説明

電動乗用草刈機

【課題】2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分における草を確実に刈り取ることが可能な電動乗用草刈機を提供する。
【解決手段】2つのモアブレード40L,40Rを回転させることによって、草を刈るとともにモアデッキ14内に風Wの流れを形成する電動ローンモアであって、風Wを所望の方向に案内するための案内板51L,51Rをモアブレード40L,40Rの回転軌跡に沿うように設ける。案内板51L,51Rは、側面視でモアブレード40L,40Rと同一かそれよりも大きな高さ=W2を有し、さらに、平面視にて、案内板51L,51Rの間に形成された間隙の中点と、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分Pとを結ぶ直線L3が、電動ローンモアの略前進方向Fとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、モアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、モアデッキ上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備える電動乗用草刈機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗用のローンモア(乗用草刈機)は、モアデッキ内に略水平に回転自在に備えられた2つのモアブレードをエンジン動力にて回転させて芝(草)を刈っていた。そして、刈った芝を後方に向かって排出するように構成されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表平11−509798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスを含む排気ガスを規制する動きが社会的潮流となってきた。この動きに対する対応は自動車産業において顕著であり、ハイブリッドカー、電気自動車など、いわゆるエコカーの開発が進められている。特に、近年、バッテリーを電源とした電気自動車の実用化に対する技術開発が活発化している。
【0005】
しかし、このような技術開発は、農業機械の分野においてはさほど活発ではない。特に、乗用のローンモアの分野においては実施可能レベルの技術開発がなされていないのが現状であり、電動のローンモアを開発することは重要である。
【0006】
ローンモアに備えるモアデッキは、天板と、その天板の周縁において下方に突出した側板とを備え、天板の直下には一対のモアブレードを有する。一対のモアブレードは、平面視でその回転軸どうしを結ぶ直線がローンモアの車幅方向に対して一定の角度をもって配置される。言い換えると、一方のモアブレードが他方のモアブレードの斜め前方に配置されている。これに加えて、2つのモアブレードは、それらの回転軌跡が最接近する部分において当接しない程度に接近して配置される。また、モアデッキの天板には、モアブレードの回転軌跡の外側に沿って所定の距離をもって案内板が備えられる。案内板はモアブレードが回転することで形成される風を所望の方向に案内するためのものであり、モアデッキの内側で、かつ、モアデッキの前側に取付けられる。案内板はその両側の大部分において略円弧状に形成され、中央付近において円弧どうしがその端部を接するように設けられる。このため、案内板の中央付近は、2つの回転軌跡が最接近する部分に向けて尖った形状となる。
【0007】
このため、2つの回転軌跡が最接近する部分では、刈り取り直前の芝の上部が案内板に当たって前方に向けて撓んでしまい、この部分の芝をモアブレードで確実に刈り取ることができないという問題があった。
【0008】
そこで、この発明の目的は、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分における草を確実に刈り取ることが可能な電動乗用草刈機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため請求項1に記載の発明は、回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、
該2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、
該モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、
前記左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、該左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、該2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、
該2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともに前記モアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、
前記風を所望の方向に案内するための一対の案内板を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように前記モアデッキに設け、
前記案内板は、前記電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、前記モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、
前記案内板は、側面視で前記モアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、
さらに、前記一対の案内板が一定の間隔をもって配置された電動乗用草刈機であって、
平面視にて、前記一対の案内板の間に形成された間隙の中点と、前記2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、前記電動乗用草刈機の略前進方向となることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電動乗用草刈機において、前記一対の案内板を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けることを特徴とする。
【0011】
請求項3に記載の発明は、回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、
該2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、
該モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、
前記左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、該左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、該2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、
該2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともに前記モアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、
前記風を所望の方向に案内するための一対の案内部を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように前記モアデッキに設け、
前記案内部は、前記電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、前記モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、
前記案内部は、側面視で前記モアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、
さらに、前記一対の案内部が一定の間隔をもって配置され、
前記一対の案内部を連結する連結部を備え、
該連結部は前記案内部の上部のみを連結する電動乗用草刈機であって、
平面視にて、前記一対の案内部の間に形成された切り欠きの中点と、前記2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、前記電動乗用草刈機の略前進方向となることを特徴とする。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の電動乗用草刈機において、前記一対の案内部を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、モアデッキ上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともにモアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、風を所望の方向に案内するための一対の案内板を2つのモアブレードの回転軌跡に沿うようにモアデッキに設け、案内板は、電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、案内板は、側面視でモアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、さらに、一対の案内板が一定の間隔をもって配置された電動乗用草刈機であって、平面視にて、一対の案内板の間に形成された間隙の中点と、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、電動乗用草刈機の略前進方向となる。
【0014】
このため、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分では、刈取前の芝の上部が案内板に当たって前方に向けて撓むことを回避することができる。これによって、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分における草を確実に刈り取ることが可能な電動乗用草刈機を提供することができる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、一対の案内板を2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けるので、モアブレードで起こした風をモアブレードの回転方向に沿って確実に誘導することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、モアデッキ上に載置され、それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともにモアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、風を所望の方向に案内するための一対の案内部を2つのモアブレードの回転軌跡に沿うようにモアデッキに設け、案内部は、電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、案内板は、側面視でモアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、さらに、一対の案内部が一定の間隔をもって配置され、一対の案内部を連結する連結部を備え、連結部は案内部の上部のみを連結する電動乗用草刈機であって、平面視にて、一対の案内部の間に形成された切欠部の中点と、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、電動乗用草刈機の略前進方向となる。
【0017】
このため、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分では、刈取前の芝の上部は切欠部を通過し、案内部に当たって前方に向けて撓むことを回避することができる。これによって、2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分における草を確実に刈り取ることが可能な電動乗用草刈機を提供することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、一対の案内部を2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けるので、モアブレードで起こした風をモアブレードの回転方向に沿って確実に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】この発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモアの側面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】図1の要部拡大側面図である。
【図4】モアデッキ付近の拡大平面図である。
【図5】モアデッキの斜視図である。
【図6】モアデッキの構成を説明するための図であり、(a)はモアデッキの底面図、(b)は(a)のA矢視背面図、(c),(d)はそれぞれ案内板の斜視図である。である。
【図7】モアデッキで芝を刈る様子を説明するための図であり、図6(a)の直線L3においてモアデッキの断面を形成して、それを右方向に見た図である。
【図8】この発明の別の例のモアデッキの構成を説明するための図であり、(a)はモアデッキの底面図、(b)は(a)のA´矢視背面図、(c)は案内板の斜視図である。である。
【図9】モアデッキで芝を刈る様子を説明するための図であり、図8(a)の直線L3においてモアデッキの断面を形成して、それを右方向に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しつつ、この発明を実施するための最良の形態について詳述する。図1,2には、それぞれこの発明の電動乗用草刈機の一例としての、電動ローンモア10の左側面図と平面図を示す。電動ローンモア10は、左右一対のフレーム状のシャーシ11と、該シャーシ11の下方に、一対の前タイヤ12と、一対の後タイヤ13とを備える。また、前タイヤ12と後タイヤ13との間には、モアデッキ14を備える。モアデッキ14の内側には、不図示のモアブレードを2つ隣接して備える。この2つのモアブレードの回転中心には、別々のモアモータ15の出力軸をそれぞれ取り付ける。
【0021】
シャーシ11の上には、カウル20を被せる。カウル20は、シャーシ11全体を覆うものである。後タイヤ13のやや前方でカウル20上には、運転席21を設ける。運転席21の左右側方には、電動ローンモア10の走行操作をするための走行操作レバー22,22をそれぞれ備える。右の走行操作レバー22のさらに外側には、モアデッキ14の地面からの高さを調節するための昇降操作レバー24を備える。運転席21の左右それぞれの下方には冷却口26A,26Aを、運転席21の前側の下方には、冷却口26Bを設ける。冷却口26A,26Bは、後述するバッテリー25を冷却するために空気を取り入れるために設けられる。冷却口26A,26Bは、カウル20に形成される開口である。また、運転席21の後方には排気口27を2つ設ける。排気口27,27は、冷却口26A,26Bから取り入れられた空気が車体内を通過して排出されるために設けられる。排気口27,27は、カウル20に形成される開口である。
【0022】
一対の後タイヤ13,13の内側にはそれぞれ走行モータ16を備え、この走行モータ16によって後タイヤ13,13を駆動させる(なお、走行モータ16は、後タイヤ13,13のホイール内にそれぞれインホイールモータとして備えられていてもよい)。
【0023】
前述の2つのモアモータ15および2つの走行モータ16の電力は、同一のバッテリー25から供給される。バッテリー25は、カウル20内で、かつ、運転席21の下方に6つ備える。詳しくは、バッテリー25を、後タイヤ13,13のアクスル間で、かつ、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べて備え、それら3つのバッテリー25の前後に、これらと直角に1つずつ備える。さらに、後タイヤ13,13の後方で、かつ、シャーシ11の下方に、走行方向と直角にバッテリー25を1つ備える。これら6つのバッテリー25は、不図示のブラケットを介してシャーシ11に固定されている。なお、バッテリー25は3個を直列に接続して1セットとし、この例では、これを2セット備えている。したがって、バッテリー25の数は3個であってもよい。その場合には、シャーシ11の上に(電動ローンモア10の直進方向に対して)3つ並べるものとする。
【0024】
左側の後タイヤ13のフェンダーには、バッテリー25を充電する際にプラグを差し込むための給電口28を備える。給電口28は、カウル20に形成された開口である(開口を塞ぐための給電口扉を備える)。給電口28の内側には給電プラグを備える。給電プラグは、電気コードを差し込んで家庭の電源などでバッテリー25を充電するためのものである。バッテリー25と給電プラグとの間にはACアダプタおよび充電装置を適宜備える。
【0025】
バッテリー25の上には、不図示の制御部を備える。この制御部は、電動ローンモア10の走行モータ16を制御する。制御部は、走行操作レバー22の傾動量(後述)に応じて走行モータ16の回転方向および回転速度を制御する。制御部は、走行モータ16の制御に加えて、モアモータ15の回転制御、さらにバッテリー25の微小な電圧の変動を補正する役割も担っている。なお、モアモータ15の回転は、走行モータ16の回転数と連動するように制御される。すなわち、走行スピードを速めると、モアブレードの回転数も速まり、走行スピードを落とすと、モアブレードの回転数も遅くなる。
【0026】
前タイヤ12,12は独立に従動回転し、それぞれ、シャフトを介して前タイヤブラケット17に取り付けられている。前タイヤブラケット17は、シャーシ11に対して水平に回動自在に取り付けられている。2つの前タイヤブラケット17,17は、それぞれ独立に従動的に回動する。
【0027】
走行操作レバー22は傾動可能に設けられ、運転者がこれを前に倒すと走行モータ16が前進方向に回転する。一方、走行操作レバー22が後に倒されると走行モータ16は後進方向に回転する。さらに、走行操作レバー22の傾動度合いによって走行モータ16の回転速度が変化する。すなわち、走行操作レバー22を大きく前(後)に倒すと、走行モータ16が前進(後進)方向により早く回転し、走行操作レバー22を小さく前(後)に倒すと、走行モータ16が前進(後進)方向にゆっくりと回転する。運転者は、走行操作レバー22,22を前後に適宜操作することで、直後進、左右折、旋回などを行うことができる。
【0028】
そして、右側の走行操作レバー22の端部には、モアデッキ14内の2つのモアブレードの回転を同時にON、OFFする草刈スイッチ23を設ける。草刈スイッチ23は、リミット型のスイッチを用い、運転者が指で押下するとONとなり、再度押下するとOFFとなる。
【0029】
図3,4,5にはこの例の要部を示す。デッキ支持アーム18は断面視で門形のフレーム状に形成される。デッキ支持アーム18の上下端の両側面にはそれぞれ貫通孔を形成する。また、別の貫通孔を下部の両側面に形成する。デッキ支持アーム18の上端の貫通孔をシャーシ11に固設されたステー11aの貫通孔と合わせて、ピン18cを挿入することで、デッキ支持アーム18の上端をシャーシ11に回動自在に取り付ける。
【0030】
モアデッキ14は、天面14Uと側面14Sとで構成され、後部に開口14Eを備える。天面14Uは平面視で前側が円弧状、両側および後側が直線状に形成される。そして、天面14Uには、モアモータ15の回転軸15Aを貫通させるための貫通孔14A,14Aを形成する。また、天面14Uには、ステー19a,19a´,19bを溶接などによって取り付ける。ステー19a,19a´,19bは、矩形の金属板を略L字状に折り曲げて形成され、直立した部分には貫通孔を形成する。モアデッキ14の右前側の側面14Sには、張出部14bを設け、ステー19b´を直立するように固設する。ステー19b´の側面には貫通孔を形成する。なお、天面14Uには別のステー42を設ける。ステー42は矩形の金属板を略L字状に折り曲げて形成され、直立した部分には貫通孔を形成する。
【0031】
このように形成されたモアデッキ14は、ステー19a,19a´の貫通孔と、左右のデッキ支持アーム18,18の下端の貫通孔とを合わせて、ピン18bによってそれぞれ回動自在に取り付ける。また、ステー42の貫通孔にはデッキ支持シャフト41を回動自在に貫通させる。デッキ支持シャフト41の両端には連結部材43をそれぞれ溶接などで固設する。連結部材43には貫通孔を形成する。この貫通孔とステー19b,19b´の貫通孔とをそれぞれ合わせてピンを貫通させることで、デッキ支持シャフト41をモアデッキ14に回動自在に取り付ける。デッキ支持シャフト41の中央部分には一対のシャフトSを延設する。このシャフトSは前方に向けて延びるように取り付けられ、シャフトSの前端部は、シャーシ11に適宜、回動自在に取り付けられる(不図示)。
【0032】
モアデッキ14の天面14Uには、2つのモアモータ15,15を載置してボルトなどで固定する。モアモータ15の回転軸15Aは、天面14Uに形成された貫通孔14Aよりモアデッキ14の内側(すなわち天面14Uの裏面側)に突出される。そして、それぞれの回転軸15Aの先端にはモアブレード40L,40Rを固設する。なお、平面視にて、モアブレード40Lは時計回りに回転し、モアブレード40Rは反時計回りに回転する。
【0033】
デッキ支持アーム18の後端側には、ピン18aを介してリンクプレート32の一端が取り付けられる。リンクプレート32は、Z状のアングル鋼材で形成され、その他端にはピン34を介してリフトアーム33を取り付ける。リフトアーム33は、金属製の板状で略扇形に形成され、円弧に沿って長孔を形成するとともに、中心側には取付孔を形成する。ピン34はこの長孔内に移動自在に嵌っている。リフトアーム33の取付孔にはリフトシャフト31を貫通させて両者を溶接によって固定する。
【0034】
リフトシャフト31は棒状に形成されその両端部は、連結部材37,37に貫通している。リフトシャフト31は、この連結部材37に対して回動自在である。一方、シャーシ11の下面にはステー36が固設されており、ステー36に形成された貫通孔と連結部材37に形成された貫通孔とを合わせてボルトにて両者を固定する。
【0035】
リフトシャフト31の左端にはレバープレート35を溶接などで固定する。レバープレート35は、リフトシャフト31と昇降操作レバー24を固定するためのものである。レバープレート35は矩形の板状に形成され、その中央部に昇降操作レバー24の下端部を溶接などによって固設する。したがって、昇降操作レバー24を回動させると、これに同期して、リフトシャフト31が回動するようになっている。
【0036】
なお、モアデッキ14は、モアデッキ14の後部両側に取り付けられたステー19a,19a´、前部両側に取り付けられたステー19b,19b´、前部中央に取り付けられたステー42によってシャーシ11の下方に吊り下げられている。したがって、リフトアーム33には、常時、デッキ支持アーム18を介してモアデッキ14の重量が分配されている。したがって、リフトアーム33は、通常状態で、長孔の最下端に位置する。
【0037】
図6(a)〜(d)にはこの例のさらに要部を示す。図6(a)のモアデッキ14の底面図に示すように、左右のモアブレード40L,40Rを隣接して備えるとともに、モアブレード(一方のモアブレード)40Lをモアブレード(他方のモアブレード)40Rのやや斜め前方となるように配置している(モアブレード40Rをモアブレード40Lのやや斜め前方となるように配置してもよい)。具体的には、2つのモアブレード40R,40Lの回転軸15A,15Aを結ぶ直線L1と直交する直線L2が、電動ローンモア10の前進方向Fと角度=θだけ底面視で左側に傾くように配置される。なお、モアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TLは、直線L1上にてわずかな距離=Δαをもって最接近する。そして、その距離=Δαの中点を最接近点Pと称す。最接近点Pにおけるモアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TL間のわずかな距離=Δαは適宜設定することができる。また、モアブレード40Lの回転軌跡TLとモアブレード40Rの回転軌跡TRとは背面視にて所定の距離p(通常は5mm程度)だけ重なるように配置される。
【0038】
モアデッキ14の裏面側で、電動ローンモア10の前進方向Fで、さらに、モアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TLの外側には、一対の案内板51R,51Lを設ける。案内板51R,51Lは、幅=W2の金属板を湾曲して形成し、側面51Rs,51Lsを溶接などによってモアデッキ14の天面14Uの裏側に固定する。案内板51Rと案内板51Lとはそれぞれの先端が、最接近点Pを通る直線L3(この直線L3は電動ローンモア10の前進方向Fに平行である)に対してそれぞれ距離=dだけ離れるように設けられる。したがって、案内板51Rと案内板51Lとは正面視(および背面視)にて距離=2dだけ離れた間隙をもって設けられる(案内板51Rと案内板51Lとの間の間隙の距離2dは、モアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TL間のわずかな距離=Δαよりも大きくする)。一方、案内板51Rと案内板51Lの後端はそれぞれ、モアデッキ14の前側の側面14Sの裏面側に接するように配置される。案内板51Rと案内板51Lの後端をこのように配置することで、モアデッキ14内に形成する風Wの流れに対する案内板51L,51Rの後端の抵抗を低減させることができ、風Wの流れをスムーズにすることができる。
【0039】
また、案内板51R、案内板51Lはそれぞれ、モアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TLの外側に一定の距離をもって設けられる。すなわち、案内板51Rは、モアブレード40Rの回転軌跡TRとの距離が全長にわたって一定となるように円弧状に形成する。同様に、案内板51Lは、モアブレード40Lの回転軌跡TLとの距離が全長にわたって一定となるように円弧状に形成する。案内板51R、案内板51Lはモアデッキ14内でモアブレード40R,40Lが回転することで形成される風Wの流れを所望の方向に案内するためのものであり、この例では、モアデッキ14の略後方に向けて風Wが形成されることを補助するために設けられるものである。ちなみに、底面視においてモアブレード40Rは時計回りに回転し、モアブレード40Lは反時計回りに回転する。なお、案内板51R,51Lは、モアブレード40R,40Lの回転軌跡TR,TLとの距離が全長にわたって一定となるように円弧状に形成されることに限定されるものではない。
【0040】
モアデッキ14の内側面の高さ=W2であり、案内板51L,51Rの幅=W2と同一である。さらに、モアブレード40R,40Lは厚さ=tとし、モアブレード40R,40Lの下端、モアデッキ14の下端、さらに、案内板51L,51Rの下端は地上からの高さが略一致している。なお、符号52R,52Lはモアデッキ14後部に配置された後部案内板を示す。後部案内板52R,52Lは、案内板51L,51Rの幅=W2と同一であり、その側面をモアデッキ14の天面14Uの裏側に溶接などで固定する。後部案内板52R,52Lを設けることで、モアデッキ14内に形成される合成風WSの流れをいっそう正確に案内することができる。なお、合成風WSは、モアブレード40Lが形成する風Wと、モアブレード40Rが形成する風Wとが最接近点P近傍で合成されたもので、モアデッキ14の後方に向かう風である。
【0041】
モアデッキ14の幅=W2と、案内板51L,51Rの幅=W2とは一致することに限定されるものではないが、案内板51L,51Rの幅=W2は、モアブレード40R,40Lの厚さ=tと同一かそれよりも大きく形成するものとする。
【0042】
このように構成されたモアデッキ14で芝(草)Gを刈る様子を図7に示す。図7は、図6(a)の直線L3におけるモアデッキ14の縦断面を示す。電動ローンモア10が前進方向Fに向けて走行し、刈り取り前の芝Gの上部がモアデッキ14の先端部14Tの側面14Sに当接すると、前方に向けて撓む。そして、一定距離だけモアデッキ14が前方に進むと芝Gの上部は側面14Sから離れて直立した姿勢に戻る。これは、案内板51Lと案内板51Rとの間に間隙2dが形成されているため、案内板51Lと案内板51Rのいずれにも芝Gが当接しないためである。
【0043】
そして、芝Gが直立した状態でモアデッキ14が更に前方に進み、最接近点Pに差しかかると回転するモアブレード40Rによって芝Gの上部がカットされる。カットされた芝(草)GOはモアブレード40Rが回転して起こす風によって上方に運ばれ、さらに風Wの流れによってモアデッキ14の開口14Eより後方に排出される(刈り取られて短くなった芝(草)を符号G´で示す)。このように、この例のモアデッキ14を用いると最接近点Pにて、芝Gを直立した状態とすることができ、芝Gを適切にカットすることができる。
【0044】
図8(a)〜(c)にはこの発明の別の例の要部を示す。この例では、前の例と比べて案内板51´の形状が異なる。それ以外の構成・作用は前の例と同様であるので、説明を省略する。この例の案内板51´は、左側部(案内部)51´L、連結部51´M、右側部(案内部)51´Rが一体に形成される。左側部51´Lの形状・寸法、およびモアデッキ14内での配置は、前の例の案内板51Lと同一である。同様に、右側部51´Rの形状・寸法、およびモアデッキ14内での配置は、前の例の案内板51Rと同一である(左側部51´Lと右側部51´Rとで一対の案内部と称す)。連結部51´Mは、左側部51´Lと右側部51´Rとを連結するためのものである。連結部51´Mは、幅=W3(W3<W2)の金属板を曲線状屈曲して形成される。連結部51´Mの幅=W3は右側部51´Rおよび左側部51´Lの幅=W2に対して小さいほどよい。なお、連結部51´Mの直上方で、かつ、左側部51´Lの端部と右側部51´Rの端部と画される部分を切欠部と称す。なお、合成風WSは、モアブレード40Lが形成する風Wと、モアブレード40Rが形成する風Wとが最接近点P近傍で合成されたもので、モアデッキ14の後方に向かう風である。
【0045】
このように構成されたモアデッキ14で芝Gを刈る様子を図9に示す。図9は、図8(a)の直線L3におけるモアデッキ14の縦断面を示す。電動ローンモア10が前進方向Fに向けて走行し、刈り取り前の芝Gの上部がモアデッキ14の先端部14Tの側面14Sに当接すると、前方に向けて撓む。そして、一定距離だけモアデッキ14が前方に進むと芝Gの上部は側面14Sから離れて直立した姿勢に戻る。これは、芝Gが連結部51´Mに当接して撓むことなく、切欠部を通過するためである。連結部51´Mの幅=W3が右側部51´Rおよび左側部51´Lの幅=W2に対して小さく形成されているため、芝Gに当接しない。
【0046】
そして、芝Gが直立した状態でモアデッキ14が更に前方に進み、再接近点Pに差しかかると回転するモアブレード40R(またはモアブレード40L)によって芝Gの上部がカットされる。カットされた芝GOはモアブレード40R(またはモアブレード40L)が回転して起こす風によって上方に運ばれ、さらに風Wの流れによってモアデッキ14の開口14Eより後方に排出される(刈り取られて短くなった芝を符号G´で示す)。このように、この例のモアデッキ14を用いると最接近点Pにて、芝Gを直立した状態とすることができ、芝Gを適切にカットすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
この発明の乗用電動草刈機は、芝刈りに限定されるものではなく、草を刈るためのあらゆる作業に適用しうる。
【符号の説明】
【0048】
10 電動ローンモア(電動乗用草刈機)
11 シャーシ
14 モアデッキ
15 モアモータ
40L,40R,40L´,40R´ モアブレード
51L,51R 案内板
51´L 左側部(案内部)
51´R 右側部(案内部)
51´M 連結部
G,GO,G´ 芝(草)
P 最接近点
TR,TL 回転軌跡
W 風

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、
該2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、
該モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、
前記左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、該左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、該2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、
該2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともに前記モアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、
前記風を所望の方向に案内するための一対の案内板を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように前記モアデッキに設け、
前記案内板は、前記電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、前記モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、
前記案内板は、側面視で前記モアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、
さらに、前記一対の案内板が一定の間隔をもって配置された電動乗用草刈機であって、
平面視にて、前記一対の案内板の間に形成された間隙の中点と、前記2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、前記電動乗用草刈機の略前進方向となることを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項2】
前記一対の案内板を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けることを特徴とする、請求項1に記載の電動乗用草刈機。
【請求項3】
回転して草を刈るとともに風をおこすための左右2つのモアブレードと、
該2つのモアブレードを上方および側方より覆うモアデッキと、
該モアデッキ上に載置され、前記それぞれのモアブレードを回転させるための2つのモアモータとを備え、
前記左右のモアブレードを隣接して備えるとともに、該左右のモアブレードの一方を他方のやや斜め前方となるように、かつ、該2つのモアブレードの回転軌跡が背面視で所定の距離だけ重なるように配置され、
該2つのモアブレードを回転させることによって、草を刈るとともに前記モアデッキ内に風の流れを形成する電動走行の電動乗用草刈機であって、
前記風を所望の方向に案内するための一対の案内部を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように前記モアデッキに設け、
前記案内部は、前記電動乗用草刈機の前進方向側で、かつ、前記モアブレードの回転軌跡の外側に所定の距離をもって設けられるとともに、
前記案内部は、側面視で前記モアブレードと同一かそれよりも大きな高さを有し、
さらに、前記一対の案内部が一定の間隔をもって配置され、
前記一対の案内部を連結する連結部を備え、
該連結部は前記案内部の上部のみを連結する電動乗用草刈機であって、
平面視にて、前記一対の案内部の間に形成された切欠部の中点と、前記2つのモアブレードの回転軌跡が最接近する部分とを結ぶ方向が、前記電動乗用草刈機の略前進方向となることを特徴とする、電動乗用草刈機。
【請求項4】
前記一対の案内部を前記2つのモアブレードの回転軌跡に沿うように略円弧状に設けることを特徴とする、請求項3に記載の電動乗用草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−235747(P2012−235747A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107524(P2011−107524)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】