例の要部を示す。5つのバッテリー25が、シャーシ11の上面に固設されたデッキ板31上に平置きにされ、ボルトによって固定される。バッテリー25は、リチウムイオン電池を用いることが望ましい。詳しくは、二酸化マンガンリチウム電池、フッ化黒鉛リチウム電池、塩化チオニルリチウム電池、酸化銅リチウム電池、二硫化鉄リチウム電池、ヨウ素リチウム電池など、エネルギー密度が高く、寿命が長いものを用いることが望ましい。
【0033】
上記5つのバッテリー25の上方には、これらを覆うようにして、角アーチ状の保護フレーム41A,41B,41C,41Dを設ける。これらの保護フレーム41A〜41Dは、それぞれの基端を左右両側のシャーシ11,11にボルトによって固設する。また、保護フレーム41Bと保護フレーム41Cとの間には、シャーシ11,11に沿うように補強板42A,42Aを両側に、補強板43Aを中央に渡しかけ、両基端をボルトによって保護フレーム41Bと保護フレーム41Cに固設する。さらに、保護フレーム41Cと保護フレーム41Dとの間には、シャーシ11,11に沿うように補強板42B,42Bを両側に、補強板43Bを中央に渡しかけ、両基端をボルトによって保護フレーム41Cと保護フレーム41Dに固設する。
【0034】
ところで、バッテリー25の電圧制御のためのバッテリーコントローラCRをバッテリー25の上方に備える。詳しくは、保護フレーム41A,41Bの間で、かつ、電動ローンモア10の進行方向両側に鉄製の側壁部材46A,46Bが渡し掛けられ、その前後端を保護フレーム41A,41Bの側部にボルトBによって固定される。保護フレーム41A,41Bの間で、かつ、側壁部材46A,46Bの間に形成される矩形の空間には、鉄製の載置板45が覆い掛けられ、保護フレーム41A,41Bにボルトによって固定される。この載置板45の上には、直方体のケースに覆われたバッテリーコントローラCRがボルトによって固定される(バッテリーコントローラCRのサイズは、縦400mm×横300mm×高さ100mm程度である)。そして、カバー47で載置板45を上方より覆う。カバー47は鉄製で、側壁部材46A,46Bの上端に沿うように、底辺が形成されている。このカバー47によって覆われているため、後述するように、カウリング20が開けられた際にバッテリーコントローラCRは露出することがなく、不測の落下物などからバッテリーコントローラCRを保護することができる。
【0035】
一方、シャーシ11の後部下方には、バッテリーケース44をボルトによって固設する。このバッテリーケース44内には、バッテリー25を1つ固定して備える。バッテリーケース44には、バッテリー25を取り出すための開閉蓋44Aをボルトで固定する。
【0036】
ところで、図5に示すように、カウリング20の前端部の両側にそれぞれ切り欠き20Aを形成する。一方、前タイヤブラケット17,17には、平頭ピン17Dをそれぞれ固設する。前タイヤブラケット17は、前タイヤ支持部17Aとポスト部17C、およびこれらを回動自在に連結する連結部17Bとで構成される。前タイヤ支持部17Aは断面視で門型状の鉄板で形成され、その両端部には、貫通孔を設けてピンPNを介して前タイヤ12を回転自在に取り付ける。ポスト部17Cは鉄製の円筒で形成され、下部側面には、連結板Jを溶接する。この連結板Jは、シャーシ11の先端部と固設されている。したがって、前タイヤ支持部17Aは水平面において回動自在である一方、ポスト部17Cは回動しない構成となっている。ポスト部17Cの上部側面(電動ローンモア10の走行方向の外側)には、平頭ピン17Dを突設する。平頭ピン17Dは、棒状のピンの先端にそのピンよりも大きな径の平板を固設して抜け止めを構成する。
【0037】
そして、カウリング20の切り欠き20Aを平頭ピン17Dに掛け止めるようにして取り付ける(これにより、カウリング20は、シャーシ11の前方を回動支点として上方に回動可能となる)。そして、シャーシ11上に取り付けたステップ支持板SFとカウリング20の裏面との間にダンパー50を取り付ける。ダンパー50は、電動ローンモア10の幅方向に並べて2つ備える。
【0038】
ダンパー50は、図6(a)〜(c)に示すように、スプリング機能を有するダンパー本体51とそのダンパー本体51内を出没するダンパーロッド52とで構成される(なお、ダンパー50は、公知のエアスプリングタイプ、オイルスプリングタイプなどを適宜用いるものとする)。ダンパー本体51の先端には、接続部51Aを固設する。接続部51Aは先端の丸まった鉄板で、中央部には、貫通孔51A1を設ける。一方、ダンパーロッド52の先端には、接続部52Aを固設する。接続部52Aは先端の丸まった鉄板で、中央部には、貫通孔52A1を設ける。
【0039】
ステップ支持板SFは、電動ローンモア10の幅方向に3つのパートで構成されている。すなわち、左右両側には、側板SF1,SF1、2つの側板SF1の間には中央板SF2を備え、これら3つをボルトによって連結してなる。側板SF1は鉄板で形成され、その一側端部はU字状に折り曲げ加工が施されて、溝FGが形成される。U字状の溝FGの側端には中央板SF2と連結するための貫通孔が設けられる。溝FGの両壁には、さらに別の貫通孔SF1a,SF1aが形成される。中央板SF2は鉄板で形成され、その両側端部は下向きに直角に折り曲げられて側端部SF2E,SF2Eを形成する。側端部SF2Eにはそれぞれ、貫通孔SF2aを形成する。
【0040】
そして、ダンパー本体51の接続部51Aを側板SF1の溝FGに挿入し、ボルト53を貫通孔SF1a、貫通孔51A1、貫通孔SF1a、貫通孔SF2aの順に通した後、ボルト53の先端にピン54を通して抜け止めをする。このようにして、ダンパー本体51をステップ支持板SFに回動自在に取り付ける。
【0041】
一方、カウリング20の裏面には、カウリング・ダンパー連結具60をボルトなどで固設する。カウリング・ダンパー連結具60は、矩形の鉄片をU字状に折り曲げてその両側部に貫通孔60a,60aを形成する。U字状に折り曲げた中央部には別の貫通孔を形成して、ボルトによってカウリング20に取り付ける(なお、この例では、カウリング・ダンパー連結具60のカウリング20への取付部分としては、ステップSTの運転席21側端部近傍としているが、これに限定されるものではなく、状況に応じて必要な箇所に取り付けるものとする)。
【0042】
そして、ダンパーロッド52の接続部52Aをカウリング・ダンパー連結具60のU字部に挿入し、ボルト55を貫通孔60a、貫通孔52A1、貫通孔60aの順に通した後、ボルト55の先端にピン56を通して抜け止めをする。このようにして、ダンパーロッド52をカウリング20の裏面に回動自在に取り付ける。
【0043】
カウリング20を開けることによって、バッテリーコントローラCR、および、デッキ板31上に平置きされた5つのバッテリー25を取り出すことができる。
【0044】
図7には、この例の電動ローンモア10のバッテリーコントローラCRの回路図を示す。バッテリーユニットBTUは、バッテリー25を3つ直列につないだものを2つ並列に備える(端子電圧は72V)。バッテリーユニットBTUの2つの正極には、それぞれ電流センサ101,101を接続したのち合流させる。そして、安全プラグ108を介して遅延ヒューズ102を取り付ける(安全プラグ108は、バッテリーコントローラCRの着脱を安全に行うためのものである)。遅延ヒューズ102のさらに下流側には、EV(電気自動車)用のリレー(電流遮断手段)103を設ける。バッテリーコントローラCRの外側には、2つの配線が分岐し、72Vの駆動用電源の正極として、一方には、リレー、モータドライバ、草刈用モータ15をこの順に接続し、他方には、リレー、モータドライバ、走行用モータ16をこの順に接続する。なお、バッテリーユニットBTUの負極もバッテリーコントローラCRの外側に備えるリレーに合流し、草刈用モータ15、走行用モータ16と接続している。
【0045】
一方、電流センサ101,101から配線を分岐してそれぞれに電池管理基板104,104を接続する。電池管理基板104の下流側は、正負それぞれの極にブレーカー105,105を接続する。ブレーカー105,105は、バッテリーコントローラCRの外側にて、DC−DCコンバータ109に接続され、制御用電源として12Vに降圧された後、システムコントローラ106と接続する。このシステムコントローラ106は、走行操作レバー22、各種スイッチなどの入力部と、電磁ブレーキ、各種ランプなどの出力部を制御するものである。システムコントローラ106は、リレー103と接続されており、リレー103の切断・連結操作をすることができる。
【0046】
なお、電池管理基板104は、バッテリーユニットBTUとの間にシリアル通信を行い、バッテリーユニットBTUの電圧変移などを監視している。電池管理基板104は、さらに、電動ローンモア10の別の箇所に備えるシステムコントローラ106とCAN(Control Area Network)通信を行うことができる。加えて、電池管理基板104には、LCDモニター(表示部)107を接続し、バッテリーユニットBTUに異常が起きたときに警告を表示する。このLCDモニター107は、走行操作レバー22に取り付けるようにするのが望ましい。なお、LCDモニター107には、バッテリーユニットBTUの異常を警告するのに加えて、電動ローンモア10の速度、バッテリー残量、モアブレードの回転数(rpm)などを表示することができる。
【0047】
この例では、電池管理基板104からの情報に基づいて、システムコントローラ106が各種の異常を判断してリレー103を直接OFFとする指示を行う。したがって、システムコントローラ106が直接、バッテリーユニットBTUから駆動部(草刈用モータ15、走行用モータ16)への電力供給を遮断するものである。また、正極にあるリレー103のみを切断する片切りの回路とすることができる。
【0048】
ところで、この回路では、感電防止のため、制御用の12Vの回路と、駆動用の72Vの回路とを絶縁し、フローティングシステム化している。これによって、作業時にバッテリーユニットBTUの負極側を遮断する必要がなくなる。すなわち、バッテリーユニットBTUの負極側に電流遮断手段が不要となり、バッテリーユニットBTUまわりを小型化することができる。
【0049】
バッテリーコントローラCRをこのように構成することで、図8に示すような従来の構成よりも駆動電源の遮断方法を簡素化し、かつ、小型化することができる。従来のバッテリーコントローラ200では、2つのブレーカー201,201を並列に設け、バッテリーユニットBTUの正極と接続している。ブレーカー201,201の下流側は、電流センサ202,202を介して電池管理基板204と接続している。
【0050】
電池管理基板204の下流側は、正極・負極のそれぞれの配線がブレーカー206と接続されている。このブレーカー206は、バッテリーコントローラ200の外側にて、DC−DCコンバータ209に接続され、制御用電源として12Vに降圧された後、システムコントローラ210と接続する。このシステムコントローラ210は、走行操作レバー、各種スイッチなどの入力部と、電磁ブレーキ、各種ランプなどの出力部を制御するものである。電池管理基板204とブレーカー206との間には、リレー205A,205B,205Cを介在させる。さらに、電池管理基板204には、別回路としてリレー205D,205Eを接続させる。
【0051】
なお、符号SW11,SW12,SW21,SW22,SW3は、それぞれスイッチである。ブレーカー206がONとなると、リレー205Aが通電し、スイッチSW11,SW21がONとなる。
【0052】
電流センサ202,202の下流側は、電池管理基板204に接続されるのとは別に、草刈用モータ15、走行用モータ16にも接続されている。一方、バッテリーユニットBTUの負極は、ブレーカー211を介して草刈用モータ15、走行用モータ16に接続されている。したがって、回路は、バッテリーユニットBTUの正負両極にそれぞれブレーカー201,211を設けた、いわゆる両極切となっている。
【0053】
電池管理基板204にて異常を検知すると、リレー205Dが通電し、スイッチSW3をONとする。スイッチSW3がONとなると、リレー205Eに通電し、スイッチSW12,SW22をONとする。スイッチSW12,SW22がONとなると、不図示の警告ランプが点灯するとともに、ブレーカー206が遮断される。
【0054】
このような構成のバッテリーコントローラ200には、ブレーカー201,206を収容するのに加えて、リレー205A,205B,205C,205D,205E、スイッチSW11,SW12,SW21,SW22,SW3を収容するので、サイズが大型化してしまうという問題があった(バッテリーコントローラ200は、縦700mm×横430mm×高さ200mm程度)。
【0055】
ところで、電動ローンモア10には、電圧均等化回路を備えてもよい。電圧の均等化回路はセル間の電圧のバランスをとることと応流に対応するものであり、その原理を図9(a)に示す。この回路には、バッテリー301,302、コイル303,304、ダイオード305,306、スイッチ307,308を備える。バッテリー302の端子電圧>バッテリー301の端子電圧の場合には(図9(b))、スイッチ308が閉じるとともにスイッチ307は開き、昇圧コンバータ作用によって矢印のように電流が流れ、バッテリー302の端子電圧は、バッテリー301の充電に振り分けられる。一方、バッテリー302の端子電圧<バッテリー301の端子電圧の場合には(図9(c))、スイッチ307が閉じるとともにスイッチ308は開き、矢印のように電流が流れ、双方の端子電圧を均等化させる。このような電圧均等化動作は、バッテリーを急速に充電する際、充電後のバッテリー端子電圧をバラツキを抑えることができ、充電効率があがる。また、通常充電の際には、バッテリー電圧を設定値以下に制御すること(すなわち、過充電保護)が可能である。したがって、電圧均等化動作はバッテリーの充電前に行うことが有効である。
【0056】
過充電を保護する原理を図10に示す。充電中にバッテリー302の端子電圧が設定値に達したとき、スイッチ308を閉じてコイル304に磁束としてエネルギーを蓄える(図10(a))。次に、スイッチ308を開くことで、コイル304に蓄えられたエネルギーは、ダイオード306を通ってバッテリー301に供給される(図10(b))。バッテリー301の端子電圧が設定値に達したら、スイッチ307を閉じる(図10(c))。すると、昇降圧コンバータにより、バッテリー301に流れ込む余分な充電電流をバッテリー302に移送することができる。なお、急激、かつ、大電流充電の場合には、瞬時にして電圧が上昇し、スイッチング制御が間に合わず、許容電圧を超える恐れがあるため、ツェナーダイオードを用いて回路を保護することが望ましい。また、ヒステリシスコンパレータ(シュミットトリガ)を用いて基準電圧に余裕度を持たせることも有効である。
【0057】
図11には、電圧化均等回路の一例を示す。この回路は、図9,10にある回路を基礎として、コンパレータ311,312、基準電圧部313,314、抵抗315,316,317,318、ツェナーダイオード319,320で構成される。電圧均等化回路の動作原理は、シャントレギュレータに従い、制御素子が負荷に対して並列に配置される。出力電圧を安定化させるために負荷が多くの電流を必要とするときには、制御素子側の電流を少なくし、少ない電流でよいときには、制御素子側の電流を多くする。言い換えると、負荷状態によって制御素子を流れる電流と出力電流とを入れ替えるように働く。
【0058】
充電電流Iでバッテリー301,302が充電され、バッテリー302の端子電圧が設定値E1(端子電圧設定用電池314の電位差)を超えると、コンパレータ312は、バッテリー302に流れ込む電流をダイオード306を通してバッテリー301へ移送する(図中矢印)。なお、充電の完了は、バッテリー301,302の合計電圧で検出する(または、充電完了時に、バッテリー301,302からそれぞれ満充電信号を発信するようにしてもよい)。
【0059】
図12には、この発明に適用しうる電圧化均等回路の一例を示す。この例では、制御素子を、MOS−FET321,322、コンパレータ(誤差増幅器)311,312、基準電圧部313,314、検出抵抗R3,R4、ツェナーダイオード(過充電防止部)319,320で構成する。充電電圧(バッテリー1モジュールあたりVin)は、制限抵抗R1を通して制御素子に供給される。出力電圧Voutは、検出抵抗R3,R4で抵抗分割された後に、コンパレータ311,312において、基準電圧部313,314の基準電圧(Vref)と比較され、負荷が多くの出力電流Ioutを必要とするとき(すなわち、バッテリー容量が少ないとき)、出力電圧Voutが低くなるため、基準電圧部313,314の電圧の方が大きくなってMOS−FET321,322の電流Itを少なくする方向に制御される。また、負荷が少ない出力電流Ioutでよいとき(すなわち、バッテリー容量が十分にあるとき)、出力電圧Voutが高くなり、基準電圧側の電圧の方が小さくなるため、MOS−FET321,322の電流Itを多くする方向に制御し、常に出力電圧(バッテリー電圧)を一定に保持するようにする。また、過電圧とならないように、ツェナーダイオード319,320を並列に設け、所定の電圧以上になると充電電流をバイパスさせるようにする。
【産業上の利用可能性】
【0060】
この発明の電動乗用草刈機は、芝刈りに限定されるものではなく、草を刈るためのあらゆる作業に適用しうる。
【符号の説明】
【0061】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
11 シャーシ
14 モアデッキ
15 草刈用モータ(モアブレード用モータ)
16 走行用モータ
18 デッキ支持アーム
20 カウリング
24 モアデッキ昇降操作レバー(昇降操作レバー)
25,301,302 バッテリー
31 デッキ板
41A,41B,41C,41D 保護フレーム
44 バッテリーケース
44A 開閉蓋
45 載置板
46A,46B 側壁部材
47 カバー
50, ダンパー
60 カウリング・ダンパー連結具
62 フレーム・ダンパー連結具
101,202 電流センサ
102 遅延ヒューズ
103 リレー(電流遮断手段)
104 電池管理基板
105 ブレーカー
106 システムコントローラ
107 LCDモニター
108 安全プラグ
109 DC−DCコンバータ
303,304 コイル
305,306 ダイオード
307,308 スイッチ
311,312 コンパレータ
313,314 基準電圧部
315,316,317,318 抵抗
319,320 ツェナーダイオード
321,322 MOS−FET
B ボルト
BTU バッテリーユニット
CR バッテリーコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用モータと、モアブレードと、該モアブレードを駆動するモアブレード用モータと、前記走行用モータと前記モアブレード用モータに電力を供給するバッテリーとを備え、前記モアブレードの回転によって草刈を行う電動乗用草刈機であって、
前記バッテリーの電圧を監視するバッテリーコントローラを備え、
該バッテリーコントローラ内に、前記バッテリーから前記モアブレード用モータおよび前記走行用モータに流れる電流の供給を遮断しうる電流遮断手段を設ける一方、
前記バッテリーコントローラの外側にシステムコントローラを設け、該システムコントローラに前記電流遮断手段を操作させることを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記電力供給回路に遅延ヒューズを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
前記電流遮断手段と前記システムコントローラとがCAN(Controller Area Network)通信によって接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記バッテリーコントローラに安全プラグを備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項5】
走行速度、前記バッテリー残量を表示する表示部を備え、前記バッテリーコントローラが前記バッテリーの電圧に異常を感知したしたとき、前記表示部に警報を表示して運転者に警告することを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項6】
前記バッテリーを並列に備え、該並列されたバッテリーの端子電圧を均等化して出力するための電圧均等化回路を備えることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−188789(P2011−188789A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−57015(P2010−57015)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】